JP5447292B2 - 圧延素材鋼とそれを使用した圧延鋼材の製造方法 - Google Patents
圧延素材鋼とそれを使用した圧延鋼材の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5447292B2 JP5447292B2 JP2010184227A JP2010184227A JP5447292B2 JP 5447292 B2 JP5447292 B2 JP 5447292B2 JP 2010184227 A JP2010184227 A JP 2010184227A JP 2010184227 A JP2010184227 A JP 2010184227A JP 5447292 B2 JP5447292 B2 JP 5447292B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- steel material
- rolled steel
- mpa
- steel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
具体的には、本発明は、同じ圧延素材鋼から、板厚が50mm未満であって引張強度が490MPa級の圧延鋼材、および板厚が50mm未満であって引張強度が550MPa級の圧延鋼材を作り分けて製造する方法と、そのときに圧延鋼材の素材として用いる半製品としての圧延素材鋼(以下、単に「鋼」または「圧延素材」と称することもある)に関する。
JIS G 3106には、SM400A、SM400B、SM490A又はSM490B鋼が規定されている。特許文献1には、JIS G 3106に規定されたSM400A又はSM400B鋼の炭素当量を0.21〜0.25%(本明細書では特に断りがない限り化学組成に関する「%」は「質量%」を意味するものとする)に、同じくSM490A又はSM490B鋼の炭素当量を0.29〜0.37%とすることで鋼種を集約できることが開示されている。具体的製造方法としては、鋼片を1100〜1300℃の温度域に加熱した後に圧延を開始し、中間圧延工程のリバース圧延のパス間でフランジを水冷し、表層部の温度を750℃以下に冷却し、かつリバース圧延のパス間の復熱過程でフランジ表層部の温度を低温オーステナイト域ないしはオーステナイト/フェライト二相共存温度域とし、この温度域で圧延するリバース圧延工程を1回以上繰り返し、フランジの圧延平均温度950℃以下で総圧下量20%以上になるように圧下し、仕上圧延工程の圧延終了後に、フランジ厚さ12〜24mmの形鋼のときにはフランジ外側面を3〜10℃/秒の冷却速度で、フランジ厚さ25〜40mmの形鋼のときにはフランジ外側面を0.5〜6℃/秒の冷却速度で冷却する、制御圧延による低炭素当量圧延形鋼の製造方法である。
特許文献3には、鋼片を加熱圧延した後、加速冷却設備によって鋼板を冷却するに際し、鋼板の所望の強度分布に応じて鋼板の冷却速度を部位毎に調整する方法が開示されている。
さらに、特許文献5には、溶接の際のパス間温度を高くした多層盛り溶接鋼材とその製造方法が開示されている。
C:0.11%以上0.20%以下
Cは、母材及び溶接部の強度を高める作用を有する。また一般にC含有量が高いほうが冷却速度の増加に伴う強度の増加量が大きく、冷却速度の変化により異なる強度レベルの第1の圧延鋼材及び第2の圧延鋼材を作り分けることが容易となる。一方で、C含有量が多くなると、母材及び溶接部の靱性低下が著しくなり、また溶接割れが多くなる。しかしながら、強度および靱性には、C含有量のみならず、後述する他の元素の含有量、及び各種製造条件との組合せによる影響を受ける。
Siは、特に引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材において母材の強度を確保する作用を有する。しかしながら、その含有量が0.01%未満ではこのような効果に乏しい。一方、Si含有量が多くなり、特に、Si含有量が0.60%を超えると、母材及び溶接部の靱性低下が著しくなり、また溶接割れが多くなる。より大きな効果を得るために、Si含有量の下限は、0.10%以上が好ましく、0.20%以上とするのがより望ましい。その上限は、0.50%以下とすることが好ましく、0.40%以下とすることがより望ましい。
Mnは、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で不可欠な元素である。しかしながら、Mn含有量が0.5%未満ではこのような効果を得られない。一方、Mn含有量が2.0%を超えると、母材及び溶接部の靱性低下が著しくなり、また溶接割れが多くなる。より大きな効果を得るために、Mn含有量の下限は1.0%以上、より好ましくは1.3%以上とするのが望ましい。その上限は、1.7%以下とすることが好ましく、1.5%以下とすることがより望ましい。
Tiは、鋳造した鋼の表面性状を改善する上で有用である。また、Tiには、母材及び溶接部の靱性を高める作用もある。しかしながら、Ti含有量が0.005%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Ti含有量が0.04%を超えると母材の靱性低下が顕著になる。より大きな効果を得るために、Ti含有量は0.006%以上0.03%以下とすることが好ましく、0.007%以上0.02%以下とすることがより望ましい。
Bは、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で有用である。B含有量が0.0005%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、B含有量が0.0030%を超えると母材の靱性低下が顕著になる。より大きな効果を得るために、B含有量は0.0007%以上0.0025%以下とすることが好ましく、0.0009%以上0.0020%以下とすることがより望ましい。
Alは、製鋼時の脱酸に有効な元素である。しかしながら、sol.Al(酸可溶Al)含有量が0.005%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、sol.Al含有量が0.090%を超えると、介在物の生成量が多くなって母材及び溶接部の靱性劣化が著しくなる。より大きな効果を得るために、sol.Al含有量は0.007%以上0.060%以下とすることが好ましく、0.010%以上0.040%以下とすることがより望ましい。
Nは、TiNやBNなどの析出物を形成し、これらの析出物が微細な場合には、高温加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制し、母材と溶接部の靱性を高めることに寄与する。しかしながら、N含有量が0.0020%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、N含有量が0.0090%を超えると、母材と溶接部の靱性低下が大きくなる。より大きな効果を得るために、N含有量は0.0030%以上0.0080%以下とすることが好ましく、0.0040%以上0.0070%以下とすることがより望ましい。
Cu:0.01%以上1.5%以下
Cuは、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で有用である。Cu含有量が0.01%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Cu含有量が1.5%を超えると、熱間加工時に割れが生じやすくなるし、また、母材及び溶接部の靱性劣化が顕著になり易い。Cu含有量は0.05%以上0.6%以下とすることが好ましく、0.10%以上0.4%以下とすることがより望ましい。
Niは、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で有用である。Ni含有量が0.01%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Ni含有量が1.5%を超えると鋳造した鋼の表面疵が著しくなり易い。Ni含有量は0.05%以上1.0%以下とすることが好ましく、0.1%以上0.5%以下とすることがより望ましい。また、Cu含有量による熱間加工時の割れを防止するため、Cu含有量の30%以上のNiを含有させることが好ましく、Cu含有量の50%以上のNiを含有させることがより望ましい。
Crは、母材及び溶接部の強度を確保する上で有用である。Cr含有量が0.01%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Cr含有量が1.5%を超えると溶接割れが顕著になる。Crの含有量は0.05%以上1.0%以下とすることが好ましく、0.1%以上0.5%以下とすることがより望ましい。
Moは、母材及び溶接部の強度を確保する上で有用である。Mo含有量が0.01%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Mo含有量が1.5%を超えると溶接割れが顕著になる。Moの含有量は0.02%以上1.0%以下とすることが好ましく、0.03%以上0.5%以下とすることがより望ましい。
Vは、母材の強度を確保する上で有用である。V含有量が0.001%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、V含有量が0.10%を超えると母材の靱性低下が顕著になる。V含有量は0.005%以上0.08%以下とすることが好ましく、0.03%以上0.06%以下とすることがより望ましい。
Nbは、母材の強度及び靱性を向上させる上で有用である。Nb含有量が0.001%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Nb含有量が0.100%を超えると、溶接部靱性の著しい低下を招く。Nb含有量は0.003%以上0.05%以下とすることが好ましく、0.005%以上0.020%以下とすることがより望ましい。
Pは、不純物として鋼中に存在する元素で、靱性の低下をきたし、また、溶接時に高温割れを生じさせる。特に、その含有量が0.03%を超えると、靱性の低下と溶接時の高温割れの発生が著しくなり易い。P含有量は少ないほど望ましいため、その下限は特に規定するものではない。P含有量は0.02%以下とすることが望ましい。
Sは、母材及び溶接部の靱性劣化を招く。特に、その含有量が0.015%を超えると、母材及び溶接部の靱性劣化が著しくなり易い。Sは少ないほど望ましい不純物であるため、その下限は特に規定されない。S含有量は0.0010%以下とすることが好ましく、0.0005%以下とすることがより望ましい。
母材及び溶接部において、TiN等の微細な窒化物による靱性改善効果を確保するために、Ti含有量とN含有量との比(Ti/N)を1.0以上3.0以下とする。当該比1.0以上は靭性改善に必要であるが、3.0を超えると、窒化物生成量が少なくなり、組織微細化による靭性改善効果が期待できなくなる。
ただし、Fn=N−(Ti/3.4) ・・・・(1)
(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
ただし、Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・・(2)
(2)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
O(酸素)は、鋼中に含まれる不純物である。O含有量が多くなり過ぎると母材及び溶接部の靱性や延性の著しい低下を招くため、O含有量を0.004%以下とすることが好ましく、0.002%以下とすることがより望ましい。
鋼の化学組成として、上記以外の残部は、Feおよび不純物である。
鋼材が常温に達した時のベイナイト面積率を、引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材(放冷材)では0%以上30%以下、必要により15%以下とするとともに、引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材(加速冷却材)では40%以上100%以下、必要により50%以上100%以下とする。第1の圧延鋼材(放冷材)でベイナイト面積率が30%を超えると、強度が過剰となり易いため、490MPa級の第1の圧延鋼材、及び550MPa級の第2の圧延鋼材の作り分けが困難になる。一方、第2の圧延鋼材(加速冷却材)でベイナイト面積率が40%未満であると強度不足となり易いため、やはり490MPa級の第1の圧延鋼材、及び550MPa級の第2の圧延鋼材の作り分けが困難になる。
本発明における強度レベルの異なる圧延鋼材の作り分けは、冷却条件によって、具体的には放冷材として、また加速冷却材として実現するものであって、その指標としての上述のようなベイナイト面積率が実現されて目的強度が発揮できれば、ベイナイト以外の組織については特に限定されない。
なお、組織の比率は、第1の圧延鋼材及び第2の圧延鋼材それぞれの断面において、その断面の平均値としての比率で判断することが望ましい。
本発明により製造される、引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材の板厚、及び引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材の板厚は、いずれも50mm未満である。なお、板厚の下限は約6mmである。
本発明により製造される第1の圧延鋼材の引張強度が490MPa級であるとは、引張強度が490MPa以上610MPa以下であることを意味し、それを実現するためにベイナイト面積率を0%以上、30%以下に規定する。また、引張強度が550MPa級であるとは、引張強度が550MPa以上670MPa以下であることを意味し、それを実現するためにベイナイト面積率を40%以上、100%以下に規定する。
また、第1の圧延鋼材及び第2の圧延鋼材それぞれの、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーはいずれも100J以上である。
本発明の好適態様において、上記の鋼材の特徴に加えてさらに、析出B量として、0.0002%以上0.0030%以下となる量でBを含有させることによって、後述する第1、第2の溶接条件のいずれにおいても溶接熱影響部の0℃でのシャルピー吸収エネルギーを70J以上とすることがより確実となる。析出B量が0.0002%未満では効果が乏しい。また0.0030%を超える場合には、かえって靱性改善効果が得られない。このように析出B量を制御するためには、上述したFn値の制御を行う。
本発明は、1種類の素材から異なる引張強度の鋼材を製造することに係るものであるが、さらに、異なる溶接条件で溶接した場合においても良好な溶接部性能が得られるという特徴を有する。この特徴を明確化するために、溶接入熱40kJ/cm以下、最高パス間温度350℃以下の第1の溶接条件と溶接入熱50kJ/cm以上、最高パス間温度360℃以上の第2の溶接条件のいずれにおいても溶接熱影響部の0℃でのシャルピー吸収エネルギーが70J以上を有することとした。
本発明に係る製造方法によって、引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材、及び550MPa級の第2の圧延鋼材を、効率的かつ安定して作り分けることが可能である。
(i)第1の圧延鋼材を製造する場合には、鋳造された1種類のスラブを用いて、以下に説明する条件で、例えば、スラブの加熱、孔型圧延を用いた粗圧延、エッジャー圧延機及び粗ユニバーサル圧延機を用いた中間圧延並びに仕上ユニバーサル圧延機を用いた仕上圧延からなる熱間圧延を行い、800℃以上の温度で熱間圧延を終了し、鋼材の温度が常温に達するまでの一部の温度域、例えば300℃までを1℃/s未満の速度で冷却(例えば放冷)することによって、引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材(例:圧延H形鋼)を製造でき、
(ii)第2の圧延鋼材を製造する場合には、鋳造された同じ組成成分のスラブを用いて、以下に説明する条件で、例えば、スラブの加熱、孔型圧延を用いた粗圧延、エッジャー圧延機及び粗ユニバーサル圧延機を用いた中間圧延並びに仕上ユニバーサル圧延機を用いた仕上圧延からなる熱間圧延を行い、800℃以上の温度で熱間圧延を終了し、鋼材の温度が常温に達するまでの一部の温度域、例えば300℃までを1℃/s以上の速度で冷却することによって、引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材(例:圧延H形鋼)を製造できる。
本発明に係る化学組成を有する鋼片又は鋼塊を所定の形状及び寸法に熱間圧延する。
以下の説明において、温度は、特に言及がなければ、鋼の表面温度を意味する。なお、圧延ロールとの接触による抜熱や加速冷却などによって鋼の表面温度が下がった後に復熱する場合には、復熱後の表面温度を意味する。
加熱温度を1200℃以上とすることにより熱間加工が容易になるとともに、Nb、V、Ti等が基地に固溶して引張強度の増加の効果が得られる。また、加熱温度を1350℃以下とすることによって結晶粒の粗大化が比較的抑制され、良好な靱性の確保に寄与する。このため、鋼片又は鋼塊の加熱温度は1200℃以上1350℃以下とすることが望ましい。加熱温度を1200℃以上1330℃以下とすることが好ましく、1230℃以上1320℃以下とすることがより望ましい。
昇温時間及び保持時間の合計を加熱時間とする。加熱時間が短すぎると表面温度は高くても鋼の内部温度が低いために、引張強度の増加の効果が得られない可能性がある。そのため、加熱時間を1時間以上とすることが望ましい。なお、加熱時間は長すぎると組織の粗大化によって靱性の低下を生じる可能性があるため、加熱時間は10時間以下とすることが望ましい。望ましい加熱時間は2時間以上6時間以下である。
950℃以下での累積圧下率を大きくすることによって、オーステナイト相に残留ひずみが与えられ、相変態後の組織が微細になるため、良好な靱性を得ることができる。一般にC含有量の増加によって靱性が劣化するが、950℃以下での累積圧下率を増加させることによって、鋼材の靱性を良好にすることが可能である。この効果を得るために、950℃以下での累積圧下率を50%以上とすることが望ましい。950℃以下での累積圧下率を60%以上とすることがより望ましい。
D)950℃超1050℃以下での累積圧下率:10%以上
950℃以下での累積圧下率を50%以上とすることに加えて、950℃超1050℃以下での累積圧下率を10%以上とすることによって、オーステナイト相の再結晶による細粒化や残留ひずみによって相変態後の組織が微細となって、靱性がより良好になる。さらに好ましくは、このときの累積圧下率は20%以上である。
ここで、「950℃超1050℃以下での累積圧下率」とは、{(1050℃に達した時点の厚さ)−(951℃に達した時点の厚さ)}/(1050℃に達した時点の厚さ)×100(%)を意味する。
圧延終了温度が800℃よりも低い場合には、熱間圧延後の加速冷却前にフェライト変態が進行し易いため、所望のミクロ組織と引張強度とを確保することが困難になる。このため、本発明では圧延仕上温度を800℃以上とするのが好ましい。
より好ましくは、圧延仕上温度は800℃以上900℃以下、さらに好ましくは、820℃以上870℃以下である。
圧延パス数が少ないと圧延荷重が高くなり、鋼材の形状制御が難しくなる。また、温度測定及び温度制御を行う機会が減るため、性能がばらつき易くなり、良好な強度−伸びバランスや靱性が確保できない可能性が高くなる。したがって、圧延パス数は10パス以上とすることが望ましく、14パス以上とすることがより望ましい。
上述した圧延工程によって得られた熱間圧延鋼材を冷却する工程において、熱間圧延終了後、鋼材の温度が300℃に達するまでの冷却速度を、1℃/s未満(例:放冷、すなわち大気中に放置して冷却)とすることによって、熱間鋸断性能、靱性、及び溶接性に優れる引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材(例:圧延H形鋼)を製造することができる。300℃から常温までの範囲で冷却速度が変化しても、本発明に係る最終製品としての圧延鋼材の強度はほとんど変化しない。このときの「冷却速度」は、放冷速度であるから、放冷開始温度から300℃までの平均冷却速度を意味する。
上述した圧延工程を行って得られた熱間圧延鋼材を冷却する工程において、鋼材の温度を1℃/s以上の速度で加速冷却することによって、靱性、及び溶接性に優れる引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材(例:圧延H形鋼)を製造することができる。
この加速冷却は、引張強度や靱性を高める目的で実施する。強度改善のためにC含有量を高めたり、他の強化元素の含有量を増加させたりする場合に、今度は、靱性が劣化してしまうときがある。そのようなときに、強度を改善すると同時に靱性を劣化させてしまう元素の含有量を抑制して、その代わりに、加速冷却を適用することによって、鋼材の靱性を良好にすることができる。この効果を得るために、加速冷却速度を1℃/秒以上とすることが望ましい。一方、加速冷却速度が大きすぎる場合には靱性の劣化、さらには曲がりや反りといった形状の悪化を招くため、加速冷却速度は20℃/秒以下とすることが望ましく、10℃/秒以下とすることがさらに望ましい。
加速冷却される鋼材の表面は、加速冷却に用いられる水(あるいは他の液体)との熱伝達により速く冷却される。一方、鋼材の内部は鋼の熱伝導で冷却されるため、比較的遅く冷却されるので、鋼材の厚さが大きくなると鋼材の表面と内部との冷却速度差が顕著となる。そのため、急速冷却を採用する場合、速く冷却される表面近傍では靱性劣化が顕著になる可能性がある。そのような場合、Acr値を基準とすることにより、表面と内部との冷却速度差を比較的小さくし、ひいては表面と内部との機械的特性の差を小さくすることが可能になる。
加速冷却開始温度が850℃よりも高い場合には、良好な靱性を確保することが困難になるおそれがあるとともに、加速冷却開始温度が750℃よりも低い場合には、所望の引張強度特性を確保することが困難になるおそれがあるので、良好な強度と靱性を得るためには、加速冷却開始温度は750℃以上850℃以下、より望ましくは、780℃以上830℃以下である。
加速冷却停止温度が690℃よりも高い場合には、所望の強度と靱性を確保することが困難になるおそれがあるとともに、加速冷却停止温度が300℃よりも低い場合には、水素割れが生じやすくなる可能性があるので、加速冷却停止温度は300℃以上690℃以下とすることが望ましい。また、加速冷却停止温度の低下や板厚の増加によって熱間鋸断性能は低下する傾向がある。熱間鋸断を行う場合には、加速冷却停止温度を550℃以上とすることが望ましい。なお、より良好な強度と靱性を得るために、加速冷却停止温度の上限は650℃以下とすることがより望ましい。
本発明の製造方法においては、好ましくは、降伏比を小さくするため、加速冷却後の圧延鋼材に対して400℃以上の熱処理を実施しない。
表1に示す化学組成を有する鋼を真空溶解炉により溶製し、鋳型に鋳込んで180kgの鋼塊とした。鋼1、2、3、7、8は化学組成が本発明で規定する範囲にある本発明例の鋼であり、鋼4、5、6、9は化学組成が本発明で規定する範囲を外れる比較例の鋼である。
このようにして得た鋼片について、下記圧延条件で熱間圧延を行った。常温からそれぞれの加熱温度にほぼ1時間で昇温し、この温度でさらに1時間以上保持した。したがって、このときの加熱時間は2時間以下、6時間は越えなかった。
いずれの板No.も950℃以下での累積圧下率は50%以上、950℃超1050℃以下での累積圧下率は10%以上、圧延パス数は14パス以上、加速冷却後の熱処理なし。
結果は表3にまとめて示す。
ミクロ組織は、各熱延鋼板の厚さ方向1/4、幅方向1/2、長さ方向1/2となる位置から試験片を採取し、圧延方向と板厚方向を含む面で鏡面研磨した後、ナイタールで腐食し、倍率を100倍又は500倍として光学顕微鏡観察、及びより高倍率の走査型電子顕微鏡観察を行うことにより、組織を調査した。
なお、上記の引張試験片は、鋼板の幅方向中央部において、板厚方向中央部から圧延方向(すなわち、鋼板の長さ方向)と平行に採取した。
表3に、これらの各試験の結果をまとめて示す。
Claims (7)
- 質量%で、C:0.11%以上0.20%以下、Si:0.01%以上0.60%以下、Mn:0.5%以上2.0%以下、Ti:0.005%以上0.04%以下、B:0.0005%以上0.0030%以下、sol.Al:0.005%以上0.090%以下、およびN:0.0020%以上0.0090%以下を含有し、さらに、Cu:0.01%以上1.5%以下、Ni:0.01%以上1.5%以下、Cr:0.01%以上1.5%以下、Mo:0.01%以上1.5%以下、V:0.001%以上0.100%以下、およびNb:0.001%以上0.100%以下から成る群から選んだ1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP、SがそれぞれP:0.03%以下、S:0.015%以下、Ti量とN量との比(Ti/N):1.0以上3.0以下、下記(1)式で計算されるFnの値:0.0010%以上0.0040%以下、下記(2)式で計算されるPcmの値:0.20%以上0.30%以下である化学組成を有し、
板厚が50mm未満である引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材、及び、板厚が50mm未満である引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材の圧延素材である
ことを特徴とする鋼。
Fn=N−(Ti/3.4) ・・・・(1)
Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B ・・・・(2)
ここで、(1)、(2)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。 - 第1の前記圧延鋼材が、ベイナイト面積率0%以上30%以下、引張強度490MPa以上610MPa以下の圧延鋼材であり、第2の前記圧延鋼材が、ベイナイト面積率が40%以上100%以下、引張強度が550MPa以上670MPa以下の圧延鋼材である、請求項1記載の鋼。
- 前記の第1の圧延鋼材および第2の圧延鋼材が、さらに、鋼材の板厚方向1/4位置、板幅方向1/2位置において析出B量:0.0002%以上0.0030%以下を含有し、溶接入熱40kJ/cm以下、最高パス間温度350℃以下の第1の溶接条件と溶接入熱50kJ/cm以上、最高パス間温度360℃以上の第2の溶接条件のいずれにおいても溶接熱影響部の0℃でのシャルピー吸収エネルギーが70J以上を有する、請求項1または2に記載の鋼。
- 請求項1記載の化学組成を有する鋼片又は鋼塊に、800℃以上の温度で熱間圧延を終了して鋼材とし、
熱間圧延後に該鋼材の温度が300℃に達するまでを1℃/s未満の速度で冷却するか、あるいは熱間圧延後に該鋼材の温度が300℃に達するまでの一部の温度域を1℃/s以上の速度で冷却して、ベイナイト面積率が0%以上30%以下、板厚が50mm未満である引張強度が490MPa以上610MPa以下の第1の圧延鋼材、又は、ベイナイト面積率が40%以上100%以下、板厚が50mm未満である引張強度が550MPa以上670MPa以下の第2の圧延鋼材のいずれかを製造することを特徴とする圧延鋼材の製造方法。 - 請求項1記載の化学組成を有する鋼片又は鋼塊に、800℃以上の温度で熱間圧延を終了して圧延鋼材とし、
板厚が50mm未満である引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材を製造するか、あるいは、板厚が50mm未満である引張強度が550MPa級2の圧延鋼材を製造するかに基づいて、
前記第1の圧延鋼材を製造する場合には、熱間圧延終了後に、前記鋼材の温度が300℃に達するまでを1℃/s未満の速度で冷却し、前記第2の圧延鋼材を製造する場合には、熱間圧延終了後に、前記鋼材の温度が300℃に達するまでの一部の温度域を1℃/s以上の速度で冷却することを特徴とする圧延鋼材の製造方法。 - 第1の前記圧延鋼材が、ベイナイト面積率0%以上30%以下、引張強度490MPa以上610MPa以下の圧延鋼材であり、第2の前記圧延鋼材が、ベイナイト面積率が40%以上100%以下、引張強度が550MPa以上670MPa以下の圧延鋼材である、請求項5記載の圧延鋼材の製造方法。
- 前記の第1の圧延鋼材および第2の圧延鋼材が、さらに、鋼材の板厚方向1/4位置、板幅方向1/2位置において析出B量:0.0002%以上0.0030%以下を含有し、溶接入熱40kJ/cm以下、最高パス間温度350℃以下の第1の溶接条件と溶接入熱50kJ/cm以上、最高パス間温度360℃以上の第2の溶接条件のいずれにおいても溶接熱影響部の0℃でのシャルピー吸収エネルギーが70J以上を有する、請求項4ないし6のいずれかに記載の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010184227A JP5447292B2 (ja) | 2010-08-19 | 2010-08-19 | 圧延素材鋼とそれを使用した圧延鋼材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010184227A JP5447292B2 (ja) | 2010-08-19 | 2010-08-19 | 圧延素材鋼とそれを使用した圧延鋼材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012041603A JP2012041603A (ja) | 2012-03-01 |
JP5447292B2 true JP5447292B2 (ja) | 2014-03-19 |
Family
ID=45898239
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010184227A Active JP5447292B2 (ja) | 2010-08-19 | 2010-08-19 | 圧延素材鋼とそれを使用した圧延鋼材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5447292B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103042028A (zh) * | 2012-12-21 | 2013-04-17 | 山西新泰钢铁有限公司 | 一种具有稳定冲击功h型钢的轧制方法 |
WO2014157036A1 (ja) * | 2013-03-28 | 2014-10-02 | 新日鐵住金株式会社 | 鋼矢板及びその製造方法 |
JP6354571B2 (ja) * | 2014-12-22 | 2018-07-11 | 新日鐵住金株式会社 | 圧延h形鋼及びその製造方法 |
CN109715842B (zh) * | 2016-12-21 | 2020-03-06 | 日本制铁株式会社 | H型钢及其制造方法 |
KR20240059874A (ko) * | 2022-10-28 | 2024-05-08 | 현대제철 주식회사 | 형강 및 형강 제조 방법 |
-
2010
- 2010-08-19 JP JP2010184227A patent/JP5447292B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2012041603A (ja) | 2012-03-01 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5176885B2 (ja) | 鋼材及びその製造方法 | |
JP6468408B2 (ja) | H形鋼及びその製造方法 | |
JP5574059B2 (ja) | 低温靭性に優れた高強度h形鋼及びその製造方法 | |
JP6665525B2 (ja) | 低温用h形鋼及びその製造方法 | |
JP5402560B2 (ja) | 鋼と圧延鋼材の製造方法 | |
JP6354572B2 (ja) | 低温用h形鋼及びその製造方法 | |
WO2019181130A1 (ja) | 耐摩耗鋼及びその製造方法 | |
WO2012060405A1 (ja) | 高強度鋼板及びその製造方法 | |
JP6856129B2 (ja) | 高Mn鋼の製造方法 | |
JPWO2021106368A1 (ja) | 鋼板およびその製造方法 | |
JP6988836B2 (ja) | 超低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 | |
WO2014175122A1 (ja) | H形鋼及びその製造方法 | |
JP5447292B2 (ja) | 圧延素材鋼とそれを使用した圧延鋼材の製造方法 | |
JP2007177326A (ja) | 低降伏比を有する高張力薄肉鋼板およびその製造方法 | |
JP2008088547A (ja) | 高温強度、靭性及び耐再熱脆化特性に優れた耐火鋼材並びにその製造方法 | |
CN113330125A (zh) | 厚钢板及其制造方法 | |
JP4506985B2 (ja) | 極厚鋼材及びその製造方法 | |
JP6589503B2 (ja) | H形鋼及びその製造方法 | |
JP6421638B2 (ja) | 低温用h形鋼及びその製造方法 | |
JP6354571B2 (ja) | 圧延h形鋼及びその製造方法 | |
JP2008169440A (ja) | 薄肉低降伏比高張力鋼板およびその製造方法 | |
JP6662156B2 (ja) | 低温用h形鋼及びその製造方法 | |
JP7088235B2 (ja) | 耐摩耗鋼板およびその製造方法 | |
JPWO2019180957A1 (ja) | 圧延h形鋼及びその製造方法 | |
JP6295632B2 (ja) | 靭性に優れた高強度h形鋼 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20120625 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20121011 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20121011 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20131121 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20131203 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20131216 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 5447292 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |