JP2007079492A - 画像定着方法及び画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 フッ素系樹脂に代表されるような離型層を設けない定着ロールを用いても、トナーの定着ロールからの離型性を長期にわたり維持でき、定着性の良好な画像が得られる画像定着方法及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】 静電荷画像現像剤用トナーにより記録媒体表面に形成されたトナー像を、加熱した定着ロールに接触させ、該トナー像を記録媒体表面に押圧することで、該記録媒体表面にトナー像を定着させる定着工程と、該記録媒体にトナー像を定着させた後の定着ロールを清掃する清掃工程と、を有する画像定着方法であって、前記静電荷画像現像剤用トナーは、離型剤の含有量が10〜40質量%であり、かつ、前記定着ロールは、表面の算術平均粗さRaが0.01〜5.0μmの金属ロールであることを特徴とする画像定着方法、及び前記定着工程、前記清掃工程を少なくとも有する画像形成方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法等の方式により、記録媒体表面に形成されたトナー像を、該記録媒体表面に定着させる工程を含む画像定着方法及び画像形成方法に関する。
電子写真法は、多数の方法が知られているが、一般には光導電性物質を利用した感光体層に種々の手段を用い電気的な潜像を形成する露光工程、トナーを用いて現像する工程、トナーを紙等の記録材に転写する工程、該トナー画像を加熱、圧力、熱圧あるいは溶剤蒸気などにより記録材に定着する工程、感光体層に残存したトナーを除去する工程といった基本工程から成り立っている(例えば、特許文献1及び2参照)。
これら電子写真法は、一般に熱ロール方式の定着装置を用いているもので、該定着装置としては、例えば、用紙のトナー画像担持面が当接する上部定着ロールと、用紙の裏面が当接する下部定着ロールとの2つの定着ロールを対向させて配置し、両ロールの間に所定のニップ圧力を設定し、一方の定着ロールを駆動することにより、他方の定着ロールを追従させて回転させる手段を用いている(例えば、特許文献3参照)。そして、前記定着ロールのいずれか一方または双方に加熱源を設けて、トナー画像を担持する用紙を通す際に、熱によりトナーを溶融し、その溶融されたトナーを用紙に押圧して定着し、コピーを作成するようにしている。
前記定着装置では、金属製のロールコアの表面に、弾性体を所定の厚さで被覆した上部定着ロールを加熱ロールとして構成しており、該加熱ロールに対して、溶融されたトナーが付着することを防止する手段と、清掃手段とを設けている。また、オイル供給装置として、加熱ロールに押圧されるロール部材を用いて、シリコーンオイルを供給する機構を設けており、更に、清掃手段として、ウエブによるトナーの除去機構を設けている。更に又、加熱ロールの表面に溶融されたトナーが付着することを防止するために、該加熱ロールの弾性体の表面の粗度を6μm以下に設定している。
また、近年、事務機器の省エネ対策として、芯金の肉厚を薄くすると共にハロゲンヒーター等のヒーターへの通電時間を短くすることが試みられている。芯金から離型層の表面への熱伝達を短くする為、離型層をより薄くすることが望まれている。
このような加熱定着ロールは、例えば、次のような工程を順次経て製造されている。
(1) アルミニウム合金、鉄系金属等の金属からなる円筒体の表面に切削、研削加工を施して、円筒体の両端部の外径を中央部より大きくしてなる鼓形状の円筒体芯金とする。
(2) 円筒体芯金の表面を切削、サンドブラスト、エッチング、液体ホーニング等の手段により粗らす。このように円筒体芯金の表面を粗らすのは、離型層に用いられるフッ素系樹脂が非接着性を有している反面、接着しにくいために、芯金表面にフッ素系樹脂が入り込むようにアンカー効果を持たせるためである。
(3) 表面を粗らした芯金の表面には、フッ素系樹脂を主成分とするプライマーを塗布し、これを自然乾燥又は100〜150℃の雰囲気にて乾燥を行って、プライマー層を形成する。
(4) プライマー層上にフッ素系樹脂塗料を塗布する。フッ素系樹脂塗料には、パーフルオロアルコキシ樹脂(以下、「PFA」という。)、4フッ化エチレン樹脂(以下、「PTFE」という。)等のフッ素系樹脂が用いられるが、PFAであれば、形態を粉体として塗装することができるので、PFAを回収して再利用することができる。このようにプライマー層上に塗布したフッ素系樹脂塗料をフッ素系樹脂の融点以上の雰囲気に20〜40分間放置し、焼成させてフッ素系樹脂被膜よりなる離型層を形成する。
更に、従来の加熱定着ロールにおいては、焼成した加熱定着ロールの離型層の表面皮膜は、粗れているので、用紙に保持されたトナー粒子を良好に定着できず、そのために、良質の画像を得ることができない。そこで、このような加熱定着ロールの離型層の表面を研磨して、その表面を出来るだけ平滑にすることが行われている。
また、従来の加熱定着ロールにおいては、離型層を形成するフッ素系樹脂塗料にカーボン、グラファイト、金属酸化物粒子等の添加剤が添加されている(例えば、特許文献4及び5参照)。このような添加剤がフッ素系樹脂塗料に添加されると、加熱定着ロールに接する紙を分離するために該加熱定着ロールに当接する分離爪によって起こるフッ素系樹脂被膜の摩耗や定着ロール導電性に起因するオフセットが防止される。
定着ロール表面の粗さは定着画像表面の粗さに影響するが、例えば画像強度の観点から画像表面の粗さが大きくなると定着後の画像強度、特にこすり磨耗に対して脆弱になるためRa3μm以下に規定している(例えば、特許文献6参照)。
また、近年フルカラー化にともない画質の観点から高光沢な定着画像が求められているが、透明フィルム上に画像表面の粗さRz3〜10μmの範囲に規定することにより画質を損なわず光沢度を得ることを提案している(例えば、特許文献7参照)。
定着ロールに離型剤を供給する手段は、離型剤供給用ロールのロール粗さや離型剤塗布を均一化するためにブレードを配し更にこのブレードのくい込み量を規定し安定な離型剤供給を行っている(例えば、特許文献8及び9参照)。
また定着ロールクリーニングにおいては定着ロール表面に残ったトナーを清掃する為に、定着ロール表面を巻取り式のウエブで清掃する方式やクリーニングブレードを使用して定着ロール清掃する方法が提案されている(例えば、特許文献10及び11参照)。
更に、ウエブ材料の工夫もなされており、材料の混合比や耐熱性繊維を配合しクリーニング性を向上させている(例えば、特許文献12参照)。
一方、離型剤に関しては一般的にシリコーンオイルが使用されており、これにアミン(アミノ基)を含有させたり(例えば、特許文献13及び14参照)、離型剤粘度を規定して定着時の離型性向上を図っている(例えば、特許文献15及び16参照)。
ところが、前述したように例えば定着ロールに内蔵された加熱源により定着ロール表面を加熱する場合、このようなフッ素系樹脂皮膜が加熱源から定着ロール表面への効率的な熱伝導を阻害することがある。このため定着ロール表面に設けられているフッ素系樹脂皮膜の厚みには制限がある。また効率的な熱伝導を行うためにフッ素系樹脂皮膜の厚みを薄くした場合、磨耗により定着ロール表面の低い濡れ性を長期にわたり維持できなくなる。
また、電熱性と磨耗性の両立の観点からとフッ素系樹脂中にカーボン、グラファイト、金属酸化物粒子、セラミックス等を添加する手法があるが、これらの添加量を増加させるとフッ素樹脂の溶融粘度が著しく上がるので、焼成後の表面離型層の表面が粗くなる。そこで再度離型層表面の平滑性を出すために表面を研磨する必要がある。その結果、離型層の厚さ制限が出るとともに、定着ロール構成が複雑になるため初期定着性能を長期にわたり維持することが困難であること、製造の観点から定着ロール製造工程が増えてしまうこと等の不具合が出てしまう。
更に、環境安全の観点からフッ素系樹脂を使用した場合、燃焼廃棄などする場合フッ化物が発生することと焼成されたフッ素樹脂と添加物の分離が困難なことから材料リサイクル/リユースができていないのが現状である。
一方、圧力定着法において、金属ロールを用いている例が知られている(例えば、特許文献17参照)。しかし、圧力定着では、圧力で押し付けるため定着画像の定着性が弱く、例えばボールペン程度の外力で容易にはがれるという問題があった。また、圧力定着法で定着性をあげるために樹脂と高沸点溶剤の連続相からならミクロ相分離構造を有するマイクロカプセルトナーが試みられているが、溶剤成分を用いるため、保管安定性、定着像のブロッキング性に問題があった(例えば、特許文献18参照)。
画質面での不具合としては未定着画像面に遊離外添剤や遊離顔料、軽微なカブリなども、定着時に離型してしまう為画像上に不具合物がある場合対応できない。これは低表面エネルギー材料を被覆した定着ロールは離型性は優れるが高離型性ゆえに本来画像上にあってはならないものまで定着してしまう。
米国特許第2,297,691号明細書 特公昭42−23910号公報 特開昭63−259582号公報 特開2002−31977号公報 特開2000−338810号公報 特開2002−91054号公報 特開2003−107775号公報 特開平5−119659号公報 特開平11−38814号公報 特開平5−232833号公報 特開平11−249477号公報 特開2000−112282号公報 特開平4−230784号公報 特開2002−6668号公報 特開平7−20742号公報 特開平8−50424号公報 特開昭51−36947号公報 特開平6−19182号公報
本発明は、上記問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、フッ素系樹脂に代表されるような離型層を設けない定着ロールを用いても、トナーの定着ロールからの離型性を長期にわたり維持でき、定着性の良好な画像が得られる画像定着方法及び画像形成方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、従来技術の上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の本発明により上記目的を達成し得ることを見出した。
すなわち本発明は、
<1> 静電荷画像現像剤用トナーにより記録媒体表面に形成されたトナー像を、加熱した定着ロールに接触させ、該トナー像を記録媒体表面に押圧することで、該記録媒体表面にトナー像を定着させる定着工程と、該記録媒体にトナー像を定着させた後の定着ロールを清掃する清掃工程と、を有する画像定着方法であって、前記静電荷画像現像剤用トナーは、離型剤の含有量が10〜40質量%であり、かつ、前記定着ロールは、表面の算術平均粗さRaが0.01〜5.0μmの金属ロールであることを特徴とする画像定着方法である。
<2> 前記記録媒体表面へのトナー像の定着を、25℃における粘度が5000〜30000mm2/s(5000〜30000cs(センチストークス))である定着オイルを供給しながら行うことを特徴とする<1>に記載の画像定着方法である。
<3> 前記離型剤は、ポリエチレンワックス及び無水マレイン酸をグラフト重合することにより得られる酸変性ポリエチレンワックスと、少なくとも1つのヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンと、をヒドロシリル化反応させることにより得られる酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスであることを特徴とする<1>又は<2>に記載の画像定着方法である。
<4> 少なくとも、像担持体表面を帯電する帯電工程と、帯電された前記像担持体表面に画像情報に応じた静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、該像担持体表面に形成された静電潜像を静電荷画像現像剤用トナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、該像担持体表面に形成されたトナー像を記録媒体表面に転写し、記録媒体表面にトナー像を形成する転写工程と、前記記録媒体表面に形成されたトナー像を、加熱した定着ロールに接触させ、該トナー像を記録媒体表面に押圧することで、該記録媒体表面にトナー像を定着させる定着工程と、該記録媒体表面にトナー像を定着させた後の定着ロールを清掃する清掃工程と、を有する画像形成方法であって、前記静電荷画像現像剤用トナーは、離型剤の含有量が10〜40質量%であり、かつ、前記定着ロールは、表面の算術平均粗さRaが0.01〜5.0μmの金属ロールであることを特徴とする画像形成方法である。
<5> 前記記録媒体へのトナー像の定着を、25℃における粘度が5000〜30000mm2/s(5000〜30000cs(センチストークス))である定着オイルを供給しながら行うことを特徴とする<4>に記載の画像形成方法である。
<6> 前記離型剤は、ポリエチレンワックス及び無水マレイン酸をグラフト重合することにより得られる酸変性ポリエチレンワックスと、少なくとも1つのヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンと、をヒドロシリル化反応させることにより得られる酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスであることを特徴とする<4>又は<5>に記載の画像形成方法である。
本発明は、フッ素系樹脂に代表されるような離型層を設けない定着ロールを用いても、トナーの定着ロールからの離型性を長期にわたり維持でき、定着性の良好な画像が得られる画像定着方法及び画像形成方法を提供することができる。
<画像定着方法>
本発明の画像定着方法は、静電荷画像現像剤用トナーにより記録媒体表面に形成されたトナー像を、加熱した定着ロールに接触させ、該トナー像を記録媒体表面に押圧することで、該記録媒体表面にトナー像を定着させる定着工程と、該記録媒体にトナー像を定着させた後の定着ロールを清掃する清掃工程と、を有する画像定着方法であって、前記静電荷画像現像剤用トナーは、離型剤の含有量が10〜40質量%であり、かつ、前記定着ロールは、表面の算術平均粗さRaが0.01〜5.0μmの金属ロールであることを特徴とする。
(定着ロール)
本発明に用いられる定着ロールは、金属ロールであることを特徴とする。金属ロールを使用することにより、一般的な定着ロールのようにトナー像と接触する部材表面にフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を被覆したものに比較して、耐摩耗性が格段に向上する。
また、一般的な定着ロールは剥離爪に代表されるような定着ロール接触型の離型補助機構に対して強度を保つためにフィラーを導入し離型層を硬化する必要がある。さらに定着ロール抵抗に起因した静電的なオフセットを抑制するために離型層中に導電性材料を分散させたりしなければならない。更に、一般的な定着ロールでは、主に定着ロール最表層の低表面エネルギー材料に離型剤供給やクリーニングするため例えば供給ロールやクリーニングウエブ材質を限定しなければならなかった。つまり材質で硬い材料を使用してしまうと定着ロールの表面層を削ってしまう為寿命が短くなってしまう問題がある。
これに対して金属ロールはロール自体に硬度及び導電性であるため、わざわざ強度補強や導電性付与の必要が無い。このことは製造工程に関しても一般的な定着ロールのように何層にわたり塗布、乾燥、研磨等の煩雑な繰り返し工程の必要が無いことを表している。 また、環境負荷の観点からも前述したように工程簡略化により製造エネルギーを減らすことにより環境負荷を低減できること及び廃棄に関してもフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を使用しないため燃焼廃棄によるフッ化物等は発生しない。更に定着ロールと離型層を分離する必要がなく廃棄工程も簡略化でき、リサイクル・リユースの観点でも金属であるので少なくとも材料リサイクルは可能である。また、多少の表面洗浄・研磨を付与すれば再度定着ロールとしてリユースできる。
また、画像面の不具合として遊離外添剤や遊離顔料、軽微なカブリに対しては金属ロールは優位である。これは金属ロールはフッ素樹脂やシリコーン樹脂のような低表面エネルギー材料に比べ高表面エネルギー材料といえ簡易的には水の接触角で表現できる。低表面エネルギー材料の水との接触角がおよそ100°を超えるのに対して金属、例えばSUSや酸化アルミニウムなどは100°以下となる。このように高表面エネルギー材料を使用することにより未定着画像上の遊離外添剤や遊離顔料などとの付着力が大きくなり定着時に取り除く形となる。カブリも同様で見かけ上は軽微なオフセットをおこして画像上の不具合なものを取り除く事が可能となる。軽微なオフセットは蓄積されると次画像にオフセットしてしまう為定着ロールクリーナーは必須となる。
本発明に用いられる定着ロールは、記録媒体表面に形成された未定着のトナー像と直接触れる定着ロールの表面の算術平均粗さRaが0.01〜5.0μmであることを特徴とする。前記定着ロールの表面の算術平均粗さRaは、0.10〜4.0μmであることが好ましく、0.10〜3.0μmであることがより好ましい。尚、切削・研磨による表面加工により定着ロールの表面の算術平均粗さRaを調整することができる。
前記定着ロールの表面の算術平均粗さRaが0.01μm未満の場合、定着画像面の溶融ムラ、グロスに関しては優位ではあるが高温オフセットが発生してしまう不具合がある。
一般にオフセット現象は、高温オフセットと呼ばれるものと低温オフセットと呼ばれるものに大別されるが、高温オフセットは溶融したトナーが熱定着ロールに付着することにより、また低温オフセットは溶融していないトナー粒子が熱定着ロールに付着することによるもので、熱定着ロールの表面温度の分布状態、トナー画像面との接触面積、トナー特性等により決定される。
前記定着ロールの表面の算術平均粗さRaが0.01μm未満の場合、高温オフセットが発生する原因として次のことが考えられる。1つは定着時に定着ロール表面とトナー画像面の間に離型剤が介在している状態において定着ロール面が鏡面な為離型剤が十分にトナー画像面に存在できず高温オフセットを発生していると推定できる。これは定着ロール表面の粗さが無いため定着ロール上に離型剤を保持できず離型剤が十分機能していない為と推定できる。
またもう一方で、トナー画像の離型性に関して定着ロール面とトナー画像面の接触面積及び接触状態が大きくなることにより高温オフセットが発生していると推定できる。これは粗さが異なる定着ロールを考えた場合、定着ロール表面とトナー画像面の接触面積において粗さが平滑なほど単位面積あたりの接触面積が大きいか又は接触面積が同じでも接触している個々の接触面が大きいため剥離力が大きくなり剥離に不利となり高温オフセットを発生させていると推定できる。
前記定着ロールの表面の算術平均粗さRaが5.0μmより大きい場合、上述の理由から高温オフセットに関しては離型剤保持性及び接触面積・接触状態は有利に働く。しかしながら定着画像表面の荒れ、グロスの観点で不具合が発生すること及びカラートナーを2色以上積層して定着する場合グロス、発色に関して均一な画像面が得られないなどの不具合も発生する。
表面の算術平均粗さに関して、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を被覆した一般的な定着ロールでも表面の算術平均粗さを規定すれば同様の効果が期待できるが、前述したように定着維持性、及び製造工程の観点から金属ロールの方がより優れている。
前記金属ロールの材質としては、機械的強度に優れ、熱伝導性の良好な材質のものであれば、特に制限はないが、例えば、耐久性、熱伝導性が高い、例えばFe、Cr、Cu、Ni、Co、Mn、Alなどの金属及びこれらの酸化物を単独でまた混合した材料の使用が可能である。更に上記金属及びその酸化物を被覆して使用することも可能である。
<静電荷画像現像用トナー>
本発明に用いられる静電荷画像現像用トナー(以下、「本発明に係るトナー」という場合がある。)は、離型剤の含有量が10〜40質量%であることを特徴とする。該離型剤の含有量は、15〜30質量%であることが好ましく、20〜25質量%であることがより好ましい。前記離型剤の含有量が10%未満の場合、前記金属ロールとの定着に関して十分な離型層形成ができず部分的に高温オフセットが発生してしまう。また、前記離型剤の含有量が40%より多い場合、十分な離型層形成はできるものの離型剤による定着時の画像ずれ等の問題が発生する。これは定着ロール表面とトナー像面の間に離型剤が多量に介在ししていることとにより摩擦抵抗が下がり定着ロールとトナー画像面、又は定着ロール同士でスリップしているためと推定できる。
本発明に係るトナーの製造方法は、特に限定されないが、離型剤の含有量を10〜40質量%に調整するために、実用上は以下に説明する製造方法により製造することが好ましい。
好ましい本発明に係るトナーの製造方法は、少なくとも粒子径が1μm以下の、第1の樹脂微粒子を分散した樹脂微粒子分散液と、着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液と、離型剤粒子を分散した離型剤粒子分散液と、を混合し前記第1の樹脂微粒子と前記着色剤粒子と前記離型剤粒子とを含むコア凝集粒子を形成する第1の凝集工程と、前記コア凝集粒子の表面に第2の樹脂微粒子を含むシェル層を形成しコア/シェル凝集粒子を得る第2の凝集工程と、前記コア/シェル凝集粒子を前記第1の樹脂微粒子または前記第2の樹脂微粒子のガラス転移温度以上に加熱し融合・合一する融合・合一工程と、を少なくとも経る製造方法である。尚、このような本発明に係るトナーの作製に好適な製造方法の詳細については後述する。
上述の本発明に係るトナーの作製に際し、第1の凝集工程において、第1の樹脂微粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含むコア凝集粒子を形成した後、第2の凝集工程において、このコア凝集粒子の表面に第2の樹脂微粒子を再び付着させることによって第2の樹脂微粒子からなる被覆層(シェル層)を形成し、コア凝集粒子の表面にシェル層を設けたコア/シェル構造も持つ凝集粒子(コア/シェル凝集粒子)を得る。この際のシェル層の厚みは特に限定されないが、150〜300nmの範囲内であることが好ましい。シェル層の厚みが150nm未満であると、トナー表面に離型剤が流出し、流出した離型剤が結果として感光体等を汚染してしまう場合がある。また、シェル層の厚みが300nmを超えと、コア成分を形成させる工程のスラリー系内粘度が低下し、シェル形成時に添加される樹脂微粒子の数が急激に増加するために系内スラリー粘度が大きく上昇するため、シェル形成の際に粒子径や粒子径分布が悪化する場合がある。更に、前記シェル形成時に微粒子が生成しやすく、このような残留樹脂微粒子を含むトナースラリーをフィルター等で固液分離、除去する際の目詰まりが発生し易くなる等のトナー製造上の問題が発生する場合がある。
上述のトナーの製造方法は、コア/シェル構造を有するトナーを得るための製造方法である。本発明に係るトナーはコア/シェル構造を有していなくてもよいが、トナー表面に離型剤が流出しづらく、感光体等を汚染しないという効果がより顕著になる点で、コア/シェル構造を有していることが好ましい。コア/シェル構造ではないトナーの製造方法は、第2の凝集工程を経ないこと以外、上述の製造方法と同様であり、第1の凝集工程で形成された凝集粒子を融合・合一させる製造方法である。
本発明に係るトナーは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.30以下であり、且つ、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDv/GSDp)が、0.95以上であることが好ましい。体積分布指標GSDvが1.30を超えると、画像の解像性が低下する場合があり、また、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpの比(GSDv/GSDp)が0.95未満であると、トナーの帯電性低下やトナーの飛散、カブリ等のが発生し画像欠陥を招く場合がある。
尚、本発明において、トナーの粒径や、上記した体積平均粒度分布指標GSDv、数平均粒度分布指標GSDpの値は、次のようにして測定し算出した。まず、コールターカウンターTAII(日科機社製)、マルチサイザーII(日科機社製)等の測定器を用いて測定されたトナーの粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々のトナー粒子の体積および数について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16v、および、数平均粒子径D16pと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50v、および、数平均粒子径D50pと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84v、および、数平均粒子径D84pと定義する。この際、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、D84v/D16vとして定義され、数平均粒度指標(GSDp)は、D84p/D16pとして定義され、るこれらの関係式を用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)および数平均粒度指標(GSDp)を算出できる。
また、本発明に係るトナーは、下記式(1)で表される表面性指標値が、2以下であることが好ましい。
・式(1) (表面性指標値)=(比表面積実測値)/(比表面積計算値)
〔但し、式(1)中、比表面積計算値は、6Σ(n×R2)/{ρ×Σ(n×R3)}で表され、前記比表面積計算値を表す式において、nはコールターカウンターにおけるチャンネル内の粒子数(個/1チャンネル)を表し、Rはコールターカウンターにおけるチャンネル粒径(μm)を表し、ρはトナー密度(g/μm3)を表す。また、前記チャンネルの分割数は16である。なお、分割の大きさはlogスケールで0.1間隔である。〕
前記表面性指標値は、2以下が好ましく、更に好ましくは1.8以下である。前記表面性指標値が2を超えると、トナー表面の平滑性が損なわれ、トナー表面に外添剤を外添した際にこの外添剤の埋没等が発生し、帯電性が低下することがある。
尚、比表面積計算値は、上記の比表面積計算値を表す式に示したようにコールターカウンターの各チャンネルの粒径とその粒径の粒子数を測定し、各粒子を球換算して、粒度分布を加味した形で求めた。また、比表面積実測値は、ガス吸着・脱着法に基づき測定され、ラングミュラ比表面積を求めることにより得られる。測定装置としては、コールターSA3100型(コールター株式会社製)や、ジェミニ2360/2375(島津製作所製)等を使用することができる。
また、本発明のトナーは、下記式(2)で表される形状係数SF1が、120〜135の範囲内であることが好ましい。
・式(2) SF1=ML2/(4A/π)×100
〔但し、式(2)において、MLはトナーの最大長(μm)を表し、Aはトナーの投影面積(μm2)を表す。〕
前記形状係数SF1が120未満であると、一般に画像形成の際に転写工程で残存トナーが生じるため、この残存トナーの除去が必要となるが、残存トナーをブレード等によりクリーニングする際のクリーニング性を損ないやすく、結果として画像欠陥を生じる場合がある。一方、前記形状係数SF1が135を超える場合には、トナーを現像剤として使用する場合に、現像器内でのキャリアとの衝突によりトナーが破壊される場合がある。この際、結果として微粉が増加したり、これによってトナー表面に露出した離型剤成分により感光体表面等が汚染され帯電特性を損なうことがあるばかりでなく、微粉に起因するかぶりの発生等の問題を起こすことがある。
前記形状係数SF1はルーゼックス画像解析装置(株式会社ニレコ製、FT)を用いて以下のように測定した。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについて最大長(ML)と投影面積(A)を測定し、個々のトナーについて、最大長の2乗/(4×投影面積/π)、即ち、ML2/(4A/π)×100を算出し、これを平均した値を形状係数SF1として求めた。
本発明に係るトナーに用いられる樹脂としては特に限定されず、公知の樹脂材料を用いることができるが、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのポリオレフィン類などの単量体などの重合体またはこれらを2種以上組み合せて得られる共重合体またはこれらの混合物を挙げることができ、さらにはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合系樹脂、あるいはこれらと前記ビニル系樹脂との混合物やこれらの共存下でビニル系単量体を重合する際に得られるグラフト重合体等を挙げることができる。
尚、前記樹脂がビニル系単量体を用いて作製される場合は、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合を実施して樹脂微粒子分散液を作製することができ、その他の樹脂の場合は油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば樹脂をそれらの溶剤に解かして水中にイオン性の界面活性剤や高分子電解質と共にホモジナイザーなどの分散機により水中に微粒子分散し、その後加熱または減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂微粒子分散液を作製することができる。また、このようにして得られた樹脂微粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700堀場製作所製)で測定することができる。
本発明に係るトナーに用いられる離型剤としては、ASTMD3418−8に準拠して測定された主体極大ピークが50〜140℃の範囲内にある物質が好ましい。主体極大ピーク50℃未満であると定着時にオフセットを生じやすくなる場合がある。また、140℃を超えると定着温度が高くなり、画像表面の平滑性が不充分なため光沢性を損なう場合がある。主体極大ピークの測定には、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7を用いることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。
また、前記離型剤の160℃における粘度η1は20〜600cpsの範囲内であることが好ましい。粘度η1が20cpsよりも小さいとホットオフセットを生じ易くなる場合があり、600cpsより大きいと定着時のコールドオフセットを生じる場合がある。
更に、離型剤の160℃における粘度η1と200℃における粘度η2との比(η2/η1)は、0.5〜0.7の範囲内が好ましい。η2/η1が0.5より小さいと低温度時のブリード量が少なくコールドオフセットを生じる場合がある。また、0.7より大きいと高温での定着の際のブリード量が多くなり、ワックスオフセットを生じることがあるばかりでなく、剥離の安定性に問題を生じる場合がある。
前記離型剤の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのごとき動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が挙げられるが、後述する酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスが、低温での高速定着・長時間の運転においても優れた剥離性能・定着性能を維持することが可能となる点で特に好ましい。以下、酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスについて説明する。
(酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス)
本発明に係るトナーに用いられる離型剤は、前述のとおり、酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス(以下、「変性ポリエチレンワックス」という場合がある。)が好ましい。
前記変性ポリエチレンワックスは、ポリエチレンワックスと無水マレイン酸をグラフト重合することにより得られる酸変性ポリエチレンワックスと、少なくとも1つのヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンとを、ヒドロシリル化反応させることにより得られる。
ポリエチレンワックスと無水マレイン酸のグラフト重合には、公知のグラフト重合法を用いることが出来る。
前記「ヒドロシリル基」は、Si−H基を意味し、少なくとも1つのヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンとは、ポリシロキサン鎖のSi原子に結合している官能基の少なくとも1つが水素で置換されたポリオルガノシロキサンを意味する。
また、前記「ポリエチレンワックス」とは、ポリエチレンを不活性ガス雰囲気下、熱分解することにより得られる分岐状のアルカンとアルケンのワックス状混合物である。このようなポリエチレンワックスは市販品を使用することが出来る。例えば、東洋ペトロライト株式会社からポリワックス500という商品名で入手可能である。
一方、前記ヒドロシリル化反応とは、ポリオルガノシロキサンのSi−H基がポリエチレンワックス中の不飽和二重結合に付加する反応である。このヒドロシリル化反応は、触媒の存在下、室温から150℃程度、好ましくは40℃〜130℃の範囲で行うことが出来る。触媒としては、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム等、公知のヒドロシリル化触媒を用いることが出来るが、その触媒活性の高さより、特に白金化合物が有効である。白金化合物としては種々の化合物が使用できるが、例としては、塩化白金酸;金属白金;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に金属白金を担持させたもの等が挙げられる。触媒の量は、白金触媒を使用する場合で、金属白金として0.0001〜0.1質量%程度である。ヒドロシリル化反応時、必要に応じて溶媒を用いても良く、使用可能な溶媒としては、チオフェン等の硫黄化合物;アセトニトリル、アニリン等の窒素化合物;酢酸、酪酸などの脂肪酸、及びそれらの酸無水物等が挙げられる。
前記ポリオルガノシロキサンとしては、下記一般式(3)で表される構造のポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
Figure 2007079492
一般式(3)中、R1〜R7はそれぞれ独立に、直鎖状または分岐状のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表す。X1及びX2はそれぞれ独立に、炭素数5〜10の直鎖状のアルキル基を表す。aは10≦a≦30の関係を満たす整数を表す。bは1≦b<[−0.5a+16]の関係を満たす整数を表す。
前記R1〜R7で表されるメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基は、直鎖状でも分岐状であってもよいが、特に直鎖状が好ましい。
前記aは10〜30の整数であり、15〜25の整数であることがより好ましい。aが30より大きいと、トナー中での酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスの分散性が悪化し、トナー中において、酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスが過度に偏在してしまい、その結果、高速定着時における金属製定着ロールに対する剥離性が悪化するとともに、定着画像のOHP透明性が悪化してしまう場合がある。一方、aが10より小さいと、トナー中において、酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスはより分散する方向となるが、シリコーン成分による潤滑効果が不十分となり、高速定着時における金属製定着ロールに対する剥離性は、やはり悪化してしまう場合がある。
前記bは1≦b<[−0.5a+16]の関係を満たす整数を表す。bが[−0.5a+16]以上の数値になると、ヒドロシリル化反応の際、酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス中に分岐構造、3次元ネットワークが多量に生成してしまい、ゲル化する場合がある。
前記変性ポリエチレンワックスの融点は、保存性の観点から、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。また、耐オフセット性の観点から、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
また、前記変性ポリエチレンワックスの、120℃においてコーン角1.34degを用いたE型粘度計で測定した粘度、ηs120は、10〜30mPa・sの範囲内であることが好ましく、15〜25mPa・sの範囲内であることがより好ましい。粘度ηs120が、10mPa・sより低いと、定着の際の溶出性は良好となるが、画像上に形成される離型剤層が不均一となり、金属ロール定着の際に剥離ムラを生じ、可視的には画像光沢ムラを生じさせる場合がある。また30mPa・sよりも高いと、離型剤の溶出性が低下し、金属ロール定着の際に、画像と金属ロールを剥離するのに充分な離型剤が供給されず、剥離不良が発生する場合がある。
尚、本発明において、離型剤の粘度ηsは、E型粘度計によって測定される。測定に際しては、オイル循環型恒温槽の備えられたE型粘度計(東京計器製)を用いる。ここで、コーンプレートとしては、コーン角1.34degのものを用いる。
測定は具体的には次のように行う。まず、循環装置の温度を目的の温度にセットし、空の試料測定用のカップと、空の参照用カップと、コーンとを測定装置にセットし、オイルを循環させながら恒温に保つ。次に温度が安定したところで、試料測定用カップ内に試料を1g入れ、コーンを静止状態で10分間静置させる。安定後、コーンを回転させ、測定を行う。コーンの回転速度は、60rpmとする。測定は、3回行い、その平均値を粘度ηsとする。
前記変性ポリエチレンワックスは、酸変性処理を施されることにより酸価を有している。適度な酸価を有することにより、酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスのトナー中での分散構造が、定着用金属ロールに対する剥離性に有利に作用する。前記変性ポリエチレンワックスの酸価は、10mgKOH/g以上が好ましく、15mgKOH/g以上がより好ましい。前記酸価が10mgKOH/gより小さいと、変性ポリエチレンワックスのトナー中での分散状態が不十分となり過度に偏在してしまい、その結果、高速定着時における定着用金属ロールに対する剥離性が悪化する場合がある。
これらの離型剤は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により微粒子化し、粒子径が1μm以下の離型剤粒子を含む離型剤分散液を作製することができる。
また、得られた離形剤粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700堀場製作所製)で測定することができる。
本発明に係るトナーに用いられる着色剤としては公知の着色剤が使用できる。
本発明に係るトナーに用いられる着色剤としては、黒顔料としてカーボンブラック、磁性粉等が挙げられる。
黄色顔料として、例えば、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエローNCG等が挙げられる。
赤色顔料として、ベンガラ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等が挙げられる。
青色顔料として、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレート等が挙げられる。
また、これらを混合し、更には固溶体の状態で使用できる。
これらの着色剤は、公知の方法で分散されるが、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
また、これらの着色剤は、極性を有するイオン性界面活性剤を用い、既述したようなホモジナイザーを用いて水系溶媒中に分散し、着色剤粒子分散液を作製することができる。
着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透過性、トナー中での分散性の観点から選択される。本発明に係るトナーへの着色剤の添加量は、トナーに含まれる樹脂100質量部に対して4〜20質量部の範囲内が好適である。
本発明に係るトナー製造に際し、乳化重合、顔料分散、樹脂微粒子、離型剤分散、凝集、またはその安定化などに用いる界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散のため手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものが使用可能である。
さらに、本発明に係るトナーには、帯電性をより向上安定化させるために帯電制御剤を添加することができる。帯電制御剤としては4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料やトリフェニルメタン系顔料など通常使用される種々の帯電制御剤を使用することが出来るが、第1、第2の凝集工程や融合・合一工程において、凝集粒子の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水汚染減少の点から水に溶解しにくい材料が好適である。
前記帯電制御剤として、湿式で無機微粒子をトナーに添加する場合、このような無機微粒子の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど通常トナー表面の外添剤として使うすべての無機微粒子を挙げることができる。この場合、これら無機微粒子はイオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基等を用いて溶媒中に分散させて利用することができる。
また、流動性付与やクリーニング性向上の目的で通常のトナーと同様に乾燥後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂微粒子を流動性助剤やクリーニング助剤として、乾燥状態でせん断をかけて本発明に係るトナー表面へ添加することができる。
本発明に係るトナー表面に添加される無機酸化物微粒子としては、SiO2、TiO2、Al23、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe23、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、Al23・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等を例示することができる。
これら無機酸化物微粒子のうち、特にシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましい。該無機酸化物微粒子は、表面が予め疎水化処理されていることが望ましい。この疎水化処理によりトナーの粉体流動性改善のほか、帯電の環境依存性、耐キャリア汚染性に対してより効果的である。
前記疎水化処理は、疎水化処理剤に前記無機酸化物微粒子を浸漬等することにより行うことができる。前記疎水化処理剤としては特に制限はないが、例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シランカップリング剤が好適に挙げられる。
前記シランカップリング剤としては、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤のいずれかのタイプを使用することも可能である。具体的には、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。前記疎水化処理剤の量としては、前記無機酸化物微粒子の種類等により異なり一概に規定することはできないが、通常無機酸化物微粒子100質量部に対して、1〜50質量部が好ましい。
<トナーの製造方法>
次に、本発明に係るトナーを製造する際に好適なコア/シェル構造のトナーの製造方法について説明する。
すなわち、前記好適なトナーの製造方法は、少なくとも粒子径が1μm以下の、第1の樹脂微粒子を分散した樹脂微粒子分散液と、着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液と、離型剤粒子を分散した離型剤粒子分散液と、を混合し前記第1の樹脂微粒子と前記着色剤粒子と前記離型剤粒子とを含むコア凝集粒子を形成する第1の凝集工程と、前記コア凝集粒子の表面に第2の樹脂微粒子を含むシェル層を形成しコア/シェル凝集粒子を得る第2の凝集工程と、前記コア/シェル凝集粒子を前記第1の樹脂微粒子または前記第2の樹脂微粒子のガラス転移温度以上に加熱し融合・合一する融合・合一工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
前記好適なトナーの製造方法でトナーを作製することにより、離型剤の含有量が10〜40%の範囲内にある本発明に係るトナーを容易に得ることができる。
前記第1の凝集工程においては、まず、樹脂微粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液とを準備する。樹脂微粒子分散液は、乳化重合などによって作製した第1の樹脂微粒子をイオン性界面活性剤を用いて溶媒中に分散させることにより調製する。着色剤粒子分散液は、樹脂微粒子分散液の作製に用いたイオン性界面活性剤と反対極性イオン性界面活性剤を用いて、黒色、青色、赤色、黄色等の所望の色の着色剤粒子を溶媒中に分散させることにより調製する。また、離型剤粒子分散液は、離型剤を、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により微粒子化することにより調製する。
次に、樹脂微粒子分散液と着色剤粒子分散液と離型剤粒子分散液とを混合し、第1の樹脂微粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ所望のトナー径にほぼ近い径を持つ、第1の樹脂微粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子(コア凝集粒子)を形成する。
前記第2の凝集工程は、第1の凝集工程で得られたコア凝集粒子の表面に、第2の樹脂微粒子を含む樹脂微粒子分散液を用いて、第2の樹脂微粒子を付着させ、所望の厚みの被覆層(シェル層)を形成することによりコア凝集粒子表面にシェル層が形成されたコア/シェル構造も持つ凝集粒子(コア/シェル凝集粒子)を得る。なお、この際用いる第2の樹脂微粒子は、第1の樹脂微粒子と同じであってもよく、異なったものであってもよい。
また第1および第2の凝集工程において用いられる、第1の樹脂微粒子、第2の樹脂微粒子、着色剤粒子、離型剤粒子の粒子径は、トナー径および粒度分布を所望の値に調整するのを容易とするために、1μm以下であることが好ましく、100〜300nmの範囲内であることがより好ましい。
前記第1の凝集工程においては、樹脂微粒子分散液や着色剤粒子分散液に含まれる2つの極性のイオン性界面活性剤(分散剤)の量のバランスを予めずらしておくことができる。例えば、硝酸カルシウム等の無機金属塩、もしくはポリ塩化アルミニウム等の無機金属塩の重合体を用いてこれをイオン的に中和し、第1の樹脂微粒子のガラス転移温度以下で加熱してコア凝集粒子を作製することができる。このような場合、第2の凝集工程においては、上記したような2つの極性の分散剤のバランスのずれを補填するような極性および量の分散剤で処理された樹脂微粒子分散液を、コア凝集粒子を含む溶液中に添加し、さらに必要に応じてコア凝集粒子または第2の凝集工程において用いられる第2の樹脂微粒子のガラス転移温度以下でわずかに加熱してコア/シェル凝集粒子を作製することができる。なお、第1および第2の凝集工程は、段階的に複数回に分けて繰り返し実施したものであってもよい。
次に、融合・合一工程において、第2の凝集工程を経て得られたコア/シェル凝集粒子を、溶液中にて、このコア/シェル凝集粒子中に含まれる第1または第2の樹脂微粒子のガラス転移温度(樹脂の種類が2種類以上の場合は最も高いガラス点移温度を有する樹脂のガラス転移温度)以上に加熱し、融合・合一することによりトナーを得る。
融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナーを、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナーを得る。
尚、洗浄工程は、帯電性の点から十分にイオン交換水による置換洗浄を施すことが好ましい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好ましく用いられる。更に乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
本発明において、現像方式は特に規定されるものではないが、本発明に係るトナーをキャリアと共に2成分現像剤として用いる方式も好ましい。キャリアとしては、特に規定されないがキャリアの芯材として、例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、これらとマンガン、クロム、希土類等との合金、及びフェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられるが、芯材表面性、芯材抵抗の観点から、好ましくはフェライト、特にマンガン、リチウム、ストロンチウム、マグネシウム等との合金が挙げられる。
本発明で用いるキャリアは、芯材表面に樹脂を被覆してなることが好ましく、該樹脂としては、マトリックス樹脂として使用できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン等のポリビニル系樹脂及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂、等のそれ自体公知の樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、これらの芯材表面を被覆する樹脂の中でも、フッ素系樹脂及び/又はシリコーン樹脂を少なくとも使用することが好ましい。前記芯材表面を被覆する樹脂として、フッ素系樹脂及び/又はシリコーン樹脂を少なくとも使用すると、トナーや外添剤によるキャリア汚染(インパクション)を防止できる効果が高い点で有利である。
前記芯材表面を被覆する樹脂による被膜は、前記樹脂中に樹脂粒子及び/又は導電性粒子が少なくとも分散されてなる。前記樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子等が挙げられる。これらの中でも、比較的硬度を上げることが容易な観点から熱硬化性樹脂が好ましく、トナーに負帯電性を付与する観点からは、N原子を含有する含窒素樹脂による樹脂粒子が好ましい。尚、これらの樹脂粒子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記芯材表面を被覆する樹脂の粒子の平均粒径としては、0.1〜2μmが好ましく、より好ましくは0.2〜1μmである。前記芯材表面を被覆する樹脂の粒子の平均粒径が0.1μm未満であると、前記被膜における樹脂粒子の分散性が悪くなる場合があり、2μmを超えると前記被膜から樹脂粒子の脱落が生じ易く、本来の効果を発揮しなくなる場合がある。
前記導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属粒子、カーボンブラック粒子、酸化チタン、酸化亜鉛等の半導電性酸化物粒子、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズ、カーボンブラック、金属等で覆った粒子等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性、コスト、導電性等の良好な点で、カーボンブラック粒子が好ましい。前記カーボンブラックの種類としては、特に制限はないが、DBP吸油量が50〜250ml/100g程度であるカーボンブラックが製造安定性に優れて好ましい。
前記被膜を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、架橋性樹脂粒子等の前記樹脂粒子及び/又は前記導電性粒子と、マトリックス樹脂としてのスチレンアクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等の前記樹脂とを溶剤中に含む被膜形成用液を用いる方法等が挙げられる。具体的には前記キャリア芯材を、前記被膜形成用液に浸漬する浸漬法、被膜形成用液を前記キャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、前記キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で前記被膜形成用液を混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。これらの中でも、本発明において、ニーダーコーター法が好ましい。
前記被膜形成用液に用いる溶剤としては、マトリックス樹脂としての前記樹脂のみを溶解することが可能なものであれば、特に制限はなく、それ自体公知の溶剤の中から選択することができ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。
前記被膜に前記樹脂粒子が分散されている場合において、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、前記樹脂粒子及びマトリックス樹脂としての前記粒子が均一に分散しているため、該キャリアを長期間使用して該被膜が摩耗したとしても、常に未使用時と同様な表面形成を保持でき、前記トナーに対し、良好な帯電付与能力を長期間にわたって維持することができる。また、前記被膜に前記導電性粒子が分散されている場合においては、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、前記導電性粒子及びマトリックス樹脂としての前記樹脂が均一に分散しているため、該キャリアを長期間使用して該被膜が摩耗したとしても、常に未使用時と同様な表面形成を保持でき、キャリア劣化を長期間防止することができる。尚、前記被膜に前記樹脂粒子と前記導電性粒子とが分散されている場合において、上述の効果を同時に奏することができる。
本発明の画像定着方法は、既述の本発明に係るトナーにより記録媒体表面に形成されたトナー像を、加熱した定着ロール(既述の金属ロール)に接触させ、該トナー像を記録媒体表面に押圧することで、該記録媒体表面にトナー像を定着させる定着工程を有する。前記記録媒体表面へのトナー像の定着は、少なくとも一方が既述の金属ロールで構成される2つの定着ロールを対向させて配置し、既述の金属ロールを他方の定着ロールに向けて押圧し、両ロールの間に前記トナ―画像が転写された前記記録媒体を通して、該記録媒体表面のトナー像を定着する方法が挙げられる。
前記定着工程における、定着速度(前記記録媒体を通すスピード、以下プロセススピード)は150〜400mm/sの範囲が好ましく、より好ましくは200〜350mm/sの範囲である。プロセススピードが100mm/sより遅いと、金属ロールを用いた場合、高熱伝導なため高温オフセットが発生しやすくなってしまう場合がある。また、プロセススピードが400mm/sを超えると、逆に熱伝達が小さくなり定着画像表面荒れ、剥離爪傷などの不具合を発生してしまう場合がある。
また、前記トナー像を記録媒体表面に押圧する圧力(既述の金属ロールの他方の定着ロールに向けて押圧する圧力)は、0.098〜0.98MPa(1〜10kgf/cm2)であることが好ましく、0.196〜0.686MPa(2〜7kgf/cm2)であることがより好ましい。前記トナー像を記録媒体表面に押圧する圧力が0.098MPa未満であると、定着後の画像強度が弱くなり記録媒体を曲げたりすると画像破壊となる場合があり、0.98MPaを超えると、記録媒体、特に紙を使用した場合紙しわが発生する場合がある。また厚紙を使用した場合紙がそり曲がってしまうなどの問題が発生してしまう場合がある。
一方、本発明に用いる記録媒体としては、一般的な紙(表面コート紙を含む)、OHP(カラー、白黒用)やPETフィルムに樹脂コートした特殊フィルム等が挙げられる。
また、本発明の画像定着方法は、前記記録媒体表面へのトナー像の定着を、25℃における粘度が5000〜30000mm2/s(5000〜30000cs(センチストークス))である定着オイルを供給しながら行ってもよい。該定着オイルを供給することにより、トナーの定着ロールからの離型性を長期にわたり維持できるという効果がより顕著となる。前記定着オイルの粘度は、5000〜20000mm2/sであることが好ましく、10000〜18000mm2/sであることがより好ましい。前記定着オイルの粘度が5000mm2/s未満であると、粘度が低すぎて高温時に定着ロール表面を流れてしまい離型性低下を招いてしまう場合があり、30000mm2/sを超えると、低温時の付着力が上がってしまい離型性低下を招いてしまう場合がある。
尚、定着オイルの25℃における粘度は、離型剤の粘度測定同様にE型粘度計によって測定を行った。
前記定着オイルの好ましい供給量は、用いる本発明に係るトナーの離型剤の含有量によって異なり、例えば、本発明に係るトナーの離型剤の含有量が10質量%のときは、2×10-2〜8×10-2μl/cm2が好ましく、3×10-2〜6×10-2μl/cm2がより好ましい。また、本発明に係るトナーの離型剤の含有量が40質量%のときは、3×10-3〜2×10-2μl/cm2が好ましく、5×10-3〜7×10-3μl/cm2がより好ましい。
このような定着オイルとしてはストレートシリコーンオイルとしてジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。また変性シリコーンオイルとして、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、異種官能基変性等の反応性シリコーンオイル及びポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級脂肪酸含有、フッ素変性などの非反応性シリコーンオイル等が挙げられる。この中ではジメチルシリコーンオイルとアミノ変性シリコーンオイルが特に好ましい。
更に、本発明の画像定着方法は、前記記録媒体表面にトナー像を定着させた後の定着ロールを清掃する清掃工程を有する。該清掃工程は、一般に金属板を定着ロールに押し当てかき取るブレード方式、ロールを押し当ててかき取るロールタイプ、布などを押し当ててかき取るウェブクリーナータイプのものがある。本発明では清掃効果の高いウェブクリーナー方式が好ましい。
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、少なくとも、像担持体表面を帯電する帯電工程と、帯電された前記像担持体表面に画像情報に応じた静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、該像担持体表面に形成された静電潜像を静電荷画像現像剤用トナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、該像担持体表面に形成されたトナー像を記録媒体表面に転写し、記録媒体表面にトナー像を形成する転写工程と、前記記録媒体表面に形成されたトナー像を、加熱した定着ロールに接触させ、該トナー像を記録媒体表面に押圧することで、該記録媒体表面にトナー像を定着させる定着工程と、該記録媒体表面にトナー像を定着させた後の定着ロールを清掃する清掃工程と、を有する画像形成方法であって、前記静電荷画像現像剤用トナーは、離型剤の含有量が10〜40質量%であり、かつ、前記定着ロールは、表面の算術平均粗さRaが0.01〜5.0μmの金属ロールであることを特徴とする。
本発明の画像形成方法における定着工程及び清掃工程は、既述の本発明の画像定着方法における定着工程及び清掃工程と同様であり、好ましい態様も同様である。
前記帯電工程とは、像担持体の表面を、帯電手段により一様に帯電する工程である。前記帯電手段としては、コロトロン、スコロトロンなどの非接触方式の帯電器、及び、像担持体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより、像担持体表面を帯電する接触方式の帯電器が挙げられ、いかなる方式の帯電器でもよい。しかし、オゾンの発生量が少なく、環境に優しく、かつ耐刷性に優れるという効果を発揮するという観点から、接触帯電方式の帯電器を用いることが好ましい。前記接触帯電方式の帯電器においては、導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、ロール状等の何れでもよいが、ロール状部材が好ましい。本発明の画像形成方法は、帯電工程においてなんら特別の制限を受けるものではない。
前記静電潜像形成工程とは、レーザー光学系やLEDアレイなど露光手段で、表面が一様に帯電された像担持体に露光し、静電潜像を形成する工程である。本発明の画像形成方法は、露光方式においてなんら特別の制限を受けるものではない。
前記現像工程とは、像担持体表面に、少なくともトナーを含む現像剤層を表面に形成させた現像剤担持体を接触若しくは近接させて、前記像担持体表面の静電潜像にトナーの粒子を付着させ、像担持体表面にトナー画像を形成する工程である。現像方式は、既知の方式を用いて行うことができるが、2成分現像剤による現像方式としては、カスケード方式、磁気ブラシ方式などがある。
前記転写工程とは、像担持体表面に形成されたトナー画像を、記録媒体に転写して転写画像を形成する工程である。フルカラー画像形成の場合は、中間転写体(記録媒体)としての中間転写ドラム又はベルトに各色トナーを1次転写したのち、紙等の記録媒体に2次転写するのが好ましい。また、用紙汎用性、高画質の観点から、各色のカラートナー画像を中間転写体上に一旦転写した後、該各色のカラートナー画像を一度に記録媒体に転写することが好ましい。
感光体からのトナー画像を記録媒体あるいは中間転写体に転写する転写装置としては、コロトロンが利用できる。コロトロンは用紙を均一に帯電する手段としては有効であるが、記録媒体である用紙に所定の電荷を与えるために、数kVという高圧を印加しなければならず、高圧電源を必要とする。また、コロナ放電によってオゾンが発生するため、ゴム部品や感光体の劣化を引き起こすので、弾性材料からなる導電性の転写ロールを像担持体に圧接して、用紙にトナー画像を転写する接触転写方式を用いることが好ましい。本発明の画像形成方法においては、転写装置に関し、特に制限を受けるものではない。
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお以下の説明において、特に断りがない限り、「部」は全て「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
−金属ロールAの作製−
材質:SUS304
寸法:外形φ35mm/内径φ25mm/長さ385mm(円筒体)
表面の算術平均粗さ:Ra1.0μm(切削・研磨による表面加工)
・算術平均粗さの測定
金属ロールAの表面の算術平均粗さの測定は、接触型表面粗さ測定機(サーフコム1400A:(株)東京精密製)を使用した。測定条件はJIS B0602:94に基づき、評価長さ4.0mm、カットオフ値0.80mm、測定速度0.30mm/s、傾斜補正を最小二乗直線補正で行った。尚、評価長さ、カットオフ値の記載がない場合はJIS B0602:94の記載に基づいて、評価長さ、カットオフ値を標準値にしたために省略したものである。
−金属ロールBの作製−
表面の算術平均粗さRaを0.07μmにした以外は金属ロールAと同様の加工をして金属ロールBを作製した。
−金属ロールCの作製−
表面の算術平均粗さRaを2.8μmにした以外は金属ロールAと同様の加工をして金属ロールCを作製した。
−金属ロールDの作製−
表面の算術平均粗さRaを4.8μmにした以外は金属ロールAと同様の加工をして金属ロールDを作製した。
−金属ロールEの作製−
材質をSUS304からAlに変えた以外は金属ロールAと同様の加工をして金属ロールEを作製した。
−金属ロールFの作製−
表面の算術平均粗さRaを7.2μmにした以外は金属ロールAと同様の加工をして金属ロールFを作製した。
−金属ロールGの作製−
金属ロールBを更に電解研磨をかけて、表面の算術平均粗さRa0.005μmにした金属ロールGを作製した。
−低算術平均エネルギー被覆定着ロールHの作製−
Al製の円筒体に高熱伝導性のシリコーンゴムよりなる耐熱性弾性層(ゴム硬度33°)を3mmの厚さに形成した下地ロールの上に、PFA組成物(MP102:三井・デュポン社製)を30μmの厚みにコーティングし、230℃で3時間焼き付けを行い、表面層を形成することにより、低表面エネルギー被覆定着ロールHを作製した。得られた定着ロールをブラスト処理して表面の算術平均粗さがRa1.8μmのロールを得た。
−低表面エネルギー被覆定着ロールIの作製−
定着ロールHの表面をブラスト処理を省いた以外は定着ロールHと同様の製法で低表面エネルギー被覆定着ロールIを作製した。表面の算術平均粗さRaは0.8μmであった。
−金属ロールJの作製−
表面の算術平均粗さRaを0.52μmにした以外は金属ロールAと同様の加工をして金属ロールBを作製した。
<トナー作製>
(樹脂微粒子分散液1の調製)
・スチレン(和光純薬製):325部
・nブチルアクリレート(和光純薬製):75部
・βカルボキシエチルアクリレート(ローディア日華製):9部
・1’10デカンジオールジアクリレート(新中村化学製):1.5部
・ドデカンチオール(和光純薬製):2.7部
上記成分を混合溶解したものに、アニオン性界面活性剤ダウファックス(ダウケミカル社製)4部をイオン交換水550部に溶解した溶液を加えてフラスコ中で分散、乳化し10分間ゆっくりと攪拌・混合しながら、さらに、過硫酸アンモニウム6部を溶解したイオン交換水50部を投入した。次いで充分にフラスコ内の窒素置換を十分に行った後、フラスコ内の溶液を攪拌しながらオイルバスで70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、固形分量42%のアニオン性の樹脂微粒子分散液1を得た。
樹脂微粒子分散液1中の樹脂微粒子は、中心粒径が196nm、ガラス転移温度が51.5℃、重量平均分子量Mwが32400であった。
(樹脂微粒子分散液2の調製)
・スチレン(和光純薬製):280部
・nブチルアクリレート(和光純薬製):120部
・βカルボキシエチルアクリレート(ローディア日華製):9部
上記成分を混合溶解したものに、アニオン性界面活性剤ダウファックス(ダウケミカル社製)1.5部をイオン交換水550部に溶解した溶液をフラスコ中で分散、乳化し10分間ゆっくりと攪拌・混合しながら、さらに、過硫酸アンモニウム0.4部を溶解したイオン交換水50部を投入した。次いで充分にフラスコ内の窒素置換を十分に行った後、フラスコ内の溶液を攪拌しながらオイルバスで70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、固形分量42%のアニオン性の樹脂微粒子分散液2を得た。
樹脂微粒子分散液2中の樹脂微粒子は中心粒径が150nm、ガラス転移温度が53.2℃、重量平均分子量Mwが691200、数平均分子量Mnが244900であった。
(着色剤粒子分散液1の調製)
・カーボンブラック(リーガル330:キャボット社製):30部
・アニオン界面活性剤(ニュ−レックスR:日本油脂(株)製):2部
・イオン交換水:220部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分予備分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:杉野マシン製)を用い圧力245Mpaで15分間分散処理を行い、着色剤粒子の中心粒径が354nmで固形分が20.0%の着色剤粒子分散液1を得た。
(着色剤粒子分散液2の調製)
・青色顔料(銅フタロシアニンC.I.Pigment Blue15:3:大日精化製):45部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬):5部
・イオン交換水:200部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:杉野マシン製)を用い圧力245Mpaで15分間分散処理を行い、着色剤粒子の中心粒径が462nmで固形分量が20.0%の着色剤粒子分散液2を得た。
(離形剤粒子分散液1の調製)
・パラフィンワックス HNP9(融点75℃:日本精鑞製):45部
・カチオン性界面活性剤Neogen RK(第一工業製薬製):5部
・イオン交換水:200部
上記成分を混合し100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、離形剤粒子の中心粒径が196nm、固形分量が22.0%の離型剤粒子分散液1を得た。
(離形剤粒子分散液2の調製)
・ポリエチレンwax PolyWax725(PW725、融点103℃ 東洋ペトロライト製):45部
・カチオン性界面活性剤Neogen RK(第一工業製薬):5部
・イオン交換水:200部
上記成分を混合し95℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、離形剤粒子の中心粒径が186nm、固形分量が22.0%の離型剤粒子分散液2を得た。
―トナーAの作製―
・樹脂微粒子分散液1:106部
・樹脂微粒子分散液2:36部
・着色剤粒子分散液1:30部
・離型剤粒子分散液1:91部
上記成分を丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した溶液を得た。
次いで、この溶液にポリ塩化アルミニウム0.4部を加えてコア凝集粒子を作製し、ウルトラタラックスを用いて分散操作を継続した。さらに加熱用オイルバスでフラスコ内の溶液を攪拌しながら49℃まで加熱し、49℃で60分保持した後、ここに樹脂微粒子分散液1を緩やかに36部を追加し、コア/シェル凝集粒子を作製した。その後、0.5Mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えて溶液のpHを5.6にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら96℃まで加熱し、5時間保持した後、冷却し、着色剤濃度26.4%の黒色トナーを得た。
次に溶液中に分散した状態の黒色トナーを、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水3Lに再分散し、15分300rpmで攪拌・洗浄した。これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.01、電気伝導度9.8μS/cm、表面張力が71.1Nmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりろ紙を用いて固液分離を行い、得られた黒色トナーからなる固形物を、12時間かけて真空乾燥させた平均粒径6.2μm、のトナーAを得た。
―トナーBの作製―
離型剤粒子分散液1の配合量を45.5部に変えた以外はトナーAの作製と同様にトナーを作製し、平均粒径6.5μmのトナーBを得た。
―トナーCの作製―
離型剤粒子分散液1の配合量を182部に変えた以外はトナーAの作製と同様にトナーを作製し、平均粒径5.7μmのトナーCを得た。
―トナーDの作製―
離型剤粒子分散液1の配合量を22.7部に変えた以外はトナーAの作製と同様にトナーを作製し、平均粒径6.0μmのトナーDを得た。
―トナーEの作製―
離型剤粒子分散液1の配合量を204.5部に変えた以外はトナーAの作製と同様にトナーを作製し、平均粒径6.1μmのトナーEを得た。
―トナーFの作製―
離型剤粒子分散液1を離型剤粒子分散液2に変えた以外はトナーAの作製と同様にトナーを作製し、平均粒径6.0μmのトナーFを得た。
―トナーGの作製―
着色剤粒子分散液1を着色剤粒子分散液2に変えた以外はトナーAの作製と同様にトナーを作製し、平均粒径6.3μmのトナーGを得た。
<外添剤の添加>
トナーA〜Gの各々のトナー100部と、外添剤として疎水性シリカ微粒子TS720(キャボット社製)0.3部とをヘンシェルミキサーでそれぞれ混合して、外添トナーA〜Gを作製した(トナーAと外添剤を混合したものを外添トナーA、トナーBと外添剤を混合したものを外添トナーBとし、同様に外添トナーC〜Gを作製。)。
<キャリアの作製>
・フェライト粒子(平均粒径50μm、体積電気抵抗108Ω・cm):100部
・トルエン:14部
・パーフルオロオクチルエチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体:1.6部
(共重合比40:60、Mw=5万)
・カーボンブラック(VXC−72;キャボット社製):0.12部
・架橋メラミン樹脂(数平均粒子径;0.3μm):0.3部
上記成分のうち、フェライト粒子を除く成分を10分間スターラーで分散し、被膜形成用液を調製し、この被膜形成用液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、60℃で30分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去して、フェライト粒子表面に樹脂被膜を形成して、キャリアを製造した。
<現像剤の作製>
キャリアを94部と外添トナーAを6部とを5分間V型ブレンダーで混合し現像剤Aを作製した。外添トナーB〜Gそれぞれについても、現像剤Aと同様にして現像剤B〜Gを作製した。
<実施例1〜9、比較例1〜10>
画像形成装置(DocuCentre450CP改造機:富士ゼロックス(株)社製、定着ロールを表1に記載の金属ロールA〜G、J及び低表面被覆定着ロールH、Iに変更し、定着ロールクリーナーを下記の定着ロールクリーナーに変更した。)を用い、表1に記載の現像剤A〜Gを用いて下記画質評価(初期、10万枚後、30万枚後)を行った。その評価結果を表2に示す。この際、現像剤をトナー載り量4.5g/m2に調整して画出しした後、プロセススピード280mm/secにて定着した。なお、画像形成に際して用いた用紙(記録媒体)としてはC2紙(富士ゼロックス(株)社製)を用いた。また、表1において、定着ロール離型剤供給の欄の「有」は、記録媒体表面にトナー像を定着させる際、定着オイル(KF96H10000cs(信越化学工業(株)製)、25℃における粘度が10000mm2/s)を7×10-3μl/cm2供給したことを意味する。
更に、表1において、定着ロールクリーニングの欄が「有」になっているものは、定着ロールクリーニングとして、以下のウェブクリーニング方式の定着ロールクリーニングを更に有している。具体的にはポリアミドとポリエステルから成る不織布等のウェブ部材、そのウェブ部材を定着ロール表面に圧接する圧接ロール、ウェブ部材を送り出す送り出しロール、回転駆動することによってウェブ部材を定着ロールの回転と逆方向に巻き取る巻き取りロール等によって構成されており、定着ロール表面に付着したオフセットトナーや紙繊維等をクリーニングする。本実施例においてはウェブクリーニング方式を有する(清掃工程を有する)ことを意味する。
尚、上記画像形成は、帯電工程と、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを有するものである。
(評価方法及び評価基準)
・剥離性
トナー画像を定着させる際の、定着ロールからのトナー画像の剥離を以下の基準で評価した。その結果を表2に示す。また、表2中、各注釈は以下の弊害が発生したことを表す。*1:画像表面荒れ、*2:高温オフセット、*3:スリップによる画像ずれ。
○:剥離がスムースで、実用上問題の無いレベルである。
△:一部剥離不良が起こっているが実用上問題ないレベルである。
×:定着時の剥離が不充分で、実用上問題となるレベルである。
××:定着時に剥離補助部材等に接触し画像欠損が起こるレベル、また一部定着ロールへの巻きつきが起こるレベルである。
・定着性
得られた定着画像を以下の基準で評価した。その結果を表2に示す。また、表2中、各注釈は以下の弊害が発生したことを表す。*1:画像表面荒れ、*2:高温オフセット、*3:スリップによる画像ずれ。
○:画像を軽く爪で擦った際に、画像に欠損が発生せず、実用上問題の無いレベルである 。
△:画像を軽く爪で擦った際に、一部画像欠陥があるものの実用問題の無いレベルである 。
×:画像を軽く爪で擦った際に、画像に欠損が発生し、実用上問題となるレベルである。
××:画像を軽く爪で擦った際に、画像が欠損し殆どの画像が欠損し記録媒体から取れてしまうレベルである。
Figure 2007079492
Figure 2007079492
表1及び2より、表面の算術平均粗さRaが0.01〜5.0μmの金属ロール、及び定着ロールクリーニングを有する画像形成装置により、定着オイルを供給しながら、離型剤の含有量が10〜40質量%のトナーを用いて、画像を定着・形成させた実施例1〜9は、剥離性、定着性とも良好であることがわかる。
<実施例10〜18>
実施例1〜9それぞれにおいて、表3に示すようにトナー像を定着させる際に供給した定着オイルを供給しなかったこと以外、実施例1〜9それぞれと同様にして、それぞれ画像定着及び画像形成を実施(実施例10〜18)し、評価した。その結果を表4に示す。
Figure 2007079492
Figure 2007079492
表3及び4より、表面の算術平均粗さRaが0.01〜5.0μmの金属ロール、及び定着ロールクリーニングを有する画像形成装置により、離型剤の含有量が10〜40質量%のトナーを用いて、画像を定着・形成させると、定着オイルを供給しなくても剥離性、定着性とも良好であることがわかる。
(離形剤粒子分散液3の調製)
・ポリエチレンワックス ポリワックス500(融点88℃ 東洋ペトロライト社製)100部を、攪拌機、温度計、窒素導入管、冷却管を付したフラスコに仕込み、窒素気流下120℃で加熱溶融した。次に、無水マレイン酸を5.0部、ベンゾイルパーオキサイドを1.0部を順次添加し、2時間反応攪拌した。反応終了後、攪拌下180℃、5.0mmHgの真空で1時間保つことにより未反応の無水マレイン酸やパーオキサイド分解物等の揮発成分を除去し、酸変性ポリエチレンワックスを得た。
・酸変性ポリエチレンワックス:660部
・下記式(4)で表されるポリオルガノシロキサン:340部
・トルエン:1000部
以上を、還流装置、温度計、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた3Lセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下95℃まで加熱し攪拌した。ついで塩化白金酸を、金属白金に換算して濃度が15ppmとなるよう添加し、6時間反応させた。反応後、減圧下でトルエンを除去し、融点75℃、ηs120 18.0Pa・sの酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス1を得た。
Figure 2007079492
・酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス1:100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンR):3.6部
・イオン交換水:400部
以上の成分を85℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)にて十分分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液3を調整した。離型剤粒子分散液3における離型剤[酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス1]の平均粒径は0.23μm、固形分比率は20%であった。
(離型剤粒子分散液4の調整)
前記式(4)で表されるポリオルガノシロキサンのかわりに、下記式(5)で表されるポリオルガノシロキサンを用いた以外は、離型剤粒子分散液3の調整と同様に操作し、離型剤粒子分散液4を調整した。離型剤粒子分散液4における離型剤[酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス2]の平均粒径は0.25μm、固形分比率は20%であった。
Figure 2007079492
<実施例19〜27>
実施例1〜9それぞれにおいて、表5に示すように離型剤粒子分散液1(離型剤として「HNP9」を使用)又は離型剤粒子分散液2(離型剤として「PW725」を使用)の代わりに、前記離形剤粒子分散液3(離型剤として「酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス1」を使用)を用いたこと以外、実施例1〜9それぞれと同様にして、それぞれ画像定着及び画像形成を実施し(実施例19〜27)、評価した。その結果を表6に示す。
<実施例28〜36>
実施例1〜9それぞれにおいて、表5に示すように離型剤粒子分散液1(離型剤として「HNP9」を使用)又は離型剤粒子分散液2(離型剤として「PW725」を使用)の代わりに、前記離形剤粒子分散液4(離型剤として「酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス2」を使用)を用いたこと以外、実施例1〜9それぞれと同様にして、それぞれ画像定着及び画像形成を実施し(実施例28〜36)、評価した。その結果を表6に示す。
尚、表5中離型剤の種類の欄に、変性PEワックス1と記載されているものは、酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス1を含有している離型剤粒子分散液3を用いていることを示し、変性PEワックス2と記載されているものは、酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックス2を含有している離型剤粒子分散液4を用いていることを示す。
Figure 2007079492
Figure 2007079492
表5及び6より、離型剤として酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスを用いると、剥離性、定着性ともより良好となることがわかる。

Claims (6)

  1. 静電荷画像現像剤用トナーにより記録媒体表面に形成されたトナー像を、加熱した定着ロールに接触させ、該トナー像を記録媒体表面に押圧することで、該記録媒体表面にトナー像を定着させる定着工程と、該記録媒体にトナー像を定着させた後の定着ロールを清掃する清掃工程と、を有する画像定着方法であって、
    前記静電荷画像現像剤用トナーは、離型剤の含有量が10〜40質量%であり、
    かつ、前記定着ロールは、表面の算術平均粗さRaが0.01〜5.0μmの金属ロールであることを特徴とする画像定着方法。
  2. 前記記録媒体表面へのトナー像の定着を、25℃における粘度が5000〜30000mm2/s(5000〜30000cs(センチストークス))である定着オイルを供給しながら行うことを特徴とする請求項1に記載の画像定着方法。
  3. 前記離型剤は、ポリエチレンワックス及び無水マレイン酸をグラフト重合することにより得られる酸変性ポリエチレンワックスと、少なくとも1つのヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンと、をヒドロシリル化反応させることにより得られる酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像定着方法。
  4. 少なくとも、像担持体表面を帯電する帯電工程と、帯電された前記像担持体表面に画像情報に応じた静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、該像担持体表面に形成された静電潜像を静電荷画像現像剤用トナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、該像担持体表面に形成されたトナー像を記録媒体表面に転写し、記録媒体表面にトナー像を形成する転写工程と、前記記録媒体表面に形成されたトナー像を、加熱した定着ロールに接触させ、該トナー像を記録媒体表面に押圧することで、該記録媒体表面にトナー像を定着させる定着工程と、該記録媒体表面にトナー像を定着させた後の定着ロールを清掃する清掃工程と、を有する画像形成方法であって、
    前記静電荷画像現像剤用トナーは、離型剤の含有量が10〜40質量%であり、
    かつ、前記定着ロールは、表面の算術平均粗さRaが0.01〜5.0μmの金属ロールであることを特徴とする画像形成方法。
  5. 前記記録媒体へのトナー像の定着を、25℃における粘度が5000〜30000mm2/s(5000〜30000cs(センチストークス))である定着オイルを供給しながら行うことを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
  6. 前記離型剤は、ポリエチレンワックス及び無水マレイン酸をグラフト重合することにより得られる酸変性ポリエチレンワックスと、少なくとも1つのヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンと、をヒドロシリル化反応させることにより得られる酸変性・シリコーン変性ポリエチレンワックスであることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成方法。
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