JP3623305B2 - 画像記録方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トナーを担持するトナー担持体と対向電極との間に配設された、互いに独立あるいは一連の複数の微小開口部と各微小開口部のトナー通過を制御する複数の制御電極部とを備えたトナー飛翔制御部材の該制御電極部に、画像信号に応じて電圧を印加し、上記トナー担持体上からのトナーを上記微小開口部に通して上記対向電極側に移行させ、上記トナー飛翔制御部材と上記対向電極との間に位置する記録部材上に付着させることで画像を形成する画像記録方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、画像記録方法としてダイレクトトーニングまたはトナープロジェクションと称される画像記録方式が知られている。この画像記録方式は、孔やスリットの周りに設けた画像電極に電圧を印加し、帯電させたトナーをその孔やスリットを通して移動(飛翔)させ、紙等の記録部材に直接画像を形成するものである。
【0003】
上記画像記録方式については多くの提案がなされている。例えば、特公昭44−26333号公報には、背面電極、記録体、制御格子、メッシュ電極、このメッシュ電極にトナーを供給する毛皮ブラシを順に配置した装置が開示されている。この装置では、絶縁性トナーをブラシの回転により摩擦帯電させ、メッシュ電極と背面電極の間の空間に形成される電界で加速して背面電極に向かわせ、制御格子を通して紙上に像を形成する。この制御格子に加える電気信号の値を変えるとメッシュ電極と制御格子間の電界が逆転し、トナーが飛翔せず地肌部(白)が形成され、また電気信号を加減することで画像濃度を変えることもできるようになっている。
【0004】
ところが、上記装置では絶縁性トナーをもちいるので、これを摩擦帯電させるのにブラシを回転させる大がかりな装置が必要となる。絶縁性トナーの摩擦帯電を、二成分現像方式や一成分現像方式で行うことも考えられるが、これらにおいても、キャリヤ、撹拌機構、現像ローラなどが必要のため、装置が大がかりになってしまう。また、摩擦帯電によって熱が発生するため、トナーの母体樹脂として比較的融点の高い樹脂を用いる必要があり、定着時の温度を低下させるのが困難であり、省エネルギーが実現されにくい。
【0005】
一方、特公平6−47298号公報には、対向電極、記録体、微小開口部と該微小開口部の周囲に設けられた制御電極とを有する制御部材、層状に導電性トナーを担持するトナー担持体を順に配置した装置が開示されている。この装置では、トナー担持体と対向電極間に直流電界を与えた状態で、画像信号に応じて制御電極の電圧状態を、トナー担持体上のトナーの記録体に向けての飛翔を起こさせ得る電圧状態と同飛翔を起こさせない電圧状態との間で切り換える。そして、上記制御電極を前者の電圧状態に切り換えたときには、導電性トナーに電荷が誘導されてトナーが飛翔し、記録体表面に画像を形成する。このように導電性トナーを用いればあらかじめ電荷を付与しておかなくても、外部電界で電荷注入させて容易に帯電させることができ、摩擦帯電を必要としない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上記特公平6−47298号公報では、飛翔を起こさせない電圧状態のときにはトナー担持体と制御電極とに等しい電位が与えられていることが明示されている。このため、飛翔を起こさせ得る電圧状態でトナー担持体から離脱したトナーが記録体に到達する前に制御電極の電圧状態を飛翔を起こさせない電圧状態に切り換えてしまうと、上記トナーの搬送力が消えて浮遊トナーとなってしまうことが予想される。そして、この浮遊トナーが機内を汚染したり、制御電極に付着してしまい、この付着したトナーを除去するためにクリーニングが必要となったりする恐れがある。一方、制御電極を後者の電圧状態に切り換えたときには記録体上に導電性トナーが付着していることも明示されている。これらのことから、上記公報の装置においては、上記画像形成時にはトナー担持体から離脱したトナーが記録体に到達するまで、制御電極に前者の電圧を印加し続けるものと考えられる。よって、この電圧印加時間により、記録速度が左右される。そこで、上記公報には、上記制御電極を一対設け、トナーを加速できる電界を両電極間に形成することにより、記録速度を高速化することも記載されている。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、記録速度の高速化が可能な新規な画像記録方法及び装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、導電性のトナーを担持するトナー担持体と対向電極との間に配設された、互いに独立あるいは一連の複数の微小開口部と各微小開口部のトナー通過を制御する複数の制御電極部とを備えたトナー飛翔制御部材の該制御電極部に、画像信号に応じて電圧を印加し、上記トナー担持体上からのトナーを上記微小開口部に通して上記対向電極側に移行させ、上記トナー飛翔制御部材と上記対向電極との間に位置する記録部材上に付着させることで画像を形成する画像記録方法において、上記制御電極に画像を形成するための電圧を印加しない場合にも、上記トナー担持体から離脱したトナーを上記記録部材に向けて飛翔させる静電力を生じ、かつ、トナー担持体上から新たなトナーを飛翔させないような電界を形成する電圧を上記制御電極に印加し続けることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2の発明は、導電性のナーを担持するトナー担持体と対向電極との間に配設された、互いに独立あるいは一連の複数の微小開口部と各微小開口部のトナー通過を制御する複数の制御電極部とを備えたトナー飛翔制御部材の該制御電極部に、画像信号に応じて電圧を印加し、上記トナー担持体上からのトナーを上記微小開口部に通して上記対向電極側に移行させ、上記トナー飛翔制御部材と上記対向電極との間に位置する記録部材上に付着させることで画像を形成する画像記録装置において、上記制御電極に画像を形成するための電圧を印加しない場合にも、上記トナー担持体から離脱したトナーを上記記録部材に向けて飛翔させる静電力を生じ、かつ、トナー担持体上から新たなトナーを飛翔させないような電界を形成する電圧を上記制御電極に印加し続けることを特徴とするものである。
【0010】
請求項1又は請求項2の発明においては、上記制御電極に画像を形成するための電圧を印加しない場合にも、上記トナー担持体から離脱したトナーを上記記録部材に向けて飛翔させる静電力を生じ、かつ、トナー担持体上から新たなトナーを飛翔させないような電界を形成させ続ける。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を画像記録装置であるカラープリンタに適用した実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係るカラープリンタの要部の概略構成図である。本カラープリンタでは、記録部材としての記録紙10は給紙カセット1から呼び出しローラ2により給紙され、記録紙搬送機能を備え、支持ローラ31、32に支持されたベルト状の対向電極4の矢印方向の回動により、制御電極5上に送られる。このベルト状対向電極4に記録紙搬送機能を持たせるには、例えば対向電極4に多数の孔を形成し、図示しないバキューム装置により、紙を対向電極表面に吸着する。そして、この制御電極5の上を水平に送られる間に制御電極5の下方に配置された、上部に開孔を有する4つのトナー容器6から、制御電極による制御で飛翔した導電性カラートナー(以下、導電性トナーという。)が付着して、記録紙10への記録が行われる。
【0012】
上記対向電極4には、導電性の支持ローラ31を介して図示しない電圧印加手段により電圧が印加されている。上記4つのトナー容器6はY、M、C、BKの各色のトナーを収容している。
【0013】
記録紙10に付着した導電性トナー91は、定着器としての熱ローラ7及び加圧ローラ8の間に送られて画像を定着される。
【0014】
図2に図1のX−X’線矢印方向の断面図を示す。なお、対向電極4と制御電極5については図示を省略している。トナー容器6は上記カラープリンタに脱着可能であり、装着時にはトナー容器6が有するギヤ61が、本体モータ62側のギヤ63と噛み合うようになる。また、トナー容器6には導電性トナー91層を持ち上げるためのプラスチック平板などで構成された上方向に移動可能なトナー担持体6aと、該トナー担持体6aを移動させるためのスクリューシャフト64と、振動素子としての例えばギヤ65と、弾性体としての例えばバネ66とを有している。上記ギヤ65は凹凸のある面が上記トナー容器の側壁のひとつの外側の面に接するように設けられ、上記バネ66は上記ギヤ65に向けて上記トナー容器を付勢力により押し出すことができるように設けられている。上記トナー容器6内のトナーが消費されるのに応じてスクリューシャフト64が回転され、トナー担持体6aがわずかに上方に移動してその分トナー層を押し上げる。この時、ギヤ65とバネ66とでトナー容器6を軽く振動させることによりトナー層表面を常に水平に保つことができる。また、トナー容器6の内壁は導電処理されており、トナー層はギヤを介して本体側板に接続され、これにより常に接地されている。
【0015】
図3は、図1のカラープリンタの1色の、上記対向電極4と上記制御電極5と上記トナー容器6内に設けられたトナー担持体6aとを備えた記録部の説明図である。上記制御電極5は、トナー担持体6a上のトナーに電界を与えることにより、該トナーの飛翔を制御するためのものである。上記制御電極5は、絶縁体である厚さ75μmのポリイミドフィルム52の両面に厚さ25μmの銅箔を接着し、それぞれの銅箔表面に電極パターンを露光後にエッチングし、最後に所定の位置にヤグレーザ等を用いて直径150μmの孔54を設けて形成することができる。そして、対向電極4側の上記銅箔を画像信号に応じて電圧V1が印加される画像電極51とし、トナー担持体6a側の上記銅箔を、孔54の直下以外の部分で導電性トナー91が飛翔しないようにするためのシールド電極53とする。このシールド電極53は、対向電極4と画像電極51に画像記録時の電圧を与えても孔54の直下以外の部分のトナーに加わる電界が飛翔開始電界を下回って飛翔が起こらないように、例えばトナー担持体6aと同様に接地しておく。また、図3の例では、対向電極4と画像電極51の間隔は200μm、シールド電極53と導電性トナー91層表面との間隔は100μmである。上記対向電極4には一定電圧、例えば400Vが印加されている。そして画像信号に応じて画像電極51にトナーの飛翔を起こさせ得る画像形成のための電圧が印加される。この電圧により導電性トナー91層表面に形成される電界が導電性トナー91の有する電荷に作用して静電力が生じ、この静電力が導電性トナー91に作用している導電性トナー91間あるいはトナー担持体6aとの付着力(ファンデルワールス力)と重力との和を上回ると、導電性トナー91は導電性トナー91層を離脱して破線で示す電気力線に沿って飛翔し、記録紙10に付着して画像を形成する。
【0016】
図4は、図3においてトナ−担持体6aを接地し、画像電極51に電圧V1=120V、180Vをそれぞれ印加したときのトナー担持体6a上のトナー層表面の電界をシミュレーションで求めた結果を示すものである。なお、図3において、電界分布は孔54の中心線Y−Y’について左右対称であると考えられるので、中心線Y−Y’から左側の部分についてのみシミュレーションを行った。ここで、横軸は上記トナー層表面の位置を表し目盛り23.5の位置が上記孔54の中心の直下である。縦軸は、上記トナー層表面における電界強度を表す。この目盛りの単位は10μmであり、トナーの直径も10μmとしたことから、目盛り1つに1つのトナーが対応していると見ることができる。以下、この目盛りに付した番号をトナー番号という。ここで、トナー番号17〜23のトナーが孔の下方にあるトナーであり、トナー番号15以下のトナーがシールド電極下方にあるトナーである。また、破線はV1=120Vのときの電界分布を表し、実線はV1=180Vのときの電界分布を表す。実験により、トナーの飛翔開始電界は3.8×105V/mとわかっている。このことから、図4より、V1=120Vのときには、導電性トナー91層には飛翔が可能となる程度の電界は与えられず、飛翔するトナーはないが、V1=180Vのときにはトナー番号20〜23、すなわち孔54の中心から約40μm以内の領域のトナーに上記飛翔開始電界以上の電界が与えられ、飛翔することが予測される。このことを実験を行って調べた結果、V1=180Vの場合には、上記孔54中心直下の直径約80μmの円形領域内のトナーが飛翔し、V1=120Vの場合には全く飛翔しないことが確認された。
【0017】
次に、V1=120Vが印加されている画像電極51に更に60V加えてV1=180Vにしたときの、トナーの軌跡のシミュレーション結果を図5に示す。図5(a)は、V1=180Vにした瞬間で、トナーはまだ飛翔するに充分な電荷を得ていない。そして図5(b)に示すように0.2msec後には、トナーが飛翔するに充分な電荷を得て上述のように孔54中心から40μm以内の領域の8個のトナーがトナー層より離脱し、電気力線に沿って飛翔を始める。そして、図5(c)に示すように0.4msec後には、前記8個のトナーが雁行して、すなわち中心のトナーを先頭にして前記8個のトナーが集まりながら、制御電極5の孔54を抜けていく。そして、図5(d)に示すように0.6msec後には、全てのトナーが記録部材である紙の上に付着している。なお、このシミュレーションはV1=180V一定として行ったものである。しかしながら、上記トナーがトナー層から離脱して飛翔開始した後は、少々電圧を下げて電界を弱めたとしても、トナーに働く重力(この場合0.05×10− 10N)が、静電力(この場合5×10− 10N)に比較して無視できるほど小さいので、トナーの到達時間が多少遅れるだけでトナーはそのまま飛翔し続ける。従って、トナーが制御電極5の孔54を抜ける前にV1=120Vに切り換えても、トナーが浮遊して機内を汚染したり、シールド電極に付着してクリーニングが必要になったりすることがない。
【0018】
そこで、本実施形態では、上記画像電極51に画像形成時には180V、非画像形成時には120Vの電圧を与える。これにより、トナーが制御電極5の孔54を抜けるまで、画像電極の電圧の切り換えを待つ必要がないので、高速化が実現できる。また、制御電極5の分割駆動も可能となる。例えば、制御電極を横一列に並べて全電極を同時に駆動する場合、駆動のためのICドライバーが各電極毎に必要になる。例えば、210mm幅のA4縦送りで600dpiで印字する場合、4960個の画像電極を駆動することが必要である。ここで、32の出力端子を有し、32個の画像電極を駆動可能なICドライバーを用いる場合、必要となるICドライバーの個数は4960/32=155個にもなる。カラープリンタの場合はこれが4色分必要となるため、620個にもなる。一方、ICドライバーの一つのピン(出力端子)に8個の画像電極51を接続して、8分割駆動した場合、その個数は1/8の78個に減少し、そのコストや占有体積も1/8に縮小することができる。
【0019】
次に、本実施形態における制御電極51及びシールド電極53の詳細について説明する。図6に1色分の制御電極及びシールド電極の一例を示す。この例は、600dpiの一例である。この例では、画像電極への記録時の電圧駆動に用いる図示しない高価なICドライバーの使用量を減らすために600dpiの主走査1ラインの画像電極を8分割駆動する。
図6において、白抜きの矢印Aで示すように左右方向が記録紙の搬送方向(以下、紙搬送方向という)である。上記ポリイミドフィルム52の記録紙搬送側の面に設ける画像電極51は、8つの孔54分の画像電極51を一体化した共通画像電極51aの620個の群により構成されている。この620個の共通画像電極51aの群では、各共通画像電極51aが紙搬送方向に対して所定角度傾斜し、かつ、隣合う共通画像電極同士の孔中心が紙搬送方向上で重なり合わないように隣合う共通画像電極と間隔をおいて配列されている。具体的には、紙搬送方向に直交する方向(以下、紙幅方向という)における孔54中心のピッチd1が600dpi相当の42.3μmになるように、上記傾斜角度及び間隔が設定されている。この共通画像電極51aの群全体の寸法は、紙搬送方向w1が1.65mmで、紙幅方向幅lがA4横幅と同じ210mmである。
(以下、余白)
【0020】
一方、上記ポリイミドフィルム52の記録紙搬送側とは反対の面には、前記シールド電極53の機能を兼ねた分割駆動のための8つのシールド兼分割駆動電極531〜538が設けられている。このシールド兼分割駆動電極531〜538は、分割駆動にあたって、画像信号に応じてトナーを飛翔させる電圧(以下、トナー飛翔用電圧という)が上記共通画像電極51aに印加されている状態でも、共通画像電極51aの駆動対象の孔以外の孔についてトナーが通過しないような電界を形成するためのものである。各シールド兼分割駆動電極531〜538それぞれは、搬送方向に対して直交する620個の孔を備えている。そして、各シールド兼分割駆動電極531〜538の620個の孔それぞれが、上記620個の共通画像電極51aの紙搬送方向における同一順位の孔に対応するようにして、紙搬送方向に並べられている。例えば、紙搬送方向で最下流に位置するシールド兼分割駆動電極531の620個の孔それぞれは、上記620個の共通画像電極51aの、紙搬送方向における最下流の孔に対応する。
そして、上記620個の共通画像電極51a及び8つのシールド兼分割駆動電極531〜538が図示しないICドライバに接続されている。
【0021】
この例の制御電極においては、上記620個の共通画像電極51aの孔を、紙幅方向に並ぶ紙搬送方向で1番目の孔の列、同2番目の孔の列というように、シールド兼分割電極531〜538のそれぞれに対応する紙幅方向の孔列単位で、順次駆動状態にする。具体的には、例えば紙搬送方向で最上流側の孔列を駆動状態にするとき、つまり、該最上流側の孔列に相当するドットの画像情報に基づいたICドライバの出力を共通画像電極51aに印加するときは、同最上流側のシールド兼分割駆動電極538を、画像信号に応じてトナー飛翔用電圧が印加されている上記共通画像電極51aの孔に、飛翔トナーの通過する電界が形成され、かつ、トナーを飛翔させない電圧(以下、トナー不飛翔用電圧という)が印加されている上記共通画像電極51aの孔に、トナーが飛翔しない程度の電界しか形成されない電位状態(以下、駆動電位状態という)にする。一方、他のシールド兼分割駆動電極531〜537は、画像信号に応じてトナー飛翔用電圧が印加されている上記共通画像電極51aの孔にも、その直下のトナーが通過しない程度の電界しか形成されない電位状態(以下、非駆動電位状態という)にする。
【0022】
例えば、図3の例に関して上述した各部寸法及び対向電極電圧を採用し、共通画像電極51aにトナー飛翔時の電圧として例えば180V、トナー不飛散用の電圧として120Vをそれぞれ用いた場合、上記シールド兼分割駆動電極531〜538の駆動電圧状態様の電圧としては例えば−20V、非駆動電圧状態の電圧としては0V(すなわち接地)を印加する。これによれば、トナー飛翔のための電界強度の下限である飛翔開始電界強度が、例えば4.0×10の5乗(V/m)である低抵抗のトナーを用いた場合、トナー飛翔用電圧が印加された共通画像電極51の孔と、駆動電圧状態用の電圧が印加されたシールド電極53の孔とが重なる孔54の直下では、トナー層に加わる電界強度が飛翔開始電界強度を上回って飛翔が起こり、該孔54を通って対向電極側に移転し、記録紙10に付着する。また、印加電圧の組み合わせがこれとは異なる孔54、すなわち、トナー不飛翔用電圧が印加されている共通画像電極51aの孔と駆動電圧状態の電圧が印加されているシールド兼分割駆動電極531〜538の孔とが重なる孔54や、共通画像電極51への印加電圧が上記トナー飛散用電圧かトナー不飛散用電圧かを問わず、非駆動電圧状態の電圧が印加されているシールド兼分割駆動電極51の孔と共通画像電極51の孔とが重なる孔54の直下では、トナー層に加わる電界が飛翔開始電界を下回って飛翔は起こらない。
【0023】
そして、上記620個の共通画像電極51aの紙搬送方向で例えば上流側から2番目の孔列を駆動状態にするときは、同上流側から2番目のシールド兼分割駆動電極537を駆動電位状態にし、他のシールド兼分割駆動電極531〜536及び538は非駆動電位状態にする。
以上の8分割駆動で、例えば、共通画像電極51aのすべてにトナー飛翔用電圧を印加した状態で、シールド兼分割駆動電極531〜538の紙搬送方向におけるピッチ分だけ記録紙が移動する時間をずらして上記8個のシールド兼分割駆動電極531〜538を順次駆動状態にすれば、紙幅方向に1本の直線が記録紙10上に記録される。
【0024】
図7に同カラープリンタの4色分の制御電極列を示す。各色とも表面に620個の共通画像電極からなる共通画像電極群51Y、51M、51C、51Bkと、裏面に8個のシールド兼分割駆動電極(図示せず。)を有する。なお図中、リード線に対応して記入した数字は、620個の画像電極の1番目から620番目それぞれとの対応を示すものである。例えば、記録時の画像電極の電位を180Vとし、非記録時の画像電極の電位を120Vとすると、各共通画像電極間の電位差は最大60Vと低く、隣り合う共通画像電極間にリーク電流が流れることはない。従って、リード線の幅と間隔をそれぞれ例えば30μmと小さくできるので、各色間のピッチd2は18.6mm、全体幅w2は61.8mmと小さくすることができる。このため、この4色分の共通画像電極群は同一のポリイミドフィルム上に、上述の方法で1回のパターン露光で同時に形成することが可能である。そのため、4色分の共通画像電極群間の位置精度は非常に高く、一番離れたイエローの共通画像電極群51Yとブラックの共通画像電極群51Bk間でも15μm以下の位置精度を保つことができる。無論、電極幅内でリード線を引き出せるシールド兼分割駆動電極についても、上述の方法で1回のパターン露光による4色同時形成が可能で、高い位置精度を保つことができる。この結果、非常に位置合わせに優れた高精細のプリントを得ることができる。
【0025】
ここで、各色の顔料を分散し、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに着色した、直径10μmのポリスチレン樹脂球に透明な低抵抗の極性制御材をスプレードライ法で厚さ0.1μmにコートし、さらに平均粒径0.1μmのシリカ(SiO2)微粉を1.5wt%まぶじて4色のトナーを作成した。その抵抗率は4色とも104Ωcmと低抵抗であった。
【0026】
上記のようにして作成した4色のトナーを図1のそれぞれのトナー容器に入れて、普通紙を吸着し400Vの固定電圧が印加された対向電極4を矢印の方向に66mm/secで回動させながら、上記8個のシールド兼分割駆動電極531〜538を順次駆動させ、120Vの固定電圧が印加されている画像電極51に、画像信号に応じて図示しないICドライバーから更に60Vのパルス電圧を加算して、180Vの電圧が0.082msec間印加されるようにしたところ、位置合わせに優れた高精細のフルカラープリントが得られた。この時のプリント速度は毎分12枚で充分高速にプリントできた。また、分割駆動が可能であるためコストの高いICドライバーの使用数を1/8に減少させて大幅なコストダウンが可能となった。
【0027】
上記実施形態では、8分割駆動した場合について述べたが、分割駆動の方式についてはこの限りでない。また、分割駆動しない場合には、上記の8倍、すなわち毎分96枚の速度でのプリントも可能である。
【0028】
上記実施形態では、記録部材として普通紙に直接トナーを付着させた方式についてのみ述べたが、例えば搬送ベルトを中間転写体として、そのうえに4色トナーを重ねた後、一括して普通紙に転写してもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、図2に示したような概略構成を持つトナー容器を用いて説明を行ったが、トナーの搬送、補給方法はこれに限られることなく、他の方式のものを用いても良い。また、磁性トナーを使用し磁力で搬送する方法でも、コストや装置の大きさが問題にならず、しかも弱くて均一な磁力が得られるならば用いることができる。
【0030】
また、上記実施形態では、トナーを鉛直方向下から上へトナーを飛翔させる方式について示したが、上から下へあるいは横方向で飛翔させても同様に実施できる。
【0031】
また、上記実施形態では、シールド電極を設けた構成について述べたが、電極の形状や配置、電圧の大きさによってはシールド電極がなくても実施可能であり、さらには本発明の主旨の範囲で他の構成の電極配置を取ることも可能である。
【0032】
また、上記実施形態では、導電性トナー91として正又は負のみに帯電する整流性トナーを用いることもできる。例えば、正のみに帯電する整流性トナーとしては、例えば、スチレンとアクリル系モノマーと下式で表される陽イオン性ポリマーの強重合体を母体樹脂とし、その中に色材を分散し、通常の粉砕法で形成した後、その表面にシリカをまぶしたものを用いることができる
【化1】
上記方法で形成した整流性トナーは上記プリンタで用いる電圧の範囲内では正のみに帯電し、負には帯電しないので、該トナーを用いる場合には、各電極に上記実施形態で述べた電圧と逆極性の電圧を印加する。整流性トナーを用いれば、記録紙10の抵抗が低い場合でも、記録紙10に付着した整流性トナーに所望の極性と逆極性の電荷が注入されず、所望の極性と逆極性に帯電して逆飛翔することがない。このため、例えば高温高湿環境下でも充分な画像濃度が得られる。また、トナーを積層した場合にも、静電誘導により2層目以降のトナーが所望の極性と逆極性に帯電して逆飛翔することもないので、異色トナーを積層して良好なフルカラープリントを得ることもできる。また、トナーが一方向にしか飛翔しないような電界を与えれば、トナーが所望の極性と逆極性に帯電して逆飛翔することがないので、記録部材に向かって飛翔するトナーと逆飛翔するトナーが弾性衝突を起こして記録部材上の目的の画像の周りに散らばってトナーが付着することがない。よって、画像と非画像の境界が明確なシャープな画像を得ることができる。
【0033】
【発明の効果】
請求項1及び2の発明によれば、非画像形成時にも、上記トナー担持体から離脱したトナーを飛翔させる静電力を生じ、かつ、トナー担持体上から新たなトナーを飛翔させないような電界を形成させ続けるので、画像形成のための制御電極の電圧を印加してトナー担持体から離脱したトナーがトナー担持体から離脱した時点で制御電極を非画像形成時の電圧状態に切り換えても、トナーが浮遊して機内を汚染したり、制御電極に付着してクリーニングが必要になったりすることがなく、高速化が可能であるという優れた効果がある。また、分割駆動が可能となるので、コストダウンも実現できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るカラープリンタの概略構成を示す正面図。
【図2】図1のカラープリンタのX−X’線矢印方向の断面図。
【図3】同プリンタの1色の記録部の説明図。
【図4】トナー層表面の電界分布の説明図。
【図5】(a)は、図3の、120Vが印加されている画像電極51に更に60V加えて180Vにした瞬間のトナーの飛翔のシミュレーション結果の説明図。
(b)は、(a)の0.2msec後のトナーの飛翔のシミュレーション結果の説明図。
(c)は、(a)の0.4msec後のトナーの飛翔のシミュレーション結果の説明図。
(d)は、(a)の0.6msec後のトナーの飛翔のシミュレーション結果の説明図。
【図6】図1のプリンタの1色の制御電極列の平面図。
【図7】同プリンタの4色の制御電極列の平面図。
【符号の説明】
1 給紙カセット
10 記録紙
2 呼び出しローラ
3 搬送ローラ対
4 対向電極
5 制御電極
51 画像電極
52 ポリイミドフィルム
53 シールド電極
531〜538 シールド電極
54 孔
6 トナー容器
6a トナー担持体
7 熱ローラ
8 加圧ローラ
91 導電性トナー
Claims (2)
- 導電性のトナーを担持するトナー担持体と対向電極との間に配設された、互いに独立あるいは一連の複数の微小開口部と各微小開口部のトナー通過を制御する複数の制御電極部とを備えたトナー飛翔制御部材の該制御電極部に、画像信号に応じて電圧を印加し、上記トナー担持体上からのトナーを上記微小開口部に通して上記対向電極側に移行させ、上記トナー飛翔制御部材と上記対向電極との間に位置する記録部材上に付着させることで画像を形成する画像記録方法において、
上記制御電極に画像を形成するための電圧を印加しない場合にも、上記トナー担持体から離脱したトナーを上記記録部材に向けて飛翔させる静電力を生じ、かつ、トナー担持体上から新たなトナーを飛翔させないような電界を形成する電圧を上記制御電極に印加し続けることを特徴とする画像記録方法。 - 導電性のトナーを担持するトナー担持体と対向電極との間に配設された、互いに独立あるいは一連の複数の微小開口部と各微小開口部のトナー通過を制御する複数の制御電極部とを備えたトナー飛翔制御部材の該制御電極部に、画像信号に応じて電圧を印加し、上記トナー担持体上からのトナーを上記微小開口部に通して上記対向電極側に移行させ、上記トナー飛翔制御部材と上記対向電極との間に位置する記録部材上に付着させることで画像を形成する画像記録装置において、
上記制御電極に画像を形成するための電圧を印加しない場合にも、上記トナー担持体から離脱したトナーを上記記録部材に向けて飛翔させる静電力を生じ、かつ、トナー担持体上から新たなトナーを飛翔させないような電界を形成する電圧を上記制御電極に印加し続けることを特徴とする画像記録装置。
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