JP3622383B2 - 電極シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生産性を向上させた高放電電位で寿命安定性に優れ、安全性も高い非水2次電池の塗布方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電池の基本性能、特に安全性などの向上のために電極を多層構成にする必要が生じた場合、これらの層を一層づつ塗り重ねて多層構成の電極シートを完成させる方法が通常であった。この場合、一層塗布する毎に送り出し/巻き取り工程を経なければならず、極めて効率の悪い塗布方法であった。
また、一層づつの塗り重ねでは乾燥工程で発生するカールに起因する電極切断トラブルや層間の密着不良による膜ハガレ、塗布膜の部分的な脱落、ひび割れなどの好ましくないトラブルが頻発した。
さらに正極のような厚膜の上にオーバーコートする場合、正極合剤膜の空隙を逐次塗布する際に塗布液で置き換えなければならず、オーバーコート直後に空隙部のエアーが泡となって膜に穴があいてしまい均質なオーバーコート膜ができないという問題があった。泡による欠陥を抱えた膜では本来の機能が充分に得られず、電池性能のバラツキも大きくなる。
【0003】
【発明が解決ようとする課題】
本発明の第一の目的は、一層塗布する毎に送り出し/巻き取り工程を経て、塗り重ねて多層構成の電極シートを完成させる非効率な方法を改善するために一度に複数の層を塗布して、多層構成の電極シート完成時間を大幅に短縮する塗布方法を提供することである。
第二の目的は、一層づつの塗重ねの乾燥工程で発生するトラブルを抑制し、泡による膜欠陥のない均質な膜で構成される多層電極シートを塗布する方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、同時に2層以上の塗布を行うことによって達成された。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい態様は以下の通りであるが、これらは1例であって、これらに限定する必要はない。
(1)非水二次電池に使用する多層構成電極シートの電極材料塗布において、同時に2層以上の塗布を行うことができる手段と、該手段が減圧室を有し、該減圧室内の圧力が、常圧より1mm水柱以上150mm水柱以下の減圧であり、電極材料塗布液の粘度が該手段の塗布液粘度制約に従うことを特徴とする多層構成電極シートの製造方法。
(2)同時に2層以上の塗布を行うことができる手段が、複数スロットで構成されたエクストールジョンダイであり、該塗布液粘度が1mPa以上3000mPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層構成電極シートの製造方法。
(3)同時に2層以上の塗布を行うことができる手段が、複数スロットで構成されたスライドコーターであり、該塗布液粘度が0.1mPa以上500mPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層構成電極シートの製造方法。
(4)同時に2層以上の塗布を行うことができる手段が、複数スロットで構成されたエクストールジョンダイとスライドコーターを有し、エクストルージョンダイでは該塗布液粘度が1mPa以上3000mPa以下であり、スライドコーターでは該塗布液粘度が0.1mPa以上500mPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層構成電極シートの製造方法。
(5)同時に塗布される2層以上の塗布層の少なくとも1層が活物質含有層であり、少なくとも1層が活物質非含有層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の多層構成電極シートの製造方法。
(6)同時に塗布される電極材料層が3層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の多層構成電極シートの製造方法。
(7)同時に塗布される3層の電極材料層が、2層用のエクストルージョンダイと1層用のスライドコーターとの組み合わせにより塗布されることを特徴とする請求項6に記載の多層構成電極シートの製造方法。
(8)非水二次電池が、リチウム二次電池である請求項1から7のいずれか1項に記載の多層構成電極シートの製造方法。
【0006】
以下、本発明について詳しく説明する。一度に複数の層を塗布する手段として、エクストルージョンダイあるいはスライドコーターあるいはエクストルージョンダイとスライドコーターの組み合わされたコーターを用いることができる。コーターの複数スロットにそれぞれ計量・送液された各層の塗布液を、コーターとコーティングローラーとの一定のギャップを通過し連続的に供給される基材シート上に、同時に多層構成のまま塗布することができ、これにより各層が混ざることなく均一な多層構成膜が得られる。
本発明に用いるエクストルージョンダイの例を図1から図3に断面で示した。ダイの構成について図1を例に説明する。図1の例では複数のリップ3、4、5、6、が間隙を保つ様に対峙してスロット7、8、9を形成し、このスロットに連結した液溜10、11、12を内部に有する。電極材料塗布液はこの液溜に、エクストルージョンダイ外部に設けられた給液設備によりそれぞれ定量供給され、更に連結したスロット7、8、9を経て、スロット出口より吐出される。
本発明における電極材料塗布液の吐出量は、コーターの外部にある給液設備により供給され、基材シートに塗布される量は、給液設備が送り出す供給量と基材シートの搬送速度の設定値により決定される。従って、塗布量の精度は給液設備の定量ポンプの精度に依存する。定量ポンプの精度は1cc/分以下の誤差で管理されるものであることが好ましい。本発明の塗布方式は、ブレードを有するドクターブレード方式とは先に述べた点で異なる。
スロット出口は、走行する基材2と間隔を保つように設置されており、スロット出口より吐出された電極材料塗布液はリップと基材2の間にビードを形成しつつ基材2上に層状に塗布される。
【0007】
ビードを安定に形成するために、本発明のコーターは減圧室19を有することが好ましい。減圧室は図1の断面図に例示した様に、側面に減圧ポンプ20につながる吸引部を有し、常圧に対する減圧量は水柱で1mm以上,150mm以下である。減圧量が150mm水柱を越えると、塗布の均一性が損なわれたり、減圧室内に塗布液が逆流したりするため好ましくない。
【0008】
基材シートは、正極及び負極の支持体即ち集電体であり、材質として、正極ではアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金が用いられ、負極では銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金が用いられる。形態としては、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金網であり、正極にはアルミニウム箔、負極には銅箔を用いるのが特に好ましい。更に、非導電性のポリマーフィルムや紙等の表面を上記の金属を蒸着したり炭素の含有層を塗設して導電性を持たせたシートを用いてもよい。これらの基材シートの厚みは5μm以上、50μm以下が好ましい。
基材シートの搬送速度は0.5m/分以上50m/分以下が好ましく、2m/分以上30m/分以下が特に好ましい。
本発明においては、基材シートの厚みに対して、後に説明するように電極材料層の層塗布量が最大で1000cc/m2 、乾燥膜厚で600μmにも達するため塗布の不均一があると電極全体が平滑なものができず、搬送時にひずみによる切断等の故障を起こしやすく、本発明の高精度の塗布方式が最も適している。
【0009】
本発明において、塗布層には活物質含有層と活物質非含有層とがあり、活物質含有層は導電性基材シートの片面に10μm以上300μm以下の乾燥膜厚になるように塗布することが好ましい。活物質非含有層は同様に1μmから50μmの範囲の乾燥膜厚になるように塗布することが好ましい。活物質非含有層は2層で構成されていると特に好ましい。
活物質含有層と非含有層の塗布量の総量は、基材シート片面1m2 あたり、60cc以上1000cc以下が好ましく、それぞれの層のダイは2cc以上500cc以下の塗布液を塗出することが好ましい。
【0010】
活物質含有層の固形分の濃度は、20重量%以上80重量%以下が好ましく、30重量%以上75重量%以下が特に好ましい。活物質非含有層の固形分の濃度は、3重量%以上70重量%以下が好ましく、5重量%以上60重量%以下が特に好ましい。
【0011】
前記エクストルージョンダイによって塗布される電極材料塗布液の粘度は、HAAKE社製、VT550型、センサーMV−DINによる測定で、25℃、剪断速度100sec−1で1mPa(ミリパスカル)〜3000mPaの範囲がよく、好ましくは10mPa〜2000mPaがよい。電極材料塗布液の粘度が3000mPaを越えて高くなるとスジが発生し易くなる。また、電極材料塗布液の粘度が1mPaよりも低くなるとスジやムラが発生し易くなる。
【0012】
また、本発明にはスライドコーターを用いることができる。スライドコーターは図2に示すよう液溜り10、11、12、スロット7、8、9、スライド部16、17、18を有する。電極材料塗布液はこの液溜10、11、12にスライドコーター外部に設けられた給液設備によりそれぞれ定量供給され、更に連結したスロットを経て、スロット出口より吐出される。スロット7の出口より吐出した電極材料塗布液はスライド部16を液膜を形成しながら流下していく。スライド部15を流下した液膜は、スロット8より吐出された液膜の上に重なってスロット8より吐出された電極材料塗布液と層状の液膜を形成しながらスライド部17を流下していく。スライド部17を流下した層状の液膜はスロット9の出口部でスロット9より吐出される電極材料の上に重なりさらにスライド部18を流下していく。スライド部18の端部はコーティングローラー1に巻回しながら搬送される基材2と間隔を保つように設置されており、スライド部18を層状に流下してきた電極材料塗布液はスライド部端部と基材2の間にビードを形成しながら基材2に塗布される。
スライドコーターで用いる粘度は前記測定方法で0.1mPa〜500mPaが好ましい。電極材料塗布液の粘度が500mPaよりも大きくなると幅方向に帯状のムラ(段ムラ)が発生するようになる。また、電極材料塗布液の粘度が0.1mPaより低くなると、スジやムラが発生したり、隣接する上側の層と粘度差が大きい場合には上側の層の一部がスライド部の端部側に戻り所望の厚みに塗布することができなくなる。
【0013】
本発明では、エクストルージョンダイとスライドコーターの組み合わされたコーターを使用することができる。図3にエクストルージョンダイとスライドコーターの組合されたコーターを示したが、これに限定されるものではない。
電極材料塗布液はスロット8、9から吐出され連続的に搬送される基材2とビードを形成しながら基材2上に塗布される。スロット7より吐出された電極材料はスライド部16上で液膜を形成しながら流下しスライド部16の端部でエクストルージョンダイの部分より吐出された電極材料で形成されたビードの上に層状に重なりながら塗布され多層膜が基材2上に形成される。
電極材料塗布液の粘度はエクストルージョンダイの部分ではエクストルージョンダイでの塗布液粘度制約に従い、スライドコーター部ではスライドコーターでの粘度制約に従う。
【0014】
本発明において、活物質は電極反応を行う物質であり、従来知られている物質である。リチウム二次電池では、代表例としては、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、負極活物質(これらは活物質保持材料、活物質前駆体或いは単に負極材料と呼ばれることもある)として黒鉛等の炭素材料、錫等の複合酸化物を挙げることができる。これらの活物質は公知であり、特開平7−288123号、同8−130011号、同8−130036号、同8−236158号公開公報等に記載されている。
本発明において、活物質含有層とは、前記の活物質を含有する層であり、活物質非含有層とは前記の活物質を有さない層である。活物質非含有層は様々な目的に使用され、その目的によって層の配置位置や膜厚が異なる。例えば、活物質含有層の基材シートとの密着や導電性を改良する目的の下塗り層の場合は、基材シートと活物質含有層の間に設けられ、目的に応じて密着改良用の結着剤や導電材の組成配合量が決められる。保護層は、活物質含有層を物理的或いは化学的に保護するもので、活物質含有層の外側に設けられる。保護層は、活物質含有層の性質により組成の異なる複数層からなる場合もある。下塗り層や保護層の他に、複数の活物質層の中間に設けられる層等もある。活物質非含有層は、本来的には電池容量を減ずるものであるから、できるだけ薄いことが望ましい。
従って、本発明の電極シートの典型的な形態は、極薄い金属の箔の基材シート上に基材シートと同等から数倍の乾燥厚みの活物質含有層と、薄い活物質非含有層とが両面に塗布される形態である。塗布液を形成する材料については前記の公開公報に記載されている。
【0015】
【実施例】
以下に実施例をあげて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明の主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
〔正極1〕正極活物質としてLiCoO2を61重量部、導電剤としてアセチレンブラック2重量部、カルボキシメチルセルロース(1.2%溶液)24重量部、さらに結着剤として日本ゼオン製のNipo1820B(55%溶液)2重量部を加え、水12重量部を溶媒として混練、分散し、正極電極材料塗布液のスラリーを調整した。また、保護層としてアルミナ32重量部、カルボキシルメチルセルロース(2%溶液)21重量部、界面活性剤(10%溶液)1重量部、水46重量部を混合分散した。第一層(下層)に正極電極材料塗布液、第二層(上層)に保護層塗布液をエクストルージョンダイを用いて塗布した。塗布液の粘度は正極材料が610mPa、保護層塗布液が95mPa、塗布量は第一層330cc/m2、第二層61cc/m2であった。
〔正極2〕正極電極材料塗布液は正極1と同様に調整した。また、保護層としてアルミナ32重量部、カルボキシメチルセルロース(2%溶液)21重量部、PVDF2重量部、界面活性剤(10%溶液)1重量部、水44重量部を混合分散した。第一層(下層)に正極電極材料塗布液、第二層(上層)に保護層塗布液をエクストルージョンダイを用いて塗布した。塗布液の粘度は正極材料が610mPa、保護層塗布液が150mPa、塗布量は第一層330cc/m2、第二層61cc/m2であった。
〔正極3〕正極電極材料塗布液は正極1と同様に調整した。また、保護層として酸化ジルコニウム32重量部、カルボキシメチルセルロース(2%溶液)21重量部、界面活性剤(10%溶液)1重量部、水46重量部を混合分散した。第一層(下層)に正極電極材料塗布液、第二層(上層)に保護層塗布液をエクストルージョンダイを用いて塗布した。塗布液の粘度は正極材料が610mPa、保護層塗布液が90mPa、塗布量は第一層330cc/m2、第二層61cc/m2であった。
〔正極4〕正極電極材料塗布液は正極1と同様に調整した。また、保護層として酸化チタン32重量部、カルボキシメチルセルロース(2%溶液)21重量部、界面活性剤(10%溶液)1重量部、水46重量部を混合分散した。第一層(下層)に正極電極材料塗布液、第二層(上層)に保護層塗布液をエクストルージョンダイを用いて塗布した。塗布液の粘度は正極材料が610mPa、保護層塗布液が95mPa、塗布量は第一層330cc/m2、第二層61cc/m2であった。
〔正極5〕正極電極材料塗布液は正極1と同様に調整した。中間層としてアルミナ36重量部、ケッチェンブラック1重量部、CMC(2%溶液)36重量部、水27重量部を加え混合分散した。図3に示したようなエクストルージョンダイ(第一層、第二層)とスライドコーター(第三層(最上層))の組み合わされたコーターを用いて三層を同時塗布した。第一層、第三層には正極電極材料塗布液を供給し、第二層には中間層塗布液を供給した。第三層の正極材料塗布液にはさらに1重量部の界面活性剤(10%溶液)を加えた。塗布液粘度、塗布量はそれぞれ、第一層610mPa、110cc/m2、第二層430mPa、73cc/m2、第三層500mPa、220cc/m2であった。
〔正極6〕正極5と同様に正極電極材料塗布液と保護層塗布液を調整した。中間層塗布液はさらに水を加え粘度を20mPaにした。正極5と同様に三層を同時に塗布した。ただし、第二層は水で希釈したため乾燥後の厚みは正極5より薄くなった。
【0016】
〔比較正極1〕正極1と同様に正極電極材料と保護層塗布液を調整した。正極電極材料塗布液を塗布量330cc/m2で塗布し乾燥後巻き取って再び送り出し保護層を61cc/m2塗布量で塗布した。
〔比較正極2〕正極5と同様に正極電極材料塗布液と中間層塗布液を調整した。中間層塗布液はさらに水を加え粘度を0.5mPaにした。正極5と同様に三層を同時に塗布した。但し、第二層は水で希釈したため乾燥後の厚みは正極5より薄くなった。
〔比較正極3〕正極5と同様に正極電極材料塗布液と中間層塗布液を調整した。第三層用の正極電極材料塗布液は予め加水量を減らしておき界面活性剤を加えた後で粘度を800mPaとした。正極5と同様な方法で塗布し、塗布量も正極5と同じとした。
【0017】
〔負極1〕
負極活物質として錫を含む複合酸化物SnB0.5 Al0.4 P0.5 Cs0.1 O3.65を45重量部、導電剤としてグラファイト7重量部、カルボキシメチルセルロース(1.2%溶液)22重量部、さらに結着剤としてPVDF2重量部を加え、水24重量部を溶媒として混練、分散し、負極電極材料塗布液のスラリーを調製した。ついで、保護層用の2種のスラリーを作った。第1保護層用としては、アルミナ12重量部、カルボキシルメチルセルロース(2%溶液)40重量部、グラファイト1重量部、水47重量部を混合分散した。最上層となる第2保護層としては、アルミナ6重量部、カルボキシルメチルセルロース(2%溶液)40重量部、グラファイト3重量部、界面活性剤(10%溶液)1重量部、水50重量部を混合分散した。図1に示したようなエクストルージョンダイを用いて塗布した。第一層(最下層)に負極電極材料塗布液、第二層に第1保護層塗布液、最上層となる第三層には第二保護層塗布液を定量ポンプにて供給した。塗布液の粘度は負極電極材料塗布液が280mPa、第1保護層塗布液が130mPa、第2保護層塗布液が130mPa、塗布量は第一層120cc/m2 、第二層100cc/m2 、第三層20cc/m2 、であった。
【0018】
〔負極2〕
負極電極材料塗布液、第2保護層塗布液は負極1と同様に調整した。第1保護層としては、アルミナ14重量部、カルボキシルメチルセルロース(2%溶液)46重量部、グラファイト2重量部、水38重量部を混合分散した。図3に示したようなエクストルージョンダイで最下層の第一層と第二層を、組み合わされたスライドコーターで第三層を塗布した。第一層(最下層)に負極電極材料塗布液、第二層に第1保護層塗布液、最上層となる第三層には第二保護層塗布液を定量ポンプにて供給した。塗布液の粘度は負極電極材料塗布液が280mPa、第1保護層塗布液が220mPa、第2保護層塗布液が130mPa、塗布量は第一層120cc/m2 、第二層100cc/m2 、第三層20cc/m2 、であった。
【0019】
〔負極3〕
負極2の第1保護層のアルミナを酸化チタンに変更した以外は負極2と同様にして、負極2とほぼ同様な結果を得た。
〔比較負極1〕
負極1の負極電極材料塗布液を塗布量120cc/m2 で塗布し乾燥後巻き取って再び送り出し、第二層として第1保護層塗布液を塗布量100cc/m2 で塗布乾燥し巻き取った。その後、再び送り出し、第三層として第2保護層塗布液を70cc/m2 で塗布乾燥した。但し、第2保護層塗布液は水で3.5倍に希釈して用いた。
上記負極および正極のそれぞれ端部にそれぞれニッケル、アルミニウムのリード板をスポット溶接した後、露点−40℃以下の乾燥空気中で250℃1時間脱水乾燥した。
更に、脱水乾燥済み正極、微多孔性ポリエチレンンフィルムセパレーター、脱水乾燥済み負極およびセパレーターの順で積層し、これを巻き込み機で渦巻き状に巻回した。
【0020】
この巻回体を負極端子を兼ねる、ニッケルメッキを施した鉄製の有底円筒型電池缶に収納した。1リットル当たりLiPF6とLiBF4を各々0.9,0.1mol含有し、溶媒がエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルプロピオネートの2:4:3:1の容量比の混合液からなる電解質を電池缶に注入した。正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて円筒型電池を作製した。なお、正極端子は正極と、電池缶は負極とあらかじめリード端子により接続した。
上記正極及び負極を用い、表1に示した組み合わせで電池を作製した。作成した円筒型電池は充電終止電圧4.1V、放電電圧2.8Vでサイクル性の試験を行った。また、それぞれの電池を各100個づつ作り、内部短絡している個数を調べ表1に記載した。更に、正極5、6、比較正極2、3については塗布状況の観察および乾燥後の面質の確認を行い、表2に示した。
【0021】
【表1】
【0022】
表1の結果から本発明が内部短絡の防止に著しい効果のあることがわかる。
【0023】
【表2】
【0024】
比較正極1で作成した正極電極シートの保護層(上層)は電極合剤層の空隙より発生する泡のため穴が多発した。三層を有する構成の電極では、同時塗布をしても、装置の塗布液粘度制約に従わない比較正極2、3では良好な塗布面が得られなかったのに対し、正極5、6では問題ない面質を得ることがことができた。また、負極においても同様な効果が得られた。
【0025】
【発明の効果】
本発明の製造方法によって得られる電極シートを用いた場合、電池の基本特性、例えば安全性の向上のために電極を多層構成にする必要が生じても同時に塗布することが可能となり、電極構成の必要層数が増えても電極完成時間を大幅に延長することなく効率的な塗布が可能となった。しかも、塗布欠陥の発生を抑制することができ電池性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いたエクストルージョンダイを示す。
【図2】本発明に用いたスライドコーターを示す。
【図3】本発明に用いたエクストルージョンダイとスライドコーターを組み合わせたコーターを示す。
【符号の説明】
1 コーティングローラー
2 基材
3 リップ
4 リップ
5 リップ
6 リップ
7 スロット
8 スロット
9 スロット
10 液溜り
11 液溜り
12 液溜り
13 エクストルージョンダイ
14 スライドコーター
15 エクストルージョンダイとスライドコーターを組み合わせたコーター
16 スライド部
17 スライド部
18 スライド部
19 減圧室
20 減圧ポンプ
Claims (8)
- 非水二次電池に使用する多層構成電極シートの電極材料塗布において、同時に2層以上の塗布を行うことができる手段と、該手段が減圧室を有し、該減圧室内の圧力が、常圧より1mm水柱以上150mm水柱以下の減圧であり、電極材料塗布液の粘度が該手段の塗布液粘度制約に従うことを特徴とする多層構成電極シートの製造方法。
- 同時に2層以上の塗布を行うことができる手段が、複数スロットで構成されたエクストールジョンダイであり、該塗布液粘度が1mPa以上3000mPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層構成電極シートの製造方法。
- 同時に2層以上の塗布を行うことができる手段が、複数スロットで構成されたスライドコーターであり、該塗布液粘度が0.1mPa以上500mPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層構成電極シートの製造方法。
- 同時に2層以上の塗布を行うことができる手段が、複数スロットで構成されたエクストールジョンダイとスライドコーターを有し、エクストルージョンダイでは該塗布液粘度が1mPa以上3000mPa以下であり、スライドコーターでは該塗布液粘度が0.1mPa以上500mPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層構成電極シートの製造方法。
- 同時に塗布される2層以上の塗布層の少なくとも1層が活物質含有層であり、少なくとも1層が活物質非含有層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の多層構成電極シートの製造方法。
- 同時に塗布される電極材料層が3層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の多層構成電極シートの製造方法。
- 同時に塗布される3層の電極材料層が、2層用のエクストルージョンダイと1層用のスライドコーターとの組み合わせにより塗布されることを特徴とする請求項6に記載の多層構成電極シートの製造方法。
- 非水二次電池が、リチウム二次電池である請求項1から7のいずれか1項に記載の多層構成電極シートの製造方法。
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