JP5223720B2 - B含有高強度厚鋼板用鋼の連続鋳造鋳片、およびその製造方法 - Google Patents
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さらには、特許文献3には凝固時にBNを析出させず、BおよびNが固溶状態で含有されることによりスラブおよび薄鋼板の表面欠陥を防止できることが記載されている。さらに欠陥を抑制するための条件として鋳造速度とTi,B,N成分の関係式が提案されている。
本願明細書において「割れ」とは、基本的に割れに起因する表面疵のことを表す。但し、特に圧延後には表面疵の発生が割れに起因するのか、割れ以外の起因も混在しているのかについては判然としない場合もあるので、割れに起因する疵を含む表面疵の総称として包括的に「疵」と表現する場合もある。
(1)質量%で、C:0.10%以上0.18%以下、Si:0.10%以上0.4%以下、Mn:0.5%以上2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.003%以下、Ti:0.005%以上0.03%以下、Al:0.005%以上0.06%以下、B:0.0005%以上0.0050%以下、およびN:0.0015%以上0.007%以下を含有し、さらにはCu:0.1%以上0.5%以下、Cr:0.2%以上2.0%以下、Ni:0.3%以上2.5%以下、Mo:0.1%以上0.8%以下、V:0.01%以上0.1%以下、Nb:0.005%以上0.05%以下、Ca:0.0005%以上0.0060%以下のうちの一種あるいは二種以上含有し、残部はFeおよび不純物からなるとともに、BNの平衡析出開始温度が1150℃未満あるいは1000℃におけるBNの平衡析出量が0.0035質量%未満であって、かつ、鋳造完了後の常温の鋳片にBNが0.0003質量%以上0.0030質量%以下含有されることを特徴とする高強度厚鋼板用連続鋳造鋳片。
下記式(1)および(2)により求められるBNの平衡析出開始温度および1000℃におけるBNの平衡析出量は本発明上記(1の規定を満足するようにTi,N,B濃度を制御することを特徴とする引っ張り強度が700MPa以上1200MPa以下の高強度厚鋼板用鋳片の製造方法。
0.5≦Vc≦−0.007×d+2.85 (3)
ここでVcは鋳造速度(単位:m/min)を、dは鋳片厚さ(単位:mm)を表す。
本発明に係る鋼の化学組成について説明する。以下の説明において、鋼の化学組成を示す%は、特に断りがない限り質量%を意味する。
一般にCは鋼の強度に大きな影響を及ぼす元素として知られ、0.10%未満では高強度厚鋼板などの用途に対して所定の強度を得ることが困難となる。C濃度を0.18%以上にすると、硬度が著しく高くなるためあらたな疵の原因となるため熱処理に特段の工程が必要となる他、溶接部および熱影響部の硬化のため厚鋼板として必要となる溶接性を損なう。このような理由によりCの濃度範囲を0.10%以上0.18%以下と規定した。
Siは一般に鋼の製造プロセスでは脱酸元素として鋼中の酸素濃度を低減するために有効な元素の一つであり、鋼を強化する効果もある。溶鋼が十分に脱酸されていない状態で連続鋳造すると鋼中に気泡が生成し、製品の欠陥となるばかりでなく、時にブレークアウトを誘発し操業できないという問題がある。しかし、その含有量が0.4%を超えると縞状マルテンサイトが生成するようになり溶接時にHAZ靱性を悪化させるという問題がある。したがってその上限は0.4%と規定するが、より好ましくは0.3%未満とする。
Mnは一般に鋼材の強度に大きな影響を与える元素であるが、0.5%未満では高強度厚鋼板として十分な強度を得ることが困難である。また、2.0%を超えると固溶強化のため強度増加が著しく製品の強度調整が困難となる。またMnは中心偏析部で濃化するため鋳片や圧延後の厚鋼板内で強度むらを生じさせる。このためMnの濃度範囲を0.5%以上2.0%以下と規定した。
Pは鋼中に不可避的に含有する不純物元素の一つであり低い方が好ましい。Pは凝固時の固液界面における分配係数が小さいため著しく偏析する。このため、種々の製品特性に悪影響を与えることが懸念される。偏析部では融点も著しく低下するため、圧延時には濃化部が溶融し製品疵につながることもある。そのため、含有量の上限を0.020%とした。偏析部における種々の問題を防止するために、好ましくは0.01%未満とするべきである。
Sも鋼中に不可避的に含有する不純物元素の一つでありできるだけ低い方が好ましい。Sも凝固時の固液界面における分配係数が小さいため著しく偏析する元素であるばかりでなく、偏析部ではPと同様に融点を低下させ、特に圧延時には表面疵の発生原因となる。このため、0.003%を上限とした。高強度鋼などより要求レベルの厳しい条件ではS含有量の上限を0.0020%とすることが好ましい。
Tiは鋼の強度を向上させるとともに、鋼中のNをTiNとして固定するため、本発明の要点であるBNの生成にも間接的に影響を与える。このことから連続鋳造の鋳片の曲げ・矯正時の鋳片表面割れを防止する効果もある。このような効果を得るためには0.005%以上の添加が必要である。しかし、0.03%を超えて含有すると炭化物が多数生成し、溶接熱影響部の靱性を低下させるとともに粗大なTiNが生成する原因となる。このため、0.005%以上0.03%以下と規定する。鋳片の表面割れおよびTiNに基づく表面性状の低下の双方を安定的に抑制する観点からは0.010%以上0.020%以下とすることが好ましい。
Alも脱酸元素として鋼中の酸素濃度を低減するために有効な元素の一つである。脱酸のために必要となる含有量は0.005%以上となる。それ以下となると、製錬工程における十分な脱硫も困難になる。過剰に添加すると早期にAlNが生成し鋳片表面割れの原因となることから、本発明の目的とは相反するようになるため、0.06%以下とすることが好ましい。同じ理由により、0.05%以下とすることがより好ましい。
Bは粒界の焼き入れ性を高め、鋼材の組織を制御し鋼材の強度を高める成分として添加される。Bは微量の添加で高い効果があるが、引っ張り強度が700MPa〜1200MPaという高い強度を実現するためには下限は0.0005%となる。0.0050%を超えて添加するとその効果が飽和するとともに靱性を低下することになるので上限を0.0050%とする。厚鋼板のミクロ組織を制御し、Bの添加効果を明確に発現する観点からは0.0010%以上0.0040%以下とすることが好ましい。
Nは転炉などの大気雰囲気で溶製する場合には鋼中に不可避的に浸入する元素であり、本発明で着目しているBNの構成元素である。鋼材中ではAlやTiなどとも窒化物を形成する元素であり、これらの窒化物は熱間加工の過程でピン留め粒子として結晶粒を微細化する効果を有することから鋼材の機械特性に影響を与えるとともに、ミクロ組織形成に影響を与える。このため0.0015%以上の濃度とする必要がある。一方で前述のようにこれらの窒化物が連続鋳造時にγ粒界に動的析出することにより鋳片表面割れの原因となることから上限は0.0070%とする。組織のピン止め効果を確実に発揮するとともに、鋳片の中心部などにおける粗大な炭・窒化物の生成に伴う靱性低下を防止する観点からは0.002%以上0.004%以下とすることが好ましい。
(A)Cu:0.1%以上0.5%以下
Cuは鋼の焼き入れ性を向上させる。そのためには0.1%以上の添加が必要であるが、0.5%を超えるとその効果が過剰となるばかりでなく鋼材の熱間加工性が低下する。また連続鋳造時にはスタークラックと称する表面割れを誘発する元素であることからCuを0.2%以上添加する場合にはその1/3以上の濃度のNiを併せて添加する必要がある。
Crには鋼の強度、靱性を高める効果がある。そのためには0.2%以上の添加が必要である。80kgクラス以上など高強度のスペックが要求される場合には半ば必須の添加元素となる。一方で2.0%以上添加すると溶接割れが発生する等の問題が発生する。同じ理由により溶接性を重視する場合には1.5%を上限とすべきである。
Niには固溶強化によって鋼の強度を向上させるとともに、靱性を改善する効果もある。これらの効果を得るためには0.3%以上添加する必要があるが、2.5%以上添加してもその効果は頭打ちとなり、溶接性を悪化させるという悪影響もある。
Moは鋼板の焼き入れ性を向上させ、強度上昇に寄与する。Crと同様、80kgクラス以上など高強度のスペックが要求される場合には半ば必須の添加元素となる。この効果を得るためには0.1%以上の添加が必要となる。しかし、Moは高価な元素でありコスト増加につながるばかりでなく、0.8%以上添加するとベイナイトやマルテンサイト相などの硬化相が生成し熱間加工性や溶接性を悪化させることから上限は0.8%とする。
Vは鋼中でフェライト中への固溶並びに炭窒化物を形成し鋼の強度を高めるために有効な元素である。そのためには0.01%以上添加する必要がある。しかし、Vの含有量が0.1%を超えると溶接熱影響部での析出状況が変化し靱性に悪影響を与える。また過剰に添加すると鋳片内部にVNとして析出し、鋳片表面割れの原因となる。
Nbは鋼中で炭窒化物を形成し鋼の強度を高めるとともに靱性の向上にも有効な元素である。そのためには0.005%以上添加する必要がある。また特にTMCP(Thermo-Mechanical Control Process)において固溶及び析出を制御することにより鋼板のミクロ組織制御するために使用される。この効果を得るためにも0.005%以上添加する必要がある。しかし、0.05%以上含有すると加熱時にも固溶せず、組織制御ができなくなる。また過剰に添加すると鋳片内部にNbCとして析出し、鋳片表面割れの原因となる。このためNbの濃度は0.005〜0.05%と規定した。
上記の効果を得るためには、Caは0.0005%以上添加することが必要である。0.006%以上添加してもその効果は飽和し製造コストの増加を招くばかりでなく、かえってノズル閉塞を助長する場合もありこのため0.0005%以上0.0060%以下と規定した。
本発明者らは強度が780MPa、980MPaといった700−1200MPaクラスの高強度厚鋼板の連続鋳造および熱間圧延の工程で表面割れなどの疵が発生する場合があることを知った。この疵は鋳片で発生する場合には粒界に添った横ひび割れであり、鋳片の曲げあるいは矯正の歪みにより発生したものである。また圧延時に疵が発生する場合もあり、鋳片で割れの発生する鋼種では圧延時にも疵が増加する傾向があった。この疵の発生条件について詳細に検討したところTi,B,Nの組成と相関が認められた。このことから鋼中の析出挙動と相関があると推定し、熱力学平衡計算により検討した。
ここで初期母材中のTi濃度をTi0、N濃度をN0とし、TiNとして存在する分のN濃度をNpとおくと、式(1)は式(1’)のように記述することができる。Ti0、N0は母材成分値として与えられるので、温度が決まればTiNとして存在する分のN濃度Npを計算することができる。
すなわち、本発明に係る鋳片を製造するに当たっては、垂直曲げ型あるいは湾曲型の連続鋳造機を使用し、下記式(3)を満足する条件で連続鋳造することが一層好ましい。
容量270tonの転炉で吹練した溶鋼を取鍋処理、RH処理を行った後垂直部の長さ2.5mの垂直曲げ型連続鋳造機で鋳造し、厚さ250mmあるいは300mm幅1800〜2300mmのスラブを得た。鋳造速度は0.45〜1.20m/min、2次冷却の比水量は0.7〜0.8l/kg−steelであり、矯正点における鋳片表面温度は鋳片のコーナー近傍を除き790〜910℃程度であった。この鋳片を平積みに重ねてカバーを掛けて150時間程度かけて室温まで徐々に冷却し、表面を1〜2mm程度グラインダで旋削し、浸透液を使用して割れの発生の有無を目視で調査した。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.10%以上0.18%以下、Si:0.10%以上0.4%以下、Mn:0.5%以上2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.003%以下、Ti:0.005%以上0.03%以下、Al:0.005%以上0.06%以下、B:0.0005%以上0.0050%以下、およびN:0.0015%以上0.007%以下を含有し、さらにはCu:0.1%以上0.5%以下、Cr:0.2%以上2.0%以下、Ni:0.3%以上2.5%以下、Mo:0.1%以上0.8%以下、V:0.01%以上0.1%以下、Nb:0.005%以上0.05%以下、Ca:0.0005%以上0.0060%以下のうちの一種あるいは二種以上含有し、残部はFeおよび不純物からなるとともに、
BNの平衡析出開始温度が1150℃未満あるいは1000℃におけるBNの平衡析出量が0.0035質量%未満であって、かつ、鋳造完了後の常温の鋳片にBNが0.0003質量%以上0.0030質量%以下含有されること
を特徴とする高強度厚鋼板用連続鋳造鋳片。 - 垂直曲げ型あるいは湾曲型の連続鋳造機を使用し、下記式(3)を満足する条件で連続鋳造することを特徴とする、請求項1に記載される鋳片の連続鋳造方法:
0.5≦Vc≦−0.007×d+2.85 (3)
ここでVcは鋳造速度(単位:m/min)を、dは鋳片厚さ(単位:mm)を表す。
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