JP3622533B2 - 車間制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自車を先行車に追従させて走行させるための車間制御装置に関し、特に所定の車間警報条件の成立時に車両運転者に対する警報処理も実行可能な装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両の走行安全性を向上させると共に、運転者の操作負担を軽減するための技術として、自車を先行車に自動的に追従させる車間制御装置が知られている。その追従のさせ方は、自車と先行車との実車間距離と予め設定された目標車間距離との差である車間偏差がなくなるように制御する手法である。具体的には、この車間偏差と相対速度(先行車速度に対する自車速度)とに基づいて目標加速度を算出し、自車の加速度がその目標加速度となるように、加速装置や減速装置を制御するのである。
【0003】
なお、車間距離そのものではなく、例えば車間距離を自車の車速で除算した値(以下「車間時間」と称す)を用いても同様に実現できる。また、実際には、レーザ光あるいは送信波などを先行車に対して照射し、その反射光あるいは反射波の受けるまでの時間を検出して車間距離を算出しているため、その検出された時間そのものを用い、実時間と目標時間にて同様の制御を実行してもよい。このように車間距離に相当する物理量であれば実現可能なため、これらを含めて「車間物理量」と記すこととする。但し、以下の解決課題の説明などにおいては、車間距離そのものを用いた場合を例にとることとする。
【0004】
そして、この種の装置においては、例えば実開平5−63957号公報に開示されているように、ワイパが作動するなどの所定の解除条件が成立した場合には車間制御を解除し、その旨を、ブザーを鳴動したり警告灯を点灯して運転者に報知するようにする技術が採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した公知文献記載のものでは、次のような不都合が生じることとなる。
▲1▼車間制御が解除されたことを運転者が認識している状況であっても、制御解除の度に報知されるため、煩わしい。
【0006】
▲2▼車間制御が解除された時点で所定時間報知がなされたとしても、その後も制御解除状態であるという認識を持続することができずに、車間制御が継続していると勘違いしてしまう可能性もある。
そこで、本発明は、車間制御が解除されている状態をユーザに報知する警報機能に関して、余分な警報がされず警報の実効性を向上させた車間制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車間制御装置は、車間制御手段による車間制御を開始可能状態にするための準備スイッチ及びその車間制御を実行させるための開始スイッチとを備えており、準備スイッチがオンされている状態で開始スイッチがオンされると、車間制御手段が車間制御を実行する。その車間制御は、実車間物理量と目標車間物理量との差である車間偏差、及び相対速度に基づき、加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させるというものである。なお、実車間物理量としては、例えばレーザ光あるいは送信波などを先行車に対して照射し、その反射光あるいは反射波の受けるまでの時間を検出する構成を採用した場合には、その検出した時間そのものを用いてもよいし、車間距離に換算した値を用いてもよいし、さらには、車速にて除算した車間時間を用いてもよい。
【0008】
また、車間警報手段は、所定の車間警報条件が成立した場合に車両運転者に対する警報処理を実行することができる。所定の車間警報条件とは、例えば実車間物理量が所定の警報判定値よりも小さいといった条件などである。
そして、本発明の車間制御装置によれば、車間制御手段による車間制御の実行中に所定の解除条件が成立した場合、制御解除手段が車間制御の実行を解除させるのであるが、このように車間制御が解除された状態であっても、準備スイッチがオン状態である場合には、警報許可手段が車間警報手段による警報処理の実行を許可する。より詳しくは、制御解除手段によって車間制御の実行が解除された状態であり、且つ準備スイッチがオン状態である場合に限って、車間警報手段による警報処理の実行を許可する。
【0009】
これにより、運転者が車間制御が解除されていることに気づかなくても、準備スイッチをオフにしない限り、所定の車間警報条件が成立すれば警報処理が実行されることとなる。そのため、例えば車間制御が解除されていることにより運転者の意図に反して自車が先行車に異常接近し、運転者が慌ててブレーキ操作をしなくてはならないといった状況を未然に回避することができる。
そして本発明では、警報処理の実行時期を、車間制御の解除中のみに限定することによって、頻繁な警報報知による煩わしさから一層解放される。すなわち、車間制御が実行されているときには、警報報知せずとも先行車に接近すれば減速手段が作動し、この作動によって運転者は前方に注意すべきであると判断できる。従って、減速手段が作動しない車間制御解除中のみに警報処理を実行することは、最低限必要なことであると共に、最も煩わしさを感じない方法であるとも言える。
【0010】
また、上述した従来技術における問題点に対する本発明の直接的な効果を整理すると次のようになる。
本発明の場合には、車間制御が解除された時点で直ちに警報処理を行うのではなく、その後、所定の車間警報条件が成立した時点で警報処理を行うため、余分な警報がなされない点で有利である。すなわち、車間制御が解除されているにもかかわらず自車の挙動が所定の車間警報条件の成立するような状況になったということから、運転者は車間制御が解除された状態であることを認識していないと推認できるため、そのような状況になって初めて警報処理を実行するようにしている。したがって、車間制御が解除されたことを運転者が認識しており、自車の挙動が所定の車間警報条件の成立するような状況にならないように運転している限り、警報処理はなされない。そのため、制御解除の度に報知されることの煩わしさから解放される。
【0011】
また、本発明の場合には、車間制御の解除後、所定の車間警報条件が成立した時点で警報処理を行うため、真に警報が必要な状況でのみ警報処理がなされる点で有利である。すなわち、従来技術の場合には、車間制御が解除された時点で所定時間報知がなされたとしても、その後も制御解除状態であるという認識を持続することができずに、車間制御が継続していると勘違いしてしまう可能性もあったが。本発明の場合にはそのような勘違いは生じない。つまり、従来技術における「車間制御が解除されたことの警告」は、本発明でいうところの車間警報とは意味が異なり、単に車間制御が解除されたため、その後は運転者自身で車両の運転をすべきことを警告しているに過ぎない。そのため、車間制御の解除後に実際に車間警報が必要な状況が生じるか否かについては考慮しておらず、一律に警告するものである。それに対して、本発明の車間制御解除時の車間警報においては、車間制御が解除されたことは単に前提条件の一つに過ぎず、所定の車間警報条件が成立しない限り警報処理は実行されない。つまり、真に車間警報が必要な状況においてのみ警報処理が実行されることとなる。
【0012】
このように、本発明の車間制御装置によれば、車間制御が解除されている状態をユーザに報知する警報機能に関して、余分な警報がされず、また警報の実効性を向上させることができるのである。
なお、車間制御を解除させる解除条件としては種々考えられるが、例えば運転者によるブレーキ操作がされて「運転者による減速意志が推認される場合」や、ワイパが作動するなどして「雨天時であることが推認される場合」、あるいは、路面状態の検出結果から「いわゆる低μ路であることが推認される場合」などが挙げられる。つまり、運転者の何らかの操作の結果による場合もあれば、そうでない場合もある。したがって、車間制御が解除されていることを認識し辛い状況は様々考えられるため、本発明が非常に有効である。
【0013】
また、請求項2に記載の車間制御装置は、車間制御手段による車間制御を開始可能状態にするための準備スイッチ及びその車間制御を実行させるための開始スイッチとを備えており、準備スイッチがオンされている状態で開始スイッチがオンされると、車間制御手段が車間制御を実行する。その車間制御は、実車間物理量と目標車間物理量との差である車間偏差、及び相対速度に基づき、加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させるというものである。また、第1の車間警報手段は、実車間物理量が所定の警報判定値よりも小さくなった場合にのみ車両運転者に対する警報処理を実行する。
【0014】
そして、本発明の車間制御装置によれば、車間制御手段による車間制御の実行中に所定の解除条件が成立した場合、制御解除手段が車間制御の実行を解除させるのであるが、このように車間制御が解除された状態であっても、準備スイッチがオン状態であれば、第2の車間警報手段が次のような警報処理を実行する。
【0015】
つまり、実車間物理量が所定の警報判定値よりも小さくなった場合、実車間物理量が所定の警報判定値以上且つ車間偏差及び相対速度が所定の加速要求領域内である場合の両方で車両運転者に対する警報処理を実行するのである。
【0016】
れは、車間制御が実行されている場合には、運転者が操作しなくても減速手段が自動的に作動可能な状況であるのに対し、車間制御が解除されている場合には、減速手段は運転者の操作によってのみ作動する状況であることを鑑みたものである。
【0017】
車間制御の解除中において、実車間物理量が所定の警報判定値よりも大きくなった場合にも警報処理を実行するのは、次の理由からである。つまり、車間制御が解除されている場合に運転者がアクセルペダルを踏まないと当然ながら自車が先行車から離されていくが、車間制御が継続して実行されていると勘違いしている運転者は自車が加速しないことに違和感を持ち、車間制御システム自体に対する不信感にもつながる。そのため、そのような加速しない自車の挙動は車間制御が解除されていることに起因するものであることを警報処理によって運転者に報知するのである。
【0018】
また、車間制御の実行中と解除中とで、異なる条件で警報処理を実行することの別の実現例としては、例えば請求項3に示すように、実車間物理量が所定の警報判定値よりも小さいために警報処理を実行する場合の警報判定値に関して、第1の車間警報手段による車間制御の実行中の場合よりも第2の車間警報手段による解除中の場合の方を大きく設定することが考えられる。
【0019】
つまり、車間制御が解除中の場合には、減速手段が自動的に作動し得ないことによるオフセット分だけ加算するのである。車間制御中においては、減速手段を作動させることを前提として、それだけでは対処し切れないような状況で警報処理を行うことが一般的であるため、当然ながら、減速手段が自動的には作動しない「車間制御の解除中」においては、その分だけ大きく警報判定値を設定(車間距離で判定する場合にはその分だけ警報距離を長く設定)することとなる。
【0020】
また、請求項4に示すように、第1の車間警報手段及び第2の車間警報手段は、警報音を出力することによって前記警報処理を実行するものである場合には、第1の車間警報手段による車間制御の実行中の場合と第2の車間警報手段による車間制御の解除中の場合とで、警報音を区別可能に出力することが考えられる。「警報音を区別可能に出力する」ための手法としては、例えば音色、音圧あるいは音の種類を変えることなどが考えられる。このようにすれば、車間制御が実行中の警報処理であるのか、車間制御が解除中の警報処理であるのかが容易に判断でき、運転者に、車間制御が解除中であることの認識を促す点で好ましい。
【0021】
なお、このような車間制御装置の車間制御手段及び警報許可手段をコンピュータシステムにて実現する機能は、例えば、コンピュータシステム側で起動するプログラムとして備えることができる。このようなプログラムの場合、例えば、フロッピーディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータシステムにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として前記プログラムを記録しておき、このROMあるいはバックアップRAMをコンピュータシステムに組み込んで用いても良い。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、上述した発明が適用された車間制御用電子制御装置2(以下、「車間制御ECU」と称す。)およびブレーキ電子制御装置4(以下、「ブレーキECU」と称す。)を中心に示す自動車に搭載されている各種制御回路の概略構成を表すブロック図である。
【0023】
車間制御ECU2は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、現車速(Vn)信号、操舵角(str−eng ,S0)信号、ヨーレート信号、目標車間時間信号、ワイパスイッチ情報、アイドル制御やブレーキ制御の制御状態信号等をエンジン電子制御装置6(以下、「エンジンECU」と称す。)から受信する。そして、車間制御ECU2は、この受信したデータに基づいて、カーブ曲率半径Rを推定したり、車間制御演算をしている。
【0024】
レーザレーダセンサ3は、レーザによるスキャニング測距器とマイクロコンピュータとを中心として構成されている電子回路であり、スキャニング測距器にて検出した先行車の角度や相対速度等、および車間制御ECU2から受信する現車速(Vn)信号、カーブ曲率半径R等に基づいて、車間制御装置の一部の機能として先行車の自車線確率を演算し、相対速度等の情報も含めた先行車情報として車間制御ECU2に送信する。また、レーザレーダセンサ3自身のダイアグノーシス信号も車間制御ECU2に送信する。
【0025】
なお、前記スキャニング測距器は、車幅方向の所定角度範囲に送信波あるいはレーザ光をスキャン照射し、物体からの反射波あるいは反射光に基づいて、自車と前方物体との距離をスキャン角度に対応して検出可能な測距手段として機能している。
【0026】
さらに、車間制御ECU2は、このようにレーザレーダセンサ3から受信した先行車情報に含まれる自車線確率等に基づいて、車間距離制御すべき先行車を決定し、先行車との車間距離を適切に調節するための制御指令値として、エンジンECU6に、目標加速度信号、フューエルカット要求信号、ODカット要求信号、3速シフトダウン要求信号、ブレーキ要求信号を送信している。また警報発生の判定をして警報吹鳴要求信号を送信したり、あるいは警報吹鳴解除要求信号を送信したりする。さらに、ダイアグノーシス信号、表示データ信号等を送信している。なお、この車間制御ECU2は、車間制御手段、制御解除手段及び警報許可手段に相当する。
【0027】
ブレーキECU4は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、車両の操舵角を検出する操舵角検出手段としてのステアリングセンサ8、車両旋回検出手段としてヨーレートを検出するヨーレートセンサ10、および各車輪の速度を検出する車輪速センサ12から操舵角やヨーレートを求めて、これらのデータをエンジンECU6を介して車間制御ECU2に送信したり、ブレーキ力を制御するためにブレーキ油圧回路に備えられた増圧制御弁・減圧制御弁の開閉をデューティ制御するブレーキアクチュエータ25を制御している。またブレーキECU4は、エンジンECU6を介する車間制御ECU2からの警報要求信号に応じて警報ブザー14を鳴動する。したがって、ブレーキECU4及び警報ブザー14は車間警報手段に相当する。
【0028】
エンジンECU6は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、スロットル開度センサ15、車両速度を検出する車速検出手段としての車速センサ16、ブレーキの踏み込み有無を検出するブレーキスイッチ18、「開始スイッチ」に相当するクルーズコントロールスイッチ20、「準備スイッチ」に相当するクルーズメインスイッチ22、およびその他のセンサやスイッチ類からの検出信号あるいはボデーLAN28を介して受信するワイパースイッチ情報やテールスイッチ情報を受信し、さらに、ブレーキECU4からの操舵角(str−eng,S0 )信号やヨーレート信号、あるいは車間制御ECU2からの目標加速度信号、フューエルカット要求信号、ODカット要求信号、3速シフトダウン要求信号、警報要求信号、ダイアグノーシス信号、表示データ信号等を受信している。
【0029】
そして、エンジンECU6は、この受信した信号から判断する運転状態に応じて、駆動手段としての内燃機関(ここでは、ガソリンエンジン)のスロットル開度を調整するスロットルアクチュエータ24、トランスミッション26のアクチュエータ駆動段に対して駆動命令を出力している。これらのアクチュエータにより、内燃機関の出力、ブレーキ力あるいは変速シフトを制御することが可能となっている。なお、本実施形態の場合のトランスミッション26は5速オートマチックトランスミッションであり、4速の減速比が「1」に設定され、5速の減速比が4速よりも小さな値(例えば、0.7)に設定された、いわゆる、4速+オーバードライブ(OD)構成になっている。したがって、上述したODカット要求信号が出された場合、トランスミッション26が5速(すなわち、オーバードライブのシフト位置)にシフトしていた場合には4速へシフトダウンする。また、シフトダウン要求信号が出された場合には、トランスミッション26が4速にシフトしていた場合には3速へシフトダウンする。その結果、これらのシフトダウンによって大きなエンジンブレーキが生じ、そのエンジンブレーキにより自車の減速が行われることとなる。
【0030】
また、エンジンECU6は、必要な表示情報を、ボデーLAN28を介して、ダッシュボードに備えられているLCD等の表示装置(図示していない。)に送信して表示させたり、あるいは現車速(Vn)信号、操舵角(str−eng,S0 )信号、ヨーレート信号、目標車間時間信号、ワイパスイッチ情報信号、アイドル制御やブレーキ制御の制御状態信号を、車間制御ECU2に送信している。
【0031】
次に、図2〜図11を参照して、車間制御ECU2にて実行される処理について説明する。
図2は、メイン処理を示すフローチャートである。
まず、最初のステップS10においてはクルーズメインスイッチ22が現在ON状態であるかどうかを判断し、ON状態でなければ(S10:NO)、そのまま本メイン処理を終了する。一方、クルーズメインスイッチ22がON状態であれば(S10:YES)、続いてクルーズコントロールスイッチ20がON操作されかどうかを判断する(S20)。そして、クルーズコントロールスイッチ20がON操作されると(S20:YES)、車間制御に係る処理を実行する(S30)。このS30での車間制御の詳細については後述する。
【0032】
S30での車間制御に続いてS40では、車間警報Aの処理を実行する。この車間警報Aは車間制御が実行されている状況で行われる処理であり、ブレーキスイッチ18がONされない間は(S50:NO)、S30での車間制御及びS40での車間警報Aを実行する。なお、このS40での車間警報Aの詳細については後述する。
【0033】
ブレーキスイッチ18がONされると(S50:YES)、S60へ移行して車間制御を解除し、続くS70にてクルーズメインスイッチ22が現在ON状態であるかどうかを判断する。ここでクルーズメインスイッチ22がON状態であれば(S70:YES)、車間警報Bの処理を実行する(S80)。この車間警報Bは車間制御が実行されていない状況にて行われる処理である。このS80での車間警報Bの詳細についても後述する。一方、クルーズメインスイッチ22がON状態でなければ(S70:NO)、S90へ移行して車間警報を解除してから、本メイン処理を終了する。
【0034】
以上は処理全体についての説明であったので、続いて、S30での車間制御、S40での車間警報A及びS80での車間警報Bに係る処理の詳細について順番に説明する。
まず、図2に示すS30での車間制御処理について図3〜9を参照して説明する。車間制御処理は、図3に示すように、目標加速度算出(S200)、加速度偏差の算出(S210)、スロットル制御(S220)、シフトダウン制御(S230)及びブレーキ制御(S240)を順次実行する。
【0035】
S200での目標加速度算出は、図4に示すように、まずS201において先行車を認識中であるかどうかを判断する。先行車を認識中でなければ(S201:NO)、先行車を未確認の場合の値を目標加速度として(S205)、本サブルーチンを終了する。
【0036】
一方、先行車を認識中であれば(S201:YES)、S202へ移行して車間偏差を演算する。この車間偏差は、現在車間から目標車間を減算した値である。さらに、続くS203にて相対速度を演算する。
そして、このように車間偏差と相対速度が得られたら、S204において、それら両パラメータに基づき、図5に示す制御マップを参照して目標加速度を得る。その後、本サブルーチンを終了する。
【0037】
図3のS210に示す加速度偏差の算出は、図4のS204にて求められた目標加速度から実加速度を減算して行う。
そして、図3のS220でのスロットル制御は、図6に示すように、S210にて算出された加速度偏差にスロットル制御ゲインK11を乗算した値を、前回スロットル開度指示値に加算して、今回のスロットル開度指示値とする(S221)。
【0038】
また、図3のS230でのシフトダウン制御は、図7に示すように、まずS231において加速度偏差が参照値Aref21よりも小さいかどうか判断する。そして、加速度偏差<Aref21であれば(S231:YES)、シフトダウンの作動を指示し(S232)、さらにアクセルオフの作動指示をしてから(S233)、本サブルーチンを終了する。
【0039】
一方、加速度偏差≧Aref21であれば(S231:NO)、S234へ移行し、加速度偏差が参照値Aref22よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref22であれば(S234:YES)、シフトダウンの作動解除を指示して(S235)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref22であれば(S234:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0040】
また、図3のS240でのブレーキ制御は、図8に示すように、まずS241において加速度偏差が参照値Aref31よりも小さいかどうか判断する。そして、加速度偏差<Aref31であれば(S241:YES)、ブレーキの作動を指示し(S242)、さらにアクセルオフの作動指示をしてから(S243)、S246へ移行する。
【0041】
一方、加速度偏差≧Aref31であれば(S241:NO)、S244へ移行し、今度は加速度偏差が参照値Aref32よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref32であれば(S244:YES)、ブレーキの作動解除を指示してから(S245)、S246へ移行するが、加速度偏差≦Aref32であれば(SS244:NO)、そのままS246へ移行する。
【0042】
S246では、ブレーキ作動指示中であるかどうかを判断する。そして、ブレーキ作動指示中であれば(S246:YES)、S247へ移行して、加速度偏差にブレーキ制御ゲインK21を乗算した値を、前回ブレーキ圧指示値に加算して、今回のブレーキ圧指示値とする。一方、ブレーキ作動指示中でなければ(S246:NO)、S248へ移行し、ブレーキ圧指示値を0とする。
【0043】
S247あるいはS248の処理後は、本サブルーチンを終了する。
なお、ブレーキ圧指示値には上限値があり、その最大値によってブレーキ装置を駆動した場合に生じる最大減速度は、ブレーキ装置を車両運転者が制動操作して生じる最大減速度よりも小さく設定されている。これは、システムによって自動的に減速制御をする場合には、いわゆる急ブレーキ状態とならないように考慮したためである。したがって、ドライバがいわゆる急ブレーキ操作をすれば、当然ながらシステムによる自動的に減速制御する場合よりも大きな減速度を付与することができる。
【0044】
次に、図2に示すS40での車間警報Aサブルーチンについて図9のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS300では、警報距離Aを以下の算出式に示すように、車速や相対速度などに応じて算出する。
【0045】
警報距離A=f(車速,相対速度,……)
次に、この警報距離Aよりも車間距離が短い状態が、6演算周期継続して生じているかどうかを判断する(S310)。そして、警報距離Aよりも車間距離が短い状態が6演算周期継続して生じている場合には(S310:YES)、警報吹鳴要求を指示する(320)。この警報吹鳴要求信号は、エンジンECU6からブレーキECU4に対して指示され、ブレーキECU4は、この警報吹鳴要求信号に応じて警報ブザー14を鳴動する。
【0046】
一方、車間距離が警報距離A以上の場合、あるいは車間距離が警報距離Aよりも短い状態が生じても、それが6演算周期継続して生じていない場合には(S310:NO)、警報吹鳴を開始した後1秒経過したかどうかを判断する(S330)。警報吹鳴の開始後1秒経過していなければ(S330:NO)、警報吹鳴要求を継続する(S350)。これは、警報吹鳴処理を実行した場合、少なくとも1秒間はその状態を続けるためである。警報吹鳴の開始後1秒経過していれば(S330:YES)、警報吹鳴の解除要求をする(S340)。この警報吹鳴解除要求信号は、エンジンECU6からブレーキECU4に対して指示され、ブレーキECU4は、この警報吹鳴解除要求信号に応じて、それまで鳴動していた警報ブザー14を停止する。
【0047】
次に、図2に示すS80での車間警報Bサブルーチンについて図10のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS400では、警報距離Bを以下の算出式に示すように、車速や相対速度などに応じて算出する。
【0048】
警報距離B=f(車速,相対速度,……)+オフセット値
なお、この警報距離Bは、上述したS300での警報距離Aに対して所定のオフセット分を加算したものである。これは、車間警報Aは車間制御が実行されている状況で行われる警報であるため、減速手段が自動的に作動可能な状況であるのに対し、この車間警報Bは車間制御が解除されている状況で行われる警報であるため、減速手段は運転者の操作のみで作動する状況であることを鑑みたものである。つまり、車間制御が解除中の場合には、減速手段が自動的に作動し得ないことによるオフセット分だけ加算するのである。
【0049】
次に、この警報距離Bよりも車間距離が短い状態が、6演算周期継続して生じているかどうかを判断する(S410)。そして、警報距離Bよりも車間距離が短い状態が6演算周期継続して生じている場合には(S410:YES)、警報吹鳴要求を指示する(420)。これにより警報ブザー14が鳴動する。なお、このS410,S420の処理内容は、上述した車間警報Aの場合の図9のS310,320と同じである。
【0050】
一方、車間距離が警報距離B以上の場合、あるいは車間距離が警報距離Bよりも短い状態が生じても、それが6演算周期継続して生じていない場合には(S310:NO)、現在の車間偏差と相対速度が所定の加速要求領域内に存在するかどうかを判断する。この加速要求領域は、図11に例示するように、車間偏差と相対速度の関係から決まる所定領域である。
【0051】
ここで図11の加速要求領域について説明する。この領域は、運転者が「加速したい」という要求を明確に持つと考えられる領域を想定してある。概略的には、車間偏差が小さいほど(つまり自車と先行車との距離が近いほど)大きな相対速度でないと加速要求領域内に入らないように設定されている。また、自車が先行車に追従して走行する場合には車間偏差が0(m)で相対速度が0(km/h)となるが、図11に示す関係では、車間偏差が0(m)の場合には相対速度が所定の正の値となって初めてこの加速要求領域に入ることとなる。つまり、車間が近づきすぎた場合、あるいは近づきすぎる状態が近い将来発生すると予測される場合には、そのままでは先行車と衝突する危険性があるため、ブレーキ操作などを促す意味で警報を行う。それに対してこの加速要求領域は、それとは逆に、先行車から離れ過ぎた場合、あるいは離れすぎる状態が近い将来発生すると予測される場合に警報するため設定したものである。そのため、上述したように、運転者が「加速したい」という要求を明確に持つと考えられる領域を想定した。
【0052】
そして、加速要求領域に入っていれば(S430:YES)、警報吹鳴要求を指示する(440)。つまり、車間距離が警報距離B以上の場合、あるいは車間距離が警報距離Bよりも短い状態が6演算周期継続して生じていない場合であっても、加速要求領域に入っていれば警報ブザー14が鳴動することとなる。
【0053】
一方、加速要求領域に入っていなければ(S430:NO)、S450〜S470において、上述した車間警報Aの場合の図3のS330〜S350と同じ処理を行う。つまり、警報吹鳴の開始後1秒経過していなければ(S450:NO)、警報吹鳴要求を継続し(S470)、警報吹鳴の開始後1秒経過していれば(S450:YES)、警報吹鳴の解除要求をする(S460)。
【0054】
このように、本実施形態のシステムによれば、車間制御を開始可能状態にするための準備スイッチであるクルーズメインスイッチ22及びその車間制御を実行させるための開始スイッチであるクルーズコントロールスイッチ20とを備えており、図2に示すように、クルーズメインスイッチ22がONされている状態で(S10:YES)、クルーズコントロールスイッチ20がONされると(S20:YES)、車間制御を実行する(S30)。そして、ブレーキスイッチ18がONされると(S50:YES)、所定の解除条件が成立したこととなり、車間制御が解除される(S60)。しかし、このように車間制御が解除(S60)された状態であっても、クルーズメインスイッチ22がON状態である場合には(S70:YES)、車間警報Bを実行する(S80)。
【0055】
これにより、運転者が車間制御が解除されていることに気づかなくても、クルーズメインスイッチ22をOFFにしない限り、所定の車間警報条件が成立すれば(図10のS410でYES、又はS430でYES)、警報処理が実行されることとなる(S420,S440)。そのため、例えば車間制御が解除されていることにより運転者の意図に反して自車が先行車に異常接近し、運転者が慌ててブレーキ操作をしなくてはならないといった状況を未然に回避することができる。
【0056】
また、本実施形態のシステムの場合には、車間制御が解除された時点(図2のS50でYES)で直ちに警報処理を行うのではなく、その後、所定の車間警報条件が成立した時点(図10のS410でYES、又はS430でYES)で警報処理を行うため、余分な警報がなされない。すなわち、車間制御が解除されているにもかかわらず、自車の挙動が所定の車間警報条件の成立するような状況になったということから、運転者が車間制御の解除状態を認識していないことが推認されるため、そのような状況になって初めて警報処理を実行する。したがって、車間制御が解除されたことを運転者が認識しており、自車の挙動が所定の車間警報条件の成立するような状況にならないように運転している限り、警報処理はなされないため、制御解除の度に報知されることの煩わしさから解放される。
【0057】
そして、車間制御の解除後、所定の車間警報条件が成立した時点で警報処理を行うため、警報処理がなされた時点では真に警報が必要な状況となっている。従来は、車間制御が解除された時点で所定時間報知がなされたとしても、その後も制御解除状態であるという認識を持続することができずに、車間制御が継続していると勘違いしてしまう可能性もあったが。本システムの場合にはそのような勘違いは生じない。
【0058】
このように、本実施形態のシステムによれば、車間制御が解除されている状態をユーザに報知する警報機能に関して、余分な警報がされず、また警報の実効性を向上させることができるのである。
また、車間制御の実行中に行う車間警報Aと解除中に行う車間警報Bとで、異なる条件で警報処理を実行するようにしている。まず、図9のS310での判断処理に用いる警報距離Aよりも、図10のS410での判断処理に用いる警報距離Bの方が長くなるように設定されている。これは、車間制御が実行されている場合には、運転者が操作しなくても減速手段が自動的に作動可能な状況であるのに対し、車間制御が解除されている場合には、減速手段は運転者の操作によってのみ作動する状況であることを鑑みたものである。そのため、車間制御が解除中の場合の警報距離Bに関しては、減速手段が自動的に作動し得ないことによるオフセット分だけ加算してある。
【0059】
そしてさらに、車間制御の解除中においては、車間距離が警報距離Bよりも小さい場合(図10の410でYES)だけでなく、車間偏差及び相対速度が図11に示す加速要求領域に存在する場合(S430でYES)にも、警報処理を実行するようにしている。これは次の理由からである。つまり、車間制御が解除されている場合に運転者がアクセルペダルを踏まないと当然ながら自車が先行車から離されていくが、車間制御が継続して実行されていると勘違いしている運転者は自車が加速しないことに違和感を持ち、車間制御システム自体に対する不信感にもつながる。そのため、そのような加速しない自車の挙動は車間制御が解除されていることに起因するものであることを、警報処理によって運転者に報知するのである。
【0060】
以上、本発明はこのような実施形態に何等限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得る。(1)上記実施形態においては、ブレーキ操作がされたことを車間制御の解除条件としたが、その他にも、ワイパが作動するなどして「雨天時であることが推認される場合」、あるいは、路面状態の検出結果から「いわゆる低μ路であることが推認される場合」などが挙げられる。
【0061】
(2)また、警報ブザー14を吹鳴させる場合、車間制御の実行中と解除中とで、警報音を区別可能に出力することが考えられる。その手法は、例えば音色、音圧あるいは音の種類を変えることなどが挙げられる。このようにすれば、車間制御が実行中の警報処理であるのか、車間制御が解除中の警報処理であるのかが容易に判断でき、運転者に、車間制御が解除中であることの認識を促す点で好ましい。
【0062】
(3)上記実施形態では「車間距離に相当する車間物理量」として車間距離をそのまま用いていたが、この車間物理量として時間を用い、検出された実時間と目標時間にて同様の制御を実行してもよいし、また他の車間物理量として車間時間(車間距離を自車の車速で除算した値)を用いて、実車間時間と目標車間時間にて同様の制御を実行してもよい。なお、車速によって目標車間距離を可変にする場合であって車速にほぼ比例して目標車間距離を設定する場合は、目標車間距離を調整する代わりに上記目標時間又は目標車間時間を調整するようにしても同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の車間制御装置のシステムブロック図である。
【図2】メイン処理を示すフローチャートである。
【図3】メイン処理中で実行される車間制御のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図4】車間制御中で実行される目標加速度算出のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】目標加速度算出に用いる制御マップの説明図である。
【図6】車間制御中で実行されるスロットル制御のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】車間制御中で実行されるシフトダウン制御のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】車間制御中で実行されるブレーキ制御のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図9】メイン処理中で実行される車間警報Aのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図10】メイン処理中で実行される車間警報Bのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図11】車間警報Bの処理中での判定に用いられる加速要求領域を示す説明図である。
【符号の説明】
2…車間制御用電子制御装置 3…レーザレーダセンサ
4…ブレーキ電子制御装置 6…エンジン電子制御装置
8…ステアリングセンサ 10…ヨーレートセンサ
12…車輪速センサ 14…警報ブザー
15…スロットル開度センサ 16…車速センサ
18…ブレーキスイッチ 20…クルーズコントロールスイッチ
22…クルーズメインスイッチ 24…スロットルアクチュエータ
25…ブレーキアクチュエータ 26…トランスミッション
28…ボデーLAN

Claims (4)

  1. 自車両を加減速させる加速手段及び減速手段と、
    自車と先行車との実車間距離に相当する物理量である実車間物理量と、自車と先行車との目標車間距離に相当する物理量である目標車間物理量との差である車間偏差、及び自車と先行車との相対速度に基づき、前記加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させる車間制御手段と、
    を備える車間制御装置において、
    前記車間制御手段による車間制御を開始可能状態にするための準備スイッチ及びその車間制御を実行させるための開始スイッチと、
    前記車間制御手段による車間制御の実行中に所定の解除条件が成立した場合、当該車間制御の実行を解除させる制御解除手段と、
    所定の車間警報条件が成立した場合に、車両運転者に対する警報処理を実行可能な車間警報手段と、
    前記制御解除手段によって前記車間制御の実行が解除された状態であり、且つ前記準備スイッチがオン状態である場合に限って、前記車間警報手段による警報処理の実行を許可する警報許可手段と、
    を備えることを特徴とする車間制御装置。
  2. 自車両を加減速させる加速手段及び減速手段と、
    自車と先行車との実車間距離に相当する物理量である実車間物理量と、自車と先行車との目標車間距離に相当する物理量である目標車間物理量との差である車間偏差、及び自車と先行車との相対速度に基づき、前記加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させる車間制御手段と、
    を備える車間制御装置において、
    前記車間制御手段による車間制御を開始可能状態にするための準備スイッチ及びその車間制御を実行させるための開始スイッチと、
    前記車間制御手段による車間制御の実行中に所定の解除条件が成立した場合、当該車間制御の実行を解除させる制御解除手段と、
    前記車間制御の実行中、前記実車間物理量が所定の警報判定値よりも小さくなった場合にのみ車両運転者に対する警報処理を実行する第1の車間警報手段と
    前記車間制御の解除中且つ前記準備スイッチがオン状態であれば、前記実車間物理量が所定の警報判定値よりも小さくなった場合、前記実車間物理量が所定の警報判定値以上且つ前記車間偏差及び相対速度が所定の加速要求領域内である場合の両方で車両運転者に対する警報処理を実行する第2の車間警報手段と、
    備えることを特徴とする車間制御装置。
  3. 請求項2記載の車間制御装置において、
    前記実車間物理量が所定の警報判定値よりも小さいために警報処理を実行する場合の前記警報判定値は、前記第1の車間警報手段による車間制御の実行中の場合よりも前記第2の車間警報手段による解除中の場合の方が大きく設定されていること、
    を特徴とする車間制御装置。
  4. 請求項2又は3記載の車間制御装置において、
    前記第1の車間警報手段及び前記第2の車間警報手段は、警報音を出力することによって前記警報処理を実行するものであり、前記第1の車間警報手段による車間制御の実行中の場合と前記第2の車間警報手段による前記車間制御の解除中の場合とで、前記警報音を区別可能に出力すること、
    を特徴とする車間制御装置。
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