JP2007302908A - 高張力鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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善久 白井
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章裕 山中
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正 平城
Ichiro Seta
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Abstract

【課題】センターポロシティに起因するUST欠陥のない、内質の優れたHT60以上の極厚高張力鋼板とその製造方法を提供する。
【課題手段】(1)質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.02%以下、S:0.015%以下、N:0.008%以下およびAl:0.003〜0.07%を含み、残部がFeと不純物からなり、炭素当量が0.3〜0.5%であり、センターポロシティの体積が0.2×10-4〜1.0×10-4cm3/gである連続鋳造鋳片から製造した板厚60mm以上の600MPa級高張力鋼板。この鋼板はさらにCu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、B、Ca、MgおよびREMの1種以上を含有してもよい。
(2)連続鋳造の凝固末期における圧下量をp、鋼片から鋼板に圧延する際の圧下比をrとしたとき、下記(1)式を満足させる連続鋳造で得た鋳片を900〜1250℃に加熱後、圧延し、仕上げ温度750℃以上で圧延を終了することを特徴とする板厚60mm以上の600MPa級高張力鋼板の製造方法。
r≧−0.25×p+3.75 ・・・(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、センターポロシティに起因する内部欠陥のない極厚の高張力厚鋼板、およびその鋼板を製造するのに適する製造方法に関する。
一般に、鋼板は、連続鋳造で得た鋳片を素材として製造される。鋳片の厚さ中心部には、溶鋼が凝固する際の凝固収縮や凝固後の冷却による熱収縮によって、最終凝固位置である厚さ中心付近に小さな空孔、いわゆるセンターポロシティが形成される。
鋳片にセンターポロシティが存在すると、溶鋼中に溶解していた水素が凝固時に拡散してセンターポロシティに集積する。この鋳片を熱間圧延すると、センターポロシティは圧延時に圧着しても、水素が鋼板中に再固溶して残留する。この残留する水素量が多いと鋼板に割れが発生する。これを水素割れという。
特に近年、橋梁にHT60以上の高張力鋼の極厚鋼板が使用されるようになってきた。また、橋梁の金属疲労の問題から、超音波探傷試験(以下、USTと略記することがある)の判定基準が厳しくなっている。即ち、鋼製橋脚の完全溶け込み溶接継手の内部きずについては、JIS Z 3060(2002)の鋼溶接部の超音波探傷試験方法において、きずエコー高さが対比試験片RB-41を用いて作製されたエコー高さ区分線Lの半分以下、または内部きずの実寸法を1mm単位で評価した場合に、その最大値が板厚の1/3以下となることが求められている。
この試験の目的は溶接作業に伴い発生する溶接継手内部のきずを検出することであるが、この場合、超音波は厚鋼板母材を経由して溶接継手内部へ導かれるため、厚鋼板母材自体も、この判定方法に合格する品質であることが求められる。
上記のような事情から、連続鋳造鋳片から製造された鋼板に特徴的なセンターポロシティの問題が大きくクローズアップされてきた。即ち、極厚鋼板の製造に連続鋳造鋳片を用いた場合、現在一般に使用されている厚板圧延機の能力ではスラブの中心部に生成したセンターポロシティを安定して圧着させることは困難であり、極厚鋼板を超音波探傷すると未圧着のセンターポロシティが欠陥(以下、これを「UST欠陥」と記す)として発見されることが多い。
センターポロシティの密度は、高強度鋼板であるほど高くなる。例えば、従来の方法により製造した場合の各等級の高張力鋼についてのセンターポロシティ密度は、400MPa級では約2×10-4cm3/g、500MPa級では約3×10-4cm3/g、600MPa級(HT60級)では約3.7×10-4cm3/gである。したがって、HT60級の高張力鋼では、上記の問題が顕著になる。
連続鋳造によって得た鋼片から製造した鋼板に上記のようなUST欠陥が存在すると、溶接部に存在する有害な欠陥との区別がつきにくく、疲労亀裂のUSTによる検出においてもその妨げになる。
鋳片に発生するセンターポロシティを解消する手段としては、下記のような技術が知られている。
特許文献1には、連続鋳造によって熱間圧延用鋳片を製造するに当り、凝固率が85%以上99%以下の位置において、面によって1mm以上25mm以下の軽圧下を断続的に行う技術が開示されている。
特許文献2には、鋳片の未凝固末端部を実質的に面を構成する部材を用いて圧下しつつ凝固させ、1パス当りの平均圧延真歪が0.2%以下でかつ累積圧下率が30〜99%の圧延をする、板厚中心部の靱性および内質に優れた厚鋼板の製造方法が開示されている。
しかし、特許文献1および2に開示される方法では、鋳片を圧下するために連続鋳造機に巨大な面圧下設備を設置しなければならず、巨額の費用がかかるという問題がある。
特許文献3には、鋼の連続鋳造に当り、鋳片横断面の中心部における固相率が0.3〜0.7の範囲において軽圧下装置で鋳片に5〜15mmの軽圧下を加えると共に、鋳片横断面の中心部における固相率が0.8〜1.0の範囲、あるいは凝固完了後鋳片横断面の中心温度が1200℃以上の範囲において大圧下用圧下装置で少なくとも一方向に一段当り圧下率で30%以上の圧下を加える技術が開示されている。
特許文献4には、 鋳片中心部の温度が固相率0.05〜0.7に相当する鋳片位置に少なくとも一対のロールを設置して鋳片を4〜20mm圧下すると共に、鋳片中心部の温度が固相率0.8以上の鋳片位置に少なくとも一対のロールを設置して5〜20%の圧下率で鋳片を圧下する技術が開示されている。
これらの方法では、鋳片の凝固末期、つまり厚さ中心部の固相率が0.8以上の状態で、圧下率5%以上という大圧下を行う。このため、一般に幅の広い鋼板を対象とした鋳片では圧下力が1000ton以上にもなり、圧下ロールや圧下設備が巨大になって、設備費用が嵩むという問題がある。
特許文献5には、連続鋳造法を用いて厚鋼板を製造する方法において、連続鋳造鋳片の厚み中心部における固相率が0.6以上となる領域において該連続鋳造鋳片の未凝固厚みの1.1倍以上2.0倍以下の圧下を加えた連続鋳造鋳片を用いることを特徴とする板厚中心部のじん性および内質に優れた極厚鋼板の製造方法が開示されている。しかし、この方法では未凝固厚さの定義が明確ではなく、必要な圧下量も明瞭ではないという問題がある。
特許文献6には、C≦0.18%の溶鋼を連続鋳造し、その鋳片の凝固末期に鋳片の中心部の固相率が90〜98%の部分を、2〜5%の圧下加工率で1回圧下する内部品質に優れた連続鋳造鋳片の製造方法が開示されている。
この方法では、圧下率が小さいために連続鋳造機に大きな圧下設備を設置する必要がなく、設備費用も少なくてすむ。しかし、圧下率が小さいことから、センターポロシティはすべてが圧着することはできず、鋳片に残る場合がある。その後、鋳片を圧延する際においても、残ったセンターポロシティは、その大きさによっては圧着できずに、極厚鋼板に欠陥として残るという問題がある。
特許文献7には、変形抵抗の大きい鋳片両端部を圧下しないために、鋳片をバルジングさせて鋳型の短辺長さよりも20〜100mm厚くして、凝固完了直前にて少なくとも一対の圧下ロールによりその一対あたり20mm以上の圧下を与えて、バルジング量相当分を圧下する方法が開示されている。
この方法は、中心偏析の防止対策として行われている方法であり、センターポロシティに関する記載がない。また、バルジングをさせて鋳片短辺(端部)を圧下しないようにしても、圧下量が大きいため凝固末期には大きな圧下力が必要となり、巨大な圧下設備を設置しなければならない。
極厚鋼板で発生するUST欠陥を防止するために、以下のような発明が開示されている。
特許文献8には、センターポロシティの厚さd0の鋳片を、900〜1300℃に加熱後、下記の式(1)を満足する圧下比rで圧延し、かつ最終圧延パスにおいて下記の式(2)の条件を満足させる、安定して内質の優れた極厚鋼板を製造する極厚鋼板の製造方法が開示されている。
r≧ 0.2×d0 + 1.0 ・・・(1)
1.67×((t0−t1)×R)1/2/t0+0.5≧ 1.1 ・・・(2)
ここで、t0:被圧延材の最終圧延パス前の厚さ(mm)、t1:被圧延材の最終圧延パス後の厚さ(mm)、R:圧延ロール半径(mm)である。
この方法は、鋳片に存在する大きなセンターポロシティを厚板圧延だけで圧着解消させようとするものである。
上記特許文献8における(1)式のd0は、その段落[0030]の実施例の説明から判断すると、ある範囲の中のセンターポロシティ厚の大きいもの5個の平均を意味している。本発明者らが詳細に調査した結果、大きなセンターポロシティほど発生比率は低くなるために、平均値と最大値がかけ離れてしまうことがあること、且つ大きなセンターポロシティほど圧延時に圧着されにくいためにUST欠陥として残りやすいことがわかった。そのため、圧延だけでセンターポロシティを圧着解消させようとする上記の方法では、完全にUST欠陥を解消することはできない。
さらに、(2)式で最終圧延パスでの板厚中心圧縮応力(σmax)を規定しているが、圧下量(t0−t1に相当)は、被圧延材の温度や巾、変形抵抗(これは材質に依存する)および圧延機の圧下能力により制限され、他方、ロール半径(R)を大きくするためには圧延機自体を大型化する必要があり、現実的でない。
特許文献9には、引張強度が570MPa級で、溶接性と靭性が要求される構造物全般に供される構造物用鋼の製造方法に関し、特に板厚が50〜200mmの厚手材において、優れた溶接性と強度・靭性を両立した高張力鋼の製造方法が記載されている。しかしながら、この特許文献9には連続鋳造材におけるセンターポロシティの問題を解決する手段の記載や示唆がない。
特許文献10には、鉄骨用として大入熱溶接を適用するのに適した鋼材で、垂直超音波探傷法による探傷で、傷エコ−F1が25%を超え、かつその欠陥指示長さが10mmを超える欠陥が1個/m2以下であることを特徴とする鋼材の開示がある。
しかしながら、特許文献10の発明の鋼材は、金属疲労があまり問題にならない鉄骨用であり、垂直超音波探傷法による欠陥指示長さが10mmの規定であり、金属疲労が問題となる橋梁用に比べれば、ゆるい規定になっている。また、目的とする強度が主に490MPaであり、本発明の目的とするHT60以上の鋼材とは異なる。
特開平7−276020号公報 特開平2−156022号公報 特開平5−69099号公報 特開平10−58106号公報 特開平6−106316号公報 特開平7−80615号公報 特開平9−57410号公報 特開2000−288604号公報 特開2002−88413号公報 特開2005−8931号公報
本発明は、前記した従来技術の欠点を克服することを課題としてなされたもので、その第一の目的は、センターポロシティに起因するUST欠陥のない、内質の優れたHT60以上の極厚高張力鋼板を提供することにある。本発明の第二の目的は、連続鋳造機内に巨大な圧下設備を設置することなく、大きなセンターポロシティのない鋳片を製造し、その鋳片から内質の優れたHT60以上の極厚高張力鋼板を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、HT60級の高張力鋼について、連続鋳造における圧下と厚板圧延における必要な圧下比を組み合わせることにより、比較的簡易な連続鋳造の圧下設備で、あるいは現有の圧延機を用いて、内質の優れた極厚鋼板を製造できること見出して、本発明を完成させた。
本発明は、下記(1)〜(3)の高張力鋼板および(4)の高張力鋼板の製造方法を要旨とする。
(1)質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.02%以下、S:0.015%以下、N:0.008%以下、およびAl:0.003〜0.07%を含み、残部がFeおよび不純物からなり、下記の(a)式で表されるCeqJ1が0.3〜0.5(%)である組成を有し、センターポロシティの体積が0.2×10-4〜1.0×10-4cm3/gであることを特徴とする連続鋳造鋳片から製造した板厚60mm以上の600MPa級高張力鋼板。
CeqJ1=C+(Si/24)+(Mn/6) ・・・(a)
ただし、(a)式の元素記号は、その元素の含有量(質量%)を示す。
(2)質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.02%以下、S:0.015%以下、N:0.008%以下、Al:0.003〜0.07%、ならびにCu:0.5%以下、Ni:0.9%以下、Cr:0.8%以下、Mo:0.6%以下、Nb:0.07%以下、V:0.09%以下、Ti:0.03%以下およびB:0.003%以下のうちの1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不純物からなり、下記の(b)式で表されるCeqJ2が0.3〜0.5(%)である組成を有し、センターポロシティの体積が0.2×10-4〜1.0×10-4cm3/gであることを特徴とする連続鋳造鋳片から製造した板厚60mm以上の600MPa級高張力鋼板。
CeqJ2=C+(Si/24)+(Mn/6)+(Ni/40)+(Cr/5)
+(Mo/4)+(V/14) ・・・(b)
ただし、(b)式の元素記号は、その元素の含有量(質量%)を示す。
(3)Feの一部に代えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下およびREM:0.007%以下のうちの1種または2種以上を含む上記(1)または(2)の600MPa級高張力鋼板。
(4)溶鋼を連続鋳造により鋳片とし、その鋳片を900〜1250℃に加熱後、圧延を施し、仕上げ温度750℃以上で圧延を終了する高張力鋼板の製造方法であって、連続鋳造の凝固末期における圧下量をp、鋼片から鋼板に圧延する際の圧下比をrとしたとき、下記(1)式を満足させることを特徴とする板厚60mm以上の600MPa級高張力鋼板の製造方法。ただし、凝固末期とは、鋳片の中心固相率が0.8以上になった以降を意味する。
r≧−0.25×p+3.75 ・・・(1)
本発明の鋼板は、極厚であるにもかかわらずセンターポロシティに起因するUST欠陥の少ない高張力鋼板であり、水素割れの懸念のない鋼板である。この鋼板は、本発明の製造方法によって、比較的簡易な連続鋳造設備および既存の圧延機を用いて製造することができる。
1.本発明の高張力鋼板
本発明の鋼板は、板厚が60mm以上の極厚鋼板である。板厚を60mm以上としたのは、これより薄い鋼板の場合は、厚さ240mm以上の連続鋳造鋳片を使えば、熱間圧延工程のみで圧延圧下比が4以上となり、本発明方法を用いずとも鋳片に残ったセンターポロシティは、それが十分小さければ、圧着されて問題にならないからである。
厚さ300mm以下の連続鋳造鋳片で製造する場合、製品鋼板の上限厚さは200mmとすることが望ましい。高強度鋼板を製造するためには、センターポロシティ圧着のためのみならず、圧延により鋳造組織を破壊して組織を改善する必要がある。高強度鋼板製造のためには1.5以上の圧下比を確保する必要があり、200mmを超える板厚に対しては、300mmを超える鋳片厚さを確保しなければならない。そのためには、前述のように巨大な連続鋳造機を必要とし、経済上不適切である。したがって、製品鋼板の板厚の上限は、200mmとするのが望ましいのである。
なお、HT60とは、引張強さで主に600MPa程度の鋼板をいう。但し、JIS G3106 のSM570鋼などもHT60と呼ばれることがある。
(1)鋼板の化学組成
以下、本発明鋼板の化学組成について述べる。なお、成分含有量に関する%は「質量%」を意味する。
C:0.02〜0.15%
Cは強度を確保する上で必要な元素である。C含有量が0.02%未満であると、必要な強度が得られないので下限は0.02%とした。より好ましい下限は0.05%である。一方、0.15%を超えると素材および溶接継手部の靱性が劣化するので、上限は0.15%とした。より好ましい上限は0.12%である。
Si:0.01〜0.5%
Siは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用するとともに強度の向上に有効であり、0.01%以上含有させる必要がある。一方、Si含有量が0.5%を超えると島状マルテンサイトの生成が促進されて溶接熱影響部の靱性の劣化をもたらすので、その上限は0.5%とした。より好ましい上限は0.35%である。
Mn:1.0〜1.8%
Mnは、脱酸剤として有効であり、また素材の強度と靱性を向上させるのに有効である。鋼材の強度を確保するには1.0%以上のMn含有量が必要である。一方、1.8%を超えると連続鋳造における中心偏析部のMn偏析が顕著になり、鋼材靭性の劣化が生じるので上限は1.8%とした。より好ましい下限は1.2%であり、より好ましい上限は1.5%である。
P:0.02%以下
Pは不可避的不純物であり、中心偏析を助長するなど鋼材靭性を劣化させるため、本発明においては0.02 %を上限とする。より望ましいのは0.015%以下である。
S:0.015%以下
Sも不可避的不純物であり、多量に存在する場合、鋼の清浄度を悪化させ鋼材の超音波検査における不合格の原因となる。また、MnSを形成し、鋼材中の水素による欠陥の起点となり得る介在物を形成する。また、溶接割れの原因となる。このため、0.015%以下に制限する。より望ましいのは0.006%以下である。
N:0.008%以下
Nも不可避的不純物であり、多量に存在する場合、母材靱性および溶接熱影響部の靱性をともに悪化させる。鋼にAlやTiを添加してAlNやTiNの形で固定して無害化する場合もあるが、そのような対策を採ってもNが0.008%を超えて鋼中に存在する場合は、溶接熱影響部の靭性劣化を招く。したがって、Nは0.008%を上限とする。より好ましい上限は0.006%である。
Al:0.003〜0.07%
Alは、脱酸材として効果があり、HT60鋼では0.003%以上鋼中に存在するように添加することが、連続鋳造を健全に行ううえで有効である。一方、Al含有量が過剰になると、Al系酸化物が形成されるため、過剰な添加は行ってはならない。そのため、含有量の上限を0.07%とする。本発明においてはTiも添加することができ、これが脱酸剤としても作用することから、Tiを添加する場合には上限を0.015%としてもよい。
本発明鋼板の一つは、上記の成分のほか、残部はFeと不純物からなる。本発明鋼板の他の一つは、上記の成分のほかに以下に述べる成分の1種または2種以上を含むものである。
Cu:0.5%以下
Cuは強度上昇に有効な元素であるが、その含有量が0.5%を超えると溶接性を劣化させるため、これを上限とした。より好ましい上限は0.35%である。0.01%未満では強度を上げる効果が期待できないので、添加する場合は、含有量の下限を0.01%とするのが望ましい。Cuは任意添加元素であり、添加しても、しなくてもよい。特に他の元素で代用する場合は、積極的に添加する必要はない。
Ni:0.9%以下
Niは、強度と靱性の向上に有効な元素であるから、必要に応じて添加する。しかし、その含有量が0.9%を超えると経済性を損なう。経済面から、より好ましい上限は0.7%である。0.01%未満では、強度および靱性を向上させる効果が少ないので、添加する場合は、含有量の下限を0.01%とするのが望ましい。
Cr:0.8%以下
Crは強度上昇に有効な所望添加元素である。したがって、必要に応じて添加する。ただし、その含有量が0.8%を超えると溶接性を劣化させる。より好ましい上限は0.6%である。0.01%未満では、その効果が少ないので、添加する場合の含有量の下限は0.01%とするのが望ましい。
Mo:0.6%以下
Moは、焼入れ性の向上とオーステナイトの再結晶抑制の効果を通して制御圧延効果を増大させることによって、強度を上昇させるのに有効である。この効果を得たいときには添加してもよい。しかし、その含有量が0.6%を超えると靱性の劣化をもたらすため、上限は0.6%とした。より好ましい上限は0.4%である。0.01%未満では、上記の効果が少ないので、添加する場合の含有量の下限は0.01%とするのが望ましい。
Nb:0.07%以下
Nbは、微細な炭窒化物を形成し、強度を上昇させる効果を有する。したがって、この効果を得たいときには添加してもよい。しかし、その含有量が0.07%を超えると脆化の弊害の方が大きくなるため、上限は0.07%とした。より好ましい上限は、0.045%である。一方、0.005%未満では、その効果が少ないので、添加する場合の含有量の下限は0.005%とするのが望ましい。
V:0.09%以下
Vは、焼入れ性の向上と微細な炭窒化物を形成し、強度を上昇させる効果を有する。この効果を得たいときには添加してもよい。しかし、その含有量が0.09%を超えると脆化の弊害の方が大きくなるため、上限は0.09%とした。より好ましい上限は0.07%である。一方、0.005%未満では、その効果が少ないので、添加する場合の含有量の下限は0.005%とするのが望ましい。
Ti:0.03%以下
Tiは、微細な窒化物を形成することによって溶接熱影響部のオーステナイト粒の粗大化を防止し、靱性を向上させるのに有効である。しかし、0.03%を超えるとTiNが粗大化し、かえって靱性が低下する。より好ましい上限は0.025%である。この元素も任意添加元素なので、必要に応じて添加すればよい。0.005%未満では、靱性向上の効果が少ないので、添加する場合は、含有量の下限を0.005%とするのが望ましい。
B:0.003%以下
Bは、微量でもオーステナイト粒界からのフェライト生成を抑制し、母材強度を高めるためには有効な元素であるが、溶接熱影響部では、靱性の低い硬化組織を形成するため、通常、溶接熱影響部の靱性確保の観点からは好まれない。しかしながら、本発明では、鋼中にTiNが分散しており、これが、Bの有無に関わらず溶接熱影響部のオーステナイト粒粗大化抑制因子として機能する。このため、Bの添加が容認される。その含有量が0.003%を超えなければ、溶接熱影響部の靱性は、たとえ劣化したとしても許容できるレベルに留まる。
また、Bは、オーステナイト粒界からのフェライト生成を抑制し、溶接熱影響部の鋼中にTiNを形成する以外のフリーNが存在している場合は、BN形成により靭性劣化の原因となるフリーNを固着し、粒内析出のフェライト量を増して組織を微細化するため、適量添加であればTiNを単独で使うより、エレクトロガスアーク溶接の場合における熱影響部の靱性を改善する効果がある。したがって、必要に応じて添加してもよい。
以上のような理由により、本発明では、B含有量の上限を0.003%とした。より好ましい上限は0.002%である。一方、0.0005%未満では、上記の効果が少ないので、添加する場合にはBの含有量の下限を0.0005%とするのが望ましい。
Ca:0.005%以下
Caは、強力な脱酸元素でもあり、Sと結合しCaSを形成することにより脱Sにも有効である。MnよりもSとの結合力が強いためにMnSの形成を防ぎ、鋼の清浄度を上げる効果がある。ただし、Caの過剰添加は、かえって鋼の清浄度を悪化させ、コストも増加するので、0.005%を上限とした。なお、0.0005%未満では、鋼の清浄度を上げる効果が少ないので、添加する場合は、含有量の下限を0.0005%とするのが望ましい。
Mg:0.005%以下
Mgも、強力な脱酸元素であり、鋼中のSやOと結合しMg系酸硫化物を形成する。Mg系酸硫化物は、必ずしもMgとS、Oのみからなる酸化物ではなく、同時に添加されるAl、Caなどと複合した複雑な酸化物を含む場合もある。また、Oの一部がSによって置換された複合Mg系酸硫化物を形成する場合が多い。これら、Mg系酸硫化物ないし複合Mg系酸硫化物は、溶接熱で高温に加熱される鋼の熱影響部において、安定な粒子として存在することで、溶接熱影響部の結晶粒の粗大化を防止し、細粒の熱影響部組織を形成して熱影響部の靭性を向上させる効果がある。このような効果を得たい場合には添加してもよい。ただし、Mgの過剰添加は、かえって鋼の清浄度を悪化させ、コストも増加するので、0.005%を上限とした。一方、0.0005%未満では、上記の効果が少ないので、添加する場合は含有量の下限を0.0005%とするのが望ましい。
REM:0.007%以下
REMは、希土類元素ともよばれ、ランタノイド系元素にScおよびYを加えた17元素をいう。これらは性質が似ていることから、添加元素としては、それぞれの希土類元素を単離することなく複数の種類の元素を含んだままで鋼中に添加される場合が多い。もちろん、希土類元素のうち、LaやCeなどを単離した希土類元素を1種、あるいは選択した2種以上の元素を複合添加することも許容される。
REMは、強力な脱酸元素でもあり、Sと結合しREM・Sを形成することにより脱硫にも有効である。MnよりもSとの結合力が強いためにMnSの形成を防ぎ、鋼の清浄度を上げる効果がある。ただし、REMの過剰添加は、かえって鋼の清浄度を悪化させ、コストも増加するので、0.007%を上限とした。0.0005%未満では、その効果が少ないので、添加する場合は、その含有量の下限を0.0005%とするのが望ましい。
本発明の鋼板は、さらに下記の(a)式または(b)式で定義されるCeqJ1またはCeqJ2が0.3〜0.5%であるという条件を満たさなければならない。
CeqJ1=C+(Si/24)+(Mn/6) ・・・(a)
CeqJ2=C+(Si/24)+(Mn/6)+(Ni/40)+(Cr/5)
+(Mo/4)+(V/14) ・・・(b)
上記の(a)式は、 (b)式から添加しない元素を除いて簡略化したものである。これらの式は、JISのG3136に規定されている「炭素当量」の式と同じである。CeqJ1またはCeqJ2が0.3%を下回ると、溶接熱影響部の軟化が大きく継手強度が低下する。一方、0.5%を超えると溶接性が悪くなるため、これを上限とした。
(2)センターポロシティの体積
本発明の鋼板のセンターポロシティの体積は、0.2×10-4〜1.0×10-4cm3/g、即ち、鋼板の1グラム当たり0.2×10-4〜1.0×10-4cm3である。この上限値(1.0×10-4cm3/g)は、後述する実施例で説明するような多くの試験結果に基づいて定めた。この上限値以下であれば超音波探傷試験による合格率が100%になる。
連続鋳造鋳片内のセンターポロシティの密度は、厚み中心方向に向かって小さくなるという傾斜を持っている。本発明の目的はUST欠陥を無くすることであって、USTで検出されないセンターポロシティ、即ち、問題とならない大きさのセンターポロシティまで完全に無くすことや、あるいは、例えば1/4厚位置と1/2厚位置の密度を等しくすることではない。センターポロシティの体積を完全にゼロにすることは、技術的に極めて困難である。完全なゼロを目指すと、鋳片圧下量や厚板圧延の圧下比を無限に高めなければならず、そのようなことには工業的な意味はない。そこで本発明では鋼板のセンターポロシティの体積の下限を0.2×10-4cm3/gと定めた。
2.本発明の製造方法
(1)連続鋳造時の凝固末期の圧下
本発明の製造方法においては、まず連続鋳造工程において、凝固末期の中心固相率が0.8以上のときに鋳片の圧下を行う。中心固相率が0.8以上の時に圧下するには、操業条件(鋳造速度、冷却水量等)を調整して、連続鋳造設備に設けた圧下ロール(図1に示す7)の位置において鋳片の中心固相率が0.8以上になるようにすればよい。
図1は、連続鋳造の様子を模式的に示した図である。中心固相率が0.8未満のときは、鋳片の厚さ中心部には凝固末期の溶鋼4がまだ比較的多く残っているために、圧下ロール7で大きな圧下を加えると鋳片中心部に残っている溶鋼が排出されて上流側に向かって流動する。ところが、凝固の進行は必ずしも均一ではなく、冷却むら等により凝固シェル5の厚さは不均一になるので、圧下時の中心固相率は鋳片の位置によって厳密には異なっている。
従って、中心固相率が0.6以上、0.8未満の場合、鋳片の位置によっては、中心固相率が0.8以上となっている部分が存在する可能性がある。この時、圧下により排出された溶鋼が、中心固相率が0.8以上の部分では流動できなくなって、上流の溶鋼まで流れて混ざることができない。このため、センターポロシティは低減するものの、排出された溶鋼がそのまま鋳片に偏析として残り、中心偏析は逆に悪化してしまう。
一方、中心固相率が0.6未満の場合は、鋳片の内部に溶鋼が非常に多く残っているため、この溶鋼を排出するためには圧下量を大きくしなければならない。このため、大きな圧下力が必要となり、圧下設備が巨大になる。
これに対して、中心固相率が0.8以上の場合は、鋳片の内部に凝固末期の溶鋼が少なく、大きな圧下を加えても溶鋼はほとんど流動することがない。このため、中心偏析が悪化することはない。そこで、本発明方法では、凝固末期の中心固相率が0.8以上の時に圧下することとしている。
このように、中心固相率が0.8以上、すなわち0.8〜1.0の時に圧下を加えれば、センターポロシティ圧着の効果が得られる。しかし、中心固相率が1.0、すなわち完全に凝固してからでは、鋳片の厚さ中心部の温度が低下するため、変形抵抗が急激に大きくなる。このため、中心固相率が1.0になってしばらくしてから大きな圧下を加えたのでは、センターポロシティが分布している鋳片の厚さ中心部が有効に圧下されず、大きなセンターポロシティはあまり小さくならない可能性がある。したがって、鋳片の圧下は、中心固相率が0.8から1.0未満のときに行うのが望ましい。
中心固相率fsは、溶鋼の液相線温度TLと固相線温度Tsと厚さ中心の温度Tから、fs=(TL−T)/(TL−Ts)で計算して求めることができる。温度Tが溶鋼の液相線温度TL以上の場合はfs=0であり、温度Tが溶鋼の固相線温度Tsより低い場合はfs=1.0である。また、鋳片の厚さ中心の温度Tは、鋳造速度、鋳片の表面冷却、鋳造鋼種の物性等を考慮した鋳片厚さ方向一元の非定常伝熱解析計算によって求めることができる。
(2)凝固末期の圧下量
連続鋳造の凝固末期(中心固相率が0.8以上になった以降)に、下記(1)式を満足するように鋳片の圧下を行う。
r≧−0.25×p+3.75 ・・・(1)
上記の条件を定めた根拠は、図2に示す試験結果にある。
図2は、後述の実施例における試験結果を、鋳片の凝固末期圧下量(p)と鋼板製造時の圧下比(r)との関係で整理したグラフである。図示のとおり、USTで合格率が100%になるのは、r=−0.25×p+3.75の直線Aから上の領域である。即ち、上記の(1)式を満たす領域であればUSTで100%の合格率が得られるのである。
図2から明らかなように、凝固末期の圧下量はゼロでもよい。しかし、凝固末期の圧下量は、鋳片の幅方向中央部において3〜15mmとするのが好ましい。圧下量が3mm未満では、鋳片のセンターポロシティをあまり軽減することができないからである。つまり、圧下量が3mm未満の場合には、大きなセンターポロシティは、ほんのわずか小さくなるだけで、その後の圧延でも圧着できずに欠陥として残るおそれがあるからである。一方、中心固相率が0.8以上の時に、圧下量を15mmより大きくするには、非常に大きな圧下力が必要であり、それゆえに油圧設備等の大きな圧下設備が必要になりあまり現実的でなくなる。
(3)凝固末期圧下の方法
鋳片の凝固末期の圧下では、小さい圧下能力で効率よく圧下を行えるよう、上下対称圧下となるように圧下時に下ロールを突出させることが望ましい。また、鋳片をバルジングさせるのは必ずしも必要ではないが、例えば、圧下に必要な量が3mmの場合、バルジング量を2mmとると、圧下時の変形抵抗の大きい鋳片短辺部の圧下は1mmとなるので、必要に応じて、図3に示すようにバルジングを併用してもよい。
図3は、連続鋳造の過程で鋳片のバルジングを実施する状態を模式的に示す断面図、図4はバルジングの形態を示す模式的断面図である。図3中のLがバルジング(鋳片の厚みの増大)を起こさせる領域である。ガイドロール6群は、その鋳片8の厚み方向の間隔を一定値に制御できるように配置されており、図3のように鋳片8の内部に未凝固部が存在するときにバルジングさせ、図4に示すように、鋳片8の短辺長さt0より幅中央部の厚さtを大きくして、その後の圧下ロール7により該幅中央部を圧下することが可能である。
(4)厚板圧延条件
(4)−1.鋳片の加熱温度
連続鋳造で得た鋳片は、圧延に先立って900〜1250℃の温度に加熱する。900℃未満では、変形抵抗が大きく圧延能率が低下する。1250℃を超えると、エネルギー的に不経済である。
(4)−2.圧延の仕上げ温度
圧延の仕上げ温度は750℃以上とする。750℃より低温での圧延では、有効な結晶粒延伸と再結晶による細粒化すなわち高強度化の効果が小さく、また熱間変形抵抗が増大し圧延能率が低下するだけでなく、次に述べるオンライン水冷する場合にその効果を損なう。
(4)−3.圧延終了後の処理
圧延終了後は、オンライン水冷またはオフライン再加熱後水冷を少なくとも1回施すのが望ましい。HT60級以上の強度を得ようとすると、オンライン水冷またはオフライン再加熱後水冷を利用し、鋼の変態強化(俗にいう「焼きを入れる」こと)の作用を利用し、鋼の強度を得ることが工業的量産を行ううえで望ましい。もし、合金元素を多量に添加して強度を得ようとすれば、溶接性を損ない実用的でなくなる。本発明方法においても、上記の水冷工程を少なくとも1回行うことにより、強度確保と溶接性の両立を図ることができる。なお、焼戻し工程は、必要により採り入れてもよい。
(4)−4.圧延の圧下比
連続鋳造後、鋳片を厚板圧延する場合、圧下比、即ち、「鋳込み後の鋳片厚さ/鋼板圧延仕上げ厚さ」が大きい程、圧延時の圧下量が大きい。通常はこの圧下比は2.5〜4.0程度である。通常、圧下比が2.5未満では、鋳片に残った小さいセンターポロシティ(厚さ1mm未満程度)でも、圧延時に圧着、解消できない場合があり、製造された極厚鋼板にはUST欠陥が見られる場合がある。また、600MPa級鋼(HT60クラス)の高強度鋼の製造のためには、センターポロシティ圧着のためにも2.5以上の比較的大きな圧下比とする必要がある。
本発明例では、圧下比2.5以下であっても前記の(1)式を満足すれば、センターポロシティの大幅な低減が可能である。即ち、(1)式を満たすように、連続鋳造鋳片の凝固末期圧下を実施しておけばよい。
鋼板製造時の好ましい圧下比は1.5〜4.0である。圧下比が1.5未満であると、(1)式から明らかなように、凝固末期の圧下量を大きくしなければならず、連続鋳造機にかかる負担が大きくなる。また、本発明方法は、連続鋳造法によって得た鋳片から、板厚60〜200mmの600MPa級鋼(HT60クラス)の極厚鋼板を製造しようとするものであり、圧下比が4を超える圧下を要求することは、連続鋳造の鋳込み鋳片厚さを厚くする必要を生じ、大きな連続鋳造機を必要とする。すなわち、圧下比を大きくするためには、連続鋳造機の鋳型の厚さを大きくしなければならない。このため、設備費用の嵩む専用の連続鋳造機を用意するか、あるいは、操業時に大きな鋳型厚を用いて鋳造速度を極端に遅くしなければならず、生産性が極端に悪くなるという問題がある。
[実施例1]
以下、本発明の基礎となった試験および本発明の効果を確認するために行った試験について説明する。供試鋼の化学組成を表1に示す。
(1)供試材の製造
連続鋳造には図1に示したような垂直曲げ型の連続鋳造機を使用した。用いた鋳型3としては、厚さが311mm(以降300mm厚鋳片とはこの鋳型で鋳造した鋳片を意味する)、幅は2300mmの大きさのものを使用した。鋳造速度は0.61〜0.62m/min、二次冷却水量は0.62〜0.73リットル/kg・steelとした。
タンディッシュ(図示せず)から浸漬ノズル2を経て鋳型3に注入された溶鋼4は、鋳型3およびその下方の二次冷却スプレーノズル群(図示せず)から噴射されるスプレー水によって冷却され、凝固シェル5が形成されて鋳片8となる。内部に未凝固部を保持したまま、鋳片8はガイドロール6群を経て圧下ロール7により圧下されて引き抜かれる。なお、図1中の4aは溶鋼4の湯面であるメニスカスを示す。
圧下ロール7は、鋳型3のメニスカス4aより21.5m下方の位置に一対設置した。圧下ロール7の径は450mmで、圧下力は最大600tonとした。なお、試験に用いた連続鋳造機は垂直曲げ型連続鋳造機であるが、湾曲型連続鋳造機を使用してもよいことは言うまでもない。
圧下時の中心固相率は、主に鋳造速度と鋳片の幅中央部の厚さに合わせて、種々鋳造速度を変えて一次元の伝熱計算を行い、所定の固相率になる条件を求めた。また、タンディッシュ内の溶鋼温度は、△T=27〜50℃の間でほぼ一定とした。なお、ΔTは溶鋼温度と液相線温度の差である。
得られた鋳片は、センターポロシティの調査のために一部からサンプルを採取した後、950〜1250℃に加熱し、1050〜750℃の範囲で圧下比0〜4で仕上げ圧延を行い極厚材を製造した。使用した仕上げ圧延機のワークロール径は1040mm、最大圧下力は6300tonである。
(2)鋼板の品質検査
圧延後の極厚鋼板の検査は、 JIS Z 3060(2002)の鋼溶接部の超音波探傷試験方法によって行った。この方法では、きずエコー高さが、対比試験片RB-41を用いて作成されたエコー高さ区分線Lの半分以下の場合、または内部きずの実寸法を1mm単位で評価した場合にその最大値が板厚の1/3以下の場合に、その極厚鋼板は合格とし、UST欠陥はないものと判断した。
一方、鋼板についてのセンターポロシティ評価を以下の方法で実施した。即ち、試料形状は、鋳片については、比重測定の精度を勘案し、長さ50×幅100×厚さ7(単位:mm)とし、面の加工精度は△仕上げ3つで行った。鋳片のポロシティ発生がほとんどないとみられる1/4厚み位置(1/4t位置)の平均比重を基準として、厚さ中心部の比重から算出したセンターポロシティの比体積で評価した。1/4t位置の平均比重ρ0と、厚み中心の平均比重ρから、下記(3)式で定義するセンターポロシティ体積Vpを求めた。
Vp(cm3/g)=(1/ρ)−(1/ρ0) ・・・(3)
なお、鋳片の1/4厚み位置の平均比重算出においては、幅方向7箇所、厚み中心の平均比重算出には幅方向16箇所からサンプルを採取した。また、圧延材のように圧下比が異なる場合は、試料の厚みは圧延材厚みの約1/20で統一した。
(4)検査結果
表2に600MPa級鋼(HT60級鋼)で行った実施例の試験条件と超音波探傷試験結果を示す。
Figure 2007302908
Figure 2007302908
表2に示すとおり、本発明で定める条件を満たす鋼板は、いずれも超音波探傷試験において合格率が100%である。そして、このような鋼板が本発明の製造方法で製造できることも明らかである。
[実施例2]
さらに様々な化学組成を有する供試鋼を用いて、実施例1と同様の試験を行った。表3に供試鋼の化学組成を示す。表3に示す供試鋼の化学組成は、すべて本発明で規定する化学組成の範囲内にあるもので、いずれも600MPa級の高張力を有する鋼となる化学組成である。
表4に試験条件と超音波探傷試験結果を示す。なお、表4に示す試験条件はすべて本発明で規定する製造条件の範囲内にあるものである。
Figure 2007302908
Figure 2007302908
表4に示すとおり、いずれも超音波探傷試験において合格率が100%である。そして、このような鋼板が本発明の製造方法で製造できることも明らかである。
本発明の鋼板は、連続鋳造鋳片を素材としながら、センターポロシティに起因するUST欠陥のない内質の良好な極厚高張力鋼板である。例えば、鋼製橋脚は、近年、設置場所の制約から特殊な形状を採用する場合が多く、厚肉化の傾向がみられる。また、既設橋脚においては疲労亀裂が問題となるため、溶接部の超音波探傷試験の規格が厳格化されてきている。本発明の鋼板は、このような用途にきわめて好適である。
本発明の鋼板は、前述した本発明の製造方法によって、過大な設備負担なしに製造することができる。
連続鋳造の態様を示す模式的な断面図である。 鋳片の凝固末期の圧下量と鋼板製造時の圧延比とがUST合格率に及ぼす影響を示すグラフである。 連続鋳造の過程で鋳片のバルジングを起こさせる態様を示す模式的な断面図である。 鋳片のバルジングの状態を示す模式的な断面図である。
符号の説明
1:浸漬ノズル、2:溶鋼湯面、3:鋳型、4:溶鋼、5:凝固シェル、6:ガイドロール、7:圧下ロール、8:鋳片

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.02%以下、S:0.015%以下、N:0.008%以下、およびAl:0.003〜0.07%を含み、残部がFeおよび不純物からなり、下記の(a)式で表されるCeqJ1が0.3〜0.5(%)である組成を有し、センターポロシティの体積が0.2×10-4〜1.0×10-4cm3/gであることを特徴とする連続鋳造鋳片から製造した板厚60mm以上の600MPa級高張力鋼板。
    CeqJ1=C+(Si/24)+(Mn/6) ・・・(a)
    ただし、(a)式の元素記号は、その元素の含有量(質量%)を示す。
  2. 質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.02%以下、S:0.015%以下、N:0.008%以下、Al:0.003〜0.07%、ならびにCu:0.5%以下、Ni:0.9%以下、Cr:0.8%以下、Mo:0.6%以下、Nb:0.07%以下、V:0.09%以下、Ti:0.03%以下およびB:0.003%以下のうちの1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不純物からなり、下記の(b)式で表されるCeqJ2が0.3〜0.5(%)である組成を有し、センターポロシティの体積が0.2×10-4〜1.0×10-4cm3/gであることを特徴とする連続鋳造鋳片から製造した板厚60mm以上の600MPa級高張力鋼板。
    CeqJ2=C+(Si/24)+(Mn/6)+(Ni/40)+(Cr/5)
    +(Mo/4)+(V/14) ・・・(b)
    ただし、(b)式の元素記号は、その元素の含有量(質量%)を示す。
  3. Feの一部に代えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下およびREM:0.007%以下のうちの1種または2種以上を含む請求項1または請求項2に記載の600MPa級高張力鋼板。
  4. 溶鋼を連続鋳造により鋳片とし、その鋳片を900〜1250℃に加熱した後、圧延を施し、仕上げ温度750℃以上で圧延を終了する高張力鋼板の製造方法であって、連続鋳造の凝固末期における圧下量をp、鋼片から鋼板に圧延する際の圧下比をrとしたとき、下記(1)式を満足させることを特徴とする板厚60mm以上の600MPa級高張力鋼板の製造方法。ただし、凝固末期とは、鋳片の中心固相率が0.8以上になった以降を意味する。
    r≧−0.25×p+3.75 ・・・(1)
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