JP3624732B2 - 成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼及びフェライト系ステンレス鋼鋳片 - Google Patents

成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼及びフェライト系ステンレス鋼鋳片 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼鋳片と成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼に関する。より詳しくは、連続鋳造した鋳片とその鋳片を熱間圧延を初めとする熱間加工や張り出し成形加工、深絞り加工、曲げ加工などの加工によって、表面疵、割れや破断を生ずることなく、所定の形状に加工することができる成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、Ti、Nb、Alなどの元素を添加し、鋼中のC、Nを炭窒化物として安定化析出させて、耐食性及び加工性を向上させたフェライト系ステンレス鋼が数多く開発されてきた。
【0003】
しかしながら、一般に、Ti、Alを添加した鋼の場合には、Ti及びAl系の非金属化合物(主としてTiO(X=1〜2)及びAlの酸化物)が溶鋼中で生成・凝集する。したがって、この溶鋼を連続鋳造すると、タンディッシュからモールドへ注ぐ途中で浸漬ノズルの内壁に上記非金属化合物が付着してノズル詰まりが生じてしまう。又、浸漬ノズルの内壁に一旦付着した上記の非金属化合物が剥離し鋳片の表層で捕捉されると、次の工程である熱間加工時にこの非金属化合物(つまり非金属介在物)が起点となって鋼材の表面に疵が発生することが知られている。そこで、このノズル詰まり及び表面疵を回避する手段が種々提案されている。なお、「介在物」とは「固体中の異物あるいは不純物相」を指す用語であり、鋼が凝固する前の段階では前記のように「化合物」と表現するのが適切ではあるが、本明細書の以下の記載においては簡単のために、鋼の凝固前においても「介在物」ということとする。
【0004】
特開平6−106312号公報には、タンディッシュからモールドへ溶鋼を注ぐために使用する浸漬ノズル内壁に不活性Arガスを吹き付けてノズル詰まりを回避する技術が開示されている。しかしこの技術を用いた場合は、スラブ表層にArのピンホール(気泡)が形成され、鋼板表面にピンホール起因のヘゲ疵が発生しやすくなる。
【0005】
又、Al添加鋼の場合、溶鋼へのCa添加はAlをCaO−Alの形の複合介在物として低融点化させるので、浸漬ノズルの内壁にAlが付着することを防止するのに有効である。しかし、この技術の場合には、CaがCa系介在物、なかでもCaOとして鋼中に残留すると耐孔食性の劣化が生ずる。
【0006】
なお、フェライト系ステンレス鋼は、通常11質量%以上の多量のCrを含んでいるので、所謂「普通鋼」に比べて再結晶温度が高い。したがって、フェライト系ステンレス鋼の場合、熱間加工組織を再結晶させて微細化することが困難で、このため、張り出し性、深絞り性、曲げ加工性、溶接部加工性などの「成形性」が普通鋼より劣る。
【0007】
特に、フェライト系ステンレス鋼の薄板をプレス成形する時にその発生が問題となるリジングは、鋼板面に現れる畝状のシワで、無垢で使用されることの多いステンレス鋼成形品の美観を損ねるものであるし、このシワを研磨により除去すると製造コストが嵩んでしまう。
【0008】
なお、フェライト系ステンレス鋼の薄板における上記リジングの発生は、粗大な鋳造組織を有する鋳片を熱間圧延した場合、その粗大鋳造組織に起因して鋼板の圧延方向に結晶方位の類似した領域が残存してしまうことに起因する。そして、このリジングは熱間圧延以降の加工、熱処理による再結晶が不十分な場合に発生する。つまり、上記の残存した結晶方位領域は、プレスなどで引張変形を受けると単結晶のように塑性変形してしまうので、大きな畝状シワとなるのである。
【0009】
リジングの発生を防止する基本対策は、鋼の組織を微細化させることにある。例えば、熱間圧延時に強圧下することで再結晶を促進させて組織を微細化する方法がリジングの発生を防止するのに有効である。しかし、熱間での強圧下圧延は表面疵を誘発する場合があり、その疵の除去には後工程で研削を行う必要があり、コスト上昇を招いてしまう。
【0010】
JIS規格鋼のSUS430のように、例えば900〜1300℃での熱間加工中に、フェライトとオーステナイトの2相となる場合には、熱間加工した鋼材を加工終了後直ちに600〜500℃まで急冷し、続く冷間加工において、硬質のマルテンサイト相近傍に歪を蓄積させ、その蓄積した歪を再結晶の駆動力として再結晶促進を図る方法もある。しかし、この方法はリジングの低減には有効であるものの、鋼材の伸びや深絞り性を劣化させてしまう。
【0011】
リジング発生の防止には、鋳造組織を微細にする方法が最も有効で、例えば、鋳造組織を微細な等軸晶とすることで大きな効果が得られる。鋳造組織を微細にしておけば、再結晶核生成サイトとしての粒界の占める割合が多くなり、製造工程中に再結晶が進み、組織が微細化するからである。
【0012】
鋳片の等軸晶の微細化の技術としては、例えば、TiNの核作用による方法(鉄と鋼、第66年(1980)第6号、110ページ)や、溶鋼の電磁誘導攪拌による方法(鉄と鋼、第66年(1980)第6号、38ページ)が報告されている。
【0013】
しかし、TiNにより鋳片の等軸晶を微細化する方法は、例えば、0.4質量%程度のTiや0.016質量%程度のNを鋼に含有させて、TiNを溶鋼中に多量に析出させることが必要であり、しかも、溶鋼過熱度ΔTを40℃以下に下げるなどの条件を組み合わせなければ70体積%(以下、等軸晶の割合(等軸晶率)を単に「%」で表すことにする)を超える等軸晶率が得られない。しかし、多量のTiは熱間加工時の表面疵の発生原因となる場合があるし、操業時に各鋳込み毎の△T変動幅を小さく制御することは必ずしも容易なことではない。一方、最近の精錬技術の進歩により、鋼が含有するCとNの量の和であるC+N量を低減することが可能となり、それに伴って成形性及び耐食性から必要とされるTiの含有量も低くすることが可能になっているので、より少量のTiNによる等軸晶生成法が望まれていた。
【0014】
電磁誘導攪拌による方法の場合にはΔTが高くても、凝固途中の鋳片に対し溶鋼の攪拌位置を適正化することによって、40〜60%の等軸晶率を安定して確保することができる。しかし、より高い等軸晶率を得るには、やはりΔTを25℃未満の低い値に制御する必要がある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みなされたもので、連続鋳造した鋳片とその鋳片を熱間圧延を初めとする熱間加工や張り出し成形加工、深絞り加工、曲げ加工などの加工によって、表面疵、割れや破断を生ずることなく、所定の形状に加工することができる成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供することにある。具体的には、鋳造組織のうち等軸晶が70%を超え、熱間加工や張り出し成形加工、深絞り加工、曲げ加工などの加工工程において疵、割れや破断が発生し難い、良好な成形性を有するフェライト系ステンレス鋼とその鋳片を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)〜(3)に示す成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼及び(4)に示すフェライト系ステンレス鋼鋳片にある。
【0017】
(1)質量%で、C:0.02%以下、N:0.003〜0.03%、Si:0.03〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cr:10〜30%、Ti:0.02〜0.3%、O(酸素):0.001〜0.005%、Al:0.001%以上でsol.Al:0.001〜0.015%、Nb:0〜0.8%、Mo:0〜3.0%で、0.0030%以下のCaと0.0005%以下のMgの一方または両方を含み、残部はFe及び不可避不純物の化学組成で、鋼中にAl系介在物とTi系介在物の複合介在物が分散した成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
【0018】
(2) Caの含有量が0.0005質量%以下である上記(1)のフェライト系ステンレス鋼
【0019】
(3) Tiの含有量が0.05〜0.3質量%である上記 (1) または (2) のフェライト系ステンレス鋼。
【0020】
(3)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の化学組成を備え、等軸晶率が70%を超えるフェライト系ステンレス鋼鋳片。
【0021】
なお、以下の説明において、「sol.Al」は所謂「酸可溶Al」を指し、「Al」は「全Al(トータルAl)」を指す。又、Al系介在物とTi系介在物の複合介在物とは、Al系介在物の周りをTi系介在物が囲む構成の介在物を指す。以下、簡単のために上記のAl系介在物とTi系介在物の複合介在物をAl−Ti系複合介在物とも言う。
【0022】
本発明者らは、連続鋳造したフェライト系ステンレス鋼の化学組成、鋼中非金属介在物の析出形態(内部構造、分散状態)及び鋳片の組織について調査・研究を行った。その結果、先ず下記の知見を得た。
【0023】
▲1▼TiとNの含有量が比較的少量のフェライト系ステンレス鋼においては、溶鋼過熱度ΔTに関係なく、微細で高い等軸晶率の鋳造組織とすることができる場合がある。
【0024】
▲2▼Alで強脱酸し、次いで、Tiを添加した後で鋳造され、sol.Alで0.015質量%を超える量のAlを含有する鋼では、Al系酸化物やTi系酸化物(TiO(X=1〜2)やAlとTiO との複合介在物など)の凝集が促進される。このAl系酸化物やTi系酸化物が凝集した鋳片を表面研削なしに熱間加工すると必ず表面疵が発生してしまう。
【0025】
▲3▼主成分がTi、Nで、その他にO(酸素)、SやCを含むTi系介在物は溶鋼中に分散するAl系介在物を核として不均一核生成する。したがって、溶鋼中のAl系介在物を制御することによってTi系介在物の析出温度、換言すれば、Ti系介在物の析出形態を制御することができる。
【0026】
▲4▼析出形態を制御したTi系介在物は鋼の凝固時に結晶核生成サイトになるので、高い率で等軸晶を形成させることが可能である。
【0027】
そこで次に、上記の等軸晶率の高い鋳片における析出形態を制御したTi系介在物、つまりAl−Ti系複合介在物の構造を調査した。
【0028】
すなわち、連続鋳造した200mm厚さ×1050mm幅の鋳片の先端から10mの位置から、表皮下20mmの面を観察面とするための小形の試験片を採取し鏡面に仕上げた。なお、仕上げ研磨は、水溶性介在物の消失や研磨剤であるアルミナ砥粒の残留を防止するために、アルコール中でダイヤモンド砥粒(粒径0.25μm)により行った。次いで、この観察面に存在する介在物を、高分解能オージェ電子分光装置、エネルギー分散型X線分光装置を用いて調査した。本明細書においては以下、高分解能オージェ電子分光装置、エネルギー分散型X線分光装置を用いた調査をそれぞれオージェ電子分光法、EDX法による調査という。なお、オージェ電子分光法では、複合介在物の微小構造解析やC、Nなど軽元素の分析を行った。一方、比較的操作が簡便なEDX法では、Mg以上の原子量を有する元素の分析や複合介在物の分布密度調査を行った。
【0029】
その結果、下記の事項が明らかになった。
【0030】
▲5▼等軸晶率が70%を超える鋳片に存在するTi系介在物はAl系介在物と複合して析出している。このTi系介在物生成の核として存在するAl系介在物は、Ti系介在物の大きさが1〜5μmであるのに対し、0.1〜0.5μmと非常に微細である。
【0031】
▲6▼Ti系介在物生成の核となったAl系介在物には、Al、O(酸素)、Ca、Mg、TiやSなどが含まれている。なお、このAl系介在物中でのAl、O、Mg、Ca、TiやSの含有率は特に定まったものではないが、AlとOは必ず含まれており、その他の元素は検出限界以下であることもある。又、Al系介在物を覆うように析出したTi系介在物は、主成分がTiとNで、その他にO、S、Cを含むものであるが、TiとN以外のその他元素は検出限界以下であることもあった。
【0032】
図1に、前記Al−Ti系複合介在物の概要を示す。又、図2に等軸晶率100%の鋳片に存在するAl−Ti系複合介在物のEDX法による分析結果の1例を示す。
【0033】
なお、上記と同様の方法で等軸晶率の低い鋳片の柱状晶部を観察した結果、Ti系介在物が認められたが、その核は上記のようなAl系介在物でなく、単独の酸化物(例えば、SiO やCaOなど)であった。
【0034】
そこで更に、図1に示すようなAl−Ti系複合介在物を分散させることができる鋼成分の範囲を調査した。その結果、次の事項が判明した。
【0035】
▲7▼N、Ti及びAlの含有量をそれぞれ、N:0.003質量%以上、Ti:0.02質量%以上、Al:0.001質量%以上でsol.Al:0.015質量%以下とすれば、鋼中にAl−Ti系複合介在物を分散させることができ、しかも、この場合には鋳片の等軸晶率が70%を超える。なお、Alの含有量は、Al(全Al):0.001〜0.015質量%とすることが好ましい。
【0036】
▲8▼Al−Ti系複合介在物を分散させるためにCaとMgを意図的に添加する必要はない。Ca及びMgは添加しなくても、Ti系介在物生成の核として存在するAl系介在物中に検出されることがある。これらのCa、Mgは鋼を精錬・鋳造する際に、とりべやタンディッシュなどの耐火物から微量に溶出したものと推定される。一方、CaやMgを意図的に添加した場合でもAl−Ti系複合介在物が分散した等軸晶率が70%を超える鋳片が製造できるので、鋳造組織の面からは、CaとMgの含有量についての上限の制約はない。
【0037】
▲9▼Caを含むAl系介在物は、弱酸性環境下で溶解し孔食の起点となるので、フェライト系ステンレス鋼の耐孔食性を劣化させる。更に、単独の介在物としてCaO又はCaSが含まれる場合、これらのCa介在物は中性水環境でも溶解して孔食の起点になってしまう。しかし、本発明に係るAl−Ti系複合介在物の場合には、既に述べたようにAl系介在物がTi系の介在物に覆われているので耐孔食性が劣化することはない。
【0038】
なお、鋼が0.0030質量%を超える量のCaを含有する場合には、その形態が複合形態にはならない単独のCa介在物が生成し、図3に1例を示すように鋼の耐孔食性が著しく劣化することがあるので、Caの過剰の添加は好ましくない。ここで、図3は、基本の組成が質量%で、0.006%C−0.006%N−0.4%Si−0.2%Mn−0.02%P−0.005%S−11.4%Cr−0.18%Ti−0.002%O−0.006%Alを含み、0.0001〜0.0050%の範囲でCaの含有量を変化させた、70%以上の等軸晶率を有する鋳片を、通常の方法で鋼板に圧延し、その鋼板の表面を#600番エメリー紙で研磨し、温度が35℃の5%NaCl水溶液を用いて120hの塩水噴霧試験を行った後、最大の孔食深さを測定した結果を示す図である。図3によれば、Ca含有量が0.0030%を超えると、耐孔食性が著しく劣化し、最大孔食深さで1mmを超える孔食が生じている。
【0039】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
【0041】
(A)鋼の化学組成
C:
Cは、フェライト系ステンレス鋼における固溶限が小さいため、焼鈍や溶接などの工程における熱履歴によってはCrと結合して粒界にCr炭化物を形成し、粒界腐食の原因となる。したがって、Cの含有量を0.02%以下とした。
【0042】
N:
Nは、Al系介在物を核として不均一核生成したTi系介在物、つまりAl系介在物がTi系介在物(主成分はTiとN)で覆われたAl−Ti系複合介在物を形成させて、連続鋳造したフェライト系ステンレス鋼の鋳造組織を微細で高い等軸晶率の組織とし、成形性を高めるのに必須の元素である。しかし、その含有量が0.003%未満では所望の効果が得られない。一方、0.03%を超えて含有させると靱性の著しい低下を招く。したがって、Nの含有量を0.003〜0.03%とした。なお、良好な靱性を確保するための好ましいNの含有量は0.015%以下である。
【0043】
Si:
Siは、精錬時に生成するCr酸化物の還元と脱酸に有用な元素である。しかし、その含有量が0.03%未満では添加効果に乏しい。一方、1.0%を超えると鋼板を初めとする鋼材の成形性が劣化する。したがって、Siの含有量を0.03〜1.0%とした。
【0044】
Mn:
Mnには鋼を脱酸する作用がある。この効果を確実に得るには、Mnは0.1%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が1.0%を超えるとMnSの析出量が増加して耐孔食性が劣化するし、成分コストも高くなり経済面で不利となる。したがって、Mnの含有量を0.1〜1.0%とした。
【0045】
P:
Pは、鋼の靱性、熱間加工性及び耐食性を劣化させるのでその含有量は低いほど良く、特に、0.04%を超えると鋼の靱性、熱間加工性及び耐食性の劣化が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.04%以下とした。
【0046】
S:
Sは、鋼の靱性、熱間加工性及び耐食性を劣化させるのでその含有量は低いほど良く、特に、0.03%を超えると鋼の靱性、熱間加工性及び耐食性の劣化が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.03%以下とした。
【0047】
Cr:
Crは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性及び耐酸化性を確保するのに有効な元素である。しかし、その含有量が10%未満では添加効果に乏しい。一方、30%を超えて含有させると所謂「475℃脆性」を生じ易くなり靱性の著しい低下を招く。したがって、Cr含有量を10〜30%とした。
【0048】
Ti:
Tiは、Al−Ti系複合介在物を形成させて、連続鋳造したフェライト系ステンレス鋼の鋳造組織を微細で高い等軸晶率の組織とし、成形性を高めるのに必須の元素である。更に、Tiは鋼中のN、Cと結合して炭化物、窒化物や炭窒化物を形成し、基地に固溶するC、Nを低減してフェライト系ステンレス鋼の成形性、耐食性及び靱性を向上させる作用も有する。しかし、その含有量が0.02%未満では、連続鋳造した際、微細で70%を超える高い等軸晶率という所望の鋳造組織が得られない。一方、0.3%を超えて含有させると、鋳片の等軸晶率向上には有効であるが、Tiの酸化物及び窒化物が凝集して疵の起点となり、鋼板など製品の表面性状を損なうことになる。したがって、Tiの含有量を0.02〜0.3%とした。連続鋳造した際、微細で70%を超える高い等軸晶率という所望の鋳造組織を得るためには、Ti含有量の下限値は0.05%とすることが好ましい。なお、後述するように、鋳片における等軸晶の生成やTiの酸化物及び窒化物の凝集回避のためには、Tiを適正量のAlと複合して含有させることが重要である。
【0049】
O:
Oは、表面疵の原因となる介在物を形成するのでその含有量は低くすることが好ましく、特に、0.005%を超えると表面疵の発生が多くなるばかりか靱性や成形性の著しい低下をきたす。しかし、その含有量が0.001%未満ではAl系介在物が溶鋼中に分散析出しないので、所望のAl−Ti系複合介在物の形成がなされず、鋳片組織は粗大な柱状晶組織となってしまう。そして、上記の鋳片から各種の鋼材を加工する場合、その成形性は極めて劣る。したがって、Oの含有量を0.001〜0.005%とした。
【0050】
Al:
Alは、Al−Ti系複合介在物を形成させて、連続鋳造したフェライト系ステンレス鋼の鋳造組織を微細で高い等軸晶率の組織とし、成形性を高めるための重要な元素である。しかし、その含有量が0.001%未満では、Al系介在物が溶鋼中に分散析出しない。この場合には、結晶核生成サイトとなるTi系介在物がAl系介在物を核に不均一生成することができないので、鋳片組織は粗大な柱状晶組織となってしまう。そして、上記の鋳片から各種の鋼材を加工する場合、その成形性は極めて劣る。一方、Alの含有量が0.015%を超えてsol.Alが多いとAlの脱酸作用が大きくなって、鋳造時にAlの酸化物やTiの酸化物及び窒化物の凝集・粗大化が促進され、熱間加工された鋼材の表面に疵が多発する。更に、等軸晶生成に必要なAl−Ti系複合介在物が微細に分散できないので等軸晶率が高々30%程度にとどまってしまう。したがって、Alの含有量をAl:0.001%以上で0.015%以下とした。なお、所望の鋳造組織を得るためには、Al含有量の下限値は0.003%とすることが好ましい。
【0051】
Ca:
CaにはAl−Ti系複合介在物中に入り、連続鋳造したフェライト系ステンレス鋼の鋳造組織を微細で高い等軸晶率の組織とし、成形性を高める作用がある。しかし、その含有量が0.0030%を超える場合には、Al−Ti系複合介在物の他に単独のCa介在物が生成し、フェライト系ステンレス鋼の靱性や耐食性が著しく低下してしまう場合がある。したがって、Caの含有量を0.0030%以下とした。なお、フェライト系ステンレス鋼に良好な靱性と耐食性とを確保させるために、Ca含有量の上限は0.0005%とすることが好ましく、0.0003%とすれば一層好ましい。
【0052】
Mg:
MgにはAl−Ti系複合介在物中に入り、連続鋳造したフェライト系ステンレス鋼の鋳造組織を微細で高い等軸晶率の組織とし、成形性を高める作用がある。しかし、その含有量が0.0005%を超える場合には、フェライト系ステンレス鋼の靱性が著しく低下してしまう。したがって、Mgの含有量を0.0005%以下とした。
【0053】
Nb:
Nbは添加しなくても良い。添加すれば、成形性や耐食性を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Nbは0.1%以上の含有量とすることが好ましく、0.2%以上の含有量とすることがより好ましい。しかし、0.8%を超えて含有させても製造コスト上昇に見合った性能向上が望めない。したがって、Nbの含有量を0.8%以下とした。
【0054】
Mo:
Moは添加しなくても良い。添加すれば、成形性や耐食性を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Moは0.2%以上の含有量とすることが好ましく、0.5%以上の含有量とすることがより好ましい。しかし、3.0%を超えて含有させても製造コスト上昇に見合った性能向上が望めない。したがって、Moの含有量を3.0%以下とした。
【0055】
(B)Al−Ti系複合介在物
上記の化学組成を有するフェライト系ステンレス鋼の成形性を高めるためには、Al−Ti系複合介在物を鋼中に分散させておくことが重要である。
【0056】
本発明のステンレス鋼では、Al系介在物がTi系介在物で覆われたAl−Ti系複合介在物は、鋳片の等軸晶化に不可欠の介在物である。
【0057】
この複合介在物を構成する必須元素は、Al系介在物ではAl及びOであり、Ti系介在物ではTiとNである。その他の構成元素としては、Al系介在物にはCa、Mg、Ti、Sなどを含んでいても良く、Ti系介在物にはO、S、Cなどを含んでも良い。Al系介在物中にCa及びMgの1種以上を含有しておれば、鋳片の等軸晶化が一層確実に起こる。
【0058】
なお、フェライト系ステンレス鋼では、耐酸化性などの特性を高める目的から酸化物や窒化物を形成しやすいZrやTa、更にはLa、Ceなどの希土類元素を添加する場合がある。鋼に上記の元素を添加すると、Al−Ti系複合介在物中にこれらの元素が認められることが多いが、この場合にも上記のAl−Ti系複合介在物の作用は妨げられない。
【0059】
70%を超える高い等軸晶率の鋳片とするために、鋼中に分散するAl−Ti系複合介在物の分布量は10個/mm 以上とすることが好ましい。鋳片の組織はAl−Ti系複合介在物が多ければ多いほど微細になるので、Al−Ti系複合介在物の鋼中における分布量は、前記したAl含有量、Ti含有量によって定まる量まで許容できる。
【0060】
又、上記の分布量に対するAl−Ti系複合介在物のサイズ(長径)は特に規定されるものではない。これは、0.1μm未満の微細なものや10μm程度の大きなものでも凝固時の等軸晶核生成サイトとなるからである。
【0061】
上記したようなAl−Ti系複合介在物の形態は基本的には鋼中のN、Ti、O、及びAlの含有量によって決定される。しかし、Al−Ti系複合介在物のフェライト系ステンレス鋼中の分散形態を適正化するためには、鋼が前記(A)項で述べた化学組成を有しているだけでは充分でない場合があるので、例えば、通常の方法によって溶製した後、2次精錬炉で脱C、脱Nを行い、次いで、酸化したCrを還元するためにSiを添加し、O(酸素)含有量を充分低めた後で更にAlとTiを添加し、連続鋳造すれば良い。
【0062】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0063】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す化学組成を有するステンレス鋼を、幅1050mm×厚さ200mmに連続鋳造した。なお、鋼10と鋼12を除いて、通常の方法で溶製した後、2次精錬炉で脱C、脱Nを行い、次いで、酸化したCrを還元するためにSiを添加し、O含有量を充分低めた後で更にAlとTiを添加し、連続鋳造した。鋼10の場合には、通常の方法で溶製した後、2次精錬炉で脱C、脱Nを行い、酸化したCrを還元するためにSiとAlを同時に添加し、更に、Ca添加によりO含有量を充分低めた後でTiを添加して、連続鋳造した。又、鋼12の場合には、通常の方法で溶製した後、2次精錬炉で脱C、脱Nを行い、酸化したCrを還元するためにSiとAlを同時に添加し、O含有量を充分低めた後でTiを添加し、連続鋳造した。
【0064】
なお、表1における鋼1〜13は化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼、鋼14〜17はその化学組成のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例の鋼である。
【0065】
【表1】
Figure 0003624732
【0066】
これらの鋼の鋳片の鋳造方向に垂直な断面の幅中央部(200mm厚さ×100mm幅)を王水(硝酸と塩酸の体積比が1:3)で腐食してその等軸晶率を観察した。又、鋳片の表面を手入れすることなく、通常の方法で1100〜1250℃に加熱して熱間圧延し、厚さ3.5mmの鋼板に仕上げた。
【0067】
表1に示したCa及びMgの分析値は、上記の3.5mmの鋼板から採取した切り屑を王水で溶解し、フレームレス原子吸光法あるいはICP発光分析法により定量測定したものである。Alの分析値は全Al(トータルAl)量を指し、酸可溶Al(sol.Al)と酸不溶解Al(insol.Al)の分析値の和である。sol.Alの分析値は、上記のCa及びMgと同様の方法によって測定したものである。酸不溶解Alの分析値は、上記の3.5mmの鋼板から採取した切り屑を塩酸と過塩素酸で溶解した後、酸不溶解残渣を濾過抽出してこれをアルカリで溶融し、ICP発光分析法により定量測定したものである。
【0068】
なお、200トンの連続鋳造を完了した時点で、タンディッシュからモールドへ溶鋼を注ぐために使用する浸漬ノズル内壁の付着物の厚さを調査することも行った。
【0069】
上記の厚さ3.5mmの鋼板から切り出した試験片をアルコール中でダイヤモンド砥粒研磨仕上げし、鋼板断面のt/4部(tは鋼板厚みで3.5mm)に相当する部位を走査型電子顕微鏡で観察し、複合構造をもつ介在物をEDX法により分析して組成を確認して、Al−Ti系複合介在物の鋼中分布量を調査した。
【0070】
3.5mmに熱間圧延した鋼板は、酸洗によって酸化スケールを除去してから目視で表面疵の有無を調査し、その後、厚さ0.8mmまで冷間圧延した。次いで、この冷間圧延した鋼板を燃焼ガス中で930〜1000℃の温度で20秒間焼鈍した。なお、焼鈍に際しての昇温速度と降温速度はいずれも20℃/秒とした。
【0071】
上記のようにして得た焼鈍鋼板から、圧延方向に対して0度、45度、90度方向にJIS13B号の引張試験片を採取し、評点距離50mmで常温(室温)で引張試験を行い破断伸びを測定した。なお、伸びは下記(a)式による前記3方向における平均伸び(El)で評価した。
【0072】
El=(El+2El45+El90)/4・・・・・(a)
又、前記の焼鈍鋼板から圧延方向と平行にJIS5号の引張試験片を採取し、その平行部を鏡面仕上げした後、常温で引張変形させて耐リジング性を評価した。すなわち、評点距離50mmで20%(つまり10mm)引張変形させた後、表面粗度計を用いて引張方向に垂直に走査して表面に発生するリジングを調査し、表2に示す基準で耐リジング性の評価を行った。なお、本発明が目標とする耐リジング性は表2に示す指標でAとBである。
【0073】
【表2】
Figure 0003624732
【0074】
各種の調査結果を表3にまとめて示す。
【0075】
【表3】
Figure 0003624732
【0076】
表3から、化学組成が本発明で規定する範囲内にあり、且つAl−Ti系複合介在物が鋼中に分散している本発明例に係る鋼1〜9、鋼11及び鋼13の場合、200トンの連続鋳造を完了した時点での浸漬ノズル内壁の付着物の厚さは1mm以下で、ノズルに詰まりは発生せず、鋳片は73%以上の高い等軸晶率を有していることがわかる。しかもその鋳造組織は、図4に一例を示すように微細である。なお、図4は鋼3の鋳片の鋳造組織を示すもので、図の左右方向が鋳片の厚さ方向である。
【0077】
又、本発明例に係る鋼1〜9、鋼11及び鋼13の場合には、鋳片の表面を手入れすることなく熱間圧延しても、厚さ3.5mmの鋼板に表面疵は認められない。更に、焼鈍鋼板は30%を超える高い平均伸び(El)を有し、しかも、耐リジング性の指標はA又はBで優れている。
【0078】
これに対して化学組成は本発明で規定する範囲内にあるもののAl−Ti系複合介在物が鋼中に分散していない鋼10と鋼12の場合、鋳片の等軸晶率はそれぞれ15%、27%と低く、しかもその鋳造組織は、図5に一例を示すように粗大である。なお、図5は鋼10の鋳片の鋳造組織を示すもので、図の左右方向が鋳片の厚さ方向である。このため、焼鈍鋼板の平均伸び(El)は30%を下回り、しかも、耐リジング性の指標はD又はCと劣っている。
【0079】
このように、化学組成は本発明で規定する範囲内にあるもののAl−Ti系複合介在物が鋼中に分散しない原因は現時点では不明である。本実施例のような合金元素添加時期の相違は、Al−Ti系複合介在物が鋼中に分散しなかった一例であるが、それ以外にも介在物制御に関わる製造条件の因子が存在すると推察される。
【0080】
又、化学組成のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れる比較例の鋼14〜17の場合、鋼15〜17で連続鋳造の途中で浸漬ノズルに詰まりが発生した。更に、鋳片の等軸晶率は高々46%と低く、しかもその鋳造組織は、図5に示した鋼10の場合と同様に粗大であった。このため、焼鈍鋼板の平均伸び(El)は30%を下回る低いものが多く(鋼14〜16)、しかも、耐リジング性の指標はC又はDと劣っている(鋼14〜17)。なお、Al含有量が本発明で規定する含有量を超える鋼15〜17においては、鋳片の表面を手入れすることなく熱間圧延すると、厚さ3.5mmの鋼板に表面疵が発生した。
【0081】
(実施例2)
表4に示す化学組成を有するステンレス鋼を、幅1050mm×厚さ200mmに連続鋳造した。なお、通常の方法で溶製した後、2次精錬炉で脱C、脱Nを行い、次いで、酸化したCrを還元するためにSiを添加し、O含有量を充分低めた後で更にAlとTiを添加し、連続鋳造した。表4のAlの含有量は、前記表1に示したAl含有量と同じく酸可溶Alと酸不溶Alの合計量、即ち、全Alの含有量である。
【0082】
表4における鋼18〜21は化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼、鋼22、鋼23はその化学組成のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例の鋼である。
【0083】
【表4】
Figure 0003624732
【0084】
これらの鋼の鋳片の鋳造方向に垂直な断面の幅中央部(200mm厚さ×100mm幅)を王水(硝酸と塩酸の体積比が1:3)で腐食してその等軸晶率を観察した。又、鋳片の表面を手入れすることなく、通常の方法で1100〜1250℃に加熱して熱間圧延し、厚さ3.5mmの鋼板に仕上げた。
【0085】
表4に示したsol.Al、Ca及びMgの分析値は、上記の3.5mmの鋼板から採取した切り屑を王水で溶解し、フレームレス原子吸光法あるいはICP発光分析法により定量測定したものである。
【0086】
なお、200トンの連続鋳造を完了した時点で、タンディッシュからモールドへ溶鋼を注ぐために使用する浸漬ノズル内壁の付着物の厚さを調査することも行った。
【0087】
上記の厚さ3.5mmの鋼板から切り出した試験片をアルコール中でダイヤモンド砥粒研磨仕上げし、鋼板断面のt/4部(tは鋼板厚みで3.5mm)に相当する部位を走査型電子顕微鏡で観察し、複合構造をもつ介在物をEDX法により分析して組成を確認して、Al−Ti系複合介在物の鋼中分布量を調査した。
【0088】
3.5mmに熱間圧延した鋼板は、酸洗によって酸化スケールを除去してから目視で表面疵の有無を調査し、その後、厚さ0.8mmまで冷間圧延した。次いで、この冷間圧延した鋼板を燃焼ガス中で930〜1000℃の温度で20秒間焼鈍した。なお、焼鈍に際しての昇温速度と降温速度はいずれも20℃/秒とした。
【0089】
上記のようにして得た焼鈍鋼板から、圧延方向に対して0度、45度、90度方向にJIS13B号の引張試験片を採取し、評点距離50mmで常温(室温)で引張試験を行い破断伸びを測定した。なお、伸びは前記(a)式による平均伸び(El)で評価した。
【0090】
又、前記の焼鈍鋼板から圧延方向と平行にJIS5号の引張試験片を採取し、その平行部を鏡面仕上げした後、常温で引張変形させて耐リジング性を評価した。すなわち、評点距離50mmで20%(つまり10mm)引張変形させた後、表面粗度計を用いて引張方向に垂直に走査して表面に発生するリジングを調査し、表2に示す基準で耐リジング性の評価を行った。なお、本発明が目標とする耐リジング性は前記表2に示す指標でAとBである。
【0091】
各種の調査結果を表5にまとめて示す。
【0092】
【表5】
Figure 0003624732
【0093】
表5から、化学組成が本発明で規定する範囲内にあり、且つAl−Ti系複合介在物が鋼中に分散している本発明例に係る鋼18〜21の場合、200トンの連続鋳造を完了した時点での浸漬ノズル内壁の付着物の厚さは1mm以下で、ノズルに詰まりは発生せず、鋳片は76%以上の高い等軸晶率を有していることがわかる。なお、その鋳造組織はいずれも既に述べた図4における鋼3の場合と同様に微細であった。
【0094】
又、本発明例に係る鋼18〜21の場合には、鋳片の表面を手入れすることなく熱間圧延しても、厚さ3.5mmの鋼板に表面疵は認められない。更に、焼鈍鋼板は30%を超える高い平均伸び(El)を有し、しかも、耐リジング性の指標はA又はBで優れている。
【0095】
これに対して、化学組成のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れる比較例の鋼22、鋼23の場合には、連続鋳造の途中で浸漬ノズルに詰まりが発生した。更に、鋳片の等軸晶率は高々31%と低く、しかもその鋳造組織は、図5に示した鋼10の場合と同様に粗大であった。このため、焼鈍鋼板の平均伸び(El)は30%を下回り、しかも、耐リジング性の指標はC又はDと劣っている。なお、鋼22、鋼23はいずれもsol.Al含有量が本発明で規定する含有量を超えるため、鋳片の表面を手入れすることなく熱間圧延すると、厚さ3.5mmの鋼板に表面疵が発生した。
【0096】
【発明の効果】
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、その連続鋳造組織の70%を超える部分が微細な等軸晶になり、熱間加工工程において疵が発生せず、良好な成形性を有する。このため、鋳片の手入れや熱間加工した鋼材の手入れが不要となるので製造工程が合理化できるし、製品歩留りも向上する。したがって、本発明鋼を用いれば、表面欠陥やリジングなどの発生がほとんどない高い品質の製品を比較的低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al−Ti系複合介在物の概要を示す図である。
【図2】等軸晶率100%の鋳片に存在するAl−Ti系複合介在物のEDX法による分析結果の1例を示す図である。
【図3】0.006%C−0.006%N−0.4%Si−0.2%Mn−0.02%P−0.005%S−11.4%Cr−0.18%Ti−0.002%O−0.006%Alフェライトステンレス鋼の耐孔食性に及ぼすCa含有量の影響を示す図である。
【図4】実施例における鋼3の鋳片の鋳造組織を示す図で、図の左右方向が鋳片の厚さ方向である。
【図5】実施例における鋼10の鋳片の鋳造組織を示す図で、図の左右方向が鋳片の厚さ方向である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.02%以下、N:0.003〜0.03%、Si:0.03〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cr:10〜30%、Ti:0.02〜0.3%、O(酸素):0.001〜0.005%、Al:0.001%以上でsol.Al:0.001〜0.015%、Nb:0〜0.8%、Mo:0〜3.0%で、0.0030%以下のCaと0.0005%以下のMgの一方または両方を含み、残部はFe及び不可避不純物の化学組成で、鋼中にAl系介在物とTi系介在物の複合介在物が分散した成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  2. Caの含有量が0.0005質量%以下である請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼
  3. Tiの含有量が0.05〜0.3質量%である請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の化学組成を備え、等軸晶率が70体積%を超えるフェライト系ステンレス鋼鋳片。
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