JP2002080845A - 低速電子線励起蛍光体及び蛍光表示管 - Google Patents

低速電子線励起蛍光体及び蛍光表示管

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JP2002080845A
JP2002080845A JP2000272758A JP2000272758A JP2002080845A JP 2002080845 A JP2002080845 A JP 2002080845A JP 2000272758 A JP2000272758 A JP 2000272758A JP 2000272758 A JP2000272758 A JP 2000272758A JP 2002080845 A JP2002080845 A JP 2002080845A
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mol
electron beam
europium
low
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JP2000272758A
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Hidenori Oshima
英紀 大島
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Original Assignee
Ise Electronics Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 蛍光表示管に用いられる、陰極のエミッショ
ンへの悪影響が少なく実用上必要な輝度が得られて、赤
色発光する低速電子線励起蛍光体を提供する。 【解決手段】 硫化カルシウムの蛍光体母体にユウロピ
ウム、マンガン、リチウム及び塩素をドープして蛍光体
を構成する。ユウロピウム、リチウム及び塩素の含有量
は、それぞれ硫化カルシウム1モル当たり0.0001
モル以上0.1モル以下とし、ユウロピウムとマンガン
のモル比は、ユウロピウム1に対してマンガンを0<マ
ンガン≦0.8とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、低速電子線によ
って励起発光する蛍光体と、この蛍光体を利用した蛍光
表示管に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、音響機器や自動車のダッシュボー
ドの表示部品として、電子表示デバイスの一つである蛍
光表示管が多用されている。この蛍光表示管とは、蛍光
体が付着した陽極と、この陽極と対向した位置にある陰
極とが真空容器内に配置され、陰極から放出された電子
をこの蛍光体に衝突させることによって発光光を得るも
のであり、一般的には、陰極と陽極の間に電子の流れを
制御するグリッドを設けて蛍光体を選択的に発光させる
ようにした3極管形式が最も多く使用されている。この
ような蛍光表示管に使用される蛍光体は、高々100V
程度の加速電圧により加速された電子線(以下、低速電
子線という)によって実用輝度が得られる蛍光体で、特
に低速電子線励起蛍光体と呼ばれる。
【0003】ところで近年、蛍光表示管の用途の拡大に
ともない、多色表示の要望が高まってきた。平型蛍光表
示管の初期の頃には、動作電圧10〜50V程度の低速
電子線で実用上十分な輝度を得られる蛍光体としては、
緑色発光のZnO:Zn以外にはなかった。しかし、酸
化インジウム(In23)などの導電物質を利用して蛍
光体を低抵抗化する技術が開発されて以来、硫化物蛍光
体を用いた多色発光が可能となった。このような蛍光体
として、例えば、青色発光のZnS:Cl+In23
黄緑色発光のZnS:Cu,Al+In23、赤色発光
のZnCdS:Ag,Cl+In23などがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の硫化物蛍光体を用いた蛍光表示管には、電子線照射に
よって硫化物蛍光体が分解し、飛散した硫黄(S)が陰
極に付着して、酸化バリウム・酸化カルシウム・酸化ス
トロンチウムのいわゆる三元酸化物から構成される電子
源物質を劣化させ、輝度を低下させるという問題があっ
た。このため、電子線照射に対してZnCdS系蛍光体
やZnS系蛍光体より安定な硫化物蛍光体が求められて
いる。安定な硫化物蛍光体の条件として母体となる硫化
物の融点が高いことが挙げられる。これは、融点が高い
ほど原子間の結合が強く電子線照射に対して安定である
と考えられるためである。
【0005】ZnCdS系蛍光体やZnS系蛍光体より
融点が高い硫化物蛍光体として硫化カルシウム(Ca
S)を母体とするCaS系蛍光体が知られている。Ca
Sの融点は2000℃以上あるため、融点が1600℃
程度のCdSや融解せずに昇華するZnSに比べ、電子
線照射に対してより安定であると考えられている。しか
しながら、従来のCaS系蛍光体は、高電圧領域での発
光効率には優れているものの低速電子線では発光強度が
低く、例えば赤色発光するCaS:Eu蛍光体の相対輝
度は、同じく赤色発光するZnCdS:Ag,Cl蛍光
体の1/4以下であり、実用上必要な輝度の1/2程度
しか得られていなかった。
【0006】この発明は、以上のような問題点を解消す
るためになされたものであり、低速電子線によって実用
上必要な輝度が得られるとともに、蛍光体の分解による
陰極のエミッションへの悪影響が少ない赤色発光する低
速電子線励起蛍光体を提供することを目的とする。ま
た、この蛍光体を用いた輝度低下の少ない長寿命の蛍光
表示管を提供すること目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ために、この発明は、硫化カルシウムを蛍光体母体と
し、ユウロピウムを発光中心として含む低速電子線励起
蛍光体において、硫化カルシウムを蛍光体母体とし、ユ
ーロピウムによる発光波長よりも波長の短い可視光の発
光中心となる元素をさらに含むことによって特徴づけら
れる。このように、この発明では、硫化カルシウムから
なる蛍光体母体にユウロピウムとユーロピウムによる発
光波長よりも波長の短い可視光の発光中心となる元素と
を含むように構成したので、発光中心をユウロピウムの
みで構成した場合と比べて発光色を短波長側にずらすこ
とができる。人の視感度は、赤色光の領域では波長が短
いほど感度が高いので、このようにすることで測定され
る輝度を高くすることができる。
【0008】この発明の低速電子線励起蛍光体の一構成
例は、ユーロピウムによる発光波長よりも波長の短い可
視光の発光中心となる元素にマンガンを用いる。この場
合、ユウロピウムの含有量は、硫化カルシウム1モル当
たり0.0001モル以上0.1モル以下であり、ユウ
ロピウムとマンガンのモル比は、ユウロピウム1に対し
てマンガンが0.8を越えないことが望ましい。また、
この低速電子線励起蛍光体の別の一構成例は、硫化カル
シウムからなる蛍光体母体にユウロピウム、マンガン及
びリチウムを含んでいる。この場合、ユウロピウムとリ
チウムの含有量は、それぞれ硫化カルシウム1モル当た
り0.0001モル以上0.1モル以下であり、ユウロ
ピウムとマンガンのモル比は、ユウロピウム1に対して
マンガンが0.8を越えないことが望ましい。
【0009】また、この低速電子線励起蛍光体の別の一
構成例は、硫化カルシウムからなる蛍光体母体にユウロ
ピウム、マンガン及び塩素を含んでいる。この場合、ユ
ウロピウムと塩素の含有量は、それぞれ硫化カルシウム
1モル当たり0.0001モル以上0.1モル以下であ
り、ユウロピウムとマンガンのモル比は、ユウロピウム
1に対してマンガンが0.8を越えないことが望まし
い。また、この低速電子線励起蛍光体の別の一構成例
は、硫化カルシウムからなる蛍光体母体にユウロピウ
ム、マンガン、リチウム及び塩素を含んでいる。この場
合、ユウロピウム、リチウム及び塩素の含有量は、それ
ぞれ硫化カルシウム1モル当たり0.0001モル以上
0.1モル以下であり、ユウロピウムとマンガンのモル
比は、ユウロピウム1に対してマンガンが0.8を越え
ないことが望ましい。
【0010】また、この発明は、真空容器内に、陰極
と、蛍光体膜の付着した陽極とが設置され、陰極から放
出された電子を蛍光体膜に衝突させて発光させる蛍光表
示管において、蛍光体膜が前述した低速電子線励起蛍光
体と酸化インジウムの混合物で構成されていることによ
って特徴づけられる。前述した蛍光表示管の蛍光体膜
は、酸化インジウムが蛍光体に対して5wt%を超え3
0wt%を超えない範囲で混合されていることが望まし
い。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図を参照して、この発明の
実施の形態を説明する。この発明の実施の形態に係る低
速電子線励起蛍光体は、蛍光体母体が硫化カルシウム
(CaS)であり、この蛍光体母体にユウロピウム(E
u)、マンガン(Mn)、リチウム(Li)及び塩素
(Cl)がドープされている。以後、この蛍光体をCa
S:Eu,Mn,Li,Cl蛍光体と記す。この蛍光体
は、CaSにドープされたEuとMnがそれぞれ発光中
心として作用するため、低速電子線により励起される
と、Euの含まれた部分がピーク波長645nmで発光
し、Mnの含まれた部分がピーク波長580nmで発光
する。このように、この蛍光体は645nmと580n
mの2つの発光ピークを有するので、発光色が橙色を帯
びた赤色となる。このため、645nmの発光ピークを
有するCaS:Eu蛍光体の発光色である赤色と比べて
視感度が高くなり、測定される輝度が高くなる。
【0012】また、LiとClは、この蛍光体の輝度を
さらに向上させる効果を有する元素である。Liのドー
プによって輝度が向上する理由は明確ではないが、次の
理由によるものと推測されている。Liをドープするこ
とによりCaSの導電性が向上するため、電子線励起下
での蛍光体粒子表面の負電荷が逃げやすくなり、電子線
が照射された蛍光体粒子表面の負電位が減少する。この
ため、蛍光体に印加される実質的な陽極電圧が上昇する
ので、衝突する電子のエネルギーが高くなり励起されや
すくなる。Clのドープによって輝度が向上する理由も
明確ではないが、ClにEuを+2価(Eu2+)の状態
に安定化させる作用があり、赤色発光するEu2+が増え
るためと考えられている。
【0013】このCaS:Eu,Mn,Li,Cl蛍光
体において、CaSにドープするEuのドープ量は、C
aS1モル当たり0.0001モル以上0.1モル以下
の範囲とすることが望ましい。これは、Euのドープ量
がこの範囲を超えた場合、同時にドープする他の元素の
ドープ量によっては実用上必要な輝度が得られない場合
があるためである。
【0014】また、CaSにドープするLiのドープ量
は、CaS1モル当たり0.0001モル以上0.1モ
ル以下の範囲とすることが望ましい。ここで、Liのド
ープ量の下限をCaS1モル当たり0.0001モルと
するのは、Liのドープ量が0.0001モル未満では
CaSの導電性を向上する効果が少ないため、同時にド
ープする他の元素のドープ量によっては実用上必要な輝
度が得られない場合があるためである。Liのドープ量
の上限をCaS1モル当たり0.1モルとするのは、L
iのドープ量が0.1モルより多くなると、同時にドー
プする他の元素のドープ量によっては実用上必要な輝度
が得られない場合があるためである。Liドープ量が多
すぎると輝度が低下するのは、Liのドープにより生成
した格子欠陥による影響が大きくなるためと推測されて
いる。
【0015】また、CaSにドープするClのドープ量
は、CaS1モル当たり0.0001モル以上0.1モ
ル以下の範囲とすることが望ましい。ここで、Clのド
ープ量の下限をCaS1モル当たり0.0001モルと
するのは、Clのドープ量が0.0001モル以上で輝
度向上が見られるためである。また、Clのドープ量の
上限を0.1モルとするのは、Clのドープ量が0.1
モルより多くなると、蛍光表示管に用いるフィラメント
状酸化物陰極のClによる劣化が大きくなるためであ
る。
【0016】次に、CaSにドープするMnのドープ量
について説明する。図1は、この実施の形態に係る低速
電子線励起蛍光体のMnのドープ量を変えて相対輝度を
測定した結果を示すグラフである。同図において、縦軸
は相対輝度を示し、単位は%である。また、横軸はMn
のドープ量を示し、単位はモルである。ここで、Mnの
ドープ量が0のときを相対輝度100%としている。な
お、測定に用いた低速電子線励起蛍光体は、CaS1モ
ル当たり、Eu、Li及びClがそれぞれ0.001モ
ル含まれている。図1において、相対輝度は、Mnのド
ープ量が0から0.001モルの間で100%から19
0%へ増加し、0.001から0.0015モルの間で
ほぼ190%を示し、0.0015モルから0.002
モルの間で190%から180%へ減少した。この結果
から、Mnのドープにより輝度向上効果が得られること
がわかる。
【0017】一方、この実施の形態に係る低速電子線励
起蛍光体は、Euのドープ量とMnのドープ量のモル比
によって発光色が変化するため、赤色発光蛍光体として
用いることのできるMnのドープ量は限られた範囲とな
る。図2は、この実施の形態に係る低速電子線励起蛍光
体のMnのドープ量を変えてCIE色度座標値(x、
y)を求めた結果を示すグラフである。同図において、
縦軸はCIE色度座標のx値とy値を示し、横軸はMn
のドープ量を示す。なお、横軸の単位はモルである。こ
こで、測定に用いた低速電子線励起蛍光体は、輝度測定
に用いたものの一部であり、CaS1モル当たり、E
u、Li及びClがそれぞれ0.001モル含まれてい
る。
【0018】通常、蛍光表示管で赤色とするCIE色度
座標値の範囲は、x=0.60〜0.68,y=0.3
0〜0.39である。図2において、これらxとyの上
下限を水平方向の破線で示し、x値とy値を実線で示す
と、測定に用いた蛍光体を赤色発光蛍光体として用いる
場合のMnドープ量は、0.0008モルを越えないよ
うにすればよいことがわかる。この場合、Euのドープ
量は、0.001モル、Mnのドープ量は0.0008
モル以下であるから、CaS1モルに対するEuのドー
プ量とMnのドープ量のモル比をEu1に対してMnが
0.8を越えないようにすればよい。この場合、図1と
図2より、この蛍光体はMnのドープにより最大70%
の輝度向上効果が得られることがわかる。
【0019】次に、この実施の形態に係る低速電子線励
起蛍光体の製造方法について、CaS1モル当たり、E
u、Li及びClがそれぞれ0.001モル含まれ、M
nが0.0005モル含まれたCaS:Eu,Mn,L
i,Cl蛍光体を製造する場合を例にして説明する。ま
ず、CaS(純度99.99%)、Eu23、MnCO
3、Li2CO3及びNH4ClをCaS1モル当たり、E
23、MnCO3及びLi2CO3が共に0.0005
モルとなり、NH4Clが0.001モルとなるように
それぞれ秤量した後、アルミナ乳鉢に入れて十分に混合
する。
【0020】次に、混合粉をアルミナるつぼに入れ、窒
素雰囲気中で1000℃に加熱して2時間焼成した後、
焼成物をアルミナ乳鉢に入れて粉砕し粉末状にする。こ
れにより、CaS1モル当たり、Eu、Li及びClが
それぞれ0.001モル含まれ、Mnが0.0005モ
ル含まれたCaS:Eu,Mn,Li,Cl蛍光体が製
造される。なお、焼成時の雰囲気は窒素雰囲気に限られ
るものではなく、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気や窒
素と水素の混合ガスのような弱還元性雰囲気であっても
よい。
【0021】次に、前述した相対輝度を測定する方法に
ついて説明する。まず、測定しようとする蛍光体に25
wt%のIn23を混合し、さらにビヒクルを加えてよ
く撹拌してペースト状とし、蛍光体ペーストを得る。次
に、この蛍光体ペーストをスクリーン印刷法により蛍光
表示管用の陽極基板上に所定のパターンで印刷した後、
焼成する。次に、この陽極基板上にグリッドメッシュと
フィラメントカソードを設置し、その上からガラス容器
で覆った後、内部を真空排気して封じ切ることにより蛍
光表示管を作製する。このようにして作製した蛍光表示
管に、+26Vの励起電圧を陽極に印加するとともに、
1/12のデューティ比で駆動して蛍光体を発光させ、
輝度計で発光輝度を測定する。
【0022】この実施の形態では、CaS:Eu,M
n,Li,Cl蛍光体を例に説明したが、これに限られ
るものではなく、CaSにEuとMnがドープされた蛍
光体(以下、CaS:Eu,Mn蛍光体と記す)、Ca
SにEu、Mn及びLiがドープされた蛍光体(以下、
CaS:Eu,Mn,Li蛍光体と記す)、CaSにE
u、Mn及びClがドープされた蛍光体(以下、Ca
S:Eu,Mn,Cl蛍光体と記す)などにおいても、
同様に輝度が向上することは言うまでもない。また、C
aSにEuと同時にドープする元素はMnに限られるも
のではなく、CaSを蛍光体母体とし、Euによる発光
波長よりも波長の短い可視光の発光中心となる元素であ
ればよい。
【0023】また、従来のCaS:Eu蛍光体のCIE
色度座標はx=0.67,y=0.33であるのに対
し、代表的なZnCdS:Ag,Cl蛍光体のCIE色
度座標はx=0.61,y=0.39であるため、Ca
S:Eu蛍光体は、ZnCdS:Ag,Cl蛍光体より
も赤みが強く、ZnCdS:Ag,Cl蛍光体と置き換
えると発光色が異なってしまうが、この実施の形態によ
れば、CaS1モルに対するEuのドープ量とMnのド
ープ量のモル比を適切に選ぶことにより、ZnCdS:
Ag,Cl蛍光体の発光色に近い発光色が得られる。
【0024】次に、この発明の低速電子線励起蛍光体を
用いた蛍光表示管の実施の形態について説明する。図3
は、この実施の形態に係る蛍光表示管の構成を示し、こ
の蛍光表示管はガラス基板1上に所定のパターンを有す
る配線層2が形成されており、配線層2の上にはスルー
ホール3aを有する絶縁層3が形成されている。この絶
縁層3の表面には、スルーホール3aを通して配線層2
に導通接続された所定パターンの陽極4が形成されてお
り、この陽極4上にCaS:Eu,Mn,Li,Cl蛍
光体と酸化インジウム(In23)が混合された蛍光体
膜5が被着形成されている。
【0025】蛍光体膜5の上方には、グリッド6が配置
されており、グリッド6の上方には、タングステン細線
に(Ba,Sr,Ca)Oをコートしたフィラメント状
酸化物陰極7が配置されている。フィラメント状酸化物
陰極7の上方には、透光性のフェースガラス9が配置さ
れ、枠状の側壁8によりガラス基板1から所定の間隔に
保持されている。ガラス基板1と側壁8とフェースガラ
ス9とは低融点のフリットガラス10により封着され、
真空容器が形成されて10-3〜10-5Paの真空に保持
されている。そして、側壁8とガラス基板1との接触部
を貫通して複数のリード(図示せず)が設けられ、これ
らのリードにより上述した陰極7、グリッド6及び陽極
4へ外部から電気信号が与えられている。
【0026】ここで、陽極4上に蛍光体膜5を被着形成
する方法は、従来の製造方法と同じでよい。例えば、適
当な有機バインダーにCaS:Eu,Mn,Li,Cl
蛍光体とIn23を混合して得た蛍光体ペーストを、陽
極4上にスクリーン印刷した後、空気中で約500℃に
加熱して焼成し、蛍光体膜5中に存在する有機バインダ
ーを分解させて形成する。これにより、CaS:Eu,
Mn,Li,Cl蛍光体とIn23とが混じり合った蛍
光体膜5が陽極4上に形成される。なお、有機バインダ
ーは焼成過程で分解する際、CO2あるいはCOとなっ
て燃焼するため、周囲の雰囲気を中性あるいは還元性に
するので、蛍光体の酸化を抑えることができる。よっ
て、CaSのように酸化によって劣化しやすい蛍光体を
用いる場合は、蛍光体ペースト中の有機バインダーの量
を増やしておくことが望ましい。
【0027】この場合、CaS:Eu,Mn,Li,C
l蛍光体のEu、Li及びClの各ドープ量をCaS1
モル当たりそれぞれ0.001モルとし、Mnのドープ
量をCaS1モル当たり0.0005モルとした。ま
た、In23の添加割合は、蛍光体に対して25wt%
とした。なお、In23の混合量は、図4に示すよう
に、5wt%未満の領域と30wt%を超える領域で輝
度が20%以上減少するので、5wt%以上30wt%
以下の範囲にすることが望ましく、さらに好ましい範囲
は、輝度が最大となる18wt%〜25wt%である。
輝度が低下するのは、5wt%未満の領域では蛍光面全
体の導電性が不足するためであり、30wt%を超える
領域では非発光物質であるIn23の割合が高くなるた
めと考えられる。なお、この蛍光表示管の製造方法は、
公知の蛍光表示管と同様であるので、説明を省略する。
【0028】この実施の形態の蛍光表示管では、蛍光体
膜に用いる蛍光体としてCaS:Eu,Mn,Li,C
l蛍光体を例に説明したが、これに限られるものではな
く、前述したCaS:Eu,Mn蛍光体、CaS:E
u,Mn,Li蛍光体、CaS:Eu,Mn,Cl蛍光
体なども同様に用いることができる。CaS:Eu,M
n蛍光体とCaS:Eu,Mn,Li蛍光体は、Ca
S:Eu,Mn,Li,Cl蛍光体に比べて輝度が低く
なるが、Clを含まないため酸化物陰極を劣化させる恐
れがないという利点があるので、用途に応じて使い分け
るとよい。なお、この発明に係る蛍光表示管の実施の形
態を、図3に示すような蛍光体膜5の発光を透光性のフ
ェースガラス9を通して観察する構造の蛍光表示管で説
明したが、これに限られるものではなく、蛍光体膜5中
にこの発明による蛍光体を含有しているものであれば、
その他の構造は公知の蛍光表示管と同様のものであって
よい。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、この発明は、硫化
カルシウムを蛍光体母体とし、ユウロピウムを発光中心
として含む低速電子線励起蛍光体において、硫化カルシ
ウムを蛍光体母体とし、ユーロピウムによる発光波長よ
りも波長の短い可視光の発光中心となる元素をさらに含
むように構成したので、発光色を視感度の高い短波長側
にずらして輝度を高くすることができ、低速電子線によ
って実用上必要な輝度が得られる。また、蛍光体母体を
電子線照射に対して安定な硫化カルシウムで構成してい
るので、電子線照射による蛍光体の分解を少なくするこ
とができる。また、この発明に係る蛍光表示管は、前述
した低速電子線励起蛍光体と酸化インジウムが混合され
た蛍光体膜を備えるようにしたので、低加速電圧で実用
上必要な輝度が得られるとともに、蛍光体の分解による
陰極のエミッションへの悪影響が少なく、長寿命化が図
れるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態に係る低速電子線励起
蛍光体のMnドープ量と相対輝度の関係を示すグラフで
ある。
【図2】 この発明の実施の形態に係る低速電子線励起
蛍光体のMnドープ量とCIE色度座標値の関係を示す
グラフである。
【図3】 この発明に係る蛍光表示管の一実施例による
構成を示す断面図である。
【図4】 この発明に係る蛍光表示管のIn23添加量
の違いによる輝度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1…ガラス基板、2…配線層、3…絶縁層、3a…スル
ーホール、4…陽極、5…蛍光体膜、6…グリッド、7
…陰極、8…側壁、9…フェースガラス、10…フリッ
トガラス。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硫化カルシウムを蛍光体母体とし、ユウ
    ロピウムを発光中心として含む低速電子線励起蛍光体に
    おいて、 前記硫化カルシウムを蛍光体母体とし、前記ユーロピウ
    ムによる発光波長よりも波長の短い可視光の発光中心と
    なる元素をさらに含むことを特徴とする低速電子線励起
    蛍光体。
  2. 【請求項2】 前記元素は、マンガンであることを特徴
    とする請求項1記載の低速電子線励起蛍光体。
  3. 【請求項3】 前記ユウロピウムの含有量は、前記硫化
    カルシウム1モル当たり0.0001モル以上0.1モ
    ル以下であり、 前記ユウロピウムと前記マンガンのモル比は、ユウロピ
    ウム1に対してマンガンが0.8を越えないことを特徴
    とする請求項2記載の低速電子線励起蛍光体。
  4. 【請求項4】 さらにリチウムを含むことを特徴とする
    請求項2又は請求項3に記載の低速電子線励起蛍光体。
  5. 【請求項5】 前記リチウムの含有量は、前記硫化カル
    シウム1モル当たり0.0001モル以上0.1モル以
    下であることを特徴とする請求項4記載の低速電子線励
    起蛍光体。
  6. 【請求項6】 さらに塩素を含むことを特徴とする請求
    項2から請求項5のいずれかに記載の低速電子線励起蛍
    光体。
  7. 【請求項7】 前記塩素の含有量は、前記硫化カルシウ
    ム1モル当たり0.0001モル以上0.1モル以下で
    あることを特徴とする請求項6記載の低速電子線励起蛍
    光体。
  8. 【請求項8】 真空容器内に、陰極と、蛍光体膜の付着
    した陽極とが設置され、前記陰極から放出された電子を
    前記蛍光体膜に衝突させて発光させる蛍光表示管におい
    て、 前記蛍光体膜は、請求項1から請求項7のいずれかに記
    載の低速電子線励起蛍光体と酸化インジウムの混合物で
    構成されていることを特徴とする蛍光表示管。
  9. 【請求項9】 前記酸化インジウムは、前記低速電子線
    励起蛍光体に対して5wt%以上30wt%以下の範囲
    で混合されていることを特徴とする請求項8記載の蛍光
    表示管。
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