JP3624725B2 - 静電荷像現像剤及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等における静電潜像の現像に用いられる静電荷像現像剤及びそれを用いる画像形成方法に関する
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真法は、光導電性物質を利用して種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで形成された潜像をトナーにより現像し、必要に応じて、紙等の転写材にトナー画像を転写した後、加熱、加圧或いは溶剤蒸気等により定着させて複写画像を得るとともに、一方では、感光体上に転写されなかったトナーは種々の方法でクリーニング除去する工程が繰り返されるものである。
【0003】
従来、電子写真方式を用いた複写機等には、静電荷像担持体の表面を一様に帯電させる手段及び静電荷像担持体上のトナー像を転写する手段としてコロナ放電が広く用いられてきたが、現在では静電荷像担持体の表面に、帯電部材を直接に或いは記録材を介して接触させるか又は押圧しながら外部から電圧を印加し、静電荷像担持体に直接帯電及び転写を行う方法が多用されている。例えば、静電荷像担持体に導電性弾性ロールを接触もしくは押圧させ、その導電性ロールに電圧を印加しながら静電荷像担持体を一様に帯電させ、次いで、露光及び現像工程によってトナー像を得た後、静電荷像担持体に電圧を印加した別の導電性弾性ロールを接触もしくは押圧させながら、その間に転写材を通過させて静電荷像担持体上のトナー像を転写材に転写し、その後、加熱ロール方式等による定着工程により複写画像を得る方法である(特開昭63−149669号公報や特開平2−123385号公報等参照)。
【0004】
このような装置は、従来のコロナ放電を利用した転写方式と異なり、静電荷像担持体と転写ロールとの接触圧を調節することにより、転写材の静電荷像担持体への接触もしくは押圧領域を拡大させることができる。さらに、転写部位においては、転写材を積極的に押圧支持しているために転写材搬送手段による同期不良や転写材に存在するループ及びカールによる転写ずれを生ずる恐れが少なくなり、画像形成装置の小型化に伴う転写材搬送路の短縮化、静電荷像担持体の小径化にも容易に対応することができる。
【0005】
また、静電荷像現像用トナーの定着には、加熱ロール方式が広く採用されている。この加熱ロール方式の定着装置は、加熱源を設けた加熱ロールと加圧ロールとから構成され、加熱ロール表面に被定着シートのトナー画像面を圧接させながら通過させて定着を行うものであり、加熱ロール表面と被定着シートのトナー画像面が直接接触するから、熱効率が高く迅速に定着するという利点がある。
【0006】
一方、近年においては、複写機の高速化及び低消費エネルギー化の観点から、トナーには低温定着性が強く求められており、低温定着が達成できると、省エネが達成できるばかりでなく、ウォームアップ時間の短縮による快適な操作性や加熱ロールの小径化による画像形成装置の小型化を実現できる。
【0007】
このような低温定着性に適したトナーとしては、結着樹脂としてポリエステルを用いたものが挙げられる。一般に、ポリエステルは、ガラス転移点が高いにもかかわらず低軟化点の樹脂として得られ易く、加熱溶融時には紙等の被定着シートに対して良好な濡れ性を示し、より低い温度で十分な定着を行うことが可能である。しかしながら、トナーの耐オフセット性を十分に満足させるには、ポリエステル中に離型剤として低分子量ポリプロピレン等を微細に分散させる必要がある。ところが、低分子量ポリプロピレン等の離型性ワックスは、比較的極性の強いポリエステルとの相溶性が悪いため、ポリエステル中に均質に分散させることは困難であり、トナーの粉体流動性や熱保存性の低下、さらに、ワックス成分が感光体に移行して発生するフィルミングや、ワックス成分がキャリアに移行してキャリア汚染等の2次障害を生じるから未だ解決すべき課題が存在する。
【0008】
さらに、加熱ロール定着方式では、ロール部に剥離爪を設けて紙等の被定着シートがロール部を通過した後、ロールに巻き付かないようにしているため、複写機の高速化によるストレスの増加や被定着シート先端部にソリッド等がある場合等において、剥離不良や剥離爪による剥離爪傷が発生するという問題が生じる。
この問題を解決する方法として、ポリプロピレン等の離型剤の添加等が提案されているが、従来、離型剤は比較的融点が高くて低温域で十分な剥離性が得られないために、ポリエステルが良好な低温定着性を有するにもかかわらず、低温域で剥離不良や剥離爪による剥離爪傷が発生するようになり、十分な定着可能温度領域を確保できないという問題が生じる。
【0009】
そこで、従来の離型剤よりも低融点のワックスを添加することが、特開平4−97163号公報及び特開平7−287413号公報等に提案されている。これらの低融点ワックスは、低温域において十分な離型性が得られ、ポリエステルの良好な低温定着性を損なうことなく、定着可能温度領域を広く確保することが期待できるが、ポリエステル中に均質に分散させることが同様に困難であるため、ワックスの分子量等の影響によるトナーの粉体流動性や熱保存性の悪化が著しくなり、さらに静電荷像担持体へのフィルミングや、このフィルミングによる帯電工程の導電性ロールの帯電不良、キャリア汚染等の2次障害を引き起こすという問題が発生する。そのため、分子末端に極性基を有する酸化型ポリオレフィンワックス等の変性ワックスを使用し、ポリエステルとワックスの相溶性を改善し、ワックスの分散性を向上させる技術(特開平7−244402公報)が提案されているが、この方法では、相溶性が改善されてワックスの分散性は向上するものの、結着樹脂の溶融粘度が低くなり耐オフセット性の低下や、本来の離型能が低下する等の問題が生じる。
【0010】
また、ポリエステル自体についても、耐オフセット性の付与を目的として、分子量分布の二山化や特公昭63−60904号公報に見られるようなクロロホルム不溶分を含有する特殊なポリエステルが提案されている。ところが、これらのポリエステルを用いると、トナーの耐オフセット性は向上するものの、元来強靭な樹脂であり粉砕性に劣るポリエステル樹脂の粉砕性を一層悪化させることとなり、高画質の画像形成に必要な小粒径トナーを作製するには、生産性が大幅に低下するという欠点がある。
この問題を解決するために、芳香族石油樹脂を使用して粉砕性と熱保存性を両立させる技術(特開平4−257868公報)及び水素添加石油樹脂を使用して粉砕性と熱保存性を両立させる技術(特開平8−278658公報)が提案されているが、これらの技術によると、粉砕性は改良できるとしても離型剤の分散性を改善する効果がなく、トナーの帯電性を悪化させるという問題が生じる。
さらに、感光体に圧接する帯電部材及び転写部材を用いる場合には、オゾンの発生を抑制できるが、前述した離型剤を含有したトナーを用いると、離型剤の分散が制御できていないため静電荷像担持体にフィルミングが発生し、それに圧接されている帯電部材及び転写部材にフィルミングが移行して帯電ムラや転写不均質等の画像欠陥が起こるようになる。
【0011】
一方、二成分現像剤に用いるキャリアには、表面に被覆層を有する被覆キャリアと表面に被覆層を有しない非被覆キャリアとが知られているが、現像剤の寿命等を考慮すると、被覆キャリアの方が優れていることから、種々のタイプの被覆キャリアが開発され、実用化されている。しかし、従来の被覆キャリアでは、トナー成分がキャリア表面に付着して起こる汚染(スペント)を防止できないという問題があり、未だ満足なものは得られていない。つまり、キャリアは、トナーの運搬機能と同時にトナーに電荷を長期に亘り安定して付与する機能が要求されるが、キャリア表面がトナーによって汚染されて行くために、トナーへの電荷付与能が有効に働かないという問題がある。
【0012】
このようなスペントを防止するには、シリコーン樹脂或いはフッ素系樹脂を用いることが知られているが、これらの樹脂を用いてキャリア表面を被覆しても、シリコーン樹脂やフッ素樹脂は、主に被覆層の表面に多く存在するものであり、このキャリアを長期に亘り使用した場合には、キャリア表面の被覆層が摩耗し、やがてシリコーン樹脂やフッ素樹脂が失われるため、長期的にはスペントを十分に防止できなくなり、さらに、キャリアの構造的改善が必要であり、これらのキャリアの欠点に関連して、使用する樹脂を特定種類に限定していないキャリアが、特開平1−105264号公報に提案されている。この技術は、被覆樹脂層に非相溶の複数樹脂及び導電性微粉末を含有するキャリアであるが、未だ満足すべきものではない。
【0013】
さらに、2成分現像剤を用いる現像方法において、十分な画像濃度を確保するため、即ち、現像領域に十分な現像剤を供給するために、磁気ロールと感光体とを順方向に回転させ、かつ、磁気ロールの周速を感光体の周速より速く設定する方法が一般的に用いられているが、この方法では、磁気ロールと感光体間の相対速度差に起因する現像ディフェクト、例えば、ソリッド画像後端抜けや、ハーフトーン及びソリッド画像が混在する際のソリッド画像先端とハーフトーン境界部においてハーフトーン画像の後端抜け等が発生することが知られている。これらの画像抜けは、現像ニップ領域におけるトナーの移動に伴う現像剤層の電位変化量が潜像構造に依存して生じるものであり、現像が行われる領域が、この領域の直前領域の電界の影響を受けた現像剤で現像されるため、潜像の不連続点、例えば、ソリッド画像と非画像部との境界やハーフトーンとソリッド画像との境界部には、これらの欠陥がより顕著に現れるものと考えられる。
【0014】
これらの問題を改善するために、キャリアの体積固有抵抗を低く押さえること(特開平5−61271号公報、特公平7−31422号公報、特公平7−120086号公報等)が提案され、また、キャリアの体積固有抵抗を下げる方法として、磁性粉末の表面を導電性成分が添加された樹脂で被覆する方法(特開昭56−75659号公報等)が提案されている。
【0015】
しかし、これらの方法は、キャリアの体積固有抵抗を低くし過ぎると、現像実効電極を極端に感光体に近接させることから感光体へのトナー供給能力の低下、潜像リークの発生による、いわゆるブラシマーク及びキャリアへの電荷注入によるキャリアオーバー(BCO)等を防止できない。また、現像剤に、これらの問題を生じさせない体積固有抵抗範囲のキャリアを用いても、使用されるトナーのtanδ,外添剤の抵抗によっては電荷注入によるカブリが生じる。これは、上記した問題を起こさない体積固有抵抗範囲のキャリアを用いること、又はAC及びDCバイアス併用の現像システムを用いること等によって顕著に現れるようになった現象である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記した実情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、長期に亘り良好な帯電性を保持するとともに、粉砕性及び熱保存性を両立できて、十分な低温定着性、耐オフセット性、低温剥離性及び広い定着可能温度領域を有し、長期に亘って感光体へのフィルミングがなく高画質の画像が形成され、キャリアへのインパクションが防止される静電荷像現像剤及びそれを用いる画像形成方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の静電荷像現像剤は、結着樹脂、着色剤脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂を含有し、必要に応じて離型剤を含むトナーと、導電性微粒子を含む樹脂被覆層が形成されたキャリアからなることを特徴とする。本発明に用いるトナーには、脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂を、結着樹脂100重量部に対して2〜50重量部の割合で含有することが好ましい。また、その共重合樹脂としては、脂肪族炭化水素成分がイソプレン、ピペリレン及び2−メチルブテン−1、2−メチルブテン−2から選ばれた少なくとも1種からなり、芳香族炭化水素成分がビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン及びイソプロペニルトルエンから選ばれた少なくとも1種からなるものが好ましく、その軟化点は80〜170℃の範囲のものが好ましい。また、トナーの結着樹脂としては、ポリエステルが好ましく、なかでもTHF不溶分5〜30%を含むポリエステルがより好ましい。
さらに、トナーには、外添剤が添加されていることが好ましく、なかでも、外添剤は、圧縮成型した成型品の体積固有抵抗が電界強度3000V/cmで106 Ω・cm以上であり、電界強度10000V/cmで1010Ω・cm以下である微粒子を少なくとも1種含有するものが好ましい。
【0018】
本発明に用いるキャリアの樹脂被覆層には、樹脂微粒子を含有することが好ましい。その樹脂微粒子としては、熱硬化性樹脂であることが好ましく、より好ましくは架橋された窒素原子を含有する熱硬化性樹脂である。また、キャリアの樹脂被覆層は、芯材100重量部に対して被覆樹脂量が1.0〜15重量部の割合からなるものが好ましい。さらに、キャリアの体積固有抵抗は、電界強度3000V/cmで109 Ω・cm以上であり、電界強度10000V/cmで1013Ω・cm以下であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の静電荷像現像剤は、微粒子を圧縮成型した成型品の体積固有抵抗が、電界強度3000V/cmで106 Ω・cm以上であり、電界強度10000V/cmで1010Ω・cm以下の微粒子を少なくとも1種含有する外添剤を添加したトナーと、体積固有抵抗が、電界強度3000V/cmで109 Ω・cm以上であり、電界強度10000V/cmで1013Ω・cm以下であるキャリアからなる2成分現像剤であって、トナー濃度が2重量%以上のとき体積抵抗が電界強度3000V/cmにおいて1011Ω・cm以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の画像形成方法は、静電荷像担持体上に静電潜像を形成する工程、形成された静電潜像を現像剤を用いて現像する工程及び得られたトナー像を転写体に転写する工程を有する方法において、その現像剤として、上記した結着樹脂、着色剤、離型剤及び脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂を含有するトナーと、導電性微粒子を含む樹脂被覆層が形成されたキャリアからなる静電荷像現像剤を用いることを特徴とする。また、その画像形成方法には、帯電及び転写の少なくとも一方の工程に、静電荷像担持体に圧接する部材が設けられていることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるトナーには、少なくとも結着樹脂、着色剤及び脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂を含有し、必要に応じて離型剤を含むものである。本発明のトナーに含まれる脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂は、石油類のスチームクラッキングによりエチレン、プロピレン等を製造するエチレンプラントから副生する分解油留分に含まれるジオレフィン及びモノオレフィンを原料として合成されるものであり、イソプレン、ピペリレン、2−メチル−ブテン−1、2−メチルブテン−2から選ばれる少なくも1種の脂肪族炭化水素モノマー成分と、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、イソプロペニルトルエンから選ばれる少なくも1種の芳香族炭化水素モノマー成分とを共重合成分とした共重合体であることが好ましい。
【0022】
さらに、芳香族炭化水素モノマーとしては、モノマー純度の高いピュアモノマーを使用すると、樹脂の着色や加熱時の臭気を低く抑えることができるのでより好ましい。芳香族炭化水素モノマーの純度としては、95%以上が好ましく、より好ましくは98%以上である。芳香族炭化水素モノマーは、炭素数が9以上のモノマーからなり、このモノマーと脂肪族炭化水素モノマーから得られる共重合樹脂は、炭素数が9未満の芳香族炭化水素モノマーと脂肪族炭化水素モノマーから得られる共重合樹脂に比べてポリエステル樹脂との相溶性がより高くなる。さらに、トナーの粉砕性や熱保存性を満足させるには、共重合体の構成として芳香族炭化水素モノマー成分の多い方が好ましい。ただし、芳香族炭化水素モノマー成分の量が多くなり過ぎると離型剤の分散が悪化し、一方、脂肪族炭化水素モノマー成分の量が多くなり過ぎると熱保存性等が悪化するので、芳香族炭化水素モノマー成分と脂肪族炭化水素モノマー成分とは、重量比で99:1〜50:50が好ましく、より好ましくは98:2〜60:40であり、さらに好ましくは98:2〜90:10である。
【0023】
本発明に使用する脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂は、低分子量のものでも高ガラス転移温度を有し、さらに各種樹脂、エラストマー、ワックスとの相溶性のバランスが良好であるという特徴を有しており、結着樹脂と溶融混合することにより、熱保存性と粉砕性を両立させることが可能であり、トナーの帯電特性にも影響を及ぼさない。
さらに、上記の脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂は、ポリエステル樹脂と離型剤のワックスを併用することにより、樹脂中へのワックスの分散性が著しく向上することから、良好な熱保存性を維持した状態で、加熱ロールとの剥離性と耐オフセット性が著しく改善されると共に、感光体へのワックスのフィルミングによる複写体の画像欠陥の発生や、キャリア汚染による帯電劣化についても改善される。
【0024】
本発明において、トナーに使用される脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂の使用量は、結着樹脂100重量部に対して、2〜50重量部の範囲であるが、3〜30重量部が好ましい。その使用量が2重量部より少ないとワックス分散向上効果が得られず、50重量部より多くなるとトナーが過粉砕され易くなり、現像機中でトナーの粒子径が小さくなり、その結果としてカブリが生じ、画像濃度が薄くなり現像性が低下する恐れがある。
【0025】
上記の脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂は、環球式軟化点が80〜170℃の範囲のものが好ましく、より好ましくは100〜150℃である。その共重合樹脂の軟化点が80℃より低いものでは、熱保存性が悪化し、軟化点が170℃より高いものでは低温定着性を悪化させる。ここにいう環球式軟化点とは、JIS K6863−1994(ホットメルト接着剤の軟化点試験方法)に準じて測定した値を意味する。
【0026】
本発明におけるトナーの結着樹脂としては、従来よりトナーに用いられている公知の樹脂を使用することができ、例えば、ポリエステル、スチレン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられるが、低温定着性の観点から、特にポリエステルが好ましい。本発明に用いられるポリエステルは、従来公知の如何なるポリエステルも使用可能であるが、好適なポリエステルとしては、多価ヒドロキシ化合物と多価カルボン酸又はこれらの低級アルキルエステル、酸無水物、酸ハロゲン化物等の反応性酸誘導体とから得られるものが挙げられる。
【0027】
多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール、ビスフェノールA及びその誘導体、そのアルキレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA等の二価ヒドロキシ化合物の他に、グリセリン、ソルビトール、1,4−ソルビタン、トリメチロールプロパン等の三価以上のヒドロキシ化合物を用いることができる。
【0028】
また、多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクテンテトラカルボン酸、n−オクチルコハク酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−カルボキシメチルプロパン、テトラ(カルボキシメチル)メタン、マレイン酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸を用いることができる。
【0029】
本発明に使用するポリエステルの軟化点は、80〜150℃の範囲のものが好ましく、より好ましくは100〜140℃である。80℃より低いものは熱保存性が悪化し、150℃より高いのものは低温定着性が悪化する。また、ポリエステルのガラス転移温度は、55〜75℃の範囲のものが好ましい。55℃より低いものは熱保存性が悪化し、75℃より高いものは低温定着性が悪化する。また、ポリエステルの中で、テトラヒドロフラン(THF)不溶分を5〜30重量%含むものが好ましい。5重量%より少ないとオフセット性が劣り、30重量%を超えると着色剤及び離型剤ワックスの分散が悪くなり、画像の着色力不足及び感光体へのフィルミングが発生する。
【0030】
本発明のトナー中に使用する離型剤としては、DSCにおける吸収熱量ピークを70℃〜150℃の間に、さらに好ましくは80℃〜95℃の間に持つものである。この低温域に吸収熱量ピークを持つワックスを使用することにより、低温域における離型性が改善され、剥離爪による剥離爪傷の発生が抑制され、ポリエステルの優れた低温定着性を損なうことなく広い定着可能温度領域を確保することができる。吸収熱量ピークが≦70℃のものでは熱保存性が悪化し、吸収熱量ピークが≧150℃のものでは低温域において十分な離型性が得られない。なお、ここにいうDSCにおける吸収熱量ピークとは、DSC−50(島津製作所社製)を用いて昇温速度10℃/分で測定し、吸熱量が最大値を示す温度をいう。
【0031】
本発明に使用する離型剤としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、カルナバワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸ワックス等が挙げられるが、特に低分子量炭化水素ワックスが好ましい。低分子量炭化水素ワックスを使用することにより、定着後のこすり画像強度に優れたトナーを得ることができ、コピー原稿の画像表面が自動原稿紙送り装置や複写機内の紙送りローラー等に擦られて発生する、こすり汚れや画像にじみ等の画質低下を防止することができる。これらの離型剤の使用量は、トナーの結着樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは2〜10重量部である。離型剤の使用量が、0.1重量部よりも少ないと十分な離型性が得られず、20重量部を超えると帯電性及び熱保存性が低下する。
【0032】
本発明に用いる着色剤としては、カーボンブラック、フタロシアンブルー、キナクリドン、ベンジシンイエロー等の公知の着色剤が挙げられる。黒トナーとしては、カーボンブラックが好ましく、その種類としては、特に制限されることなく公知のものが使用できる。より好ましくは良好な製造安定性を有するDBP (ジブチルフタレート)吸油量が50〜300ml/100gの範囲のカーボンブラックが好ましい。なお、カーボンブラックの場合には、その平均粒子径が0.1μm以下のものが好ましく、良好な分散性を持つには一次粒子径が50nm以下のものが好ましい。トナー中の着色剤の使用量は任意であるが、カーボンブラックの場合には、含有率は2〜10重量%の範囲が好ましい。カーボンブラックの含有率が10%より多くなると、トナーの抵抗が低下して電荷注入によりカブリが生じる。また、結着樹脂中のカーボンブラックの含有率が2重量%より少なくなると、ソリッド濃度の低下、トナー消費量の増大、高抵抗化によるトナー追加時の応答性の悪化が生じる。
【0033】
また、本発明のトナーには、さらに必要に応じて、帯電制御剤、磁性粉、定着助剤等を添加してもよい。帯電制御剤としては、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、サリチル酸金属錯体等が使用できる。磁性粉としては、コバルト、鉄、ニッケルなどの強磁性金属、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、マグネシウム、亜鉛、マンガンなどの金属の合金、酸化物などの公知の磁性体が使用できる。
【0034】
本発明に用いる結着樹脂粒子の体積固有抵抗は、例えば、tanδによって示すことができ、tanδの値は3〜15×10−3の範囲が好ましい。tanδが3×10−3より小さいものでは、着色力が落ちたり、トナー間の帯電のばらつきが多くなって装置内で汚染が生じ易くなる。一方、tanδが15×10−3を越えるものでは、電荷注入性のかぶりが発生し易くなる。tanδの値は、3〜12×10−3が好ましく、より好ましくは4〜8×10−3である。
【0035】
本発明に用いるトナーには、流動化等を目的としてトナー粒子表面に外添剤を添加することができる。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子等の公知の無機微粒子が使用される。本発明に用いる外添剤には、微粒子を集めて圧縮成型して得た成型品の体積固有抵抗が、電界強度3000V/cmで106 Ω・cm以上であって、電界強度10000V/cmで1010Ω・cm以下の条件を満たす微粒子の少なくとも1種以上を含有することが好ましい。なかでも、その体積固有抵抗が、電界強度3000V/cmで106 Ω・cm以上であって、電界強度10000V/cmで109 Ω・cm以下のものがより好ましい。その体積固有抵抗が、電界強度3000V/cmで106 Ω・cmより小さいものでは電荷注入性のかぶりが生じ易くなり、他方、電界強度10000V/cmで体積固有抵抗が1010Ω・cmより大きいものでは、表面処理剤の使用量が多くなり流動性が悪化する。外添剤中の上記微粒子の割合は、0.05重量%以上が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上である。
【0036】
また、その微粒子の体積固有抵抗は、コア粒子の種類及び表面処理により制御することができる。そのコア化合物としては、酸化チタン、メタチタン酸化合物(TiO(OH)2 とカップリング剤との反応物)、酸化スズ、アルミナ等の公知のものを使用できるが、酸化チタン、メタチタン酸化合物が好ましい。その表面処理剤としては、帯電低下を防止すると同時に良好な維持性があり、電荷交換性が良好であり、かぶりの少ない高画質の画像が得られるシランカップリング剤が特に好ましい。このようなシランカップリング剤としては、例えばメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランを代表的なものとして例示できる。トナー100重量部に対する微粒子の添加量は0.2〜3.0重量部が好ましい。添加量が0.2重量部より少ないと静電潜像現像剤の流動性が悪くなり、キャリアへのトナー付着及びトナー同士の付着が生じ易くなる。また、その添加量が3.0重量部を越えると、微粒子がキャリアに付着して静電荷像現像剤の劣化、遊離物の感光体への付着が生じる。さらに、上記微粒子と併用される他の外添剤としては、抵抗が高くて電荷注入によるカブリを引き起こし難い疎水性シリカ等が特に好ましい。
【0037】
本発明のトナーを製造するには、例えば、少なくとも結着樹脂、脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂及び着色剤、さらに必要に応じて離型剤、帯電制御剤等の材料を配合し、これらをヘンシェルミキサーで混合させた後、エクストルーダー等の混練機で溶融混練し、生成した混練物を冷却する。これをハンマーミルにより粗粉砕し、次にジェットミルにより微粉砕を行った後、風力分級機で分級して得られたトナー粒子に、外添剤を添加してヘンシェルミキサー等で混合することにより得られる。
【0038】
本発明の静電荷像現像剤に使用されるキャリアは、芯材上に導電性微粒子を含む樹脂被覆層を有するものである。このキャリアの樹脂被覆層は、マトリックス樹脂中に少なくとも導電性微粒子が分散して含まれている。本発明に使用可能なキャリアの芯材としては、特に制限されることなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属又はフェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。キャリア芯材の平均粒子径は、通常10〜150μmであり、好ましくは30〜100μmである。
【0039】
また、マトリックス樹脂としては、キャリアの樹脂被覆層に利用されている任意の樹脂から選択することができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン;ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂、具体的にはポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品;フッ素樹脂、具体的にはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂、具体的には尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独でも又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
次に、樹脂被覆層中に分散される導電性微粒子(「導電粉」ともいう。)は、キャリアの導電性を調整するために利用されるものである。樹脂被覆層が設けられると、キャリアは絶縁化されて現像時に現像電極として作用し難くなり、特に、黒ベタ部にエッジ効果が現われること等によりソリッドの再現性が低下することから、導電粉の添加は、それを改善する機能を有するものである。導電粉自体の導電性は1010Ω・cm以下のものが好ましく、より好ましくは109 Ωcm以下である。
【0041】
導電粉としては、具体的には金、銀、銅のような金属や、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛等の半導電性酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を、酸化スズ、カーボンブラック又は金属で覆ったもの等を使用できるが、製造安定性、経済性及び導電性等の点からカーボンブラックが好ましい。そのカーボンブラックの種類は、何ら制限されることなく公知のものが使用できるが、良好な製造安定性を有するDBP(ジブチルフタレート)吸油量が50〜300ml/100gの範囲のカーボンブラックが好ましい。また、それらの平均粒径は0.1μm以下のものが好ましく、分散性の向上には一次粒子径が50nm以下のものが好ましい。
【0042】
本発明に用いるキャリアの樹脂被覆層には、樹脂微粒子を添加することにより多様な機能を付与することができる。例えば、樹脂微粒子によりキャリアの機械的な強度を向上させるには、マトリックス樹脂よりも硬い熱可塑性樹脂粒子や熱硬化性樹脂粒子を用いることができる。熱硬化性樹脂粒子は、比較的高硬度であり溶剤中で既に微粒子状になっているから、コーティング時に分散させ易く、樹脂被覆層中で凝集することなく一次粒子の形態を保つことができる。また、トナーに負の帯電付与性及び帯電維持性を保持させる帯電制御剤としては、窒素原子を含有する樹脂微粒子を用いる。
【0043】
本発明において、樹脂被覆層中に分散させる樹脂微粒子としては、熱可塑性樹脂粒子及び熱硬化性樹脂粒子のいずれも使用できる。それらの樹脂の微粒子形態のものを作製するには、後述するように、適切な粒径が得られる任意の方法が利用可能である。樹脂微粒子は、キャリアのマトリックス樹脂に分散混合させる前に、微粒子形態になっているものが好ましい。微粒子形態のものは、均一に混合分散させ易く、また均一分散を容易に確認できる。樹脂微粒子は、その必要とする機能に応じて、各種樹脂から適宜選択して使用することができ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン;ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂、具体的にはポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂又はその変性品;フッ素樹脂、具体的にはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリエステル;ポリカーボネート等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂;アミノ樹脂、具体的には尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。キャリアの機械的強度の向上を目的として樹脂微粒子を用いるときは、比較的高硬度のものが得られ易い熱硬化性樹脂が好ましく、なかでも、それらを架橋させた樹脂微粒子が特に好ましい。
【0044】
これらの樹脂微粒子は、次のような方法で作製することができる。例えば、合成樹脂の製造方法において、サスペンジョン重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法を利用して粒状樹脂を製造する方法、モノマーもしくはオリゴマーを貧溶媒中に分散させて架橋反応を進行させながら表面張力により粒状化させる方法、低分子成分と架橋剤とを溶融混練等により混合反応させた後、風力又は機械力により、所定の粒度に粉砕する方法等が挙げられる。樹脂微粒子の平均粒径は、0.1〜2μm程度のものが好ましく、より好ましくは0.2〜1μmである。0.1μmより小さいと樹脂被覆層内への分散が非常に悪くなり、一方、2μmより大きいと樹脂被覆層から脱落し易くなり、本来の機能を維持できなくなる。また、トナーに負帯電性を付与するには、樹脂微粒子の構成成分として電子供与性を有する窒素原子を含むことが好ましい。
【0045】
本発明の樹脂被覆キャリアにおいて、上記した導電粉及び樹脂微粒子を含むマトリックス樹脂がキャリア芯材の表面に被覆されるコート量としては、0.5〜5.0重量%の範囲が好ましく、より好ましくは1.0〜3.0重量%である。0.5重量%より少ないと、芯材が露出して所望の帯電特性及び抵抗特性を得ることが難しく、また経時のストレスにより被覆樹脂が剥がれて抵抗の低下及び帯電低下が生じ易くなり、耐久性がなくなる。一方、5.0重量%より多くなると、均一な被覆層の形成が困難になり、被覆層の荒れ及び流動性の悪化が生じる。
【0046】
キャリア芯材の表面に樹脂被覆層を形成するには、通常、樹脂被覆層を形成できる樹脂溶液(溶剤中に樹脂微粒子、導電粉等を含む)を利用する。例えば、キャリア芯材の粉末を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被覆層形成用溶液とを混合して溶剤を除去するニーダーコーター法等が使用できるが、本発明ではニーダーコーター法を用いることが好ましい。
【0047】
本発明において、上記トナーとキャリアの混合には、ターブラミキサーやV型ブレンダー等を用いて行うことができる。トナーとキャリアの混合比は、トナー濃度が通常1〜15重量%の範囲であり、現像性及び搬送性を考慮すると、2〜13重量%が好ましい。トナー濃度が1重量%未満になると、トナー搬送量の低下によるソリッド部のガサつき、文字部のカスレ、中間調濃度再現の悪化等の画質に悪影響が生じる。一方、トナー濃度が15重量%以上になると、トナーの搬送量が増大する結果、トナーの吹き出し、ボタ落ち及びコボレ等の搬送不良が発生し、また、帯電分布の広がり、トナー同士の摩擦帯電による逆極帯電トナーの発生等の帯電不良が生じる。
本発明に用いる静電荷像現像剤の体積抵抗は、トナー濃度が2重量%以上で、電界強度が3000V/cmの時に、1011Ω・cm以上であることが好ましい。その体積抵抗が1011Ω・cm未満のものでは、電荷注入性のかぶりが生じ易いため、より好ましくは体積抵抗が1013Ω・cm以上のものである。
【0048】
次に、本発明の静電荷像現像剤を使用する画像形成方法について説明する。図1は、本発明の静電荷像現像剤を用いて画像形成を行う画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図1において、静電荷像担持体(以下、「感光体」と記す)1は、図面上で時計と同方向(右回り)に所定の周速度で回転する。導電性基体1b上に光導電層1aが設けられた感光体1の上には、帯電ロール2が圧接して配置されており、中心の芯金2bとその外周を形成する導電性弾性層2aとを基本構成とし、帯電ロール2は圧接された感光体とともに回転する。また、帯電ロール2に電圧を印加する帯電バイアス電流3(V1 )が設けられており、帯電ロール2にバイアスが印加されると、感光体の表面が所定の極性及び電位に帯電され、次に画像露光4によって静電荷像が形成され、現像ロール5上のトナーにより画像として可視化される。現像ロール5には、現像バイアス電源11(V2 )により電圧が印加される。現像により感光体上に形成されたトナー像は、感光体に圧接されて転写バイアス電源7(V3 )により電圧が印加された転写ロール6により転写材8に静電転写され、転写材上のトナー像は定着手段により定着される。このような接触帯電方式と接触転写方式を有する画像形成装置は、コロナ帯電とコロナ転写方式のものと比べて、比較的低電圧のバイアスにより感光体の均一な帯電及び十分な転写が可能となるから、放電器の小型化やオゾン等のコロナ放電生成物を抑制できるという利点がある。
【0049】
本発明の静電荷像現像剤は、感光体へのワックス移行によるフィルミングの発生を防止できるため、画像欠陥の改善や帯電部材への付着、転写部材への付着等が改善されるから、帯電部材及び転写部材が高寿命化し、耐久性が向上する。
【0050】
接触型帯電装置としては、帯電ロール2の他に、帯電ブレード、導電性ブラシを用いる方法がある。図1は、接触帯電方式の典型的な概略図を示すものであるが、本発明の静電荷像現像剤を用いて直接感光体に部材を接触させて帯電させる方法であれば、すべて本発明の範囲内で適用可能である。帯電ロールとしては、金属製の芯金2bの周囲に、少なくとも弾性導電材料よりなる導電性弾性層2aを形成した構造を有するものであるが、帯電性を調整したり、像保持部材との接触状態を改善するには、例えば、特開昭64−66674号及び特開平1−211779号公報等に記載のように、導電性弾性層2aの表面に被覆層(或いは抵抗層)を設けるものも使用でき、また芯金2bには、任意の金属製シャフトが用いられる。
【0051】
導電性弾性層2aは、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料に、カーボンブラック、導電性金属酸化物等の導電材を分散させたものを成型して形成される。また、特開平2−198470号公報に記載のように、過塩素酸塩を含有させて導電性を付与したものでもよい。その表面に形成される被覆層材料としては、N−アルコキシメチル化ナイロン、セルロース樹脂、ビニルピリジン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、メラミン樹脂等を、単独で又は併用して用いられる。その被覆層には、さらに抵抗調整のために導電材を分散させてもよいし、劣化防止のために酸化防止剤を含有させてもよい。被覆層は、弾性導電材層の表面に塗布して形成されるが、当然ながら、はじきやむら等の塗布欠陥の発生を防止する必要がある。
【0052】
また、接触型転写装置としては、転写ロール6の他に転写ベルト、転写ドラムを用いる方法がある。図1は、接触転写方式の典型的な概略であり、部材を感光体に直接接触させて転写させる方法であれば、すべて本発明に適用可能である。転写ロールとしては、芯金6bは転写ロールの電極および支持部材として機能するものであり、例えばアルミニウム,鉄,銅合金,ステンレス鋼(SUS)等の導電性の材質で構成される。芯金の外径は通常10〜20mmの範囲のものである。弾性層6aのゴム材質としては、シリコーンゴム,ウレタンゴム,エチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体(EPDM)又はこれらの発泡体等が挙げられる。また、導電層は、転写ロールの導電度、硬度及び平滑性を調整して適切な転写電界を付与する作用があり、また、中間転写体への圧接時衝撃の緩和や、転写ロール表面に付着したトナーをクリーニングブレードで除去する際の良好なクリーニング性を確保する作用がある。この導電層の材質としては、フッ素系樹脂,ポリウレタン,シリコーンゴム又はその他の樹脂等が用いられる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
[キャリアAの製造]
フェライト粒子(平均粒径45μm) 100重量部
トルエン 14重量部
パーフルオロオクチルエチルメタクリレートと 1.6重量部
メチルメタアクリレートの共重合体
(共重合比8:2、Mw30000)
カーボンブラック(XC72、Vulcan社製) 0.16重量部
メラミン樹脂微粒子 0.3重量部
フェライト粒子を除く上記組成の混合物を10分間スターラーで攪拌し分散させて被膜形成用塗布液を調整し、さらに、その塗布液とフェライト粒子を真空脱気型ニーダーに入れ、温度60℃において30分攪拌した後、減圧してトルエンを留去して樹脂被覆層が形成されたキャリアAを得た。
【0054】
実施例1
ポリエステル樹脂 84重量部
(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/テレフタル酸/無水トリメリット酸/ドデセニルコハク酸縮合物、Mw30000、軟化点130℃、酸価15、ガラス転移点63℃、THF不溶分15%)
脂肪族炭化水素−芳香族炭化水素共重合樹脂 10重量部
[C5系石油留分(イソプレン)/C5系石油留分(ピペリレン)/純度98%イソプロペニルトルエン=モノマー重量比(1.5/1.5/97)、軟化点125℃]
カーボンブラック(BPL、キャボット社製) 6重量部
上記組成の混合物を溶融混練し、得られた混練物を圧延して冷却し、次にハンマーミルで粗破砕し、ジェットミルで微粉砕した後、風力分級機を用いて分級して、体積平均粒径9.0μmのトナー母体粒子を得た。
次に、得られたトナー母体粒子100重量部と、酸化チタン1.0重量部及び疎水性シリカ0.3重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、トナー粒子を得た。さらに、そのトナー粒子6重量部とキャリアA100重量部とを混合して現像剤を作製した。
【0055】
実施例2
ポリエステル樹脂 79重量部
(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/テレフタル酸/無水トリメリット酸/ドデセニルコハク酸縮合物、Mw30000、軟化点130℃、酸価15、ガラス転移点63℃、THF不溶分15%)
脂肪族炭化水素−芳香族炭化水素共重合樹脂 10重量部
[C5系石油留分(イソプレン)/C5系石油留分(ピペリレン)/純度98%イソプロペニルトルエン=モノマー重量比(1.5/1.5/97)、軟化点125℃]
ポリプロピレンワックス(数平均分子量3000) 5重量部
カーボンブラック(BPL、キャボット社製) 6重量部
上記組成の混合物を溶融混練し、得られた混練物を圧延して冷却し、次にハンマーミルで粗破砕し、ジェットミルで微粉砕した後、風力分級機を用いて分級して、体積平均粒径9.0μmのトナー母体粒子を得た。
次に、得られたトナー母体粒子100重量部と、酸化チタン1.0重量部及び疎水性シリカ0.3重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、トナー粒子を得た。さらに、そのトナー粒子6重量部とキャリアA100重量部とを混合して現像剤を作製した。
【0056】
実施例3
ポリエステル樹脂 83重量部
(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/テレフタル酸/無水トリメリット酸/ドデセニルコハク酸縮合物、Mw30000、軟化点130℃、酸価15、ガラス転移点63℃、THF不溶分15%)
脂肪族炭化水素−芳香族炭化水素共重合樹脂 6重量部
[C5系石油留分(イソプレン)/C5系石油留分(ピペリレン)/純度98%イソプロペニルトルエン=モノマー重量比(1.5/1.5/97)、軟化点125℃]
ポリプロピレンワックス(数平均分子量3000) 5重量部
カーボンブラック(キャボット社製、BPL) 6重量部
上記組成の混合物を溶融混練し、得られた混練物を圧延して冷却し、次にハンマーミルで粗破砕し、ジェットミルで微粉砕した後、風力分級機を用いて分級して、体積平均粒径9.0μmのトナー母体粒子を得た。
次に、得られたトナー母体粒子100重量部と、酸化チタン1.0重量部及び疎水性シリカ0.3重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、トナー粒子を得た。さらに、そのトナー粒子6重量部とキャリアA100重量部とを混合して現像剤を作製した。
【0057】
実施例4
ポリエステル樹脂 69重量部
(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/テレフタル酸/無水トリメリット酸/ドデセニルコハク酸縮合物、Mw30000、軟化点130℃、酸価15、ガラス転移点63℃、THF不溶分15%)
脂肪族炭化水素−芳香族炭化水素共重合樹脂 20重量部
[C5系石油留分(イソプレン)/C5系石油留分(ピペリレン)/純度98%イソプロペニルトルエン=モノマー重量比(1.5/1.5/97)、軟化点125℃]
ポリプロピレンワックス(数平均分子量3000) 5重量部
カーボンブラック(BPL、キャボット社製) 6重量部
上記組成の混合物を溶融混練し、得られた混練物を圧延して冷却し、次にハンマーミルで粗破砕し、ジェットミルで微粉砕した後、風力分級機を用いて分級して、体積平均粒径9.0μmのトナー母体粒子を得た。
次に、得られたトナー母体粒子100重量部と、酸化チタン1.0重量部及び疎水性シリカ0.3重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、トナー粒子を得た。さらに、そのトナー粒子6重量部とキャリアA100重量部とを混合して現像剤を作製した。
【0058】
比較例1
ポリエステル樹脂 89重量部
(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/テレフタル酸/無水トリメリット酸/ドデセニルコハク酸縮合物、Mw30000、軟化点130℃、酸価15、ガラス転移点63℃、THF不溶分15%)
ポリプロピレンワックス(数平均分子量3000) 5重量部
カーボンブラック(BPL、キャボット社製) 6重量部
上記組成の混合物を溶融混練し、得られた混練物を圧延して冷却し、次にハンマーミルで粗破砕し、ジェットミルで微粉砕した後、風力分級機を用いて分級して、体積平均粒径9.0μmのトナー母体粒子を得た。
次に、得られたトナー母体粒子100重量部と、酸化チタン1.0重量部及び疎水性シリカ0.3重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、トナー粒子を得た。さらに、そのトナー粒子6重量部とキャリアA100重量部とを混合して現像剤を作製した。
【0059】
比較例2
ポリエステル樹脂 79重量部
(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/テレフタル酸/無水トリメリット酸/ドデセニルコハク酸縮合物、Mw30000、軟化点130℃、酸価15、ガラス転移点63℃、THF不溶分15%)
脂肪族炭化水素石油樹脂 10重量部
[C5系石油留分(イソプレン)/C5系石油留分(ピペリレン)
トルエン=モノマー重量比50:50]
ポリプロピレンワックス(数平均分子量3000) 5重量部
カーボンブラック(BPL、キャボット社製) 6重量部
上記組成の混合物を溶融混練し、得られた混練物を圧延して冷却し、次にハンマーミルで粗破砕し、ジェットミルで微粉砕した後、風力分級機を用いて分級して、体積平均粒径9.0μmのトナー母体粒子を得た。
次に、得られたトナー母体粒子100重量部と、酸化チタン1.0重量部及び疎水性シリカ0.3重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、トナー粒子を得た。さらに、そのトナー粒子6重量部とキャリアA100重量部とを混合して現像剤を作製した。
【0060】
比較例3
ポリエステル樹脂 79重量部
(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/テレフタル酸/無水トリメリット酸/ドデセニルコハク酸縮合物、Mw30000、軟化点130℃、酸価15、ガラス転移点63℃、THF不溶分15%)
芳香族炭化水素石油樹脂 10重量部
(純度98%イソプロペニルトルエンの重合体)
ポリプロピレンワックス(数平均分子量3000) 5重量部
カーボンブラック(BPL、キャボット社製) 6重量部
上記組成の混合物を溶融混練し、得られた混練物を圧延して冷却し、次にハンマーミルで粗破砕し、ジェットミルで微粉砕した後、風力分級機を用いて分級して、体積平均粒径9.0μmのトナー母体粒子を得た。
次に、得られたトナー母体粒子100重量部と、酸化チタン1.0重量部及び疎水性シリカ0.3重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、トナー粒子を得た。さらに、そのトナー粒子6重量部とキャリアA100重量部とを混合して現像剤を作製した。
【0061】
比較例4
実施例2で得られたトナー粒子6重量部と下記のキャリアB100重量部を混合した現像剤を作製した。
[キャリアBの製造]
フェライト粒子(平均粒径45μm) 100重量部
トルエン 14重量部
スチレン−メチルメタクリレート共重合体 1.5重量部
(共重合比8:2、Mw30000)
フェライト粒子を除く上記組成の混合物を10分間スターラーで攪拌し分散させて被膜形成用塗布液を調整し、さらに、その塗布液とフェライト粒子を真空脱気型ニーダーに入れ、温度60℃において30分攪拌した後、減圧してトルエンを留去して樹脂被覆層が形成されたキャリアBを得た。
【0062】
[評価試験]
上記実施例1〜4及び比較例1〜4により作製したそれぞれの現像剤を、画像形成装置[Vivace555改造機(接触帯電器及び接触転写器を使用したもの)、富士ゼロックス社製]に用いて画像形成テストを実施し、得られた画像の画質について、下記の基準により評価した。なお、画像濃度は、10万枚複写後の画像濃度をマクベス濃度計による測定結果を示した。
<かぶり評価>
10万枚複写後のかぶりの程度によるグレード(良:G1〜悪:G5)
<感光体フィルミング>
10万枚複写後のフィルミングによる画像欠損グレード(良:G1〜悪G5)
<帯電部材フィルミング>
10万枚複写後のフィルミングによる画像欠損グレード(良:G1〜悪G5)
<転写部材フィルミング>
10万枚複写後のフィルミングによる画像欠損グレード(良:G1〜悪G5)
<最低定着温度>
定着機の温度を変更したテストを行い、ソリッド画像を2つ折りしたものを目視評価して、許容レベルの最低温度を測定
<定着時発生臭>
定着機内を通過する際の匂いを官能評価
<オフセット温度>
定着機の温度を変えてテストし、オフセットレベルを目視によりグレード評価<トナー熱保存性>
50℃/50%RHの環境下に24時間放置後、45μm目開きメッシュ上の残存トナー量(重量%)を測定し評価
<トナー粉砕性>
混練粗破砕物をジェットミルにて粉砕する際、体積平均粒径が9μm(コールターカウンターTA−II型、アパーチャー径100μm)になる供給量の比率を指標として評価(実施例1のものを1.0とし比率大は粉砕し易いことを示す)
上記の評価で得られた結果を表1に示す。なお、実施例1の現像剤を用いた画像形成のみについて、定着ロールにオイル供給を行った。
【0063】
【表1】
【0064】
次に、下記の実施例5〜10においては、次のようにキャリアの体積固有抵抗を測定した。まず、エレクトロメーター(商品名:KEITHLEY610C、KEITHLEY社製)と高圧電源(商品名:FLUKE415B、FLUKE社製)と接続された一対の20cm2 の円形極板(鋼製)である測定治具の下部極板上に、キャリアを厚さ約1〜3mmの平坦な層として形成するように載置する。次に、そのキャリア上に上部極板を配置した後、キャリア間の空隙を除くために、上部極板上に4kgの重しを乗せた状態でキャリア層の厚さを測定した。次いで、両極板に電圧を印加して電流値を測定し、次式に基づいて体積固有抵抗を計算した。なお、次式中、初期電流は印加電圧0のときの電流値であり、電流値は測定された電流値を示す。
体積固有抵抗=印加電圧×20÷(電流値−初期電流値)÷キャリア層厚
印加電圧を変化させて測定電界を変化させると、測定電界と体積固有抵抗との関係を表すグラフが得られる。
【0065】
また、静電荷像現像剤の体積抵抗についても、上記に準じて測定した。また、外添剤の体積固有抵抗の測定には、微粒子は厚さの設定が困難であること、空隙が非常に多くなること等の理由から、圧縮成型機にて約20tの荷重をかけることによって得られる厚さ約2〜4mmのディスク状の成型品を形成し、これを上記した測定治具間に挟持させ、これを用いて上記と同様にして電流値を測定する。また、体積固有抵抗の計算には以下の式を用いた。
体積固有抵抗=印加電圧×ディスク面積÷(電流値−初期電流値)÷ディス
ク層厚
【0066】
また、下記の実施例に用いた脂肪族炭化水素−芳香族炭化水素共重合樹脂は、次のとおりである。
(A):C5系石油留分(イソプレン)/C5系石油留分(ピペリレン)/イソプロペニルトルエン=モノマー重量比(1.5/1.5/97)
(B):C5系石油留分(イソプレン)/C5系石油留分(ピペリレン)/純度98%イソプロペニルトルエン=モノマー重量比(1.5/1.5/97)
(C):C5系石油留分(イソプレン)/純度98%イソプロペニルトルエン/純度98%インデン=モノマー重量比(3/50/47)
(D):C5系石油留分(イソプレン)/純度98%イソプロペニルトルエン/純度98%α−メチルスチレン=モノマー重量比(5/50/45)
(E):C5系石油留分(イソプレン)/純度98%イソプロペニルトルエン/純度98%α−メチルスチレン=モノマー重量比(30/35/35)
なお、これらの共重合樹脂の軟化点は、環球式軟化点である。
【0067】
[キャリアCの製造]
フェライト粒子(平均粒子径50μm) 100重量部
トルエン 14重量部
スチレン−メチルメタクリレート共重合体 1.5重量部
(共重合比20:40、臨界表面張力35dyne/cm)
カーボンブラック 0.4重量部
(平均粒子径25nm、DBP値71ml/100g)
(商品名:R330R、キャボット社製)
架橋メラミン樹脂粒子 0.2重量部
(平均粒子径0.3μm、トルエン不溶)
フェライト粒子を除く上記成分をサンドミルで30分間分散し、樹脂被覆層形成用溶液を調合した。次に、この樹脂被覆層形成用溶液とフェライト粒子を真空脱気型ニーダーに入れ、温度70℃において30分撹拌した後、減圧してトルエンを留去して、フェライト粒子上に樹脂被覆層が形成されたキャリアCを得た。得られたキャリアの体積固有抵抗を前記測定方法により測定し、図2に示されるような体積固有抵抗と測定電界とのグラフを得た。一例として、キャリアCの電界強度3000V/cmにおける体積固有抵抗は1010Ω・cmであった。
【0068】
[キャリアDの製造]
フェライト粒子(平均粒子径50μm) 100重量部
トルエン 14重量部
スチレン−メチルメタクリレート共重合体 1.0重量部
(共重合比20:40、臨界表面張力35dyne/cm)
パーフルオロオクチルエチルメタクリレート 0.5重量部
−メチルメタクリレート共重合体
(共重合比40:60、臨界表面張力24dyne/cm)
SnO2 (平均粒子径20nm、三菱マテリアル社製) 0.6重量部
(商品名S−1、電界強度1000V/cmの体積固有抵抗106 Ω・cm)
架橋ナイロン樹脂粒子 0.2重量部
(平均粒子径0.3μm、トルエン不溶)
フェライト粒子を除く上記塑性の混合物をサンドミルで30分間分散させて、被膜形成用塗布液を調整し、さらに、その塗布液とフェライト粒子を真空脱気型ニーダーに入れ、温度70℃において30分間撹拌した後、減圧下にトルエンを留去して樹脂被覆層が形成されたキャリアDを得た。得られたキャリアの体積固有抵抗について、上記測定方法により測定し、図2に示されるような体積固有抵抗と測定電界とのグラフを得た。一例として、キャリアDの電界強度5000V/cmにおける体積固有抵抗は1012Ω・cmであった。
【0069】
[酸化チタンA]
平均粒子径15nmのルチル型酸化チタン(商品名:MT−150A、テイカ社製)を水洗して水可溶性成分量を0.11重量%に減量した酸化チタン微粉末10gを、デシルトリメトキシシラン1.5gが溶解しているメタノール−水 (95:5)の混合溶媒に添加して超音波分散させた。次いで、エバポレーターで分散液中のメタノール等を蒸発により乾燥させた後、120℃に設定された乾燥機で熱処理し、これを乳鉢で粉砕してデシルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタンAを得た。得られた酸化チタンAの体積固有抵抗を上前記測定方法により測定し、図3に示されるような体積固有抵抗と測定電界とのグラフを得た。一例として、得られた酸化チタンAの電界強度5000V/cmにおける体積固有抵抗は108 Ω・cmであった。
【0070】
実施例5
ポリエステル樹脂 79重量部
(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/テレフタル酸/フマル酸/無水トリメリット酸/ドデセニルコハク酸縮合物、Mw30000、軟化点130℃、酸価15、ガラス転移点63℃、THF不溶分15%)
脂肪族炭化水素−芳香族炭化水素共重合樹脂(A) 10重量部
(軟化点125℃)
ポリプロピレンワックス(DSCによる軟化点145℃) 4重量部
ポリエチレンワックス(DSCによる軟化点125℃) 1重量部
カーボンブラック(BPL、キャボット社製) 6重量部
上記組成の混合物に水を添加しながら溶融混練し、得られた混練物を圧延して冷却し、次にハンマーミルで粗破砕し、ジェットミルで微粉砕した後、風力分級機を用いて分級して、体積平均粒径9.0μmのトナー母体粒子を得た。
次に、得られたトナー母体粒子100重量部に対して酸化チタンA1.2重量部と疎水性シリカ(一次粒径12nm,シリコーンオイル20%処理)0.2重量部をヘンシェルミキサーにて混合してトナー粒子を得た。さらに、そのトナー粒子6重量部とキャリアC100重量部とを混合して現像剤を作製した。
【0071】
実施例6
実施例5に用いた共重合樹脂(A)に代えて、脂肪族炭化水素−芳香族炭化水素共重合樹脂(B)を使用した他は、実施例5と同様にしてトナー粒子及び現像剤を得た。
実施例7
実施例5に用いた共重合樹脂(A)に代えて、脂肪族炭化水素−芳香族炭化水素共重合樹脂(C)を使用した他は、実施例5と同様にしてトナー粒子及び現像剤を得た。
実施例8
実施例5に用いた共重合樹脂(A)に代えて、脂肪族炭化水素−芳香族炭化水素共重合樹脂(D)を使用した他は、実施例5と同様にしてトナー粒子及び現像剤を得た。
【0072】
実施例9
実施例5に用いた共重合樹脂(A)に代えて、脂肪族炭化水素−芳香族炭化水素共重合樹脂(E)を使用した他は、実施例5と同様にしてトナー粒子及び現像剤を得た。
実施例10
実施例6に用いたキャリアCをキャリアDに代えたこと以外は、実施例6と同様にしてトナー粒子及び現像剤を得た。
【0073】
上記実施例5〜10により得られたトナー粒子及び現像剤のそれぞれについて、離型剤分散性、トナー熱保存性、トナー粉砕性、感光体フィルミング、画像濃度、定着性、画像抜け及びBCO等について下記の基準で測定及び評価した上で、総合評価も行った。
<離型剤分散性>
トナー切片を透過型電子顕微鏡にて観察し、実用上問題のないものは約0.5μm以下である。
<トナーtanδ>
JISK6911記載の方法に準じ、周波数1KHZにて測定した。
<トナー熱保存性>
50℃、50%RHの環境下で24時間放置した後、106μmの目開きメッシュ上の残存トナー量%を測定。実用上問題がないのは約5%以下である。
<トナー粉砕性指標>
ジェットミルにて混練粗粉砕物を粉砕する際、体積平均粒径(コールカウンターTA−II型、アパーチャー径100μm)9.0μmになる供給量の比(実施例1を1.0とし、その他をこの供給量で割って算出。トナー粉砕性指標が大きい程、粉砕が容易であり、実用上問題がないのは約0.8以上である。
【0074】
<感光体フィルミング>
富士ゼロックス社製A−color935改造機にて5万枚コピー後、感光体フィルミングによる画像欠陥のグレード(G5悪い→G1良い)
<5万枚中最低画像濃度、最大カブリグレード、画像抜け、BCO(キャリアオーバー)>
A−color935改造機(富士ゼロックス社製)にて5万枚複写した後、感光体フィルミングによる画像欠陥のグレード(G5悪い→G1良い)を行った。抜け部分が0.5mm以下のG3が実用上問題がない。BCO評価は、潜像背景部電位と現像バイアス電位との差を400Vの時に、背景部に現像されるキャリアの個数を目視で数えて評価した。実用上問題がないのは10個以下である。
<定着時発生臭>
定着機を通過する際の匂いを官能評価した。
<最低定着温度>
V500改造機(富士ゼロックス社製)において定着温度を変えてテストを行った。ソリッド画像を2つ折りにし、そのレベルを目視でグレード評価した。許容レベルになる最低温度を測定したが、実用上問題がないのは約135℃以下である。
<オフセット温度>
V500改造機(富士ゼロックス社製)にて定着温度を変えてテストを行って、そのオフセット発生温度を評価した。実用上に問題がないのは230℃以上である。得られた結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
表の結果によれば、各実施例は上記した特性がいずれも良好であり、現像性、画質、保存性及び定着性等について優れていることが判明する。
【0076】
【発明の効果】
以上のように、本発明の静電荷像現像剤は、特定の炭化水素系樹脂を加えたトナーと導電性微粒子を含む樹脂被覆キャリアとの2成分現像剤としたから、長期に亘って良好な帯電性を保持でき、また、粉砕性と熱保存性とを有するものであり、十分な低温定着性を維持した状態で耐オフセット性が著しく改善され、良好な粉砕性を有し、感光体へのフィルミングによる画像欠陥の発生がなく、キャリアへのインパクションによる帯電性低下等を生じることなく、高画質の画像を安定して形成することができる。また、本発明の静電荷像現像剤を感光体に圧接される接触帯電手段及び接触転写手段からなる画像形成装置に用いると、トナー中の離型剤の分散が良好な現像剤であるために離型性に富むばかりでなく、被覆されたキャリアを用いているために耐久性に優れており、フィルミングを発生させることなく、高画質の画像が得られると共に、感光体等の寿命を長期化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電荷像現像剤を用いる画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に用いるキャリアCの体積固有抵抗と測定電界とを示すグラフである。
【図3】本発明に用いる酸化チタンAの体積固有抵抗と測定電界とを示すグラフである。
【符号の説明】
1…静電荷像担持体(感光体)、1a…光導電層、1b…導電性基体、2…帯電ロール、2a…導電性弾性層、2b…芯金、3…帯電バイアス電源、4…画像露光、5…現像ロール、6…転写ロール、7…転写バイアス電源、8…転写材、9…クリーニング装置、10…除電装置、11…現像バイアス電源。
Claims (2)
- 結着樹脂、着色剤及び脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合樹脂を含有し、必要に応じて離型剤を含むトナーと、導電性微粒子を含む樹脂被覆層が形成されたキャリアからなることを特徴とする静電荷像現像剤。
- 静電荷像担持体上に静電潜像を形成する工程、形成された静電潜像を現像剤を用いて現像する工程及び得られたトナー像を転写体に転写する工程を有する画像形成方法において、該現像剤として、請求項1に記載の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする画像形成方法。
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