JP2006206967A - 機械構造用快削鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1)C:0.2〜0.6%、Si:0.03〜1.0%、Mn:0.66〜2.0%、P:0.003〜0.2%、S:0.04〜0.20%、Pb:0.01%未満、Al:0.1%以下、およびN:0.001〜0.02%を含有し、かつMnとSの含有率が、[S%]<0.31×[Mn%]5を満足する機械構造用快削鋼の連続鋳造方法である。(2)前記(1)における機械構造用快削鋼は、さらに下記の(a)および/または(b)の群の1つ以上の群から選んだ1種以上の成分元素を含有してもよい。(a)Cu、Ni、Cr、Mo、VおよびNb、(b)Ti、Se、Te、Bi、Sn、Ca、Mgおよび希土類元素。
【選択図】図5
Description
(A)Sを0.04%以上含有する鋼が凝固するときに、凝固にともなうミクロ偏析により液相中のMnやS等の溶質濃度が増加し、MnSが晶出するが、そのときの溶解度積は、鋼中の[Mn%]と[S%]の濃度積を0.8と近似することができる。
(B)鋼の凝固過程における溶質成分の濃化比率は、MnよりSの方が著しくなるが、Sの初期濃度に対する濃化比率は、近似的にMnの初期濃度に対する濃化比率の5乗に比例する。
(C)連続鋳造凝固におけるMnおよびS成分の濃化過程で、[Mn%]と[S%]の濃度積の値が0.8以上に達したときに、化学量論的にMnがSに対して過剰であれば、鋳片に内部割れが発生するおそれがない。
(D)上記(A)〜(C)の知見から、MnおよびSの凝固前、すなわち初期の含有率が、下記(1)式の関係を満足すれば、内部割れを発生することなく、連続鋳造することが可能である。
本発明は、上記の知見に基いて完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)および(2)に示す機械構造用快削鋼の連続鋳造方法にある。
(1)質量%で、C:0.2〜0.6%、Si:0.03〜1.0%、Mn:0.66〜2.0%、P:0.003〜0.2%、S:0.04〜0.20%、Pb:0.01%未満、Al:0.1%以下、およびN:0.001〜0.02%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつMnとSの含有率が下記(1)式の関係を満足する溶鋼を連続鋳造することを特徴とする機械構造用快削鋼の連続鋳造方法。
ここで、[Mn%]はMn含有率(質量%)を、[S%]はS含有率(質量%)をそれぞれ表す。
(2)前記(1)における機械構造用快削鋼は、さらに下記の(a)および(b)の群の1つ以上の群から選んだ1種以上の成分元素を含有してもよい。
(a)群:
Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、V:0.005〜0.5%およびNb:0.005〜0.1%である。
(b)群:
Ti:0.005〜0.30%、Se:0.001〜0.01%、Te:0.001〜0.01%、Bi:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%、Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%および希土類元素:0.0005〜0.01%である。
図1は、凝固過程における固相および液相内の溶質の濃度分布を模式的に示す図である。固液界面では局所的に固相と液相との間で平衡が成立し、溶質元素に固有の平衡分配係数にしたがって、溶質元素が分配される。液相内では、溶質元素の拡散速度は充分に早いことから、溶質濃度はほぼ均一な分布となり、固相内では、固相中における溶質元素の拡散係数および溶質の濃度勾配にしたがって、固液界面から凝固相の中心方向に向かって拡散する。
次に、MnSの生成開始時にMnが過剰であれば固相線の温度低下がなく、連続鋳造時の鋳片の内部割れを低減できるとの知見は、さらにS濃度の低い鋼種においても有効ではあるが、硫黄濃度の低い鋼種では被削性能が低下し、Pbフリー快削鋼としての性能が得られない。したがって、前記(1)式の関係を規定することによる内部割れ防止効果は、S含有率が0.04質量%以上の鋼種において有効である。
以下に本発明において規定した鋼の成分組成範囲の限定理由および望ましい範囲について説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
Cは、鋼の引張強度を確保するために必要な元素であり、機械構造用鋼として必要な強度および靱性を付与させることができるので、その含有量を0.2%以上とする。一方、その含有量が0.6%を超えると、快削性の前提となる素地の加工性が損なわれる。したがって、Cの含有量を0.1〜0.6%とする。
Siは、鋼の製造プロセスにおいて鋼中の酸素濃度を低減するために、脱酸元素として用いられる有効な元素の一つである。溶鋼が充分に脱酸されていない状態で連続鋳造を行うと、鋼中に気泡が生成し、製品の欠陥を発生するばかりでなく、場合によってはブレークアウトを誘発し、操業が不可能になるという問題がある。
Mnは、MnS系硫化物を形成する元素であるとともに、焼入れ性を向上させて鋼の引張強度を増大させるのに有効な元素であり、同時に脱酸作用も有する。さらに、上記(1)式の関係をS含有量との関係で満足する必要があるためには、0.66%以上を含有する必要がある。しかし、Mnの含有量が2.0%を超えると、焼入れ性が高くなりすぎるため、被削性が損なわれる。したがって、Mnの含有量を0.66〜2.0%とし、さらに望ましいMnの含有量は0.66〜1.6%である。
Pは、鋼中の不純物元素の一つであるが、被削性を改善する効果を有する元素でもある。精錬段階において0.003%以下とするには、多大なコストがかかるため、含有率の下限を0.003%とした。被削性改善のためには望ましくは0.01%以上を含有させる。一方、Pは凝固界面における分配係数が小さいため、偏析を助長し、内部割れを悪化させ、熱間加工性を悪化させるとともに、靱性の劣化や延性の低下をもたらす。そこで、P含有率の上限を0.2%とした。Pの偏析に起因する内部割れを確実に防止するためには、含有率の上限を0.1%とするのが望ましい。
Sは、Mnまたは鋼種によってはTiなどの元素と硫化物を形成し、被削性を改善するために必要な元素である。前述の通り、Sの下限を0.04%とする。一方、Sを0.20%以上含有すると、鋼中に過剰のMnSが生成して機械構造用鋼として必要な強度および靱性を得ることができなくなる。したがって、Sの含有量を0.04〜0.20%とし、さらに望ましいSの含有量は0.04〜0.17%である。
本発明では、Pbの含有率は特に規定しないが、本発明の目的がPbを含有しなくても良好な切削性能が得られる快削鋼の製造方法を提供することにあることから、不純物レベルのPbを含有する快削鋼の製造方法は本発明の方法に含まれる。スクラップからの混入などに起因して不純物として鋼中に含有されるPb含有率は、高々0.01%程度であることを考慮すれば、本発明の方法は、Pb含有率が0.01%未満の快削鋼の製造方法が対象となる。
Alは、鋼の脱酸に有効な元素であるが、SiおよびMnで脱酸することができる。したがって、Alで脱酸処理することは特に必要でないため、Alは添加しなくてもよい。一方、Alを積極的に添加すれば、脱酸効果が高まるとともに、窒化物を形成してオーステナイト粒を微細にするので、靱性の改善効果が得られ、これらの効果はAlの含有量が0.010%以上で確実に得られる。
Nは、窒化物を形成して結晶粒を微細化し、靱性及び疲労特性を向上させる作用を有する。通常の転炉または電気炉から2次精錬を経て連続鋳造するプロセスでは、不可避的に0.001%以上を含有する。また、上記の窒化物の作用を確実なものとするためには、Nの含有量を0.001%以上とする必要がある。しかし、その含有量が0.02%を超えると窒化物が粗大になって、却って靱性の劣化を招く。したがって、Nの含有量を0.001〜0.02%とした。なお、Nの更に望ましい含有量は0.002〜0.02%である。
Cuは、鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、その効果を得るためには、0.01%以上を含有することが望ましい。一方、その含有率が1.0%を超えると鋼材の熱間加工性や被削性が低下する。そこで、Cuを含有させる場合は、その含有率の範囲を0.01〜1.0%とした。また、連続鋳造時には「スタークラッキング」と称する表面割れを誘発する元素であることから、Cuを0.03%以上含有する場合にはその1/3以上の含有率のNiを併せて含有させるのが望ましい。
Niは、固溶強化によって鋼の強度を向上させる効果を有する元素である。また、焼入れ性や靭性を改善する効果も有する。これらの効果を得るには、その含有率を0.01%以上とすることが望ましい。一方、含有率が1.0%を超えるとその効果は飽和するばかりか被削性が低下する。そこで、Niを含有させる場合は、その含有率の範囲を0.01〜1.0%とした。
Crは、鋼の焼入れ性を改善する効果を有する元素である。その効果を得るためには0.01%以上を含有させるのが望ましい。しかし、含有率が2.0%を超えると被削性を劣化させる。そこで、Crを含有させる場合は、その含有率の範囲を0.01〜2.0%とした。
Moは、鋼組織を微細化し、靱性を改善する効果を有する。その効果を得るには0.01%以上を含有させることが望ましい。しかし、1.0%を超えて含有させてもその効果は飽和し、また、Moは高価な元素であることから、コスト増加につながる。そこで、Moを含有させる場合は、その含有率の範囲を0.01〜1.0%とした。
VおよびNbは、鋼中で炭窒化物を形成し、鋼の強度を高める効果を有する元素である。その効果を得るためには、それぞれ0.005%以上を含有させるのが望ましい。しかし、Vは0.5%を、また、Nbは0.1%をそれぞれ超えて含有されると上記の効果が飽和するのみならず、炭化物や窒化物が過剰に生成し、被削性の劣化をきたす。そこで、これらの元素を含有させる場合は、その含有率の範囲を、Vについては0.005〜0.5%、Nbについては0.005〜0.1%とした。
Tiは、CまたはSとともにTi硫化物やTi炭硫化物を形成し、鋼中に微細に分散して鋼の被削性や熱間加工性を改善する効果を有する。この効果を得るためにはTiを0.005%以上含有させることが望ましい。さらに、Tiの含有率を増加すると、鋼中にTi硫化物やTi炭硫化物と金属相との共晶組織を形成し、鋼の被削性を一層改善する。この効果を得るためには0.03%以上含有させるのがより望ましい。しかし、0.30%を超えて多量に含有されると炭化物を形成するようになり、被削性を劣化させる。このため、Tiを含有させる場合の含有率の範囲は0.005〜0.30%とした。なお、より望ましいTi含有率の上限は0.20%である。
SeおよびTeは、MnとともにMn(S、Se)またはMn(S、Te)を形成し、被削性の改善に有効な元素である。また、SeやTeを含有する硫化物は、熱間加工時の硫化物の伸びを抑制する作用があるので、熱間加工後の鋼材の機械的特性の異方性を低減する作用がある。これらの効果を得るためには、いずれの元素も0.001%以上を含有させることが望ましい。
BiおよびSnは、いずれも低融点金属介在物として鋼材の切削加工時に潤滑効果を発揮し、被削性を改善する。その効果は、それぞれの含有率が0.005%以上で顕著になる。他方、連続鋳造時にはこれらの介在物が表面割れの起点となることがあり、表面品質悪化の原因となる。このため、これらの元素の含有率の上限をそれぞれ0.3%とした。
CaおよびMgは、強力な脱酸元素であり、溶鋼中で徹細な酸化物を多数生成し、MnS生成の核となる。これらの酸化物を核としたMnSは、熱間加工時に延伸が抑制される。また、CaおよびMgは、硫化物を形成し、MnS生成の核となる。このように、CaおよびMgは、硫化物を微細分散させ、形態を制御して被削性を改善する効果を有する。
希土類元素は、ランタノイドとして分類される元素群である。これらの元素を含有させる場合には、通常、これらの元素を主要成分とする安価なミッシュメタルなどを用いて添加する。本発明では、希土類元素の含有率は、希土類元素の中の1種または2種以上の元素の合計含有率で表す。希土類元素は、Sおよび酸素とともに硫化物または酸化物を形成する。酸化物は微細に分散しMnS生成の核となるため、熱間加工時の延伸を抑制し、硫化物を微細に分散させ、形態を制御して被削性を向上させる。
(内部割れの長さ)
鋳片の横断面および縦断面のサンプルを採取し、サルファプリントを行い、目視により最大の内部割れ発生長さを測定した。
(表面性状の調査)
連続鋳造した鋳片は分塊圧延を行い160mmの角状ビレットとした。この段階で目視により表面品質を評価した。このとき表面疵が存在するとグラインダーにより除去する必要があり、表面品質の評価は必要となる手入れについて、手入れしても疵が深く圧延可能なビレットが確保できない手入れ不可、全面手入れが必要な重手入れ、部分的な手入れが必要となる軽手入れ、手入れの必要のない良好の4段階に分類した。
(被削性の調査)
前記のようにして得られた丸棒を60mmφまで外削した後、切削試験に供した。被削性試験は、TiNコーティング処理が施されていないJIS P種の超硬工具を用いて行った。切削は乾式(潤滑油無し)の旋削で、その条件は、切削速度:150m/min、送り:0.10mm/rev、切り込み:2.0mmとし、この条件で20分切削した後、切削工具の平均逃げ面摩耗量(VB)を測定した。
(熱間加工性の評価)
熱間加工性の評価は、連続鋳造試験により得られた鋳片の表皮より40mm厚さの位置から直径10mm、長さ130mmの高温引張試験片を採取した。これを、固定間隔を110mmの条件で固定し、直接通電によって1300℃まで加熱し、5分間保持した後、900℃まで20℃/分で冷却し、一分保持した後、歪み速度10〜3/秒にて引張試験を行った。破断後の試験片破断部の絞りを測定して熱間加工性を評価した。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.2〜0.6%、Si:0.03〜1.0%、Mn:0.66〜2.0%、P:0.003〜0.2%、S:0.04〜0.20%、Pb:0.01%未満、Al:0.1%以下、およびN:0.001〜0.02%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつMnとSの含有率が下記(1)式の関係を満足する溶鋼を連続鋳造することを特徴とする機械構造用快削鋼の連続鋳造方法。
[S%]<0.31×[Mn%]5 ・・・(1)
ここで、[Mn%]はMn含有率(質量%)を、[S%]はS含有率(質量%)をそれぞれ表す。 - 質量%で、C:0.2〜0.6%、Si:0.03〜1.0%、Mn:0.66〜2.0%、P:0.003〜0.2%、S:0.04〜0.20%、Pb:0.01%未満、Al:0.1%以下、およびN:0.001〜0.02%、ならびにCu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、V:0.005〜0.5%およびNb:0.005〜0.1%からなる群から選んだ1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつMnとSの含有率が下記(1)式の関係を満足する溶鋼を連続鋳造することを特徴とする機械構造用快削鋼の連続鋳造方法。
[S%]<0.31×[Mn%]5 ・・・(1)
ここで、[Mn%]はMn含有率(質量%)を、[S%]はS含有率(質量%)をそれぞれ表す。 - 質量%で、C:0.2〜0.6%、Si:0.03〜1.0%、Mn:0.66〜2.0%、P:0.003〜0.2%、S:0.04〜0.20%、Pb:0.01%未満、Al:0.1%以下、およびN:0.001〜0.02%、ならびにTi:0.005〜0.30%、Se:0.001〜0.01%、Te:0.001〜0.01%、Bi:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%、Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%および希土類元素:0.0005〜0.01%からなる群から選んだ1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつMnとSの含有率が下記(1)式の関係を満足する溶鋼を連続鋳造することを特徴とする機械構造用快削鋼の連続鋳造方法。
[S%]<0.31×[Mn%]5 ・・・(1)
ここで、[Mn%]はMn含有率(質量%)を、[S%]はS含有率(質量%)をそれぞれ表す。 - 質量%で、C:0.2〜0.6%、Si:0.03〜1.0%、Mn:0.66〜2.0%、P:0.003〜0.2%、S:0.04〜0.20%、Pb:0.01%未満、Al:0.1%以下、およびN:0.001〜0.02%、ならびにCu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、V:0.005〜0.5%およびNb:0.005〜0.1%からなる群から選んだ1種または2種以上と、Ti:0.005〜0.30%、Se:0.001〜0.01%、Te:0.001〜0.01%、Bi:0.005〜0.3%、Sn:0.005〜0.3%、Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%および希土類元素:0.0005〜0.01%からなる群から選んだ1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつMnとSの含有率が下記(1)式の関係を満足する溶鋼を連続鋳造することを特徴とする機械構造用快削鋼の連続鋳造方法。
[S%]<0.31×[Mn%]5 ・・・(1)
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