JP3624804B2 - 耐リジング性フェライト系ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼の製造方法、特に表面疵が無く耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法に関する。より詳しくは、連続鋳造における浸漬ノズルの閉塞を防止し、その鋳片組織が等軸晶微細組織であり、さらにその鋳片に熱間圧延等の熱間加工を行ってもTi系非金属介在物による表面疵を生ずることがなく、そして最終製品としての冷延鋼板の耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、Ti含有フェライト系ステンレス鋼を製造する場合に、ストリーク疵またはスリバー疵と呼ばれる表面疵の発生が問題となっている。この表面疵の発生は従来よりTi、Al系非金属介在物からの次の2つのクラスター生成機構に起因すると考えられている。
【0003】
第一は、Ti、Alは極めて活性な金属であるため、添加時に溶鋼中のO、Nと反応して酸化物、または窒化物を生成し、この生成した非金属介在物が例えば鋳型内溶鋼において比重差により浮上しようとする際に相互に凝集し合ってクラスター化するというのである。
【0004】
第二は、鋳型注入以前にすでに溶鋼内に存在していたTi、Al系非金属介在物が、溶鋼との濡れ性が悪いため、鋳型注入時の浸漬ノズル通過の際にノズル内壁に付着し、この付着現象により凝集してクラスター化するというのである。この付着・凝集により生成したクラスターはノズルを流れる溶鋼流によってしばしば部分的にノズル内壁より剥離して注入流により鋳型内に持ち込まれる。
【0005】
この鋳型内での相互の凝集とノズル部での付着凝集という2つの機構によって生成したTi、Al系非金属介在物クラスターは,鋳型内において溶鋼より浮上分離しようとするが,溶鋼の凝固が進行するため浮上分離に必要な時間が与えられず、しばしば鋼塊内部または表面に捕捉される。鋼塊表面に捕捉されたTi、Al系非金属介在物は鋼のような変形能がないため鋼塊の熱間加工時に表面において線状の疵を形成する。
【0006】
この表面疵は製品の美観を損なう。特にTi含有フェライト系ステンレス鋼にとっては、この表面疵の発生による製品の品質低下が後述するリジングと並んで大きな問題であり、これの防止対策が強く望まれていた。
【0007】
一方、チタン添加鋼の連続鋳造に際してはノイズ閉塞がしばしば起こり、製造コストの上昇は避けられなかった。
このような表面疵の防止やノズル閉塞の防止については、特公昭58−57487号公報や、特許第2867888号公報に開示の技術がある。
【0008】
前者は、鋼中のAlとTi含有量がAl/Tiの比で0.08〜0.15となるように溶鋼のAl量を調整する方法である。後者は、Al/Tiの比で0.75/100.025Cr+1.1 以下となるように溶鋼のAl量を調整し、さらにCa量を0.0001〜0.0010%に調整するものである。しかしながら、これらの方法は、表面疵防止やノズル閉塞防止には効果的であっても、製品のリジング防止に対してはなんら考慮がなされていなかったし、実際、そのような効果はみられない。
【0009】
ところで、前述のように、連続鋳造スラブを熱間圧延して製造されたフェライト系ステンレス鋼板は、冷間加工に際してリジングと呼ばれる表面シワ状欠陥を生じやすい。このリジングは表面疵同様に、製品の美観を損なう。リジングによる凹凸が大きいとそれを研磨除去しなければならず、そのため余分の工程が必要となる。
【0010】
リジングの発生原因は、次のように考えられている。
すなわち、連続鋳造によって製造されたフェライト系ステンレス鋼スラブは、その凝固過程で柱状晶が発達しやすい。この柱状晶は熱間加工によって再結晶しにくいので、柱状晶に起因したバンド状粗大「コロニー」が最終製品にまで残留しやすい。なお、「コロニー」とは、見かけは微細な結晶組織に見えるが、実際は結晶方位の類似した結晶群のことをいう。このコロニーが、プレス成形を受けると単結晶のように塑性変形し、鋼板に大きな畝状のシワが発生する。
【0011】
フェライト系ステンレス鋼板のリジングの問題については従来にあってもあらゆる面から改善が提案されている。その根本的な解決手段は連続鋳造スラブにおける柱状晶の成長を抑制し等軸晶帯を大きくすることである。
【0012】
フェライト系ステンレス鋼連鋳スラブの等軸晶率を高める技術としては、例えばTiNの核作用による方法(鉄と鋼,66(1980)、110頁)や、溶鋼の電磁攪拌による方法(鉄と鋼、66(1980)、38頁)や、Al脱酸後Tiを添加し、鋼中のTiとAlの含有量をTi/Alの比で8以上に調整する方法(特開平9−49010号公報)等が報告されている。
【0013】
しかし、TiNにより連鋳スラブの等軸晶率を高める方法は、例えば、0.4質量%程度のTiや0.016質量%程度のNを鋼に含有させて、TiNを溶鋼中に多量に析出させることが必要である。しかも、連続鋳造に際して溶鋼の過熱度ΔTを40℃以下にするなどの条件を組み合わせなければ等軸晶率の高い(具体的には,60%以上の)凝固組織が得られない。
【0014】
さらに、多量のTiNは、前記のように表面疵の原因となり、リジング防止との両立が困難となる問題がある。
一方、△Tを小さく制御することは、必ずしも容易なことではなく、一旦ΔTが小さくなりすぎた溶鋼は鋳造できないため、再度昇熱作業を必要とするなどの大きな問題を引き起こす。
【0015】
鋳型に電磁攪拌装置を設けて行う電磁誘導撹拌による方法の場合には、凝固途中の鋳片に対し溶鋼の撹拌位置を適正化することによって、40〜60%の等軸晶率を安定して確保することができる。しかし、より高い等軸晶率を得るには、やはりΔTを25℃未満の低い値に制御する必要がある。
【0016】
Ti、Al含有量を調整する方法でも、連鋳スラブの等軸晶率を高められるが、表面疵防止に対してはなんら考慮がなされていなかった。
さらに、Ti添加フェライト系ステンレス鋼の表面疵を防止し、連鋳スラブの等軸晶率を高める製造技術が、特許第2623606号において提案されている。同特許では、対象とするフェライト系ステンレス鋼の凝固温度T1 、鋳込み温度T2 、TiN析出温度T3 が、条件: T1 ≦T3 <T2 ≦T1 +100℃を満たした場合に,耐ローピング性(リジングと同じ)と表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼を安定して製造できるとしている。この方法は、T1 ≦T3 を満たすTi、N量を含有するフェライト系ステンレス鋼において、TiNによる表面疵を防止すると共に連鋳スラブの等軸晶率を70%以上に高めるものである。しかしながら、T1 >T3 の場合、即ちTiN量が低下した場合は、連鋳スラブの等軸晶率を高めることができず、良好な耐リジング性を有するフェライト系ステンレス鋼を製造することができなかった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、連続鋳造スラブを熱間加工、焼鈍、冷間加工、焼鈍などの製造工程を経て最終製品を製造する過程において表面疵を生じることが少なく、かつ最終製品の耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法を提供することにある。
【0018】
具体的には、本発明の課題は、スラグ組成、溶鋼の化学組成、脱酸時期を決めて連続鋳造することで、ノズルを閉塞することなく、等軸晶率60%以上の連鋳スラブが製造でき、そのスラブを熱間加工、焼鈍、冷間加工、焼鈍などの製造工程を経て最終製品を製造する過程においてTi、Al非金属介在物による表面疵を生じることのない、最終製品の耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明者らは、上記目的を達成すべくTi含有フェライト系ステンレス鋼の精錬、連続鋳造工程において、(溶鋼中の成分、精錬方法)と(ノズル付着物、スラブ等軸晶率、表面疵)の関係に着眼して鋭意試験研究を重ねた。その結果、まず次の知見を得た。
【0020】
▲1▼特許第2623606号公報に記載のある条件を満たさない鋼、即ち「T1 >T3 」であっても、鋼中のAl/Ti比を0.1以下にて、スラブ等軸晶率が60%以上となる場合がある。しかし、表面疵が多発する場合がある。
【0021】
▲2▼この表面疵の原因となった非金属介在物を分析すると、浸漬ノズル付着物に近い組成であった。その付着物は、TiNでなく、Ti、Al系非金属介在物であった。
【0022】
▲3▼ノズル付着物の形態は、溶鋼の化学組成のみならず精錬方法にも依存する。特に、0.30%以下の比較的少ないTiを含有するフェライト系ステンレス鋼の場合、Al脱酸またはCaO−Al2 O3 系スラグ脱酸工程よりも、CaO−SiO2 系スラグ脱酸工程にて精錬、連続鋳造した方が、ノズル付着物が少なくなる傾向がある。
【0023】
これらの知見をもとに、さらに、本発明者らは次の実験を行った。
C:0.06%、Si:0.3%、Cr:16.2%、N:0.015%を含有した鋼17kgを、真空溶解炉にて溶製し、溶鋼の上に塩基度CaO/SiO2 を変化させたCaO−SiO2 系スラグを溶融させた。例えば、塩基度2.0のスラグ組成は50%CaO−25%SiO2 −5%Al2 O3 −10%MgO−10%CaF2 とした。
【0024】
スラグ溶融後、溶鋼に27gのTiと種々の量のAlを添加し、溶鋼の温度を約1600℃で10分以上保持した。その後、溶鋼をMgO製タンディッシュに注ぎ、50mm厚さ、180mm幅、230mm高さの鋳型に鋳造した。
【0025】
その鋳片の鋳込み方向断面のマクロ組織を王水にて現出し、等軸晶率を測定した。また、鋳片に含まれるTi、酸可溶Alの化学分析を行い、Al/Tiを求めた。
【0026】
さらに、鋳込みままの鋳片を4.5mm厚に熱間圧延し、935℃で1分均熱の焼鈍処理を行い、硫酸浸漬、硝弗酸浸漬による酸洗により脱スケールを行った。酸洗鋼板に発生した表面疵を目視により観察した。
【0027】
化学分析により、各鋳片のTi量は0.07〜0.12%、Al量は0.0003〜0.013%の範囲に有ることが判明し、Al/Tiは0.006〜0.13の範囲となった。
【0028】
図1に、鋳片の等軸晶率とその溶製に用いたスラグの塩基度及び鋳片のAl/Ti量比の関係を示す。図中の○印が等軸晶率60%以上であった鋳片、×印が60%未満であった鋳片を示す。
【0029】
図1に示すように、塩基度≧1.2、Al/Ti=0.01〜0.10の範囲で等軸晶率60%以上の鋳片が得られた。
図2に、酸洗鋼板の表面疵発生とその溶製に用いたスラグの塩基度及び鋳片のAl/Ti量比の関係を示す。図中の○印が表面疵が無かった鋼板、×印が表面疵が発生した鋼板を示す。図2に示すように、塩基度=1.2〜2.4,Al/Ti≦0.10の範囲で表面疵の無い酸洗鋼板が得られた。
【0030】
よって、溶鋼の化学組成、スラグ組成、脱酸方法を決めて連続鋳造することで鋳片の等軸晶率を60%以上とし、表面疵の防止ができることを知見して本発明を完成した。
【0031】
すなわち、本発明の要旨とするところは次の通りである。
(1)Ti:0.05〜0.30質量%、Cr:10〜30質量%を含むフェライト系ステンレス鋼を連続鋳造するにあたり、脱炭精錬後にSi還元を行い、次いで、鋼中Si量を0.20〜3.0質量%で塩基度CaO/SiO2=1.2〜2.4のCaO−SiO2系スラグ脱酸を行った後、Tiを溶鋼に添加し、TiとAl含有量がAl/Ti=0.01〜0.10である溶鋼を連続鋳造することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
【0032】
(2) 前記溶鋼がCa: 0.0001〜0.0030質量%を含有することを特徴とする上記(1) に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
【0033】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学組成の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
【0034】
(A)鋼の化学組成
Ti:0.05〜0.30%
Tiは、連続鋳造スラブの等軸晶率を高めるのに必須の元素である。さらに、鋼中のC、Nと結合して炭化物、窒化物を形成し、固溶C、N量を低減してフェライト系ステンレス鋼の耐食性、加工性を向上させる作用も有する。しかし、その含有量が0.05%未満では安定して60%以上の等軸晶率を有する連鋳スラブが得られない。一方、0.30%を超えて含有させると、等軸晶率向上には有効であるが、Ti系非金属介在物の溶鋼中の凝集によるノズル閉塞や製品の表面疵が発生しやすくなる。
【0035】
従って、Ti含有量を0.05〜0.30%とした。より良好な表面性状を得るためには、Ti量の上限値を0.20%とすることが好ましい。
Si:0.20〜3.0%
Siは、精錬時に生成するCr酸化物の還元と脱酸に有用な元素である。しかし、その含有量が0.20%未満でCaO−SiO2 系スラグ脱酸を行った場合、溶鋼中の酸素量が増大するため、連続鋳造時にノズル閉塞が誘発される。一方、3.0%を超えると加工性や靱性が著しく劣化する。
【0036】
したがって、スラグ脱酸を行う際の溶鋼中のSiの含有量を0.20〜3.0%とした。より良好な加工性や靱性を得るためには、Si量の上限値を1.5%とすることが好ましい。
【0037】
Al:(0.01×Ti含有量)〜(0.10×Ti含有量)%
Alは、連続鋳造スラブの等軸晶率を高めるのに必須の元素である。さらに、微量であっても脱酸に有用な元素であり、ノズル閉塞を防止する作用も有する。しかし、その含有量が(0.01×Ti含有量)%未満では、連続鋳造スラブの等軸晶率が著しく低下する。一方、(0.10×Ti含有量)%を超えて含有させると、等軸晶率が低下するばかりでなくAl系非金属介在物によるノズル閉塞が生じやすくなる。
【0038】
従って、Al含有量を(0.01×Ti含有量)〜(0.10×Ti含有量)%とした。すなわち、Al/Tiを0.01〜0.10とした。
目標の等軸晶率をより確実に得るためには、Al/Tiの下限値を0.02とすることが好ましい。またより良好な表面性状を得るためには、Al/Tiの上限値を0.08とすることが好ましい。
【0039】
Ca:0.0001〜0.0030%
本発明の好適態様によれば、Caは、連続鋳造に先立って上記範囲にあればよい。そのため添加しなくてもよい。添加することでより多くの量のCaが存在すれば、溶鋼中の脱酸生成物を低融点化し連続鋳造時のノズル閉塞防止に有効である。また、連鋳スラブの等軸晶粒径を微細化する作用も有する。
【0040】
しかし、その含有量が0.0001%未満では粒径の微細化効果に乏しい。一方、その含有量が0.0030%を超えて含有させると、連鋳スラブの等軸晶率が低下すると共に、鋼の耐食性とりわけ耐孔食性が著しく低下する。従って、Ca含有量を0.0001〜0.0030%とした。また良好な耐孔食性と靱性を得るためには、Caの上限値を0.0010%とすることが好ましい。
【0041】
(B)精錬の方法
例えば、転炉における脱炭精錬後のSi還元と、CaO−SiO2 系スラグ脱酸精錬は、取鍋やタンディッシュにおいて行ってもよく、そのときの条件も通常の方法におけるそれでよい。しかし、塩基度CaO/SiO2 とTi、Al添加時期については以下の限定を受ける。
【0042】
塩基度CaO/SiO2 :1.2〜2.4
Si含有合金を添加するなどして行うSi還元により、スラグ中のCr酸化物が還元され、代わりにSiO2 がスラグに生成する。このようにして行われるCaO−SiO2 系スラグ脱酸を効率的に行うには、CaOをスラグに添加し、塩基度を適切にする必要がある。塩基度が1.2未満では、脱酸力が弱いため溶鋼中の酸素量が増加する。このような溶鋼に後の段階でTiを添加すると、Ti系非金属介在物が多量に生成しノズル閉塞を生じる。
【0043】
一方、塩基度2.4を超えるとスラグの融点が上昇しスラグが固体化する。その結果の脱酸反応が十分に進行せず、10μmを超えるような大型脱酸生成物が溶鋼中を浮遊しやすくなり、ノズル閉塞を誘発する。
【0044】
従って、スラグの塩基度を1.2〜2.4とした。ノズル閉塞防止と連鋳スラブの等軸晶率向上をより高い精度で同時に得るためには、塩基度の下限を1.6、上限を2.2とするのが好ましい。このときのスラグ塩基度は、Ti添加前のスラグ組成にて決定される。
【0045】
Ti、Al添加時期
Ti添加は、CaO−SiO2 系スラグ脱酸の後に行う。この順序を逆にした場合、Tiの添加歩留まりが著しく低下するばかりか、ノズル閉塞が生じ連鋳スラブの等軸晶率を60%以上に安定して確保できなくなる。
【0046】
従って、Tiの添加時期は、CaO−SiO2 系スラグ脱酸後とする。具体的にはSi還元、それに続くスラグ脱酸によって[O] ≦25ppm となるまで脱酸してからである。なお、[O] 値は測酸、測温プローブによる測定値 (活量酸素量) である。
【0047】
Al添加時期は、Tiのように厳密でなくてもよい。但し、Al/Tiの狙いを安定して的中させるには、なるべく CaO−SiO2脱酸後にAlを添加するのが好ましい。
ここに、本発明におけるノズル閉塞防止や等軸晶生成のメカニズムは次のように推定される。
【0048】
CaO−SiO2 系スラグ脱酸により大型の脱酸生成物が浮上分離され、溶鋼中にはサブミクロン程度のSi系脱酸生成物が多数浮遊していると考えられる。この時期にTi、Alを添加すると、浮遊していたSi系脱酸生成物がTi−Al系脱酸生成物に急速に置換され、より一層脱酸平衡が低下する。この時Al/Tiを前述したように調整すると、その脱酸生成物と溶鋼との濡れ性が著しく向上する。そのため、脱酸生成物は、連続鋳造に際し浸漬ノズルに付着することなく,鋳型内に流入する。
【0049】
鋳型内では、溶鋼の温度が下がりやがて凝固が始まる。このときの溶鋼温度の低下に伴い、さらに溶鋼との濡れ性のよいTi−Al系脱酸生成物が多量に晶出する。この脱酸生成物を核として柱状晶凝固から等軸晶凝固へと遷移し、最終的に等軸晶率の高い連鋳スラブが製造できる。
【0050】
このようにして製造された連鋳スラブは熱間圧延、さらに冷間圧延によって最終製品であるフェライト系ステンレス鋼板となるが、これらの加工条件は慣用のものであればよく、特に制限されない。
【0051】
次に、本発明の作用効果を実施例に関連させてより具体的に示す。
【0052】
【実施例】
表1に示すフェライト系ステンレス鋼70tonをVOD炉において精錬するに際して、脱炭精錬後にSi還元し、CaO−SiO2 系スラグ脱酸精錬を行った。その後、VOD炉においてTi、Al、Caを添加し、溶鋼過熱度ΔTを30〜70℃として200mm厚さ、1050mm幅に連続鋳造した。
【0053】
なお、表1における鋼3、4、6、8は化学組成、Al/Ti比、及びスラグ塩基度が本発明で規定する範囲内にある本発明例である。
鋼1、2、5、7、9、10は化学組成やAl/Ti比のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例である。
【0054】
これらの化学組成をもった溶鋼を連続鋳造後、使用した浸漬ノズルを回収し付着物の厚さを測定した。また、連鋳スラブの鋳造方向に垂直な断面の幅中央部(200mm厚さ、100mm幅)を王水で腐食してその等軸晶率を測定した。そして、3/8厚さ部(表皮下75mm)の結晶粒径を切片法により求めた。この時、求められた平均切片長さLより、平均粒径Dを、式:D=1.12Lにより求めた。また、等軸晶率は、等軸晶粒と柱状晶粒の面積比率より求めた。
【0055】
これらの連鋳スラブは、その表面を研削することなく通常の方法で1100〜1250℃に加熱して、厚さ3.2mmに熱間圧延した。得られた熱延鋼板を焼鈍後、酸洗により脱スケールし、酸洗鋼板表面の疵を観察した。
【0056】
次いで、酸洗鋼板は、厚さ0.8mmに冷間圧延し、焼鈍および酸洗を行った後、スキンパス圧延を行って2B鋼板を製造した。
このようにして製造した2B鋼板より圧延方向にJIS5号引張試験片を各2本採取し、20%引張変形後にリジンググレードを標準サンプルを用いて目視により判定した。標準サンプルのリジングによる表面うねり高さは以下の通りである。
【0057】
なお、本発明が目標とするリジンググレードは指標AとBである。
【0058】
表2に各試験の評価結果を示す。
本発明によれば、浸漬ノズルへの付着量が少なく、連鋳スラブの等軸晶率も77%以上となった。また、そのスラブより製造された鋼板には、表面疵が発生せず、耐リジング性に優れている。
【0059】
Ti量が本発明の下限値未満であった鋼1、2のスラブの等軸晶率は、10、40%と低かった。
Si、Ti量が本発明の範囲を外れた鋼10を連続鋳造した場合、浸漬ノズルへ付着厚さが15mmとなり、その熱間圧延後の酸洗鋼板の表面にはTi系非金属介在物による多数の疵が発生した。Ca添加を実施した鋼4の場合、スラブの等軸晶粒径は、それを実施しなかった鋼3の場合のスラブのそれより小さく、鋼4から製造された2B鋼板はリジンググレードがAと良好であった。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【発明の効果】
本発明のフェライト系ステンレス鋼の製造方法によれば,連続鋳造時にノズル閉塞が防止でき、連鋳スラブの組織が等軸晶率70%以上となる。さらに、このスラブを熱間加工しても非金属介在物による表面疵が発生せず、耐リジング性に優れた鋼板が得られる。このため、スラブや熱間加工した鋼材の手入れが不要となるので製造工程が短縮でき、製品歩留まりも向上する。
【0063】
したがって、本発明の製造方法によれば、表面疵やリジングが殆ど発生しない高品質の製品を比較的低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳片の等軸晶率とスラグの塩基度及び鋳片のAl/Ti量比との関係を示すグラフである。
【図2】鋼板の表面疵発生とスラグの塩基度及び鋳片のAl/Ti量比との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- Ti:0.05〜0.30質量%、Cr:10〜30質量%を含むフェライト系ステンレス鋼を連続鋳造するにあたり、脱炭精錬後にSi還元を行い、次いで、鋼中Si量を0.20〜3.0質量%で塩基度CaO/SiO2=1.2〜2.4のCaO−SiO2系スラグ脱酸を行った後、Tiを溶鋼に添加し、TiとAl含有量がAl/Ti=0.01〜0.10である溶鋼を連続鋳造することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
- 前記溶鋼がCa:0.0001〜0.0030質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
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