JP3661492B2 - 車間制御装置及び記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自車を先行車に追従させて走行させるための車間制御装置などに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の走行安全性を向上させると共に、運転者の操作負担を軽減するための技術として、自車を先行車に自動的に追従させる車間制御装置が知られている。その追従のさせ方は、自車と先行車との実車間距離と予め設定された目標車間距離との差である車間偏差がなくなるように制御する手法である。具体的には、この車間偏差と相対速度(先行車速度に対する自車速度)とに基づいて目標加速度を算出し、自車の加速度がその目標加速度となるように、加速装置や減速装置を制御するのである。
【0003】
なお、車間距離そのものではなく、例えば車間距離を自車の車速で除算した値(以下「車間時間」と称す)を用いても同様に実現できる。また、実際には、レーザ光あるいは送信波などを先行車に対して照射し、その反射光あるいは反射波の受けるまでの時間を検出して車間距離を算出しているため、その検出された時間そのものを用い、実時間と目標時間にて同様の制御を実行してもよい。このように車間距離に相当する物理量であれば実現可能なため、これらを含めて「車間物理量」と記すこととする。また、上述した目標加速度も、「車間制御量」の一具体例であり、それ以外にも加速度偏差(目標加速度−実加速度)や、目標トルク、あるいは目標相対速度としてもよい。但し、以下の説明中、理解を容易にする目的で、必要に応じて「車間物理量」の例として車間距離、「車間制御量」の一例として目標加速度を用いる場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、目標車間距離が固定されていることにより、状況によっては以下に示すように運転フィーリングが悪化することが考えられる。
例えば、車間制御中に、先行車が一時的に減速した後で加速した状況を考える。この場合、先行車が一時的に減速することで自車と先行車との実車間距離が目標車間距離より短くなると、目標車間距離に合わせようとして自車は減速する。その後、先行車が加速して自車から遠ざかろうとしている場合であっても、実車間距離が目標車間距離よりも短いと、車間制御としてはやはり減速を継続してしまう。このため、実車間距離が目標車間距離付近となって初めて自車も加速して先行車に追従することとなる。先行車は既にその前から加速しているにもかかわらず自車は減速したままであり、なかなか加速制御に移行しないため、先行車から一時的に取り残されたり、あるいは後続車に対しても減速を余儀なくさせる可能性がある。
【0005】
つまり、このような状況においては、ドライバは速やかに加速制御に移行して適切な追従状態に移行して欲しいと考えているにもかかわらず、通常の車間制御では、交通の流れに乗ることができず運転フィーリングの悪化を招来させてしまう可能性がある。
【0006】
また、例えば高速道路において自車が走行車線を走行しており、自車よりも高速で走行している車両が追い越し車線から自車線に車線変更してきた場合(割り込まれ)を想定する。車線変更してきた車両は自車にとって新たな先行車となるが、車線変更直後の車間距離が目標車間距離より短いと、やはり目標車間距離に合わせようとして自車は一旦減速してしまい、車間距離を開けてから加速して追従することとなる。しかしながら、先行車は自車よりも高速走行しているため、車線変更直後から自車より離れていく状況であり、自車が一旦減速することによって、先行車から一時的に取り残されたり、後続車に減速を余儀なくさせる可能性がある。
【0007】
つまり、このような状況においても、ドライバは速やかに加速制御に移行して適切な追従状態に移行して欲しいと考えているにもかかわらず、通常の車間制御では、交通の流れに乗ることができず運転フィーリングの悪化を招来させてしまう可能性がある。
【0008】
これらの問題点は、車間制御が、自車と先行車との実車間距離に依存し過ぎており、先行車が自車に対して遠ざかっているのか近づいているのかという将来想定される車両間の状況について考慮されていないことに起因する。そして、減速手段としてアクセルオフやシフトダウンなど緩減速装置のみを持つ場合でも運転フィーリングの悪化が若干存在していたが、さらにブレーキ装置などのように、減速度がより大きい減速装置を併せ持つようになると、運転フィーリングの悪化は増大してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、実車間物理量が目標車間物理量よりも小さい場合であっても、先行車が自車から遠ざかっている状況において実行する車間制御においては、通常の制御の場合とは異なり、より運転者の感覚に合致した車両挙動となるようにして、運転フィーリングを向上させた制御を実行可能な車間制御装置などを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車間制御装置は、車間制御手段が、自車と先行車との実車間距離に相当する物理量である実車間物理量と、自車と先行車との目標車間距離に相当する物理量である目標車間物理量との差である車間偏差、及び自車と先行車との相対速度に基づいて車間制御量を算出し、その算出された車間制御量に基づき加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させることを前提とする。
【0011】
なお、実車間物理量としては、例えばレーザ光あるいは送信波などを先行車に対して照射し、その反射光あるいは反射波の受けるまでの時間を検出する構成を採用した場合には、その検出した時間そのものを用いてもよいし、車間距離に換算した値を用いてもよいし、さらには、車速にて除算した車間時間を用いてもよい。また、車間制御量としては、目標加速度や加速度偏差(目標加速度−実加速度)、あるいは目標トルクや目標相対速度などが考えられる。
【0012】
「車間制御手段による制御実行中に、実車間物理量が目標車間物理量より小さくなり、且つ先行車が自車から遠ざかる状況」としては、上述したように、先行車が一旦減速した後で加速したような状況や、自車よりも高速走行している車両が車線変更して先行車となった状況などが挙げられる。通常の車間制御では、車間物理量が目標車間物理量より小さいと、目標車間物理量に合わせようとして自車は一旦減速してしまい、車間物理量を大きくしてから(例えば車間距離を開けてから)加速して追従することとなるが、先行車は自車よりも高速走行しているため、自車が一旦減速することによって、先行車から一時的に取り残されたり、後続車に減速を余儀なくさせる可能性がある。つまり、通常の車間制御では、交通の流れに乗ることができず運転フィーリングの悪化を招来させてしまう可能性がある。
【0013】
それに対して、本発明の車間制御装置のように、通常の制御時よりも減速度合いを抑制した車間制御を実行すれば、先行車から一時的に取り残されることがなくなるか、あるいはその度合いが少なくなる。
なお、「減速度合いを抑制する」とは、同じ減速制御をする場合であっても相対的に緩やかな減速を行う場合はもちろん、減速をせずに定速あるいは加速走行させる場合を含む。これにより、先行車が一旦減速した後で加速したような状況や、自車よりも高速走行している車両が車線変更して先行車となった状況が生じても、通常の制御時よりも減速度合いを抑制した車間制御を実行するため、より運転者の感覚に合致した車両挙動となり、運転フィーリングの向上が図られる。
【0014】
そして本発明の車間制御装置では、減速度合いを抑制した車間制御を、実車間物理量が目標車間物理量より小さくなり、且つ前記先行車が自車から遠ざかる状況が前回制御周期での先行車と同一の先行車への追従減速後に生じるときに実行する。これは、上述したように、先行車への追従走行中に、例えば先行車が一旦減速した後で加速したような状況において、減速度合いを抑制した車間制御が実施されることを意図している。このような状況では、先行車が加速して離れていく際には車間が自然と離れているので、自車が大きく減速して車間を離す必要がなく、減速度合いを抑制する方が望ましいと考えられる。
【0015】
なお、このような車間制御の実行に際しては、制御対象の先行車が前回制御周期での先行車と同一であるか否かを判定する同一先行車判定手段を備えることが前提である。
【0016】
また、「通常時の制御よりも減速度合いを抑制した車間制御」の別の例として、請求項3に示すように、車間制御における目標車間物理量について、実車間物理量が前記目標車間物理量より小さくなり、且つ先行車が自車から遠ざかる状況が生じた時点で、相対速度が正の所定値以下の範囲において、相対速度が小さいほど設定された目標車間物理量に近く、相対速度が大きいほど実車間物理量に近く設定し、時間経過に応じて順次長くしていき、最終的には設定された目標車間物理量まで戻していきながら実行することが考えられる。この方法によれば、以下に想定する各場合において、より運転者の感覚に合致した目標車間物理量の設定ができる。
【0017】
(1)割り込まれ時
車線変更してきた車両が新たに先行車になった状況においては、その先行車が自車から遠ざかる状態であるか否かの判断結果に対応し、連続して目標車間物理量を設定することになるため、より運転者の感覚に合致した目標車間物理量の設定が可能である。この点をさらに説明するため、比較例として、「先行車が自車から遠ざかる状況が生じた」ことを相対速度がある所定値(例えば0)以上であることにより判定し、このときにのみ実車間物理量を暫定的な目標車間物理量として設定すると共に、相対速度がある所定値(例えば0)未満であるときには通常通りの目標車間物理量とする場合を想定する。この場合には、次のような不都合が想定される。すなわち、相対速度が所定値より微小に大きい場合と微小に小さい場合とでは、車両運転者はその状況の違いをほとんど判別することができないにもかかわらず、所定値前後で暫定的に設定する目標車間物理量がステップ状に変化することによって車間制御装置の動作が異なるため、運転者がその動作の違いを理解できなくなる。そこで、上述したように、連続して目標車間物理量を設定することによって、そのような不都合を防止できる。
【0018】
なお、請求項3に示す場合には、「先行車が自車から遠ざかる状況」、すなわち相対速度が正(あるいは0も含む)の領域における車間制御に関しての工夫であり、相対速度が負所定値以下の領域についての車間制御については言及していないため、例えば通常通りの制御であっても構わない。
【0019】
このように負の領域まで考慮した暫定目標車間物理量を設定する場合には、例えば、図9(a)に示すマップを用いることが考えられる。図9(a)は縦軸を暫定目標車間時間(s)、横軸を相対速度(km/h)で表しており、相対速度が負の所定下限値Vr1未満の領域では一律に設定目標車間時間とし、相対速度が正の所定上限値Vr2よりも大きな領域では一律に実車間時間あるいは所定値Tdminの大きい方としている。なお、この所定値Tdminについては下記実施形態中において説明する。そして、相対速度が負の所定下限値Vr1以上且つ正の所定上限値Vr2の間においては、所定下限値Vr1での車間時間と所定上限値Vr2での車間時間の間を適宜補間した車間時間を暫定目標車間時間としている。
【0020】
このような設定とすることで、車線変更してきた先行車が離れていく程度が極めて緩やかな場合には車間を空ける方向に作用する。また、先行車が接近する程度が極めて緩やかな場合には車間を空ける方向に作用するのであるが、その程度を(接近度合いが相対的に大きい場合に比べて)小さくすることができる。
【0021】
(2)追従減速時
一方、請求項1に示したような先行車への追従制御中の状況においては、暫定的な目標車間物理量と相対速度との関係は、以下のような設定とすることが望ましいと考えられる。すなわち、請求項4に示すように、通常時の制御よりも減速度合いを抑制した車間制御を、車間制御における目標車間物理量について、実車間物理量が前記目標車間物理量より小さくなり、且つ先行車が自車から遠ざかる状況が生じた時点で、相対速度が正の所定下限値以上で正の所定上限値以下の範囲において、相対速度が小さいほど設定された目標車間物理量に近く、相対速度が大きいほど実車間物理量に近く設定し、時間経過に応じて順次長くしていき、最終的には設定された目標車間物理量まで戻していきながら実行するのである。
【0022】
この暫定目標車間物理量を設定する場合には、例えば、図9(b)に示すマップを用いることが考えられる。図9(b)も縦軸を暫定目標車間時間(s)、横軸を相対速度(km/h)で表しており、相対速度が正の所定下限値Vr1未満の領域では一律に設定目標車間時間とし、相対速度が正の所定上限値Vr2よりも大きな領域では一律に実車間時間よりも大きな所定値Tdsetにしている。なお、この所定値Tdsetについては下記実施形態中で説明する。そして、相対速度が正の所定下限値Vr1以上且つ正の所定上限値Vr2の間においては、所定下限値Vr1での車間時間と所定上限値Vr2での車間時間の間を適宜補間した車間時間を暫定目標車間時間としている。
【0023】
このような設定とすることで、追従制御中に所定条件が成立して先行車が自車から遠ざかると判断したときの先行車の遠ざかり度合いが小さいときには減速の抑制度合いを小さくし、追従制御時に車両運転者が感じるフィーリングをよりよいものとすることができる。
【0024】
なお、請求項5に示すように、車間制御手段の実行する車間制御が、車間距離を車速で除算した車間時間に基づき、実車間時間が目標車間時間に一致するよう自車を走行させる制御である場合には、暫定的な目標車間物理量の設定を容易に車速に比例したものとできる。
【0025】
他にも、請求項6に示すように、車間制御が、自車の加速度を、目標車間物理量に対応して算出された目標加速度に制御するものであることを前提としている場合には、加速度の下限値を制限するように目標加速度を調整するようにしても、通常時の制御よりも減速度合いを抑制した車間制御を実行できる。つまり、目標加速度の下限値を暫定的に0又は負の小さな値に設定し、時間経過に応じて加速度下限値を引き下げていき、最終的には減速度合いを抑制しない場合の加速度下限値まで戻すのである。
【0026】
なお、このような車間制御装置の車間制御手段をコンピュータシステムにて実現する機能は、例えば、コンピュータシステム側で起動するプログラムとして備えることができる。このようなプログラムの場合、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータシステムにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として前記プログラムを記録しておき、このROMあるいはバックアップRAMをコンピュータシステムに組み込んで用いても良い。
【0027】
また、車間制御装置における減速手段としては、例えば自車に搭載されたブレーキ装置に対するブレーキ圧を調整して発生させた制動力により車両を減速させたり、例えば内燃機関のスロットルバルブを全閉させることにより、内燃機関に制動力(いわゆるエンジンブレーキ)を発生させたり、例えば自動変速器をシフトダウンさせることにより、自動変速器に制動力を発生させるようにしてもよい。さらには、これらの制御を組み合わせて、車両に制動力を発生させるようにしてもよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1は、上述した発明が適用された車間制御用電子制御装置2(以下、「車間制御ECU」と称す。)およびブレーキ電子制御装置4(以下、「ブレーキECU」と称す。)を中心に示す自動車に搭載されている各種制御回路の概略構成を表すブロック図である。
【0029】
車間制御ECU2は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、現車速(Vn)信号、操舵角(str-eng ,S0)信号、ヨーレート信号、目標車間時間信号、ワイパスイッチ情報、アイドル制御やブレーキ制御の制御状態信号等をエンジン電子制御装置6(以下、「エンジンECU」と称す。)から受信する。そして、車間制御ECU2は、この受信したデータに基づいて、車間制御演算や車間警報演算をしている。
【0030】
レーザレーダセンサ3は、レーザによるスキャニング測距器とマイクロコンピュータとを中心として構成されている電子回路であり、スキャニング測距器にて検出した先行車の角度や距離等、および車間制御ECU2から受信する現車速(Vn)信号、カーブ曲率半径R等に基づいて、車間制御装置の一部の機能として先行車の自車線確率を演算し、相対速度等の情報も含めた先行車情報として車間制御ECU2に送信する。また、レーザレーダセンサ3自身のダイアグノーシス信号も車間制御ECU2に送信する。なお、このレーザレーダセンサ3は、同一先行車判定手段としても機能する。
【0031】
なお、前記スキャニング測距器は、車幅方向の所定角度範囲に送信波あるいはレーザ光をスキャン照射し、物体からの反射波あるいは反射光に基づいて、自車と前方物体との距離をスキャン角度に対応して検出可能な測距手段として機能している。
【0032】
さらに、車間制御ECU2は、このようにレーザレーダセンサ3から受信した先行車情報に含まれる自車線確率等に基づいて、車間距離制御すべき先行車を決定し、先行車との車間距離を適切に調節するための制御指令値として、エンジンECU6に、目標加速度信号、フューエルカット要求信号、ODカット要求信号、3速シフトダウン要求信号、ブレーキ要求信号を送信している。また警報発生の判定をして警報吹鳴要求信号を送信したり、あるいは警報吹鳴解除要求信号を送信したりする。さらに、ダイアグノーシス信号、表示データ信号等を送信している。なお、この車間制御ECU2は、車間制御手段に相当する。
【0033】
ブレーキECU4は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、車両の操舵角を検出する操舵角検出手段としてのステアリングセンサ8、車両旋回検出手段としてヨーレートを検出するヨーレートセンサ10、および各車輪の速度を検出する車輪速センサ12から操舵角やヨーレートを求めて、これらのデータをエンジンECU6を介して車間制御ECU2に送信したり、ブレーキ力を制御するためにブレーキ油圧回路に備えられた増圧制御弁・減圧制御弁の開閉をデューティ制御するブレーキアクチュエータ25を制御している。またブレーキECU4は、エンジンECU6を介する車間制御ECU2からの警報要求信号に応じて警報ブザー14を鳴動する。
【0034】
エンジンECU6は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、スロットル開度センサ15、車両速度を検出する車速検出手段としての車速センサ16、ブレーキの踏み込み有無を検出するブレーキスイッチ18、クルーズコントロールスイッチ20、クルーズメインスイッチ22、およびその他のセンサやスイッチ類からの検出信号あるいはボデーLAN28を介して受信するワイパースイッチ情報やテールスイッチ情報を受信し、さらに、ブレーキECU4からの操舵角(str-eng,S0 )信号やヨーレート信号、あるいは車間制御ECU2からの目標加速度信号、フューエルカット要求信号、ODカット要求信号、3速シフトダウン要求信号、警報要求信号、ダイアグノーシス信号、表示データ信号等を受信している。
【0035】
そして、エンジンECU6は、この受信した信号から判断する運転状態に応じて、駆動手段としての内燃機関(ここでは、ガソリンエンジン)のスロットル開度を調整するスロットルアクチュエータ24、トランスミッション26のアクチュエータ駆動段に対して駆動命令を出力している。これらのアクチュエータにより、内燃機関の出力、ブレーキ力あるいは変速シフトを制御することが可能となっている。なお、本実施形態の場合のトランスミッション26は5速オートマチックトランスミッションであり、4速の減速比が「1」に設定され、5速の減速比が4速よりも小さな値(例えば、0.7)に設定された、いわゆる、4速+オーバードライブ(OD)構成になっている。したがって、上述したODカット要求信号が出された場合、トランスミッション26が5速(すなわち、オーバードライブのシフト位置)にシフトしていた場合には4速へシフトダウンする。また、シフトダウン要求信号が出された場合には、トランスミッション26が4速にシフトしていた場合には3速へシフトダウンする。その結果、これらのシフトダウンによって大きなエンジンブレーキが生じ、そのエンジンブレーキにより自車の減速が行われることとなる。
【0036】
また、エンジンECU6は、必要な表示情報を、ボデーLAN28を介して、ダッシュボードに備えられているLCD等の表示装置(図示していない。)に送信して表示させたり、あるいは現車速(Vn)信号、操舵角(str-eng,S0 )信号、ヨーレート信号、目標車間時間信号、ワイパスイッチ情報信号、アイドル制御やブレーキ制御の制御状態信号を、車間制御ECU2に送信している。
【0037】
次に、図2〜図12のフローチャートを参照して、車間制御ECU2にて実行される処理について説明する。
図2は、メイン処理を示すフローチャートである。
まず、最初のステップS110において現在制御中かどうかを判断し、現在制御中でなければ(S110:NO)、制御開始スイッチがセットされたかどうかを判断する(S140)。クルーズコントロールスイッチ20がON操作されていれば制御開始スイッチがセットされている状態である。そして、制御開始スイッチがセットされていなければ(S140:NO)、加減速装置非制御時出力(S1100)を実行して、本メイン処理を終了する。S1100での加減速装置非制御時出力の詳細については後述する。
【0038】
また、制御中でなく(S110:NO)、制御開始スイッチがセットされたのであれば(S140:YES)、S130へ移行する。
一方、現在制御中であれば(S110:YES)、S130へ移行する。
S130では、制御終了スイッチがセットされたかどうかを判断する。クルーズコントロールスイッチ20がOFF操作されていれば制御終了スイッチがセットされている状態である。制御終了スイッチがセットされていれば(S130:YES)、加減速装置非制御時出力(S1100)を実行してから、本メイン処理を終了する。
【0039】
また、制御終了スイッチがセットされていなければ(S130:NO)、先行車加速時目標車間調整(S500)、目標加速度演算(S600)、加減速制御(S700)及び加減速装置駆動出力(S800)の各処理を実行し、その後、本メイン処理を終了する。
【0040】
以上は処理全体についての説明であったので、続いて、S500〜S800及びS1100に示した各処理の詳細について順番に説明する。
まず、S500での先行車加速時目標車間調整サブルーチンについて図3のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
最初のステップS501においては、先行車選択を行う。ここで、S501での先行車選択処理の詳細について図4のフローチャートを参照して説明する。
図4の最初のステップS5011では、先行車候補群を抽出する。この処理は、レーザレーダセンサ3より受信した複数の物標データについて、自車線確率が所定値よりも大きいものを抽出する処理である。ここで、自車線確率とは、各物標が自車両の推定進行路上に存在する確率であり、レーザレーダセンサ3内にて演算処理され、車間制御ECU2に物標データの一部として送信される。次に、S5013で先行車候補があるか否かを判断する。先行車候補がなければ’S5013:NO)、先行車データを先行車未認識時のデータとして終了する。一方、先行車候補があれば(S5013:YES)、S5015へ移行し、車間距離が最小の物標を先行車として選択する。その後S5017へ移行し、先行車データを選択された物標のデータとして終了する。
【0042】
図3に戻り、S501の処理後は、S502において、先行車を認識中であるかどうかを判断する。先行車を認識中でなければ(S502:NO)、設定車間を目標車間とし(S515)、さらに車間復帰タイマを0として(S517)、本サブルーチンを終了する。なお、この設定車間は、一定の値であってもよいし、車速に依存して補正するようにしてもよい。以下、車間物理量として車間時間を想定する。
【0043】
一方、先行車を認識中であれば(S502:YES)、先行車加速判定を行う(S503)。この先行車加速判定処理の詳細について、図5のフローチャートを参照して説明する。
図5の最初のステップS5031では、現在車間が設定車間よりも小さいかどうかを判断し、現在車間<設定車間であれば(S5031:YES)、先行車が自車から離れている状態であるかどうかを判断する(S5033)。先行車が自車から離れている状態であれば(S5033:YES)、先行車加速フラグを成立とする(S5035)。一方、S5031で否定判断、つまり現在車間≧設定車間である場合、あるいはS5033で否定判断、つまり先行車が自車から離れている状態ではない場合には、S5037へ移行し、先行車加速フラグを非成立とする。S5035あるいはS5037の処理後は、本サブルーチンを終了して、図3のS505へ移行する。
【0044】
また、減速度合いを抑制した車間制御は、先行車が車線変更してきたときと、前回制御周期での先行車と同一の先行車への追従減速後とで、それぞれの状況に応じた適切な制御を実行することがより好ましい。そのためには、S503において、図6に示す先行車加速判定(その2)を実行すればよい。
【0045】
図6の最初のステップS5041では、先行車物標番号が前回制御周期での先行車物標番号から変更されたか否かを判断する。ここで、このS5041における詳細な処理内容を、図7,8を参照して説明する。
レーザレーダセンサ3においては、図7のフローチャートに示すような処理を実行し、複数の車両を、過去の検出結果との対応付けをしながら認識する。このように認識された車両を「物標」と呼称する。
【0046】
図7の最初のステップS50411では、測距データの受信をする。測距データとは、レーザレーダセンサ3のスキャニング測距器による検出された各スキャン角度における一次元距離データの集合を、X,Y軸で表される直交座標に変換したものである。測距データの例を図8に示す。図8(a)では、スキャニング測距器によってP1〜P6の6点が検出された場合を示している。
【0047】
続くS50412においては、測距データのセグメント化を実行する。このセグメント化とは、測距データの各点を所定の条件により同一と想定される物体毎に1つのセグメントとしてまとめる処理である。この処理は、例えば車両の左右のテールランプに具備されている反射板あるいは車体など、1台の車両を複数のスキャン角度において検出したような場合に、各点が同一の車両であると認識するために必要な処理である。図8(b)にセグメント化処理後の例を示す。ここでは、図8(a)に示す測距データP1〜P6の内、近接するP1〜P3、P4〜P6をそれぞれ1つのセグメントS1,S2としてセグメント化している。
【0048】
続くS50413では、変数iに1を代入してS50414へ移行する。S50414では、物標Biが存在するか否かを判断する。物標Bi(iは自然数)とは、セグメントに対して作成される車両のモデルである。始動時等、物標Biが存在しない場合には(S50414:NO)、S50417へ移行し、対応物標Biのないセグメントがあるか否かを判断する。前述のように、始動時等には物標Biが作成されていないため、S50412にてセグメントを認識していれば、その全てのセグメントは対応物標Biのないセグメントである。この場合、肯定判断されて、S50418へ移行する。
【0049】
S50418では、物標Biの個数が所定値未満であるか否かを判断する。ここで、上記所定値としては、レーザ光が掃引照射される所定角度内に出現する車両の個数として必要十分な値を設定しておけばよい。物標Biの個数が上記所定値未満である場合は(S50418:YES)、S50419へ移行する。
【0050】
S50419では、各セグメントに対して車両に近接したものから順に物標Bj(j=1,2,…)を作成する。なお、物標Bjを順次作成する途中で、物標の総数が上記所定値に達したときは、それ以上物標Bjを作成しない。ここで、各物標Bjは次のようなデータを備えている。すなわち、中心座標(X,Y)、幅W、X軸方向,Y軸方向の相対速度(Vx,Vy)、中心座標(X,Y)の過去4回分のデータ、及び自車線確率である。ここで、自車線確率は車間制御ECU2から送信される推定Rに基づいて算出される値であり、物標Bjが推定Rより定まる自車両の推定進行路上に存在する確率を表している。
【0051】
一方、S50414にて肯定判断、すなわち物標Biが存在する場合には、S50415へ移行して、その物標Biに対応するセグメントを検出する。ここで、物標Biに対応するセグメントとは次のように定義される。図8(c)に例示するように、まず物標Biが前回処理時の位置Bi(n-1) から前回処理時における相対速度(Vx,Vy)で移動したと仮定した場合、現在物標Biが存在するであろう推定位置Bi(n) を算出する。続いて、その推定位置Bi(n) の周囲にX軸,Y軸方向に所定量△X,△Yの幅を有する推定移動範囲BBを設定する。そして、その推定移動範囲BBに少なくとも一部が含まれるセグメントを対応するセグメントとする。
【0052】
続くS50416では、物標Biの更新処理をする。これは、上述したような物標Biのデータを今回の測距結果によって更新する処理である。その後、S504110へ移行し、変数iをインクリメントしてS50414へ移行する。
以上のように、レーザレーダセンサ3においては、測距周期毎において検出される測距データについて過去の測距データとの対応をとることにより、同一車両が同じ物標Biとして認識される。この物標Biは変数iに基づいて順次車間制御ECU2へ送信される。すなわち、同一車両は前回受信時の物標データと同一番号の物標データとして車間制御ECU2にて受信されるのである。従って、図6のS5041においては、先行車物標番号が前回制御周期の番号から変更されたかどうかで、制御対象の先行車が変更された(番号が同一でない)か否か(番号が同一)を好適に判定することができる。
【0053】
図6に戻り、S5041にて肯定判断、すなわち先行車物標番号が前回制御周期の番号から変更された場合には、S5042へ移行して先行車変更フラグを成立とした後、現在車間が設定車間よりも小さいかどうか判断する(S5043)。現在車間<設定車間であれば(S5043:YES)、次に、相対速度>Vr1であるかどうかを判断する(S5044)。ここで、Vr1とは、「先行車が離れていく」と判断するためのしきい値である。相対速度>Vr1であれば(S5044:YES)、S5045へ移行して先行車加速フラグを成立とする。一方、S5041において否定判断、すなわち先行車物標番号が前回制御周期と同一であった場合は、S5046へ移行し、先行車変更フラグを非成立とする。その後、減速手段作動指示の解除後であるか否かを判断する(S5047)。この減速手段作動指示とは、アクセルオフ作動指示、シフトダウン作動指示及びブレーキ作動指示を総称するものである。
そして、減速手段作動指示解除後であれば(S5047:YES)、S5043へ移行する。その後の処理は、上述したので繰り返さない。一方、S5047で否定判断、つまり減速手段作動指示が解除されていない状態である場合、あるいはS5043で否定判断、つまり現在車間≧設定車間である場合、あるいはS5044で否定判断、つまり相対速度>Vr1ではない場合には、S5048へ移行し、先行車加速フラグを非成立とする。S5045あるいはS5048の処理後は、本サブルーチンを終了して、図3のS505へ移行する。ここで、減速手段作動指示解除後の状態であるか否かを判断しているのは、自車が加速へ移行する準備が整っていることを判断するためである。また、減速手段の作動によって減速制御を実施した場合は、自車速が大きく低下した状態であるため、その後の先行車の加速によって自車がとり残される可能性が高い。従って、減速手段作動指示解除後に目標車間の調整が実施されることが望ましい。
【0054】
図3のS505では、先行車加速フラグがセットされたかどうか判断する。なお、「先行車加速フラグがセット」とは、先行車加速フラグが非成立の状態から成立状態になったことを意味する。そして、先行車加速フラグがセットされていれば(S505:YES)、目標車間>現在車間であるが、先行車は離れていく状況であることが想定されるので、S507へ移行して、暫定目標車間を目標車間とする。ここで、先行車加速判定として図5に示す処理を実施する場合は、暫定目標車間として実車間あるいはその近傍の値を設定する。また、先行車加速判定として図6に示す処理を実施する場合、暫定目標車間は図9(a),(b)に示すような相対速度の関数になっており、走行状況に応じて適切な値を目標車間に設定できるようになっている。なお、S507においては、目標車間≦設定車間というガードが設けられている。
【0055】
すなわち、図6のS5042にて先行車変更フラグが成立とされているときは、図9(a)に示すような関数により暫定目標車間時間を決定し、S5046にて先行車変更フラグが非成立とされているときは、図9(b)に示すような関数により暫定目標車間時間を決定する。このような関数にすることによる基本的な効果は、既に述べた通りである。
【0056】
なお、図9(a)において相対速度が所定値Vr2以上であるときの暫定目標車間時間を「実車間時間あるいは所定値Tdminの大きい方」としたのは、目標車間時間とするのが危険であるような所定値Tdminよりも短い車間時間を、暫定的ではあっても目標車間時間とすることを避けるためである。また、図9(b)における所定値Tdsetは、減速抑制度合いを調整するためのパラメータである。つまり、減速度合いを抑制しすぎて運転者に違和感を与えたり、制御上ハンチング状態に陥ったりする事態を避けるよう調整されることが望ましい。
【0057】
図3に戻り、S507の処理後はS509へ移行し、車間復帰タイマをセットしてから、本サブルーチンを終了する。
また、S505にて否定判断、すなわち先行車加速フラグがセットされていない場合には、S511へ移行し、目標車間として、前回の値に車間増加ステップを加算したものを設定する。この際、上述のS507と同様に、目標車間≦設定車間という上限ガードが設けられている。続くS513では、車間復帰タイマとして、前回の値に減少ステップを加算したものを設定する。この際、車間復帰タイマ≧0という下限ガードが設けられている。
【0058】
この車間復帰タイマは、車間増加ステップの値を決定するために使用される。目標車間時間の復帰軌跡としては、図21に示すような例が考えられる。例えば図21(A)に示すように直線的に復帰させる場合には、車間復帰タイマの値によらず車間増加ステップを一定の値とする。また、図21(B)に示すように曲線的に復帰させる場合には、車間復帰タイマが所定値T1より大きいとき車間増加ステップを小さくし、所定値T1以下且つ所定値T2よりも大きいときに車間増加ステップを大きくし、所定値T2以下のときに車間増加ステップを小さくする。ここでT1>T2である。また、図21(C)に示すように所定時間ホールドした後に復帰させる場合には、車間復帰タイマが所定値T1より大きいとき車間増加ステップを0にし、所定値T1以下であるときに車間増加ステップを一定の値にする。このように、車間復帰タイマの値によって車間増加ステップを決めることによって、任意の復帰軌跡を設定することができる。
【0059】
次に、S600での目標加速度演算サブルーチンについて図10(a)のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS601においては、先行車を認識中であるかどうかを判断する。先行車を認識中でなければ(S601:NO)、先行車を未認識の場合の値を目標加速度として(S609)、本サブルーチンを終了する。
【0060】
一方、先行車を認識中であれば(S601:YES)、S603へ移行して車間偏差を演算する。この車間偏差は、現在車間から目標車間を減算して得る。さらに、続くS605にて相対速度を演算する。
そして、このように車間偏差と相対速度が得られたら、S607において、それら両パラメータに基づき、図10(b)に示す制御マップを参照して目標加速度を得る。その後、本サブルーチンを終了する。
【0061】
次に、S700での加減速制御サブルーチンについて図11のフローチャートを参照して説明する。
この加減速制御は、スロットル制御(S710)、アクセルオフ制御(S720)、シフトダウン制御(S730)及びブレーキ制御(S740)を順番に行って終了する。各制御について説明する。
【0062】
まず、S710のスロットル制御サブルーチンについて、図12のフローチャートを参照して説明する。本スロットル制御においては、加速度偏差にスロットル制御ゲインK11を乗算した値を、前回スロットル開度指示値に加算して、今回のスロットル開度指示値とする(S711)。なお、加速度偏差とは、目標加速度から実加速度を減算した値である。
【0063】
次に、S720のアクセルオフ制御サブルーチンについて、図13のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS721において加速度偏差が参照値Aref11よりも小さいかどうか判断し、加速度偏差<Aref11であれば(S721:YES)、アクセルオフの作動を指示して(S722)、本サブルーチンを終了する。
【0064】
一方、加速度偏差≧Aref11であれば(S721:NO)、S723へ移行し、加速度偏差が参照値Aref12よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref12であれば(S723:YES)、アクセルオフの作動解除を指示して(S724)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref12であれば(S723:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0065】
次に、S730のシフトダウン制御サブルーチンについて、図14のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS731において加速度偏差が参照値Aref21よりも小さいかどうか判断し、加速度偏差<Aref21であれば(S731:YES)、シフトダウンの作動を指示し(S733)、さらにアクセルオフの作動指示をしてから(S735)、本サブルーチンを終了する。
【0066】
一方、加速度偏差≧Aref21であれば(S731:NO)、S737へ移行し、加速度偏差が参照値Aref22よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref22であれば(S737:YES)、シフトダウンの作動解除を指示して(S739)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref22であれば(S737:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0067】
次に、S740のブレーキ制御サブルーチンについて、図15のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS741において加速度偏差が参照値Aref31よりも小さいかどうか判断する。そして、加速度偏差<Aref31であれば(S741:YES)、ブレーキの作動を指示し(S743)、さらにアクセルオフの作動指示をしてから(S745)、S751へ移行する。
【0068】
一方、加速度偏差≧Aref31であれば(S741:NO)、S747へ移行し、今度は加速度偏差が参照値Aref32よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref32であれば(S747:YES)、ブレーキの作動解除を指示してから(S749)、S751へ移行するが、加速度偏差≦Aref32であれば(S747:NO)、そのままS751へ移行する。
【0069】
S751では、ブレーキ作動指示が継続中であるかどうかを判断する。そして、ブレーキ作動指示中であれば(S751:YES)、S753へ移行して、加速度偏差にスロットル制御ゲインK21を乗算した値を、前回ブレーキ圧指示値に加算して、今回のブレーキ圧指示値とする。一方、ブレーキ作動指示中でなければ(S751:NO)、S755へ移行し、ブレーキ圧指示値を0とする。
【0070】
S753あるいはS755の処理後は、本サブルーチンを終了する。
なお、ブレーキ圧指示値には上限値があり、その最大値によってブレーキ装置を駆動した場合に生じる最大減速度は、ブレーキ装置を車両運転者が制動操作して生じる最大減速度よりも小さく設定されている。これは、システムによって自動的に減速制御をする場合には、いわゆる急ブレーキ状態とならないように考慮したためである。したがって、ドライバがいわゆる急ブレーキ操作をすれば、当然ながらシステムにより自動的に減速制御する場合よりも大きな減速度を付与することができる。
【0071】
次に、図2のS800における加減速装置駆動出力サブルーチンについて図16のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS801では、アクセルオフの作動指示がされているかどうかを判断し、アクセルオフの作動指示がされていなければ(S801:NO)、ブレーキ解除のための駆動出力(S803)、シフトダウン解除のための駆動出力(S805)、そしてスロットル開度のフィードバック駆動出力(S807)を順次行ってから、本サブルーチンを終了する。
【0072】
一方、アクセルオフの作動指示がされていれば(S801:YES)、シフトダウンの作動指示がされているかどうかを判断する。シフトダウンの作動指示がされていなければ(S809:NO)、ブレーキの作動指示がされているかどうかを判断する(S811)。
【0073】
そして、ブレーキの作動指示がされていなければ(S811:NO)、ブレーキ解除のための駆動出力(S813)、シフトダウン解除のための駆動出力(S815)、スロットルを全閉させるための駆動出力(S817)を順次行ってから、本サブルーチンを終了する。また、ブレーキの作動指示がされていれば(S811:YES)、スロットルを全閉させるための駆動出力(S819)、シフトダウン解除のための駆動出力(S821)、ブレーキ圧のフィードバック駆動出力(S823)を順次行ってから、本サブルーチンを終了する。
【0074】
一方、S809にて肯定判断、すなわち、アクセルオフの作動指示があり(S801:YES)、かつシフトダウンの作動指示があった場合(S809:YES)には、S825へ移行し、ブレーキの作動指示がされているかどうかを判断する。
【0075】
そして、ブレーキの作動指示がされていなければ(S825:NO)、ブレーキ解除のための駆動出力(S827)、スロットルを全閉させるための駆動出力(S829)、シフトダウン駆動出力(S831)を順次行ってから、本サブルーチンを終了する。また、ブレーキの作動指示がされていれば(S825:YES)、スロットルを全閉させるための駆動出力(S833)、シフトダウン駆動出力(S835)、ブレーキ圧のフィードバック駆動出力(S837)を順次行ってから、本サブルーチンを終了する。
【0076】
次に、S1100での加減速装置非制御時出力サブルーチンについて図17のフローチャートを参照して説明する。
この処理は、加減速装置に対して制御しない場合の処理であるので、S1101ではスロットルを全閉させるための駆動出力、S1103ではシフトダウン解除のための駆動出力、そしてS1105ではブレーキ解除の駆動出力を順次行って、本サブルーチンを終了する。
【0077】
なお、上述した本実施形態における図13〜図15のフローチャートの説明中に用いた参照値Aref11,Aref12,Aref21,Aref22,Aref31,Aref32について、補足説明しておく。これらの参照値は、以下に示すようなしきい値となっている。
これらのしきい値の大小関係は、以下のようになる。
(1)作動指示しきい値/作動解除しきい値の関係
アクセルオフ制御:Aref11<Aref12
シフトダウン制御:Aref21<Aref22
ブレーキ制御:Aref31<Aref32
このような関係は、作動指示と作動解除指示のチャタリングが発生しないために必要である。
(2)各減速手段間の作動指示しきい値の関係
0>Aref11≧Aref21≧Aref31
これは、より発生減速度の小さな手段が先に作動されることが望ましいからである。
(3)各減速手段間の作動解除しきい値の関係
Aref12≧Aref22≧Aref32>0
これは、より発生減速度の大きな手段が先に解除されることが望ましいからである。
【0078】
以上は本実施形態のシステムによる車間制御の処理内容について説明したので、続いて、その車間制御による効果を説明する。
例えば、図18に示すように先行車が減速し、その後、先行車が加速した状況を想定する。従来の車間制御では、車間時間が目標車間時間より短いと、目標車間時間に合わせようとして自車は一旦減速し(図18(a)参照)、車間を開けてから加速して追従することとなるが、先行車が加速して自車から離れていくにもかかわらず、車間を開ける方向に制御するために加速に移行するのが遅く、先行車から一時的に取り残されたり、後続車に減速を余儀なくさせる可能性がある(図18(b)参照)。つまり、通常の車間制御では、交通の流れに乗ることができず運転フィーリングの悪化を招来させてしまう可能性があった。
【0079】
そこで、本実施形態のシステムによる車間制御では、図19(a)に示すように先行車が減速して実車間時間が目標車間時間より小さくなり、その後、図19(b)に示すように加速状態に移行して先行車が自車から離れていく場合には、目標車間を一時的に短縮する。具体的には、その時点での実車間時間を目標車間時間とすることによって、加速制御を実行することができる。したがって、先行車から一時的に取り残されることがなくなるか、あるいはその度合いが少なくなる。
【0080】
なお、この本実施形態による新規な制御の場合の車両挙動など(自車速、先行車速、車間距離、目標車間時間、目標加速度など)を示すタイムチャートを図20に示した。また、比較のために、従来制御の場合の自車速、車間距離及び目標加速度の変化についてもに示してある。このタイムチャートからも判るように、自車速よりも小さかった先行車速が自車速よりも大きくなった時点で目標車間時間が短縮されている。そのため、目標加速度が従来に示すように比べて早期に大きくなり、その結果、従来に比べて自車速の低下が抑制され、車間距離が無用に大きくなるが防止されている。
【0081】
また、このように先行車が一旦減速した後に加速するという状況に限らず、例えば高速道路において自車が走行車線を走行しており、自車よりも高速で走行している車両が追い越し車線から自車線(走行車線)に車線変更して新たな先行車となった場合に、車線変更直後の車間が目標車間より短いと、同様の状況が生じる。この場合にも、先行車が自車から離れていくのであれば、その時点での実車間を目標車間とすることによって、加速制御を実行することができ、先行車から一時的に取り残されることがなくなる。
【0082】
このような車間制御を行うことで、より運転者の感覚に合致した車両挙動となるようにして、運転フィーリングを向上させた制御を実現できる。
以上、本発明はこのような実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得る。
【0083】
上記実施形態では「車間物理量」として車間時間を用いていたが、この他の車間物理量として、検出された実時間と目標時間にて同様の制御を実行してもよいし、また他の物理量として、車間距離と目標車間距離にて同様の制御を実行してもよい。なお、車速によって目標車間距離を可変にする場合であって車速にほぼ比例して目標車間距離を設定する場合は、目標車間距離を調整する代わりに上記目標車間時間を用いることにより同等の効果を得ることができる。
【0084】
他にも、車間制御が、自車の加速度を、目標車間に対応して算出された目標加速度に制御するものであることを前提としている場合には、加速度の下限値を制限するように目標加速度を調整するようにしても、通常時の制御よりも減速度合いを抑制した車間制御を実行できる。つまり、目標加速度の下限値を暫定的に0又は負の小さな値に設定し、時間経過に応じて加速度下限値を引き下げていき、最終的には減速度合いを抑制しない場合の加速度下限値まで戻すのである。このようにすれば、車間偏差に応じて算出された目標加速度が負の大きな値であったとしても、下限値が0又は負の小さな値であるため、不適切な減速がなされなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態の車間制御装置のシステムブロック図である。
【図2】 車間制御のメイン処理を示すフローチャートである。
【図3】 メイン処理中で実行される先行車加速時目標車間調整サブルーチンを示すフローチャートである。
【図4】 先行車加速時目標車間調整処理中で実行される先行車選択サブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】 先行車加速時目標車間調整処理中で実行される先行車加速判定(その1)サブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】 先行車加速時目標車間調整処理中で実行される先行車加速判定(その2)サブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】 レーザレーダセンサにおける前方車両の認識処理の概要を示すフローチャートである。
【図8】 レーザレーダセンサにおける前方車両の認識処理の概要を示す説明図である。
【図9】 先行車加速時目標車間調整処理中で実行される暫定目標車間設定のためのマップを示す説明図である。
【図10】 (a)はメイン処理中で実行される目標加速度演算サブルーチンを示すフローチャート、(b)は制御マップの説明図である。
【図11】 メイン処理中で実行される加減速制御サブルーチンを示すフローチャートである。
【図12】 加減速制御中で実行されるスロットル制御サブルーチンを示すフローチャートである。
【図13】 加減速制御中で実行されるアクセルオフ制御サブルーチンを示すフローチャートである。
【図14】 加減速制御中で実行されるシフトダウン制御サブルーチンを示すフローチャートである。
【図15】 加減速制御中で実行されるブレーキ制御サブルーチンを示すフローチャートである。
【図16】 メイン処理中で実行される加減速装置駆動出力サブルーチンを示すフローチャートである。
【図17】 メイン処理中で実行される加減速装置非制御時出力サブルーチンを示すフローチャートである。
【図18】 従来ロジックによる制御結果を時系列に見た車両状況を示す説明図である。
【図19】 本実施形態による制御結果を時系列に見た車両状況を示す説明図である。
【図20】 本実施形態による制御の場合の車両挙動などを示すタイムチャートである。
【図21】 目標車間時間の復帰軌跡の態様を示す説明図である。
【符号の説明】
2…車間制御用電子制御装置(車間制御ECU)
3…レーザレーダセンサ
4…ブレーキ電子制御装置(ブレーキECU)
6…エンジン電子制御装置(エンジンECU)
8…ステアリングセンサ
10…ヨーレートセンサ
12…車輪速センサ
14…警報ブザー
15…スロットル開度センサ
16…車速センサ
18…ブレーキスイッチ
20…クルーズコントロールスイッチ
22…クルーズメインスイッチ
24…スロットルアクチュエータ
25…ブレーキアクチュエータ
26…トランスミッション
28…ボデーLAN
Claims (7)
- 自車両を加減速させる加速手段および減速手段と、
自車と先行車との実車間距離に相当する物理量である実車間物理量と、自車と先行車との目標車間距離に相当する物理量である目標車間物理量との差である車間偏差、及び自車と先行車との相対速度に基づいて車間制御量を算出し、その算出された車間制御量に基づき前記加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させる車間制御手段と、
を備える車間制御装置において、
さらに、制御対象の先行車が前回制御周期での先行車と同一であるか否かを判定する同一先行車判定手段を備え、
前記車間制御手段は、制御実行中に、前記実車間物理量が前記目標車間物理量より小さくなり、且つ前記先行車が自車から遠ざかる状況が前回制御周期での先行車と同一の先行車への追従減速後に生じた場合には、通常制御時よりも減速度合いを抑制した車間制御を実行すること、
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1記載の車間制御装置において、
前記通常時の制御よりも減速度合いを抑制した車間制御とは、車間制御における目標車間物理量について、前記実車間物理量が前記目標車間物理量より小さくなり、且つ前記先行車が自車から遠ざかる状況が生じた時点の実車間物理量あるいはその近傍の値を暫定的な目標車間物理量として設定し、時間経過に応じて順次長くしていき、最終的には設定された目標車間物理量まで戻していきながら実行する車間制御であること、
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1に記載の車間制御装置において、
前記通常時の制御よりも減速度合いを抑制した車間制御とは、車間制御における目標車間物理量について、前記実車間物理量が前記目標車間物理量より小さくなり、且つ前記先行車が自車から遠ざかる状況が生じた時点で、相対速度が正の所定値以下の範囲において、相対速度が小さいほど設定された目標車間物理量に近く、相対速度が大きいほど実車間物理量に近く設定し、時間経過に応じて順次長くしていき、最終的には設定された目標車間物理量まで戻していきながら実行する車間制御であること、
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1記載の車間制御装置において、
前記通常時の制御よりも減速度合いを抑制した車間制御とは、車間制御における目標車間物理量について、前記実車間物理量が前記目標車間物理量より小さくなり、且つ前記先行車が自車から遠ざかる状況が生じた時点で、相対速度が正の所定下限値以上で正の所定上限値以下の範囲において、相対速度が小さいほど設定された目標車間物理量に近く、相対速度が大きいほど実車間物理量に近く設定し、時間経過に応じて順次長くしていき、最終的には設定された目標車間物理量まで戻していきながら実行する車間制御であること、
を特徴とする車両制御装置。 - 請求項2〜4のいずれか記載の車間制御装置において、
前記車間制御手段の実行する車間制御は、車間距離を車速で除算した車間時間に基づき実車間時間が目標車間時間に一致するよう自車を走行させる制御であること、
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1記載の車間制御装置において、
前記車間制御が、自車の加速度を、前記目標車間物理量に対応して算出された目標加速度に制御するものであることを前提としており、
前記通常時の制御よりも減速度合いを抑制した車間制御とは、前記目標加速度の下限値を暫定的に0又は負の小さな値に設定し、時間経過に応じて前記加速度下限値を引き下げていき、最終的には減速度合いを抑制しない場合の加速度下限値まで戻していきながら実行する制御であること、
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜6のいずれか記載の車間制御装置の車間制御手段としてコンピュータシステムを機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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