JP3625582B2 - 枚葉紙輪転印刷機の排紙装置における枚葉紙制動方法および装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、請求項１の前提部に記載された枚葉紙輪転印刷機の排紙装置における枚葉紙制動方法および装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
排紙装置における枚葉紙速度を下げるために、機械速度よりも低い速度で回転して枚葉紙を吸い着けるサクションベルトまたはサクションローラが知られている。さらに、ドイツ特許公告公報第２１３５１０５号により、枚葉紙進行と逆向きで、枚葉紙の運動軌道の下方で枚葉紙パイルの直前に配置された吹き出しノズル板から出る送風空気を、最初はまだ、前縁部を搬送装置のくわえづめに保持された到来する枚葉紙の全幅にわたってその下に吹き込むことが知られている。枚葉紙の運動とは反対方向のこの空気流により、吹き出しノズル板の後部には枚葉紙を吸い着ける、したがって枚葉紙と吹き出しノズル板との間に摩擦力を引き起こす負圧が生じるので、そうするうちに搬送装置のくわえづめから放された枚葉紙に制動力が作用する。
【０００３】
公知の配置構成では、到来する枚葉紙がそれぞれ順次機械速度からゼロに制動されるので、それに続いて枚葉紙は順次に排紙装置内の枚葉紙パイルに載せられる。制動が順次強制的に行われることにより連続する枚葉紙の制動に利用できる時間は極めて短いので、枚葉紙に作用し、対応して枚葉紙に強く負荷をかける最大可能な制動力が必要となる。そのため障害が発生しやすく、可能な機械速度が制限される。従来の改善の試みは、制動手段の最適な構成または補助くわえづめを取り付けることに関するものであった。
【０００４】
ドイツ特許公開公報第４３１４７６０Ａ１号により、板状物を搬送ベルトで制動装置に送り、パイルに載せる前にサクションドラムとして構成された制動装置で減速するので、すでに枚葉紙制動区域でずれ重ねが行われる方法が知られている。
【０００５】
さらに、枚葉紙制動区域に配置された吹き出し装置は、負圧によって板状物後端部を制動装置に載せるのを支援する。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、機械の作動周期における枚葉紙制動に利用できる時間を長くすること、つまり機械速度に依存せず各枚葉紙を制動するための時間をより多く得ることにある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明において、上記の課題は請求項１および４に記載した方法と装置によって解決される。
【０００８】
このずれ重ねによって、個々の枚葉紙の制動に利用できる時間を延ばすことができる。等しい機械速度の場合では、枚葉紙に作用する制動力はより少なくてすむ。あるいは逆に、枚葉紙に作用する制動力が等しい場合は、より高い機械速度を可能にする。
【０００９】
排紙装置内で枚葉紙を制動する方法を実施することは、機械的に枚葉紙に作用する制動装置、たとえばブレーキバンド、サクションローラなどと、枚葉紙を排紙装置に運ぶ機械的な枚葉紙搬送装置（くわえづめチェーン）とを組み合わせて、あるいは好ましくは浮動案内による枚葉紙搬送と同じ方向に向いた、枚葉紙制動のための空気流によって行うことができる。
【００１０】
好適な構成において、浮動案内装置と枚葉紙制動装置と枚葉紙パイルは実質的に同じ高さに配置されているので、薄い弾力的な紙を処理する際、折れ目（しわ）なしでパイルを形成できる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【００１２】
本実施形態例では、枚葉紙輪転印刷機の最後の印刷ユニットから排紙装置まで平板状の物体の１つである枚葉紙を搬送するのに、側方で周回するコンベヤチェーンに間隔をおいてくわえづめブリッジ１を固定した機械的搬送装置を選択した。くわえづめブリッジ１は、枚葉紙の全幅にわたって横断方向に延びており、横方向に互いに距離を置いてくわえづめ２を付けている。くわえづめ２は、搬送しようとする枚葉紙３を、その前端部でつかみ、浮動案内装置４の上で引っ張る。浮動案内装置４内では開口部５を通って枚葉紙の搬送方向に吹き出し、したがって排紙パイルに向けられた送風空気が、搬送される枚葉紙の下に吹き込まれる。この浮動案内装置４の搬送方向における端部には、枚葉紙パイル１０の直前に枚葉紙制動装置６が配置されている。枚葉紙制動装置６の上側７は、搬送時に搬送空気流Ｔによって支えられる枚葉紙３の運動軌道８と、ほぼ等しいが被印刷物の厚さｄの寸法だけ低い高さにあることが好都合である。そうすることによって、機械速度で後から続く枚葉紙３の前部区域を、まだ枚葉紙制動装置６上にある先行の枚葉紙３ａの後部区域の上に引っ張ることが可能である。枚葉紙制動装置６は、枚葉紙３ａの後部区域を保持し、枚葉紙３の搬送速度よりも低い速度で駆動される。そうすることによって、本発明の方法による枚葉紙制動と従来の枚葉紙制動とをそれぞれ示す図４と図５の速度・時間グラフを対置した場合、枚葉紙が停止するまでに明らかな大きさの時間差△ｔが生じる。図４の時刻ｔ₂およびｔ₄、図５の時刻ｔ₁およびｔ₃はいずれも枚葉紙３ａおよび３がそれぞれ停止する時刻で、ｔ₂−ｔ₁＝ｔ₄−ｔ₃＝△tの時間差を示している。枚葉紙制動に利用できる時間は著しく増える。なぜならば、ずれ重ねによって形成された重なり区域で枚葉紙制動の時間を△ｔだけ長くできるからである。
【００１３】
枚葉紙制動装置６は機械的枚葉紙制動装置として設計でき、たとえば相並んで周回するが、枚葉紙を排紙装置に搬送する速度よりも低い速度で周回するサクションベルト、サクションローラなどから構成することができる。枚葉紙制動装置６は枚葉紙３ａの後端区域をつかみ、図１に明らかに示されているように、同時に後続の枚葉紙３に対する浮動案内装置４の延長部を形成する。
【００１４】
枚葉紙制動装置６は、枚葉紙搬送方向に見て浮動案内装置４から間隔ａだけ離れているので、これらの装置の間に排気ダクト９が形成される（図１）。排気ダクト９は、その都度先行する枚葉紙３ａの端部が排気ダクト９の開口部断面を解放するとすぐに、浮動案内装置４によって生み出された搬送空気流Ｔを誘導する（図２）。排気ダクト９の解放された開口部断面の大きさに応じて、搬送空気流Ｔは２つの部分空気流（Ｔ_Ｔ 、Ｔ_Ａ ）に分割される。この場合、枚葉紙３と枚葉紙３ａとの間に残っている搬送空気流Ｔ_Ｔ は、連続する枚葉紙３、３ａを分離させ、他方の搬送空気流Ｔ_Ａ は排気ダクト９に案内される（図２）。
【００１５】
くわえづめ２でつかまれた状態で排紙装置に送られる枚葉紙３は、枚葉紙制動装置６の搬送空気流Ｔに載って枚葉紙制動装置６に送られる。この場合、枚葉紙３は浮動案内装置４よりも高い位置（Ｈ＝約０．３〜０．７ｍｍ）を取る。枚葉紙搬送方向に見て浮動案内装置４の後ろに配置された枚葉紙制御装置６は、浮動案内装置４とほぼ同じ高さに配置されている。好適な構成では、浮動案内装置４と枚葉紙制動装置６との高さの差は、被印刷物の厚さｄである。浮動案内装置４と枚葉紙制動装置６との間隔ａは、排気ダクト９の出口断面積を規定する。
【００１６】
枚葉紙パイル１０は、紙載せ面（最上部枚葉紙）が概ね浮動案内装置４と枚葉紙制動装置６の高さに配置されているが、枚葉紙制動装置６よりも被印刷物の厚さｄだけ低いことが好都合である。
【００１７】
浮動案内装置から枚葉紙３、３ａの運動方向における少なくとも１つの速度成分を有する搬送空気流Ｔが、枚葉紙制動装置６に向かって吹き出される。この速度成分は、枚葉紙３、３ａの搬送速度の約５０％〜１５０％の値である。
【００１８】
枚葉紙３は前端部をくわえづめ装置１、２によって保持されて枚葉紙制動装置６に送られる。このとき、枚葉紙３は搬送空気流Ｔに載って浮動案内装置４から高さＨだけ離れた場所を浮動する。この時点で、枚葉紙制動装置６上には先行の枚葉紙３ａがある。枚葉紙３ａは、すでに減速して枚葉紙パイル１０上を運ばれている（図１）。この先行する枚葉紙３ａは、浮動案内装置４によって作られる案内面の延長部を形成している。したがって、枚葉紙３はすでに枚葉紙制動装置６上を引っ張られているが、先行する枚葉紙３ａに触れたり、枚葉紙制動装置６と接触したりすることはない（図２）。
【００１９】
先行する枚葉紙３ａは、短い時間間隔をおいて排気ダクト９の空気出口開口部を解放する。このとき、搬送空気流Ｔは排気ダクト９に誘導される排気流Ｔ_Aと、２枚の枚葉紙３、３ａの分離を確保する分離空気流Ｔ_Tとに分かれる。次の時間間隔後に、排気ダクト９は先行する枚葉紙３ａによって完全に解放されるので、排気流Ｔ_Aは大きくなり、分離空気流Ｔ_Tは小さくなる（図３）。その間、枚葉紙３の前端部は先行する枚葉紙３ａが明け渡した枚葉紙制動装置６の上を通過する。同時にくわえづめ２が開いて、枚葉紙３の前端部を放す。いまや、枚葉紙の後端部は枚葉紙制動装置６上にあり、前端部はあらかじめ吹き込まれたエアクッションＴ_T上を浮動する。このエアクッションは枚葉紙パイル１０上にある枚葉紙３ａの間から徐々に逃げるので、並進運動が行われなくなってから初めて接触が生じる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は、本発明の特徴により、排気ダクトが完全に閉じた状態で排紙装置内で行われる枚葉紙のずれ重ねを示す図である。
【図２】図２は、搬送空気流の分割を示す図である。
【図３】図３は、本発明の特徴により、排気ダクトが開いた状態で排紙装置内で行われる枚葉紙のずれ重ねを示す図である。
【図４】図４は、本発明の方法に従う枚葉紙制動の速度・時間グラフである。
【図５】図５は、従来の枚葉紙制動の速度・時間グラフである。
【符号の説明】
１ くわえづめブリッジ
２ くわえづめ
３ 枚葉紙
３ａ （先行する）枚葉紙
４ 浮動案内装置
５ 開口部
６ 枚葉紙制動装置
７ 上側（６）
８ 運動軌道
９ 排気ダクト
１０ 枚葉紙パイル
Ｔ 搬送空気流
Ｔ_T 分離空気流
Ｔ_A 排気流
ａ 間隔（４−６）
ｄ 被印刷物の厚さ（３、３ａ）
Ｈ 浮動高さ

Claims (9)

1. 相前後して並進運動方向へ連続的にパイル位置へと送られる平板状の物体を制動して積み重ねる方法であって、連続する前記各物体を枚葉紙制動区域においてずれ重ね状にし、前記物体と平行に前記物体の下方に向けて送風空気を噴出させる、平板状の物体を制動して積み重ねる方法において、
   枚葉紙（３）として形成された前記物体を、くわえづめでつかんだ状態で浮動案内装置（４）によって枚葉紙制動装置（６）に送り、浮動案内を行うために供給する搬送空気流（Ｔ）を、同時に、前記枚葉紙（３、３ａ）を分離するために、ずれ重ねが形成される時点から送り込み、到来する前記枚葉紙（３）の下に形成された前記搬送空気流（Ｔ）をずれ重ね区域において継続させ、この際、浮動案内装置（４）の延長部を排紙装置に向かって形成することを特徴とする、平板状の物体を制動して積み重ねる方法。
2. 前記浮動案内装置（４）の前記搬送空気流（Ｔ）を前記枚葉紙制動装置（６）の前で、ずれ重ね状にした前記枚葉紙（３、３ａ）を分離する分離空気流（Ｔ_T）と排気流（Ｔ_A）に分ける、請求項１に記載の方法。
3. 前記分離空気流（Ｔ_T）と前記排気流（Ｔ_A）の分配割合が、先行する前記各枚葉紙（３ａ）の並進運動によって決まる、請求項２に記載の方法。
4. 相前後して並進運動方向へ連続的にパイル位置へと送られる平板状の物体を制動して積み重ねる、浮動案内装置と枚葉紙制動装置を備えた装置において、
   前記浮動案内装置（４）と前記枚葉紙制動装置（６）の間に排気ダクト（９）が形成されていることを特徴とする、平板状の物体を制動して積み重ねる装置。
5. 前記排気ダクト（９）を先行する枚葉紙（３ａ）で覆うことができる、請求項４に記載の装置。
6. 前記排気ダクト（９）の開口部断面が、枚葉紙（３、３ａ）の排紙周期に応じて該枚葉紙（３、３ａ）によって調節できるように配置されている、請求項４または５に記載の装置。
7. 前記浮動案内装置（４）と前記枚葉紙制動装置（６）と枚葉紙パイル（１０）が実質的に同じ高さに配置されている、請求項４から６のいずれか１項に記載の装置。
8. 前記枚葉紙制動装置（６）は前記浮動案内装置（４）よりも、処理する被印刷物の厚さ（ｄ）だけ低い高さに配置されている、請求項４から７のいずれか１項に記載の装置。
9. 前記枚葉紙パイル（１０）の紙載せ高さが、前記枚葉紙制動装置よりも、処理する被印刷物の厚さ（ｄ）だけ低い高さに配置されている、請求項４から８のいずれか１項に記載の装置。

Images