JP3620132B2 - 木目柄の化粧を施した扉及びその製造方法 - Google Patents
木目柄の化粧を施した扉及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3620132B2 JP3620132B2 JP32849595A JP32849595A JP3620132B2 JP 3620132 B2 JP3620132 B2 JP 3620132B2 JP 32849595 A JP32849595 A JP 32849595A JP 32849595 A JP32849595 A JP 32849595A JP 3620132 B2 JP3620132 B2 JP 3620132B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- door
- transfer printing
- printed
- wood
- pattern
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物、家具、住宅機器等の扉又は引き戸(両者を合わせて以下単に扉と総称する)及びその製造方法に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物、家具、住宅機器等の扉で比較的高級なものは框、鏡板の2部品を組み付けることにより製造され、立体的な外観を有する。このように2部品を組みつけて製造される扉はコストが高いので、外観だけでも、框、鏡板の2部品からなる高級扉に似せたものが製造されている。
【0003】
その製造方法は、先ず合板、LVL、パーティクルボード、ハードボード、MDF(中質繊維板)等の板状基材の表面に、ルーターで所定の位置に所定の形状の凹状溝を刻設することにより、板状基材の表面を框、鏡板の2部品に相当する部分に区分けして立体感を現出させる。次いで、真空プレスを用いて木目柄を印刷したシートを該立体面に貼りつける方法が知られている。また木目柄を印刷したシートを貼り付ける代りに、木目柄を印刷した転写印刷シートを同じく真空プレスを用いて基材面にプレスし、木目柄を基材面に転写印刷する方法も知られている。なお、裏面にも表面と同じように立体感のある化粧を施す必要がある場合には、表面に適用した方法と同様の方法で行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記真空プレスを用いてシートを基材面に貼りつけ或いは木目柄を転写印刷するときに、次のような問題点がある。つまり、基材表面が平面でなく大きな凹凸があるため、シートを基材面にプレスするときに、シートが部分的にかつ不規則に引き伸ばされる。そのため、基材の所定の位置に所定の木目柄を精確に配することが困難で、貼りずれが生じやすい。
【0005】
したがって、上記方法において使用されるシートの木目柄は、木目柄どうしの境界線のない一枚板の木目柄か、或いは一枚板の柄でない場合には木目柄どうしの境界が明瞭でないものとせざるを得ない。例えば図2のように、木目柄どうしの境界が比較的目立たないシートであれば、プレス中にシートが部分的かつ不規則に引き伸ばされたりして貼りずれが生じても、木目柄どうしの境界が目立たないため一般需要者の目には奇異なものには写らないのである。
【0006】
ところが、図2のような木目柄のシートを扉の表面に貼っても、無垢の木材から作られる扉のように横框に相当する部分の木目の方向が横框の長手方向と平行になっていないから、いかにも造り物といった感じを免れず、商品価値の高いものとしては認められていない。無垢の木材の扉と同じような高級な外観を持たせるためには、図3に示すように横框の木目の方向を横框の長手方向と平行にしなければならない。
【0007】
しかしながら、図3に示すような木目柄は、木目柄どうしの境界が明瞭であるから、このような柄のシートを用いて貼りずれが生じた場合、本来框と鏡板の境界稜線上にあるべき柄の境界線が框又は鏡板の部分に転写印刷され、見苦しいため、不良品となってしまう。従来技術では、先に述べたように、プレス中にシートが部分的かつ不規則に引き伸ばされるため貼りずれが避けられず、従って、相当量の不良品の発生を避けることができない。
【0008】
しかも、横框の木目の方向を横框の長手方向と平行させているため、異なる高さの扉にも共用するわけにはいかず、扉の高さごとに木目柄印刷の判をおこさなければならい。例えば、通常の玄関収納の場合、▲1▼コートを収納する部分に取り付けられる高さ1.8mm前後の扉、▲2▼靴を収納する部分の高さ90cm前後の扉、▲3▼高さ50cm前後の天袋の扉、の3種類の同一幅の扉がセットになっている。同様にキッチンキャビネットや室内の収納家具においても、同一幅で高さが相異なる3種類前後がセットになっている。従って、同一幅であるにも拘わらず、高さが異なる為にシートを共用できないことが多く、コストアップの原因となる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる方法により上記問題点を解決した。
【0010】
先ず、矩形の板状基材の表面にルーター等を用いて所定の位置に所定の形状の凹状溝を刻設する。所定の形状の凹状溝とは、矩形の一枚板の基材表面を框、鏡板に相当する2部分に区分し、かつ立体的な装飾を施すための溝である。次に、柄どうしの境界線のない一枚板の木目柄を印刷した転写印刷シートを用いて上記基材表面に木目柄を転写印刷する。この工程までは、真空プレスを用いて木目柄を転写印刷する従来方法と同じである。
【0011】
続いて、扉の横框及び縦框に相当する部分に、更に重ねてもう一回木目柄を転写印刷する。2回目に転写印刷する木目柄は通常は柾目柄であり、その木目方向は框の長手方向と同一方向である。つまり、框の部分だけは2回にわたって木目柄の転写印刷が施される。框の部分に最初に転写印刷された木目柄は、2回目に転写印刷された木目柄によって隠蔽されてしまう。
【0012】
従って、この方法によって製造された扉は図3に示すごとく、無垢の木材で作られた扉と同様の外観を呈し、従来技術による扉よりもはるかに高級感を現出させることができる。
【0013】
なお、図2のように、縦框及び鏡板の木目柄が相似ていて、木目柄どうしの境界が比較的明瞭でない転写印刷シートを用いるときは、2回目の転写印刷は横框に相当する部分だけでよい。縦框に相当する部分は柾目柄であり。木目の方向は框の長手方向と同一であることと、1回目の転写印刷のときに多少貼りずれが生じても縦框と鏡板との木目柄の境界線が不明瞭で目立たないからである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明にはおける板状基材は、無垢の木材はもちろん、合板、ハードボード、パーティクルボード、LVL、MDF(中質繊維板)等の木質基材又はこれら木質基材を組み合わせ貼り合わせたもの、また場合によっては、石膏ボード、珪酸カルシウム板等の無機質基材を用いることもできる。要するに家具、建築に用いられる板状基材であれば何でもよいが、ルーターでの溝の刻設、木目柄の被転写性能、扉としての重量、蝶番等の金具類取り付けに必要な木ネジ保持力等を考慮すれば、MDF、又はMDFと合板とを貼り合わせたもの、或いはMDFとLVLとを貼り合わせたものが最も適している。
【0015】
転写印刷用のシートについて言えば、木目柄を印刷する際には伸び等の変形が発生しにくいものが要求される。そして、扉の凹凸基材面に転写印刷する際には、転写印刷の際に加えられる熱により容易に伸びて凹凸面になじむものでなければならない。従って、塩化ビニル等の熱軟化性の合成樹脂フィルムが最も適する。
【0016】
転写印刷シートに印刷される木目柄は、通常、木目の地色を現出するベタ印刷層と木目柄を現出する柄印刷層の2層の印刷層からなる。さらに転写印刷後の印刷面を保護強化するためのトップコート層を設けたものもある。ベタ印刷の厚みは、ごく薄くてよいが、下地を隠蔽できる程度の厚みが必要である。通常の場合、1000分の5mm程度の印刷層の厚みがあれば下地をほぼ完全に隠蔽できる。
【0017】
図2のような柄どうしの境界線が明瞭でない木目柄の転写印刷シートを用いた場合、2回目の転写印刷は横框の部分のみで済ませることができるが、横框と縦框との境界において、2回目に転写印刷された印刷層の厚み分だけ段差を生じる。その段差は、特に厚みのある印刷を用いない限り1000分の10mm程度であるから、手に触れても殆ど感じられない程度である。この程度の段差は、無垢の木材から製造される扉でも生じている程度のものであり、段差を解消する特別の処理は不要である。もっとも、転写印刷面を強化するため又はより一層の高級感を現出するために、転写印刷後さらにトップコートを塗工することもあり、トップコートによっても上記の段差はある程度緩和される。
【0018】
横框と鏡板との境界にも、印刷層の段差を生ずるが、その段差を生ずる部分は、框の稜線部分で、面取り又は丸みが付与してある部分であるから、段差による問題は生じない。
【0019】
転写印刷シートによって印刷される木目柄は、通常は、上記に述べたようにベタ印刷層により下地をほぼ完全に隠蔽することができるものであるが、特殊な転写印刷の方法として、下地の色彩等を生かす為に、部分的又は全体的に下地を十分に隠蔽しない印刷が採用される場合もある。本発明においても、下地の色彩を生かしたければ、最初の転写印刷では下地を十分に隠蔽できるものを使用しなくてもよいが、2回目の転写印刷では下地を十分に隠蔽できる印刷を使用しなければならない。
【0020】
最初に転写印刷された木目柄と、その上にさらにもう一度転写印刷された木目柄とが、色合い等において異なって見えては商品価値を低下させてしまう。基材の色彩等を生かそうとして、最初の転写印刷で下地を十分に隠蔽できない印刷を使用した場合、1回目に転写印刷された木目柄と2回目に転写印刷された木目柄の色合を統一することは極めて難しくかつ煩雑な作業である。従って、最初の転写印刷の際にも、2回目の転写印刷の際に使用される印刷と同様に隠蔽力のある印刷を採用するのがよい。
【0021】
転写印刷に際しては、凹状溝を刻設した基材面に透明の接着剤を塗布し、その上に転写印刷シートを重ね合わせ、加熱しながら真空プレスで加圧して、転写印刷シート面に印刷された木目柄を基材面に転写印刷する。転写印刷シートに予め接着層をプレコートしたものを用いれば、接着剤の塗布は不要である。
【0022】
ただし、プレコートによる接着層の接着剤の量は通常あまり多くないから、接着剤を吸い込み易い木質系の基材を使用する場合は、接着層をプレコートした転写印刷シートでも、基材面にも接着剤を塗布して使用した方がよい。
【0023】
框に相当する部分のみにさらに2回目の転写印刷を行うときは、接着剤を框に相当する部分すなわち2回目の転写印刷が行われる部分にのみ選択的に塗布するか或いは、転写印刷シートの方に塗布しなければならないから、作業が煩雑である。接着剤を基材面に塗布する場合、転写印刷される部分以外にも接着剤が塗布されると、その部分が転写印刷後に艶むらとして見えることがあるので、予め転写印刷しない部分を被覆しておいてから接着剤をスプレー等で塗布する等の注意が必要である。
【0024】
2回目の転写印刷の際に、接着層をプレコートした転写印刷シートを用いる場合には、接着剤を塗布しなくともよいが、接着剤を基材又はシートに塗布すれば、塗布された接着剤により転写印刷シートを基材面に仮止めすることができ、ごく小さな貼りずれをも防止できるという利点がある。
【0025】
2回目の転写印刷が行われる部分は、最初の転写印刷と異なり凹凸のない平面に対して行われるのであるから、凹凸のある基材面に転写印刷する場合のように大きな貼りずれを生じることもなく、框の部分のみに精確に限定して転写印刷できる。
【0026】
接着剤は、転写印刷シートのインキと密着性のよいものを使用する。通常は酢酸ビニル樹脂系又はウレタン樹脂系のものが用いられる。
【0027】
転写印刷シートの基本的な構成は、基材シートの上に、剥離層、木目の柄印刷層、ベタ印刷層の順で各層が配されている。剥離層と柄印刷層との間に保護トップコート層を入れたり、上記に述べたようにベタ印刷層の上に接着層を入れる場合もある。通常剥離層は転写印刷したときに基材シートの方に残り、印刷層には残らないようになっているが、印刷層の方に残るものは、最初に転写印刷された印刷層と2回目に転写印刷された印刷層との間の密着が悪くなる恐れがあるのでその使用は避けなければならない。
【0028】
【実施例】
厚み15mm、比重0.65のMDF基材の表面に、NCルーターによりMDF基材表面を、框及び鏡板に相当する2部材に区分けするための凹状の溝を刻設した。そして次に、凹状溝を刻設したMDF基材の表面に、酢酸ビニル系接着剤を10g/m2 塗布した。続いて、真空プレスにより、図2に示す木目柄の転写印刷シートの木目柄を上記基材の全表面に転写印刷した。
【0029】
次に、凹状溝を刻設した扉の横框に相当する部分の形状にあわせて、図2の転写印刷シートの両端部の柾目柄部分を切り取り、該切り取ったシートに先の転写印刷の際に使用した酢酸ビニル系接着剤を10g/m2 塗布した。真空プレスを用いて、横框に相当する部分に該柾目柄を転写印刷し、図3に示す扉を得た。
【0030】
図1は、框及び鏡板に相当する部分の境界付近の断面図、図4は鏡板の平面部分の拡大断面図である。斜線部は接着層、黒色部分は木目の柄印刷層、無色はベタ印刷層を示す。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、扉全体にまず木目柄を転写印刷し、更に扉の框に相当する部分に框の長手方向と同一方向の木目柄を転写印刷することにより、外観が無垢の木材からなる扉と同じ高級感のある扉を製造することができる。また、転写印刷は膜厚が極く薄いから、一回目の転写印刷と2回目の転写印刷との境界における段差は手で触れても殆ど感じられない。また、2回目の転写印刷は木目柄どうしの境界が目立つ部分に対して行われるにも拘わらず、凹凸のない平面に対して行われるため貼りずれが殆ど発生しないので、貼りずれによる不良品の発生も殆どない。また、高さが異なっても同一幅の扉であれば、転写印刷シートを共用することができるので、コストを安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図 1】本発明による扉の断面図
【図 2】木目柄
【図 3】本発明による実施例の扉の正面図
【図 4】本発明による扉の断面図
【符号の説明】
A 框に相当する部分
B 鏡板に相当する部分
1d 木目の柄印刷層
2d ベタ印刷層
3d 接着層
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物、家具、住宅機器等の扉又は引き戸(両者を合わせて以下単に扉と総称する)及びその製造方法に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物、家具、住宅機器等の扉で比較的高級なものは框、鏡板の2部品を組み付けることにより製造され、立体的な外観を有する。このように2部品を組みつけて製造される扉はコストが高いので、外観だけでも、框、鏡板の2部品からなる高級扉に似せたものが製造されている。
【0003】
その製造方法は、先ず合板、LVL、パーティクルボード、ハードボード、MDF(中質繊維板)等の板状基材の表面に、ルーターで所定の位置に所定の形状の凹状溝を刻設することにより、板状基材の表面を框、鏡板の2部品に相当する部分に区分けして立体感を現出させる。次いで、真空プレスを用いて木目柄を印刷したシートを該立体面に貼りつける方法が知られている。また木目柄を印刷したシートを貼り付ける代りに、木目柄を印刷した転写印刷シートを同じく真空プレスを用いて基材面にプレスし、木目柄を基材面に転写印刷する方法も知られている。なお、裏面にも表面と同じように立体感のある化粧を施す必要がある場合には、表面に適用した方法と同様の方法で行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記真空プレスを用いてシートを基材面に貼りつけ或いは木目柄を転写印刷するときに、次のような問題点がある。つまり、基材表面が平面でなく大きな凹凸があるため、シートを基材面にプレスするときに、シートが部分的にかつ不規則に引き伸ばされる。そのため、基材の所定の位置に所定の木目柄を精確に配することが困難で、貼りずれが生じやすい。
【0005】
したがって、上記方法において使用されるシートの木目柄は、木目柄どうしの境界線のない一枚板の木目柄か、或いは一枚板の柄でない場合には木目柄どうしの境界が明瞭でないものとせざるを得ない。例えば図2のように、木目柄どうしの境界が比較的目立たないシートであれば、プレス中にシートが部分的かつ不規則に引き伸ばされたりして貼りずれが生じても、木目柄どうしの境界が目立たないため一般需要者の目には奇異なものには写らないのである。
【0006】
ところが、図2のような木目柄のシートを扉の表面に貼っても、無垢の木材から作られる扉のように横框に相当する部分の木目の方向が横框の長手方向と平行になっていないから、いかにも造り物といった感じを免れず、商品価値の高いものとしては認められていない。無垢の木材の扉と同じような高級な外観を持たせるためには、図3に示すように横框の木目の方向を横框の長手方向と平行にしなければならない。
【0007】
しかしながら、図3に示すような木目柄は、木目柄どうしの境界が明瞭であるから、このような柄のシートを用いて貼りずれが生じた場合、本来框と鏡板の境界稜線上にあるべき柄の境界線が框又は鏡板の部分に転写印刷され、見苦しいため、不良品となってしまう。従来技術では、先に述べたように、プレス中にシートが部分的かつ不規則に引き伸ばされるため貼りずれが避けられず、従って、相当量の不良品の発生を避けることができない。
【0008】
しかも、横框の木目の方向を横框の長手方向と平行させているため、異なる高さの扉にも共用するわけにはいかず、扉の高さごとに木目柄印刷の判をおこさなければならい。例えば、通常の玄関収納の場合、▲1▼コートを収納する部分に取り付けられる高さ1.8mm前後の扉、▲2▼靴を収納する部分の高さ90cm前後の扉、▲3▼高さ50cm前後の天袋の扉、の3種類の同一幅の扉がセットになっている。同様にキッチンキャビネットや室内の収納家具においても、同一幅で高さが相異なる3種類前後がセットになっている。従って、同一幅であるにも拘わらず、高さが異なる為にシートを共用できないことが多く、コストアップの原因となる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる方法により上記問題点を解決した。
【0010】
先ず、矩形の板状基材の表面にルーター等を用いて所定の位置に所定の形状の凹状溝を刻設する。所定の形状の凹状溝とは、矩形の一枚板の基材表面を框、鏡板に相当する2部分に区分し、かつ立体的な装飾を施すための溝である。次に、柄どうしの境界線のない一枚板の木目柄を印刷した転写印刷シートを用いて上記基材表面に木目柄を転写印刷する。この工程までは、真空プレスを用いて木目柄を転写印刷する従来方法と同じである。
【0011】
続いて、扉の横框及び縦框に相当する部分に、更に重ねてもう一回木目柄を転写印刷する。2回目に転写印刷する木目柄は通常は柾目柄であり、その木目方向は框の長手方向と同一方向である。つまり、框の部分だけは2回にわたって木目柄の転写印刷が施される。框の部分に最初に転写印刷された木目柄は、2回目に転写印刷された木目柄によって隠蔽されてしまう。
【0012】
従って、この方法によって製造された扉は図3に示すごとく、無垢の木材で作られた扉と同様の外観を呈し、従来技術による扉よりもはるかに高級感を現出させることができる。
【0013】
なお、図2のように、縦框及び鏡板の木目柄が相似ていて、木目柄どうしの境界が比較的明瞭でない転写印刷シートを用いるときは、2回目の転写印刷は横框に相当する部分だけでよい。縦框に相当する部分は柾目柄であり。木目の方向は框の長手方向と同一であることと、1回目の転写印刷のときに多少貼りずれが生じても縦框と鏡板との木目柄の境界線が不明瞭で目立たないからである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明にはおける板状基材は、無垢の木材はもちろん、合板、ハードボード、パーティクルボード、LVL、MDF(中質繊維板)等の木質基材又はこれら木質基材を組み合わせ貼り合わせたもの、また場合によっては、石膏ボード、珪酸カルシウム板等の無機質基材を用いることもできる。要するに家具、建築に用いられる板状基材であれば何でもよいが、ルーターでの溝の刻設、木目柄の被転写性能、扉としての重量、蝶番等の金具類取り付けに必要な木ネジ保持力等を考慮すれば、MDF、又はMDFと合板とを貼り合わせたもの、或いはMDFとLVLとを貼り合わせたものが最も適している。
【0015】
転写印刷用のシートについて言えば、木目柄を印刷する際には伸び等の変形が発生しにくいものが要求される。そして、扉の凹凸基材面に転写印刷する際には、転写印刷の際に加えられる熱により容易に伸びて凹凸面になじむものでなければならない。従って、塩化ビニル等の熱軟化性の合成樹脂フィルムが最も適する。
【0016】
転写印刷シートに印刷される木目柄は、通常、木目の地色を現出するベタ印刷層と木目柄を現出する柄印刷層の2層の印刷層からなる。さらに転写印刷後の印刷面を保護強化するためのトップコート層を設けたものもある。ベタ印刷の厚みは、ごく薄くてよいが、下地を隠蔽できる程度の厚みが必要である。通常の場合、1000分の5mm程度の印刷層の厚みがあれば下地をほぼ完全に隠蔽できる。
【0017】
図2のような柄どうしの境界線が明瞭でない木目柄の転写印刷シートを用いた場合、2回目の転写印刷は横框の部分のみで済ませることができるが、横框と縦框との境界において、2回目に転写印刷された印刷層の厚み分だけ段差を生じる。その段差は、特に厚みのある印刷を用いない限り1000分の10mm程度であるから、手に触れても殆ど感じられない程度である。この程度の段差は、無垢の木材から製造される扉でも生じている程度のものであり、段差を解消する特別の処理は不要である。もっとも、転写印刷面を強化するため又はより一層の高級感を現出するために、転写印刷後さらにトップコートを塗工することもあり、トップコートによっても上記の段差はある程度緩和される。
【0018】
横框と鏡板との境界にも、印刷層の段差を生ずるが、その段差を生ずる部分は、框の稜線部分で、面取り又は丸みが付与してある部分であるから、段差による問題は生じない。
【0019】
転写印刷シートによって印刷される木目柄は、通常は、上記に述べたようにベタ印刷層により下地をほぼ完全に隠蔽することができるものであるが、特殊な転写印刷の方法として、下地の色彩等を生かす為に、部分的又は全体的に下地を十分に隠蔽しない印刷が採用される場合もある。本発明においても、下地の色彩を生かしたければ、最初の転写印刷では下地を十分に隠蔽できるものを使用しなくてもよいが、2回目の転写印刷では下地を十分に隠蔽できる印刷を使用しなければならない。
【0020】
最初に転写印刷された木目柄と、その上にさらにもう一度転写印刷された木目柄とが、色合い等において異なって見えては商品価値を低下させてしまう。基材の色彩等を生かそうとして、最初の転写印刷で下地を十分に隠蔽できない印刷を使用した場合、1回目に転写印刷された木目柄と2回目に転写印刷された木目柄の色合を統一することは極めて難しくかつ煩雑な作業である。従って、最初の転写印刷の際にも、2回目の転写印刷の際に使用される印刷と同様に隠蔽力のある印刷を採用するのがよい。
【0021】
転写印刷に際しては、凹状溝を刻設した基材面に透明の接着剤を塗布し、その上に転写印刷シートを重ね合わせ、加熱しながら真空プレスで加圧して、転写印刷シート面に印刷された木目柄を基材面に転写印刷する。転写印刷シートに予め接着層をプレコートしたものを用いれば、接着剤の塗布は不要である。
【0022】
ただし、プレコートによる接着層の接着剤の量は通常あまり多くないから、接着剤を吸い込み易い木質系の基材を使用する場合は、接着層をプレコートした転写印刷シートでも、基材面にも接着剤を塗布して使用した方がよい。
【0023】
框に相当する部分のみにさらに2回目の転写印刷を行うときは、接着剤を框に相当する部分すなわち2回目の転写印刷が行われる部分にのみ選択的に塗布するか或いは、転写印刷シートの方に塗布しなければならないから、作業が煩雑である。接着剤を基材面に塗布する場合、転写印刷される部分以外にも接着剤が塗布されると、その部分が転写印刷後に艶むらとして見えることがあるので、予め転写印刷しない部分を被覆しておいてから接着剤をスプレー等で塗布する等の注意が必要である。
【0024】
2回目の転写印刷の際に、接着層をプレコートした転写印刷シートを用いる場合には、接着剤を塗布しなくともよいが、接着剤を基材又はシートに塗布すれば、塗布された接着剤により転写印刷シートを基材面に仮止めすることができ、ごく小さな貼りずれをも防止できるという利点がある。
【0025】
2回目の転写印刷が行われる部分は、最初の転写印刷と異なり凹凸のない平面に対して行われるのであるから、凹凸のある基材面に転写印刷する場合のように大きな貼りずれを生じることもなく、框の部分のみに精確に限定して転写印刷できる。
【0026】
接着剤は、転写印刷シートのインキと密着性のよいものを使用する。通常は酢酸ビニル樹脂系又はウレタン樹脂系のものが用いられる。
【0027】
転写印刷シートの基本的な構成は、基材シートの上に、剥離層、木目の柄印刷層、ベタ印刷層の順で各層が配されている。剥離層と柄印刷層との間に保護トップコート層を入れたり、上記に述べたようにベタ印刷層の上に接着層を入れる場合もある。通常剥離層は転写印刷したときに基材シートの方に残り、印刷層には残らないようになっているが、印刷層の方に残るものは、最初に転写印刷された印刷層と2回目に転写印刷された印刷層との間の密着が悪くなる恐れがあるのでその使用は避けなければならない。
【0028】
【実施例】
厚み15mm、比重0.65のMDF基材の表面に、NCルーターによりMDF基材表面を、框及び鏡板に相当する2部材に区分けするための凹状の溝を刻設した。そして次に、凹状溝を刻設したMDF基材の表面に、酢酸ビニル系接着剤を10g/m2 塗布した。続いて、真空プレスにより、図2に示す木目柄の転写印刷シートの木目柄を上記基材の全表面に転写印刷した。
【0029】
次に、凹状溝を刻設した扉の横框に相当する部分の形状にあわせて、図2の転写印刷シートの両端部の柾目柄部分を切り取り、該切り取ったシートに先の転写印刷の際に使用した酢酸ビニル系接着剤を10g/m2 塗布した。真空プレスを用いて、横框に相当する部分に該柾目柄を転写印刷し、図3に示す扉を得た。
【0030】
図1は、框及び鏡板に相当する部分の境界付近の断面図、図4は鏡板の平面部分の拡大断面図である。斜線部は接着層、黒色部分は木目の柄印刷層、無色はベタ印刷層を示す。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、扉全体にまず木目柄を転写印刷し、更に扉の框に相当する部分に框の長手方向と同一方向の木目柄を転写印刷することにより、外観が無垢の木材からなる扉と同じ高級感のある扉を製造することができる。また、転写印刷は膜厚が極く薄いから、一回目の転写印刷と2回目の転写印刷との境界における段差は手で触れても殆ど感じられない。また、2回目の転写印刷は木目柄どうしの境界が目立つ部分に対して行われるにも拘わらず、凹凸のない平面に対して行われるため貼りずれが殆ど発生しないので、貼りずれによる不良品の発生も殆どない。また、高さが異なっても同一幅の扉であれば、転写印刷シートを共用することができるので、コストを安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図 1】本発明による扉の断面図
【図 2】木目柄
【図 3】本発明による実施例の扉の正面図
【図 4】本発明による扉の断面図
【符号の説明】
A 框に相当する部分
B 鏡板に相当する部分
1d 木目の柄印刷層
2d ベタ印刷層
3d 接着層
Claims (4)
- 矩形の板状基材の表面に、扉の框に相当する部分と鏡板に相当する部分に区分しかつ立体的装飾を施すための条溝を刻設し、該表面全体に転写印刷シ−トにより木目柄を転写印刷し、さらに框に相当する部分のみに框の長手方向と同一の木目方向を有する木目柄を重ねて転写印刷してなることを特徴とする扉。
- 板状基材が中質繊維板であることを特徴とする請求項1に記載の扉。
- 板状基材が合板の表面に中質繊維板を貼着した板材であることを特徴とする請求項1に記載の扉。
- 矩形の板状基材の表面に、扉の框に相当する部分と鏡板に相当する部分に区分しかつ立体的装飾を施すための条溝を刻設し、該表面全体に転写印刷シートにより木目柄を転写印刷し、さらに框に相当する部分のみに框の長手方向と同一の木目方向を有する木目柄を重ねて転写印刷することを特徴とする扉の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32849595A JP3620132B2 (ja) | 1995-12-18 | 1995-12-18 | 木目柄の化粧を施した扉及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32849595A JP3620132B2 (ja) | 1995-12-18 | 1995-12-18 | 木目柄の化粧を施した扉及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09164633A JPH09164633A (ja) | 1997-06-24 |
JP3620132B2 true JP3620132B2 (ja) | 2005-02-16 |
Family
ID=18210925
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP32849595A Expired - Fee Related JP3620132B2 (ja) | 1995-12-18 | 1995-12-18 | 木目柄の化粧を施した扉及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3620132B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20020003705A (ko) * | 2000-06-27 | 2002-01-15 | 이영석 | 스킨도어의 표면 무늬 형성 방법 |
KR100509697B1 (ko) * | 2002-10-16 | 2005-08-22 | 박성수 | 투톤 질감을 갖는 가구용 목재패널의 제조방법 |
DE102013100514B4 (de) | 2012-11-22 | 2022-06-23 | Hörmann Kg Brandis | Tür- oder torelementherstellverfahren sowie tür- oder torelement |
JP6177717B2 (ja) * | 2014-03-20 | 2017-08-09 | 小島プレス工業株式会社 | パッド印刷方法 |
CN111688321A (zh) * | 2019-03-14 | 2020-09-22 | 科定企业股份有限公司 | 立体染色涂装木皮饰面板 |
-
1995
- 1995-12-18 JP JP32849595A patent/JP3620132B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH09164633A (ja) | 1997-06-24 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US5950382A (en) | Flat skinned door that simulates a three-dimensional molded skin door and corresponding method | |
US5750240A (en) | Coating of surfaces of articles | |
US6869663B1 (en) | Method of selectively coating a wood composite, and coated wood composite | |
JP3620132B2 (ja) | 木目柄の化粧を施した扉及びその製造方法 | |
JPH0592537A (ja) | 化粧板の製造方法 | |
EP0816122B1 (en) | Transfer decorated members and the method of manufacturing the same | |
JP3049668B2 (ja) | ラミネート化粧材 | |
JP3116285B2 (ja) | 木目模様化粧材 | |
JPS6035265B2 (ja) | 立体化粧板の製造方法 | |
JPS581673B2 (ja) | 凹凸模様を有する化粧材及びその製造方法 | |
JP3284288B2 (ja) | 建材用化粧板 | |
JP3289621B2 (ja) | 框レイアウト化粧板を用いたドア乃至扉 | |
JPH048240Y2 (ja) | ||
JPH0428758Y2 (ja) | ||
JP3580014B2 (ja) | 転写印刷した化粧板及びその製造方法 | |
JPS6219766Y2 (ja) | ||
JP3045565U (ja) | コーティング突板練付シートによる化粧パネル | |
JPH03267452A (ja) | 建築用パネル | |
JP2570438Y2 (ja) | 化粧パネル | |
JP3084599B2 (ja) | 化粧板 | |
JPS6035263B2 (ja) | 立体化粧板の製造方法 | |
JPH06255031A (ja) | 立体化粧板及びその製造方法 | |
JP3580015B2 (ja) | 転写印刷による化粧板及びその製造方法 | |
JPH06155663A (ja) | 立体化粧板 | |
JP3154966B2 (ja) | 化粧金属板 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040907 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20041004 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20041026 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20041108 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |