JP3622082B2 - 建具の改修方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、引き違い窓などの開き窓、引き違い戸などの引戸、玄関ドアなどのドア等の建物躯体の開口部に取付けてある既存の金属建具を断熱建具に改修する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
開き窓、引戸、ドア等の枠体に障子戸・扉などを開閉自在に装着した建具は、長い年月が経過することで老朽化し、見栄えが悪くなると共に、開閉操作がやりずらくなったり等の不具合が発生する。
このために、既存の建具を新設の建具に改修する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、既存の建具の枠体から障子戸・扉などを取り外して枠体を建物躯体の開口部に残存させる。
この残存した既存枠体の上に新設の建具の枠体(以下新設枠体という)をかぶせて取付け、その新設枠体に障子戸・扉などを装着して新設の建具に改修するかぶせ工法と呼ばれる改修方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
集合住宅などに取付けてある建具は、スチール、アルミ等の金属枠体に障子戸、扉などを装着した金属建具が多い。
この金属建具は、金属枠体の室外側部と室内側部とに熱が伝わり易いから、室内と室外とに金属枠体を通して熱が伝わり易く、室内冷暖房効率が悪い。
また、室外の冷気が金属枠体の室内側部に伝わり、その金属枠体の室内側部に結露が生じる。
【0005】
このことを解消するために、室内側部と室外側部とに熱が伝わり難い断熱枠体に障子戸・扉などを装着した断熱建具が提案されている。
例えば、アルミ押出形材の室内側部材と室外側部材を断熱材で連結した断熱形材を枠組みした断熱枠体に障子戸・扉を開閉自在に装着した断熱建具が提案されている。
【0006】
この断熱建具であれば、断熱枠体を通して室内と室外に熱が伝わり難いので、室内冷暖房効率が向上する。
また、室外の冷気が断熱枠体の室内側部に伝わり難く、断熱枠体の室内側部に結露が生じないようにできる。
【0007】
前述のことから、集合住宅などに取付けてある既存の金属建具を新設の断熱建具に改修することが考えられる。
しかしながら、前述した従来の改修方法により既存の金属建具を新設の断熱建具に改修すると、建物躯体の開口部に金属枠体が残存する。
この残存した既設の金属枠体を通して室外の冷気が新設の断熱枠体の室内側部に伝わり、その室内側部に結露が生じる。
このために、断熱枠体の室内側部に結露が生じないという断熱建具の利点が損なわれてしまう。
【0008】
本発明は、前述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、室外の冷気が残存した既存の金属枠体を通して新設の断熱枠体の室内側部に伝わり難く、新設の断熱枠体の室内側部に結露が生じることがない建具の改修方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、建物躯体の開口部に取付けてある既存の金属建具を断熱建具に改修する方法であって、
前記既存の金属建具の金属枠体を建物躯体の開口部に残存させ、
この残存した既存の金属枠体における室内外側方向中間部に、穴を長手方向に間隔を置いて複数形成、又は長手方向全長に連続して形成することで室内側部と室外側部とに熱が伝わり難くし、
新設の断熱建具の断熱枠体を、前記建物躯体の開口部に取付けることを特徴とする建具の改修方法である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において前記穴に断熱材を注入充填又は、断熱材の成形品を嵌め込んだ建具の改修方法である。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において前記既存の金属枠体の穴よりも室内寄りの室内側部と穴よりも室外寄りの室外側部とに、金属の室内側部材と金属の室外側部材を断熱材で連結した下地材の室内側部材と室外側部材をそれぞれ連結した建具の改修方法である。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において前記新設の断熱枠体の室内側部を、前記下地材の室内側部材に固着した建具の改修方法である
【0013】
第5の発明は、第1〜第4いずれか1つの発明において前記既存の金属枠体の上枠、下枠、縦枠の各内向突片を切断して除去し、この後に穴を形成するようにした建具の改修方法である。
【0014】
【作 用】
第1の発明によれば、室外の冷気が、残存した既存の金属枠体を通して新設の断熱枠体の室内側部に伝わり難く、新設の断熱枠体の室内側部に結露が生じない。
よって、既存の金属建具を断熱建具に改修することが可能である。
【0015】
また、穴加工することで既存の金属枠体を、その室内側部と室外側部とに熱が伝わり難くできる。
【0016】
第2の発明によれば、既存の金属枠体の穴加工による強度低下を補償できる。
【0017】
第3の発明によれば、既存の金属枠体を下地材で補強しているから、新設の断熱枠体が強固に取付けできる。
【0018】
第4の発明によれば、既存の金属枠体の室内側部に伝わった室外の冷気が新設の断熱枠体の室内側部に直接的に伝わることがない。
新設の断熱枠体の室内側部が下地材の室内側部材に固着されているので、その断熱枠体を強固に取付けできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1と図2に示すように、建物躯体1、例えばコンクリート又はPC板の開口部2に金属建具、例えば金属引き違い窓が取付けてある。この金属引き違い窓は金属枠体3に図示しない障子戸を引き違いに装着してある。
前記金属枠体3を形成する上枠4、下枠5、左右の縦枠6は、室内外側方向に連続した枠本体7と、この枠本体7の内面7aに一体的に設けた複数の内向突片8を有するアルミ押出形材である。スチールであっても良い。
前記枠本体7の外面寄り部にブラケット9を係止して取付け、このブラケット9がアンカー10に溶接等で固着されている。
【0020】
前記既存の金属引き違い窓を新設の断熱引き違い窓に改修する手順を説明する。
金属枠体3から障子戸を取り外して金属枠体3を残存させる。
前述のように金属枠体3を残存させることで、その金属枠体3を建物躯体1から取り外す手間がはぶけ、改修作業効率が向上する。
また、建物躯体1がコンクリート、PC板等の場合には残存した既存の金属枠体3に、後述するように下地材又は新設の断熱枠体をビス止めできるから、建物躯体1がコンクリート、PC板等のビスを直接的に螺合することが難しい場合に有利である。
【0021】
前記残存した既存の金属枠体3における上枠4、下枠5、縦枠6の各内向突片8の図1、図2に斜線で示す部分を切断して除去する。
前記上枠4、下枠5、縦枠6を、室内側部と室外側部とに熱が伝わり難くするために、各枠の枠本体7における室内外側方向中間で長手方向に間隔を置いた複数部分に穴11をそれぞれ加工する。この穴11は室内外側方向に短かく、長手方向に長いスリット状の穴である。
このスリット状の穴11はグラインダーやセーバーソー、プラズマ切断機等で加工する。
すなわち、前述の改修作業は室内に人が居住している状態で実施されることが多く、火炎や火花が発生しない加工方法で加工することが好ましい。
また、上枠4、下枠5、縦枠6の内向突片8が切断して除去されているので、前述の穴11の加工作業を容易に実施できる。
【0022】
これにより、上枠4、下枠5、縦枠6の室内側部と室外側部の連続する面積が減少し、残存した既存の金属枠体3の室外側部と室内側部とに亘って熱が伝わり難くなる。
【0023】
前記スリット状の穴11にウレタン系樹脂などの断熱材11aを注入充填したり、樹脂、ゴムなどの断熱材の成形品を嵌め込んでスリット状の穴11による各枠の強度低下を補償するようにしても良い。
【0024】
図3、図4に示すように、各枠の枠本体7に下地材12をそれぞれ取付けて穴11を形成した各枠を補強する。この四周の下地材12が新設の断熱引き違い窓の取付用開口部で、前記上枠4、下枠5、縦枠6の内向突片8が切断して除去してあるので、その取付用開口部が大きい。
この下地材12は金属、例えばアルミ押出形材の室内側部材13とアルミ押出形材の室外側部材14を断熱材15で連結した断熱形材である。
前記下地材12は各枠と略同一長さの長尺であるが、短尺の下地材12を各枠の長手方向に間隔を置いて複数取付けても良い。
前記下地材12の室内側部材13が枠本体7のスリット状の穴11よりも室内寄りの室内側部にビス16で取付けられる。
前記下地材12の室外側部材14が枠本体7のスリット状の穴11よりも室外寄りの室外側部にビス17で取付けられる。
これによって、各枠本体7(つまり、上枠4、下枠5、縦枠6)を補強すると共に、その室内側部と室外側部に下地材12を通して熱が伝わらないようにする。
【0025】
この後に新設の引き違い窓の断熱枠体20を取付ける。
前記新設の断熱枠体20は上枠21、下枠22、左右の縦枠23を枠組みしたもので、その各枠は、金属、例えばアルミ押出形材の室内側部材24と金属、例えばアルミ押出形材の室外側部材25を断熱材26で連結した断熱形材である。
前記各室内側部材24を下地材12の室内側部材13に、木、樹脂等の断熱材のスペーサ27を介してビス28で連結する。なお、下枠22の室内側部材24は下地材12の室内側部材13に直接ビス止めする。各室外側部材25を下地材12の室外側部材14に当接し、新設の断熱枠体20を既存の金属枠体3の上に下地材12を介してかぶせるようにして取付ける。
前記上枠21、縦枠23における室外側部材25と下地材12の室外側部材14との当接部を水密材29で水密し、その当接部から雨水等が浸入しないようにする。
【0026】
このようにすることで、室外の冷気は既存の金属枠体3の室内側部に伝わり難いから、室外の冷気が既存の金属枠体3を通って断熱枠体20の室内側部(室内側部材24)に伝わり難い。
しかも、室外の冷気は各枠の室外側部材25と下地材12の室外側部材14に伝わるが、これら室外側部材25,14に伝わった室外の冷気は下地材12の室内側部材13、既存の金属枠体3の室外側部に伝わり難い。
よって、断熱枠体20の室内側部(室内側部材24)に室外の冷気がより一層伝わり難い。
【0027】
また、新設の断熱枠体20が下地材12を介して既存の金属枠体3に強固に取付けられる。
前記スリット状の穴11と下地材12の断熱材15と新設の断熱枠体20の各枠の断熱材26は室内外方向に略同一位置である。
これにより、輻射熱等で室内外部材と室外側部材とに熱が伝わり難い。
【0028】
前記残存した既存の金属枠体3の残存した部分の室内側部と新設の断熱枠体20の各枠の室内側部材24とに亘って内部額縁30をそれぞれ取付けて室内側部の見栄えを良くする。
この内部額縁30は表面(室内に露出する面)に熱が伝わり難く、断熱性を有するものである。
例えば、アルミ押出形材の内部額縁30の表面に樹脂カバー31を嵌め込んで取付ける。アルミ押出形材の内部額縁30の裏面にウレタン等の断熱樹脂を吹きつけ、又は裏面に成形した断熱材を設ける。木材、合成木で内部額縁30を作製する。
【0029】
前述のスリット状の穴11を枠本体7の室内外側方向中間部に長手方向に連続して形成(つまり、切断)することで、その室内側部と室外側部に熱が伝わらないようにしても良い。
【0030】
前記新設の断熱枠体20は、アルミ押出形材の室外側部材の室内側部に樹脂の室内側部材を連結した複合枠材を枠組みしたものでも良い。
例えば、図5と図6に示すように、上枠21、下枠22、縦枠23をアルミ押出形材の室外側部材40の室内側部に樹脂の室内側部材41を連結したアルミと樹脂の複合枠材とする。
前記室外側部材40は、アルミ押出形材の室外側部40aと室内側部40bを断熱材40cで連結した断熱形材であるが、アルミ押出形材の一体形状でも良い。
この場合の改修方法は前述の改修方法と同様である。
【0031】
前述の改修方法は引き違い窓に限るものではなく、回転窓、すべり出し窓などの開き窓、引き違い戸などの引戸、玄関ドアなどのドアにも適用できる。
例えば、図7と図8に示すように、既存の玄関ドアの金属枠体3から扉を取り外し、その上枠4、下枠5、縦枠6の室内外側方向中間部に、前述と同様にスリット状の穴11を形成して室外側部と室内側部に熱が伝わり難くする。
各枠に下地材12を前述と同様にビス16,17でそれぞれ取付ける。
この後に、新設の玄関ドアの断熱枠体20を前述と同様に取付け、最後に扉を取付ける。
図7、図8に示す建物躯体1は柱等木製であるが、コンクリート、PC板等の場合にも同様である。
【0032】
前記断熱枠体20の室内側部(上枠21、下枠22、縦枠23の室内側部材24)を、下地材12の室内側部材13ではなく、残存した既設の金属枠体3における穴11よりも室内寄りの室内側部にビス等で固着しても良い。
【0033】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、室外の冷気が、残存した既存の金属枠体を通して新設の断熱枠体の室内側部に伝わり難く、新設の断熱枠体の室内側部に結露が生じない。
よって、既存の金属建具を断熱建具に改修することが可能である。
【0034】
また、穴加工することで既存の金属枠体を、その室内側部と室外側部とに熱が伝わり難くできる。
【0035】
請求項2に係る発明によれば、既存の金属枠体の穴加工による強度低下を補償できる。
【0036】
請求項3に係る発明によれば、既存の金属枠体を下地材で補強しているから、新設の断熱枠体が強固に取付けできる。
【0037】
請求項4に係る発明によれば、既存の金属枠体の室内側部に伝わった室外の冷気が新設の断熱枠体の室内側部に直接的に伝わることがない。
新設の断熱枠体の室内側部が下地材の室内側部材に固着されているので、その断熱枠体を強固に取付けできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】既存の金属枠体の縦断面図である。
【図2】既存の金属枠体の横断面図である。
【図3】断熱形材を用いた断熱枠体を取付けた状態の縦断面図である。
【図4】断熱形材を用いた断熱枠体を取付けた状態の横断面図である。
【図5】複合枠材を用いた断熱枠体を取付けた状態の縦断面図である。
【図6】複合枠材を用いた断熱枠体を取付けた状態の横断面図である。
【図7】玄関ドアの実施の形態を示す縦断面図である。
【図8】玄関ドアの実施の形態を示す横断面図である。
【符号の説明】
1…建物躯体
2…開口部
3…金属枠体
4…上枠
5…下枠
6…縦枠
7…枠本体
11…穴
12…下地材
13…室内側部材
14…室外側部材
15…断熱材
20…断熱枠体
21…上枠
22…下枠
23…縦枠
24…室内側部材
25…室外側部材
26…断熱材
40…室外側部材
41…室内側部材

Claims (5)

  1. 建物躯体の開口部に取付けてある既存の金属建具を断熱建具に改修する方法であって、
    前記既存の金属建具の金属枠体を建物躯体の開口部に残存させ、
    この残存した既存の金属枠体における室内外側方向中間部に、穴を長手方向に間隔を置いて複数形成、又は長手方向全長に連続して形成することで室内側部と室外側部とに熱が伝わり難くし、
    新設の断熱建具の断熱枠体を、前記建物躯体の開口部に取付けることを特徴とする建具の改修方法。
  2. 前記穴に断熱材を注入充填又は、断熱材の成形品を嵌め込んだ請求項1記載の建具の改修方法。
  3. 前記既存の金属枠体の穴よりも室内寄りの室内側部と穴よりも室外寄りの室外側部とに、金属の室内側部材と金属の室外側部材を断熱材で連結した下地材の室内側部材と室外側部材をそれぞれ連結した請求項1又は2記載の建具の改修方法。
  4. 前記新設の断熱枠体の室内側部を、前記下地材の室内側部材に固着した請求項3記載の建具の改修方法。
  5. 前記既存の金属枠体の上枠、下枠、縦枠の各内向突片を切断して除去し、この後に穴を形成するようにした請求項1〜4いずれか1項記載の建具の改修方法。
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