JP3621870B2 - 調理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱されている調理容器の中にある液体の沸騰が検知される調理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスコンロ等の調理装置において、鍋等の調理容器がバーナ等の加熱手段により加熱されると、調理容器に入っているスープ等の液体は徐々に昇温して沸騰する。バーナの火力が強くなくても調理容器の液体の沸騰状態は維持されるので、沸騰状態を検知した上でバーナの火力を減少制御することが省エネの観点から好ましい。そこで、例えば特開平10−9576号公報に開示されているような調理容器の中の液体の沸騰状態が判定される調理装置が提案されている。この調理装置は、沸騰状態では液体の温度が沸点にとどまるので、調理容器の温度もほぼ一定温度にとどまるという性質を利用している。そして、温度センサにより測定される調理容器の温度が一定時間にわたり一定であった場合に沸騰状態であると判定される。
【0003】
しかし、調理装置周辺の風の影響によりバーナの炎が揺らぎ、この炎が温度センサに対して近づいたり遠ざかったりして、調理容器の液体の温度に関係なく温度センサの温度が変動することがある。すなわち、調理容器の中の液体が沸騰しているにもかかわらず、温度センサの測定温度が急上昇して一定温度にとどまらないため、まだ沸騰状態でないと判断される場合がある。また、調理容器の中の液体が沸騰していないにもかかわらず温度センサの測定温度が一定時間にわたり一定温度に維持され、誤って沸騰状態と判断される場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかる背景に鑑みて、本発明は調理容器の測定温度が加熱手段等の外因から影響を受けた場合でも、調理容器の中の液体の沸騰状態を正確に判定し得る調理装置を提供することを解決課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の調理装置は、調理容器を加熱する加熱手段と、該調理容器の温度を測定する温度センサと、該調理容器の温度が所定値だけ変化するのに要すると予測される予測時間を設定する予測時間設定手段と、該予測時間設定手段により設定された予測時間を反復計測可能なタイマと、該温度センサによる所定時の測定温度を初期の補正温度とし、該タイマが該予測時間の計測を繰り返すとき、該測定温度が該補正温度より高温の場合は該補正温度を該所定値だけ高温とし、等温の場合は該補正温度をそのままに維持し、低温の場合は該補正温度を該所定値だけ低温とする補正処理を行う測定温度補正手段と、該補正温度が一の温度と等温になる累積時間を表す累積値を測定する累積値測定手段と、該累積値測定手段により測定された累積値が沸騰予測値以上となったとき、該調理容器内の液体が沸騰状態であると判定する沸騰判定手段とを備えていることを特徴とする。
【0006】
前記構成の調理装置によれば、加熱手段に風等の影響が無い場合は補正温度は温度センサの測定温度と略同様の振る舞いを示す。従って、沸騰状態では温度センサの測定温度とともに補正温度が一定時間にわたり一の温度と等温になる。これにより累積値測定手段により測定される累積値が徐々に増加し、この累積値が沸騰予測値以上となったとき沸騰状態判定手段により沸騰状態と判定される。
【0007】
ここで、沸騰状態でないにもかかわらず加熱手段に風等の影響によって温度センサの測定温度が補正温度より所定値以上高温において一定時間にわたり等温になった場合を考える。この場合、測定温度が補正温度より所定値以上高温である限り、予測時間ごとに補正温度が所定値ずつ高温とされて一定値にとどまることはない。従って、一の補正温度における累積値が増加し続けて沸騰予測値以上となることはなく、沸騰状態と誤って判定される事態を防止することができる。
【0008】
前記調理装置において、前記温度センサによる測定温度の上昇傾斜を測定する上昇傾斜測定手段を備え、前記予測時間設定手段は該上昇傾斜測定手段により測定された上昇傾斜に基づいて、前記予測時間を設定することが好ましい。
【0009】
調理容器の温度が所定値だけ上昇するのに要すると予測される予測時間は、加熱手段により加熱される調理容器の温度の上昇傾斜に応じて長短が定まる。すなわち、調理容器の温度上昇が緩やかならば、将来的にその温度はゆっくりと上昇すると考えられるので予測時間は長めに設定される。一方、調理容器の温度上昇が急激ならば、将来的にその温度は速く上昇すると考えられるので予測時間は短めに設定される。従って、前記構成の調理装置によれば、上昇傾斜に基づいて予測時間が適切に設定され、予測時間ごとに補正処理が施される補正温度は実際の調理容器の温度を的確に反映したものとなる。
【0010】
前記上昇傾斜測定手段は、上限温度が徐々に高温にずれた複数の温度域ごとに前記上昇傾斜を測定し、前記予測時間設定手段は、該複数の温度域ごとに測定された上昇傾斜に基づいて予測時間を設定することが好ましい。
【0011】
また、前記測定温度補正手段は、前記所定時の測定温度が前記複数の温度域の上限温度のずれ分ずつ上昇するごとに、該測定温度を前記補正温度に補正し、先の温度域に対して該ずれ分だけ高温の上限温度を有する温度域について設定された前記予測時間に基づいて、前記補正処理を行うことが好ましい。
【0012】
一般に温度センサの測定温度は、調理容器の中の液体の温度変化に対応し、略一様に上昇した後、沸騰状態に近づくにつれ上昇の度合いが鈍くなる。本構成の調理装置によれば、上限温度が徐々に高温となる複数の温度域ごとに小刻みに上昇傾斜が測定されて予測時間が設定され、この予測時間が繰り返して計測されるごとに補正温度が補正される。従って、この補正温度には沸騰状態に近づくにつれ変化する測定温度の振る舞いが正確に反映され、一の補正温度において測定される累積値を沸騰予測値と比較することでさらに正確に沸騰状態を判定することができる。
【0013】
前記測定温度補正手段が行う補正処理において、前記補正温度が連続して前記所定値だけ低温にされる回数が、制限されていることが好ましい。
【0014】
本構成の調理装置によれば、実際には調理容器の温度が上昇しているにもかかわらず、加熱手段の影響により測定温度が下降した場合に補正温度が低下しつづける事態が防止される。このため、補正温度が所定値ずつ低温にされ続けたために再び上昇するまでに時間がかかりすぎ、沸騰状態の判定が遅れる事態を防止することができる。
【0015】
前記測定温度補正手段が行う補正処理は、前記測定温度が前記補正温度と比較して前記所定値より大きい第2所定値以上低温となったとき、該補正温度を該第2所定値以上低温となった該測定温度と等温にする処理を含むことが好ましい。
【0016】
ここで「第2所定値」は測定温度が温度と比較してそれ以上低温の場合、加熱手段の影響ではなく調理容器に低温の調理物や水が入れられたときであると予測されるような値に設定される。従って、本構成の調理装置によれば、補正温度が水等の投入で低下した調理容器の測定温度と等温とされることで、調理容器の中の液体の温度を正確に補正温度に反映させて正確に沸騰状態を判定することができる。
【0017】
前記上昇傾斜測定手段は、前記加熱手段による調理容器の加熱開始後、前記測定温度が一定値まで上昇してから、前記上昇傾斜を測定することが好ましい。
【0018】
一般に、調理容器の温度は加熱開始からある程度時間が経過するまでは上昇傾斜が安定しない。しかるに、本構成の調理装置によれば、測定温度の上昇傾斜が安定するまで十分な高温である一定値まで測定温度が上昇したときに上昇傾斜が測定されるので、この上昇傾斜に基づいて設定される沸騰予測値は沸騰状態における測定温度の動向がより正確に反映される。従って、この沸騰予測値を累積値と比較することで、沸騰状態をより正確に判定することができる。
【0019】
前記累積値測定手段は、累積値を測定するときに前記補正温度が変化するたびに、それまでの累積値をクリアした上で変化後の補正温度について累積値を測定することが好ましい。
【0020】
本構成の調理装置によれば、温度センサの測定温度の変動に伴って補正温度が変動している間は、累積値が継続的にクリアされ、一の補正温度における累積値が沸騰予測値以上とならないので、沸騰状態とは判定されない。そして、沸騰状態と判定されるのは温度センサの測定温度とともに補正温度が安定して調理容器の中の液体が沸騰している可能性が高いときなので、この判定がより正確なものとなる。
【0021】
前記累積値測定手段は、複数の前記補正温度について累積値を求めた上で記憶し、前記沸騰判定手段は、該複数の累積値のうちのいずれかが前記沸騰予測値以上となったとき、沸騰状態と判定することが好ましい。
【0022】
本構成の調理装置によれば、沸騰状態にもかかわらず加熱手段の影響により温度センサの測定温度が変動した場合でも、複数の補正温度における累積値のいずれかが沸騰予測値以上となったか否かに応じて沸騰状態を確実に判定することができる。
【0023】
前記上昇傾斜測定手段が上昇傾斜を測定してから、前記累積値測定手段が累積を開始するまでの待ち時間である沸騰無検知時間を、前記上昇傾斜に基づいて設定する沸騰無検知時間設定手段を備えていることが好ましい。
【0024】
ここで「沸騰無検知時間」は、少なくともその時間が経過するまでは加熱手段による加熱が不十分で調理容器の中の液体が沸騰していないと予測される時間を表す。従って、本構成の調理装置によれば、まだ沸騰していないと予測される時点において累積値の測定が行われて沸騰状態であると誤って判定されるおそれを解消することができる。
【0025】
前記累積値測定手段が累積値の測定を開始してから、前記沸騰判定手段が沸騰状態と判定するまでの制限時間である強制沸騰検知時間を、前記上昇傾斜に基づいて設定する強制沸騰検知時間設定手段を備え、該沸騰判定手段は、該強制沸騰検知時間内に沸騰状態の判定が得られなかったとき、沸騰状態と判定することが好ましい。
【0026】
ここで「強制沸騰検知時間」は、遅くともその時間が経過しているころには加熱手段により十分に加熱されて調理容器の中の液体が沸騰していると予測される時間を表す。従って、本構成の調理装置によれば、実際には沸騰状態であるにもかかわらず、補正温度が激しく変化することで累積値がなかなか増加せずに沸騰状態と判定されない事態を防止することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の調理装置の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本実施形態の調理装置の構成説明図であり、図2は本実施形態の調理装置における時間−測定温度の関係図であり、図3は本実施形態の調理装置における沸騰判定のフローチャートであり、図4は本実施形態の調理装置における補正処理のフローチャートであり、図5は本実施形態の調理装置における沸騰判定の説明図であり、図6は他の実施形態の調理装置における累積値測定の説明図である。
【0028】
図1に示すガスコンロ(調理装置)は、鍋(調理容器)pを加熱するバーナ(加熱手段)1と、鍋pの底に接触して鍋pの温度を測定する温度センサ2と、温度センサ2の測定温度に基づきバーナ1の燃焼を制御等するコントローラ3とを備えている。バーナ1には電磁弁4aを有するガス供給管4よりガスが供給され、コントローラ3は電磁弁4aによりバーナ1へのガス供給量を調節する。また、コントローラ3は、上昇傾斜測定手段5と、沸騰予測値設定手段6と、沸騰無検知時間設定手段7と、強制沸騰検知時間設定手段8と、予測時間設定手段9と、タイマ10と、測定温度補正手段11と、累積値測定手段12と、沸騰判定手段13とを備えている。
【0029】
上昇傾斜測定手段5は、図2を参照して、温度センサ2の測定温度Tが10℃だけ上昇するのに要する平均的な時間である上昇傾斜時間(本発明の「上昇傾斜」)Δtを複数の温度域において測定する。沸騰予測値設定手段6は、沸騰状態において調理容器pの温度が一定にとどまる最小限時間と予測される時間そのものを表す沸騰予測値Jを設定する。沸騰無検知時間設定手段7は、少なくともその時間が経過するまではバーナ1による加熱が不十分で鍋pの中の液体が沸騰していないと予測される時間を表す沸騰無検知時間Fを、上昇傾斜時間Δtに基づいて設定する。沸騰無検知時間Fは、その設定から(図2の点c)、後述の累積値Sの測定が開始されるとき(図2の点d)まで計測される。強制沸騰検知時間設定手段8は、遅くともその時間が経過すればバーナ1により十分に加熱されて鍋pの中の液体が沸騰していると予測される強制沸騰検知時間Iを、上昇傾斜時間Δtに基づいて設定する。強制沸騰検知時間Iは、その設定(図2の点c)から、後述の累積値Sの測定が終了されるとき、又はタイマ10が強制沸騰検知時間Iを計測し終わるとき(図2の点e)まで計測される。予測時間設定手段9は、上昇傾斜Δtに基づき鍋pの温度が1℃(本発明の「所定値」)だけ変化するのに要すると予測される予測時間twを設定する。この予測時間はtwは、後述の累積値Sが測定開始されるとき(図2の点d)から始まり、強制沸騰検知時間Iの経過により強制的に沸騰状態であると判定されるまでの間、反復して計測される。タイマ10は、予測時間twを反復計測可能で、沸騰無検知時間F、強制沸騰検知時間Iを計測する。測定温度補正手段11は、タイマ10が予測時間twの計測を繰り返すとき、測定温度Tが補正温度HTより高温の場合は補正温度HTを1℃だけ高温とし、等温の場合は補正温度HTを等温に維持し、低温の場合は補正温度HTを1℃だけ低温とする補正処理を行う。累積値測定手段12は、補正温度HTが一の温度と等温になる累積時間そのものを表す累積値Sを測定する。沸騰判定手段13は、累積値Sが沸騰予測値J以上となったとき、鍋pの中の液体が沸騰状態であると判定する。
【0030】
前記構成のガスコンロにおける沸騰判定について、図2乃至図5を用いて説明する。まず、沸騰判定の基本的流れについて、図2の時間−測定温度Tの関係図及び図3のフローチャートを用いて説明する。バーナ1が燃焼を開始すると(図2の点a、図3のSTEP1)、鍋pが加熱されて温度センサ2の測定温度Tが徐々に上昇していく。上昇傾斜測定手段5は、加熱開始から測定温度Tが80℃に上昇するまでの間(図2の点a〜b)は何もしないが、測定温度Tが80℃に至ってから100℃となるまでの第1温度域において第1の上昇傾斜時間Δt1 を測定する(図2の点b〜c、図3のSTEP2)。具体的にΔt1 は、温度センサ2の測定温度Tがx℃となった時刻をtx 、Δtx,y ≡ty −tx として次式に従って測定される。
【0031】
上式に表されるようにΔt1 は、測定温度Tが80℃から100℃までの間、5℃ずつ上昇するのに要する4種類の時間の和から、これら4種類の時間の最大値及び最小値を差し引くことで求められる。
【0032】
沸騰予測値設定手段6は、沸騰予測値用のデータテーブルに従い、第1の上昇傾斜時間Δt1 に基づいて沸騰予測値Jを設定する(STEP3)。沸騰無検知時間設定手段7は、沸騰無検知時間用のデータテーブルに従い、第1の上昇傾斜時間Δt1 に基づいて沸騰無検知時間Fを設定する(STEP4)。強制沸騰検知時間設定手段8は、強制沸騰検知時間用のデータテーブルに従い、第1の上昇傾斜時間Δt1 に基づいて強制沸騰検知時間Iを設定する(STEP5)。予測時間設定手段9は、予測時間用のデータテーブルに従い、第1の上昇傾斜時間Δt1 に基づいて鍋pの温度が1℃だけ上昇するのに要すると予測される第1の予測時間tw1 をこの段階での予測時間twとして設定する(STEP6)。
【0033】
続いて、タイマ10が沸騰無検知時間F及び強制沸騰検知時間Iの計測を開始する(図2の点c、図3のSTEP7)。そして、タイマ10が沸騰無検知時間Fを計測し終えたとき(図2の点d、図3のSTEP8でYES)、測定温度補正手段11は補正処理を行う(STEP9)。補正処理については後で詳述するが、その概要は、バーナ1の炎の揺らぎ等の外因により測定温度Tが変動した場合、この変動を補正して鍋pの温度を適切に表すために補正温度HTを設定するものである。
【0034】
累積値測定手段12は、補正温度HTが一定である間(STEP10でNO)、累積値Sを継続的にカウントし(STEP12)、これにより累積値Sが徐々に増加する。一方、累積値測定手段12は、補正温度HTが変動した場合(STEP10でYES)、それまでの累積値Sをクリアした上で(STEP11)、変動後の補正温度における累積値Sのカウントを再開する(STEP12)。
【0035】
沸騰判定手段13は、累積値Sが沸騰予測値J以上になった場合(STEP13でYES)、沸騰状態であると判定する(STEP15)。また、沸騰判定手段13は、累積値Sが沸騰予測値J以上でないときでも(STEP13でNO)、タイマ10が強制沸騰検知時間Iを計測し終えた場合(図2の点e、図3のSTEP14でYES)、沸騰状態であると判定する(STEP15)。
【0036】
また、上昇傾斜測定手段5は、第1温度域(80〜100℃)から下限温度及び上限温度が5(n−1)℃(n=2、3、・・)だけずれた第n温度域(80+5(n−1)℃〜100+5(n−1)℃)における第nの上昇傾斜時間Δtn を、Δt1 と同様の式に従って測定する(STEP16)。例えば、第2の上昇傾斜時間Δt2 は第2温度域(85〜105℃)において測定され、第3の上昇傾斜時間Δt3 tは第3温度域(90〜110℃)において測定される。予測時間設定手段9は、予測時間用のデータテーブルに従い、第nの上昇傾斜時間Δtn に基づいて第nの予測時間twn を設定する(STEP17)。また、予測時間設定手段9は、タイマ10が沸騰無検知時間Fを計測し終えたとき(図2の点d)を基準として、測定温度Tが5(n−1)℃まで上昇した場合(STEP18でYES)、第nの予測時間twn を新たな予測時間twとして設定する(STEP19)。一方、測定温度Tが5(n−2)以上、5(n−1)℃未満の場合(STEP18でNO)、予測時間twを第(n−1)の予測時間twn−1 のままに維持する(STEP20)。これにより、図2において、沸騰検知時間Fの計測が終了した点dから測定温度Tが5℃上昇する点d1 までは、第1の予測時間tw1 に基づいて補正処理が行われる。また、点d1 から測定温度Tが5℃上昇する点d2 までは第2の予測時間tw2 に基づいて補正処理が行われ、点d2 から測定温度Tが5℃上昇する点d3 までは第3の予測時間tw3 に基づいて補正処理が行われる。これ以降、沸騰判定手段13により沸騰状態と判定されるまで同様に補正処理が行われる。
【0037】
ここで、本発明の主要な特徴である測定温度補正手段11による補正処理について図4に示すフローチャートを用いて説明する。予測時間twとして直前の補正処理で用いられた予測時間twn−1 が設定されている場合(STEP18でNO、STEP9−1でYES)、そのままタイマ10が予測時間twの計測を開始する(STEP9−3)。また、予測時間twとしてtwn (n=2、3、4、・・)が設定された場合(STEP18でYES、STEP9−1でNO)、直前の予測時間twn−1 の計測が終了してから(STEP9−2でYES)、タイマ10が予測時間twの計測を開始する(STEP9−3)。
【0038】
タイマ10が予測時間twを計測し終えたとき(STEP9−4でYES)、測定温度Tが補正温度HTより高温ならば(STEP9−5でYES)、補正温度HTは1℃高温に補正され、図示しないメモリに「下げ補正経験なし」と記憶される(STEP9−6)。
【0039】
タイマ10が予測時間twを計測し終えたとき(STEP9−4でYES)、測定温度Tが補正温度HTと等温の場合(STEP9−5でNO、STEP9−7でYES)、補正温度HTはそのままに維持される(STEP9−8)。
【0040】
タイマ10が予測時間twを計測し終えたとき(STEP9−4でYES)、測定温度Tが補正温度HTより5℃未満だけ低温で(STEP9−5、9−7でNO、STEP9−9でYES)、且つ、「下げ補正経験あり」と記憶されていない場合(STEP9−10でNO)、補正温度HTは1℃低温に補正され、メモリに「下げ補正経験なし」と記憶される(STEP9−11)。また、測定温度Tが補正温度HTより5℃未満だけ低温で(STEP9−9でYES)、且つ、「下げ補正経験あり」と記憶されている場合(STEP9−10でYES)、補正温度HTは1℃低温に補正されることなく、そのままに維持される(STEP9−12)。
【0041】
タイマ10が予測時間twを計測し終えたとき(STEP9−4でYES)、測定温度Tが補正温度HTより5℃(本発明の「第2所定値」)以上低温の場合(STEP9−9でNO)、補正温度HTは予測時間twが計測され終えた時点の測定温度Tに補正され、メモリに「T≦HT−5℃経験あり」と記憶される(STEP9−15)。また、タイマ10が予測時間twを計測している間(STEP9−4でNO)、メモリに「T≦HT−5℃経験あり」と記憶されている場合(STEP9−13でYES)、又はメモリに「T≦HT−5℃経験あり」と記憶されておらず(STEP9−13でNO)、且つ、測定温度Tが補正温度HTより5℃以上低温となった場合(STEP9−14でYES)、補正温度HTはその時点の測定温度Tに補正され、メモリに「T≦HT−5℃の経験あり」と記憶される(STEP9−15)。
【0042】
続いて、鍋pの中の液体が沸騰する前に、STEP9の補正処理が何度か行われ、図5に示すように時刻t0 で測定温度TがTi +3℃、補正温度HTがTi となった状態を考える。この状態から測定温度Tが点線で示すように変化したとき、時刻t0 でTi の補正温度HTがどのように補正されるかを実線で示し、沸騰判定がどのように行われるかについて説明する。ここで、沸騰状態でないにもかかわらず、バーナ1の炎の揺らぎ等の外因によって測定温度Tが点kから点lまで一定時間にわたりTi +4℃にとどまったとする。従来のように測定温度Tに基づいて沸騰判定が行われた場合、測定温度Tが一定時間にわたり一定値になっているので、誤って沸騰状態と判定されてしまう。
【0043】
しかるに、本実施形態のガスコンロにおいては、時刻t0 +twにおいて測定温度T=Ti +4℃が補正温度HT=Ti より高温なので、補正温度HTがTi +1℃に補正される(図4のSTEP9−4、9−5、9−6参照)。また、時刻t0 +2twにおいて測定温度T=Ti +4℃が補正温度HT=Ti +1℃より高温なので、補正温度HTがTi +2℃に補正される。以下、同様に時刻t0 +3tw、t0 +4twにおいて、補正温度HTがTi +3℃、Ti +4℃に順次補正される。このように補正温度HTは予測時間twが経過するごとに変更補正され、その度に累積値Sがクリアされ(図3のSTEP10、11参照)、累積値Sが沸騰予測値J以上となることはない。従って、一の補正温度HTにおける累積値Sが増加し続けて沸騰予測値J以上となることは無く、沸騰状態と誤って判定される事態を防止することができる。
【0044】
また、補正温度HTが1℃低温に補正されるときメモリに「下げ補正経験あり」と記憶され(図4のSTEP9−11)、この記憶は補正温度が1℃高温に補正されなければクリアされない(STEP9−6)。すなわち、補正温度HTが1℃低温に補正された後、1℃高温に補正されなければ再び1℃低温に補正されることはなく、連続して1℃低温に補正される回数が1回に制限されている。従って、補正温度HTが1℃ずつ低温にされ続けたために再び上昇するまでに時間がかかりすぎ、沸騰状態の検知が遅れる事態を防止することができる。
【0045】
さらに、測定温度Tが補正温度HTと比較して5℃以上低温となった場合、補正温度HTを測定温度Tと等温にする(STEP9−15)。この「5℃」という値は、測定温度Tが補正温度HTと比較して5℃以上低温となるのは、バーナ1の炎の揺らぎ等の原因ではなく、鍋pに低温の調理物や水が入れられたときであるという予測から設定される。従って、水等の投入で鍋pの測定温度Tが低下した場合、即座に補正温度HTが測定温度Tと等温にされることで、鍋pの中の液体の温度を正確に補正温度HTに反映させることができる。
【0046】
累積値測定手段12は、累積値Sを測定するときに補正温度HTが変化した場合、それまでの累積値Sをクリアした上で変化後の補正温度HTについて累積値Sを測定する(図3のSTEP10、11、12)。このため、沸騰状態と判定されるのは測定温度Tとともに補正温度HTが安定して鍋Pの中の液体が沸騰している可能性が高いときなので、この沸騰判定がより正確なものとなる。
【0047】
上昇傾斜測定手段5により上下限が5℃ずつ高温にずれた複数の温度域(80〜100℃、85〜105℃、・・)ごとに上昇傾斜時間Δt1 、Δt2 、・・が測定される(図3のSTEP2、16)。また、これらの上昇傾斜時間に基づいて予測時間設定手段9により予測時間tw1 、tw2 、・・が設定される(図3のSTEP6、17)。こうして小刻みに設定される予測時間tw1 、tw2 、・・に基づいて補正される補正温度HTには測定温度Tの振る舞いが正確に反映される。従って、一の補正温度において測定される累積値Sを沸騰予測値Jと比較することでより正確に沸騰状態が判定される。
【0048】
上昇傾斜測定手段5は、バーナ1による鍋pの加熱開始後、測定温度Tがその上昇傾斜が安定する80℃以上にまで上昇してから(図2の点b参照)、上昇傾斜時間Δtを測定する。従って、この上昇傾斜時間Δtに基づいて設定される沸騰予測値Jには沸騰状態における測定温度Tの動向がより正確に反映される。このため、この沸騰予測値Jが累積値Sと比較されることで、沸騰状態がより正確に判定される。
【0049】
沸騰無検知時間設定手段7により沸騰無検知時間Fが設定される(図3のSTEP4)。前述のように沸騰無検知時間Fは、少なくともその時間が経過するまではバーナ1による加熱が不十分で鍋pの中の液体が沸騰していないと予測される時間を表す。従って、まだ沸騰していないと予測される時点(図2の点c〜d参照)において累積値Sの測定が行われて沸騰状態であると誤って判定されるおそれを解消することができる。
【0050】
強制沸騰検知時間設定手段8により強制沸騰検知時間Iが設定される(図3のSTEP5)。そして、タイマ10が強制沸騰検知時間Iを計測し終えたとき、沸騰判定手段13により沸騰状態と判定される(図2の点e、図3のSTEP14)。前述のように強制沸騰検知時間Iは、遅くともその時間が経過しているころにはバーナ1により十分に加熱されて鍋pの中の液体が沸騰していると予測される目安となる時間を表す。従って、実際には沸騰状態であるにもかかわらず、補正温度HTが激しく変化して累積値Sがなかなか増加しないため沸騰状態と判定されない事態を防止することができる。
【0051】
なお、本実施形態では「累積値S」及び「沸騰予測値J」は、それぞれ時間そのものにより表されていたが、他の実施形態として一定間隔でカウントを行うカウンタが設けられ、当該時間におけるカウント数により累積値S及び沸騰予測値Jが表されてもよい。
【0052】
本発明の「上昇傾斜」として本実施形態では測定温度Tが10℃上昇するのに要する平均的時間を表す上昇傾斜時間Δt1 、Δt2 、・・が用いられたが、他の実施形態として測定温度Tの上昇率等、その変化を表すあらゆるパラメータが用いられてもよい。また、本実施形態では複数の上昇傾斜時間Δt1 、Δt2 、・・が補正処理において用いられたが、他の実施形態として単一の上昇傾斜時間Δtが補正処理において用いられてもよい(STEP16〜20の省略)。
【0053】
本実施形態では沸騰無検知時間Fの経過後、測定温度Tが5℃上昇するごとに直前の予測時間twの計測が終了してから(図4のSTEP9−2でYES)次の予測時間twの計測が開始されたが(STEP9−3)、他の実施形態として測定温度Tが5℃上昇したときに直前の予測時間twの計測が打ち切られ(STEP9−2の省略)、次の予測時間twの計測がすぐに開始されてもよい。
【0054】
本実施形態では補正温度HTが変動したとき累積値Sがクリアされたが、他の実施形態として補正温度HTが変動しても累積値がクリアされず(図3のSTEP11省略)、複数の補正温度における累積値Sが平行して測定されてもよい。例えば、時刻τ0 で初めてT0 に至った補正温度HTが図6に示すように時刻τ7 まで変化した場合、補正温度HTにおける累積値S(HT)は、
S(T0 ) =(τ1 −τ0 )+(τ3 −τ2 )、
S(T0 +1℃)=(τ2 −τ1 )+(τ4 −τ3 )+(τ6 −τ5 )、
S(T0 +2℃)=(τ5 −τ4 )+(τ7 −τ6 )となる。
【0055】
そして、いずれかの累積値Sが沸騰予測値J以上となった場合、沸騰判定手段13は鍋pの中の液体が沸騰状態にあると判定する。この場合、沸騰状態にもかかわらずバーナ1の炎が風で揺らいだ等の原因により測定温度Tが図6に示すように変動した場合でも、複数の補正温度HTにおける累積値S(HT)に基づいて沸騰状態が判定される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の調理装置の構成説明図
【図2】本実施形態の調理装置における時間−測定温度の関係図
【図3】本実施形態の調理装置における沸騰判定のフローチャート
【図4】本実施形態の調理装置における補正処理のフローチャート
【図5】本実施形態の調理装置における沸騰判定の説明図
【図6】他の実施形態の調理装置における累積値測定の説明図
【符号の説明】
1‥バーナ(加熱手段)、2‥温度センサ、5‥上昇傾斜測定手段、6‥沸騰予測値設定手段、7‥沸騰無検知時間設定手段、8‥強制沸騰検知時間設定手段、9‥予測時間設定手段、10‥タイマ、11‥測定温度補正手段、12‥累積値測定手段、13‥沸騰判定手段、p‥鍋(調理容器)
Claims (11)
- 調理容器を加熱する加熱手段と、
該調理容器の温度を測定する温度センサと、
該調理容器の温度が所定値だけ変化するのに要すると予測される予測時間を設定する予測時間設定手段と、
該予測時間設定手段により設定された予測時間を反復計測可能なタイマと、
該温度センサによる所定時の測定温度を初期の補正温度とし、該タイマが該予測時間の計測を繰り返すとき、該測定温度が該補正温度より高温の場合は該補正温度を該所定値だけ高温とし、等温の場合は該補正温度をそのままに維持し、低温の場合は該補正温度を該所定値だけ低温とする補正処理を行う測定温度補正手段と、
該補正温度が一の温度と等温になる累積時間を表す累積値を測定する累積値測定手段と、
該累積値測定手段により測定された累積値が、沸騰予測値以上となったとき、該調理容器内の液体が沸騰状態であると判定する沸騰判定手段とを備えていることを特徴とする調理装置。 - 前記温度センサによる測定温度の上昇傾斜を測定する上昇傾斜測定手段を備え、前記予測時間設定手段は、該上昇傾斜測定手段により測定された上昇傾斜に基づいて前記予測時間を設定することを特徴とする請求項1記載の調理装置。
- 前記上昇傾斜測定手段は、上限温度が徐々に高温にずれた複数の温度域ごとに前記上昇傾斜を測定し、
前記予測時間設定手段は、該複数の温度域ごとに測定された上昇傾斜に基づいて予測時間を設定することを特徴とする請求項2記載の調理装置。 - 前記測定温度補正手段は、前記所定時の測定温度が前記複数の温度域の上限温度のずれ分ずつ上昇するごとに、該測定温度を前記補正温度に補正し、先の温度域に対して該ずれ分だけ高温の上限温度を有する温度域について設定された前記予測時間に基づいて、前記補正処理を行うことを特徴とする請求項3記載の調理装置。
- 前記測定温度補正手段が行う補正処理において、前記補正温度が連続して前記所定値だけ低温にされる回数が、制限されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の調理装置。
- 前記測定温度補正手段が行う補正処理は、前記測定温度が前記補正温度と比較して前記所定値より大きい第2所定値以上低温となったとき、該補正温度を該第2所定値以上低温となった該測定温度と等温にする処理を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の調理装置。
- 前記上昇傾斜測定手段は、前記加熱手段による調理容器の加熱開始後、前記測定温度が一定値まで上昇してから、前記上昇傾斜を測定することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1つに記載の調理装置。
- 前記累積値測定手段は、累積値を測定するときに前記補正温度が変化するたびに、それまでの累積値をクリアした上で変化後の補正温度について累積値を測定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の調理装置。
- 前記累積値測定手段は、複数の前記補正温度について累積値を求めた上で記憶し、
前記沸騰判定手段は、該複数の累積値のうちのいずれかが前記沸騰予測値以上となったとき、沸騰状態と判定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の調理装置。 - 前記上昇傾斜測定手段が上昇傾斜を測定してから、前記累積値測定手段が累積を開始するまでの待ち時間である沸騰無検知時間を、前記上昇傾斜に基づいて設定する沸騰無検知時間設定手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の調理装置。
- 前記累積値測定手段が累積値の測定を開始してから、前記沸騰判定手段が沸騰状態と判定するまでの制限時間である強制沸騰検知時間を、前記上昇傾斜に基づいて設定する強制沸騰検知時間設定手段を備え、
該沸騰判定手段は、該強制沸騰検知時間内に沸騰状態の判定が得られなかったとき、沸騰状態と判定することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載の調理装置。
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