JP3624919B2 - 露光方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体素子、撮像素子(CCD等)、液晶表示素子、又は薄膜磁気ヘッド等をフォトリソグラフィ工程で製造する際にマスクパターンを感光基板上に転写するための露光方法に関し、特に1つの感光基板上に異なる露光装置を用いて所謂ミックス・アンド・マッチ方式で重ね合わせ露光を行う場合に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子等を製造するためのフォトリソグラフィ工程において、縮小投影型露光装置(ステッパー等)が使用されている。一般に、超LSI等の半導体素子は、ウエハ上に多数層のパターンが重ねて形成されるが、それらの層の内、最も高い解像度が必要な層はクリティカルレイヤと呼ばれている。これに対して、例えば半導体メモリ等を製造する際に使用されるイオン注入層のように、高い解像度を必要としない層はミドルレイヤと呼ばれている。
【0003】
また、例えば最近の超LSIの製造工場では、製造工程のスループット(単位時間当りのウエハの処理枚数)を高めるため、1種類の超LSIの製造プロセス中で異なる層間の露光を別々の露光装置を使い分けて行うことが多くなって来ている。そこで、クリティカルレイヤとミドルレイヤとの両方を有する超LSIを製造する場合、クリティカルレイヤへの露光は例えば縮小倍率が1/5倍程度の高い解像度を有する投影露光装置で行い、ミドルレイヤへの露光は例えば縮小倍率が1/2.5倍程度の比較的粗い解像度の投影露光装置で行うという所謂ミックス・アンド・マッチ方式での露光が行われることがある。
【0004】
このようにミックス・アンド・マッチ方式で露光を行う場合でも、それまでに形成された各ショット領域内のチップパターンと、これから露光するレチクルのパターン像とを高精度に重ね合わせるためのアライメントが実行される。従来のアライメント方法の内で、スループットが高く、且つ高い重ね合わせ精度の得られる方法として、例えば特開昭61−44429号公報で開示されているエンハンスト・グローバル・アライメント(以下、「EGA」という)方式が知られている。このEGA方式では、ウエハ上から予め選択された所定個数のショット領域(サンプルショット)の配列座標を計測することにより、全ショット領域の設計上の配列座標からウエハステージが位置決めされるステージ座標系での配列座標を算出するための、例えば6個の座標変換パラメータを求めている。
【0005】
しかしながら、例えばクリティカルレイヤ上にミックス・アンド・マッチ方式でミドルレイヤのパターンを露光する際には、使用する投影露光装置が異なるため、EGA方式で求めた座標変換パラメータ(以下、「EGAパラメータ」とも呼ぶ)をそのまま使用すると、所定の重ね合わせ誤差が残存していることがある。これは、EGAパラメータに残留誤差が残っていることを意味する。このような残留誤差の補正を行うため、従来は次のように重ね合わせ精度計測用マーク(以下、「バーニアマーク」と呼ぶ)を用いてテストプリントによって重ね合わせ誤差の計測を行っていた。
【0006】
即ち、図7(a)は、クリティカルレイヤ露光用の投影露光装置によってバーニアマークの形成されたウエハWを示し、この図7(a)において、ウエハW上で直交座標系(X,Y)のX軸及びY軸に沿ってそれぞれ所定ピッチでショット領域SA1,SA2,…,SAM(Mは例えば12以上の整数)が配列され、各ショット領域SAm(m=1〜M)内にそれぞれ位置合わせ用マーク(ウエハマーク)、及び重ね合わせ精度計測用のバーニアマークが形成されている。
【0007】
図7(b)はそのショット領域SAm内のマーク配置を示す拡大図であり、この図7(b)において、ショット領域SAmの端部にX方向に所定ピッチのライン・アンド・スペースパターンよりなるX軸用のウエハマーク21X、及びY方向に所定ピッチのライン・アンド・スペースパターンよりなるY軸用のウエハマーク21Yが形成されている。これらウエハマーク21X,21Yはそれぞれ撮像方式(FIA方式)で検出されるマークである。また、ショット領域SAm内には十字型に分布する位置にバーニアマーク22A〜22Eが形成されている。バーニアマーク22A〜22Eとしては、一例として撮像方式(画像処理方式)で検出されるボックス・イン・ボックスマークを使用している。
【0008】
次に、その図7(a)のウエハW上にミドルレイヤ用の投影露光装置を使用して所定のバーニアマークを重ね合わせ露光する。この際のアライメントを行うために、図7(a)のウエハW上から選択された例えば10個のショット領域(サンプルショット)SAa,SAb,SAc,…,SAjに付設されたウエハマーク21X,21Yの、ミドルレイヤ用の投影露光装置のステージ座標系での配列座標をそれぞれ計測する。それらサンプルショットSAa〜SAjは、ウエハWの表面でほぼ正多角形の頂点位置、又は一様にばらつきを持たせたランダムな位置に配置されている。そして、それらサンプルショットの設計上の配列座標、及び実際の計測値を処理して、ウエハW上での設計上の配列座標から、投影露光装置のステージ座標系上での配列座標を算出するための線形の6個の座標変換パラメータ(EGAパラメータ)を求める。これらのEGAパラメータは、スケーリング(X方向及びY方向への線形伸縮)Rx,Ry、ウエハ・ローテーション(ウエハの回転)Θ、ショット直交度(ウエハ上の座標系の交差角の90°からの誤差)W、及びオフセットOx,Oyよりなる。
【0009】
次に、そのようにして求められた6個のEGAパラメータと、ショット領域SAm(m=1〜M)の設計上の配列座標値とから、ウエハW上のクリティカルレイヤの各ショット領域SAmのステージ座標系での配列座標値が求められる。ここで、クリティカルレイヤでの縮小倍率を1/5倍、ミドルレイヤでの縮小倍率を1/2.5倍とする、即ちミドルレイヤの投影露光装置の露光フィールドは、クリティカルレイヤの投影露光装置の露光フィールドに対してX方向に2倍、且つY方向に2倍の大きさを有しているものとすると、ミドルレイヤの1つのショット領域内にそれぞれクリティカルレイヤの4つのショット領域が含まれることとなる。
【0010】
そのため、ミドルレイヤの投影露光装置で露光を行う際に、図7(a)のクリティカルレイヤのショット領域SAm(m=1〜M)をX方向及びY方向に2×2個ずつの複数のブロックに分け、各ブロック内の4個のショット領域の計算上の配列座標より各ブロックの中心のステージ座標系での配列座標を求める。その後、ウエハW上の各ブロックの中心の配列座標を順次ミドルレイヤの投影露光装置の露光フィールドの中心に合わせて、それぞれバーニアマークを含むミドルレイヤのレチクルのパターン像を露光した後、そのウエハWの現像を行う。
【0011】
図8(a)は、ミドルレイヤ用の投影露光装置によって重ねてバーニアマークが形成されたウエハWを示し、この図8(a)において、X軸及びY軸に沿ってウエハW上にそれぞれ所定ピッチでミドルレイヤのショット領域SB1,SB2,…,SBN(Nは例えば3以上の整数)が配列され、各ショット領域SBn(n=1〜N)内にそれぞれ4個のクリティカルレイヤのショット領域が含まれている。また、各ショット領域SBnの中心61は、対応する4個のクリティカルレイヤのショット領域の中心にほぼ合致し、各ショット領域SBn内には、それぞれクリティカルレイヤの5個のバーニアマーク22A〜22E(図7(b)参照)に対応して20個(=4×5個)のバーニアマークが形成されている。
【0012】
ここで、斜線を施した4個のショット領域SBa〜SBdを計測対象として、ショット領域SBa〜SBd内で例えばランダムに選択された計測点62〜65で、それぞれクリティカルレイヤのバーニアマークとミドルレイヤのバーニアマークとの位置ずれ量を計測する。図8(b)は、それらの内のショット領域SBaを示し、この図8(b)において、ミドルレイヤのショット領域SBaの下の4個のクリティカルレイヤのショット領域SAp,SA(p+1) ,SAq,SA(q+1) に属するバーニアマークを囲むようにそれぞれ、ミドルレイヤのバーニアマーク24A〜24E,26A〜26E,28A〜28E,30A〜30Eが形成されている。従って、ショット領域SBa内の計測点62では、ショット領域SA(p+1) のバーニアマーク22Cとミドルレイヤのバーニアマーク26CとのX方向、又はY方向への位置ずれ量が計測される。同様に、各計測点63〜65での2つのバーニアマークの位置ずれ量が計測される。
【0013】
その結果、図8(a)の全部の計測点62〜65において、例えばクリティカルレイヤのバーニアマークが全てミドルレイヤのバーニアマークに対してX方向に所定量δXだけずれているときには、EGAパラメータの内のX軸のオフセットOxに残留誤差δXのあることが分かる。従って、この残留誤差を予め装置定数としてミドルレイヤの投影露光装置の制御系に記憶しておき、アライメント結果の補正を行うことにより、クリティカルレイヤ上に高い重ね合わせ精度でミドルレイヤのパターンを露光できるようになる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、クリティカルレイヤのバーニアマークとミドルレイヤのバーニアマークとの位置ずれ量を計測することにより、EGAパラメータの残留誤差を補正することができる。しかしながら、残留誤差としては、上述のようなウエハ全体としての変換パラメータの他に、ショット倍率(各チップパターンのX方向及びY方向への線形伸縮)rx,ry、ショット回転(各チップパターンの回転角)θ、及びショット直交度(各チップパターン内の座標系のの直交度誤差)w等からなる所謂ショット内パラメータもある。
【0015】
例えばショット倍率rxの補正値を求めるためには、図8(a)において、ショット領域SBa内の対向する2個の計測点62及び66で2つのバーニアマークの位置ずれ量を計測することが考えられる。この結果得られる計測点62及び66での位置ずれ量のX成分の差より、残留ショット倍率エラー、即ちショット倍率rxの補正値が算出されるはずである。同様に、残留ショット回転エラーも算出されるはずである。
【0016】
しかしながら、実際には計測点62及び66はクリティカルレイヤで互いに別のショット領域SA(p+1)及びSApに属しているため、計測点62及び66におけるクリティカルレイヤのバーニアマークの位置には、互いに異なるステッピング誤差が混入している恐れがある。即ち、バーニアマークを読む計測点の配置を考慮しないと、本来はウエハステージのステッピング精度によるばらつきであるにも拘らず、残留ショット倍率エラーや残留ショット回転エラーであると判断してしまうことがある。この結果、誤った補正値で対応するショット内パラメータの補正を行うと、アライメント精度が低下するという不都合がある。
【0017】
本発明は斯かる点に鑑み、ミックス・アンド・マッチ方式で例えばクリティカルレイヤとミドルレイヤとが混在するような基板に露光を行う場合に、そのクリティカルレイヤのパターンとミドルレイヤのパターンとの重ね合わせ精度を高めることができる露光方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の露光方法は、例えば図1〜図4に示すように、互いに大きさの異なる露光フィールド(4A,4B)を有する第1及び第2の露光装置(1A,1B)を用いて、感光基板上にマスクパターンを重ねて露光する露光方法において、第1及び第2の露光装置(1A,1B)を用いて評価用の感光基板(W)上に順次、重ね合わせ精度計測用マーク(32A,32C,34A,34C)の形成された第1及び第2のマスクパターンを重ねて転写露光し、評価用の感光基板(W)上で第1の露光装置(1A)の露光フィールド(4A)を単位とする複数のショット領域、及び第2の露光装置(1B)の露光フィールド(4B)を単位とする複数のショット領域のいずれにも跨っておらず、第1の露光装置(1A)の露光フィールド(4A)を単位とするショット領域(SCq)と第2の露光装置(1B)の露光フィールド(4B)を単位とするショット領域(SDr)とが互いにはみ出すことなく(跨ることなく)重なった基準計測領域(SCq)内の所定の計測点(36A,36B)で、重ねて転写露光された重ね合わせ精度計測用マークの像(32A,32C,34A,34C)の位置ずれ量を計測し、この計測結果に基づいて、第1の露光装置(1A)で露光された感光基板上に第2の露光装置(1B)で露光する際の位置合わせ、又は結像特性の補正を行うものである。
【0019】
本発明によれば、基準計測領域(SCq)は2つのレイヤ(例えばクリティカルレイヤとミドルレイヤ)の何れにおいても複数のショット領域に跨らないため、その中の計測点(36A,36B)で計測された位置ずれ量には露光装置(1A,1B)のステッピング誤差の影響が含まれていない。従って、その計測された位置ずれ量に基づいて、位置合わせのためのパラメータ、又は結像特性を示すパラメータの補正を行って露光を行うことにより、高い重ね合わせ精度が得られる。
【0020】
本発明による第2の露光方法は、例えば図1〜図4に示すように、露光対象とする感光基板(W)上で所定の大きさの第1の露光フィールド(4A)を有する第1の露光装置(1A)と、その第1の露光フィールドに対して直交する第1、及び第2の方向に対してそれぞれM1/N1 倍(M1,N1 はM1 ≠N1 なる整数)、及びM2/N2 倍(M2,N2 は整数)の大きさの第2の露光フィールド(4B)を有する第2の露光装置(1B)とを用いて、感光基板上にマスクパターンを重ねて露光する露光方法において、第1の露光装置(1A)を用いて、位置合わせ用マーク(21XA,21YA)及び第1の重ね合わせ精度計測用マーク(31A〜31E)の形成された第1のマスクパターン(2A)を、第1の露光フィールド(4A)を単位として感光基板(W)上に配列された複数の第1のショット領域(SC1〜SCQ)に順次露光する第1工程と、第2の露光装置(1B)を用いて、第2の重ね合わせ精度計測用マーク(33A〜33E)の形成された第2のマスクパターン(2B)を、その第1工程で露光された感光基板(W)上に位置合わせ用マーク(21XA,21YA)の像の位置を基準として第2の露光フィールド(4B)を単位として配列された複数の第2のショット領域(SD1〜SDR)に順次露光する第2工程と、を有する。
【0021】
更に本発明は、感光基板(W)上で複数の第1のショット領域(SC1〜SCQ)、及び複数の第2のショット領域(SD1〜SDR)のいずれにも跨っておらず、複数の第1のショット領域(SC1〜SCQ)中の任意の1つと複数の第2のショット領域(SD1〜SDR)中の任意の1つとがはみ出すことなく重なった複数の領域(SCq,SC(q+2))をそれぞれ基準計測領域として、これら複数の基準計測領域から選択された所定個数の基準計測領域内で互いに同じ位置(計測点)にある第1の重ね合わせ精度計測用マークの像(31A〜31E)と第2の重ね合わせ精度計測用マークの像(33A〜33E)との位置ずれ量を計測し、この計測された位置ずれ量に基づいて第2の露光装置(1B)で第1の露光装置(1A)により露光された位置合わせ用マークの像(21XA,21YA)の位置を検出する際の補正値を求める第3工程と、を有するものである。
【0022】
この場合、例えば第1の露光装置(1A)をクリティカルレイヤ用、第2の露光装置(1B)をミドルレイヤ用とする。このとき、ショット領域内での線形伸縮の誤差等を求めるために、各基準計測領域内にそれぞれ1対の重ね合わせ精度計測用マークの位置ずれ量を計測する複数の計測点を設定するものとしても、それらの計測点は第1のショット領域(SC1〜SCQ)及び第2のショット領域(SD1〜SDR)の何れにもまたがらない。従って、クリティカルレイヤ及びミドルレイヤのステッピング誤差に影響されずに、その線形伸縮の誤差等が正確に求められ、ミドルレイヤでその線形伸縮の補正を行うことにより、クリティカルレイヤとミドルレイヤとの重ね合わせ精度が向上する。
【0023】
この場合、位置合わせ用マーク(21XA,21YA)と第1の重ね合わせ精度計測用マーク(31A〜31E)とは同一のマークであってもよい。
また、その第3工程において求められる補正値の一例は、それら位置合わせ用マークの像の位置に基づいて算出される所定の結像特性を示すパラメータの補正値であり、このパラメータの一例は、ショット倍率rx,ry、ショット回転θ、及びショット直交度wよりなるパラメータ群から選択される少なくとも1つのパラメータである。この場合、その後、第1の露光装置(1A)で露光された感光基板上に第2の露光装置(1B)を用いて重ね合わせ露光する際に、その第3工程で求めた補正値(パラメータ)を用いて結像特性の補正を行うことが望ましい。
【0024】
また、本発明による第3の露光方法は、第1の露光装置(1A)で露光された感光基板を、その第1の露光装置の露光フィールドと大きさの異なる露光フィールドを有する第2の露光装置(1B)で露光する露光方法において、その第1の露光装置で重ね合わせ精度計測用のマークが形成された第1マスクパターンが転写露光された感光基板上に、その第2の露光装置を用いて重ね合わせ精度計測用のマークが形成された第2マスクパターンを重ねて転写露光し、その第1及び第2マスクパターンが重ねて転写露光された感光基板上でその第1の露光装置の露光フィールドを単位とする複数のショット領域、及びその第2の露光装置の露光フィールドを単位とする複数のショット領域のいずれにも跨っておらず、その第1の露光装置の露光フィールドを単位とするショット領域とその第2の露光装置の露光フィールドを単位とするショット領域とが互いにはみ出すことなく重なった基準計測領域内の所定の計測点で、その第1の露光装置で露光された重ね合わせ精度計測用マークの像とその第2の露光装置で転写露光された重ね合わせ精度計測用マークの像との位置ずれ量を計測し、この計測結果に基づいて、その第1の露光装置で露光された感光基板上にその第2の露光装置で露光する際の位置合わせ、又は結像特性の補正を行うものである。
更に、第1の露光装置(1A)の一例は一括露光方式の投影露光装置であり、第2の露光装置(1B)の一例は走査露光方式の投影露光装置である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による露光方法の実施の形態の一例につき図1〜図4を参照して説明する。この例では、2台の露光装置として、縮小倍率が1/5倍の一括露光方式の投影露光装置(ステッパー)と、縮小倍率が1/4倍のステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置とを使用する。また、前者の投影露光装置で露光される各ショット領域からはそれぞれ2個のチップパターンが切り出され(2個取り)、後者の投影露光装置で走査露光される各ショット領域からはそれぞれ3個のチップパターンが切り出される(3個取り)場合を扱う。
【0026】
図1は、本例の露光システムを示し、この図1において、一括露光方式の投影露光装置(以下、「ファインステッパー」と呼ぶ)1Aと、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(以下、「走査型露光装置」と呼ぶ)1Bとが設置されている。本実施例では、ファインステッパー1Aは高解像度、走査型露光装置1Bは低解像度であり、ファインステッパー1Aを用いて、ウエハ上のクリティカルレイヤへの露光を行い、走査型露光装置1Bを用いて、ウエハ上のミドルレイヤへの露光を行う。但し、製造する半導体素子の種類等に応じて、ファインステッパー1Aを低解像度用としたり、又は走査型露光装置1Bを高解像度用とする場合も有り得る。
【0027】
先ずファインステッパー1Aにおいて、レチクルRA上のパターン領域2Aが不図示の照明光学系からの露光光により照明され、パターン領域2A内のパターンが投影光学系3Aにより1/5倍に縮小されて、ウエハW上の矩形の露光フィールド4Aに投影露光される。その投影光学系3Aの光軸に平行にZ1軸を取り、Z1軸に垂直な平面の直交座標をX1軸及びY1軸とする。レチクルRA上のパターン領域2Aは、Y1方向に同一の大きさの部分パターン領域12A及び12Bに分かれ、部分パターン領域12A及び12Bには同一の配列でアライメントマーク、及び重ね合わせ精度計測用のマーク(バーニアマーク)の原画パターンが描画されている。
【0028】
ウエハWはウエハステージ5A上に保持され、ウエハステージ5Aは、Z1軸方向にウエハWの露光面をベストフォーカス位置に設定するZステージ、並びにX1軸及びY1軸方向にウエハWを位置決めするXYステージ等から構成されている。ウエハステージ5A上には直交するように2枚の移動鏡6A及び8Aが固定され、外部に設置されたレーザ干渉計7A及び移動鏡6Aによりウエハステージ5AのX1方向の座標が計測され、外部に設置されたレーザ干渉計9A及び移動鏡8Aによりウエハステージ5AのY1方向の座標が計測されている。レーザ干渉計7A及び9Aにより計測された座標は、装置全体の動作を統轄制御する制御装置10Aに供給され、制御装置10Aは、不図示の駆動部を介してウエハステージ5AをX1方向及びY1方向にステッピング駆動することにより、ウエハWの位置決めを行う。この場合、ウエハWのステッピング駆動は、ウエハWの露光面に設定されたショット領域(パターン領域2Aのパターン像が投影露光される単位となる領域)の配列、即ちクリティカルレイヤ用のショットマップに従って行われ、このショットマップは制御装置10A内のコンピュータよりなるマップ作成部により作成される。
【0029】
本実施例のファインステッパー1Aには、オフ・アクシス方式で且つ撮像方式(FIA方式)のアライメント系11Aが備えられている。アライメント系11Aでは、ウエハW上の位置合わせ用のマーク(ウエハマーク)、又は重ね合わせ精度計測用のバーニアマークを撮像し、得られる撮像信号を処理してそのマークのX1座標、及びY1座標を検出する。検出された座標は制御装置10Aに供給される。
【0030】
なお、アライメント系としては、TTR(スルー・ザ・レチクル)方式のアライメント系、又は投影光学系3Aを介してマークの位置を検出するTTL(スルー・ザ・レンズ)方式のアライメント系等を使用してもよく、マークの検出方式としては、スリット状のレーザビームとマークとを相対走査するレーザ・ステップ・アライメント方式(LSA方式)、又は2光束を回折格子状のマークに照射して平行に発生する1対の回折光の干渉信号から位置検出を行う所謂2光束干渉方式等を使用してもよい。
【0031】
次に、本例の走査型露光装置1Bにおいて、レチクルRBのパターン領域2Bの一部が不図示の照明光学系からの露光光で照明され、その一部のパターン像は、投影光学系3Bを介して1/4倍に縮小されて、ウエハステージ5B上に保持されたウエハW上のスリット状の露光領域14に投影露光される。ここで、投影光学系3Bの光軸に平行にZ2軸を取り、Z2軸に垂直な平面の直交座標系をX2軸及びY2軸とする。この状態でレチクルRBを−Y2方向(又は+Y2方向)に走査するのと同期して、ウエハWを+Y2方向(又は−Y2方向)に走査することにより、ウエハW上の露光フィールド4BにレチクルRBのパターン領域2B内のパターン像が逐次投影される。
【0032】
この場合、レチクルRBのパターン領域2Bは走査方向であるY2方向に同一の大きさの3個の部分パターン領域13A〜13Cに分割され、露光フィールド4Bの大きさは走査方向にファインステッパー1Aの露光フィールド4Aに対して3/2倍で、非走査方向に等しく(1倍に)なっている。また、それらの部分パターン領域13A〜13C内にもそれぞれ同一の配置でバーニアマークの原画パターンが形成されている。
【0033】
走査型露光装置1BのレチクルRBを走査する不図示のレチクルステージの位置は不図示のレーザ干渉計により計測され、ウエハステージ5BのX2座標は、移動鏡6B及びレーザ干渉計7Bにより計測され、ウエハステージ5BのY2座標は、移動鏡8B及びレーザ干渉計9Bにより計測され、それら計測された座標が制御装置10Bに供給されている。制御装置10Bが不図示のレチクルステージ、及びウエハステージ5Bの同期駆動を制御する。ウエハステージ5Bの走査露光は、ウエハWの露光面に設定されたミドルレイヤ用のショットマップに従って行われ、このショットマップは制御装置10B内のコンピュータよりなるマップ作成部により作成される。
【0034】
この場合、制御装置10A内のマップ作成部と、制御装置10B内のマップ作成部とは互いに作成したショットマップ情報を供給する機能を有している。そして、例えばクリティカルレイヤ上にミドルレイヤの露光を行うときには、ファインステッパー1Aに備えられた制御装置10Aで作成されたクリティカルレイヤ用のショットマップ情報が、他方の制御装置10Bに送信され、制御装置10B内のマップ作成部は、供給されたショットマップ情報に基づいてミドルレイヤ用のショットマップを作成する。逆に、ミドルレイヤ上にクリティカルレイヤの露光を行う際には、制御装置10Bで作成されたミドルレイヤのショットマップ情報が制御装置10Aに供給される。
【0035】
また、走査型露光装置1Bにも、オフ・アクシス方式で且つ撮像方式(FIA方式)のアライメント系11Bが投影光学系3Bの側面に設けられ、このアライメント系11BによりウエハW上のウエハマーク又はバーニアマークのX2座標及びY2座標が検出される。
次に、本例においてファインステッパー1Aでクリティカルレイヤのパターンの露光を行った後、走査型露光装置1Bでミドルレイヤのパターンの露光を行う際の、ショット内パラメータ(ショット倍率rx,rx、ショット回転θ、及びショット直交度w)の補正動作の一例につき第1工程から第3工程に分けて説明する。
【0036】
[第1工程]
この第1工程では、図1のファインステッパー1Aのウエハステージ5A上にフォトレジストが塗布された未露光のウエハWを載置して、ウエハW上で露光フィールド4Aを単位として配列された多数のショット領域に、順次ステップ・アンド・リピート方式でレチクルRAのパターンの縮小像を露光する。レチクルRAには、2対のアライメントマークの他に所定配列の2組のバーニアマークの原画パターンが形成されている。その後、そのウエハWの現像を行ってその2対のアライメントマークを凹凸のウエハマークとして現出させ、且つそれら2組の原画パターンを凹凸のバーニアマークとして現出させる。この現像後のパターンをウエハW上のクリティカルレイヤのパターンとみなすことができる。但し、現像を行うことなく、ウエハW上の潜像のままで以後のアライメントや、2つのバーニアマークの位置ずれ量の計測等を行うようにしてもよい。
【0037】
[第2工程]
第1工程でウエハマーク及びバーニアマークの形成されたウエハW上にフォトレジストを塗布し、このウエハWを図1の走査型露光装置1Bのウエハステージ5B上に載置する。この際に、ファインステッパー1Aの制御装置10Aから、第1工程で使用されたクリティカルレイヤのショットマップの情報が走査型露光装置1Bの制御装置10Bに供給されている。これにより制御装置10Bでは、クリティカルレイヤのウエハマーク、及びバーニアマークのウエハW上での設計上の配列座標を求めることができる。
【0038】
図2(a)は、そのウエハステージ5B上に載置されたウエハWを示し、この図2(a)において、走査型露光装置1BのX2軸、及びY2軸を改めてそれぞれX軸、及びY軸として表してある。この場合、ウエハWは不図示のプリアライメント機構により大まかな位置合わせがしてあり、ウエハWの表面はほぼX方向、及びY方向に沿ってQ個(図2(a)では、Q=32)のクリティカルレイヤのショット領域SC1,SC2,…,SCQに分割されている。実際には各ショット領域SCq(q=1〜Q)間には所定幅のスクライブライン領域があるが、それは図示省略してある。また、そのスクライブライン領域を含めて各ショット領域SCqのX方向の幅(ピッチ)はb、Y方向の幅(ピッチ)は2aであり、本例では各ショット領域SCqはほぼ正方形(2a≒b)である。また、各ショット領域SCqはそれぞれY方向に2個の同一形状の第1及び第2の部分ショット領域15A,15Bに分かれ、これらの部分ショット領域15A,15Bには互いに同一の回路パターンが形成されるようになっている。
【0039】
図2(b)はショット領域SCqを代表的に示し、この図2(b)において、ショット領域SCq内の第1の部分ショット領域には、1対のX軸用のウエハマーク21XA、及びY軸用のウエハマーク21YAと、1組の十字型に分布する4個のバーニアマーク31A,31C,31D,31Eとが形成され、ショット領域SCq内の第2の部分ショット領域にも、対称にウエハマーク21XB,21YBと、バーニアマーク32A,32C,32D,32Eとが形成されている。この場合、図2(b)のように分布するマークの原画パターンが、図1のファインステッパー1AのレチクルRAのパターン領域2A内に形成されている。
【0040】
なお、本例で使用されるウエハマーク21XA,21YA等はそれぞれ図1のアライメント系11Bにより撮像方式で検出される1次元のライン・アンド・スペースパターンであり、バーニアマーク31A〜31E等はそれぞれ、そのアライメント系11Bにより撮像方式で検出される2次元のボックス・イン・ボックスマークであるが、バーニアマークとして例えば1次元のライン・アンド・スペースパターンを2つ直交するように組み合わせたマーク、又はウエハマーク21XA,21YA等そのものを使用してもよい。逆にバーニアマークをウエハマークとして使用してもよいため、本例では一例としてバーニアマーク31A〜31E,32A〜32Eの一部をショット領域内の多点のウエハマーク(アライメントマーク)として使用する。また、バーニアマークとして例えばレーザ・ステップ・アライメント(LSA)方式で検出されるマーク等を使用してもよく、更にウエハマーク、及びバーニアマークの分布は、図2(b)以外の分布でもよい。
【0041】
次に、図1の走査型露光装置1Bの制御装置10BはEGA方式でアライメントを行う。そのため、制御装置10Bは、クリティカルレイヤのショットマップに従ってウエハステージ5Bを駆動して、アライメント系11Bの観察視野を順次移動させることにより、図2(a)において、ウエハW上から選択された例えば9個のショット領域(サンプルショット)S1,S2,…,S9に付設されたウエハマーク21XA,21YAの、ステージ座標系(走査型露光装置1Bのレーザ干渉計7B,9Bの計測値により定まる座標系)での配列座標をそれぞれ計測する。そして、各サンプルショットのウエハマーク21XA,21YAの設計上の配列座標から計算される配列座標値と実測値との差分の自乗和である残留誤差成分が最小となるように、6個のウエハ上でのEGAパラメータ(スケーリングRx,Ry、ウエハ・ローテーションΘ、ショット直交度W、オフセットOx,Oy)の値を決定する。
【0042】
次に、制御装置10Bは、それら6個のEGAパラメータと、クリティカルレイヤのショット領域SCq(q=1〜Q)の設計上の配列座標値とから各ショット領域SCqのステージ座標系での配列座標値を求める。ここで、走査型露光装置1Bの露光フィールド4Bは、ファインステッパー1Aの露光フィールド4Aに対してX方向に等倍、且つY方向に3/2倍の大きさであるため、制御装置10Bは、図2(a)のショット領域SCq(q=1〜Q)内の欠けの無い各部分ショット領域をそれぞれX方向に1個、及びY方向に3個ずつの複数のブロックに分け、各ブロック内に少なくとも1つ含まれているショット領域SCqの計算上の配列座標より、各ブロックの中心のステージ座標系での配列座標を求める。これによってミドルレイヤのショット領域の配列(ショットマップ)が定まる。
【0043】
一例として、走査型露光装置1Bにより露光されるミドルレイヤのショットマップでは、図3(a)に示すように、ウエハWのクリティカルレイヤ上にX方向、及びY方向に沿ってR個(図3(a)では、R=20)のショット領域SD1,SD2,…,SDRが配列されている。スクライブライン領域を含めて各ショット領域SDr(r=1〜R)のX方向の幅(ピッチ)はb、Y方向の幅(ピッチ)は3aである。従って、クリティカルレイヤのショット領域SCqに対してミドルレイヤのショット領域SDrの大きさを、X方向及びY方向にそれぞれM1/N1 倍、及びM2/N2 倍とすると、本例ではM1/N1 =1/1、M2/N2 =3/2となっている。また、各ショット領域SDrは、それぞれY方向(走査方向)に同一の大きさの3個の部分ショット領域16A〜16Cに分割され、これら3個の部分ショット領域16A〜16Cには、互いに同一のパターンが形成されるようになっている。
【0044】
本例では、6個のEGAパラメータ(Rx,Ry,Θ,W,Ox,Oy)には誤差がなく、4個のショット内パラメータ(ショット倍率rx,ry、ショット回転θ、ショット直交度w)に誤差があるものとする。そこで、これらショット内パラメータの誤差(補正値)を求めるために重ね合わせ露光を行う。
即ち、走査型露光装置1Bでは、図3(a)のミドルレイヤの各ショット領域SDrに順次、走査露光方式でレチクルRBに形成されたバーニアマークの原画パターン像を露光する。この際に、算出されたショット倍率rx,ryに応じて、投影光学系3Bの投影倍率、及び走査速度を調整し、ショット回転θに応じてレチクルRBを回転させ、ショット直交度wに応じて走査方向を調整しておく。これにより、クリティカルレイヤのチップパターンにミドルレイヤのチップパターンを合わせておく。その後、現像を行うことにより、ウエハW上のクリティカルレイヤのバーニアマーク上にミドルレイヤのバーニアマークが現出する。なお、既に説明したように潜像のままで以下の計測を行ってもよい。
【0045】
[第3工程]
この第3工程では、図2(a)のクリティカルレイヤのショット領域SCqのバーニアマークと、図3(a)のミドルレイヤのショット領域SDrのバーニアマークとの位置ずれ量を計測する。そのため、第2工程で現像が行われた図3(a)に示すウエハWを、例えば図1の走査型露光装置1Bのウエハステージ5B上に載置して、アライメント系11Bにより2層のバーニアマークの位置ずれ量を計測する。但し、2層のバーニアマークの位置ずれ量は、別の高精度な計測装置で計測してもよい。
【0046】
この場合、図2(a)及び図3(a)に示すように、クリティカルレイヤのショット領域SCqの+Y方向の端部とミドルレイヤのショット領域SDrの+Y方向の端部とが一致しているものとする。また、ミドルレイヤMのショット領域SD1〜SDR内には、それぞれクリティカルレイヤのショット領域SCq内の8個のバーニアマークに対応して12個(=4×3個)のバーニアマークが形成されている。
【0047】
図3(b)はそのミドルレイヤのショット領域SDrを示し、この図3(b)において、ショット領域SDr内の第1の部分ショット領域には、クリティカルレイヤのバーニアマーク31A〜31E(図2(a)参照)を囲むように4個のバーニアマーク33A〜33Eが形成され、同様にショット領域SDr内の第2及び第3の部分ショット領域内にもそれぞれ、クリティカルレイヤのバーニアマークを囲むように4個のバーニアマーク34A〜34E、及び35A〜35Eが形成されている。本例では4個のショット内パラメータ(rx,ry,θ,w)の誤差によって、一例としてクリティカルレイヤの所定のショット領域内のバーニアマーク31Eに対して、ミドルレイヤのバーニアマーク35EはX方向及びY方向にそれぞれΔx及びΔyだけ位置ずれしている。そこで、所定の計測点にある2層のバーニアマークの位置ずれ量を検出することにより、それらショット内パラメータの誤差(補正値)を求める。
【0048】
例えば図3(a)で斜線を施して示すように、Y方向に2個連続するショット領域SDr,SD(r+1)内での計測点の設定方法につき、図4を参照して説明する。
図4において、クリティカルレイヤのショット領域SCq,SC(q+1),SC(q+2)と、ミドルレイヤのショット領域SDr,SD(r+1)とが跨ることなく完全に重なっている領域、即ち斜線を施して示すように、2個のショット領域SCq,SC(q+2)をそれぞれ基準計測領域として、第1の基準計測領域SCq内に4個の計測点36A〜36Dを設定する。同様に、第2の基準計測領域SC(q+2)内にも、計測点36A〜36Dと対応する位置に4個の計測点36E〜36Hを設定する。
【0049】
そして、計測点36Aでは、クリティカルレイヤのバーニアマーク32Aとミドルレイヤのバーニアマーク34AとのX方向及びY方向への位置ずれ量を計測し、同様に他の計測点36B〜36D、及び36E〜36Hでもそれぞれ2層のバーニアマークの位置ずれ量を計測する。なお、図3(a)において、他にもクリティカルレイヤのショット領域とミドルレイヤのショット領域とが跨ることなく完全に重なっている領域を基準計測領域としてもよい。
【0050】
次に、各計測点での2つのバーニアマークの位置ずれ量の計測結果から、4個のショット内パラメータの誤差を求める方法の一例につき説明する。ここで、第1の基準計測領域SCq内において、X方向に離れた2つの計測点36A,36Bでの2つのバーニアマークの位置ずれ量をそれぞれ(Δxa,Δya),(Δxb,Δyb)として、Y方向に離れた2つの計測点36C,36Dでの2つのバーニアマークの位置ずれ量をそれぞれ(Δxc,Δyc),(Δxd,Δyd)とする。この場合、位置ずれ量Δxa,Δxbの差よりX方向のショット倍率rxの誤差Δrxが求められ、位置ずれ量Δyc,Δydの差よりY方向のショット倍率ryの誤差Δryが求められ、位置ずれ量Δya,Δybの差分よりショット回転θの誤差Δθが求められ、位置ずれ量Δxc,Δxdの差分、及びその誤差Δθよりショット直交度wの誤差Δwが求められる。
【0051】
更に、その他の基準計測領域内で求めたショット内パラメータの誤差Δrx,Δry,Δθ,Δwの平均値を求め、これらの平均値をショット内パラメータの補正値Δrx’,Δry’,Δθ’,Δw’として走査型露光装置1Bの制御装置10B内の記憶部に記憶する。この場合、本例の各基準計測領域は、クリティカルレイヤでもミドルレイヤでも2つのショット領域に跨っていないため、求められたショット内パラメータの補正値は、クリティカルレイヤでのステッピング誤差、及びミドルレイヤでのステッピング誤差の影響が除去された正確な値である。
【0052】
これに対して、例えば図4で2つのショット領域SDr及びSD(r+1)に跨る中央のショット領域SC(q+1)を基準計測領域として、この基準計測領域内の2つのショット領域SDr及びSD(r+1)上に計測点37B及び37Aを設定する場合を想定する。この場合、2つの計測点37B及び37Aでの2つのバーニアマークの位置ずれ量にはミドルレイヤのステッピング誤差が独立に混入しているため、例えばそれらの位置ずれ量の和からY方向のショット倍率ryの誤差を算出しても、その誤差にはステッピング誤差も混入していることになる。この意味では、仮に基準計測領域が何れかの層の複数のショット領域に跨っていても、その基準計測領域内の複数の計測点を複数のショット領域に跨らないように設定するようにしても、ステッピング誤差の混入を防止できる。なお、バーニアマークの位置ずれ量が別の計測装置で計測され、別のコンピュータ等によってそれらのショット内パラメータの補正値が求められたときには、オペレータが入力装置を介して、又はその別のコンピュータからのオンライン通信によって制御装置10Bにそれらの補正値を入力することになる。これによって第3工程が終了する。
【0053】
その後、図1のファインステッパー1A、及び走査型露光装置1Bを用いてミックス・アンド・マッチ方式で露光を行う場合、ウエハ上にファインステッパー1Aでクリティカルレイヤのパターンを形成した後、走査型露光装置1Bでミドルレイヤのパターンを露光する前に、先ず所定のサンプルショット内の多点のウエハマークの座標計測を計測し、この結果より6個のウエハ上のEGAパラメータ、及び4個のショット内パラメータの値を求める。その後、制御装置10Bでは、求められたショット内パラメータ(rx,ry,θ,w)に対して上述の第3工程で記憶された補正値(Δrx’,Δry’,Δθ’,Δw’)を加算して補正後のショット内パラメータを求める。そして、制御装置10Bは、先ず6個のウエハ上のEGAパラメータを用いてクリティカルレイヤの各ショット領域の座標位置を算出し、この座標位置に基づいてミドルレイヤの各ショット領域の露光位置を算出し、この露光位置に基づいて順次ミドルレイヤのショット領域の位置決め(例えば走査開始位置の設定)を行う。そして、走査型露光装置1Bでは、補正後のショット内パラメータの値に応じて結像特性の補正を行いつつ、各ショット領域に走査露光方式でレチクルのパターンを露光する。この場合、本例では補正後のショット内パラメータの値が正確であるため、クリティカルレイヤとミドルレイヤとの重ね合わせ精度が従来例より向上している。
【0054】
次に、本発明による実施の形態の他の例につき図5及び図6を参照して説明する。先ず、図5の例は、図5(a)に示すクリティカルレイヤのショット領域SA内には1つのチップパターンが配列され、図5(b)に示すミドルレイヤのショット領域SB内では、X方向に2列でY方向に2行の合計4個の同一のチップパターンが配列される場合である。また、クリティカルレイヤの露光装置は縮小倍率が1/5倍の一括露光方式の投影露光装置(ステッパー)であり、ミドルレイヤの露光装置は縮小倍率が1/2.5倍のステッパーである。
【0055】
このとき、クリティカルレイヤのショット領域SAのX方向の幅をd、Y方向の幅をcとすると、ミドルレイヤのショット領域SBのX方向の幅は2d、Y方向の幅は2cとなる。従って、ショット領域SAに対してショット領域SBはX方向、Y方向にそれぞれ2/1倍である。従って、図5(c)に示すように、クリティカルレイヤの4個のショット領域と、ミドルレイヤの1個のショット領域とが重なった領域39において、ショット領域SAとショット領域SBとが跨らずに重なる領域、即ちクリティカルレイヤの各ショット領域SAそのものが基準計測領域となる。そこで、例えばその内の1つの基準計測領域39aにおいて、2つの計測点40A及び40Bを設定し、これらの計測点40A,40Bで2層のバーニアマークの位置ずれ量を計測することにより、ショット内パラメータ内の例えばショット倍率rx、及びショット回転θの補正値を正確に求めることができる。
【0056】
更に、図6の例は、図6(a)に示す1層目のショット領域SE内にはX方向に2列でY方向に3行の6つの同一のチップパターンが配列され、図6(b)に示す2層目のショット領域SF内では、Y方向に3個の同一のチップパターンが配列される場合である。また、ショット領域SEよりなる1層目用の露光装置はステッパーであり、ショット領域SFよりなる2層目用の露光装置はステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。
【0057】
このとき、ショット領域SEのX方向の幅を2b、Y方向の幅を3aとすると、ショット領域SFのX方向の幅はb、Y方向の幅は3aとなる。即ち、ショット領域SEに対してショット領域SFはX方向に1/2倍、Y方向に1/1倍である。従って、図6(c)に示すように、1層目の1個のショット領域と、2層目の2個のショット領域とが重なった領域41において、ショット領域SEとショット領域SFとが跨らずに重なる領域、即ち2層目の各ショット領域SFそのものが基準計測領域となる。そこで、例えばその内の1つの基準計測領域41aにおいて、2つの計測点42A及び42Bを設定し、これらの計測点42A,42Bで2層のバーニアマークの位置ずれ量を計測することにより、ショット内パラメータ内の例えばショット倍率ryの補正値を正確に求めることができる。
【0058】
なお、上述の実施の形態では、2台のステッパー、又はステッパーとステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置との組合せを使用しているが、例えば露光フィールドの大きさの異なる2台の露光装置としてそれぞれ別のステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置を使用してもよい。
このように本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【0059】
【発明の効果】
本発明の第1及び第3の露光方法によれば、設定された基準計測領域は2層(例えばクリティカルレイヤとミドルレイヤ)の何れでも複数のショット領域に跨っていないため、その基準計測領域内の計測点で計測される2つの重ね合わせ精度計測用マークの位置ずれ量には、ステッピング誤差が含まれていない。従って、その位置ずれ量に基づいて、位置合わせの際の座標、又は結像特性の補正を行うことにより、2層間の重ね合わせ精度を向上できる利点がある。
【0060】
本発明の第2の露光方法によれば、複数の第1のショット領域中の任意の1つと複数の第2のショット領域中の任意の1つとがはみ出すことなく(跨ることなく)重なった領域を基準計測領域として、所定の基準計測領域内に設定された計測点で2層の重ね合わせ精度計測用のマーク(バーニアマーク)の位置ずれ量を計測している。従って、第1のショット領域、及び第2のショット領域のステッピング誤差の影響を受けることなく、正確に位置合わせ用マーク(ウエハマーク)の像の位置を検出する際の補正値を求めることができ、その結果として、ミックス・アンド・マッチ方式でクリティカルレイヤとミドルレイヤとが混在するような基板に露光を行う場合に、そのクリティカルレイヤのパターンとミドルレイヤのパターンとの重ね合わせ精度を高めることができる利点がある。また、そのステッピング誤差の他に、第1層目のショット領域間、及び第2層目のショット領域間の所謂継ぎ合わせ誤差の影響もそれぞれ除去されている利点がある。
【0061】
また、第3工程において求められる補正値が、位置合わせ用マークの像の位置に基づいて算出される所定の結像特性を示すパラメータの補正値であり、その所定の結像特性を示すパラメータは、ショット倍率、ショット回転、及びショット直交度よりなるパラメータ群から選択される少なくとも1つのパラメータである場合、所謂ショット内パラメータの補正値を高精度に求めることができる。従って、この補正後のショット内パラメータを使用することにより、結像特性を高精度に補正できる。
【0062】
また、第1の露光装置が一括露光方式の投影露光装置であり、第2の露光装置が走査露光方式の投影露光装置である場合には、特に2つの露光装置の露光フィールドの大きさが異なる場合が多いため、本発明の露光方法は有効である。また、走査露光方式の投影露光装置では、露光時にショット倍率、ショット回転、及びショット直交度を容易に補正できるため、本発明の方法で補正したパラメータを使用することにより2層間の重ね合わせ精度を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による露光方法の実施の形態の一例で使用される露光システムの概略を示す斜視図である。
【図2】(a)はその実施の形態の一例のウエハW上でのクリティカルレイヤのショット配列を示す平面図、(b)はそのクリティカルレイヤのショット領域内でのバーニアマークの配列を示す拡大平面図である。
【図3】(a)は図2(a)のクリティカルレイヤ上に露光されるミドルレイヤのショット配列を示す平面図、(b)はそのミドルレイヤのショット領域内での2層のバーニアマークの配列を示す拡大平面図である。
【図4】図3(a)のウエハ上に設定される基準計測領域、及び計測点の一例を示す拡大平面図である。
【図5】クリティカルレイヤのショット領域に比べてミドルレイヤのショット領域がX方向に2倍、且つY方向に2倍の場合の基準計測領域の定め方の説明に供する図である。
【図6】1層目のショット領域が一括露光方式で露光され、2層目のショット領域が走査露光方式で露光され、且つ1層目のショット領域が2層目のショット領域より広い場合の基準計測領域の定め方の説明に供する図である。
【図7】(a)は従来のウエハW上でのクリティカルレイヤのショット配列を示す平面図、(b)は図7(a)の1つのショット領域内でのバーニアマークの配列を示す拡大平面図である。
【図8】(a)は図7(a)のショット領域上に露光されるミドルレイヤのショット配列及び計測点の配列を示す平面図、(b)はミドルレイヤの1つのショット領域内での2層のバーニアマークの配列を示す拡大平面図である。
【符号の説明】
1A ファインステッパー
1B 走査型露光装置
3A,3B 投影光学系
4A,4B 露光フィールド
5A,5B ウエハステージ
11A,11B アライメント系
W ウエハ
SC1〜SCQ,SCq クリティカルレイヤのショット領域
SD1〜SDR,SDr ミドルレイヤのショット領域
21XA,21XB X軸用のウエハマーク
21YA,21YB Y軸用のウエハマーク
31A〜31E,32A〜32E クリティカルレイヤのバーニアマーク
33A〜33E,34A〜34E,35A〜35E ミドルレイヤのバーニアマーク
36A〜36D,36E〜36H 計測点
Claims (7)
- 互いに大きさの異なる露光フィールドを有する第1及び第2の露光装置を用いて、感光基板上にマスクパターンを重ねて露光する露光方法において、
前記第1及び第2の露光装置を用いて評価用の感光基板上に順次、重ね合わせ精度計測用マークの形成された第1及び第2のマスクパターンを重ねて転写露光し、
前記評価用の感光基板上で前記第1の露光装置の露光フィールドを単位とする複数のショット領域、及び前記第2の露光装置の露光フィールドを単位とする複数のショット領域のいずれにも跨っておらず、前記第1の露光装置の露光フィールドを単位とするショット領域と前記第2の露光装置の露光フィールドを単位とするショット領域とが互いにはみ出すことなく重なった基準計測領域内の所定の計測点で、重ねて転写露光された前記重ね合わせ精度計測用マークの像の位置ずれ量を計測し、
該計測結果に基づいて、前記第1の露光装置で露光された感光基板上に前記第2の露光装置で露光する際の位置合わせ、又は結像特性の補正を行うことを特徴とする露光方法。 - 露光対象とする感光基板上で所定の大きさの第1の露光フィールドを有する第1の露光装置と、前記第1の露光フィールドに対して直交する第1、及び第2の方向に対してそれぞれM1/N1 倍(M1,N1 はM1 ≠N1 なる整数)、及びM2/N2 倍(M2,N2 は整数)の大きさの第2の露光フィールドを有する第2の露光装置とを用いて、前記感光基板上にマスクパターンを重ねて露光する露光方法において、
前記第1の露光装置を用いて、位置合わせ用マーク及び第1の重ね合わせ精度計測用マークの形成された第1のマスクパターンを、前記第1の露光フィールドを単位として感光基板上に配列された複数の第1のショット領域に順次露光する第1工程と;
前記第2の露光装置を用いて、第2の重ね合わせ精度計測用マークの形成された第2のマスクパターンを、前記第1工程で露光された前記感光基板上に前記位置合わせ用マークの像の位置を基準として前記第2の露光フィールドを単位として配列された複数の第2のショット領域に順次露光する第2工程と;
前記感光基板上で複数の前記第1のショット領域、及び複数の前記第2のショット領域のいずれにも跨っておらず、複数の前記第1のショット領域中の任意の1つと複数の前記第2のショット領域中の任意の1つとがはみ出すことなく重なった複数の領域をそれぞれ基準計測領域として、該複数の基準計測領域から選択された所定個数の基準計測領域内で互いに同じ位置にある前記第1の重ね合わせ精度計測用マークの像と前記第2の重ね合わせ精度計測用マークの像との位置ずれ量を計測し、該計測された位置ずれ量に基づいて前記第2の露光装置で前記第1の露光装置により露光された前記位置合わせ用マークの像の位置を検出する際の補正値を求める第3工程と;を有することを特徴とする露光方法。 - 請求項2に記載の露光方法であって、
前記第3工程において求められる補正値は、前記位置合わせ用マークの像の位置に基づいて算出される所定の結像特性を示すパラメータの補正値であり、
該所定の結像特性を示すパラメータは、ショット倍率、ショット回転、及びショット直交度よりなるパラメータ群から選択される少なくとも1つのパラメータであり、
前記第3工程の後、前記第1の露光装置で露光された感光基板上に前記第2の露光装置を用いて重ね合わせ露光する際に、前記第3工程で求めた補正値を用いて結像特性の補正を行うことを特徴とする露光方法。 - 請求項2又は3に記載の露光方法であって、
前記第1の露光装置は一括露光方式の投影露光装置であり、前記第2の露光装置は走査露光方式の投影露光装置であることを特徴とする露光方法。 - 第1の露光装置で露光された感光基板を、前記第1の露光装置の露光フィールドと大きさの異なる露光フィールドを有する第2の露光装置で露光する露光方法において、
前記第1の露光装置で重ね合わせ精度計測用のマークが形成された第1マスクパターンが転写露光された感光基板上に、前記第2の露光装置を用いて重ね合わせ精度計測用のマークが形成された第2マスクパターンを重ねて転写露光し;
前記第1及び第2マスクパターンが重ねて転写露光された感光基板上で前記第1の露光装置の露光フィールドを単位とする複数のショット領域、及び前記第2の露光装置の露光フィールドを単位とする複数のショット領域のいずれにも跨っておらず、前記第1の露光装置の露光フィールドを単位とするショット領域と前記第2の露光装置の露光フィールドを単位とするショット領域とが互いにはみ出すことなく重なった基準計測領域内の所定の計測点で、前記第1の露光装置で露光された重ね合わせ精度計測用マークの像と前記第2の露光装置で転写露光された重ね合わせ精度計測用マークの像との位置ずれ量を計測し;
該計測結果に基づいて、前記第1の露光装置で露光された感光基板上に前記第2の露光装置で露光する際の位置合わせ、又は結像特性の補正を行うことを特徴とする露光方法。 - 前記第1の露光装置は一括露光方式の投影露光装置であり、前記第2の露光装置は走査露光方式の投影露光装置であり、
前記第2の露光装置の露光フィールドは、前記第1の露光装置の露光フィールドに対して直交する第1、及び第2の方向に関してそれぞれM1/N1 倍(M1,N1 はM1 ≠N1 なる整数)、及びM2/N2 倍(M2,N2 は整数)の大きさであることを特徴とする請求項5に記載の露光方法。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の露光方法であって、
前記基準計測領域は、前記第1の露光装置で複数のショット領域を露光するときのステッピング誤差、及び前記第2の露光装置で複数のショット領域を露光するときのステッピング誤差の影響を受けないように選択されることを特徴とする露光方法。
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