JP3620969B2 - 圧力スウィング吸着式ガス分離装置を用いた酸素富化空気の製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、設備コストおよび設備規模の小さい酸素富化空気の製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気から窒素、酸素などの成分ガスを選択的に分離し、分離した成分ガスを各種用途に利用することは、様々な分野において広く行われている。
例えば、空気から分離した純度99%以上の高純度窒素は、絶縁シールド用のガスなどとして用いられている。また、空気から分離した酸素を30%程度含む酸素富化空気は、発電所のボイラーの燃焼効率を上げるための供給ガスなどとして用いられている。
【0003】
従来、空気からこれらの成分ガスを分離する方法の一つとして、吸着剤を用いたPSA(圧力スウィング吸着)式ガス分離法がある。PSA式ガス分離法は、ある特定のガスを吸着剤に選択的に吸着させることで、吸着されないで残ったガスとの分離を図るものである。
【0004】
PSA式ガス分離法による分離装置は、吸着剤が充填された複数の、例えば2つの、吸着塔を備える。それぞれの吸着塔は、吸着モードおよび再生モードを繰返す。吸着モードは、吸着塔に送られた加圧空気から所望するガス以外のガスを吸着剤に吸着させて所望のガスを分離する動作である。再生モードは、吸着塔内を減圧(例えば大気圧に)して吸着剤を再生する動作である。この2つのモードを、例えば2つの吸着塔の間で交互に繰返して一方の吸着塔が吸着モードのときに他方の吸着塔を再生モードとすることで、ガス分離を連続して行う。
【0005】
PSA式ガス分離法による酸素の分離装置は、例えば吸着剤に窒素を優先的に吸着させて空気から酸素を連続的に分離する。また、PSA式ガス分離法による窒素の分離装置は、例えば吸着剤に酸素を優先的に吸着させて空気から窒素を連続的に分離する。
【0006】
ところで、空気中の酸素濃度は窒素濃度の約4分の1でしかないため、PSA式酸素分離装置は、同程度のガスを分離して製造する能力を有するPSA式窒素分離装置と比べて、吸着塔などにかかるコストおよび設備面積などが大きなものとなっている。
【0007】
従って、前述のように酸素によって富化された程度の空気を製造するなどのためにPSA式酸素分離装置を専用に備えることは、設備コストおよび設備規模などの点において見合わないものであった
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、設備コストおよび設備規模の小さい酸素富化空気の製造装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は、PSA式窒素ガス分離装置から排出される酸素富化空気に着目した。PSA窒素ガス分離装置は、吸着剤を再生したときに、吸着剤から脱離した酸素によって富化された空気が吸着塔から排出される。この酸素富化空気は、製造する窒素の純度が99%の場合、酸素を30%程度含んでおり、発電所のボイラーの燃焼効率を上げるなどのためには十分な酸素濃度となっている。
【0010】
ところで、PSA式窒素ガス分離装置は、吸着剤の再生は断続的にしか行われないため、そのままでは酸素富化空気の需要先に連続的に供給することができない。
【0011】
そこで、本発明においては、PSA式窒素ガス分離装置の吸着塔から排出される酸素富化空気をガス貯留容器を通して供給することとし、吸着塔内を大気圧にするときには吸着塔とガス貯留容器との間の連絡を絶ちガス貯留容器内に残留する酸素富化空気のみを供給することとした。さらに、ガス貯留容器の下流側には圧力調整手段を配置し、供給される酸素富化空気の圧力を一定に調整することとした。このようにすることにより、大気圧を上回る一定圧力の酸素富化空気を酸素富化空気の需要先に連続的に供給することが可能となり、PSA式窒素ガス分離装置を用いた設備コストおよび設備規模の小さい酸素富化空気の製造装置を提供することが可能となる。
【0012】
すなわち、本発明によれば、複数の吸着塔をそれぞれ吸着モード、生成モード、および再生モードで動作させて空気から酸素を吸着する圧力スウィング吸着式ガス分離装置と、再生モードを終了した吸着塔内に高圧の空気を供給して該高圧の空気で満たし該吸着塔を吸着モードで動作させるための高圧空気供給手段と、吸着モードを終了した吸着塔と連絡して該吸着塔を生成モードで動作させ、生成した中間圧力の酸素富化空気を貯留するための空気貯留容器と、生成モードを終了した吸着塔内を大気開放して該吸着塔を再生モードで動作させるための再生手段と、複数の吸着塔を順次、吸着、生成および再生モードの順に動作させるために高圧空気供給手段、空気貯留容器および再生手段の順に連絡させ、再生モードを終了した吸着塔を吸着モードで動作させるために高圧空気供給手段と連絡させる間、吸着モードを終了した吸着塔を、生成/再生モードで動作させるために、空気貯留容器と連絡させたのち空気貯留容器との連絡を絶って再生手段と連絡させるための切換え手段と、空気貯留容器と接続され、吸着塔が生成モードで動作する間に空気貯留容器から送出される酸素富化空気を大気圧よりも高い一定の圧力に調整して酸素富化空気の需要先へ連続して供給するための圧力調整手段とを具備することを特徴とする酸素富化空気の製造装置が提供される。
【0013】
本発明においては、各吸着塔と空気貯留容器との間に、各吸着塔から送出された酸素富化空気を圧縮加圧して空気貯留容器へ送出するための空気圧縮手段をさらに具備することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る酸素富化空気製造装置の一例を示す模式図である。
本装置は、PSA式窒素ガス分離装置100と酸素富化空気供給部200とを備えている。
【0015】
PSA式窒素ガス分離装置100は、空気圧縮機、複数の吸着塔、窒素貯留容器、消音器、および弁を備えている。また、酸素富化空気供給部200は、酸素富化空気貯留容器、圧力計、および圧力調整弁などの弁を備えている。
【0016】
まず、PSA式窒素ガス分離装置100について説明する。
空気圧縮機3は、例えば、約7kg/cm2 ・Gの圧縮加圧された空気を、吸着塔へ供給することができる。
【0017】
複数の吸着塔は、内部にカーボンモレキュラーシーブスなどの吸着剤を備えている。吸着剤は、空気から酸素を優先的に吸着して窒素を分離する。吸着剤の吸着量は、接触する空気の圧力が高いほど大きい。また、吸着剤は、ガスをある程度吸着すると吸着能力が低下するが、大気圧下において吸着されたガスが十分に脱離して吸着能力が回復し再生する。なお、図1においては、複数の吸着塔を有する装置の一例として、第1吸着塔10および第2吸着塔20の2つの吸着塔を有する装置を示している。
【0018】
第1吸着塔10のガス入口側には、ガス入出用の配管が接続され、この配管は2つに分岐している。分岐した配管の一方は第1吸着塔10に加圧空気を導入するための配管であり、加圧空気導入弁1aが介装されている。分岐した配管の他方は、後述するように第1吸着塔10内の吸着剤から脱離したガスによる酸素富化空気を排出するための配管であり、酸素富化空気排出弁1bが介装されている。
【0019】
第2吸着塔20のガス入口側にも、同様に分岐した配管が接続されている。分岐した配管の一方は第2吸着塔20に加圧空気を導入するためであり、加圧空気導入弁2aが介装されている。分岐した配管の他方は、後述するように第2吸着塔20内の吸着剤から脱離したガスによる酸素富化空気を排出するための配管であり、酸素富化空気排出弁2bが介装されている。
【0020】
第1吸着塔10および第2吸着塔20にそれぞれ接続された上述の加圧空気を導入するための配管は、一本の配管に継合されて前述の空気圧縮機3に接続されている。
【0021】
第1吸着塔10および第2吸着塔20にそれぞれ接続された上述の酸素富化空気を排出するための配管は、一本の配管に継合されたのち再び分岐している。分岐した配管の一方は大気開放弁4を介して消音器5に接続されている。分岐した配管の他方は、酸素富化空気供給部200に伸びている。
【0022】
第1吸着塔10のガス出口側には、空気から分離された窒素ガスを送出するための配管が接続されている。この配管には窒素送出弁1cが介装されている。
第2吸着塔20のガス出口側にも、空気から分離された窒素ガスを送出するための配管が接続されている。この配管には窒素送出弁2cが介装されている。
【0023】
第1吸着塔10および第2吸着塔20にそれぞれ接続された上述の窒素ガスを送出するための配管は、1本の配管に継合されて窒素貯留容器6に接続されている。窒素貯留容器6の下流側には、圧力調整弁7が介装された配管が接続されている。圧力調整弁7が介装された配管は窒素ガスの需要先に接続されており、この配管を通して、圧力調整弁7によって一定圧力に調整された窒素ガスが、窒素貯留容器6から需要先に供給される。
【0024】
次に、酸素富化空気供給部200について説明する。
前述したように、酸素富化空気を排出するための分岐した配管の他方が、吸着塔から酸素富化空気供給部200へと伸びている。この配管は、ガス貯留容器入口弁8を介して酸素富化空気貯留容器9に接続されている。
【0025】
酸素富化空気貯留容器9は、PSA式窒素ガス分離装置100から排出される酸素富化空気の流れを一時的に貯えて、酸素富化空気貯留容器9の下流側にある後述の圧力調整弁へ送出するためのものである。
【0026】
酸素富化空気貯留容器9には圧力計11が接続されている。圧力計11は、酸素富化空気貯留容器9内の圧力に基づいた信号を出す。
酸素富化空気貯留容器9の下流側には、圧力調整弁12が介装された配管が接続されており、この配管は、通常大気圧程度の酸素富化空気を使用する酸素富化空気の需要先に接続されている。
【0027】
圧力調整弁12は前述の圧力計11に電気的に接続されている。圧力調整弁は、圧力計11からの信号に基づいて、酸素富化空気貯留容器9から送出される酸素富化空気の圧力を所望の一定の値に調整して酸素富化空気の需要先へ送出する。圧力の調整は、酸素富化空気を減圧することで行う。具体的には、酸素富化空気貯留容器9内の酸素富化空気の圧力が所望の圧力よりも高ければ高いほど、圧力調整弁12のオリフィスの径をより小さくするなどして酸素富化空気をより減圧して、圧力を所望の一定の値にする。このようにして、酸素富化空気貯留容器9内の酸素富化空気の圧力の値にかかわらず、所望の一定圧力に調整された酸素富化空気を需要先へと供給することができる。
【0028】
図2は、本発明に係る酸素富化空気供給部200の別の例を示す模式図である。
この例においては、圧力計11が、酸素富化空気貯留容器9にではなく圧力調整弁12の下流側に配置されている。つまり、圧力計11は、圧力調整弁12を通過したあとの酸素富化空気の圧力、すなわち最終的に酸素富化空気の需要先へ送出される酸素富化空気の圧力に直接基づく信号を出す。
【0029】
圧力調整弁12は、この圧力計11からの信号に基づいて、最終的に供給される酸素富化空気の圧力を所望の一定値とする。
図3は、本発明に係る酸素富化空気製造装置の別の例を示す模式図である。
【0030】
図3の装置は、以下に説明する空気圧縮機および圧力計以外については、図1に示した装置と同様の構成をなす。
図3の装置は、PSA式窒素ガス分離装置100と酸素富化空気貯留容器9との間に、空気圧縮機13をさらに具備している。より詳細には、酸素富化空気供給部200においてガス貯留容器入口弁8と酸素富化空気貯留容器9との間に、空気圧縮機13をさらに具備している。空気圧縮機13は、吸着塔からの酸素富化空気を、例えば約5kg/cm2 ・Gないし約7kg/cm2 ・Gの圧力に圧縮加圧する能力を有する。また、空気圧縮機13は、後述するように、例えば酸素富化空気貯留容器9に取付けられた圧力計14からの信号に基づいて、その運転を容量制御することなどができる。
【0031】
図3の装置においては、第1および第2の吸着塔10、20から放出された酸素富化空気を、一度、空気圧縮機13によって圧縮加圧してから、酸素富化空気貯留容器9へと送ることができる。こうすることによって、大気圧を大きく上回る圧力を有する酸素富化空気を、酸素富化空気貯留容器9から圧力調整弁12を通して需要先へと供給することができる。
【0032】
また、図3の装置は、図2に示したような圧力調整弁12の下流側に配置された圧力計11を備えている。図2において説明したように、圧力調整弁12はこの圧力計11からの信号に基づいて、最終的に供給される酸素富化空気の圧力を一定とする。
【0033】
空気圧縮器13は、ガス貯留容器入口弁8の開閉とともに、その動作を開始し、また停止する。つまり、ガス貯留容器入口弁8が開いているときにのみ空気圧縮機13は動作し、ガス貯留容器入口弁8が閉じているときには空気圧縮機13は停止しているか、または無負荷運転をしている。こうすることで、ガス貯留容器入口弁8が開いているときにのみ空気圧縮機13に負荷がかかるため、空気圧縮機13を効率的に動作させることが可能となる。
【0034】
次に、図1に示した装置の動作について説明する。
図1に示した装置の動作は、2つの吸着塔のうちの一方を吸着モードで動作させながら同時に他方を生成モードおよび再生モードで動作させて行なわれる。
【0035】
吸着モードとは、吸着剤により空気中の酸素を吸着して窒素を生成するモードである。生成モードとは、吸着剤から吸着した酸素を脱離させてこの脱離した酸素により酸素富化空気を生成するモードである。再生モードとは、該吸着剤を再生して該吸着剤の吸着能力を回復するモードである。吸着モードと、生成および再生モードとを、2つの吸着塔の間で交互に行わせることで、窒素の生成、酸素富化空気の生成、および吸着剤の再生を連続して行うことができる。
【0036】
吸着モードは、以下のようにして行われる。まず、空気圧縮機3から圧縮加圧された空気をいずれか一方の吸着塔内へ導入する。吸着塔内の吸着剤によって空気中の酸素が優先的に吸着されて、吸着されないで残った窒素ガスが吸着塔から出ていく。このようにして得られた窒素は、例えば約99%の窒素濃度を有する高純度なものとなる。窒素ガスは窒素貯留容器6へと送られ、圧力調整弁7によって一定の圧力に調整されて、窒素の需要先へと送出される。
【0037】
生成モードは、以下のようにして行われる。つまり、酸素富化空気貯留容器入口弁8を開けて、圧縮空気が導入されなかった他方の吸着塔を酸素富化空気貯留容器9と連絡する。ガス貯留容器入口弁8は、所定の時間(生成時間)の間、開いている。吸着塔を酸素富化空気貯留容器9と連絡することで、吸着塔内の加圧空気が酸素富化空気貯留容器9へと流れて膨張し、吸着塔内および酸素富化空気貯留容器9内に加圧空気がほぼ一様に広がり、吸着塔内の圧力が下がる。その結果、吸着塔内の圧力は、加圧空気の圧力よりは低く大気圧よりは高い中間圧力となる。吸着塔内の空気の圧力が下がると、前述したように吸着剤の吸着量が減るため、吸着剤から吸着した酸素の一部が脱離する。脱離した酸素は、吸着塔内および酸素富化空気貯留容器9内に広がる。
【0038】
このようにして、加圧空気および酸素が吸着塔内および酸素富化空気貯留容器9内に広がる結果、通常の空気と比べて酸素濃度が高い空気、すなわち酸素富化空気が吸着塔内および酸素富化空気貯留容器9内に生成されることになる。酸素富化空気の酸素濃度は、例えば、吸着モードで生成された窒素の窒素濃度が約99%のときに、約30〜35%である。生成された酸素富化空気は、酸素富化空気貯留容器9から圧力調整弁12を通して、一定圧力で酸素富化空気の需要先に送出される。
【0039】
本発明においては、後述するように、圧力調整弁12へ送出する酸素富化空気の圧力が常に大気圧を上回るように、酸素富化空気貯留容器9の容量ならびに前述の生成時間などの装置の構成条件が設定されている。従って、圧力調整弁12を通して酸素富化空気の需要先へ送出される酸素富化空気は、常に大気圧を上回る一定の圧力に調整される。
【0040】
再生モードは、以下のようにして行われる。つまり、ガス貯留容器入口弁8を閉じて大気開放弁4を開く。大気開放弁4は、所定の時間(再生時間)の間、開いている。大気開放弁4を開くことで、吸着塔内は消音器5を通して大気開放されて大気圧になり、該吸着塔内の吸着剤は完全に再生される。該吸着塔が大気開放されている間、酸素富化空気貯留容器9に残存する酸素富化空気が引き続いて、圧力調整弁12を通して、一定の圧力で需要先へ送出される。
【0041】
本発明においては、後述するように、圧力調整弁12へ送出される酸素富化空気貯留容器9内に残存する酸素富化空気の圧力が常に大気圧を上回るように、酸素富化空気貯留容器9の容量および前述の再生時間などの装置の構成条件が設定されている。従って、圧力調整弁12を通して酸素富化空気の需要先へ送出される酸素富化空気は、常に大気圧を上回る一定の圧力に調整されている。
【0042】
以上説明した吸着モードと、生成および再生モードとを、2つの吸着塔の間で交互に行わせることで、窒素の生成、酸素富化空気の生成、および吸着剤の再生を連続して行うことができる。
【0043】
図1に示した装置の動作を、より具体的に以下に説明する。
図1の装置は、動作を開始する前は以下のような初期状態にある。すなわち、第1吸着塔10の窒素送出弁1cが開き、また、第1吸着塔10の酸素富化空気排出弁1bおよび第2吸着塔20の酸素富化空気排出弁2bが開いている。他の全ての弁は閉じている。
【0044】
上述の初期状態から、第1吸着塔10を吸着モードで動作させる。まず、空気圧縮機3から圧縮加圧された空気を吸着塔へ供給する。加圧空気の供給とともに、第1吸着塔10の酸素富化空気排出弁1bを閉じて、加圧空気導入弁1aを開ける。こうして、第1吸着塔10が吸着モードで動作する。
【0045】
吸着モードにある第1吸着塔10は、以下のように動作する。つまり、加圧空気が加圧空気導入弁1aを通って第1吸着塔10内に導入され、第1吸着塔10内の吸着剤によって加圧空気中の酸素が選択的に吸着される。吸着されないで残った窒素は第1吸着塔10から出ていき、窒素送出弁1cを通って窒素貯留容器6に送られる。続いて、窒素は窒素貯留容器6から圧力調整弁7を通して窒素の需要先に供給される。圧力調整弁7によって、窒素の圧力は所望する一定圧力に調整される。
【0046】
第1吸着塔10が吸着モードで動作を開始してから所定の時間(切換え時間)が経過したのちに、加圧空気の供給を第1吸着塔10から第2吸着塔20へと切換える。これは、第1吸着塔10を生成および再生モードで動作させて、第2吸着塔20を吸着モードで動作させるためである。切換え時間としては、例えば1分間から数分間程度である。
【0047】
切換える方法としては、まず、第1吸着塔10の加圧空気導入弁1aおよび窒素送出弁1cを閉じ、酸素富化空気排出弁1bを開く。それとともに、第2吸着塔20の酸素富化空気排出弁2bを閉じ、加圧空気導入弁2aおよび窒素送出弁2cを開く。こうして、加圧空気は第1吸着塔10ではなく第2吸着塔20内へと導入され、第1吸着塔10は生成モードで動作し、第2吸着塔20が吸着モードで動作することになる。
【0048】
吸着モードにある第2吸着塔20は、前述した吸着モードにある第1吸着塔10と同じように動作する。つまり、導入された加圧空気中の酸素は第2吸着塔20内の吸着剤によって吸着される。吸着されないで残った窒素は、第2吸着塔20から窒素送出弁2cを通って窒素貯留容器6に送られ、圧力調整弁7を通して一定圧力で窒素の需要先に供給される。
【0049】
生成モードにある第1吸着塔10は、酸素富化空気貯留容器9などとともに以下のように動作する。
前述したように、酸素富化空気の生成を行う。まずガス貯留容器入口弁8を開く。ガス貯留容器入口弁8は、所定の時間(生成時間)の間、開いている。ガス貯留容器入口弁8が開くことで、第1吸着塔10と酸素富化空気貯留容器9とが連絡し、前述したように、第1吸着塔10内および酸素富化空気貯留容器9内に酸素富化空気が生成される。生成された酸素富化空気は、酸素富化空気貯留容器9から圧力調整弁12を通して、酸素富化空気の需要先に送出される。前述したように、圧力調整弁12を通して送出される酸素富化空気は、大気圧を上回る一定の圧力に調整されている。
【0050】
次に、第1吸着塔は再生モードで動作して、吸着剤の再生を行う。つまり、ガス貯留容器入口弁8が開いてから上述した生成時間が過ぎたのちに、ガス貯留容器入口弁8を閉じて大気開放弁4を開く。大気開放弁4は、所定の時間(再生時間)の間、開いている。大気開放弁4が開くことで、第1吸着塔10内は大気圧になり、第1吸着塔10内の吸着剤は再生される。第1吸着塔10が大気開放されている間、つまり再生時間の間、酸素富化空気貯留容器9に残存する酸素富化空気が引き続いて、圧力調整弁12を通して、前述したように、大気圧を上回る一定の圧力で需要先へ送出される。
【0051】
以上のように第2吸着塔20が吸着モードで動作を開始してから前述と同じ切換え時間が経過したのちに、言い換えれば、大気開放弁4が開いてから上述した再生時間が過ぎたのちに、加圧空気の供給を第2吸着塔20から第1吸着塔10へと再び切り換える。これは、第2吸着塔20を今度は生成および再生モードで動作させて、第1吸着塔10を再び吸着モードで動作させるためである。
【0052】
なお、これまでの説明で明らかなように、切換え時間は生成時間と再生時間との和である。
切換える方法としては、大気開放弁4を閉じる。それとともに、第2吸着塔20の加圧空気導入弁2aおよび窒素送出弁2cを閉じ、酸素富化空気排出弁2bを開く。また、第1吸着塔10の酸素富化空気排出弁1bを閉じ、加圧空気導入弁1aおよび窒素送出弁1cを開く。こうして、加圧空気は第2吸着塔20ではなく第1吸着塔10内へと再び導入され、第2吸着塔20は生成モードで動作し、第1吸着塔10が再び吸着モードで動作することになる。
【0053】
吸着モードにある第1吸着塔10は前述のように動作し、また生成モードおよび再生モードにある第2吸着塔20は、前述した生成モードおよび再生モードの第1吸着塔10と同じ様に動作する。2つの吸着塔がこのように動作する結果、やはり、窒素が一定圧力で窒素の需要先へ供給され、酸素富化空気が大気圧を上回る一定の圧力で酸素富化空気の需要先へ供給され、また、吸着剤が再生される。
【0054】
以上のように、吸着モードと、生成および再生モードとを、2つの吸着塔の間で交互に行わせることで、窒素の生成、酸素富化空気の生成、および吸着剤の再生を連続して行うことができる。
【0055】
図4は、図1の装置における酸素富化空気貯留容器9内での酸素富化空気の圧力の変化の一例を示すグラフである。図4において、横軸は時間を示す。また、縦軸はゲージ圧で示した酸素富化空気の圧力を示す。
【0056】
図4のグラフの原点(時間0秒)において、加圧空気の供給が切り換わり、切換え時間、特に生成時間が始まる。すなわち、ガス貯留容器入口弁8が開いて、生成モードの吸着塔から酸素富化空気貯留容器9内に酸素富化空気が送出される。この酸素富化空気によって酸素富化空気貯留容器9内の圧力は急激に上昇する。しかし、酸素富化空気貯留容器9から酸素富化空気の需要先へ酸素富化空気が供給されているため、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は減少する。
【0057】
吸着塔を大気開放するためにガス貯留容器入口弁8が閉じられて、再生時間に入ると、酸素富化空気貯留容器9内に残存する酸素富化空気のみが需要先へ供給され続けることになるため、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は急に減少する。
【0058】
加圧空気の供給が再び切り換わり、切換え時間、特に生成時間に再び入る。すなわち、ガス貯留容器入口弁8が再び開き、生成モードにあるもう一方の吸着塔から酸素富化空気貯留容器9内に酸素富化空気が送出され、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は再び上昇して、上述したように減少する。
【0059】
このように、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は、上昇と減少を繰り返す。図4から明らかなように、ガス貯留容器入口弁8が開く寸前の圧力、すなわち、加圧空気の供給が切換わる寸前の圧力が、酸素富化空気貯留容器9内の最低の圧力である。
【0060】
この酸素富化空気貯留容器9の最低圧力が、圧力調整弁12によって調整される酸素富化空気の一定圧力として取り得る最大値である。つまり、前述したように、圧力調整弁12は、酸素富化空気貯留容器9の圧力を増加させることなく減圧することのみによって酸素富化空気の圧力を一定に調整する。そのため、需要先に供給される酸素富化空気の圧力は、この最低圧力以下の一定の値となる。図4には、この最低圧力で一定圧で最終的に供給される酸素富化空気の圧力の様子も示す。
【0061】
本発明においては、この最低圧力が大気圧を上回るように、前述したように装置の構成条件を設定する。最低圧力が大気圧を上回ることによって、大気圧を上回る圧力を有する酸素富化空気を、大気圧程度の酸素富化空気を使用する酸素富化空気の需要先へ、連続して供給することが可能となる。
【0062】
装置の構成条件としては、前述したように、例えば、酸素富化空気貯留容器の容量、生成時間および再生時間などが挙げられる。これらの構成条件を、PSA式窒素ガス分離装置における各吸着塔の容量、吸着塔の間の切換え時間、吸着塔を切換えるときの吸着塔内の圧力、および需要先への酸素富化空気の供給量などに応じて、設定する。
【0063】
特に、酸素富化空気貯留容器9は、その容量が小さいほど、吸着塔から排出される酸素富化空気のうち大気へ開放せずに圧力調整弁12へ送出できる割合が小さくなり、逆に容量が大きいほど、大気へ開放せずに圧力調整弁12へ送出できる酸素富化空気の割合が高くなる。
【0064】
また、本発明においては、定常使用時において最低圧力が動作モードの切り換りごとに同じ値を再現するように、上述の装置の構成条件を設定する。
最低圧力が同じ値を再現しないと、酸素富化空気貯留容器9内の圧力が動作モードの切り換りごとに変動することになる。実際の運用において、需要先への供給量の変動に対しては、例えば酸素富化空気貯留容器9の最低圧力をもとに生成時間と再生時間の割合を調整することで対応する。
【0065】
次に、図3に示した装置の動作について説明する。
図3に示した装置においては、前述したように、吸着塔から排出された酸素富化空気を空気圧縮機によって圧縮加圧してから、酸素富化空気貯留容器へと送出する。前述したように、空気圧縮器13の動作の開始および停止は、ガス貯留容器入口弁8の開閉とともに行う。
【0066】
図5は、図3の装置における酸素富化空気貯留容器9内での酸素富化空気の圧力の変化の一例を示すグラフである。図5において、横軸は時間を示す。また、縦軸はゲージ圧で示した酸素富化空気の圧力を示す。
【0067】
図5のグラフの原点(時間0秒)において、加圧空気の供給が切り換わり、切換え時間、特に生成時間が始まる。すなわち、ガス貯留容器入口弁8が開いて、生成モードの吸着塔から空気圧縮器13を通して酸素富化空気貯留容器9へと、酸素富化空気が送出される。空気圧縮機13から酸素富化空気貯留容器9へ送出される加圧空気の量は、酸素富化空気貯留容器9から酸素富化空気の需要先へと供給される酸素富化空気の量を上回るように設定されている。そのため、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は上昇する。
【0068】
吸着塔を大気開放するためにガス貯留容器入口弁8が閉じられて再生時間に入ると、酸素富化空気貯留容器9内に残存する酸素富化空気のみが需要先へ供給され続けることになるため、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は急に減少する。
【0069】
加圧空気の供給が再び切り換わり、切換え時間、特に生成時間に再び入る。すなわち、ガス貯留容器入口弁8が再び開き、生成モードにあるもう一方の吸着塔から空気圧縮機13を通して酸素富化空気貯留容器9内に酸素富化空気が再び送出され、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は再び上昇して、上述したように減少する。
【0070】
このように、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は、上昇と減少を繰り返す。図4において説明したように、ガス貯留容器入口弁8が開く寸前の圧力、すなわち、加圧空気の供給が切り換わる寸前の圧力が、酸素富化空気貯留容器9内の最低の圧力である。前述したように、この最低圧力が圧力調整弁12によって調整される酸素富化空気の一定圧力の最大値となる。図5には、この最低圧力以下で一定圧で最終的に供給される酸素富化空気の圧力の様子も示す。
【0071】
図3に示した装置の場合には、空気圧縮機13によって酸素富化空気が圧縮加圧されているために、最低圧力が常に大気圧を大きく上回るようにすることができる。そのため、大気圧を上回る圧力中で酸素富化空気を使用する需要先に対しても、酸素富化空気を連続して供給することが可能となる。
【0072】
なお、図3に示した装置においても、最低圧力が供給圧を上回るように、前述したように装置の構成条件を設定する。
また、図3に示した装置においても、定常使用時において最低圧力が動作モードの切り換りごとに同じ値を再現するように、前述したように装置の構成条件を設定する。最低圧力が同じ値を再現しないと、前述したように、酸素富化空気貯留容器9内の圧力が動作モードの切り換りごとに変動することになる。実際の運用において、需要先への供給量の変動に対しては、例えば酸素富化空気貯留容器9内の圧力により圧縮機13の容量制御を行うことで対応する。
【0073】
【実施例】
(実施例1)
図1に示した装置について、供給される酸素富化空気の圧力をシミュレーションした。なお、以下に用いた数値は一例であって、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
【0074】
まず、PSA式窒素ガス分離装置100におけるそれぞれの吸着塔10、20の容積を1.0m3 と仮定し、吸着塔が切換わるときに各吸着塔から排出される酸素富化空気の圧力は3.0kg/cm2 ・Gであると仮定した。従って、各吸着塔から大気圧に排出される酸素富化空気の量は、1回の切り換えごとに3.0Nm3 (=1.0m3 ×3.0kg/cm2 ・G)となる。
【0075】
また、吸着塔の切換え時間は120秒であると仮定した。
さらに、酸素富化空気の供給量としては、大気圧の酸素富化空気を63Nm3 /時の割合で供給するものと仮定した。これは、本実施例の製造装置の有する酸素富化空気の供給能力、90Nm3 /時((3.0Nm3 /120秒)×(3600秒/時))、の70%を需要先へ供給すると仮定するものである。残りの30%の酸素富化空気は、大気へ開放される。
【0076】
以上の仮定のもとで、本実施においては、酸素富化空気貯留容器9の容積を0.84m3 とし、吸着塔を切り換える寸前の酸素富化空気貯留容器9内の最低圧力を0.65kg/cm2 ・Gと設定した。この最低圧力の値は、大気圧をわずかに上回る値であり、大気圧で酸素富化空気を使用する需要先へ、酸素富化空気を供給することを可能にする値である。吸着塔の切り換え時に酸素富化空気貯留容器9内に残存する大気圧以上の酸素富化空気量は、従って、0.546Nm3 (0.84m3 ×0.65kg/cm2 ・G)となる。
【0077】
また、吸着塔の切換え時間120秒は、108秒間の生成時間、12秒間の再生時間から構成されると設定した。再生時間として12秒間あれば、吸着塔内は十分に大気圧に戻るものと推定される。
【0078】
以上のような条件のもとで、加圧空気の供給を第1吸着塔10から第2吸着塔20へ切換えたのちの酸素富化空気貯留容器9内の圧力の変化を、計算によってシミュレーションした。図4に示したシミュレーション結果を参照しながら、以下、説明する。
【0079】
加圧空気の供給を第2吸着塔20へ切換えたときには、第1吸着塔10から排出される酸素富化空気量は、上述のように、3.0Nm3 であり、また酸素富化空気貯留容器9内に残存していた酸素富化空気量は、0.546Nm3 である。
【0080】
吸着塔を切換えるときにガス貯留容器入口弁8が開いて第1吸着塔10と酸素富化空気貯留容器9とが連絡するため、上記3.0Nm3 と0.546Nm3 の酸素富化空気とが混合される。混合される結果、3.546Nm3 の大気圧以上の酸素富化空気が、第1吸着塔10と酸素富化空気貯留容器9の1.84m3 の領域(=1.0m3 +0.84m3 )に一様に分布してこの領域内の圧力が上昇する。この領域内の圧力は、1.927kg/cm2 ・G(=3.546Nm3 /1.84m3 )まで上昇するはずであるが、需要先による酸素富化空気の使用により酸素富化空気貯留容器9から63Nm3 /時の割合で酸素富化空気が送出されるために、領域内の圧力は1.927kg/cm2 ・Gまで上がらず、酸素富化空気の送出によって徐々に低下していく。
【0081】
上述の領域内における圧力の低下は、以下のように計算される。
まず、領域内の3.546Nm3 の量の酸素富化空気から、酸素富化空気が63Nm3 /時の割合で108秒間の生成時間のあいだ需要先へ送出されていくので、領域内における大気圧以上の酸素富化空気量は、3.546Nm3 から、
3.546Nm3 −(63Nm3 /時)×(108秒/(3600秒/時))
=1.656Nm3
まで減少する。
【0082】
領域内の酸素富化空気量がこのように減少する結果、領域内の圧力は、
1.656Nm3 /1.84m3
=0.9kg/cm2 ・G
まで低下する。
【0083】
この圧力は、領域を形成する第1吸着塔10内および酸素富化空気貯留容器9内の両方において実現されている。このように、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は減少しても大気圧を上回っているため、酸素富化空気の需要先へ酸素富化空気を供給することが可能であることが分かる。
【0084】
一方、第1吸着塔10内の圧力が、0.9kg/cm2 ・Gまで低下することから、第1吸着塔10内に残存する酸素富化空気の量は、3.0Nm3 から、
0.9kg/cm2 ・G×1.0m3
=0.9Nm3
まで低下する。
【0085】
108秒の生成時間が経過したのち、ガス貯留容器入口弁8を閉じて大気開放弁4を開け、第1吸着塔10内に残存する酸素富化空気を大気放出する。前述したように、再生時間として12秒間あれば、第1吸着塔10内の0.9kg/cm2 ・Gの圧力を大気圧に戻すのは十分可能であると推定される。
【0086】
ガス貯留容器入口弁8を閉じてから12秒間の再生時間のあいだ、酸素富化空気貯留容器9からは酸素富化空気が需要先へ送出されるのみとなり、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は急激に低下して最低圧力になる。最低圧力は以下のように計算される。
【0087】
まず、ガス貯留容器入口弁8を閉じたときに酸素富化空気貯留容器9内に残っている大気圧以上の酸素富化空気の量は、
0.9kg/cm2 ・G×0.84m3
=0.756Nm3
である。
【0088】
この量の酸素富化空気から、酸素富化空気が63Nm3 /時の割合で12秒間の再生時間のあいだ需要先へ送出されていくので、酸素富化空気貯留容器9内における酸素富化空気量は、0.756Nm3 から、
0.756Nm3 −63Nm3 /時×(12秒/(3600秒/時))
=0.546Nm3
まで減少する。
【0089】
酸素富化空気貯留容器9内の酸素富化空気量がこのように減少する結果、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は、0.9kg/cm2 ・Gから、
0.546Nm3 /0.84m3
=0.65kg/cm2 ・G
の最低圧力まで低下する。この値は、最初に設定した最低圧力の値と一致する。
【0090】
このように、本実施例において設定した構成条件のもとでは、酸素富化空気貯留容器9の最低圧力は大気圧を上回っているため、本発明に係る装置から供給される酸素富化空気は、連続して需要先へ供給することが可能であることがわかる。
【0091】
以上のように酸素富化空気貯留容器9から送出される連続した酸素富化空気を、圧力調整弁12を用いて、例えば0.65kg/cm2 ・Gの一定圧力に調整して、需要先へ供給することができる。
【0092】
上述のように、本発明に係る装置によって、大気圧を上回る一定圧力の連続した酸素富化空気を供給できることが分かる。
(実施例2)
図3に示した装置について、供給される酸素富化空気の圧力をシミュレーションした。なお、実施例1と同様に、以下に用いた数値は一例であって、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
【0093】
実施例1と同様に、PSA式窒素ガス分離装置の各吸着塔10、20の容積を1.0m3 と仮定し、吸着塔が切換わるときに各吸着塔から排出される酸素富化空気の圧力を3.0kg/cm2 ・Gであると仮定した。従って、各吸着塔から大気圧に排出される酸素富化空気の量は、3.0Nm3 となる。
【0094】
また、実施例1と同様に、吸着塔の切換え時間は120秒であると仮定した。
本実施例においては、3.0kg/cm2 ・Gの酸素富化空気を81Nm3 /時の割合で供給するものとした。これは、本実施例の製造装置の有する、実施例1と同じ酸素富化空気の供給能力90Nm3 /時の90%を需要先へ供給すると仮定するものである。残りの10%の酸素富化空気は、大気へ開放される。
【0095】
以上の仮定のもとで、吸着塔の切換え/時120秒は、実施例1と同様に、108秒間の生成時間、12秒間の再生時間から構成されると設定した。再生時間として12秒間あれば、吸着塔内は十分に大気圧に戻るものと推定される。
【0096】
また、本実施例においては、酸素富化空気貯留容器9の容積を0.09m3 とし、吸着塔を切り換える寸前の酸素富化空気貯留容器9内の最低圧力を上述の4.0kg/cm2 ・Gと設定した。吸着塔の切り換え/時に酸素富化空気貯留容器9内に残存する大気圧以上の酸素富化空気量は、従って、0.36Nm3 (0.09m3 ×4.0kg/cm2 ・G)である。
【0097】
さらに、本実施例においては、空気圧縮機13の送出圧力を7.0kg/cm2 ・Gと設定し、送出量を90Nm3 /時と設定した。
以上のような条件のもとで、加圧空気の供給を第1吸着塔10から第2吸着塔20へ切換えたのちの酸素富化空気貯留容器9内の圧力の変化を、計算によってシミュレーションした。図5に示したシミュレーション結果を参照して、以下、説明する。
【0098】
加圧空気の供給を第2吸着塔20へ切換えたときに酸素富化空気貯留容器9内に残存する大気圧以上の酸素富化空気量は、上述のように0.36Nm3 である。
【0099】
切換え時にガス貯留容器入口弁8が開き、第1吸着塔10からの酸素富化空気が圧縮機16によって圧縮加圧されて酸素富化空気貯留容器9へ送られる。圧縮機16から酸素富化空気貯留容器9へ送出される量は前述のように90Nm3 /時であり、また需要先での酸素富化空気の使用により酸素富化空気貯留容器9から需要先へ送出される量は81Nm3 /時である。従って、生成時間においては、その差((90−81)Nm3 /時))の酸素富化空気が、酸素富化空気貯留容器9内に蓄積されることになり、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は上昇する。
【0100】
酸素富化空気貯留容器内7における圧力の上昇は、以下のように計算される。まず、酸素富化空気貯留容器9内の0.36Nm3 の量の大気圧以上の酸素富化空気量に、酸素富化空気が(90−81)Nm3 /時の割合で108秒間の生成時間のあいだ空気圧縮機13から送出されるので、酸素富化空気貯留容器9内における大気圧以上の酸素富化空気の量は、0.36Nm3 から、
0.36Nm3 +(90−81)Nm3 /時×(108秒/3600秒)
=0.63Nm3
まで増加する。
【0101】
酸素富化空気貯留容器9内の酸素富化空気がこのように増加する結果、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は、4.0kg/cm2 ・Gから、
0.63Nm3 /0.09m3
=7.0kg/cm2 ・G
まで上昇する。
【0102】
この圧力は、空気圧縮機13の送出圧力である7.0kg/cm2 ・Gと一致する。従って、空気圧縮機13から酸素富化空気貯留容器9へ酸素富化空気を常に送出することができる。
【0103】
また、上述の計算から明らかであるように、酸素富化空気貯留容器9の容積が0.09m3 よりも大きくなると、この酸素富化空気貯留容器9の上昇圧力は7.0kg/cm2 ・Gよりも小さくなる。従って、酸素富化空気貯留容器9の容積が0.09m3 以上であれば、空気圧縮機13からの加圧空気による酸素富化空気貯留容器9内の圧力の上昇は7.0kg/cm2 ・G以下に抑えられることが分かる。
【0104】
一方、第1吸着塔10内からは空気圧縮機によって空気が送出されるために、第1吸着塔10内の圧力は低下する。この圧力の低下は、以下のように計算される。
【0105】
第1吸着塔10内の3.0Nm3 の大気圧以上の酸素富化空気量から、酸素富化空気が圧縮機16によって90Nm3 /時の割合で108秒間の生成時間のあいだ、酸素富化空気貯留容器9へ送出されていくので、第1吸着塔10内の大気圧以上の酸素富化空気量は、3.0Nm3 から、
3.0Nm3 −(90Nm3 /時)×(108秒/(3600秒/時))
=0.3Nm3
まで減少する。
【0106】
第1吸着塔10内の酸素富化空気量がこのように減少する結果、第1吸着塔10内の圧力は、
0.3Nm3 /1.0m3
=0.3kg/cm2 ・G
まで低下する。
【0107】
108秒の生成時間が経過したのち、ガス貯留容器入口弁8を閉じて大気開放弁4を開け、第1吸着塔10内に残存する酸素富化空気を大気放出する。前述したように、再生時間として12秒間あれば、第1吸着塔10内の0.3kg/cm2 ・Gの圧力を大気圧(0kg/cm2 ・G)に戻すのは十分可能であると推定される。
【0108】
ガス貯留容器入口弁8を閉じてから12秒間のあいだ、酸素富化空気貯留容器9からは酸素富化空気が需要先へ送出されるのみとなり、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は急激に低下して最低圧力になる。最低圧力は以下のように計算される。
【0109】
まず、ガス貯留容器入口弁8を閉じた時点で酸素富化空気貯留容器9内に残っている酸素富化空気の量は、前述のように0.63Nm3 である。
この量の酸素富化空気から、酸素富化空気が81Nm3 /時の割合で12秒間の大気放出のあいだ需要先へ送出されていくので、酸素富化空気貯留容器9内の大気圧以上の酸素富化空気量は、0.63Nm3 から、
0.63Nm3 −81Nm3 /時×(12秒/(3600秒/時))
=0.36Nm3
まで減少する。
【0110】
酸素富化空気貯留容器9内の酸素富化空気量がこのように減少する結果、酸素富化空気貯留容器9内の圧力は、7.0kg/cm2 ・Gから、
0.36Nm3 /0.09m3
=4.0kg/cm2 ・G
の最低圧力まで低下する。この値は、最初に設定した最低圧力の値と一致する。
【0111】
このように、空気圧縮機13を用いることによって、大気圧を大きく上回る圧力(4.0kg/cm2 ・G)の酸素富化空気を、酸素富化空気貯留容器9で保持できることがわかる。
【0112】
上述のように酸素富化空気貯留容器9に蓄えられた酸素富化空気を、圧力調整弁12を用いて、3.0kg/cm2 ・Gの一定圧力に調整して需要先へ供給することができる。
上述のように、本発明に係る装置によって、大気圧を大きく上回る一定圧力の連続した酸素富化空気を供給できることが分かる。
【0113】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明によって、PSA式窒素ガス分離装置を用いた設備コストおよび設備規模の小さい酸素富化空気の製造装置が提供される。その結果、すでにPSA式窒素ガス分離装置を使用している場合に、このPSA式窒素分離装置を用いて酸素富化空気を製造することができるため、設備コストおよび設備規模の追加を最小限に抑えて酸素富化空気を製造することが可能となる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る酸素富化空気の製造装置の一例を示す模式図。
【図2】本発明に係る酸素富化空気供給部の別の例を示す模式図。
【図3】本発明に係る酸素富化空気の製造装置の他の例を示す模式図。
【図4】本発明に係る製造装置内での酸素富化空気の圧力変化の一例を示す図。
【図5】本発明に係る製造装置内での酸素富化空気の圧力変化の他の例を示す図。
【符号の説明】
1a、2a…加圧空気導入弁
1b、2b…酸素富化空気排出弁
3、13…空気圧縮機
4…大気開放弁
5…消音器
6…窒素貯留容器
7、12…圧力調整弁
8…ガス貯留容器入口弁
9…酸素富化空気貯留容器
10…第1吸着塔
11、14…圧力計
20…第2吸着塔
100…PSA式窒素ガス分離装置
200…酸素富化空気供給部
Claims (2)
- 複数の吸着塔をそれぞれ吸着モード、生成モード、および再生モードで動作させて空気から酸素を吸着する圧力スウィング吸着式ガス分離装置と、
再生モードを終了した吸着塔内に高圧の空気を供給して該高圧の空気で満たし該吸着塔を吸着モードで動作させるための高圧空気供給手段と、
吸着モードを終了した吸着塔と連絡して該吸着塔を生成モードで動作させ、生成した中間圧力の酸素富化空気を貯留するための空気貯留容器と、
生成モードを終了した吸着塔内を大気開放して該吸着塔を再生モードで動作させるための再生手段と、
複数の吸着塔を順次、吸着、生成および再生モードの順に動作させるために高圧空気供給手段、空気貯留容器および再生手段の順に連絡させ、再生モードを終了した吸着塔を吸着モードで動作させるために高圧空気供給手段と連絡させる間、吸着モードを終了した吸着塔を、生成/再生モードで動作させるために、空気貯留容器と連絡させたのち空気貯留容器との連絡を絶って再生手段と連絡させるための切換え手段と、
空気貯留容器と接続され、吸着塔が生成モードで動作する間に空気貯留容器から送出される酸素富化空気を大気圧よりも高い一定の圧力に調整して酸素富化空気の需要先へ連続して供給するための圧力調整手段と
を具備することを特徴とする酸素富化空気の製造装置。 - 各吸着塔と空気貯留容器との間に、各吸着塔から送出された酸素富化空気を圧縮加圧して空気貯留容器へ送出するための空気圧縮手段をさらに具備することを特徴とする請求項1 記載の装置。
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