JP3621442B2 - ミラー、特に車両用バックミラー - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ミラープレートと、反射層と、ミラーを見る人の方を向いた面上の引っかき傷に強い保護層とを備えているミラーであって、ミラープレートと反射層との間及び(あるいは)反射層と引っかき傷に強い保護層との間に接着層が配置されているミラー、特に車両用バックミラーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のミラーは、ドイツ特許公開第3825164号公報に加熱可能な車両用外部ミラーとして開示されている。この車両用外部ミラーはミラープレートを有し、そのミラープレートに反射層が取付けられており、そしてそのミラープレートがミラーを見る人の方を向いた面をガラス板によって形成されている。ミラー支持体は、電気接続を介して加熱可能である。ミラープレート内に平面的な電流の流れを生じさせるために、ミラー支持体の側面に、電気接続と結合された接点片が設けられている。このミラーの特に欠点とすることは、ガラス板がかなり厚く、そのためにミラー表面の降水が取り除かれるまでミラーを加熱する場合に、大きなエネルギー供給が必要であることである。熱膨張係数が異なることによってガラス板に応力が引き起こされ、ガラス板が薄い場合にはこの応力によってガラス板が破壊され、あるいはミラーの光学特性が損なわれるから、ガラス板の厚さを減少させることはできない。変形例では、反射層がミラー支持体に取付けられており、そしてガラス板の代わりに、引っかき傷及び天候に強い被覆が反射層に設けられている。この変形例には、薄くて引っかき傷および天候に強い被覆によって、投射する光の干渉現象がミラー観察面にひき起こされ、これによりミラー像にわずらわしい色縞を感じさせるという欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ミラープレートと、反射層と、ミラーを見る人の方を向いた面上の引っかき傷に強い保護層とを備えているミラーであって、ミラープレートと反射層との間及び(あるいは)反射層と引っかき傷に強い保護層との間に接着層が配置されているミラー、特に車両用バックミラーを改良し、ミラープレートに取付けられる層に対し、またはミラープレートに対し、少なくとも部分的に非常に異なった熱膨張係数を有する材料を利用できるようにすることである。さらに、加熱可能なミラーの場合にも、ミラーを見る人の方を向いたミラー側に、引っかき傷に強い保護層として、薄いガラス層を利用することを可能とすることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明により、前記接着層が、主として、二成分シリコーンゴムから成りゲル状に加硫しているシリコーンゲルであることによって解決される。
【0005】
【作用及び効果】
シリコーンゲルから成る接着層が、一方で当該接着層に隣接する両方の層を結合し、そしてこれらの層の熱膨張係数が非常に異なるときに、これらの層における応力の高まりが前記シリコーンゲルの弾力性によって妨げられる。従って、シリコーンゲルから成る接着層によって、これまでミラーの層構造に利用することができなかった材料、または、予期される熱応力のためにこれまでかなり大きな最小厚みを有してのみ利用されていた材料の利用が可能になる。前記シリコーンゲルは、例えば、ミラーを見る人の方を向いたミラー表面に引っかき傷及び天候に強い保護層として薄いガラス板を用いることを可能にする。従来技術において、保護層を形成するガラス板がほぼ2mmの厚さを有するのに対し、シリコーンゲルから成る接着層を利用することによって、この種のガラス板の厚さがはるかに減少させられ、例えばほぼ0.04mmにまで低減可能である。厚さを減少させられたガラス板を保護層として用いることには、ミラー表面の降水が蒸発するまでミラーを加熱するために、はるかに小さいエネルギー供給しか必要でないという重要な利点がある。ミラーを見る人の方を向いたミラー面に別の保護層、例えば合成物質フォイルあるいはラッカーフォイルを用いる場合にも、太陽あるいは加熱装置によってミラーを加熱する場合に個々の層またはミラー支持体における過度な熱応力をシリコーンゲルから成る接着層が妨げるので、個々の層が少なくとも部分的に非常に異なった熱膨張係数を有することが可能である。シリコーンゲルから成る接着層の、ミラー層及び(あるいは)ミラープレートにおける前記の熱応力を緩和する作用は、シリコーンゲルが、ミラープレートと反射層との間だけに配置されているか、または反射層と引っかき傷に強い保護層との間だけに配置されているか、あるいはミラープレートと反射層との間及び反射層と引っかき傷に強い保護層との間の両方に配置されているかにかかわらず生ずるものである。ミラーを見る人の側の保護層が薄いガラス板によって形成されているならば、生じる熱応力によってガラスが割れるか、またはミラーの光学特性が低下させられることなしに、この保護層を平らに貼り付けることが可能である。シリコーンゲルそれ自体は公知であり、例えばバッカー・ヘミー社の SilGel 612 が市販されている。このSilGel 612はゲル状に加硫した2成分シリコーンゴムである。これまで、このシリコーンゲルは、従来、電気部材及び電子部材の透明シール、クリーンルームフィルターのシーリング材料、透明の接合剤、接着テープの製造材料、ガラス繊維の埋め込み材料として、及びショックアブソーバーの製造のために用いるのに適当であることが判っていた。非常に異なった熱膨張係数を有する材料の利用を可能にする、ミラーの層構造のための、本発明によるシリコーンゲルの利用は、これまで知られていない。
【0006】
本発明の有利な構成が、従属項に述べられている。
【0007】
【実施例】
本発明の2つの実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0008】
図1に示す第1の実施例のミラーは、車両用バックミラーの一部であり、通例図示されていないミラーケーシングと調節可能なミラーホルダーを有し、図に示されているミラーがそのミラーホルダーと結合されるようになっている。基本的な構造を簡単に図示されたミラーは、本実施例の場合には熱可塑性の物質、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)から製造されているミラープレート1を有する。この物質は、図示されていない電源の同様に図示されていな電流接続部によって、ミラープレート1を伝導的に加熱することを可能にする。ミラープレート1には、例えばバッカー・ヘミー社から入手可能な SilGel 612 に相当するシリコーンゲルから成る接着層2が設けられている。手前の保護層4の、ミラーを見る人3と反対の方を向いた背面に反射層5が取付けられており、この反射層5は接着層2を介してミラープレート1と結合されている。保護層4の、ミラーを見る人3と反対の方を向いた背面は、反射層5のための光学的な表面、例えば光沢表面を形成する。本実施例の場合、反射層5は主としてCr、Al、またはTiO2から形成されている。保護層4は薄いミラーガラス板であり、当該ミラーガラス板の厚さは例えば0.04mmから1.5mmで、保護層としてガラス板を有する公知の車両用外部ミラーの場合に比べてはるかに薄い。薄い透明のガラス板から成る保護層4は、少なくとも、投射する光の干渉現象がミラー観察面において感じられないあるいは生じないだけの厚さを有するものである。シリコーンゲルから成る接着層2は、両方の隣接する層のための結合手段として働くだけでなく、反射層5と保護層4をミラープレート1に対して電気的に絶縁する作用を有する。さらに、シリコーンゲルから成る接着層2が、ミラープレート1、保護層4、及び(あるいは)反射層5の熱応力を緩和し、そのことによって、熱応力が生じた場合に薄いガラス板によって形成された保護層4が壊れず、またミラープレート1、反射層5、及び保護層4の熱膨張係数が非常に異なる場合にも、ミラーの光学的特性が維持される。保護層4が薄いガラス板から成ることによって、ミラープレート1及び保護層4を加熱するためのエネルギー消費は著しく減少する。薄いガラス板から成る保護層4は、別の材料から成るミラーの従前の保護層に比して、はるかに引っかき傷に強くかつ天候に対して安定である。例えば冬期の運転において、ミラーを見る人3の方を向いたミラー表面は、スクレーパーとして非鉄重金属を有するアイススクレーパーによって、ミラー表面がひっかかれあるいは損なわれる恐れなしに、清掃可能である。
【0009】
図2に示す第2の実施例は、図1の実施例に対して変形されたミラー構造を有する。この実施例の場合、例えば伝導的に加熱可能なミラープレート1′に電気的な絶縁層6が設けられており、この実施例の場合には例えばポリシロキサンラッカーから成る透明のあるいは透明でない層によって絶縁層6が形成されている。この実施例では、電気的な絶縁層6の側におけるミラープレート1′の表面が、光学的な面、例えば光沢面を有する。電気的な絶縁層6には、反射層5′が取り付けられており、反射層5′は図1に係る実施例の場合のように、Cr、Al、またはTiO2から成る。この実施例の場合にも、ミラーを見る人3′の方を向いたミラー表面は、薄いガラス板からなる保護層4′によって形成されている。この薄いガラス板は、主としてシリコーンゲルから成る接着層2′を介して反射層5′と結合されている。この実施例の場合には、接着層2′が、ミラー観察面における投射される光の干渉現象を防止する光学的な間隔層としても働く。さらに、シリコーンゲルから成る接着層2′は、保護層4′、反射層5′、電気的層6、及び(あるいは)ミラープレート1′の異なる熱膨張係数に基づく応力を緩和する。夏期に太陽によってミラーが加熱される場合、及び、ミラープレート1′及び保護層4′も含めた別の層が図示されていない加熱装置によって加熱される場合に、保護層4′を形成する薄いガラス板が割れる心配はない。
【0010】
本発明を2つの実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施例に決して制限されるものではない。発明思想を外れることなく、別の実施例も可能である。特にポリフェニレンサルファイドから形成されたミラープレートは、例えばミラーが加熱可能あるいは伝導的に加熱可能であってはならないときには、別の材料から成ることも可能である。前述の各実施例の場合に薄いガラス板によって形成されている保護層は、別の透明な材料、例えば薄ガラスフォイルのような無機材料、あるいは引っかき傷に強く被覆された合成物質フォイルまたはラッカーフォイルのような有機材料からも形成可能である。保護層が薄いガラス層から形成されているか、あるいは別の材料から形成されているかにかかわらず、ミラープレート及び(あるいは)ミラー層における異なる熱膨張係数を原因として生ずる応力は、シリコーンゲルから成る接着層がミラープレートと反射層との間にだけ配置されているときも、または反射層と引っかき傷に強い保護層との間にだけ配置されているときも、あるいはミラープレートと反射層との間及び反射層と引っかき傷に強い保護層との間の両方に配置されているときも、シリコーンゲルから成る前記の接着層によって緩和される。反射層は、実施例に示したものと異なる材料によって形成することも可能である。ミラープレートは、特に熱可塑性の材料から製造されている。同様に、熱硬化性の材料も好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ミラープレートと反射層との間に設けられたシリコーンゲルから成る接着層を有する第1の実施例の図である。
【図2】反射層と引っかき傷に強い保護層との間に設けられたシリコーンゲルから成る接着層を有する第2の実施例の図である。
【符号の説明】
1、1′ ミラープレート
2、2′ 接着層
3、3′ ミラーを見る人
4、4′ 保護層
5、5′ 反射層
Claims (10)
- ミラー、特に車両用バックミラーにして、ミラープレート(1、1′)と、反射層(5、5′)と、ミラーを見る人(3、3′)の方を向いた面上に引っかき傷に強い保護層(4、4′)とを備えているミラーであって、ミラープレート(1)と反射層(5)との間及び(あるいは)反射層(5′)と引っかき傷に強い保護層(4′)との間に接着層(2、2′)が配置されているミラーにおいて、接着層(2、2′)が、主として、二成分シリコーンゴムから成りゲル状に加硫しているシリコーンゲルであることを特徴とするミラー。
- ミラープレート(1、1′)が、主として、熱硬化性のあるいは特に熱可塑性の電気伝導性材料から成ることを特徴とする、請求項1に記載のミラー。
- ミラープレート(1、1′)が、主として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)材から製造されていることを特徴とする、請求項2に記載のミラー。
- ミラープレート(1、1′)が、加熱装置を介して特に伝導的に加熱可能であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のミラー。
- 反射層(5)が、引っかき傷に強い保護層(4)の、ミラーを見る人(3)と反対の方を向いた背面に取りつけられており、かつこの背面が光学的面、例えば光沢面を形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のミラー。
- 反射層(5′)と引っかき傷に強い保護層(4′)との間にシリコーンゲルから成る接着層(2′)が配置さており、ミラープレート(1′)と反射層(5′)との間に電気的な絶縁層(6)が設けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のミラー。
- 電気的な絶縁層(6)が、ラッカーフィルム、あるいは主としてシリコーンゲルから成る別の接着層であることを特徴とする、請求項6に記載のミラー。
- 反射層(5、5′)が、主として、材料としてCr、AlあるいはTiO2 から成ることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のミラー。
- 引っかき傷に強い保護層(4)が、例えば薄ガラスまたは薄ガラスフォイルのような無機材料、あるいは例えば引っかき傷に強く被覆された透明の合成物質フォイルまたはラッカーフォイルのような有機材料からなる透明の層であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のミラー。
- 薄ガラスまたは薄ガラスフォイルが、少なくとも、投射する光の干渉現象がミラー観察面において感じられないあるいは生じないような厚さを有することを特徴とする、請求項9に記載のミラー。
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