JP3621224B2 - 蛍光体および蛍光表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、蛍光表示管などに用いられる蛍光体とそれを用いた蛍光表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光表示管に使用される蛍光材料は、通常低速電子線励起発光蛍光体と呼ばれており、100eV程度の加速電圧により実用輝度が得られる蛍光材料である。ブラウン管などの高電圧励起とは異なり、電子線の侵入深さは高々数1nmといわれている。
したがって、蛍光表示管においては電子線の透過能力が小さいため、ブラウン管のようなメタルバック処理が使えない。このため、蛍光材料母体(蛍光体)の抵抗を下げ、2次電子放出能力が1以下の領域での励起による帯電を防止し、励起発光開始電圧を下げるようにしている。
【0003】
上述したような蛍光表示管用の蛍光体の要件としては、以下に示すものがある。
▲1▼低抵抗であること。
▲2▼発光開始電圧が本質的に低いこと。
▲3▼低加速電圧の発光効率が高く、かつ、輝度飽和がないこと。
▲4▼特に蛍光体粒子表面においての欠陥などが少なく、低速電子励起発光状態が安定であり、分解などが起こらないこと。
▲5▼蛍光表示管製造工程における熱処理などに対して安定であること。
▲6▼励起発行時に酸化物フィラメントに悪影響を及ぼすような物質を放出しないこと。
【0004】
ところで近年、蛍光表示管の用途の拡大にともない、多色表示の要望が高まってきた。
平型蛍光表示管の初期の頃には、動作電圧10〜50V程度の低速電子線で実用上十分な輝度を得られる蛍光体としては、緑色発光のZnO:Zn以外にはなかった。
しかし、In2O3などの導電物質を利用して低抵抗化する技術が開発されて以来、硫化物蛍光体などを用いた多色発光がある程度可能となった。
例えば、青色発光のZnS:Cl+In2O3、黄緑のZnS:銅,Al+In2O3などがある。
このような硫化物蛍光体を用いたレモン色を発色する蛍光材料として、(Zn0.55,Cd0.45)S:Agがある。レモン色は、緑色と黄色の中間色として重要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、レモン色の発光色を得るために硫化物蛍光体である(Zn,Cd)S:Agを用いると、蛍光材料に電子を照射しているときにこの硫化物より硫黄の飛散が生じる。この硫黄の飛散は、カソードを劣化させ、カソードの電子放出機能を低下させる。
このように、カソードの電子放出機能が低下すると陽極周辺の電位分布に対して電子の干渉むらを生じさせ、結果的に表示品質を著しく低下させることになり、蛍光表示管としての寿命を短くすることになる。
この発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、カソード劣化などを引き起こさない、レモン色の蛍光材料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の蛍光体は、低加速電子の衝突により発光する蛍光体を、ZnO:Zn蛍光体、および、(Zn,Mg)Oを母体とする蛍光体から構成するようにした。
緑色の発光色を有するZnO:Zn蛍光体および黄色の発光色を有する(Zn,Mg)Oを母体とする蛍光体と混合することで、その中間的な色であるレモン色の発光色が得られる。
また、この発明の蛍光表示装置では、その混合した蛍光体からなる発光部を備えた表示部と、その表示部が内包されて内部が真空排気された外囲器と、外囲器の一部を構成して表示部の光が外部へ透過する表示面と、表示面に形成されて主に黄色の光を透過する外部フィルターとを備えるようにした。
この結果、蛍光表示装置より観察される発光光は、蛍光体から発せられるレモン色の光が黄色の外部フィルターを透過したものとなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下この発明の実施の形態を図を参照して説明する。
実施の形態1
図1は、この発明の実施の形態1における蛍光表示管(蛍光表示装置)の構成を示す構成図であり、その最小単位の部分だけを模式的に示している。
この多色表示に対応する蛍光表示管の構成を説明すると、ガラス基板1上に配線層2が形成され、配線層2上には絶縁層3が形成されている。また、絶縁層3上には所定の位置にアノード電極(陽極)4が形成され、このアノード電極4は、絶縁層3に開けられたスルーホール3aを介して、配線層2の所定位置に接続されている。また、アノード電極4上には発光部5が形成され、それらの上部にはグリッド6が配置され、その上にフィラメント7が配置されている。
【0008】
一方、ガラス基板1端部には、スペーサガラス8が配置され、その上にガラス基板1に対向して透明なフロントガラス9が配置されている。ガラス基板1とスペーサガラス8、およびスペーサガラス8とフロントガラス9は、それぞれガラスフリット10により接着固定されて、外囲器を構成している。
なお、図示していないが、スペーサガラス8とガラス基板1との接触部のガラスフリット10を通してリードが設けられ、このリードは配線層2に接続されている。
【0009】
そして、この実施の形態1では、発光部5は、ZnO:Zn蛍光体、および、黄色の発光色を有する(Zn,Mg)Oを母体とする蛍光体から構成し、レモン色を発色するようにした。ここで、(Zn,Mg)Oを母体とする蛍光体としては例えば、アクチベータとしてZnを用いた(Zn1−x,Mgx)O:Zn蛍光体があり、xの範囲としては0<x≦0.25などがある。他に、Liをアクチベータとした(Zn1−x,Mgx )O:Li蛍光体もある。
このときの、ZnO:Znと(Zn1−x,Mgx)O:Znとの混合比は、例えば3:7から5:5の範囲がもっとも適当である。ただし、色の好みに応じて、適宜混合比を1:9から9:1の範囲で選択すればよい。この場合、ZnO:Znが多いほど式度点は緑みとなり、少なければ黄みとなる。
【0010】
このように発光部5を構成することで、発光部5の発光色は、図2の色度点21に示すようになり、レモン色を発色することになる。
そして、この実施の形態1では、発光部5に硫化物蛍光体を用いていないので、発光部5に電子が照射されてもここより硫黄の飛散が生じることが無く、硫黄の飛散によるカソードの劣化を起こすことがない。また、発光部に有毒なCdなどを用いていないので、廃棄物処理コストを削減できる。
なお、発光部5を構成する蛍光体に酸化タングステン(WO3 )が添加されているようにしてもよい。この酸化タングステンを所定量添加することで、蛍光体の高温放置特性を改善することが可能となり、蛍光体の経時変化による輝度特性が抑制できる。
【0011】
実施の形態2
以下この発明の実施の形態2について説明する。図3は、この発明の実施の形態2における蛍光表示管の構成を示す構成図であり、その最小単位の部分だけを模式的に示している。
この実施の形態2では、図3に示すように、ZnO:Zn蛍光体および(Zn,Mg)Oを母体とする蛍光体の構成に、黄色顔料を添加した発光部5aを、アノード電極4上に形成するようにした。この黄色顔料としては、TiO2 −Sb2O2−NiO,TiO2 −Sb2O2−Cr2O3,TiO2 −BaO−NiOなどのチタンエローと呼ばれる複合酸化物がある。
他の構成は、図1と同様である。なお、蛍光体5aには、上記実施の形態1と同様に、酸化タングステン(WO3 )を添加するようにしてもよく、また、酸化インジウム(In2O3)を添加するようにしてもよい。この酸化インジウムの添加は、電子衝撃による顔料のチャージアップを抑制することができる。
【0012】
黄色顔料の添加は、図1における発光部5に内部的にフィルターを形成することとなる。この結果、発光部5aからの光の色は、図4に示す色度点41で示されるものとなる。
このように、この実施の形態2によれば、黄色顔料を用いて内部フィルターを形成することにより、より特性のよいレモン色を発色することが可能となる。また、上記実施の形態1と同様に、発光部5aには硫化物蛍光体を用いていないので、発光部5aに電子が照射されてもここより硫黄の飛散が生じることが無く、硫黄の飛散によるカソードの劣化を起こすことがない。また、発光部に有毒なCdなどを用いていないので、廃棄物処理コストを削減できる。
【0013】
実施の形態3
以下この発明の実施の形態3について説明する。図5は、この発明の実施の形態3における蛍光表示管の構成を示す構成図であり、その最小単位の部分だけを模式的に示している。この実施の形態2では、図5に示すように、フロントガラス9上に、外部フィルター11を形成した。他の構成は、図1と同様である。
この外部フィルター11は、フィルム状のフィルターをフロントガラス9上に張り付けることで形成される。なお、この外部フィルター11の形成は、他にも、顔料の印刷により形成したり、フロントガラス9に直接着色することで設けるようにしてもよい。
【0014】
この外部フィルター11は、図6(a)〜(d)のいずれかに示すような分光特性を有していればよい。この外部フィルター11を設けることで、発光部5からの光は外部フィルター11を通過して観察されることになり、その色は図7に示す色度点71で示されるものとなる。
このように、この実施の形態3によれば、外部フィルター11を設けたことにより、より特性のよいレモン色を発色することが可能となる。また、上記実施の形態1と同様に、発光部5には硫化物蛍光体を用いていないので、発光部5に電子が照射されてもここより硫黄の飛散が生じることが無く、硫黄の飛散によるカソードの劣化を起こすことがない。また、発光部に有毒なCdなどを用いていないので、廃棄物処理コストを削減できる。
【0015】
なお、上記実施の形態1,3においても、発光部を構成する蛍光体に、酸化インジウムを添加するようにしてもよい。蛍光体で構成する発光部が薄く、かつ、陽極からはみ出すような構造の場合、陽極とはみ出した発光部との導通が確保しにくくなる。しかし、酸化インジウムを蛍光体に添加しておくことで、その問題を解消できることになる。
また、上記実施の形態3においても、発光部5に内部フィルターを設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明では、低加速電子の衝突により発光する蛍光体を、ZnO:Zn蛍光体と(Zn1−x,Mgx )1+yO:Zn蛍光体とから構成するようにした。
緑色の発光色を有するZnO:Zn蛍光体と、黄色の発光色を有する(Zn1−x,Mgx )1+yO:Zn蛍光体とを混合することで、その中間的な色であるレモン色の発光色が得られる。また、この蛍光体は、硫化物蛍光体を含んでいないので、硫黄の飛散が無く、その硫黄の飛散による問題が生じない。また、発光部に有毒なCdなどを用いていないので、廃棄物処理コストを削減できる。
また、その蛍光体を用いた蛍光表示管において、外囲器の一部を構成して表示部の光が外部へ透過する表示面に、主に黄色の光を透過する外部フィルターを備えるようにした。
このため、より特性のよいレモン色の発光色が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1における蛍光表示管の構成を示す構成図である。
【図2】発光部の発光色を示す色度図である。
【図3】この発明の実施の形態2における蛍光表示管の構成を示す構成図である。
【図4】発光部の発光色を示す色度図である。
【図5】この発明の実施の形態3における蛍光表示管の構成を示す構成図である。
【図6】外部フィルターの光透過特性を示す特性図である。
【図7】外部フィルターを通してみたときの発光部の発光色を示す色度図である。
【符号の説明】
1…ガラス基板、3…絶縁層、4…アノード電極、5…発光部、6…グリッド、7…フィラメント、8…スペーサガラス、9…フロントガラス、10…ガラスフリット。
Claims (5)
- 低加速電子の衝突により発光する蛍光体であり、
ZnO:Zn蛍光体および(Zn,Mg)Oを母体とする蛍光体から構成されたことを特徴とする蛍光体。 - 請求項1記載の蛍光体において、
WO3 が添加されていることを特徴とする蛍光体。 - 請求項1または2記載の蛍光体において、
In2O3が添加されていることを特徴とする蛍光体。 - 請求項1〜3いずれか1項記載の蛍光体において、
黄色の顔料が添加されていることを特徴とする蛍光体。 - 請求項1〜4いずれか1項記載の蛍光体からなる発光部を備えた表示部と、
前記表示部が内包されて内部が真空排気された外囲器と、
前記外囲器の一部を構成して前記表示部の光が外部へ透過する表示面と、
前記表示面に形成されて主に黄色の光を透過する外部フィルターと
を備えたことを特徴とする蛍光表示装置。
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