JP3849380B2 - 車間制御装置及び記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自車を先行車に追従させて走行させるための車間制御機能を有する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の走行安全性を向上させると共に、運転者の操作負担を軽減するための技術として、自車を先行車に自動的に追従させる車間制御装置が知られている。その追従のさせ方は、自車と先行車との実車間距離と予め設定された目標車間距離との差である車間偏差がなくなるように制御する手法である。具体的には、この車間偏差と相対速度(先行車速度に対する自車速度)とに基づいて目標加速度を算出し、自車の加速度がその目標加速度となるように、加速装置や減速装置を制御するのである。
【0003】
なお、車間距離そのものではなく、例えば車間距離を自車の車速で除算した値(以下「車間時間」と称す)を用いても同様に実現できる。また、実際には、レーザ光あるいは送信波などを先行車に対して照射し、その反射光あるいは反射波の受けるまでの時間を検出して車間距離を算出しているため、その検出された時間そのものを用い、実時間と目標時間にて同様の制御を実行してもよい。このように車間距離に相当する物理量であれば実現可能なため、これらを含めて「車間物理量」と記すこととする。また、上述した目標加速度も、「車間制御量」の一具体例であり、それ以外にも加速度偏差(目標加速度−実加速度)や、目標トルク、あるいは目標相対速度としてもよい。但し、以下の説明中、理解を容易にする目的で、必要に応じて「車間物理量」の例として車間距離、「車間制御量」の一例として目標加速度を用いる場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような車間制御においては、装置が発生可能な制御指令値、すなわち車間制御量に予め所定の上下限値を設けていた。この理由として、装置が交通環境を完全にセンシングできないため運転者が予期しない過度な加減速をしてしまうことを防ぐ点が挙げられる。
【0005】
例えば、装置を搭載した車両が車間制御動作中に走行車線から追い越し車線に移動したときには、速やかに加速制御されることが望ましい。一方、例えば高速道路からランプウェーに進入したときには、加速を抑制しむしろ減速することが望ましい。従来、このような異なる状況を装置が判別できないため、発生可能な車間制御量としては、相対的に小さな加速を発生させる値にせざるを得なかった。また、通常は自車両が走行している車線と同一車線上の車両に対してのみ車間制御をすればよいのであるが、センシング性能が不十分な場合、誤って他車線上の車両や路側の物体などを検出し、これらに対して誤った加減速制御をしてしまうおそれがあった。そのため、やはり、発生可能な車間制御量としては、相対的に小さな加速を発生させる値にせざるを得なかった。
【0006】
このように、装置が交通環境を完全にセンシングできないことを考慮したフェールセーフ的な考えに基づき、車間制御量を制限しているため、逆に、ある交通環境においては加速度あるいは減速度が運転者の意図するレベルには達しないこととなる。そのため、例えば運転者が車間制御状態を一時的にキャンセルしてマニュアル運転に切り替える必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、様々な交通環境に対応した適切な車間制御を実現し、運転フィーリングをより向上させることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車間制御装置は、車間制御手段が、自車と先行車との実車間距離に相当する物理量である実車間物理量と、自車と先行車との目標車間距離に相当する物理量である目標車間物理量との差である車間偏差、及び自車と先行車との相対速度に基づいて車間制御量を算出し、その算出された車間制御量に基づき加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させることを前提とする。なお、実車間物理量としては、例えばレーザ光あるいは送信波などを先行車に対して照射し、その反射光あるいは反射波の受けるまでの時間を検出する構成を採用した場合には、その検出した時間そのものを用いてもよいし、車間距離に換算した値を用いてもよいし、さらには、車速にて除算した車間時間を用いてもよい。また、車間制御量としては、目標加速度や加速度偏差(目標加速度−実加速度)、あるいは目標トルクや目標相対速度などが考えられる。
【0009】
車間制御手段が算出する車間制御量(以下、必要に応じて「算出制御量」と称す。)は、装置が交通環境を完全にセンシングできないことに起因して、利用者(運転者)が予期しない過度な加減速をしてしまうことを防ぐという観点での制限をする必要がある。つまり、上述した課題として述べたように、利用者の運転操作に頼ることなく自動的に車間を制御できる反面、フェールセーフ的な考えに基づく制限である。また、交通環境を完全にセンシングできるか否かという問題ではなく、次の理由からも制限する必要がある。例えばユーザがマニュアルで制動操作(例えばブレーキペダルを踏み込む)をした場合には通常−0.3G程度まで発生するが、装置が自動制御する場合には、−0.2G程度に抑えるといった対処がされている。これは、自動的に減速がなされることを運転者自身が認識していたとしても、ユーザが自らの意志に基づいて積極的に制動操作をしようとしている場合と同じだけ減速させてしまうと、予想以上の減速がされたと考える運転者が多いため、そのような違和感を回避させるための工夫である。
【0010】
このように、「算出制御量」に制限を設けること自体は有効であるが、常に制限が設けられた状態であると、状況によっては適切でなくなることも考えられる。ここで「適切でない」とは、ある交通環境において加速度あるいは減速度が運転者の意図するレベルには達しないことなどを指す。
【0017】
そこで、本発明の車間制御装置は、さらに次のような構成を採用した。すなわち、車間制御量の算出に際し、所定の上限値又は下限値の少なくともいずれか一方にてガード処理を実行することを前提とする場合には、そのガード値を補正(変更)することで対処する。請求項に示す車間制御装置は、さらに、車間制御量の上限値又は下限値の少なくともいずれか一方を大きな値にするガード値変更指示を入力するために利用者が操作する操作部材を備えるようにして、利用者の意志を装置側に伝達できるようにした。そして、ガード値変更手段が、操作部材を介して入力されたガード値変更指示内容に基づいて、上述のガード処理のための所定の上限値又は下限値を通常よりも大きくし、車間制御手段が、その変更された上限値又は下限値にてガード処理を実行するのである。
【0018】
この上限値や下限値も、上述の車間制御量と同様に、装置が交通環境を完全にセンシングできないことに起因して利用者(運転者)が予期しない過度な加減速をしてしまうことを防ぐという観点での設けられている。したがって、逆に言えば、予期できる状況においては、一時的に制限を緩くしても構わない。このような観点からなされた本発明によれば、通常(ガード値変更を行わない状態という意味)の車間制御の場合には実現できない大きな加速度合い(あるいは減速度合い)を得ることができる。そして、上述の車間制御量自体を補正する場合と同様、車間制御を続行したままで利用者の望む制御が可能となるため、様々な交通環境に対応した適切な車間制御が実現でき、利用者にとっての運転フィーリングがより向上する。
【0019】
なお、この場合も、操作部材の操作方法の違いに対応して次のような処理を行うことが考えられる。例えば2状態のみ指示入力可能なスイッチを操作部材に用いた場合などにあっては、操作部材に対する操作回数によって補正の度合いを入力可能であるため、請求項に示すように対処する。すなわち、ガード値変更手段が、操作部材に対する操作回数に応じた変更量だけ大きくした上限値又は下限値に変更するのである。なお、このように算出制御量が補正された状態は一時的、つまり利用者の意図する期間のみとすることが好ましい。したがって、操作がなされている間だけガード値変更指示を入力可能な操作部材を用いることを前提とする場合は請求項8に示すように対処する。すなわち、変更量だけ大きくされた上限値又は下限値にて車間制御手段がガード処理を実行している場合、操作部材に対する操作がなされなくなった時点から変更量を徐々に0に漸近させるのである。
【0020】
一方、操作が継続していなくても、ガード値変更指示が一度入力されると、その指示が有効となる場合は、請求項に対処が考えられる。すなわち、変更量だけ大きくされた上限値又は下限値にて車間制御手段がガード処理を実行している場合、変更量だけ大きくされた上限値又は下限値を車間制御量が下回った時点で上限値又は下限値を変更前の値に戻すのである。この際、上限値又は下限値に対する変更が段階的に実行されている場合には、請求項に示すように、現在の上限値又は下限値を車間制御量が下回った時点で、その上限値又は下限値を1段階前の値に戻すことも考えられる。
【0021】
また、連続量を指示入力可能なスイッチを操作部材に用いた場合などにあっては、この操作部材に対する操作量によってガード値変更の度合いを入力可能であるため、請求項に示すように、操作部材に対する操作量に応じた変更量だけ大きくした上限値又は下限値に変更すればよい。なお、この場合も利用者の意図する期間のみ変更することが好ましいので、請求項に示すように、変更量だけ大きくされた上限値又は下限値にてガード処理を実行している場合、操作部材に対する操作量が0になった時点から変更量を徐々に0に漸近させることが考えられる。
【0022】
ところで、操作部材の位置については、利用者が操作可能であれば特に限定されないが、請求項に示すように、車両を運転するためのステアリングホイールを車両運転者が操作しながら同時に操作可能な範囲に設けられていることが望ましい。この場合、請求項に示すように、ステアリングホイール自体に操作部材を設けることが考えられる。
【0023】
また、操作部材に関しては、次のような点も工夫できる。例えば車間制御量を加速側及び減速側のいずれにも補正できるようにする場合、あるいはガード値としての上限値及び下限値のいずれも変更できるようにする場合には、それぞれに応じて別個の部材を設けてもよい。しかし、1つの操作部材を用いて、その操作方法で両者の区別を付けてもよい。例えば中立位置からの操作方向(上下や左右あるいは前後など)で区別する。
【0024】
なお、請求項10に示すように、ガード値(上限値又は下限値)を変更する場合(請求項1〜7)の車間制御装置の車間制御手段及びガード値変更手段をコンピュータシステムにて実現する機能は、例えば、コンピュータシステム側で起動するプログラムとして備えることができる。このようなプログラムの場合、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータシステムにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として前記プログラムを記録しておき、このROMあるいはバックアップRAMをコンピュータシステムに組み込んで用いても良い。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は、上述した発明が適用された車間制御用電子制御装置2(以下、「車間制御ECU」と称す。)およびブレーキ電子制御装置4(以下、「ブレーキECU」と称す。)を中心に示す自動車に搭載されている各種制御回路の概略構成を表すブロック図である。
【0026】
車間制御ECU2は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、現車速(Vn)信号、操舵角(str-eng ,S0)信号、ヨーレート信号、目標車間時間信号、ワイパスイッチ情報、アイドル制御やブレーキ制御の制御状態信号、加減速スイッチ情報等をエンジン電子制御装置6(以下、「エンジンECU」と称す。)から受信する。そして、車間制御ECU2は、この受信したデータに基づいて、車間制御演算や車間警報演算をしている。
【0027】
レーザレーダセンサ3は、レーザによるスキャニング測距器とマイクロコンピュータとを中心として構成されている電子回路であり、スキャニング測距器にて検出した先行車の角度や距離等、および車間制御ECU2から受信する現車速(Vn)信号、カーブ曲率半径R等に基づいて、車間制御装置の一部の機能として先行車の自車線確率を演算し、相対速度等の情報も含めた先行車情報として車間制御ECU2に送信する。また、レーザレーダセンサ3自身のダイアグノーシス信号も車間制御ECU2に送信する。
【0028】
なお、前記スキャニング測距器は、車幅方向の所定角度範囲に送信波あるいはレーザ光をスキャン照射し、物体からの反射波あるいは反射光に基づいて、自車と前方物体との距離をスキャン角度に対応して検出可能な測距手段として機能している。
【0029】
さらに、車間制御ECU2は、このようにレーザレーダセンサ3から受信した先行車情報に含まれる自車線確率等に基づいて、車間距離制御すべき先行車を決定し、先行車との車間距離を適切に調節するための制御指令値として、エンジンECU6に、目標加速度信号、フューエルカット要求信号、ODカット要求信号、3速シフトダウン要求信号、ブレーキ要求信号を送信している。また警報発生の判定をして警報吹鳴要求信号を送信したり、あるいは警報吹鳴解除要求信号を送信したりする。さらに、ダイアグノーシス信号、表示データ信号等を送信している。なお、この車間制御ECU2は、車間制御手段、車間制御量補正手段及びガード値変更手段に相当する。
【0030】
ブレーキECU4は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、車両の操舵角を検出する操舵角検出手段としてのステアリングセンサ8、車両旋回検出手段としてヨーレートを検出するヨーレートセンサ10、および各車輪の速度を検出する車輪速センサ12から操舵角やヨーレートを求めて、これらのデータをエンジンECU6を介して車間制御ECU2に送信したり、ブレーキ力を制御するためにブレーキ油圧回路に備えられた増圧制御弁・減圧制御弁の開閉をデューティ制御するブレーキアクチュエータ25を制御している。またブレーキECU4は、エンジンECU6を介する車間制御ECU2からの警報要求信号に応じて警報ブザー14を鳴動する。
【0031】
エンジンECU6は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、スロットル開度センサ15、車両速度を検出する車速検出手段としての車速センサ16、ブレーキの踏み込み有無を検出するブレーキスイッチ18、クルーズコントロールスイッチ20、クルーズメインスイッチ22、加減速スイッチ23、及びその他のセンサやスイッチ類からの検出信号あるいはボデーLAN28を介して受信するワイパースイッチ情報やテールスイッチ情報を受信し、さらに、ブレーキECU4からの操舵角(str-eng,S0 )信号やヨーレート信号、あるいは車間制御ECU2からの目標加速度信号、フューエルカット要求信号、ODカット要求信号、3速シフトダウン要求信号、警報要求信号、ダイアグノーシス信号、表示データ信号等を受信している。
【0032】
そして、エンジンECU6は、この受信した信号から判断する運転状態に応じて、駆動手段としての内燃機関(ここでは、ガソリンエンジン)のスロットル開度を調整するスロットルアクチュエータ24、トランスミッション26のアクチュエータ駆動段に対して駆動命令を出力している。これらのアクチュエータにより、内燃機関の出力、ブレーキ力あるいは変速シフトを制御することが可能となっている。なお、本実施形態の場合のトランスミッション26は5速オートマチックトランスミッションであり、4速の減速比が「1」に設定され、5速の減速比が4速よりも小さな値(例えば、0.7)に設定された、いわゆる、4速+オーバードライブ(OD)構成になっている。したがって、上述したODカット要求信号が出された場合、トランスミッション26が5速(すなわち、オーバードライブのシフト位置)にシフトしていた場合には4速へシフトダウンする。また、シフトダウン要求信号が出された場合には、トランスミッション26が4速にシフトしていた場合には3速へシフトダウンする。その結果、これらのシフトダウンによって大きなエンジンブレーキが生じ、そのエンジンブレーキにより自車の減速が行われることとなる。
【0033】
また、エンジンECU6は、必要な表示情報を、ボデーLAN28を介して、ダッシュボードに備えられているLCD等の表示装置(図示していない。)に送信して表示させたり、あるいは現車速(Vn)信号、操舵角(str-eng,S0 )信号、ヨーレート信号、目標車間時間信号、ワイパスイッチ情報信号、アイドル制御やブレーキ制御の制御状態信号、加減速スイッチ情報を、車間制御ECU2に送信している。
【0034】
なお、加減速スイッチ23について補足説明しておく。この加減速スイッチ23は、システムにて演算される車間制御のための目標加速度AT0 に対して、利用者がさらに大きな加速度あるいは減速度を希望する場合に操作するためのものである。本実施形態では、例えばON/OFFスイッチのように2状態のみ指示入力可能なものとして構成されており、加速スイッチと減速スイッチの2種類が設けられている。なお、これら加速スイッチと減速スイッチは部材として別個に設けてもよいが、例えば部材自体は1つでも実現できる。例えば中立位置からの上方に操作すれば加速スイッチとしての操作で、逆に下方に操作すれば減速スイッチとしての操作であるとすることもできる。もちろん、上下ではなく、左右あるいは前後でもよい。
【0035】
また、加減速スイッチ23を設ける位置についても説明しておく。基本的には、利用者が操作可能であれば特に限定されないが、ステアリングホイールを車両運転者が操作しながら同時に操作可能な範囲に設けられていることが望ましい。例えば、ステアリングホイール自体に操作部材を設けることが考えられる。
【0036】
図2は、車間制御ECU2が実行するメイン処理を示すフローチャートであり、最初のステップS100においてはレーザレーダセンサ3から先行車に関するデータなどのレーザレーダデータを受信し、続くS200ではエンジンECU6から現車速(Vn)や目標車間時間などのエンジンECUデータを受信する。
【0037】
これらの受信データに基づき、先行車選択(S300)、目標加速度演算(S400)、警報判定(S600)及び減速要求判定(S900)の各処理を実行する。これらの各処理の詳細は後述する。その後、推定Rの演算を行い(S1000)、レーザレーダセンサ3側へは、現車速(Vn)や推定Rなどのレーザレーダデータを送信し(S1100)、エンジンECU6へは、目標加速度やフューエルカット要求、ODカット要求、3速シフトダウン要求、警報要求などのエンジンECUデータを送信する(S1200)。
【0038】
以上はメイン処理全体についての説明であったので、続いて、S300,S400,S600及びS900に示した各処理の詳細について順番に説明する。なお、これらの処理の内で、S600は警報関連の処理であるため、それ以外の車間制御関連の処理を最初に説明し、その後、警報関連の処理を説明することとする。
【0039】
まず、S300での先行車選択サブルーチンについて図3のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS310においては、先行車候補群を抽出する。この処理は、レーザレーダセンサ3より受信した全ての物標データについて、自車線確率が所定値よりも大きいものを抽出する処理である。ここで、自車線確率とは、各物標が自車両の推定進行路上に存在する確率であり、レーザレーダセンサ3内にて演算処理され、車間制御ECU2に物標データの一部として送信される。
【0040】
続くS320では先行車候補があるか否かを判断する。先行車候補がなければ(S320:NO)、先行車未認識時のデータを先行車データとして設定し(S350)、本処理ルーチンを終了する。一方、先行車候補があれば(S320:YES)、S330へ移行し、車間距離が最小の物標を先行車として選択する。その後S340へ移行し、先行車データとしてS330で選択された物標のデータを設定し、本処理ルーチンを終了する。
【0041】
次に、S400での目標加速度演算サブルーチンについて図4のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS410においては、先行車を認識中であるかどうかを判断する。そして、先行車を認識中であれば(S410:YES)、S420へ移行して車間偏差比を演算する。この車間偏差比(%)は、現在車間から目標車間を減算した値(車間偏差)を目標車間で除算し100を掛けた値である。ここで、目標車間は車速に応じて可変とするここで、より運転者の感覚に合致させることができる。
【0042】
さらに、続くS430にて相対速度に対してローパスフィルタを施す。このようにS420,S430にて車間偏差比と相対速度が得られたら、続くS440において、それら両パラメータに基づき、図5に示す制御マップを参照して目標加速度AT0 を得る。なお、この制御マップは、車間偏差比(%)として−96,−64,−32,0,32,64,96の7つの値、相対速度(Km/h)として16,8,0,−8,−16,−24の6つの値に対する目標加速度AT0 を示すものであるが、マップ値として示されていない値については、マップ内では直線補間により演算した値を採用し、マップ外ではマップ端の値を採用する。また、マップ内の値を用いる場合においても、所定の上下限ガードを施すことも考えられる。
【0043】
S440の処理後はS460へ移行する。一方、先行車を認識中でなければ(S410:NO)、先行車を未認識の場合の値を目標加速度AT0 として設定し(S450)、S460へ移行する。
S460では、目標加速度AT0 のガード処理を行うが、この処理を図6のフローチャートを参照して説明する。
【0044】
本ガード処理は、S440又はS450にて算出された目標加速度AT0 が過大・過小にならないように、それぞれ上限値ATmax ・下限値ATmin でガードするものであり、最初のステップS461では、算出された目標加速度AT0 が上限値ATmax よりも大きいか否かを判断し、AT0 >ATmax であれば(S461:YES)、目標加速度AT0 として上限値ATmax を採用し(S462)、本ルーチンを終了する。
【0045】
一方、AT0 ≦ATmax であれば(S461:NO)、今度は、目標加速度AT0 が下限値ATmin よりも小さいか否かを判断する(S463)。そして、AT0 <ATmin であれば(S463:YES)、目標加速度AT0 として下限値ATmin を採用し(S464)、本ルーチンを終了する。
【0046】
なお、下限値ATmin ≦目標加速度AT0 ≦上限値ATmax の場合(S461:YES且つS463:YES)は、そのまま本ルーチンを終了する。つまり、算出された目標加速度AT0 に何らガード処理がされないこととなる。
次に、図4のS470の目標加速度補正量αを演算する処理の詳細を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
最初のステップS471では、加減速スイッチ23(図1参照)中の加速スイッチがOFF→ONとなったか否かを判断する。そして、OFF→ONとなった場合には(S471:YES)、前回の目標加速度補正量α(n−1)に所定の増加分αstep+ (αstep+ >0)を加えた値を、今回の目標加速度補正量α(n)とする(S472)。
【0048】
一方、加速スイッチがOFF→ONとなってはいない場合には(S471:NO)、今度は減速スイッチがOFF→ONとなったか否かを判断する(S473)。そして、OFF→ONとなった場合には(S473:YES)、前回の目標加速度補正量α(n−1)から所定の減少分αstep- (αstep- >0)を減算した値を、今回の目標加速度補正量α(n)とする(S474)。
【0049】
このように算出された目標加速度補正量αは、図4のS490にて目標加速度AT0 に加算されることとなる。したがって、図4のS440又はS450にて演算された目標加速度AT0 は、S460にて所定のガード処理を施されて、上限値ATmax よりも大きくはならないようにされ、又下限値ATmin よりも小さくはならないようにされているが、利用者が加減速スイッチ23を操作した場合には、上限値ATmax よりも大きな、あるいは下限値ATmin よりも小さな目標加速度AT0 に基づく車間制御が実行されることとなる。
【0050】
なお、図14のタイムチャートを参照してさらに説明しておく。図14(a)は加速制御時のタイムチャートであり、図14(b)は減速制御時のタイムチャートである。図14(a)では加速スイッチを2回操作したことにより、図7のS472の処理が2回実行され、目標加速度補正量αが2回の増加分αstep+ の積算値となっている。したがって、たとえ目標加速度AT0 の演算値が上限値ATmax にてガードされていた状態であっても、その上限値ATmax に目標加速度補正量αを加算した値が車間制御に用いられる目標加速度AT0 とされることとなる。
【0051】
同様に、図14(b)では減速スイッチを3回操作したことにより、図7のS474の処理が3回実行され、目標加速度補正量αが3回の減少分αstep- の積算値となっている。したがって、たとえ目標加速度AT0 の演算値が下限値ATmin にてガードされていた状態であっても、その下限値ATmin に目標加速度補正量αを加算した値が車間制御に用いられる目標加速度AT0 とされることとなる。なお、図14(b)の場合には、その後、加速スイッチを1回操作しているので、その時点で増加分αstep+ が加算されている。但し、それでも、結果的には2回の減少分αstep- の積算値が目標加速度補正量αとなった状態である。
【0052】
そして、このように補正した目標加速度AT0 は、その補正方向と反対側、つまり、図14(a)の場合であれば、目標加速度AT0 自体が減少する方向へ移行した時点で目標加速度補正量αを0に向けて漸近させるようにしている。同様に、図14(b)の場合であれば、目標加速度AT0 自体が増加する方向へ移行した時点で目標加速度補正量αを0に向けて漸近させるようにしている。このように目標加速度補正量αを0に漸近させる処理に関して図7に戻って説明する。
【0053】
図7のS472,S474の処理後は、S481へ移行し、今回の目標加速度補正量α(n)が正の値か否かを判断する。そして、α(n)>0であれば(S481:YES)、目標加速度AT0 の今回値AT0 (n)が前回値AT0 (n−1)よりも小さくなっているかどうか判断する(S482)。つまり、これらの処理で、図14(a)に示す加速制御時において目標加速度AT0 自体が減少する方向へ移行したか否かを判断しているのである。そして、AT0 (n)−AT0 (n−1)<0であれば(S482:YES)、今回の目標加速度補正量α(n)から復帰用減少ステップ値αdec (αdec >0)を減算した値を、今回の目標加速度補正量α(n)として更新して(S483)、本ルーチンを終了する。AT0 (n)−AT0 (n−1)≧0であれば(S482:NO)、そのまま本ルーチンを終了する。
【0054】
一方、α(n)≦0であれば(S481:NO)、α(n)が負の値か否かを判断する(S484)。α(n)=0であれば(S484:NO)、そのまま本ルーチンを終了するが、α(n)<0であれば(S484:YES)、目標加速度AT0 の今回値AT0 (n)が前回値AT0 (n−1)よりも大きくなっているかどうか判断する(S485)。つまり、これらの処理で、図14(b)に示す減速制御時において目標加速度AT0 自体が増加する方向へ移行したか否かを判断しているのである。そして、AT0 (n)−AT0 (n−1)>0であれば(S485:YES)、今回の目標加速度補正量α(n)に復帰用増加ステップ値αinc (αinc >0)を加算した値を、今回の目標加速度補正量α(n)として更新して(S486)、本ルーチンを終了する。AT0 (n)−AT0 (n−1)≦0であれば(S485:NO)、そのまま本ルーチンを終了する。
【0055】
このように演算された今回の目標加速度補正量α(n)は、図4のS490の処理において、目標加速度AT0 に加算され、最終的な目標加速度とされる。さらに、続くS500において目標加速度に対してローパスフィルタを施す。これで図4の目標加速度演算処理ルーチンが終了し、図2のS600へ移行する。
【0056】
S600の警報判定については後述することとし、次に、S900での減速要求判定サブルーチンについて図8のフローチャートを参照して説明する。
この減速要求判定は、フューエルカット要求判定(S910)、ODカット要求判定(S920)、3速シフトダウン要求判定(S930)及びブレーキ要求判定(S940)を順番に行って終了する。各制御について説明する。
【0057】
まず、S910のフューエルカット要求判定サブルーチンについて、図9のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS911においてフューエルカット要求中であるかどうか判断し、フューエルカット要求中でなければ(S911:NO)、加速度偏差が参照値Aref11よりも小さいかどうか判断する(S913)。そして、加速度偏差<Aref11であれば(S913:YES)、フューエルカット要求成立として(S915)、本サブルーチンを終了する。また、加速度偏差≧Aref11であれば(S913:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0058】
一方、フューエルカット要求中であれば(S911:YES)、S917へ移行し、加速度偏差が参照値Aref12よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref12であれば(S917:YES)、フューエルカット要求を解除して(S919)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref12であれば(S917:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0059】
次に、S920のODカット要求判定サブルーチンについて、図10のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS921においてODカット要求中であるかどうか判断し、ODカット要求中でなければ(S921:NO)、加速度偏差が参照値Aref21よりも小さいかどうか判断する(S923)。そして、加速度偏差<Aref21であれば(S923:YES)、ODカット要求成立として(S925)、本サブルーチンを終了する。また、加速度偏差≧Aref21であれば(S923:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0060】
一方、ODカット要求中であれば(S921:YES)、S927へ移行し、加速度偏差が参照値Aref22よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref22であれば(S927:YES)、ODカット要求を解除して(S929)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref22であれば(S927:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0061】
次に、S930の3速シフトダウン要求判定サブルーチンについて、図11のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS931において3速シフトダウン要求中であるかどうか判断し、3速シフトダウン要求中でなければ(S931:NO)、加速度偏差が参照値Aref31よりも小さいかどうか判断する(S933)。そして、加速度偏差<Aref31であれば(S933:YES)、3速シフトダウン要求成立として(S935)、本サブルーチンを終了する。また、加速度偏差≧Aref31であれば(S933:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0062】
一方、3速シフトダウン要求中であれば(S931:YES)、S937へ移行し、加速度偏差が参照値Aref32よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref32であれば(S937:YES)、3速シフトダウン要求を解除して(S939)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref32であれば(S937:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0063】
次に、S940のブレーキ要求判定サブルーチンについて、図12のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS941においてフューエルカット要求中であるかどうか判断し、フューエルカット要求中でなければ(S941:NO)、ブレーキ要求を解除して(S951)、そのまま本サブルーチンを終了する。一方、フューエルカット要求中であれば(S941:YES)、ブレーキ要求中であるかどうか判断し(S943)、ブレーキ要求中でなければ(S943:NO)、加速度偏差が参照値Aref41よりも小さいかどうか判断する(S945)。そして、加速度偏差<Aref41であれば(S945:YES)、ブレーキ要求成立として(S947)、本サブルーチンを終了する。また、加速度偏差≧Aref41であれば(S945:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0064】
一方、ブレーキ要求中であれば(S943:YES)、S949へ移行し、加速度偏差が参照値Aref42よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref42であれば(S949:YES)、ブレーキ要求を解除して(S951)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref42であれば(S949:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0065】
なお、図9〜図12のフローチャートの説明中に用いた参照値Aref11,Aref12,Aref21,Aref22,Aref31,Aref32,Aref41,Aref42について、補足説明しておく。これらの参照値は、以下に示すようなしきい値となっている。
Figure 0003849380
これらのしきい値の大小関係は、以下のようになる。
(a)作動指示しきい値/作動解除しきい値の関係
Figure 0003849380
このような関係は、作動指示と作動解除指示のチャタリングが発生しないために必要である。
(b)各減速手段間の作動指示しきい値の関係
0>Aref11≧Aref21≧Aref31≧Aref41
これは、より発生減速度の小さな手段が先に作動されることが望ましいからである。
(c)各減速手段間の作動解除しきい値の関係
Aref12≧Aref22≧Aref32≧Aref42>0
これは、発生減速度のより大きな手段が先に解除されることが望ましいからである。
【0066】
以上は車間制御関連の処理の説明であったので、続いて、警報関連の処理であるS600の詳細について図13を参照して説明する。
図13のフローチャートに示す最初のステップS610では、警報要求を現在指示中であるかどうかを判断する。警報要求中でなければ(S610:NO)、所定の条件成立を判断して警報要求を指示するための処理(S620,S630,S640)を実行する。
【0067】
S620では、以下の算出式に示すように、自車速と相対速度に応じて警報距離Dwを算出する。
警報距離Dw=f(自車速,相対速度)
次に、この警報距離よりも車間距離が短い状態が生じているかどうかを判断し(S630)、車間距離が警報距離以上の場合には(S630:NO)、そのまま本処理ルーチンを終了する。そして、警報距離よりも車間距離が短い場合には(S630:YES)、警報要求を成立させる(S640)。
【0068】
一方、S610にて肯定判断、すなわち、警報要求中であれば、所定の条件成立を判断して警報要求を解除するための処理(S650,S660,S670)を実行する。
S650では、警報要求が成立した後1秒経過したかどうかを判断する。警報要求成立後1秒経過していなければ(S650:NO)、そのまま本処理ルーチンを終了する。これは、警報処理を実行した場合、少なくとも1秒間はその状態を続けるためである。
【0069】
そして、警報要求が成立した後1秒経過すると(S650:YES)、続いて、車間距離が警報距離以上かどうかを判断し(S660)、車間距離が警報距離未満の場合には(S660:NO)、そのまま本処理ルーチンを終了する。そして、車間距離が警報距離以上の場合には(S660:YES)、警報要求を解除する(S670)。
【0070】
S640において警報要求が成立した旨は、図2のS1200でのエンジンECUデータとしてエンジンECU6へ送信される。そして、エンジンECU6からブレーキECU4に対して指示することによって、ブレーキECU4は警報ブザー14を鳴動する。一方、S670において警報要求が解除されたことがエンジンECU6へ伝わると、ブレーキECU4を介して警報ブザー14が停止されることとなる。
【0071】
以上説明した本実施形態のシステムが発揮する効果を説明する。
図4のS440又はS450にて演算された目標加速度AT0 は、S460にて所定のガード処理を施されて、上限値ATmax よりも大きくはならないようにされ、又下限値ATmin よりも小さくはならないようにされている。これは、システムだけでは交通環境を完全にセンシングできないことに起因し、利用者が予期しない過度な加減速をしてしまうことを防ぐという観点での制限を施したものである。また、交通環境を完全にセンシングできるか否かという問題ではなく、次の理由からも制限する必要がある。例えばユーザがブレーキペダルを踏み込んだ場合には通常−0.3G程度までの減速度が発生するが、装置が自動制御する場合には、−0.2G程度に抑えるといった対処がされている。これは、自動的に減速がなされることを運転者自身が認識していたとしても、ユーザが自らの意志に基づいて積極的に制動操作をしようとしている場合と同じだけ減速させてしまうと、予想以上の減速がされたと考える運転者が多いため、そのような違和感を回避させるための工夫である。
【0072】
このように、システムが演算で求めた目標加速度AT0 (図4のS440又はS450)に制限を設けること自体は有効であるが、常に制限が設けられた状態であると、状況によっては適切でなくなることも考えられる。ここで「適切でない」とは、ある交通環境において加速度あるいは減速度が運転者の意図するレベルには達しないことなどを指す。
【0073】
そこで、本システムでは、利用者が加減速スイッチ23を操作した場合には、上限値ATmax よりも大きな、あるいは下限値ATmin よりも小さな目標加速度AT0 に基づく車間制御が実行なされるようにした。例えば、図14(a)に示すように、加速スイッチを2回操作した場合には、目標加速度補正量αが2回の増加分αstep+ の積算値となり、たとえ目標加速度AT0 の演算値が上限値ATmax にてガードされていた状態であっても、その上限値ATmax に目標加速度補正量αを加算した値が車間制御に用いられる目標加速度AT0 とされる。また、図14(b)に示すように、減速スイッチを3回操作した場合には、目標加速度補正量αが3回の減少分αstep- の積算値となり、たとえ目標加速度AT0 の演算値が下限値ATmin にてガードされていた状態であっても、その下限値ATmin に目標加速度補正量αを加算した値が車間制御に用いられる目標加速度AT0 とされる。
【0074】
このようにすることで、例えば車両が走行車線から追い越し車線に移動したときなどのように、速やかに加速制御されることを利用者が望むのであれば、加減速スイッチ23の加速スイッチを操作して、算出制御量による加速度合いよりもさらに大きな加速度合いが得られるようにすることができる。従来であれば、例えば運転者が車間制御状態を一時的にキャンセルしてマニュアル運転に切り替える必要があったが、本システムにあっては、車間制御を続行したままで利用者の望む制御が可能となる。したがって、様々な交通環境に対応した適切な車間制御が実現でき、利用者にとっての運転フィーリングがより向上する。
【0075】
なお、加減速スイッチ23が操作部材に相当するのであるが、上述したように、本実施形態では、例えばON/OFFスイッチのように2状態のみ指示入力可能なものとして構成した。しかし、例えばボリュームスイッチのように連続量を指示入力可能な構成としてもよい。その場合には、加減速スイッチに対する操作量によって補正の度合いを入力可能であるため、次のように対処する。すなわち、加減速スイッチに対する操作量を検出し、その操作量に応じた目標加速度補正量αを算出する。そして、その目標加速度補正量αを目標加速度AT0 に加算すればよい。
【0076】
このような連続量を指示入力可能な場合の動作について、図15のタイムチャートに示した。図15(a)は加速制御時のタイムチャートであり、図15(b)は減速制御時のタイムチャートである。加減速いずれの制御時においても、加減速スイッチの操作量に応じた目標加速度補正量αを算出し、その目標加速度補正量αを加算した目標加速度を用いて車間制御を行う。
【0077】
なお、これらの場合には、加減速スイッチに対する操作量が0になった時点から補正量を徐々に0に漸近させるようにした。
[別実施形態]
上述した実施形態の場合には、車間制御量である目標加速度AT0 自体を補正することで目的を達成するようにしたが、目標加速度AT0 の上下限ガードを行うための上限値ATmax 及び下限値ATmin を補正(変更)することで対処してもよい。
【0078】
上述した実施形態の場合とは、図2のS400における目標加速度演算にかかる処理内容が異なるだけであるので、その点のみ説明する。なお、加減速スイッチ23(図1参照)については、同じ構成で構わない。つまり、この場合には、加速スイッチを操作すれば上限値ATmax をさらに大きくでき、減速スイッチを操作すれば下限値ATmin をさらに小さくできるようにされていることとなる。
【0079】
図16は、別実施形態の場合の目標加速度演算サブルーチンを示すフローチャートである。
S2410〜S2450の処理は、上述した実施形態の場合の図4のS410〜S450と同じであるので説明は省略する。
【0080】
S2460では、目標加速度AT0 のガード処理を行うが、この内容が上述した実施形態の場合の図6の内容とは異なるので、この処理を図16のフローチャートを参照して説明する。
本別実施形態のガード処理中、後半に行うS2471〜S2474は、図6の内容と同じである。つまり、算出された目標加速度AT0 が過大・過小にならないように、それぞれ上限値ATmax ・下限値ATmin でガードしている。しかし、本別実施形態の場合には、前半のS2461〜S2470の処理において、加減速スイッチの23操作に応じ、上限値ATmax 自体をさらに大きく変更でき、下限値ATmin 自体をさらに小さく変更できるようにした。すなわち、加減速スイッチ23が何ら操作されない状態では、上限値ATmax (n)としてATmax0 を用い(S2465)、下限値ATmin (n)としてATmin0 を用いる(S2470)。なお、このATmax0 及びATmin0 は、図6で示した固定的な上限値ATmax 及び下限値ATmin に等しい。それ対し、加速スイッチがONされている場合には(S2461:YES)、上限値ATmax (n)としてATmax1 を用い(S2462)、減速スイッチがONされている場合には(S2466:YES)下限値ATmin (n)としてATmin1 を用いる(S2467)。なお、ATmax1>ATmax0であり、ATmin0>ATmin1である。
【0081】
このように上限値ATmax (n)、下限値ATmin (n)が変更されることによって、目標加速度AT0 がガードされる限度が緩くなったことになる。つまり、変更前であればガードされていた目標加速度AT0 も、上限値ATmax が大きくなることで、相対的に大きな目標加速度AT0 であってもそのままガードされずに採用され、下限値ATmin が小さくなることで、相対的に小さな目標加速度AT0 であってもそのままガードされずに採用されることとなり、そのような目標加速度AT0 に基づく車間制御が実行されることとなる。
【0082】
なお、図18のタイムチャートを参照してさらに説明しておく。図18(a)は加速制御時のタイムチャートであり、図18(b)は減速制御時のタイムチャートである。これらは、いずれも加減速スイッチを操作している期間中のみ上限値ATmax あるいは下限値ATmin の変更が有効となっている。
【0083】
そして、このように変更した上限値ATmax は、加速スイッチがONでなくなると(S2461:NO)、元の上限値ATmax0 に漸近させるための処理を行う(S2463〜S2465)。具体的には、前回の上限値ATmax (n−1)が元の上限値ATmax0 よりも大きいか否かを判断し(S2463)、ATmax (n−1)>ATmax0 であれば(S2463:YES)、前回の上限値ATmax (n−1)から所定の漸近用減少ステップ値βdec(βdec>0)を減算した値を、今回の上限値ATmax (n)とする(S2464)。このように、漸近用減少ステップ値βdec ずつ減算していき、ATmax (n−1)=ATmax0 となった時点で(S2463:NO)、元の上限値ATmax0 を今回の上限値ATmax (n)とする(S2465)。
【0084】
同様に、変更した下限値ATmin は、減速スイッチがONでなくなった場合も(S2466:NO)に、元の下限値ATmin0 に漸近させるための処理を行う(S2468〜S2470)。具体的には、前回の下限値ATmin (n−1)が元の下限値ATmin0 よりも小さいか否かを判断し(S2468)、ATmin (n−1)<ATmin0 であれば(S2468:YES)、前回の下限値ATmin (n−1)に所定の漸近用増加ステップ値βinc(βinc>0)を加算した値を、今回の下限値ATmin (n)とする(S2469)。このように、漸近用増加ステップ値βinc ずつ加算していき、ATmin (n−1)=ATmin0 となった時点で(S2468:NO)、元の下限値ATmin0 を今回の下限値ATmin (n)とする(S2470)。
【0085】
なお、このように上限値ATmax や下限値ATmin を変更する意図を利用者がシステムに伝達するための加減速スイッチとして、連続量を指示入力可能な構成としてもよい。その場合には、加減速スイッチに対する操作量によって変更度合いを入力可能であるため、次のように対処する。すなわち、加減速スイッチに対する操作量を検出し、その操作量に応じた変更量βを算出し、その変更量βを上限値ATmax に加算したり、下限値ATmin から減算すればよい。
【0086】
このような連続量を指示入力可能な場合の動作について、図19のタイムチャートに示した。図19(a)は加速制御時のタイムチャートであり、図19(b)は減速制御時のタイムチャートである。加減速いずれの制御時においても、加減速スイッチの操作量に応じた変更量を算出し、加速制御時にはその変更量を元の上限値ATmax に加算し、減速制御時には元の下限値ATmin からその変更量を減算する。このような上限値ATmax ,下限値ATmin によるガード処理を施しながら得た目標加速度を用いて車間制御を行う。
【0087】
なお、図18の場合には、加減速スイッチを操作している期間中のみ上限値ATmax あるいは下限値ATmin の変更を有効とする例であったが、操作が継続していなくても、操作がされる(つまり加速スイッチあるいは減速スイッチがONされる)だけで、その指示が有効と扱ってもよい。その場合は、次のように対処する。すなわち、上限値ATmax を大きくした場合であれば、その変更後の上限値ATmax を目標加速度AT0 が下回った時点で上限値ATmax を変更前の値に戻す。下限値ATmin の場合も同様である。そしてこの際、上限値ATmax 又は下限値ATmin に対する変更が段階的に実行されている場合には、例えば2段階大きくされている上限値ATmax を目標加速度AT0 が下回った時点で、直前の上限値ATmax 、すなわち1段階だけ大きくされた上限値ATmax に戻すことも考えられる。
【0088】
[その他]
(1)上記実施形態では、車間制御量の一例として目標加速度AT0 を用いたが、それ以外にも、加速度偏差(目標加速度−実加速度)や、目標トルク、あるいは目標相対速度としてもよい。
【0089】
(2)減速手段としては、上述した実施形態で説明したものも含め、採用可能なものを挙げておく。ブレーキ装置のブレーキ圧を調整して行うもの、内燃機関に燃料が供給されるのを阻止するフューエルカット制御、前記内燃機関に接続された自動変速機がオーバードライブのシフト位置となるのを禁止するオーバードライブカット制御、前記自動変速機を高位のシフト位置からシフトダウンさせるシフトダウン制御、前記内燃機関の点火時期を遅らせる点火遅角制御、前記自動変速機が備えたトルクコンバータをロックアップ状態にするロックアップ制御、前記内燃機関からの排気の流動抵抗を増加させる排気ブレーキ制御およびリターダ制御を実行して行うものなどである。
【0090】
(3)また、上記実施形態においては、車間距離をそのまま用いていたが、車間距離を車速で除算した車間時間を用いても同様に実現できる。つまり、相対速度と車間時間偏差比をパラメータとする目標加速度の制御マップを準備しておき、制御時には、その時点での相対速度と車間時間偏差比に基づいて目標加速度を算出して、車間制御を実行するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態の車間制御装置のシステムブロック図である。
【図2】 車間制御ECUにて実行されるメイン処理を示すフローチャートである。
【図3】 図2のメイン処理中で実行される先行車選択サブルーチンを示すフローチャートである。
【図4】 図2のメイン処理中で実行される目標加速度演算サブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】 目標加速度演算に用いる制御マップの説明図である。
【図6】 図4の目標加速度演算処理中で実行される目標加速度AT0 ガードサブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】 図4の目標加速度演算処理中で実行される目標加速度補正量α演算サブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】 図2のメイン処理中で実行される減速要求判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図9】 図8の減速要求判定中で実行されるフューエルカット要求判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図10】 図8の減速要求判定中で実行されるODカット要求判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図11】 図8の減速要求判定中で実行される3速シフトダウン要求判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図12】 図8の減速要求判定中で実行されるブレーキ要求判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図13】 図2のメイン処理中で実行される警報判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図14】 ON/OFF型の加減速スイッチの操作に基づく目標加速度の補正の様子を示すフローチャートである。
【図15】 連続量を指示入力可能な加減速スイッチの操作に基づく目標加速度の補正の様子を示すフローチャートである。
【図16】 別実施形態の目標加速度演算サブルーチンを示すフローチャートである。
【図17】 図16の目標加速度演算処理中で実行される目標加速度AT0 ガードサブルーチンを示すフローチャートである。
【図18】 ON/OFF型の加減速スイッチの操作に基づく上下限ガード値の変更の様子を示すフローチャートである。
【図19】 連続量を指示入力可能な加減速スイッチの操作に基づく上下限ガード値の変更の様子を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2…車間制御用電子制御装置(車間制御ECU)
3…レーザレーダセンサ
4…ブレーキ電子制御装置(ブレーキECU)
6…エンジン電子制御装置(エンジンECU)
8…ステアリングセンサ 10…ヨーレートセンサ
12…車輪速センサ 14…警報ブザー
16…車速センサ 18…ブレーキスイッチ
20…クルーズコントロールスイッチ 22…クルーズメインスイッチ
23…加減速スイッチ 24…スロットルアクチュエータ
25…ブレーキアクチュエータ 26…トランスミッション
28…ボデーLAN

Claims (10)

  1. 自車両を加減速させる加速手段及び減速手段と、
    自車と先行車との実車間距離に相当する物理量である実車間物理量と、自車と先行車との目標車間距離に相当する物理量である目標車間物理量との差である車間偏差、及び自車と先行車との相対速度に基づいて車間制御量を算出し、その算出された車間制御量に基づき前記加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させる車間制御手段と、
    を備える車間制御装置において、
    前記車間制御手段は、前記車間制御量の算出に際し、所定の上限値又は下限値の少なくともいずれか一方にてガード処理を実行することを前提としており、
    前記車間制御量の上限値又は下限値の少なくともいずれか一方を大きな値にするガード値変更指示を入力するために利用者が操作する操作部材と、
    該操作部材を介して入力されたガード値変更指示内容に基づいて、前記ガード処理のための所定の上限値又は下限値を通常よりも大きくするガード値変更手段を備え、
    前記車間制御手段は、該ガード値変更手段によって変更された上限値又は下限値にて前記ガード処理を実行すること
    を特徴とする車間制御装置。
  2. 請求項1記載の車間制御装置において、
    前記操作部材は、当該部材に対する操作回数によって前記ガード値変更の度合いを入力可能に構成されており、
    前記ガード値変更手段は、前記操作部材に対する操作回数に応じた変更量だけ大きくした上限値又は下限値に変更すること
    を特徴とする車間制御装置。
  3. 請求項2記載の車間制御装置において、
    前記操作部材は、当該部材に対する操作がなされている間だけ前記ガード値変更指示を入力可能であり、
    前記変更量だけ大きくされた上限値又は下限値にて前記車間制御手段がガード処理を実行している場合、前記ガード値変更手段は、前記操作部材に対する操作がなされなくなった時点から、前記変更量を徐々に0に漸近させること
    を特徴とする車間制御装置。
  4. 請求項2記載の車間制御装置において、
    前記変更量だけ大きくされた上限値又は下限値にて前記車間制御手段がガード処理を実行している場合、前記ガード値変更手段は、前記変更量だけ大きくされた上限値又は下限値を前記車間制御量が下回った時点で、当該上限値又は下限値を変更前の値に戻すこと
    を特徴とする車間制御装置。
  5. 請求項4記載の車間制御装置において、
    前記上限値又は下限値に対する変更が段階的に実行されている場合、前記ガード値変更手段は、現在の上限値又は下限値を前記車間制御量が下回った時点で、当該上限値又は下限値を1段階前の値に戻すこと
    を特徴とする車間制御装置。
  6. 請求項1記載の車間制御装置において、
    前記操作部材は、当該部材に対する操作量によって前記ガード値変更の度合いを入力可能に構成されており、
    前記ガード値変更手段は、前記操作部材に対する操作量に応じた変更量だけ大きくした上限値又は下限値に変更すること
    を特徴とする車間制御装置。
  7. 請求項記載の車間制御装置において、
    前記変更量だけ大きくされた上限値又は下限値にて前記車間制御手段がガード処理を実行している場合、前記ガード値変更手段は、前記操作部材に対する操作量が0になった時点から、前記変更量を徐々に0に漸近させること
    を特徴とする車間制御装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか記載の車間制御装置において、
    前記操作部材は、前記車両を運転するためのステアリングホイールを車両運転者が操作しながら同時に操作可能な範囲に設けられていること
    を特徴とする車間制御装置。
  9. 請求項8記載の車間制御装置において、
    前記操作部材は、前記ステアリングホイール自体に設けられていること
    を特徴とする車間制御装置。
  10. 請求項1〜7のいずれか記載の車間制御装置の車間制御手段及びガード値変更手段としてコンピュータシステムを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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