JP3619867B2 - サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製法 - Google Patents
サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、サーモトロピック液晶ポリマーよりなり、耐熱性があり、高強度、高弾性率のフィラメントの製法およびサーモトロピック液晶ポリマーと他の押出成形可能な非液晶性ポリマーを混合して高剪断速度で紡糸するフィラメントの製法に関し、さらに詳しくは高強度、高弾性率を発現させるための紡糸手段として、高ドラフト、高剪断速度を実現させるためのサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
サーモトロピック液晶ポリマーの出現以来、その耐熱性と高強度、高弾性率が実現できることにより、そのファイバーの製法については、多くの先行技術がある(例えば、特公昭57−24407号公報、特公平5−7174号公報、特開昭54−77691号公報および特開昭63−196716号公報等)。
【0003】
サーモトロピック液晶ポリマーは適当な条件下では、紡糸のみでも高強度、高弾性率が実現でき、さらに熱処理や再延伸することにより、強度、弾性率をアップできることが知られており、特に強度は5〜6倍にもなる例も報告されている。
【0004】
これらの従来のサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの紡糸は、そのドラフト倍率を上げることが困難であるので、ファインデニールのフィラメントを得ることを目的にした場合、口径の非常に小さいノズルを使用して紡糸する必要があり、しかもメルトフラクチャー等の押出異常を起こし易いので、高押出量は実現できないため、その生産性は極めて悪いものであった。
【0005】
従って、得られるフィラメントの物性も、極限まで高強度、高弾性率を得ることは、実験室的規模を除き、安定して高生産性の製法が確立できていない。
【0006】
本発明者等は、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの溶融紡糸における従来技術のもつ生産性の低さ、高強度、高弾性率製品を安定した製造の困難なこと、紡糸の操業性の悪さ(紡糸での糸切れ、デニールムラ、製品品質のバラツキ等)等の原因を鋭意追求し、次のことが判明した。
【0007】
(1)原料であるサーモトロピック液晶ポリマーが必ずしも均質ではない。
この原因は、サーモトロピック液晶ポリマーにある面では必然的で、重合技術からくるものもある。そのほか重合後の熱履歴の差や熱劣化、熱処理による重合度向上等がある。これらは、重合技術やその後の処理技術、また重合後のフィルター技術等で近年飛躍的に品質を向上させることができたが、未だ十分ではない。
【0008】
(2)融点が高いため、紡糸ノズルを出た後において、雰囲気温度でフィラメント表面が冷却されて、ドラフト倍率を大きくできない。
【0009】
従って、フィラメントの表面にスキン層が生じ、内部と表面に構造差が生じていた。これらは高品質(高強度、高弾性率、高伸度等)の妨げになるものである。通常の熱可塑性ポリマーの紡糸では、ノズルを出た後の溶融状態でドラフト倍率を上げ、分子を配向させることは可能であるが、サーモトロピック液晶ポリマーでは、ノズルの中で配向が終了してしまうという考え方が強く、ノズル後に安定してドラフト倍率を上げるという考えに至っていない。
【0010】
(3)ノズルの中で配向性を上げるために、ノズル径を小さくすることで解決を図っている。また、前記ドラフト倍率を上げることができないので、ファインデニールにするためには、必然的にノズル径を小さくする必要がある。
【0011】
しかし、押出量はノズル径の4乗に比例するので、ノズル径が小さくなると、生産性が極端に悪くなる。また、押出の剪断速度もノズル径の3乗に逆比例するので、ノズル径が小さくなると極端に剪断速度が大きくなり、メルトフラクチャー等の押出異常を起こし、サーモトロピック液晶ポリマーのように、原料側に不安定要因のあるポリマーでは、限界値近くの剪断速度では、安定した操業はできない。
【0012】
(4)サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントは高強度、高弾性率、耐薬品性、耐熱性、あるいは優れた電気特性等を備えた機能性繊維ではあるが、やはり産業用繊維であるので、いかに安く量産できるかが重要である。
【0013】
しかし、(1)ないし(4)の要因が複合されて、工業的にサーモトロピック液晶ポリマーのファインデニールフィラメントを、高強度、高弾性率で、しかも安定性良く生産することはできなかった。
【0014】
そのほかサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントは産業用補強繊維としてFRP、FRTP、コンクリート補強等に使用される場合が多いが、この場合、マトリックスとの親和性、接着性、均一混和性等を向上させる必要がある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これら従来技術の課題を解消し、高強度、高弾性率で、しかも安定性良く生産でき、また他のマトリックスとの親和性、接着性、均一混和性等を向上させたサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、次に示す製法によって達成される。
【0017】
すなわち、本発明の第1は、紡糸ノズルの直下の紡出されたフィラメントを高温に維持することにより、ドラフト倍率を30倍以上でもってサーモトロピック液晶ポリマーを溶融紡糸することを特徴とするサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製法にある(以下、製法Aという)。
【0018】
また、本発明の第2は、サーモトロピック液晶性を示さない押出成形可能なポリマーとサーモトロピック液晶ポリマーを混合して溶融紡糸し、溶融紡糸における剪断速度を100,000/秒以上にすることを特徴とするサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製法にある(以下、製法Bという)。この製法により紡糸において高剪断速度を実現するものである。
【0019】
さらに、本発明の第3は、サーモトロピック液晶ポリマーの溶融紡糸において、紡糸の引取張力を流体の流速によって与え、その紡糸されたフィラメントを収納容器内に収納することを特徴とするサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製法以下、製法Cという)。この方法によって、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントを安く量産する製法を提供せんとするものである。
【0020】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で言うサーモトロピック液晶ポリマーとは、溶融時に光学的異方性を示す熱可塑性である溶融可能なポリマーである。このように溶融時に光学的異方性を示すポリマーは、溶融状態でポリマー分子鎖が規則的な平行配列をとる性質を示す。光学的異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した通常の偏光検査法により確認することができる。
【0021】
上記サーモトロピック液晶ポリマーとしては、例えば、液晶性ポリエステル、液晶性ポリカーボネート、液晶性ポリエステルイミド等であり、具体的には、(全)芳香族ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルカーボネート、ポリアゾメチン等が挙げられる。
【0022】
サーモトロピック液晶ポリマーは、一般に細長く、偏平な分子構造からなり、分子の長鎖に沿って剛性が高く、同軸または平行のいずれかの関係にある複数の連鎖伸長結合を有している。
【0023】
本発明において用いるサーモトロピック液晶ポリマーには、一つの高分子鎖の一部が異方性溶融相を形成するポリマーのセグメントで構成され、残りの部分が異方性溶融相を形成しないポリマーのセグメントから構成されるポリマーも含まれる。また、複数のサーモトロピック液晶ポリマーを複合したものも含まれる。
【0024】
サーモトロピック液晶ポリマーを構成するモノマーの代表例としては、
(A)芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種、
(B)芳香族ヒドロキシカルボン酸系化合物の少なくとも1種、
(C)芳香族ジオール系化合物の少なくとも1種、
(D)(D1)芳香族ジチオール、(D2)芳香族チオフェノ−ル、(D3)芳香族チオ−ルカルボン酸化合物の少なくとも1種、
(E)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン系化合物の少なくとも1種、等が挙げられる。
【0025】
これらは単独で構成される場合もあるが、多くは(A)と(C)、(A)と(D)、(A),(B)と(C)、(A),(B)と(E)、あるいは(A),(B),(C)と(E)等の様に組合せて構成される。
【0026】
上記(A)芳香族ジカルボン酸系化合物としては、テレフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−トリフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシブタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4′−ジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルエ−テル−3,3′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−3,3′−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−3,3′−ジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族ジカルボン酸またはクロロテレフタル酸、ジクロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸、メトキシテレフタル酸、エトキシテレフタル酸等、上記芳香族ジカルボン酸のアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体が挙げられる。
【0027】
(B)芳香族ヒドロキシカルボン酸系化合物としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸または3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−メチル−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ナフトエ酸、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−7−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5,7−ジクロロ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体が挙げられる。
【0028】
(C)芳香族ジオールとしては、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、3,3′−ジヒドロキシジフェニル、4,4′−ジヒドロキシトリフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ナフタレンジオール、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、3,3′−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、1,6−ナフタレンジオ−ル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等の芳香族ジオ−ルまたはクロロハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、フェノキシハイドロキノン、4−クロロレゾルシン、4−メチルレゾルシン等の芳香族ジオ−ルのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体が挙げられる。
【0029】
(D1)芳香族ジチオールとしては、ベンゼン−1,4−ジチオ−ル、ベンゼン−1,3−ジチオ−ル、2,6−ナフタレン−ジチオ−ル、2,7−ナフタレン−ジチオ−ル等が挙げられる。
【0030】
(D2)芳香族チオフェノールとしては、4−メルカプトフエノ−ル、3−メルカプトフェノ−ル、6−メルカプトフェノ−ル等が挙げられる。
【0031】
(D3)芳香族チオールカルボン酸としては、4−メルカプト安息香酸、3−メルカプト安息香酸、6−メルカプト−2−ナフトエ酸、7−メルカプト−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0032】
(E)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン系化合物としては、4−アミノフェノ−ル、N−メチル−4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N′−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノフェノ−ル、3−メチル−4−アミノフェノ−ル、2−クロロ−4−アミノフェノ−ル、4−アミノ−1−ナフト−ル、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニル、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルエ−テル、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルメタン、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルスルフィド、4、4′−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4′−エチレンジアニリン、4,4′−ジアミノジフェノキシエタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4′−ジアミノジフェニルエ−テル(オキシジアニリン)等が挙げられる。
【0033】
本発明で用いるサーモトロピック液晶ポリマーは、上記モノマーから溶融アシドリシス法やスラリー重合法等の多様なエステル形成法等により製造することができる。
【0034】
分子量としては、本発明に用いるに好適なサーモトロピック液晶ポリエステルのそれは、約2000〜200000、好ましくは約4000〜100000である。かかる分子量の測定は、例えば圧縮フィルムについて赤外分光法により末端基を測定して求めることができる。また溶液形成を伴う一般的な測定法であるGPCによることもできる。
【0035】
これらのモノマーから得られるサーモトロピック液晶ポリマーのうち下記一般式(1)で表わされるモノマー単位を必須成分として含む(共)重合体である芳香族ポリエステルまたはコポリエステルが好ましい。該モノマー単位は約30モル%以上含むものが好ましい。より好ましくは約50モル%以上含むものである。
【0036】
【化1】
【0037】
本発明の特に好ましい芳香族ポリエステルは、p−ヒドロキシ安息香酸、フタル酸およびビフェノールの3種の化合物からそれぞれ誘導される構造の繰返し単位を有する下記式(2)で表わされるコポリエステルである。この下記式(2)で表されるコポリエステルのビフェノールから誘導される構造の繰り返し単位は、その一部または全部をジヒドロキシベンゼンから誘導される繰り返し単位で置換されたポリエステルであることもできる。p−ヒドロキシ安息香酸およびヒドロキシナフタリンカルボン酸の2種の化合物からそれぞれ誘導される構造の繰返し単位を有する下記式(3)で表わされるコポリエステルである。
【0038】
【化2】
【0039】
【化3】
【0040】
本発明で用いられるサーモトロピック液晶ポリマーは、1種または2種以上の混合物として使用することもできる。
【0041】
さらに耐熱性、機械的性質を向上させるため強化剤または充填剤を添加することができる。強化剤または充填剤の具体例としては、繊維状、粉粒状および両者の混合物が挙げられる。繊維状の強化剤としてはガラス繊維、シラスガラス繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石こう繊維、金属繊維(例えばステンレス繊維等)等の無機質繊維および炭素繊維等が挙げられる。また粉粒状の強化剤としては、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケート等のケイ酸塩、アルミナ、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、ガラスビーズ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、サロヤン等が挙げられ、これらは中空であってもよい(例えば、中空ガラス繊維、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、カーボンバルーン等)。上記強化剤は必要ならばシラン系またはチタン系カップリング剤で予備処理して使用することもできる。
【0042】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤および熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、フォスファイト類およびこれらの置換体等)、紫外線吸収剤(例えば、レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等)、滑剤および離型剤、染料(例えばニトロシン等)、および顔料(例えば、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)を含む着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤等を通常の添加剤を添加し、所定の特性を付与することができる。強化剤および充填剤等は、組成物全体に対して80重量%以下、好ましくは70重量%以下配合することができる。
【0043】
また、これらのフィラメントがFRPやFRTP等の他の素材やマトリックスと組み合わせるための表面処理剤や接着剤を含んでいても良い。
【0044】
本発明では、溶融紡糸ノズルを出た直後のフィラメントを積極的に加熱して、直下の雰囲気温度を高温に維持し、その間でドラフト倍率を上げることにより、分子配向を上げる(製法A)。
【0045】
従来は、ノズル内での剪断力によるサーモトロピック液晶ポリマーの配向にのみ依存していた。しかし、前述したように、サーモトロピック液晶ポリマーの均質性のバラツキはある程度不可避とすると、剪断力を極限まで上げることは、不均質の部分の重合度が高い部分はメルトフラクチャを起こし、重合度の低い場合も紡糸張力を維持できず、いずれも糸切れにつながる。従って、実験室的には可能でも、工業的規模では実現できない。
【0046】
そこで、本発明では、糸切れが発生しない範囲の剪断速度でノズル中を通過させ、その後に保温、加熱下またはその両方の手段を採用して紡糸することにより高ドラフト倍率とすることに成功した。この場合、不均質で重合度の高い部分は、ノズル内で高度に分子配向しているため、同一ドラフト倍率ではドラフト倍率が低くなるが、一本のフィラメントの強度は殆ど差はない。デニールには差はあるが、一般にはその部分は狭く、数十フィラメントが合わされて糸になるので、糸全体としては、ほとんど欠陥にならない。このように高倍率にドラフトされた糸は、ドラフトの少ない糸よりは高強度、高弾性率であることは当然である。
【0047】
本発明の利点の一つは、同一ノズルで比較するとドラフト倍率を上げることによりファインデニールが実現できることにある。即ち、従来はドラフト倍率が上げられないので、ファインデニールにするのに極端にまで細いノズルを指向していた(0.1mm以下まで行われている)。しかし押出量はノズル径の4乗に比例することより、極端に生産性を悪くし、また、ノズル径が小さいことは、メルトフラクチャーを起こし易いこと、ノズル詰まりが起こし易いこと等、弊害の方が大きい。
【0048】
本発明のドラフト倍率を上げる方式では、上記弊害がないばかりでなく、ドラフト倍率を上げることは、引取速度を上げることであり、生産速度をアップすることになる。
【0049】
本発明の製法では、紡糸ノズル直下の雰囲気温度が高い状態で、その間にドラフト倍率を上げることにある。
【0050】
その雰囲気温度に関して鋭意研究した結果、ノズル直下の50mmの地点で、使用しているサーモトロピック液晶ポリマーの融点より−150℃以上で融点以下であることが望ましく、さらに望ましくは、−50℃以上で融点以下であることがわかった。
【0051】
融点以下でもドラフト倍率を上げられるのは、ある程度温度が下がってもフィラメント自体は熱容量をもっていること、サーモトロピック液晶ポリマーは融点以下でも変形はできること、サーモトロピック液晶ポリマーは、結晶化速度が遅いこと、フィラメントが分子配向が起こっているために、フィラメントの溶融強度が強く、ノズル切れしにくいこと等が起因していると思われる。従って、サーモトロピック液晶ポリマーが実質的に固化しない状態でドラフトをかける必要がある。但し、温度が下がり過ぎるとスキン層が生じるためか、ドラフト倍率が上がらない。
【0052】
また、本発明におけるノズルの直下なる表現はノズルよりフィラメントの押出方向の近傍を意味し、上方へ押し出した場合は直上であり、ヨコに押し出した場合は、ヨコ方向の近傍を意味し、いずれも本発明におけるノズル直下なる表現に含まれるものである。
【0053】
雰囲気温度を上げる手段としては、ノズルまたはその近傍からの熱風吹き出し、熱媒加熱、保温筒または加熱筒の使用等いずれも効果がある。また、ノズル直下のポリマーフィラメントを直接加熱する手段として赤外線加熱(レーザによる赤外線放射も含む)がある。これらの具体的な手段については、後述する実施例で詳述する。
【0054】
本発明におけるドラフト倍率は、紡糸の引取速度をノズルを流出するポリマー流速で割ることにより求められる。見かけのドラフト倍率としては、(ノズル径/フィラメント径)の値を2乗した値でも表現できる。しかしながら、この場合溶融体と固体の密度の変化は無視してあるのでこの表現は好ましくない。
【0055】
本発明でドラフト倍率(ドラフト比とも称する)という時は、便宜上この見かけのドラフト倍率により計算した。
【0056】
サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの紡糸では、従来一般にはドラフト倍率を大きくすることはできず、ドラフト倍率を小さくすることを特徴とする従来技術さえある(例えば特公平5−7174号公報)。
【0057】
一般には、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの紡糸では1〜20のドラフト倍率である(例えば特開昭52−114723号公報の実施例)。本発明では高ドラフト倍率を上げる具体的手段を提供することにより、30以上のドラフト倍率は容易であり、望ましくは50以上であり、100以上のドラフト倍率も得られている。
【0058】
ドラフト倍率を大きくすることをノズル近傍の現象面より観察すると、ドラフトで細くなっていく過程(細化域)が、通常のサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの紡糸では、ノズル直下100mm以内で変形が終わっているのに対して、本発明の製法Aの方式では、200mm近く、最適条件では300mmにも達する場合がある。
【0059】
このことは、ドラフト倍率が上げられるための要因であるが、急激に細化しないことは、糸切れしない要因でもある。
【0060】
フィラメントにドラフト張力を与える方法としては、フィラメントに沿って流す流体の摩擦力によって与えることができる。
【0061】
すなわち、前述のノズル直下の雰囲気温度を上げる目的で使用したダイスより噴出する熱風は、このフィラメントへドラフト張力を与えることに利用でき、一石2鳥であり、さらにフィラメントの交絡にも使用される。この方式は、通常のポリプロピレンやポリエステルのメルトブロー不織布のダイスに近似したダイスが使用できる。
【0062】
但し、メルトブロー不織布ダイスとは、装置的には、ノズルのL/D(Lはノズルのランド長、Dはノズル径)を小さくすること、装置の耐熱度を100℃程度アップし、耐圧構造にする必要があること等が異なる。原理的には、メルトブロー不織布における熱風は、フィラメントを細くすることに使用され、強度や弾性率のアップにはつながらないが、本発明に係るサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントでは、メルトブローのように極端に細いフィラメント径にはならず、逆に紡糸のみで高強度、高弾性率のフィラメントにする点が異なる。また、熱風の使用量も汎用樹脂のメルトブロー不織布の場合の数分の1で良い点も異なる。すなわち、サーモトロピック液晶ポリマーにするという構成要件の相違により、目的、効果が全く異なるフィラメント集積体の製法となる。
【0063】
本発明の紡糸ノズルにメルトブローダイスを使用することができる。しかし、従来のメルトブローダイスでは、ノズル長(L)とノズル径(D)の比(L/D)が10前後であり、ノズル径も0.5ミリメータ前後であり、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメント紡糸には、きわめて不適合であることがわかった。そして、それに関して鋭意研究した結果、紡糸のノズル径が0.3ミリメータ以下、望ましくは0.2ミリメータ以下、さらに望ましくは0.15ミリメータ以下であり、そのL/Dが5以下、さらに3以下であることが望ましいことがわかった。
【0064】
フィラメントにドラフト張力を与えるのに流体を使用する他の方法としては、いわゆるサクションボックスを使用する方式がある。これはスパンボンド不織布の製造に使用されている方式であるが、本発明におけるノズル直下のフィラメント温度を高温に維持する方式と組み合わせることにより、より高強度で高弾性率を実現できる。
【0065】
通常のスパンボンド不織布では、ノズル直下ではむしろ温度を低く保つことでフィラメントの配向を上げて、強度を上げている。本発明に係るサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントでは、サーモトロピック液晶ポリマーの融点が高いため、直下のポリマー温度が低いとフィラメントの表面にスキン層ができ、ドラフト倍率が上げることができない。そこで本発明では、通常のスパンボンドとは逆に、直下のポリマー温度を上げることで、高強度、高弾性率のフィラメント集積体の製造を可能にした。すなわち、本発明に係るサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントでは、直下のポリマー温度を高温に保つことで、通常のスパンボンド不織布製造方式では実現できない、紡糸後で5g/d、熱処理することで20g/d以上の強度も実現できるので、効果も大きく異なる。通常のスパンボンド法によるものでは、2g/d程度の強度がせいぜいである。
【0066】
流体は、単に上記溶融フィラメントにドラフト力を与えるばかりでなく、フィラメント相互の絡み合いにも有効である。従って、流体の流速が弱まる前にコンベアベルトか集積体用型に到達させることが望ましい。
【0067】
流体は、通常は空気等の気体を使用することができるが、酸化雰囲気を恐れる必要がある場合は、窒素ガスを使用するし、フィラメントの表面処理を行う場合は、高温雰囲気中にオゾン等の表面処理効果のある気体を混入させることができる。そのほかこの流体は当然液体でもよく、液体の方がより強い牽引力をフィラメントに与えることができる。この場合も、液体にフィラメントの表面処理剤(FRPやFRTPの接着剤、フィラメント相互の結合力を強める接着剤等)を混入することができる。
【0068】
これらの流体は、回収して再使用できる。回収には流体自体の回収のその熱の回収も含まれる。
【0069】
フィラメントにドラフト張力を与える流体以外の方法として、ニップロールや回転するロール群の表面摩擦がある。この方式は、機械的に定量化されたドラフト倍率を与えることに優れており、製品品質の安定化に寄与できる。但し、この方式はフィラメントの絡み合には効果が少ないので、流体使用の手段と併用する必要がある。
【0070】
流体使用の方法と併用する場合でも、流体によりフィラメントにドラフトを与える方法をまず先に行うことが肝要である。
【0071】
サーモトロピック液晶ポリマーからなるフィラメントは、従来ボイドを含むことが多い。しかしながら、本発明の方法によれば得られたフィラメントにはボイドの生成は実質的に認められない。これは、例えば、フィラメントの密度から解る。例えば、高速加熱流体を使用しない、単に冷却して巻き取る通常の溶融紡糸法からのフィラメントと比較すると、本発明の方法によるフィラメントは1〜2%ほど密度が高くなることが認められる。これは、ボイドの生成が実質的に認められないためである。もちろん顕微鏡によるフィラメントの断面写真の観察からもこの事実は裏付けられる。
【0072】
フィラメントの引取方法は通常のボビン等への引取により、ボビン巻、コーン巻、チーズ巻等の巻物や、カセ巻等にすることができる。
【0073】
得られたフィラメントの熱処理方法としては、製品をカセにとり、このカセ巻フィラメントを熱風炉の中で張力を掛けた状態で熱処理することにより、高強度、高弾性率の製品を得ることができる。
【0074】
また、本発明では、溶融紡糸ノズルの中でのサーモトロピック液晶ポリマーの配向性を上げるために、押出成形可能な非液晶性ポリマーを混合紡糸することにより、ノズル内における高剪断速度にする方法である(製法B)。
【0075】
サーモトロピック液晶ポリマーの紡糸においては、剪断速度を大きくすることは、前述のようにメルトフラクチャー等の原因となり、ノズルやノズルを出た後で糸切れを起こす。従って、従来は103/秒程度で紡糸しており、105以上では安定して紡糸することができないとされている(例えば、特開昭63−196716号公報)。
【0076】
本発明は、この剪断速度を、分子量の大きなサーモトロピック液晶ポリマーでも105/秒以上でも安定して紡糸可能にしたものである。
【0077】
紡糸されたフィラメントのサーモトロピック液晶ポリマー部分に関しては、当然分子配向も良く、高強度、高弾性率である。
【0078】
剪断速度γは次式に表せれるように、ノズルの半径r径の3乗に逆比例し、押出量Qは剪断速度に比例する。
【0079】
【数1】
【0080】
この式より、ファインデニールのフィラメントを得る目的でノズル径を小さくすることは、剪断速度を大きくし、糸切れを起こし易い。
【0081】
従って、本発明の製法Bで行えば、高強度、高弾性率のフィラメントが得られるばかりでなく、生産量を何倍にも上げられることを意味する。
【0082】
液晶を示さないポリマー(EP)との混合紡糸において、高剪断力を可能にすることと別に、高ドラフト倍率を実現でき、必ずしも高剪断力に依存しなくても、高強度、ファインファイバーの実現を可能にすることがわかった。すなわち、ノズルから紡出されたフィラメントはノズル内の剪断力およびその後のドラフトにより、EPが表面に移動し、表面にTLCPの皮が貼ることを防ぎ、結果として高ドラフト倍率を実現できる。混合紡糸することにより、ドラフト倍率を50以上、さらには100以上も簡単に実現でき、高ドラフトにより高強度も実現できる。
【0083】
高ドラフト率を実現するためには、本発明の紡糸ノズルの直下の紡出されたフィラメントを高温に維持する手段を併用することがさらに有用である。また、EPを鞘、TLCPを芯にする芯鞘構造の複合ファイバーにすることにより、ドラフト倍率を上げることに効果がある。
【0084】
混合は、ここでは簡単のため混合という用語で代表させたが、混練も含み、2種以上のポリマーが良く混合されている必要がある。混合の程度が悪いと、ある部分はサーモトロピック液晶ポリマーのみが押出され、ある部分では熱可塑性ポリマーのみが押し出されて本発明の目的を達しえない。
【0085】
混合は原料ペレットを混ぜる段階でも均一にする必要がある。また押出機は1軸押出機でも2軸押出機でも良く、ベントタイプの押出機も使用できる。定量性を保つために、押出機直後にギアポンプを設けることが望ましい。また押出機を出た後や、ノズル直前でスタチックミキサーでよく混合することも有効な手段である。
【0086】
一般に、低分子量ポリマーと高分子量ポリマーを混合して高剪断速度で溶融紡糸すると低分子ポリマーがノズル内壁側に移行し、紡糸されたフィラメント表面は低分子ポリマーが多くなることは知られている。しかしながら、非液晶ポリマーを混合する本発明の方法によれば分子量の大小に拘らず同様な現象が発現し、また高剪断速度での紡糸が可能となり、さらにより高いドラフト倍率が達成される。
【0087】
また、一本のフィラメントの中でサーモトロピック液晶ポリマーと非液晶性ポリマーが混合されているばかりでなく、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントと非液晶性ポリマーフィラメントとが混合されマルチフィラメントとすることもできるが、この場合、サーモトロピック液晶ポリマーが強度のあるフィラメントであることが要件となる。
【0088】
混合する非液晶性ポリマーは、高剪断速度でメルトフラクチャー等を実質的に生じないようなものが好ましい。非液晶性ポリマーはこの高剪断速度を可能にする目的に使用されるばかりでなく、本発明に係るサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントがFRTPやFRPの補強材フィラメントとして使用される場合のマトリックス樹脂やマトリックス樹脂との接着剤ポリマーと兼ねることができれば、一石二鳥である。このようにすれば、マトリックス樹脂との混和性を良くするからである。
【0089】
使用目的がFRTP用補強用フィラメントである場合の非液晶性ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系の樹脂がサーモトロピック液晶ポリマーと親和性があり好ましいが、ポリプロピレン(PP)系FRTPでは、モノカルボン酸やマレイン酸等の酸変性されたPP樹脂も特に好ましい。
【0090】
FRP用として使用される場合は、硬化速度の遅い樹脂や硬化剤の少ないエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂も含む。
【0091】
ここで、非液晶性ポリマーは押し出し加工可能であって溶融時に光学的異方性を示さない樹脂である。好ましくは熱可塑性樹脂出あって、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、これらのメチルエステル等の不飽和エステル、酢酸ビニル等の不飽和酸を共重合またはグラフト重合させることによりこれらポリオレフィンを変性した酸変性ポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ABS樹脂;ナイロン等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリサルファイド;ポリフェニレンエーテル等の樹脂である。好ましくはポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル等である。
【0092】
このような非液晶性ポリマーとサーモトロピック液晶ポリマーと混合されたフィラメントの形で押出成形され、そのまま、または一定長に切断され、FRP、FRTPやコンクリートの補強用繊維として使用できる。この場合、この非液晶性ポリマーが、FRPやFRTPのマトリックス樹脂であることが望ましいが、マトリックス樹脂と相溶性のあるポリマーであってもよい。
【0093】
また、混合した非液晶性ポリマーを最終的には除去したい場合には、高剪断速度でメルトフラクチャーを起こさないために、重合度の低いポリマーを使用すれば、溶融状態で低粘度になるので、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントを熱処理する際の加熱状態のもとで、簡単に除去することもできる。
【0094】
混合する割合は、非液晶性ポリマーが除去するポリマーである場合や、残しても、マトリックスとの接着剤としてのみ使用したい場合は、10重量%以下でもよく、FRPやFRTP用樹脂ととしてそのまま使用したい場合は、50〜98重量%まで多くしても差し支えない。すなわち、混合割合としてはサーモトロピック液晶ポリマー:押し出し加工可能な非液晶性ポリマー=0.5:99.5〜99.5:0.5(重量比)である。
【0095】
本発明におけるサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントは、高強度、高弾性率になることが特徴である。本発明によるサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの引張強度は2.5g/d以上、望ましくは3.2g/d以上、さらに望ましくは4.3g/d以上である。これらは、適温で熱処理することにより、4〜6倍に強度アップされる。
【0096】
引張弾性率は85g/d、望ましくは150g/d、さらに望ましくは350g/dで熱処理することにより2〜3倍になる。
【0097】
非液晶性ポリマーと混合されたフィラメントのサーモトロピック液晶ポリマー成分についのの強度は、同一条件で非液晶性ポリマーのみを紡糸したときの強度とサーモトロピック液晶ポリマー成分の比率より計算で出すことができる。
【0098】
フィラメントの強度は、顕微鏡よりフィラメントの径を出し、デニールに換算する。JIS L−1069で、チャック間の繊維長20mm、引張速度20mm/分で測定し、20本の平均値とする。
【0099】
さらに、本発明では、サーモトロピック液晶ポリマーの溶融紡糸の引取張力を流体の流速によって与え、その紡糸されたフィラメントを箱やケンス等の収納容器内に収納することにより、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントを安く量産することができる(製法C)。
【0100】
紡糸したフィラメントを箱等に収納する方法は、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントは、紡糸のみで高配向度のフィラメントが実現できること、次工程の熱処理においては箱に収納したまま該熱処理ができるので、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメント特有の性質を利用した有効な手段となる。さらに、この方式は工業的量産方式に特に有効であり、その後カットしてサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの綿やチョップドストランドを製造する場合は、稀な糸切れが発生しても、品質に大きな欠陥にならないことが多いので、この引取収納法は特に有用である。
【0101】
このケンスや箱等の収納容器は、例えば箱壁面に多孔性を具備させることにより通風性を備えさせ、かくすることにより箱に入っている状態で熱風を循環させて、フィラメントを熱処理することも有効なサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの熱処理方式である。ボビンに巻いた状態では、芯まで均一な温度にすることが困難であり、均一な温度にしても、加熱されている時間が異なるため、熱処理効果が異なり、表面とボビンの芯では、強度、弾性率の異なるフィラメントになる。
【0102】
本発明の前記製法A、B、Cを組み合わせることも有効である。
本発明の製法Bで非液晶性ポリマーの量が少ない場合に、製法Aと組み合わせることは特に有効である。ノズルを出てからの細化の過程も、非液晶性ポリマーが入っていることにより、長くスムースに変化する。
【0103】
本発明の製法BとCの組合せで、FRPやFRTP用補強材としてのカットファイバーの製造には特に有効である。
【0104】
本発明の製法で紡糸されたフィラメントは、熱処理されることにより高強度、高弾性率になり、特に強度の上昇率は大きい。
【0105】
熱処理は、フィラメントの形でされるばかりでなく、織物、チョップドストランド、不織布、FRPやFRTPの成形品の形で行われてもよい。
【0106】
本発明で製造されたフィラメントは、ある程度強度もあり、特に弾性率は大きいので、熱処理ナシまたは熱処理不十分でも後工程で必然的にかかる熱でも実用できる場合も多い。
【0107】
【実施例】
以下、本発明の実施例等を図面に基づいて詳述する。
【0108】
実施例1〜5および比較例1〜3
図1は、本発明における製法Aの一実施例であり、ノズル直下の加熱を熱風で行う場合の例を示した。
【0109】
図1において、サーモトロピック液晶ポリマー融液1は、押出機およびギアポンプ(いずれも図面では省略)より定量的に紡糸装置2へ供給され、ノズル3より溶融フィラメント4が押し出される。紡糸装置2には、高圧の熱風5が供給されノズル近傍の穴6よりフィラメント4に沿って噴出される。熱風を噴出しても周りに冷風を巻き込み、数十mm下では40〜50℃の風となり、固化されたフィラメント7になり巻取機8により引き取られる。
【0110】
ノズル直下(ノズルが下向きの場合)の50mmの地点では、先端の細い(1mmφ)熱電対9を設置してあり、その温度を測定する。熱電対9は、敏感に温度をキャッチできるように、できるだけ細いものを使用し、紡糸装置2からの輻射熱で温度を上昇しないように、測定時間は3分間にする。
【0111】
この場合におけるフィラメントの細化域は100mmを越え、ほぼ200mm近くになり、長い場合には300mmを越える場合もある。
【0112】
図1でのノズルが一錐の場合を示したが、複数本で紡糸し、それらを合わせて一つの巻取機8に引取ることができる。
【0113】
図2は、図1の紡糸装置2を下面より見た場合で、同図Aは、ノズル3の周りに熱風の穴6が開いている。同図Bは、熱風の穴6以外に一列に複数個の小さな熱風の穴21が開いている例である。同図Cは、複数個の小さな熱風の穴22が円周状に配置されている例である。
【0114】
これらの複数個の小さな穴21,22は、溶融フィラメント4を振動させる作用があり、溶融フィラメント4に当たる風による摩擦抵抗を増し、ドラフト倍率を上げる作用がある。
【0115】
表1に、図1と図2の装置を使用して種々の実験をした場合の代表的な例を、実験条件と紡糸したフィラメントの物性の関係で示す(実施例1〜5および比較例1〜3)。
【0116】
【表1】
【0117】
表1のポリマー種は、下記に示すような使用したサーモトロピック液晶ポリマーの種類を示す。
【0118】
a:テレフタル酸、イソフタル酸、4−ヒドロキシ安息香酸および4,4′−ジヒドロキシジフェニル(=0.6/0.4/2/1(モル比))から誘導される繰り返し単位を有する4元コポリエステルであるサーモトロピック液晶ポリエステルであり、融点350℃(DSCによる測定)。
【0119】
b:テレフタル酸、4−ヒドロキシ安息香酸および4,4′−ジヒドロキシジフェニル(=1/2/1(モル比))から誘導される繰り返し単位を有する3元コポリエステルであるサーモトロピックポリエステルであり、融点400℃(DSCによる測定)。
【0120】
c:4−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(=7/3(モル比))から誘導される繰り返し単位を有する2元コポリエステルであるサーモトロピック液晶ポリエステルであり、融点280℃(DSCによる測定)。
【0121】
ノズル形状は、次の通りである。
I:ノズル径0.3mm、ノズル長さ0.3mm(図2A)。
II:ノズル径0.2mm、ノズル長さ0.2mm(図2B)。
III:ノズル径0.12mm、ノズル長さ0.2mm(図2A)。
【0122】
樹脂温度は、押出機より送られてくる樹脂の温度で、紡糸装置2の温度はほぼこの温度に設定してある。
【0123】
押出量(g/分)、熱風量(L/分)は、ノズル1個当りの量である。また、N50温度は、ノズル下50mmにおける雰囲気温度を示す。
【0124】
表1は、種々の条件(押出量、熱風量、ドラフト率等)を変化させ、同一樹脂で最高の強度を示し、かつ繊維径の細いフィラメントを得らた場合を示す。
as spun強度は、紡糸後のフィラメントの強度を、g/d(デニール当りのグラム数)で示す。
【0125】
この表1より、従来の紡糸法(比較例3)では、0.12mmのノズルを使用しても強度は2.3g/d、ドラフト倍率は1.7であったが、ノズル径0.2mmを使用した実施例2では、強度5.2g/d、ドラフト倍率83倍までアップする。
【0126】
このように、通常の紡糸法でさらに強いフィラメントを得るためには、原料やフィルターをさらに厳選し、さらに細いノズルを使用する必要がある。
【0127】
0.12mmと0.2mmでは、長時間運転した場合のノズルの目詰まりは、0.12mmの方が一桁以上多い。
【0128】
(密度の測定)
実施例1のフィラメントと、別に通常の単に冷却して巻き取る溶融紡糸法からのフィラメント(実施例1と同一のサーモトロピック液晶ポリマーを用いた。)の密度を密度勾配管法により測定した。その結果、実施例1のフィラメントは1.384であり、通常の冷却する溶融紡糸法のフィラメントの密度1.371と比較し、約1%ほど密度が高いことが認められた。なお、上記通常品も実施例1のフィラメントも真比重はほとんど同じであった。
【0129】
断面の顕微鏡写真から上記通常品にはボイドの存在が認められたが、実施例1のフィラメントにはそれがほとんど認められなかった。
【0130】
図3は、メルトブロー方式のダイスで多数本フィラメントを紡糸する例を示す。なお、この装置は、通常のメルトブロー不織布製造用のダイスと同様な構造である。
【0131】
メルトブロー用ダイス31は、サーモトロピック液晶ポリマーの融液1は多数の細孔32よりフィラメント33状に押出され、細孔の両サイドにあるスリット34,35よりの熱風36による高温域でドラフト倍率を上げられる。この場合メルトブローのように熱風量を多くする必要はない。熱風36でフィラメントを噴出するという効果より、雰囲気温度を上げ、ドラフト倍率を上げるのに有効であればよいからである。
【0132】
フィラメント群33はターンロール37を経て、集束されてカセ巻取機38に巻取られる。
【0133】
図4は、図3のメルトブローダイスの断面(図A)とその内部構造(図B)を図示したものである。ダイス全体はヒーティングブロック39で加熱される。同図は、フラットのメルトブローダイスを示したが、円形のダイスでもよい。
【0134】
図5は、図4のノズル51部の従来のメルトブローダイスの構造の例で、ノズル径0.5ミリメータ、ノズル長(L)とノズル径(R)の比(L/D)が10であり、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメント紡糸には、きわめて不適合である。
【0135】
図6は、本発明に適するメルトブローダイスのノズル部の例で、ノズル径0.15、L/Dが2である。
【0136】
通常のポリピロピレンやポリエステルのメルトブロー不織布では、ダイスの紡糸ノズル径は、高速のエアーによるドラフト力に耐えるために、0.5ミリメータ前後のノズル径が使用され、小さくすると、ノズル切れが多くなり、ショットの発生率が高まり、良い不織布が得られない。またこれら通常のメルトブローダイスのL/Dも、出てくるフィラメントの直線性と、機械的耐圧性を考慮して、10前後であることが通常である。これらのダイスで成形されたポリプロピレンやポリエステルのメルトブロー不織布を構成するフィラメントは、全くといってよいほど強度がなく、0.5g/d以下である。
【0137】
しかし、TLCPのフィラメント紡糸においては、吐出されるフィラメントの強度は2.5g/d以上あり、そのため紡糸ノズル径が小さくとも、ノズル切れが少ない。種々に実験した結果、ノズル径が0.3ミリメータ以下、望ましくは0.2ミリメータ以下、さらに望ましくは0.15ミリメータ以下であることがわかった。しかし、あまり小さいノズル径は、日詰まりが激しく、実用的ではない。それ故、通常は0.005ミリメータ以上である。
【0138】
また、本発明のノズルのL/Dは、できるだけ小さい方がフィラメント切れが少なく、結果として良いフィラメントからなる不織布となるが、機械の耐圧性から0.1以下にすることは困難である。そこで、種々に実験した結果、L/Dが5以下、さらに3以下であることが望ましいことがわかった。
【0139】
図7は、本発明の製法Aの他の方式の例で、紡糸機51のノズル52の下を赤外線ヒータ53で溶融フィラメント54を加熱した例を示す。
【0140】
赤外線ヒータ53の周囲には反射鏡55を置き、赤外線加熱の効率を良くしてある。
フィラメントは図1と同様に巻取機8により巻取る。
【0141】
紡糸機の中にスタチックミキサー56を入れ、ノズル52より押し出すことは押出機や紡糸機内の樹脂の温度ムラを無くし、均一な温度で押し出されるので、剪断速度を大きくでき、高ドラフト倍率を可能にする。従って、フィラメントの品質が良くなり、安定する。
【0142】
図8〜10は、本発明の製法Aの他の例で、スパンボンドダイス61の下に保温筒62を設け、ダイス61から押し出されたフィラメント63が保温筒62で加熱されている状態でサクションボックス64のエアー65で引き取られ、通気性のある箱66に貯められる(本発明の製法C)。
【0143】
箱66に貯められている状態でのフィラメント67は、フィラメント相互が絡みあっていないことが望ましい。その後に取り出してフィラメントとして使用するためである。
【0144】
箱66は通気性があるため、この箱のまま熱風循環の環境に置き、熱処理することができる。
【0145】
保温筒61は、紡糸部直下を断熱材で囲ったもので、保温筒そのものはヒータで積極的に加熱されていることが望ましい。
【0146】
図9はスパンボンドダイス61を下からみた図で、多数のノズル71があり、メルトブローのダイスのように一列に並んでいないので、ノズルの数を多くできるので、生産性が良い。
【0147】
図10は、サクションボックス64の断面を図8のAのサイドから見たもので、入口81から入った多数のサーモトロピック液晶ポリマーフィラメント82は、エアー溜83で均一されたエアー65がエアースリット84で加速され、スリット85で高速流体となってフィラメント82を高速で引き取り、フィラメント82に牽引力を与える。
メルトブロー法に比較して、熱風を使用しなくても良い点で、経済的である。
【0148】
図11は、カセ枠に引き取ったフィラメントの熱処理方法の例を示したもので、カセ糸91をカセ枠92にセットし、そのカセ枠がスプリング93で外に張力がかかり、常に一定張力でカセ糸に張力がかかるようにする。そのカセ糸に張力がかかった状態で熱風循環中で熱処理する。なお、図11のAはカセ枠の上面図、Bは斜視図をそれぞれ示す。
【0149】
表1の実施例2の糸を図11の張力のかかるカセ枠で320℃の熱風循環中で、2時間熱処理することにより、強度26g/d、弾性率580g/dのフィラメントにすることができた。同じ条件で、フリー収縮を許す状態で熱処理すると、強度19g/d、弾性率450g/dのフィラメントであった。
【0150】
実施例6〜10
図12に、本発明の製法Bによるサーモトロピック液晶ポリマーと非液晶性ポリマーを混合して押出す装置の例を示す。ホッパー101にサーモトロピック液晶ポリマーと非液晶性ポリマーを一定割合で混合されてストックされたペレット102は、押出機103中でスクリュウ104で混練され、スタチックミキサー105でさらに混合されてギアポンプ106よりダイス107に導かれる。
【0151】
ダイス107は、図9に示したスパンボンドダイスを使用したが、他の一般のポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンの溶融紡糸ダイでもよい。ダイス107より押し出されたフィラメント108は、一定速度で巻取機109に巻取られる。
図12の装置を使用して混合紡糸した結果を表2に示す(実施例6〜10)。
【0152】
【表2】
【0153】
ノズルの径は0.3mm、ランド長は2mmで、ノズル数400を使用した。サーモトロピック液晶ポリマーのポリマー種は表1と同様である。また、非液晶性ポリマーのポリマー種は、以下の通りである。
p:ポリプロピレン MFR 0.4g/10分
n:マレイン酸変性ポリエチレン MFR 1.0g/10分
(高密度ポリエチレンに無水マレイン酸を1重量%付加させた)
t:PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)
押出量は1ノズル当りのg/分である。
【0154】
サーモトロピック液晶ポリマーの混入比率q、混入フィラメントのas spun強度fo、非液晶性ポリマー成分のみで同一条件で紡糸した強度feとすると、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメント成分のみの強度fsは、以下の式で表される。
【0155】
【数2】
【0156】
表2より、非液晶性ポリマー成分を混ぜることにより、剪断速度、ドラフト倍率、fs強度ともにアップしていることがわかる。
実施例11〜15および比較例4
【0157】
表3の実施例11〜15に、混合紡糸により高ドラフトが実現できた例を示す。
【0158】
図6に示すメルトブローダイスを使用して実現した。TLCPのみでは、ドラフト倍率が21であったに対して(比較例4)、同一条件でEPと混合紡糸することによりドラフト倍率を50以上、熱風併用で100以上も容易である。
【0159】
【表3】
【0160】
EPとTLCPの混合紡糸が高ドラフト率が実現できるのは、次の理由による。原料段階で混合されたEPとTLCPが押出機の中でさらに混練されるが、ノズル内の剪断力やノズルを出てからのドラフトの作用により、EPがフィラメントの表面に押し出され、TLCPが芯、EPが鞘の構造のフィラメントが自然に形成され、EPが表面にあることにより、TLCPが表面で皮を張ることがないために高ドラフトが実現できる。このことは、EPとして、ポリプロピレンを使用した実施例12において得られたフィラメントについて、芯となるTLCPをアルカリ液で溶解し、顕微鏡観察すると、ポリプロピレンの鞘のみが残っていることが明確に観察された。
【0161】
すなわち、得られたフィラメントを熱苛性ソーダ水溶液に浸漬し、一晩放置後、フィルターで濾過し、水洗乾燥した。これを電子顕微鏡で観察すると、鞘のみが残った中空構造をしたフィラメントが明瞭に観察された。
【0162】
なお、観察したフィラメントについて組成分析するとほとんどポリプロピレンのみからなることを確認した。さらにまた別に個別に行った試験でのアルカリ水溶液処理ではTLCPは容易に溶解しほとんど固体は残らないが、反対にポリプロピレンはほとんど溶解しないで固体のままでいることを確認している。
【0163】
図13は、二つの押出機を使用した例で、押出機111よりサーモトロピック液晶ポリマーを、押出機112より非液晶性ポリマーを押出す。ともにギアポンプ113と114を通してスパンボンドダイス115に入る。二つの樹脂はダイス115から出たところで、図9の場合と同様に保温筒116で加熱され、サクションボックス117を通じて牽引されたフィラメント118がターンロール119を経て巻取機120で巻取られる。
【0164】
この場合、スパンボンドダイスを下から見て、図14に示すように、サーモトロピック液晶ポリマーは同図の丸で示したノズル121で、非液晶性ポリマーは図の斜線で示した丸のノズル122から別々に出し、図13のフィラメントとしてはサーモトロピック液晶ポリマーと非液晶性ポリマーの2種のフィラメントの混合体である。
【0165】
二つの押出機を使用し、芯鞘構造の複合フィラメントを紡糸することができる。図15に芯鞘構造の複合繊維の例を示した。こうすることにより、表面にドラフト性の高いポリプロピレン、ポリエステルを使用することにより、表面にTLCPの皮が張らないため、高倍率ドラフトが実現できる。
【0166】
合成繊維のファインデニールのフィラメントを製造するのに使用する種々のタイプのノズルも使用することができ、図16に示すように、1本のフィラメントの内部を海島構造(同図A)、分割タイプ(同図B)、多層タイプ(同図C)にし、斜線部をサーモトロピック液晶ポリマー、その他の部分を非液晶性ポリマーにして押し出す(その逆も可能)。通常の合成皮革等のファインデニールにする目的では、延伸した後に分割や不要な樹脂を除去するが、本発明に係るサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントでは、延伸は不要であり、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメント以外の樹脂が、FRPやFRTPのマトリックス樹脂またはそれに相溶性のあるポリマーであり、サーモトロピック液晶ポリマーと非液晶性ポリマーがフィラメント単位でよく混合できることや、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの紡糸に高剪断速度が実現できることを目的とする。
【0167】
同図Dは、図12の方式で、サーモトロピック液晶ポリマーと非液晶性ポリマーが均一に混合されている例を示す。
【0168】
図17は、図13と同様にサーモトロピック液晶ポリマー用押出機111と非液晶性ポリマー用押出機112を使用し、それぞれにメルトブローダイス141と142を使用して、熱風発生機143で発生した熱風により別々のフィラメント144と145をコンベア119上に集積し、箱146の中に貯める。
【0169】
この場合、図17では1回ずつの積層であるが、多数のメルトブローダイスを設け、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメント層と非液晶性ポリマーフィラメント層を多数層が相互に積層し、生産性と混合性を良くすることができる。
【0170】
また、図17では、すべてメルトブローダイスを使用したが、スパンボンド方式でも、またはスパンボンド方式とコンバインしても使用できる。
【0171】
【発明の効果】
本発明に係るサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントは、紡糸の段階での糸切れがなく、高生産性であるので安価になる。
【0172】
また、本発明により製造されるサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントは、高強度、高弾性率であり、熱処理することによりさらに高強度、高弾性率にすることができる。従って、高強度、高弾性率のFRPやFRTPの補強材となる。
【0173】
この場合、非液晶性ポリマーがサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントとFRP等との接着性を高め、またマトリックスの中に均一に分散させる効果もある。
【0174】
本発明に係るサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントは、弾性率が大きく、耐熱性があり、耐溶剤性、高電気絶縁性、低膨張係数であることにによる寸法安定性、不燃性、難燃性があるので、熱処理することなくそのままにフィルターや断熱材にすることも可能である。
【0175】
本発明に係るサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの用途として、BMCやSMCの補強用フィラメント、アスベスト代替用途であるブレーキ、断熱材にも使用できる。また、高電気絶縁性や耐熱性、不燃性を利用した電気部品、送電器部品、自動車、船舶、航空機の部品にすることもできる。
【0176】
さらに、本発明のサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントは、多量に量産でき、安いために、これらのフィラメントを一定長に切断して、チョップドストランドにして、FRPやFRTP、コンクリート補強等の原料にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における製法Aの一実施例であり、ノズル直下の加熱を熱風で行う場合の装置の一例を示す図。
【図2】図1の紡糸装置2を下面より見た図。
【図3】メルトブロー方式のダイスで多数本フィラメントを紡糸する例を示す図。
【図4】図3のメルトブローダイスの断面(図A)とその内部構造(図B)を示した図。
【図5】従来のメルトブローダイスのノズル部の例を示す図。
【図6】本発明に適するメルトブローダイスのノズル部の例でを示す図。
【図7】製法Aの他の方式の一実施例で、紡糸機51のノズル52の下を赤外線ヒータ53で溶融フィラメント54を加熱した例を示す図。
【図8】製法Aの他の一実施例で、スパンボンド不織布製造用ダイス61の下に保温筒62、通気性のある箱66を具備する装置を示した図。
【図9】図8のスパンボンドダイス61を下から見た図。
【図10】図8のサクションボックス64の断面を図8のサイドAから見た図。
【図11】カセ枠に引き取ったフィラメントの熱処理方法の例を示した図であり、Aはカセ枠の上面図、Bは斜視図をそれぞれ示す。
【図12】サーモトロピック液晶ポリマーと非液晶性ポリマーを混合して押出す装置一例を示す図。
【図13】二つの押出機を使用してサーモトロピック液晶ポリマーと非液晶性ポリマーを混合して押出す装置の一例を示す図。
【図14】図13のダイス115の上面を示す図。
【図15】本発明の製法により得られた芯鞘構造の複合繊維からなるフィラメントの内部構造を示す図。
【図16】本発明の製法により得られる1本のフィラメントの内部構造を示す図。
【図17】サーモトロピック液晶ポリマーと非液晶性ポリマーを使用し、それぞれにメルトブローダイスで紡糸する例を示す図。
【符号の説明】
1:サーモトロピック液晶ポリマー融液、2:紡糸装置、3:ノズル、4:フィラメント、5:高圧熱風、6:送風孔、 7:固化フィラメント、 8:巻取り機、31:メルトブロー用ダイス、 37:ターンロール、38:カセ巻取り機、39:ヒーティングブロック、53:赤外線ヒーター、54:反射鏡、 55:スタチックミキサー、62:保温筒、64:サクションポンプ、66:多孔性収納容器、92:カセ枠、93:スプリング、103:押し出し機、 104:スクリュウ、105:スタチックミキサー、106:ギアポンプ、 107:ダイス、109:巻取り機、111,112:押し出し機、113,114:ギアポンプ、116:保温筒、143:熱風送風機、119:コンベア、146:収納用箱。
Claims (7)
- 紡糸ノズルより紡出されたサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントに対して、該紡糸ノズルを含むダイスの噴出口より、該サーモトロピック液晶ポリマーの融点以上の温度の熱風が噴出されることにより、ドラフト倍率が30倍以上に溶融紡糸されることを特徴とする、サーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製造方法。
- 前記紡糸ノズルのノズル径が、0.3ミリメータ以下であり、そのノズル長(L)とノズル径(D)の比(L/D)が5以下であることを特徴とする、請求項1に記載のサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製造方法。
- 前記紡糸ノズルから紡出されたサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの変形域を100mm以上にすることを特徴とする請求項1に記載のサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製造方法。
- サーモトロピック液晶性を示さない押出成形可能なポリマーと、前記サーモトロピック液晶ポリマーを混合して溶融紡糸し、溶融紡糸における剪断速度を100,000/秒以上にすることを特徴とする、請求項1に記載のサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製造方法。
- 前記サーモトロピック液晶ポリマーの溶融紡糸において、液晶性を示さない押出成形可能なポリマーを混合紡糸することにより、紡糸におけるドラフト倍率を50以上にすることを特徴とする、請求項1に記載のサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製造方法。
- 前記サーモトロピック液晶ポリマーを芯、液晶性を示さないポリマーを鞘とした芯鞘構造の複合紡糸することを特徴とする、請求項1に記載のサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製造方法。
- サーモトロピック液晶ポリマーの溶融紡糸において、紡糸の引取張力を流体の流速によって与え、その紡糸されたフィラメントを収納容器内に収納することを特徴とする、請求項1に記載のサーモトロピック液晶ポリマーフィラメントの製造方法。
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