JP3618332B2 - 高圧放電ランプの製造方法、高圧放電ランプおよびランプユニット - Google Patents

高圧放電ランプの製造方法、高圧放電ランプおよびランプユニット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧放電ランプの製造方法、高圧放電ランプおよびランプユニットに関する。特に、一般照明や、反射鏡と組み合わせてプロジェクター、自動車の前照灯などの用途に使用される高圧放電ランプを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、大画面映像を実現するシステムとして液晶プロジェクタやDMDプロジェクタなどの画像投影装置が広く用いられており、このような画像投影装置には、高い輝度を示す高圧放電ランプが一般的に広く使用されている。従来の高圧放電ランプ1000の構成を図49に模式的に示す。図49に示したランプ1000は、いわゆる超高圧水銀ランプであり、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
ランプ1000は、石英ガラスから構成された発光管(バルブ)101と、発光管101の両端から延在する一対の封止部(シール部)102とを有している。発光管101の内部(放電空間)には、発光物質(水銀)106が封入されており、そして、タングステンを材料とする一対のタングステン電極(W電極)103が一定の間隔をおいて互いに対向して配置されている。W電極103の一端は、封止部102内のモリブデン箔(Mo箔)104と溶接されており、W電極103とMo箔104とは電気的に接続されている。Mo箔104の一端には、モリブデンから構成された外部リード(Mo棒)105が電気的に接続されている。なお、発光管101内には、水銀106の他に、アルゴン(Ar)および少量のハロゲンも封入されている。
【0004】
ランプ1000の動作原理を簡単に説明すると、外部リード105およびMo箔104を介してW電極103、103間に始動電圧が印加されると、アルゴン(Ar)の放電が起こり、この放電によって発光管101の放電空間内の温度が上昇し、それによって水銀106が加熱・気化される。その後、W電極103、103間のアーク中心部で水銀原子が励起されて発光する。ランプ1000の水銀蒸気圧が高いほど放射光も多くなるため、水銀蒸気圧が高いほど画像投影装置の光源として適しているが、発光管110の物理的耐圧強度の観点から、15〜20MPa(150〜200気圧)の範囲の水銀蒸気圧でランプ1000は使用されている。
【0005】
なお、関連する文献として後述する特許文献2がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平2−148561号公報
【特許文献2】
特開2001−23570号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のランプ1000は、20MPa程度の耐圧強度を有するものであるが、ランプ特性をさらに向上させるべく、耐圧強度をより高める研究・開発が行われている(例えば、特許文献2など参照)。これは、今日、より高性能の画像投影装置を実現する上で、より高出力・高電力のランプが求められており、この要求を満たすべく、より耐圧強度の高いランプが必要となっているからである。
【0008】
さらに説明すると、高出力・高電力のランプの場合、電流の増大に伴って電極の蒸発が早くなることを抑制するために、通常よりもさらに多くの水銀を封入して、ランプ電圧を高くする必要がある。ランプ電力に対して封入水銀量が足りなければ、必要なレベルまでランプ電圧を高くできないため、ランプ電流が増大してしまい、その結果、電極が早く蒸発してしまうので、実用的なランプは実現できない。言い換えると、高出力のランプを実現する観点から見れば、ランプ電力を高くし、そして、電極間距離が従来のものよりもさらに短いショートアーク型のランプを作製すればよいのであるが、実際に、高出力・高電力のランプを作製する上では、耐圧強度を向上させて、封入水銀量を増やすことが必要となるのである。そして、今日の技術において、極めて高い耐圧強度(例えば、30MPa程度以上)で、実用化可能な高圧放電ランプは、まだ実現されていない。
【0009】
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、従来の高圧放電ランプよりも、高い耐圧強度を有する高圧放電ランプを製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の高圧放電ランプの製造方法は、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管内に配置された一対の電極棒と、前記電極棒に接続された金属箔と、前記発光管から延在した第1のガラス部と当該第1のガラス部よりも歪点温度が低く当該第1のガラス部に外周が覆われている第2のガラス部とからなり、かつ、前記電極棒の軸方向に略垂直な断面において前記金属箔の断面が当該第2のガラス部に覆われている封止部と、を有する高圧放電ランプの製造方法であって、前記第2のガラスの歪点温度よりも高く、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度範囲で、前記第2のガラス部が位置する部分を含む前記封止部を保持した状態で前記第2のガラス部に圧力を印加する工程を包含する。
【0011】
ある好適な実施形態において、前記ガラス部材は、15重量%以下のAlおよび4重量%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiOとからなるガラス管またはガラス板である。
【0012】
本発明による第2の高圧放電ランプの製造方法は、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の両端から延びた一対の封止部とを有する高圧放電ランプの製造方法であって、高圧放電ランプの発光管となる発光管部と、前記発光管部の両端から延在した一対の側管部とを有する放電ランプ用ガラスパイプを用意する工程と、前記一対の側管部のうちの一方の側管部に、前記側管部を構成する第1のガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス管と、少なくとも電極棒を含む電極構造体とを挿入し、次いで、前記側管部を加熱収縮することによって、前記一対の封止部のうちの一方の封止部を形成する工程と、前記一方の封止部を形成した後、前記発光管部内に発光物質を導入する工程と、前記発光物質を導入した後、前記一方に対する他方の側管部に、前記第2のガラスから構成されたガラス管と、少なくとも電極棒を含む電極構造体とを挿入し、次いで、前記側管部を加熱収縮することによって、前記一方に対する他方の封止部および前記発光物質が封入された発光管を形成する工程と、両方の封止部および発光管が形成されたランプ完成体に対して、前記第2のガラスの歪点温度よりも高い温度で、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度で、前記ガラス管および前記側管部を少なくとも含む部分を加熱する工程とを包含する。
【0013】
前記加熱工程は、2時間以上行われることが好ましい。
【0014】
前記加熱工程は、100時間以上行ってもよい。
【0015】
ある好適な実施形態では、光弾性効果を利用した鋭敏色板法を用いて前記封止部を測定した場合、前記第2のガラス部に相当する領域に10kgf/cm 2 以上50kgf/cm 2 以下の長手方向の圧縮応力が存在するように圧力を印加する工程が実施される
【0016】
ある好適な実施形態では、前記一対の封止部のそれぞれについて、前記圧縮応力が生じる。
【0017】
ある好適な実施形態において、前記加熱は、前記第2のガラスの歪点温度よりも高く且つ前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度の炉に、前記ランプ完成体を配置することよって実行される。
【0018】
前記炉内は、真空または減圧状態であることが好ましい。
【0019】
ある好適な実施形態において、前記第1のガラスは、SiOを99重量%以上含み、前記第2のガラスは、15重量%以下のAlおよび4重量%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiOとを含む。
【0020】
ある好適な実施形態において、前記高圧放電ランプは、高圧水銀ランプであり、前記発光物質として水銀を、前記発光管の内容積を基準に、150mg/cm以上封入する。
【0021】
前記発光物質として水銀を、前記発光管の内容積を基準に、220mg/cm以上封入することが好ましい。
【0022】
前記発光物質として水銀を、前記発光管の内容積を基準に、300mg/cm以上封入してもよい。
【0023】
本発明による第3の高圧放電ランプの製造方法は、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の気密性を保持する封止部を備えた高圧放電ランプの製造方法であって、高圧放電ランプの発光管となる発光管部と、前記発光管部から延在した側管部とを有する放電ランプ用ガラスパイプを用意する工程と、前記側管部内にガラス管を挿入し、次いで、前記側管部を加熱して両者を密着させる工程と、前記側管部に密着した前記ガラス管内に、少なくとも電極棒を含む電極構造体を挿入し、次いで、前記側管部および前記ガラス管を加熱・収縮させて、前記電極構造体を封止する工程と、前記電極構造体を封止する工程を実行することによって、高圧放電ランプの封止部を完成させた後、前記ガラス管の歪点温度よりも高い温度で、当該封止部を2時間以上、加熱する工程とを包含する。
【0024】
本発明による第4の高圧放電ランプの製造方法は、ガラス管内に、少なくとも電極棒を含む電極構造体を挿入する工程と、前記ガラス管の一部と、前記電極構造体の少なくとも一部とを密着させる工程と、高圧放電ランプの発光管となる発光管部と、前記発光管部から延在した側管部とを有する放電ランプ用ガラスパイプにおける側管部に、前記電極構造体の少なくとも一部が密着した前記ガラス管を挿入する工程と、前記側管部および前記ガラス管を加熱・収縮させることにより、前記電極構造体を封止する工程と、前記電極構造体を封止する工程を実行することによって、高圧放電ランプの封止部を完成させた後、前記ガラス管の歪点温度よりも高い温度で、当該封止部を2時間以上、加熱する工程とを包含する。
【0025】
ある好適な実施形態において、前記電極構造体は、前記電極棒と、前記電極棒に接続された金属箔と、前記金属箔に接続された外部リードとから構成されている。
【0026】
前記電極棒の少なくとも一部に、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成された金属膜が形成されていることが好ましい。
【0027】
Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属を少なくとも表面に有するコイルが、前記電極棒の少なくとも一部に巻き付けられていることが好ましい。
【0028】
ある好適な実施形態において、前記放電ランプ用ガラスパイプにおける前記側管部と前記発光管部と境界周辺には、前記側管部の内径が他の部分よりも小さくされた径小部が設けられている。
【0029】
ある好適な実施形態において、前記側管部は、SiOを99重量%以上含むガラスから構成されており、前記ガラス管は、15重量%以下のAlおよび4重量%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiOとを含むガラスから構成されており、前記加熱する工程は、1080℃以下で実行される。
【0030】
本発明による第5の高圧放電ランプの製造方法は、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の両端から延びた一対の封止部とを有する高圧放電ランプの製造方法であって、高圧放電ランプの発光管となる発光管部と、前記発光管部の両端から延在した一対の側管部とを有する放電ランプ用ガラスパイプを用意する工程と、前記一対の側管部のうちの一方の側管部に、前記側管部を構成する第1のガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス管と、金属箔の一端に電極棒が接続され且つ当該金属箔の他端に外部リードが接続されてなる電極構造体とを挿入し、次いで、前記側管部を加熱収縮することによって、前記一対の封止部のうちの一方の封止部を形成する工程と、前記一方の封止部を形成した後、前記発光管部内に発光物質を導入する工程と、前記発光物質を導入した後、前記一方に対する他方の側管部に、前記第2のガラスから構成されたガラス管と、金属箔の一端に電極棒が接続され且つ当該金属箔の他端に外部リードが接続されてなる電極構造体とを挿入し、次いで、前記側管部を加熱収縮することによって、前記一方に対する他方の封止部および前記発光物質が封入された発光管を形成する工程と、両方の封止部および発光管が形成されたランプ完成体に対して、前記第2のガラスの歪点温度よりも高い温度で、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度で、少なくとも前記ガラス管および前記側管部を含む部分を加熱する工程とを包含する。
【0031】
ある好適な実施形態では、前記一方の封止部を形成する工程および前記他方の封止部を形成する工程において、前記電極構造体は、前記電極棒と前記金属箔との接続部が前記ガラス管によって覆われるように、且つ、前記電極棒の先端が前記発光管部内に位置するように、前記側管部に挿入される。
【0032】
ある好適な実施形態では、前記一方の封止部を形成する工程および前記他方の封止部を形成する工程の少なくとも一方において、前記電極構造体は、前記金属箔の全体が前記ガラス管によって覆われるように、且つ、前記電極棒の先端が前記発光管部内に位置するように、前記側管部に挿入される。
【0033】
ある好適な実施形態において、前記ガラス管の一端には、径小部が形成されており、前記径小部が前記金属箔の一部に接触するように、前記ガラス管は前記金属箔を覆う。
【0034】
前記ガラス管の肉厚は、0.1mm以上1mm以下であることが好ましい。
【0035】
前記ガラス管の長手方向の長さは、3mm以上7mm以下であることが好ましい。
【0036】
前記ガラス管の長手方向の長さは、3mm以上5mm以下であってもよい。
【0037】
本発明による第6の高圧放電ランプの製造方法は、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の両端から延びた一対の封止部とを有する高圧放電ランプの製造方法であって、高圧放電ランプの発光管となる発光管部と、前記発光管部の両端から延在した一対の側管部とを有する放電ランプ用ガラスパイプを用意する工程と、前記一対の側管部のうちの一方の側管部に、前記側管部を構成する第1のガラスよりも軟化点の低い第2のガラスを含むガラス管と、金属箔の一端に電極棒が接続され且つ当該金属箔の他端に外部リードが接続されてなる電極構造体とを挿入し、次いで、前記側管部を加熱収縮することによって、前記一対の封止部のうちの一方の封止部を形成する工程と、前記一方の封止部を形成した後、前記発光管部内に発光物質を導入する工程と、前記発光物質を導入した後、前記一方に対する他方の側管部に、前記第2のガラスを含むガラス管と、金属箔の一端に電極棒が接続され且つ当該金属箔の他端に外部リードが接続されてなる電極構造体とを挿入し、次いで、前記側管部を加熱収縮することによって、前記一方に対する他方の封止部および前記発光物質が封入された発光管を形成する工程と、両方の封止部および発光管が形成されたランプ完成体に対して、前記第2のガラスの歪点温度よりも高い温度で、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度で、少なくとも前記ガラス管および前記側管部を含む部分を加熱する工程とを包含し、前記一対の側管部のうちの少なくとも一方の側管部に挿入される前記ガラス管は、少なくとも二層構造となっており、前記電極構造体に面する側に位置する前記ガラス管の層は、前記第2のガラスから構成されており、そして、前記側管部に面する側の前記ガラス管の層は、前記第1のガラスから構成されている。
【0038】
ある好適な実施形態において、前記ガラス管は、二層構造であり、前記ガラス管の内側の層は、15重量%以下のAlおよび4重量%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiOとを含むガラスから構成されており、前記ガラス管の外側の層は、SiOを99重量%以上含むガラスから構成されており、前記ガラス管は、前記一対の側管部のそれぞれに挿入される。
【0039】
ある好適な実施形態において、前記加熱の温度は、1030℃±40℃である。
【0040】
本発明による第7の高圧放電ランプの製造方法は、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の気密性を保持する封止部とを有する高圧放電ランプの製造方法であって、高圧放電ランプの発光管となる発光管部と、前記発光管部から延在した側管部とを有する放電ランプ用ガラスパイプを用意する工程と、前記側管部を構成する第1のガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス部材を前記側管部内に挿入し、次いで、前記側管部を加熱して前記ガラス部材と前記側管部とを密着させる工程と、前記密着工程の後、前記第2のガラスの歪点温度よりも高く、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度で、前記ガラス部材と前記側管部とを少なくとも含む部分を保持する工程と、前記保持工程の際に、前記第2のガラス部へ圧力を加える工程とを包含する。
【0041】
前記発光物質として水銀を、前記発光管の内容積を基準に、220mg/cm以上封入することが好ましい。
【0042】
本発明による高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管内に配置された一対の電極棒と、前記電極棒に接続された金属箔と、前記発光管から延在した第1のガラス部と当該第1のガラス部よりも歪点温度が低く当該第1のガラス部に外周が覆われている第2のガラス部とからなり、かつ、前記電極棒の軸方向に略垂直な断面において前記金属箔の断面が当該第2のガラス部に覆われている封止部と、を有する高圧放電ランプであって、前記第2のガラスの歪点温度よりも高く、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度範囲で、前記第2のガラス部が位置する部分を含む前記封止部を保持した状態で前記第2のガラス部に圧力を印加する工程によって、前記第2のガラス部に圧縮応力が印加されている。
【0043】
ある好適な実施形態では、前記金属箔の全部が前記第2のガラス部内に位置している。
【0044】
ある好適な実施形態では、前記第2のガラス部の端部が前記金属箔上に位置する場合、前記第2のガラス部の長手方向の長さは、3mm以上5mm以下である。
【0045】
ある好適な実施形態において、前記第2のガラス部のうち前記金属箔上に位置する部分の厚さは、0.1mm以上1mm以下である。
【0046】
ある好適な実施形態において、前記高圧放電ランプは、高圧水銀ランプであり、前記発光物質として水銀が、前記発光管の内容積を基準に、150mg/cm以上封入されている。
【0047】
前記発光物質として水銀が、前記発光管の内容積を基準に、220mg/cm以上封入されていることが好ましい。
【0048】
前記発光物質として水銀が、前記発光管の内容積を基準に、300mg/cm以上封入されていてもよい。
【0049】
本発明によるランプユニットは、上記高圧放電ランプと、前記高圧放電ランプから発する光を反射する反射鏡とを備えている。
【0050】
ある実施形態において、高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の気密性を保持する封止部とを備え、前記封止部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、かつ、前記封止部は、圧縮応力が印加されている部位を有している。
【0051】
前記圧縮応力が印加されている部位は、前記第2のガラス部、前記第2のガラス部と前記第1ガラス部との境界部、前記第2ガラス部のうちの前記第1のガラス部側の部分、および、前記第1ガラス部のうちの前記第2のガラス部側の部分からなる群から選択された部分であればよい。
【0052】
前記第1のガラス部と前記第2のガラス部との境界周辺には、両者の圧縮応力の差によって生じた、歪み境界領域が存在していてもよい。
【0053】
前記封止部内には、前記第2のガラス部と接する金属部であって、電力を供給するための金属部が設けられていることが好ましい。
【0054】
前記圧縮応力は、前記封止部の少なくとも長手方向に印加されていればよい。
【0055】
前記第1のガラス部は、SiOを99重量%以上含み、前記第2のガラス部は、15重量%以下のAlおよび4重量%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiOとを含むことが好ましい。
【0056】
前記第2のガラス部の軟化点は、第1のガラス部の軟化点温度よりも低いことが好ましい。
【0057】
前記第2のガラス部は、ガラス管から形成されたガラス部であることが好ましい。
【0058】
前記第2のガラス部は、ガラス粉末を圧縮形成して焼結してなるガラス部ではないことが好ましい。
【0059】
ある実施形態において、前記発光管からは、一対の前記封止部が延在しており、前記一対の封止部のそれぞれが、前記第1のガラス部と前記第2のガラス部とを有しており、前記一対の封止部のそれぞれが、圧縮応力が印加されている部位を有している。
【0060】
ある実施形態において、前記圧縮応力が印加されている部位における前記圧縮応力は、約10kgf/cm以上約50kgf/cm以下である。
【0061】
ある実施形態において、前記圧縮応力の差は、約10kgf/cm以上約50kgf/cm以下である。
【0062】
ある実施形態において、前記発光管内には、一対の電極棒が互いに対向して配置されており、前記一対の電極棒のうちの少なくとも一方の電極棒は、金属箔に接続されており、前記金属箔は、前記封止部内に設けられており、かつ、当該金属箔の少なくとも一部は、前記第2のガラス部内に位置している。
【0063】
ある実施形態において、前記発光物質として、少なくとも水銀が前記発光管内に封入されており、前記水銀の封入量は、300mg/cc以上である。
【0064】
ある実施形態において、前記高圧放電ランプは、平均演色評価数Raが65を超える高圧水銀ランプである。
【0065】
前記高圧水銀ランプの色温度は、8000K以上であることが好ましい。
【0066】
前記高圧放電ランプは、前記発光物質として少なくとも金属ハロゲン化物を含むメタルハライドランプであってもよい。
【0067】
ある実施形態において、高圧放電ランプは、管内に一対の電極棒が配置された発光管と、前記発光管から延在し、前記発光管内の気密性を保持する一対の封止部とを備え、前記一対の電極棒のそれぞれの電極棒の一部は、前記一対の封止部のそれぞれの内に埋め込まれており、前記封止部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、前記少なくとも一方の封止部は、圧縮応力が印加されている部位を有しており、前記圧縮応力が印加されている部位は、前記第2のガラス部、前記第2のガラス部と前記第1ガラス部との境界部、前記第2ガラス部のうちの前記第1のガラス部側の部分、および、前記第1ガラス部のうちの前記第2のガラス部側の部分からなる群から選択され、前記第2のガラス部には、前記封止部の少なくとも長手方向への圧縮応力が存在しており、前記少なくとも一方の封止部内に埋め込まれた部分における前記電極棒の少なくとも一部の表面には、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成された金属膜が形成されている。
【0068】
ある実施形態において、管内に一対の電極棒が配置された発光管と、前記発光管から延在し、前記発光管内の気密性を保持する一対の封止部とを備え、前記一対の電極棒のそれぞれの電極棒の一部は、前記一対の封止部のそれぞれの内に埋め込まれており、前記封止部の少なくとも一方は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、前記少なくとも一方の封止部は、圧縮応力が印加されている部位を有しており、前記圧縮応力が印加されている部位は、前記第2のガラス部、前記第2のガラス部と前記第1ガラス部との境界部、前記第2ガラス部のうちの前記第1のガラス部側の部分、および、前記第1ガラス部のうちの前記第2のガラス部側の部分からなる群から選択され、前記少なくとも一方の封止部内に埋め込まれた部分における前記電極棒の少なくとも一部には、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属を少なくとも表面に有するコイルが巻かれている。
【0069】
ある実施形態において、前記一対の電極棒のそれぞれは、前記一対の封止部のそれぞれの内部に設けられた金属箔に接続されており、前記少なくとも一方の封止部内に設けられた金属箔の少なくとも一部は、前記第2のガラス部内に位置している。
【0070】
ある実施形態において、前記第2のガラス部は、15重量%以下のAlおよび4%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiOとを含み、前記第1のガラス部は、SiOを99重量%以上含み、前記第2のガラス部の軟化点は、第1のガラス部の軟化点温度よりも低く、前記第2のガラス部は、ガラス粉末を圧縮形成して焼結してなるものではない。
【0071】
ある実施形態において、前記圧縮応力が印加されている部位における前記圧縮応力は、約10kgf/cm以上約50kgf/cm以下である。
【0072】
ある実施形態において、前記発光管内に、発光物質として少なくとも水銀が封入されており、前記水銀の封入量は、300mg/cc以上である。
【0073】
前記高圧放電ランプは、前記発光物質として少なくとも金属ハロゲン化物を含むメタルハライドランプであってもよい。
【0074】
ある実施形態における高圧放電ランプは、透光性の気密容器と、気密容器内に設けられた一対の電極と、前記気密容器に連結された一対の封止部とを備え、前記一対の封止部の少なくとも一方は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、前記第2のガラス部には、前記封止部の少なくとも長手方向への圧縮応力が存在しており、前記気密容器内には、水銀が実質的に封入されてなく、かつ、少なくとも、第1のハロゲン化物と、第2のハロゲン化物と、希ガスとが封入されており、前記第1のハロゲン化物の金属は、発光物質であり、前記第2のハロゲン化物は、第1のハロゲン化物と比較して、蒸気圧が大きく、かつ、前記第1のハロゲン化物の金属と比較して、可視域において発光しにくい金属の1種または複数種のハロゲン化物である。
【0075】
ある実施形態における高圧放電ランプは、透光性の気密容器と、気密容器内に設けられた一対の電極と、前記気密容器から延在した一対の封止部とを備え、前記一対の封止部の少なくとも一方は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、前記第2のガラス部には、前記封止部の少なくとも長手方向への圧縮応力が存在しており、前記気密容器内には、水銀が実質的に封入されてなく、かつ、少なくとも、第1のハロゲン化物と、第2のハロゲン化物と、希ガスとが封入されており、前記第1のハロゲン化物は、ナトリウム、スカンジウム、および希土類金属からなる群から選択された1種または複数種のハロゲン化物であり、前記第2のハロゲン化物は、相対的に蒸気圧が大きく、かつ、前記第1のハロゲン化物の金属と比較して、可視域に発光しにくい金属の1種または複数種のハロゲン化物である。
【0076】
ある実施形態において、高圧放電ランプの製造方法は、高圧放電ランプの発光管となる発光管部と、前記発光管部から延在した側管部とを有する放電ランプ用ガラスパイプを用意する工程と、前記側管部にガラス管を挿入し、次いで、前記側管部を加熱して両者を密着させる工程と、前記側管部に密着した前記ガラス管内に、少なくとも電極棒を含む電極構造体を挿入し、次いで、前記側管部および前記ガラス管を加熱・収縮させて、前記電極構造体を封止する工程とを包含する。
【0077】
ある実施形態において、高圧放電ランプの製造方法は、ガラス管内に、少なくとも電極棒を含む電極構造体を挿入する工程と、前記ガラス管の一部と、前記電極構造体の少なくとも一部とを密着させる工程と、高圧放電ランプの発光管となる発光管部と、前記発光管部から延在した側管部とを有する放電ランプ用ガラスパイプにおける側管部に、前記電極構造体の少なくとも一部が密着した前記ガラス管を挿入する工程と、前記側管部および前記ガラス管を加熱・収縮させることにより、前記電極構造体を封止する工程とを包含する。
【0078】
ある実施形態において、前記側管部は、SiOを99重量%以上含み、前記ガラス管は、15重量%以下のAlおよび4%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiOとを含む。
【0079】
前記ガラス管の軟化点は、前記側管部の軟化点温度よりも低いことが好ましい。
【0080】
ある実施形態において、前記電極構造体を封止する工程を実行することにより、前記ガラス管、前記ガラス管と前記側管部との境界部、前記ガラス管のうちの前記側管部側の部分、および、前記側管部のうちの前記ガラス管側の部分からなる群から選択される部分に、約10kgf/cm以上約50kgf/cm以下の圧縮応力が、前記側管部の少なくとも長手方向に生じる。
【0081】
ある実施形態では、前記電極構造体を封止する工程を実行して、高圧放電ランプの封止部を完成させた後、当該封止部に熱を加えて、約10kgf/cm以上約50kgf/cm以下の圧縮応力を前記封止部の一部に生じさせる。
【0082】
前記電極構造体を封止する工程を実行して、高圧放電ランプの封止部を完成させた後、前記ガラス管の歪点温度よりも高い温度で、当該封止部を2時間以上、加熱する工程をさらに実行することが好ましい。
【0083】
ある実施形態において、前記電極構造体は、前記電極棒と、前記電極棒に接続された金属箔と、前記金属箔に接続された外部リードとから構成されている。
【0084】
ある実施形態において、前記電極棒の少なくとも一部に、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成された金属膜が形成されている。
【0085】
ある実施形態では、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属を少なくとも表面に有するコイルが、前記電極棒の少なくとも一部に巻き付けられている。
【0086】
ある実施形態において、前記放電ランプ用ガラスパイプにおける前記側管部と前記発光管部と境界周辺には、前記側管部の内径が他の部分よりも小さくされた径小部が設けられている。
【0087】
ある実施形態における高圧放電ランプは、高圧放電ランプの発光管となる発光管部から延在した側管部と、前記側管部内に挿入されたガラス管との両者を加熱・密着して形成された封止部を、前記ガラス管の歪点温度よりも大きく前記側管部を構成するガラスの歪点温度よりも低い温度でアニール処理することによって得られたものを備えている。
【0088】
ある実施形態における高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の気密性を保持する封止部とを備え、前記封止部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、光弾性効果を利用した鋭敏色板法による歪み測定を実行すると、前記封止部のうち、前記第2のガラス部に相当する領域の少なくとも一部に、圧縮応力が観察される。
【0089】
前記歪み測定は、東芝製のSVP−200の歪検査器を用いて行えばよい。
【0090】
ある実施形態における電球は、管内に発光物質が封入されるバルブと、前記バルブ内の気密性を保持する封止部とを備え、前記封止部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、前記封止部は、圧縮応力が印加されている部位を有している。
【0091】
本発明では、側管部を構成する第1のガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス部材を前記側管部内に挿入し、次いで、前記側管部を加熱して前記ガラス部材と前記側管部とを密着させた後、前記第2のガラスの歪点温度よりも高く、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度で、前記ガラス部材および前記側管部を少なくとも含む部分を加熱する。これにより、封止部が、発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有し、かつ、封止部は、圧縮応力が印加されている部位を有する高圧放電ランプを製造することができる。この圧縮応力が印加されている部位の存在によって、高圧放電ランプの耐圧強度を向上させることができる。
【0092】
少なくとも一方の封止部内に埋め込まれた部分における電極棒の少なくとも一部の表面に、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成された金属膜が形成されている場合には、電極棒の表面と、封止部のガラスとの間の濡れ性を悪くすることができるため、ランプ製造工程時において、両者の離れがよくなる。その結果、微細なクラックの発生を防止することが可能となり、ランプの耐圧強度をさらに向上させることができる。また、少なくとも一方の封止部内に埋め込まれた部分における電極棒の少なくとも一部に、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属を少なくとも表面に有するコイルが巻かれている場合にも、微細なクラックの発生を防止することが可能となり、ランプの耐圧強度をさらに向上させることができる。
【0093】
本発明は、高圧水銀ランプだけでなく、メタルハライドランプ、キセノンランプなどの他の高圧放電ランプに適用でき、そして、水銀の入っていない無水銀メタルハライドランプにも適用することができる。本発明による無水銀メタルハライドランプは、耐圧強度が高いがゆえに、希ガスを高圧封入でき、その結果、効率を簡便に向上させることができ、加えて、点灯の始動性も向上させることができる。なお、本発明は、高圧水銀ランプだけでなく、電球(例えば、ハロゲン電球)にも適用可能であり、それにより、従来のものよりも破裂の防止を図ることができる。
【0094】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
(実施形態1)
図1(a)および(b)は、本実施形態にかかるランプ100の構成を模式的に示している。本実施形態のランプ100は、管内に発光物質(6)が封入される発光管1と、発光管1から延在した封止部2とを備えた高圧放電ランプであり、図1に示したランプは、高圧水銀ランプである。図1(a)は、ランプ100の全体構成を模式的に示しており、図1(b)は、図1(a)中の線b−b線における発光管1側から見た封止部2の断面構成を模式的に示している。
【0095】
ランプ100の封止部2は、発光管1の内部10の気密性を保持する部位であり、ランプ100は、封止部2を2つ備えたダブルエンド型のランプである。封止部2は、発光管1から延在した第1のガラス部(側管部)8と、第1のガラス部8の内側(中心側)の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部7とを有しており、そして、封止部2は、圧縮応力が印加されている部位(7)を有しており、本実施形態において、圧縮応力が印加されている部位は、第2のガラス部7に相当する部分である。封止部2の断面形状は、図1(b)に示すように、略円形であり、封止部2内に、ランプ電力を供給するための金属部(4)が設けられている。この金属部(4)の一部は、第2のガラス部7と接しており、本実施形態では、第2のガラス7の中心部に金属部4が位置している。第2のガラス7は、封止部2の中心部に位置しており、第2のガラス部7の外周は、第1のガラス部8によって覆われている。
【0096】
本実施形態のランプ100に対して、光弾性効果を利用した鋭敏色板法による歪み測定を実行して、封止部2を観察すると、第2のガラス部7に相当する部分に圧縮応力が存在していることが確認される。鋭敏色板法による歪み測定では、ランプ100の形状を維持したまま、封止部2を輪切り状にした断面内の歪み(応力)の観測を行うことができないのであるが、第2のガラス部7に相当する部分に圧縮応力が観測されたということは、第2のガラス部7の全体または大半に圧縮応力が印加されている場合の他、第2のガラス部7と第1ガラス部8との境界部に圧縮応力が印加されている場合、第2ガラス部7のうちの第1のガラス部8側の部分、または、第1ガラス部8のうちの第2のガラス部7側の部分に圧縮応力が印加されている場合のいずれか又はそれらが複合した形で、封止部2の一部に圧縮応力が印加されているということになる。また、この測定では、封止部2の長手方向に圧縮する応力(または歪み)は積分値で観測される。
【0097】
封止部2における第1のガラス部8は、SiOを99重量%以上含むものであり、例えば、石英ガラスから構成されている。一方、第2のガラス部7は、15重量%以下のAlおよび4重量%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiOとを含むものであり、例えば、バイコールガラスから構成されている。SiOにAlやBを添加すると、ガラスの軟化点は下げるため、第2のガラス部7の軟化点は、第1のガラス部8の軟化点温度よりも低い。なお、バイコールガラス(Vycor glass;商品名)とは、石英ガラスに添加物を混入させて軟化点を下げて、石英ガラスよりも加工性を向上させたガラスであり、例えば、ホウケイ酸ガラスを熱・化学処理して、石英の特性に近づけることによって作製することができる。バイコールガラスの組成は、例えば、シリカ(SiO)96.5重量%、アルミナ(Al)0.5重量%、ホウ素(B)3重量%である。本実施形態では、バイコールガラス製のガラス管から、第2のガラス部7は形成されている。なお、バイコール製のガラス管の代わりに、SiO:62重量%、Al:13.8重量%、CuO:23.7重量%を成分とするガラス管を用いても良い。
【0098】
封止部2の一部に印加されている圧縮応力は、実質的にゼロ(すなわち、0kgf/cm)を超えたものであればよい。なお、この圧縮応力は、ランプが点灯していない状態のものである。この圧縮応力の存在により、従来の構造よりも耐圧強度を向上させることができる。この圧縮応力は、約10kgf/cm以上(約9.8×10N/m以上)であることが好ましい。そして、約50kgf/cm以下(約4.9×10N/m以下)であることが好ましい。10kgf/cm未満であると、圧縮歪みが弱く、ランプの耐圧強度を十分に上げられない場合が生じ得るからである。そして、50kgf/cmを超えるような構成にするには、それを実現させるのに、実用的なガラス材料が存在しないからである。ただし、10kgf/cm未満であっても、実質的に0の値を超えれば、従来の構造よりも耐圧を上げることができ、また、50kgf/cmを超えるような構成を実現できる実用的な材料が開発されたならば、50kg/cmを超える圧縮応力を第2のガラス部7が有していてもよい。
【0099】
ランプ100を歪検査器で観測した結果から推測すると、第1のガラス部8と第2のガラス部7との間の境界周辺には、両者の圧縮応力の差によって生じた歪み境界領域20が存在していると思われる。このことは、圧縮応力は、専ら、第2のガラス部7(または、第2のガラス部7の外周近傍領域)に存在しており、第1のガラス部8全体には、第2のガラス部7の圧縮応力がそれほど(または、ほとんど)伝わってないことを意味していると考えられる。両者(8、7)の圧縮応力の差は、例えば、約10kgf/cmから約50kgf/cmの範囲内となり得る。
【0100】
ランプ100の発光管1は、略球形をしており、第1のガラス部8と同様に、石英ガラスから構成されている。なお、長寿命等の優れた特性を発揮する高圧水銀ランプ(特に、超高圧水銀ランプ)を実現する上では、発光管1を構成する石英ガラスとして、アルカリ金属不純物レベルの低い(例えば、1ppm以下)高純度の石英ガラスを用いることが好ましい。なお、勿論、通常のアルカリ金属不純物レベルの石英ガラスを用いることも可能である。発光管1の外径は例えば5mm〜20mm程度であり、発光管1のガラス厚は例えば1mm〜5mm程度である。発光管1内の放電空間(10)の容積は、例えば0.01〜1cc程度(0.01〜1cm)である。本実施形態では、外径9mm程度、内径4mm程度、放電空間の容量0.06cc程度の発光管1が用いられる。
【0101】
発光管1内には、一対の電極棒(電極)3が互いに対向して配置されている。電極棒3の先端は、0.2〜5mm程度(例えば、0.6〜1.0mm)の間隔(アーク長)Dで、発光管1内に配置されており、電極棒3のそれぞれは、タングステン(W)から構成されている。電極棒3の先端には、ランプ動作時における電極先端温度を低下させることを目的として、コイル12が巻かれている。本実施形態では、コイル12として、タングステン製のコイルを用いているが、トリウム−タングステン製のコイルを用いてもよい。また、電極棒3も、タングステン棒だけでなく、トリウム−タングステンから構成された棒を使用してもよい。
【0102】
発光管1内には、発光物質として、水銀6が封入されている。超高圧水銀ランプとしてランプ100を動作させる場合、水銀6は、例えば、200mg/cc程度またはそれ以上(220mg/cc以上または230mg/cc以上、あるいは250mg/cc以上)、好ましくは、300mg/cc程度またはそれ以上(例えば、300mg/cc〜500mg/cc)の水銀と、5〜30kPaの希ガス(例えば、アルゴン)と、必要に応じて、少量のハロゲンとが発光管1内に封入されている。
【0103】
発光管1内に封入されるハロゲンは、ランプ動作中に電極棒3から蒸発したW(タングステン)を再び電極棒3に戻すハロゲンサイクルの役割を担っており、例えば、臭素である。封入するハロゲンは、単体の形態だけでなく、ハロゲン前駆体の形態(化合物の形態)のものでもよく、本実施形態では、ハロゲンをCHBrの形態で発光管10内に導入している。また、本実施形態におけるCHBrの封入量は、0.0017〜0.17mg/cc程度であり、これは、ランプ動作時のハロゲン原子密度に換算すると、0.01〜1μmol/cc程度に相当する。なお、ランプ100の耐圧強度(動作圧力)は、20MPa以上(例えば、30〜50MPa程度、またはそれ以上)にすることができる。また、管壁負荷は、例えば、60W/cm程度以上であり、特に上限は設定されない。例示的に示すと、管壁負荷は、例えば、60W/cm程度以上から、300W/cm程度の範囲(好ましくは、80〜200W/cm程度)のランプを実現することができる。冷却手段を設ければ、300W/cm程度以上の管壁負荷を達成することも可能である。なお、定格電力は、例えば、150W(その場合の管壁負荷は、約130W/cmに相当)である。
【0104】
放電空間10内に一端が位置する電極棒3は、封止部2内に設けられた金属箔4に溶接により接続されており、金属箔4の少なくとも一部は、第2のガラス部7内に位置している。図1に示した構成では、電極棒3と金属箔4との接続部を含む箇所を、第2のガラス部7が覆うような構成にしている。図1に示した構成における第2のガラス部7の寸法を例示すると、封止部2の長手方向の長さで、約2〜20mm(例えば、3mm、5mm、7mm)であり、第1のガラス部8と金属箔4との間に挟まっている第2のガラス部7の厚さは、約0.01〜2mm(例えば、0.1mm)である。第2のガラス部7の発光管1側の端面から、発光管1の放電空間10までの距離Hは、約0mm〜約6mm(例えば、0mm〜約3mm、または、1mm〜6mm)である。第2のガラス部7を放電空間10内に露出させたくない場合には、距離Hは0mmよりも大きくなり、例えば、1mm以上となる。そして、金属箔4の発光管1側の端面から、発光管1の放電空間10までの距離B(言い換えると、電極棒3だけで封止部2内に埋まっている長さ)は、例えば、約3mmである。
【0105】
上述したように、封止部2の断面形状は、略円形であり、そのほぼ中央部に金属箔4が設けられている。金属箔4は、例えば、矩形のモリブデン箔(Mo箔)であり、金属箔4の幅(短辺側の長さ)は、例えば、1.0mm〜2.5mm程度(好ましくは、1.0mm〜1.5mm程度)である。金属箔4の厚さは、例えば、15μm〜30μm程度(好ましくは、15μm〜20μm程度)である。厚さと幅との比は、だいたい1:100程度になっている。また、金属箔4の長さ(長辺側の長さ)は、例えば、5mm〜50mm程度である。
【0106】
電極棒3が位置する側と反対側には、外部リード5が溶接により設けられている。金属箔4のうち、電極棒3が接続された側と反対側には、外部リード5が接続されており、外部リード5の一端は、封止部2の外まで延びている。外部リード5を点灯回路(不図示)に電気的に接続することにより、点灯回路と、一対の電極棒3とが電気的に接続されることになる。封止部2は、封止部のガラス部(7、8)と金属箔4とを圧着させて、発光管1内の放電空間10の気密を保持する役割を果たしている。封止部2によるシール機構を以下に簡単に説明する。
【0107】
封止部2のガラス部を構成する材料と、金属箔4を構成するモリブデンとは互いに熱膨張係数が異なるので、熱膨張係数の観点からみると、両者は、一体化された状態にはならない。ただし、本構成(箔封止)の場合、封止部のガラス部からの圧力により、金属箔4が塑性変形を起こして、両者の間に生じる隙間を埋めることができる。それによって、封止部2のガラス部と金属箔4とを互いに圧着させた状態にすることができ、封止部2で発光管1内のシールを行うことができる。すなわち、封止部2のガラス部と金属箔4との圧着による箔封止によって、封止部2のシールは行われている。本実施形態では、圧縮歪みのある第2のガラス部7が設けられているので、このシール構造の信頼性が向上されている。
【0108】
次に、封止部2における圧縮歪みについて説明する。図2(a)および(b)は、封止部2の長手方向(電極軸方向)に沿った圧縮歪みの分布を模式的に示しており、図2(a)は、第2のガラス部7が設けられたランプ100の構成の場合、一方、図2(b)は、第2のガラス部7の無いランプ100’の構成(比較例)の場合を示している。
【0109】
図2(a)に示した封止部2のうち、第2のガラス部7に相当する領域(網掛け領域)に圧縮応力(圧縮歪み)が存在し、第1のガラス部8の箇所(斜線領域)における圧縮応力の大きさは、実質的にゼロである。一方、図2(b)に示すように、第2のガラス部7の無い封止部2の場合、局所的に圧縮歪みが存在している箇所はなく、第1のガラス部8の圧縮応力の大きさは、実質的にゼロである。
【0110】
本願発明者は、実際にランプ100の歪みを定量的に測定し、封止部2のうち第2のガラス部7に圧縮応力が存在することを観測した。その測定結果を図3および図4に示す。この歪みの定量化は、光弾性効果を利用した鋭敏色板法を用いて行った。この手法によると、歪み(応力)のある箇所の色が変化して見え、その色を歪み標準器と比較して歪みの大きさを定量化することができる。つまり、測定したい歪みの色と同色の光路差を読みとることで、応力を算出することができる。歪みの定量化のために使用した測定器は、歪検査器(東芝製:SVP−200)であり、この歪検査器を用いると、封止部2の圧縮歪みの大きさを、封止部2に印加されている応力の平均値として求めることができる。
【0111】
図3(a)は、光弾性効果を利用した鋭敏色板法を用いて測定されたランプ100についての圧縮応力の分布を示す写真であり、一方、図3(b)は、第2のガラス部7の無いランプ100’についての圧縮応力の分布を示す写真である。なお、図4(a)および(b)は、それぞれ、図3(a)および(b)についてのトレース図である。
【0112】
図3(a)および図4(a)に示すように、ランプ100の封止部2のうち、第2のガラス部7の領域が周囲(8)と異なる色(薄い色)となっているところがあり、第2のガラス部7に圧縮応力(圧縮歪み)が存在していることがわかる。一方、図3(b)および図4(b)に示すように、ランプ100’の封止部2のうち、異なる色(薄い色)の領域はなく、したがって、封止部2(第1のガラス部8)の特定部分に圧縮応力が存在しているようなことはないことがわかる。
【0113】
次に、図5を参照しながら、光弾性効果を利用した鋭敏色板法による歪み測定の原理を簡単に説明する。図5(a)および(b)は、偏光板を透過させてなる直線偏光をガラスに入射させた状態を模式的に示している。ここで、直線偏光の振動方向をuとすると、uは、u1とu2とが合成してできたものとみなすことができる。
【0114】
図5(a)に示すように、ガラスに歪みがないときは、その中をu1とu2とは同じ速さで通過するので、透過光のu1とu2との間にずれは生じない。一方、図5(b)に示すように、ガラスに歪みがあり、応力Fが働いているときは、その中をu1とu2とは同じ速さで通過しないので、透過光のu1とu2との間にずれが生じる。つまり、u1とu2のうち一方が他方より遅れることになる。この遅れた距離を光路差という。光路差Rは、応力Fと、ガラスの通過距離Lとに比例するため、比例定数をCとすると、
R = C・F・L
で表すことができる。ここで、各記号の単位は、それぞれ、R(nm)、F(kgf/cm)、L(cm)、C({nm/cm}/{kgf/cm})である。Cは、ガラス等の材質によるもので、光弾性常数と呼ばれる。上記式からわかるように、Cが知られていれば、LおよびRを測定すると、Fを求めることができる。
【0115】
本願発明者は、封止部2における光の透過距離L、すなわち、封止部2の外径Lを測定し、そして、歪み標準器を用いて、測定時の封止部2の色から光路差Rを読みとった。また、光弾性常数Cは、石英ガラスの光弾性常数3.5を使用した。これらを上記式に代入し、算出された応力値の結果を図6の棒グラフに示す。
【0116】
図6に示すように、応力が0[kgf/cm]であったランプ本数は、0本であり、10.2[kgf/cm]であったランプ本数は、43本であり、20.4[kgf/cm]であったランプ本数は、17本であり、そして、35.7[kgf/cm]であったランプ本数は、0本であった。一方、比較例のランプ100’の場合、測定した全てのランプについて、応力は、0[kgf/cm]であった。なお、測定原理上、封止部2に印加されている応力の平均値から、封止部2の圧縮応力を算定したが、第2のガラス部7を設けることで封止部2の一部に圧縮応力が印加された状態になることは、図3、図4および図6の結果より容易に結論付けることができる。なぜならば、比較例のランプ100’については、封止部2に圧縮応力は存在しなかったからである。また、図6は、離散的な応力値を示しているが、これは、歪み標準器から読み取る光路差が離散的なものであることに起因している。したがって、応力値が離散的なのは、鋭敏色板法による歪み測定の原理によるものである。実際には、例えば、10.2[kgf/cm]と20.4[kgf/cm]との間の値を示す応力値も存在するものと思われるが、第2のガラス部7もしくは第2のガラス部7の外周周辺領域に、所定量の圧縮応力が存在していることにはかわりない。
【0117】
なお、本測定では、封止部2の長手方向(電極軸3が延びる方向)についての応力を観察したが、このことは、他の方向において圧縮応力が存在していないことを意味するものではない。封止部2の径方向(中心−外周方向)、または、封止部2の周方向(例えば、時計周り方向)について圧縮応力が存在しているかどうかを測定するには、発光管1や封止部2を切断する必要があるのであるが、そのような切断を行ったとたん、第2のガラス部7の圧縮応力が緩和されてしまう。したがって、ランプ100に対して切断を行わない状態で測定できるのは、封止部2の長手方向についての圧縮応力であるため、本願発明者は、少なくとも、その方向での圧縮応力を定量化したのである。
【0118】
本実施形態のランプ100では、第1のガラス部8の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部7に圧縮歪み(少なくとも長手方向への圧縮歪み)が存在しているので、高圧放電ランプの耐圧強度を向上させることができる。言い換えると、図1および図2(a)に示した本実施形態のランプ100の方が、図2(b)に示した比較例のランプ100’よりも、耐圧強度を高くすることができる。図1に示した本実施形態のランプ100は、従来の最高レベルの動作圧である20MPa程度を超える、30MPa以上の動作圧で動作させることが可能である。
【0119】
次に、図7を参照しながら、第2のガラス部7に圧縮歪みが入っていることにより、ランプ100の耐圧強度が上がる理由を説明する。図7(a)は、ランプ100の封止部2の要部拡大図であり、一方、図7(b)は、比較例のランプ100’の封止部2の要部拡大図である。
【0120】
ランプ100の耐圧強度が上がる機構については、実際のところ明確にわからない部分もあるが、本願発明者は、それについて次のように推論した。
【0121】
まず前提として、封止部2内の金属箔4は、ランプ動作中に加熱・膨張するため、封止部2のガラス部には、金属箔4からの応力が加わる。より具体的に説明すると、ガラスよりも金属の方が熱膨張率が大きいことに加えて、電極棒3に熱的に接続されており、かつ、電流が通過する金属箔4の方が、封止部2のガラス部よりも加熱されやすいため、金属箔4から(特に、面積の小さい箔側面から)ガラス部へと応力が加わり易い。
【0122】
ここで、図7(a)に示すように、第2のガラス部7の長手方向に圧縮応力が加わっていると、金属箔4からの応力16の発生を抑制することができると考えられる。言い換えると、第2のガラス部7の圧縮応力15によって、大きな応力16が生じるのを抑制することができると考えられる。その結果、例えば、封止部2のガラス部にクラックが生じたり、封止部2のガラス部と金属箔4との間でのリークの発生が低減して、封止部2の強度が向上することになる。
【0123】
一方、図7(b)に示すように、第2のガラス部7の無い構造の場合には、金属箔4からの応力17は、図7(a)に示した構成の場合よりも、大きくなると考えらる。すなわち、金属箔4の周囲に、圧縮応力の加わっている領域が存在しないので、金属箔4からの応力17は、図7(a)に示した応力16よりも大きくなると思われる。それゆえ、図7(a)に示した構成の方が、図7(b)に示した構成よりも、耐圧強度を向上させることができると推論される。この考えは、ガラスに引っ張り歪み(引っ張り応力)が入っていると割れやすく、圧縮歪み(圧縮応力)が入っていると割れにくくなるというガラスの一般的な性質と相容れるものと思われる。
【0124】
ただし、ガラスに圧縮応力が入っていると割れにくくなるというガラスの一般的な性質から、ランプ100の封止部2が高い耐圧強度を持つということまで推論することはできない。なぜならば、仮に、圧縮歪みが入っている領域のガラスの強度が増したとしても、封止部2全体として見たら、歪みがない場合と比較して、負荷が生じていることになるため、封止部2全体としての強度はかえって低下するという考えも成り立ち得るからである。ランプ100の耐圧強度が向上したという結果は、本願発明者がランプ100を試作し実験して初めてわかったことであり、まさに理論だけからは導き出せなかったものである。必要以上の大きな圧縮応力が第2のガラス部7(またはその外周周辺領域)に存在したままになれば、実際には、ランプ点灯時に封止部2の破損をもたらし、かえって、ランプの寿命を短くしてしまうことになるかもしれない。そのようなことを考えると、第2のガラス部7を有するランプ100の構造は、絶妙なバランスの下で、その高い耐圧強度を示しているものと考えられる。発光管1の部分を切断すると、第2のガラス部7の応力歪みが緩和されることから推測すると、第2のガラス部7の応力歪みによる負荷は、発光管1全体で上手く受け止めているのかもしれない。
【0125】
なお、その高い耐圧強度を示す構造は、第1のガラス部8と第2のガラス部7との圧縮応力の差によって生じた歪み境界領域20によってもたらされているとも考えられる。つまり、第1のガラス部8には、実質的に圧縮応力が加わってなく、歪み境界領域20よりも中心側に位置する第2のガラス部7(または、その外周周辺)だけの領域に上手く圧縮歪みが閉じ込めることができたことにより、優れた耐圧特性を発揮させることに成功しているという推論も成立し得る。鋭敏色板法による歪み測定の原理に起因して、応力値が離散的に示されてしまう結果、図7等においては、歪み境界領域20が明確に示されているのであるが、仮に、現実の応力値を連続的に示せるとしても、歪み境界領域20においては応力値が急峻に変化していると考えられ、その急峻に変化する領域にて、逆に歪み境界領域20を規定することができると思われる。
【0126】
本実施形態のランプ100では、図1に示すように、電極棒3と金属箔4との溶接部を覆うように第2のガラス部7を配置した構成にしたが、これに限らず、図8に示した構成にしてもよい。すなわち、図8に示すように、封止部2内に埋め込まれている部分の電極棒3の全部と、金属箔4の一部を覆うように配置する。このとき、第2のガラス部7の一部が発光管1内の放電空間10に露出させるようにしてもよい。すなわち、図1(a)中のH=0として、第2のガラス部7の一部が発光管1内の放電空間10に露出させても、耐圧向上の観点からは特に問題ない。ただし、ランプ100が高圧水銀ランプの場合には、光色特性や寿命の観点からみると、第2のガラス部7を放電空間10に露出させない構成を採用するのも一つ考え方である。その理由は、第2のガラス部7には、SiOの他に、AlやBも含有しているので、それらの添加物が放電空間10に出ると、ランプの特性が悪くなり得るおそれがあるからである。なお、図1や図8に示すように、電極棒3と金属箔4との溶接部を覆うように第2のガラス部7を配置するのは、この溶接部での破損・クラックが比較的多いので、この箇所の強度を高めるようにするものである。
【0127】
また、図9から図11に示した構成にしてもよい。すなわち、図9に示すように、金属箔4の中央部を第2のガラス部7が覆うように第2のガラス部7を配置してもよいし、図10に示すように、金属箔4と外部リード5との溶接部を覆うように第2のガラス部7を配置してもよい。また、図11に示すように、金属箔4の全体を覆うように第2のガラス部7を配置してもよい。
【0128】
図1に示した構成だけでなく、図8から図11に示した構成でも、ランプの耐圧強度を向上させることができる。言い換えると、比較例のランプ100’よりも、多くの水銀を封入させて、高い動作圧で点灯させることができる。
【0129】
なお、図1に示した構成では、一対の封止部2のいずれにも、第2のガラス部7を設けたが、これに限らず、一方の封止部2だけに、第2のガラス部7を設けても、比較例のランプ100’よりも耐圧強度を向上させることができる。ただし、両方の封止部2に第2のガラス部7を設けた構成で、かつ、両方の封止部2が圧縮応力が印加されている部位を有する構成にした方が好ましい。これは、一方の封止部よりも、両方の封止部2が圧縮応力が印加されている部位を有している方がより高い耐圧を達成することができるからであり、単純に考えて、圧縮応力が印加されている部位を有する封止部を一つ備えているときよりも、2つ備えているときの方が、封止部でリークが生じる確率(すなわち、あるレベルの高耐圧を保持できない確率)を1/2にすることが可能となるからである。
【0130】
また、本実施形態では、水銀6の封入量の極めて多い高圧水銀ランプ(例えば、動作圧が20MPaを超える超高圧水銀ランプ)について説明したが、水銀蒸気圧がそれほど高くない1MPa程度の高圧水銀ランプにも好適に適用することができる。なぜならば、動作圧力が極めて高くても安定して動作できるということは、ランプの信頼性が高いことを意味するからである。すなわち、本実施形態の構成を、動作圧力のそれほど高くないランプ(ランプの動作圧力が30MPa程度未満、例えば、20MPa程度〜1MPa程度)に適用した場合、当該動作圧力で動作するランプの信頼性を向上させ得ることになるからである。本実施形態の構成は、封止部2に、新たな部材として第2のガラス部7の部材を導入するだけでよいので、少ない改良で耐圧向上の効果を得ることができる。したがって、非常に工業的な用途に適しているものである。
【0131】
次に、図12から図19を参照しながら、本実施形態にかかるランプ100の製造方法を説明する。
【0132】
まず、図12に示すように、ランプ100の発光管(1)となる発光管部1’と、発光管部1’から延在した側管部2’とを有する放電ランプ用ガラスパイプ80を用意する。本実施形態のガラスパイプ80は、外径6mm、内径2mmの筒状石英ガラスの所定位置を加熱し膨張させて、略球形の発光管部1’を形成したものである。
【0133】
また、図13に示すように、別途、第2のガラス部7となるガラス管70を用意する。本実施形態のガラス管70は、外径(D1)1.9mm、内径(D2)1.7mm、長さ(L)7mmのバイコール製ガラス管である。ガラス管70の外径D1は、ガラスパイプ80の側管部2’に挿入できるように、側管部2’の内径よりも小さくしてある。
【0134】
次に、図14に示すように、ガラスパイプ80の側管部2’にガラス管70を固定する。この固定は、側管部2’にガラス管70を挿入した後、側管部2’を加熱して両者(2’、70)を密着させる。以下、この工程をさらに詳述する。
【0135】
まず、一方の側管部2’に、1つのガラス管70を挿入する。次いで、ガラスパイプ80を両旋盤に取り付ける。ここで、洗浄したタングステンの棒を用いて、ガラス管70の位置を微調整する。側管部2’の内径よりも、径が小さいタングステン棒を用いれば、この微調整作業は便利である。なお、勿論、タングステン以外の棒を用いてもよい。
【0136】
最後に、バーナーで側管部2’を加熱することにより、側管部2’の内壁にガラス管70の外壁を密着させて固定する。なお、この工程によって、ランプに悪影響を及ぼすと考えられる水分(具体的には、ガラス管70を構成するバイコール中の水分)をランプから飛ばすことができ、その結果、ランプの高純度化を図ることができる。他方の側管部2’についても、同様の工程を行って、側管部2’にガラス管70を固定する。このようにして、図14に示すような構成が得られる。ここで、図14に示した構成を作製した後、一度、管内を洗浄するのが好ましい。ガラス管70を挿入し固定する工程の中で、不純物が侵入している可能性があるからである。
【0137】
次に、図15に示すような、別途作製した電極構造体50を用意しておき、ガラス管70が固定された側管部2’に挿入する。電極構造体50は、電極棒3と、電極棒3に接続された金属箔4と、金属箔4に接続された外部リード5とから構成されている。電極棒3は、タングステン製電極棒であり、その先端にはタングステン製コイル12が巻きつけられている。コイル12は、トリウム−タングステン製のものを用いてもよい。また、電極棒3も、タングステン棒だけでなく、トリウム−タングステンから構成された棒を使用してもよい。また、外部リード5の一端には、側管部2’の内面に電極構造体50を固定するための支持部材(金属製の留め金)11が設けられている。図15に示した支持部材11は、モリブデンからなるモリブデンテープ(Moテープ)であるが、これに代えて、モリブデン製のリング状のバネを用いてもよい。Moテープ11の幅aは、側管部2’の内径2mmよりも若干大きくされており、それにより、電極構造体50を側管部2’内に固定することができる。
【0138】
本実施形態では、図12に示したような放電ランプ用ガラスパイプ80を用いたが、これに代えて、図16に示すようなガラスパイプ80を用いることも可能である。図16に示したガラスパイプ80では、側管部2’と発光管部1’との境界周辺に、側管部2’の内径が他の部分よりも小さくされた径小部83が設けられている。この径小部83は、リーディングとも呼ばれる。径小部83の内径dは、ガラス管70が止まるくらいの大きさにされており、例えば、1.8mm程度である。径小部83が形成されている領域hの寸法(側管部2’長手方向の寸法)は、例えば、1〜2mm程度である。径小部83は、図12に示したガラスパイプ80の所定箇所(領域h)にレーザーを照射して、当該箇所を加熱して形成される。本実施形態では、パイプ80内を減圧状態(例えば、Arの圧力が10−3Paの状態)にして、径小部83を形成したが、領域hの箇所をシュリンクできるのであれば、大気圧下でも径小部83を形成できる。ガラスパイプ80に径小部83を設けることにより、ガラス管70の挿入工程が容易になる。つまり、ガラス管70を所定位置に固定することが容易となる。
【0139】
側管部2’に電極構造体50を挿入するには、次のようにしてすればよい。図17に示すように、一方の側管部2’に電極構造体50を通して、電極棒3の先端12を発光管部1’内に位置づける。このとき、Moテープ11が側管部2’内壁に接触し、電極構造体50を通すのに多少の抵抗がかかるので、そこで、十分に洗浄したタングステン棒を用いて、所定の位置まで電極構造体50を押し入れる。所定の位置まで電極構造体50を押し入れたら、Moテープ11によって電極構造体50は、その位置で固定されることになる。図17の線c−cにおける断面構成を図18に示す。
【0140】
次に、電極構造体50挿入後のガラスパイプ80の両端を、気密性を保ちながら、回転可能なチャック82に取り付ける。チャック82は、真空系(不図示)に接続されており、ガラスパイプ80内を減圧できる。ガラスパイプ80内を真空排気した後、200torr程度(約20kPa)の希ガス(Ar)を導入する。その後、電極棒3を回転中心軸として、矢印81の方向に、ガラスパイプ80を回転させる。
【0141】
次いで、側管部2’およびガラス管70を加熱・収縮させて、電極構造体50を封止することにより、図19に示すように、側管部2’であった第1のガラス部8の内側に、ガラス管70であった第2のガラス部7が設けられた封止部2を形成する。この封止部2の形成は、発光管部1’と側管部2’との間の境目部分から、外部リード5の中間付近まで、順々に、側管部2’およびガラス管70を加熱して、シュリンクさせていくことにより行う。この封止部形成工程により、側管部2’およびガラス管70から、少なくとも長手方向(電極棒3の軸方向)に圧縮応力が印加された状態の部位を含む封止部2が得られる。なお、外部リード5の方から、発光管部1’の方へ、加熱・収縮を行ってもよい。この後、開放している側管部2’側の端部から、所定量の水銀6を導入する。このとき、必要に応じて、ハロゲン(例えば、CHBr)も導入する。
【0142】
水銀6の導入後、他方の側管部2’についても上記と同様の工程を実行する。すなわち、まだ封止されていない側管部2’に電極構造体50を挿入した後、ガラスパイプ80内を真空引きして(好ましくは、10−4Pa程度まで減圧して)、希ガスを封入し、次いで、加熱封止する。この時の加熱封止の際は、水銀が蒸発するのを防ぐため、発光管部1を冷却しながら行うことが好ましい。このようにして、両方の側管部2’を封止すると、図1に示したランプ100が完成する。
【0143】
次に、図20(a)および(b)を参照しながら、封止部形成工程により、第2のガラス部7(または、その外周周辺部)に圧縮応力が加わる機構を説明する。なお、この機構は、本願発明者が推考したものであり、必ずこの通りになっているとは言い切れない。しかし、例えば図3(a)に示したとおり、第2のガラス部7(またはその外周周辺部分)に圧縮応力(圧縮歪み)が存在するのは事実であるし、そして、その圧縮応力が加わった部位を含む封止部2によって耐圧が向上することも事実である。
【0144】
図20(a)は、側管部2’状態の第1のガラス部8内に、ガラス管70状態の第2のガラス部7aを挿入した時点の断面構成を模式的に示し、一方、図20(b)は、図20(a)の構成において第2のガラス部7aが軟化して溶融状態7bになった時点の断面構成を模式的に示している。本実施形態において、第1のガラス部8は、SiOを99wt%以上含む石英ガラスから構成され、そして、第2のガラス部7aは、バイコールガラスから構成されている。
【0145】
まず前提として、圧縮応力(圧縮歪み)が存在するということは、互いに接触する材料同士の熱膨張係数に差があることが多い。すなわち、封止部2内に設けられた状態の第2のガラス部7に圧縮応力が加わっている理由としては、両者の熱膨張係数に差があると考えるのが一般的である。しかし、この場合、実際には、両者の熱膨張係数に大きな差はなく、ほぼ等しいと言える。より具体的に説明すると、金属であるタングステンおよびモリブデンの熱膨張係数が、それぞれ、約46×10−7 /℃および約37〜53×10−7 /℃であるところ、第1のガラス部8を構成する石英ガラスの熱膨張係数は、約5.5×10−7 /℃であり、そして、バイコールガラスの熱膨張係数は、石英ガラスの熱膨張係数と同レベルとみなせる約7×10−7 /℃である。僅かこれくらいの熱膨張係数の差で、両者の間に、約10kgf/cm以上の圧縮応力が発生するとは思えない。両者の性質の違いは、熱膨張係数よりも、むしろ軟化点または歪点にあり、この点に着目すると、次のような機構により、圧縮応力が加わることが説明できると思われる。なお、石英ガラスの軟化点および歪点は、それぞれ、1650℃および1070℃(徐冷点は、1150℃)であり、一方、バイコールガラスの軟化点および歪点は、それぞれ、1530℃および890℃(徐冷点は、1020℃)である。
【0146】
図20(a)に示した状態から、第1のガラス部8(側管部2’)を外側から加熱してシュリンクさせると、最初、両者の間にあった隙間7cが埋まり、両者は接する。シュリンク後においては、図20(b)に示すように、軟化点が高く、外気に触れる面積の多い第1のガラス部8の方が先に軟化状態から解放された時点(つまり、固まった時点)でも、それよりも内側に位置し、かつ、軟化点の低い第2のガラス部7bは、依然として、軟化したまま(溶融状態のまま)の時点が存在する。このときの第2のガラス部7bは、第1のガラス部8と比較して、流動性を持っており、仮に通常時(軟化状態でない時点)の両者の熱膨張係数がほぼ同じであったとしても、この時点の両者の性質(例えば、弾性率、粘度、密度など)は大きく異なっていると考えられる。そして、さらに時間が経過し、流動性を持っていた第2のガラス部7bが冷えて、第2のガラス部7bの温度が軟化点も下回ると、第2のガラス部7も、第1のガラス部8と同様に固まることになる。ここで、第1のガラス部8と第2のガラス部7との軟化点が同じであれば、外側から徐々に冷えて圧縮歪みが残らないように、両方のガラス部が固まるのであろうが、本実施形態の構成の場合、外側のガラス部(8)が早めに固まって、しばらくしてから、内側のガラス部(7)が固まるため、当該内側の第2のガラス部7に圧縮歪みが残ることになると思われる。このようなことを考えると、第2のガラス部7は、一種のピンチングが間接的に行われた状態になったと言えるかもしれない。
【0147】
なお、このような圧縮歪みが残っていると、通常、両者の熱膨張率の差によって、ある温度で両者(7、8)の密着状態が終わってしまうことになるのであろうが、本実施形態の構成の場合、両者の熱膨張率がほぼ等しいので、圧縮歪みが存在していても、両者(7、8)の密着状態が保持できると推測される。
【0148】
さらに、第2のガラス部7に約10kgf/cm以上の圧縮応力を与えるためには、上述した作製方法で完成させたランプ(ランプ完成体)に対して、1030℃で2時間以上、加熱することが必要であることがわかった。具体的には、完成したランプ100を1030℃の炉に入れて、アニール(例えば、真空ベークまたは減圧ベーク)すればよい。なお、1030℃の温度は例示であり、第2のガラス部(バイコールガラス)7の歪点温度よりも高い温度であればよい。すなわち、バイコールの歪点温度890℃よりも大きければよい。好適な範囲は、バイコールの歪点温度890℃より大きく、第1のガラス部(石英ガラス)の歪点温度(SiOの歪点温度1070℃)よりも低い温度であるが、1080℃や1200℃程度の温度で本願発明者が実験した場合において効果がある場合もあった。
【0149】
なお、比較参考のために、アニールを行っていない高圧放電ランプについて、鋭敏色板法による測定を行ったところ、高圧放電ランプの封止部に第2のガラス部7を設けた構成であるにもかかわらず、封止部に約10kgf/cm以上の圧縮応力は観測されなかった。
【0150】
アニール(または真空ベーク)の時間については、2時間以上であれば、経済的な観点からみた上限を除けば、特に上限はない。2時間以上の範囲で、好適な時間を適宜設定すればよい。また、2時間未満でも、効果がみられる場合には、2時間未満での熱処理(アニール)を行ってもよい。このアニール工程により、ランプの高純度化、言い換えると、不純物の低減が達成されているかもしれない。なぜならば、ランプ完成体をアニールすることにより、ランプに悪影響を及ぼすと考えられる水分(例えば、バイコール中の水分)をランプから飛ばすことができると思われるからである。アニールを100時間以上すれば、ほぼ完全にバイコール中の水分をランプ内から除去することが可能である。
【0151】
上述の説明では、第2のガラス部7をバイコールガラスから構成した例で説明したが、SiO:62重量%、Al:13.8重量%、CuO:23.7重量%を成分とするガラス(商品名;SCY2、SEMCOM社製。歪点;520℃)から第2のガラス部7を構成した場合でも、少なくとも長手方向に圧縮応力が印加された状態になることもわかった。
【0152】
次に、本願発明者が推論した、ランプ完成体に対して所定の温度で所定時間以上のアニールを施すと、ランプの第2のガラス部7に圧縮応力が加わる機構について図21を参照しながら説明する。
【0153】
まず、図21(a)に示すように、ランプ完成体を用意する。なお、ランプ完成体の作製方法は上述した通りである。
【0154】
次に、そのランプ完成体を加熱すると、図21(b)に示すように、水銀(Hg)6が蒸発を始め、その結果、発光管1内および第2のガラス部7にも圧力が加わる。図中の矢印は、水銀6の蒸気による圧力(例えば、100気圧以上)を表している。発光管1内だけでなく、第2のガラス部7にも水銀6の蒸気圧が加わる理由は、目には見えない程度の隙間13が電極棒3の封止部分にあるからである。
【0155】
さらに加熱の温度を上げて、第2のガラス部7の歪点を越える温度(例えば、1030℃)で加熱を続けると、第2のガラス部7が軟らかい状態で、水銀の蒸気圧が第2のガラス部7に加わるため、第2のガラス部7において圧縮応力が発生する。圧縮応力が発生する時間は、例えば歪点で加熱したときに約4時間、徐冷点で加熱したときに約15分であると推測される。この時間は、歪点および徐冷点の定義から導き出したものである。すなわち、歪点とは、この温度で4時間保つと内部歪が実質的に除去できる温度を意味し、徐冷点とは、この温度で15分保つと内部応力が実質的に除去できる温度を意味するところから、上記時間は推測されている。
【0156】
次に、加熱をやめて、ランプ完成体を冷却させる。加熱をやめた後も、図21(c)に示すように、水銀は蒸発したままであるので、水銀蒸気による圧力を受け続けながら第2のガラス部7は歪点より温度が低くなり、その結果、第2のガラス部7に圧縮応力が残留することになる。
【0157】
最後に、室温程度まで冷却が進むと、図21(d)に示すように、第2のガラス部7に圧縮応力が約10kgf/cm以上存在するランプ100が得られる。
図21(b)および(c)に示したように、水銀の蒸気圧は、両方の第2のガラス部7に圧力を加えるため、この手法によれば、両方の封止部2に約10kgf/cm以上の圧縮応力を確実に加えることができる。
【0158】
この加熱プロファイルを模式的に図22に示す。まず、加熱を始めると(時間O)、その後、第2のガラス部7の歪点(T)の温度に達する(時間A)。次に、第2のガラス部7の歪点(T)と第1のガラス部8の歪点(T)との間の温度で、ランプを所定時間保持する。この温度領域は、基本的に、第2のガラス部7だけが変形可能な範囲とみなすことができる。この保持の間に、図23の概略図に示すように、水銀蒸気圧(例えば、100気圧以上)によって第2のガラス部7に圧縮応力が入る。
【0159】
なお、水銀蒸気圧によって第2のガラス部7へ圧力を加えることが、アニール処理を最も効果的に利用する手法と思えるが、図22におけるT以上T以下の温度範囲でランプを保持している時であれば、第2のガラス部7へ何らかの力を加えることができれば、水銀蒸気圧だけでなく、その力によって(例えば外部リード5を押すことによって)、第2のガラス部7に圧縮応力を加えることも可能であると推測する。
【0160】
次に、加熱をやめると、ランプが冷却していき、時間B以降、第2のガラス部7の温度は歪点(T)を下回る。歪点(T)を下回ると、第2のガラス部7の圧縮応力は残留することになる。本実施形態では、1030℃で150時間保持した後、冷却(自然冷却)することによって、第2のガラス部7の圧縮応力を印加して残留させる。
【0161】
上記のようなメカニズムで、水銀蒸気圧によって圧縮応力が発生するので、圧縮応力の大きさは、水銀蒸気圧(言い換えると、封入水銀量)に依存することになる。図24は、発光管1内の水銀量と圧縮応力との関係を示している。
【0162】
第2のガラス部7を有し、水銀量が190,220,230,240,270,290,330mg/ccのランプを、それぞれ、7,8,8,8,7,8,6本ずつ作製し、そのランプを加熱(アニール)することによって、圧縮応力を生成させた。水銀量が190mg/ccのランプの場合、7本中5本(71.4%)に0kgf/cm、そして、2本(28.6%)に10.2kgf/cmの圧縮応力が観測された。水銀量を330mg/ccまで増加させた場合には、6本中3本(50%)に10.2kgf/cm、そして、残りの3本(50%)には20.4kgf/cmの圧縮応力が観測された。このように、水銀量が多くなるにしたがって、圧縮応力が大きくなる傾向が見られた。
【0163】
一般的に、水銀量が多くなるほどランプは破裂しやすくなるところ、本実施形態の封止構造を用いると、水銀量を多くするほど圧縮応力が大きくなり、耐圧が向上する。つまり、本実施形態の構成によれば、水銀量を多くするほど高い耐圧構造を実現することができるため、現在の技術では実現できなかったような、極めて高耐圧での安定点灯を可能にする。
【0164】
また、本願発明者は、バイコールガラスの歪点を越える1080℃で150時間、ランプ完成体を真空ベーク(アニール)している際に、金属箔4の箔切れが生じることを発見した。または、金属箔4にシワが生じる現象も観測された。そこで、本願発明者は、金属箔4の箔切れ等が生じる条件を調べるために実験を行った。その結果を下記表1に示す。
【0165】
【表1】
Figure 0003618332
【0166】
表1中の用語を説明すると、「箔幅」および「箔厚」は、それぞれ、金属箔4の幅および厚さであり、「ガラス長」は、第2のガラス部7の長手方向の長さである。「ベーク温度」および「ベーク時間」は、それぞれ、真空ベーク時の温度および時間である。
【0167】
箔切れが観察されたのは、条件IおよびIXであった。この結果から、1080℃で真空ベークをする場合には、ガラス長は、7mm未満(例えば5mm以下)にすることが好ましい。また、この実験例の場合、1030℃の真空ベークでは、箔切れは観察されなかった。したがって、真空ベークは、1080℃を下回る温度(例えば、1030℃±40℃)で実行することが好ましい。
【0168】
次に、図25から図29を参照しながら、本実施形態にかかるランプ100の他の製造方法を説明する。
【0169】
まず、図25に示すように、第2のガラス部7となるガラス管70を用意する。図25に示したガラス管70は、バイコール製ガラス管であり、その寸法は、外径(D1)1.9mm、内径(D2)1.7mm、長さ(L)100mmである。このガラス管70の中に、図26に示すように、電極棒3を含む電極構造体50を挿入し、次いで、ガラス管70の両側を、気密性を保ちながら回転可能なチャック82に取り付ける。電極構造体50の構成は、図15で説明した通りである。チャック82は、真空系(不図示)につながっており、ガラス管70内を真空引きすることができる。
【0170】
ガラス管70内を真空に引いた後、減圧状態の希ガス(例えば、20kPa)を封入する。次に、電極棒3を軸として、ガラス管70を回転させた後、ガラス管70のうち、外部リード5に対応する部分72を加熱してシュリンクさせると、図27に示すような構成となる。そして、図27に示したガラス管70を、図中の線a、bの箇所で切断して、図28に示すように加工する。なお、シュリンクさせる部分は、外部リード5の一部でなくとも、電極棒3の一部または金属箔4の一部であっても良い。
【0171】
次に、図29に示すように、ガラス管70付きの電極構造体50を、ガラスパイプ80の一方の側管部2’に挿入する。具体的には、洗浄したタングステン棒を用いて、電極構造体50を側管部2’の所定の位置まで押し込んで、固定する。電極構造体50の留め金11として幅が2mmよりも若干大きいものを用いると、側管部2’の所定位置に容易に固定することができる。
【0172】
次に、ガラスパイプ80の両側を、気密性を保ちながら回転可能なチャック(不図示)に取り付ける。その後、上述した実施形態の製造方法と同様に(図17、図19参照)、パイプ80内を真空に引き、希ガスを封入した後、電極棒3を軸として、矢印81の方向にガラスパイプ80を回転させ、次いで、発光管部1’と側管部2’との境界付近部分から、外部リード5の中間付近まで、順々に加熱をしてシュリンクさせていく。このようにして、ガラス管70付きの電極構造体50を封止する。その後、開放している側管部側から規定量の水銀(例えば、200mg/cc程度、または、300mg/cc程度、あるいはそれ以上)を導入する。水銀導入後、上記と同様の方法で、ガラス管70付きの電極構造体50を他方の側管部2’に挿入する。次いで、真空引き後、希ガスを封入し、そして、加熱封止する。上述したように、この加熱封止は、水銀蒸発防止のため、発光管部1を冷却しながら行うことが好ましい。この製造方法により、図11に示した構成のランプ100が得られることになる。また、この実施形態においても、側管部2’を両方封止した後、1030℃で2時間以上加熱することにより、圧縮歪みを大きくすることができる。
【0173】
また、上記製造方法は、図30(a)〜(d)のようにして実行してもよい。
【0174】
まず、図25に示したバイコール製ガラス管70を所定長さ(例えば、約20mm以下、または、約17mm〜約19mm)に切断した後、図30(a)に示すように、ガラス管70の一端を、加熱手段(例えば、バーナー。またはレーザ)で加熱してシュリンクさせる。ガラス管70の一端を径小にするのは、このガラス管70に挿入する電極構造体(特に、金属箔)への固定部位にするためである。ガラス部材には固定手段を取り付け難いので、このような工夫は非常に有用であり、作業効率を向上させる。
【0175】
次に、図30(b)に示すように、ガラス管70に電極構造体50を鉛直方向に挿入する。ガラス管70には径小部が形成されているので、電極構造体50とガラス管70とを容易に所定位置にセットすることができる。
【0176】
次いで、図30(c)に示すように、電極構造体50の一端に、モリブデンテープ(別名、リボン)11を溶接する。その後、このガラス管70付きの電極構造体50を、ガラスパイプ80の側管部2’に挿入し、次いで、所定箇所を封止する。他の側管部2’にも同じことを繰り返せば、本発明の実施形態に係るランプを製造することができる。
【0177】
図25〜図29、および、図30(a)〜(d)に示した製造方法は、図13に示した短いバイコール製ガラス管よりも、長いバイコール製ガラス管を用いるので、これらの製法をロングバイコール方式と呼んでもよい。一方、図12〜図19で示した、短いバイコール製ガラス管を用いる製法は、ショートバイコール方式と呼んでもよい。
【0178】
なお、本実施形態の製造方法に使用するための、図25に示した寸法のバイコール製ガラス管70は、市販されておらず、市販のバイコール製ガラス管から、所定工程を経て作製する必要がある。本実施形態においては、市販のバイコール製ガラス管を研磨等によって機械的に加工するよりも、径の太いバイコール製ガラス管を加熱して(焼いて)、その管をひき、元のガラス管よりも径の小さい所定寸法のバイコール製ガラス管70を作製する方が好ましい。その理由は、バイコールガラスは吸湿性を持っているため、加工前のバイコール製ガラス管は水分を含んでおり、その水分を加熱および引き工程にて飛ばすようにするのが良いからである。さらに説明すると、バイコール製ガラス管に含まれている水分は不純物となり、ランプ製造工程時に圧縮応力の入りを悪くしたり、気泡の原因となったりして、ランプ特性を低下させたりする要因になり得るからである。また、バイコールガラスを焼きながら引くと、ガラス組成が均一になりやすいという利点もある。
【0179】
このバイコール製ガラス管70のリサイズ工程によって、元管において外径および内径がそれぞれ約15mmおよび約13mmのものが、外径および内径が約1.6〜2.0mmおよび約1.2〜1.5mmになる。リサイズ後のガラス管70の厚さは、約0.1mmである。
【0180】
次に、図31(a)〜(c)を参照しながら、更に別の製造方法について説明する。上記実施形態の製造方法では、バイコール製のガラス管を用いたが、ここでは、バイコール製のガラス板を用いて、ランプを作製する。
【0181】
まず、図31(a)に示すように、バイコール製ガラス板72を二枚と、電極構造体50を用意する。次に、図31(b)に示すように、電極構造体50の金属箔4を二枚のガラス板72で挟むように配置する。そして、図31(c)に示すように、当該二枚のガラス板72で挟んだ電極構造体50を、ガラスパイプ80の側管部2’に挿入し、その後、所定箇所を封止する。このようにしても、本発明の実施形態に係るランプを製造することができる。この手法は、バイコール板方式と呼んでもよい。
【0182】
さらに、図32(a)および(b)に示すような製造方法を採用することもできる。
【0183】
まず、図32(a)に示すように、石英管(外管)74の中に、バイコール製ガラス管(内管)70を配置させ、そのバイコール製ガラス管70の中に電極構造体50を配置させる。
【0184】
ここで、電極構造体50の金属箔4周囲の領域76を加熱して、外管74・内管70をシュリンクさせて、図32(b)に示すような二重管を備えた電極構造体50を作製する。シュリンク工程は、真空中で外管74・内管70を加熱して、その後、ガラス管を所定の寸法にカットすればよい。
【0185】
図32(b)に示した二重管付きの電極構造体50を、ガラスパイプ80の側管部2’に挿入し、その後、所定箇所を封止すれば、本発明の実施形態に係るランプを製造することができる。この手法は、最終的に三重管構造のランプが得られるので、トリプルシュリンク方式と呼んでもよい。この手法で製造されたランプは、バイコールガラスの周りを石英ガラスで覆っているので、ランプ点灯中にバイコールガラスから不純物が染み出すことを防止することができるという利点を備えている。
【0186】
バイコール製ガラス管70を、ガラスパイプ80の側管部2’に配置する手法として、上記実施形態では、図16に示したような径小部83を側管部2’に形成してガラス管70を固定したが、これに限定されず、他の固定手法を採用してもよい。例えば、ガラス管70を側管部2’の内面に焼き付けて固定してもよいし、ガラス管70を側管部2’の内面に接着剤(例えば、有機系バインダー、ニトロセルロース、PEO(ポリエチレンオキサイド)など)で固定してもよい。また、静電気を用いてもよいし、磁力を用いてもよい。なお、径小部83を形成する場合でも、図16に示した位置の径小部83に加えて、バイコール管70の前方と後方の両方を止めて固定できるように、もう一つ径小部を形成してもよい。また、側管部2’内のうち、バイコール管70の前方(発光管側)に小さな石英管を取り付けて、その石英管によってバイコール管70を側管部2’内に固定することも可能である。そのような石英管は、リーディングによって固定してもよいし、電極棒3の一部にコイルを取り付けてそのコイルによって固定してもよい。
【0187】
また、バイコール製ガラス管70を電極構造体50に固定させる手法として、図28では、ガラス管70の一端をシュリンクさせることにより、外部リード(例えば、モリブデン棒)5に接触させて固定しているが、これに限定されず、他の固定手段を採用してもよい。例えば、図30(b)に示すように、シュリンクしたガラス管70の一端を、金属箔4に引っかけるようにしてもよい。また、そのシュリンクした一端と、金属箔4の一端(外部リード5側の端部)との間に、小さなガラス管(ビート管)を介在させて、固定するようにしてもよい。さらには、ガラス管70のシュリンクした部分が、金属箔4に引っかかりやすく、より安定して固定できるように、金属箔4のうちの外部リード寄りの部位を波打ち形状又は鋸状の形状にしてもよい。
【0188】
本実施形態のランプ100の耐圧強度を更に向上させるには、図33に示したランプ200のように、封止部2内に埋め込まれた部分における電極棒3の少なくとも一部の表面に、金属膜(例えば、Pt膜)30を形成することが好ましい。なお、金属膜30は、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成されていればよく、密着性の観点から、下層がAu層で、上層が例えばPt層のようにすることが好ましい。
【0189】
ランプ200では、封止部2に埋め込まれている部分の電極棒3の表面に金属膜30が形成されているため、電極棒3の周囲に位置するガラスに、微小なクラックが発生することを防止することができる。すなわち、ランプ200では、ランプ100で得られる効果に加えて、クラック発生防止という効果も得られ、それにより、さらに耐圧強度を向上させることができる。以下、クラック発生防止効果について説明を続ける。
【0190】
封止部2内に位置する電極棒3に金属膜30の無いランプの場合、ランプ製造工程における封止部形成の際に、封止部2のガラスと電極棒3とが一度密着した後、冷却時において、両者の熱膨張係数の差違により、両者は離されることになる。この時に、電極棒3の周囲の石英ガラスにクラックが生じる。このクラックの存在により、クラックの無い理想的なランプよりも、耐圧強度が低下することになる。
【0191】
図33に示したランプ200の場合、表面にPt層を有する金属膜30が電極棒3の表面に形成されているので、封止部2の石英ガラスと、電極棒3の表面(Pt層)との間の濡れ性が悪くなっている。つまり、タングステンと石英ガラスとの組み合わせの場合よりも、白金と石英ガラスとの組み合わせの場合の方が、金属と石英ガラスとの濡れ性が悪くなるため、両者は引っ付かずに、離れやすくなるのである。その結果、電極棒3と石英ガラスとの濡れ性の悪さにより、加熱後の冷却時における両者の離れがよくなり、微細なクラックの発生を防止することが可能となる。このような濡れ性の悪さを利用してクラックの発生を防止するという技術的思想に基づいて作製されたランプ200は、ランプ100よりも更に高い耐圧強度を示す。
【0192】
なお、図33に示したランプ200の構成に代えて、図34に示すランプ300の構成にしても良い。ランプ300は、図1に示したランプ100の構成において、表面を金属膜30で被覆したコイル40を、封止部2に埋め込まれている部分の電極棒3の表面に巻き付けたものである。言い換えると、ランプ300は、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属を少なくとも表面に有するコイル40が電極棒3の根本に巻き付けられた構成を有している。なお、図34に示した構成では、コイル40は、発光管1の放電空間10内に位置する電極棒3の部分にまで巻かれている。図34に示したランプ300の構成でも、コイル40表面の金属膜30によって、電極棒3と石英ガラスとの濡れ性を悪くすることができ、その結果、微細なクラックの発生を防止することができる。コイル40の表面の金属は、例えば、メッキにより形成すればよい。密着性の観点からは、コイル40上に、まず下層となるAu層を形成し、次いで、上層となる例えばPt層を形成することが好ましい。ただし、Pt(上層)/Au(下層)メッキの2層構造にせずに、Ptメッキだけを施したコイル40でも、実用上の十分な密着性を確保することができる。
【0193】
Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも一種の金属(「Pt等」とも称する。)を、電極棒3の表面またはコイル40の表面に設けた構成の場合において、本発明の実施形態の構成のように、金属箔4の周囲に第2のガラス部7が存在する意義は非常に大きい。これについて、さらに説明を続ける。Pt等の金属は、ランプ製造工程(封止工程)において、加工中の加熱によっていくらか蒸発する可能性があるため、それが金属箔4のところに拡散すると、金属箔とガラスとの密着を弱める結果を招き、耐圧を低下させてしまうことがある。しかし、本実施形態の構成のように、金属箔4の周囲に第2のガラス部7を設け、そこに圧縮歪みを存在させると、もはや、Pt等とガラスとの間の濡れ性の悪さは無関係となり、その結果、Pt等の拡散が招く耐圧低下を防止することができる。
【0194】
次に、本実施形態のランプ100および200の耐圧強度について説明する。図35は、本実施形態のランプに対して、静水圧を用いた耐圧試験を行うときのランプ構成を模式的に示している。静水圧を用いた耐圧試験は、図35に示すように、一方の封止部2は、図1に示したランプ100の封止部2、または図33および図34に示したランプ200、300の封止部2と同じ構成をしている。そして、他方の封止部を側管部2’の状態のままとされており、その開放された側の側管部2’の一端から、水を入れて水圧を加えて、ランプの耐圧を測定する。具体的に説明すると、開放された側管部2’から純水を導入し、静水圧を加え、その圧を徐々に大きくしていく。ランプが破裂した時の静水圧の値を、ランプの耐圧(静水圧による耐圧)とする。
【0195】
本実施形態のランプ100について7本、ランプ200について5本、比較例のランプ(図2(b)参照)について9本、耐圧試験を行った結果を図36に示す。図36は、耐圧と破損確率との関係を示したワイブルプロットである。図36において、横軸の値が大きいほど耐圧が大きく、そして、傾きが大きいほど(すなわち、垂直に近いほど)耐圧のばらつきが小さいことになる。
【0196】
図36からわかるように、破損確率が50%となるのは、比較例では21MPaであるのに対し、ランプ100では25.3MPaであり、ランプ200では28.5MPaにまで大きくなった。ランプ100および200の耐圧(静水圧による耐圧)は、耐圧に優れた従来のランプでも到底到達できなかった高い耐圧である。また、傾きをみても、本実施形態のランプ100および200の方が、比較例のものよりも大きく、それゆえに、耐圧のばらつきが少ないことがわかる。
【0197】
一般的に、耐圧試験により得られる耐圧よりも、点灯動作圧の方が高くなることが知られている。点灯動作圧の方が高くなる理由を説明すると次のようである。ランプが点灯して加熱されると、発光管のガラスは、熱膨張することになるが、実際には、ランプの構造上、発光管のガラスは自由に膨張することができず、結果として、収縮する力が発光管に加わる。この収縮する力、すなわち、戻ろうとする力が働くことによって、耐圧試験により得られる耐圧よりも、点灯動作圧の方が高くなるのである。点灯動作圧での方で評価すると、ランプ100は、動作圧を30MPa以上にすることができ、ランプ200に至っては、40MPa以上にもすることができる。一方、比較例のランプの動作圧を30MPaにしたとすれば、破裂してしまうことになる。
【0198】
図37は、比較例のランプ(図49に示した構成)および本発明の実施形態のランプ(本発明のランプ。例えば、図34に示した構成)について点灯時間に対する残存率を示している。比較例のランプ10本および本発明のランプ13本を、点灯動作圧40MPa、120Wで点灯させたところ、比較例のランプでは、点灯時間が100時間以内の時点で50%以上が破損してしまったのに対し、本発明のランプの場合、2600時間時点でも50%以上の残存率を示した。この結果は、現行で用いられている動作圧20MPaの従来のランプが、2000時間50%の残存率であることを考えると、本発明のランプが非常に優れていることがわかる。また、本発明の構成にすることによって初めて、30MPa以上という非常に高い動作圧でも安定して動作させることが可能なランプを提供できることも意味している。
【0199】
図38は、第2のガラス部7の位置と、初期点灯中(5時間)の破裂率との関係を示している。グループaは、電極棒3と金属箔4との接続部(溶接部)を覆うように第2のガラス部7を配置した構成を表しており、グループbは、そうでないものを表している。グループaの上段のランプは、第2のガラス部7が電極棒3と金属箔4との接続部を覆うとともに、第2のガラス部7における外部リード5側の端面が金属箔4上に位置している構成をしており、一方、その下段のランプは、金属箔4の全体を覆うように第2のガラス部7が位置するような構成をしている。
【0200】
各ランプを動作圧350気圧で5時間、グループaは56本(n=56)、グループbは21本(n=21本)について初期点灯させたところ、グループaのランプの破裂率は0%だったのに対し、グループbのランプの破裂率は43%であった。したがって、電極棒3と金属箔4との接続部(溶接部)を覆うように、第2のガラス部7を配置することが好ましい。
【0201】
点灯動作圧が30MPa以上で動作する高圧放電ランプは従来には存在しなかったので、動作圧を極めて大きくした場合に、その分光特性がどのようになるか非常に興味がもたれる。動作圧を30MPa以上にした場合、平均演色評価指数Raおよび照度が大幅に向上することが明らかになった。以下、その結果について説明する。
【0202】
図39は、本実施形態のランプを、点灯動作圧40MPaで動作させた時の分光分布を示している。そして、図40は、本実施形態のランプを、点灯動作圧19MPaで動作させた時の分光分布を示している。一方、図41は、従来のランプ(Philips社製)を、動作圧20MPa、120Wで点灯させた時の分光分布を参考として示している。図39から図41に示した分光分布は、実測データである。
【0203】
図40および図41と比較して、図39を見ると、動作圧が40MPaのランプでは、405nm、436nm、546nm、547nm付近の輝線の割合が小さくなることがわかった。また、平均演色評価指数Raに注目すると、図39に示した例では、Raが70.7という非常に高い値を示した。一方、図40に示した例では、Raは60.2であり、そして、図41に示した例では、59.4であった。なお、参考までに、図39から図41に示した例についての他の特性を示すと、以下のようである。なお、R9〜R15は、特殊演色評価数である。
【0204】
図39に示した例(動作圧40MPa、Ra=70.7):
色度値(x、y)=(0.2935、0.2967)、Tc=8370K、DUV=−3.4
R9=−11.0、R10=34.4、R11=56.7、R12=58.6、
R13=66.3、R14=84.1、R15=66.8
図40に示した例(動作圧19MPa、Ra=60.2):
色度値(x、y)=(0.2934、0.3030)、Tc=8193K、DUV=0.1
R9=−53.3、R10=11.6、R11=42.0、R12=41.9、
R13=54.0、R14=79.0、R15=52.4
図41に示した例(動作圧20MPa、Ra=59.4):
色度値(x、y)=(0.2895、0.3010)、Tc=8574K、DUV=1.3
R9=−53.2、R10=9.9、R11=40.9、R12=41.5、
R13=52.8、R14=78.5、R15=50.8
次に、平均演色評価指数Raと点灯動作圧との関係について説明する。図42は、Raの点灯動作圧依存性を示すグラフである。
【0205】
図42からわかるように、点灯動作圧が大きくなるにつれて、Raが大きくなる。動作圧を19MPaから40MPaまで上げると、Raが約14%向上した。従来の超高圧水銀ランプのRaがせいぜい60(場合によっては65)であるのに対して、Raを65よりも大きくすることができれば、ランプの汎用性が非常に広がることになる。すなわち、蛍光ランプのRaが61で、蛍光形の水銀ランプのRaが40〜50であるところ、超高圧水銀ランプのRaを65よりも大きくすることができれば、高効率形のメタルハライドランプ(例えば、Ra65〜70)の用途にも積極的に使用することが可能となるからである。そして、超高圧水銀ランプのRaを70以上にすれば、工業的な作業用だけでなく、オフィスにもより好適に使用することが可能となるため、非常にランプの汎用性が高まる。したがって、本実施形態のランプの平均演色評価数Raは、例えば、65よりも大きい値、または、67以上、70以上と上がるほどより好ましい。このランプ(超高圧水銀ランプ)の色温度は、8000K以上であり、色温度が8000K以上で、Raが65を超えるランプは、現時点でまだ存在しない。Raを非常に高くしたメタルハライドランプ等は色温度が比較的低く、そして、電球も色温度が比較的低い。色温度が8000K以上で、Raが65を超える本実施形態のランプは、人工太陽光源(人工太陽装置もしくは人工太陽システム)となり得るもの、または、それに近づくものであり、今日まだ存在しない新たな需要を生み出すもととなり得る画期的なランプである。
【0206】
さらに、本実施形態のランプ100および200は、反射鏡と組み合わせて、ミラー付きランプないしランプユニットにすることができる。
【0207】
図43は、本実施形態のランプ100を備えたミラー付きランプ900の断面を模式的に示している。
【0208】
ミラー付ランプ900は、略球形の発光管1と一対の封止部2とを有するランプ100と、ランプ100から発せられた光を反射する反射鏡60とを備えている。なお、ランプ100は例示であり、勿論、ランプ200であってもよい。また、ミラー付ランプ900は、反射鏡60を保持するランプハウスをさらに備えていてもよい。ここで、ランプハウスを備えた構成のものは、ランプユニットに包含されるものである。
【0209】
反射鏡60は、例えば、平行光束、所定の微小領域に収束する集光光束、または、所定の微小領域から発散したのと同等の発散光束になるようにランプ100からの放射光を反射するように構成されている。反射鏡60としては、例えば、放物面鏡や楕円面鏡を用いることができる。
【0210】
本実施形態では、ランプ100の一方の封止部2に口金56が取り付けられており、当該封止部2から延びた外部リード(5)と口金56とは電気的に接続されている。封止部2と反射鏡60とは、例えば無機系接着剤(例えばセメントなど)で固着されて一体化されている。反射鏡60の前面開口部側に位置する封止部2の外部リード5には、引き出しリード線65が電気的に接続されており、引き出しリード線65は、リード線5から、反射鏡60のリード線用開口部62を通して反射鏡60の外にまで延ばされている。反射鏡60の前面開口部には、例えば前面ガラスを取り付けることができる。
【0211】
このようなミラー付ランプないしランプユニットは、例えば、液晶やDMDを用いたプロジェクタ等のような画像投影装置に取り付けることができ、画像投影装置用光源として使用される。また、このようなミラー付ランプないしランプユニットと、画像素子(DMD(Digital Micromirror Device)パネルや液晶パネルなど)を含む光学系とを組み合わせることにより、画像投影装置を構成することができる。例えば、DMDを用いたプロジェクタ(デジタルライトプロセッシング(DLP)プロジェクタ)や、液晶プロジェクタ(LCOS(Liquid Crystal on Silicon)構造を採用した反射型のプロジェクタも含む。)を提供することができる。さらに、本実施形態のランプ、およびミラー付ランプないしランプユニットは、画像投影装置用光源の他に、紫外線ステッパ用光源、または競技スタジアム用光源や自動車のヘッドライト用光源、道路標識を照らす投光器用光源などとしても使用することができる。
【0212】
次に、本実施形態のランプにおける点灯動作圧と照度との関係について説明する。
【0213】
図44は、動作圧(MPa)と平均照度(lx)との関係を示すグラフである。この照度の測定は、次のようにして行った。図43に示したような反射鏡にランプを組み込んで、適切な光学系を用いてスクリーンに光を照射した状態で、スクリーンを等面積の9つの面に分割し、それぞれの面の中心で照度を測定した。9つの照度の平均値をランプの平均照度とし、それをランプの照度の指標とした。
【0214】
図44からわかるように、動作圧が大きくなるにつれ、照度も大きくなっていく。動作圧を19MPaから40MPaに上げることにより、照度が約14%向上した。したがって、40MPaのランプを用いれば、従来よりも、より明るい画像投影装置を実現することができる。近年、スクリーンの明るさがより強く要求されてるようになってきているので、この照度を約14%向上できることは、既存の技術のブレイクスルーの一つになり得る意味合いも持っている。
(他の実施形態)
上記実施形態では、発光物質として水銀を使用する水銀ランプを高圧放電ランプの一例として説明したが、本発明は、封止部(シール部)によって発光管の気密を保持する構成を有するいずれの高圧放電ランプにも適用可能である。例えば、金属ハロゲン化物を封入したメタルハライドランプやキセノンなどの高圧放電ランプにも適用することができる。メタルハライドランプ等においても、耐圧が向上すればするほど好ましいからである。つまり、リーク防止やクラック防止を図ることにより、高信頼性で長寿命のランプを実現することができるからである。 また、水銀だけでなく金属ハロゲン化物も封入されているメタルハライドランプに、上記実施形態の構成を適用する場合には、次のような効果も得られる。すなわち、第2のガラス部7を設けることにより、封止部2内における金属箔4の密着性を向上させることができ、金属箔4と金属ハロゲン化物(または、ハロゲンおよびアルカリ金属)との反応を抑制することが可能となり、その結果、封止部の構造の信頼性を向上させることができる。特に、図1、図8や図10に示した構成のように、金属棒3の部分に第2のガラス部7が位置している場合には、金属棒3と封止部2のガラスの間にある僅かな隙間から侵入して金属箔4に反応して箔の脆化をもたらす金属ハロゲン化物のその侵入を第2のガラス部7により効果的に軽減させることが可能となる。このように、上記実施形態の構成は、メタルハライドランプに好適に適用可能である。
【0215】
近年、水銀を封入しない無水銀メタルハライドランプの開発も進んでいるが、そのような無水銀メタルハライドランプに、上記実施形態の技術を適用することも可能である。以下、さらに詳述する。
【0216】
上記実施形態の技術が適用された無水銀メタルハライドランプとしては、図1図33または図34に示した構成において、発光管1内に、水銀が実質的に封入されてなく、かつ、少なくとも、第1のハロゲン化物と、第2のハロゲン化物と、希ガスとが封入されているものが挙げられる。このとき、第1のハロゲン化物の金属は、発光物質であり、第2のハロゲン化物は、第1のハロゲン化物と比較して、蒸気圧が大きく、かつ、前記第1のハロゲン化物の金属と比較して、可視域において発光しにくい金属の1種または複数種のハロゲン化物である。例えば、第1のハロゲン化物は、ナトリウム、スカンジウム、および希土類金属からなる群から選択された1種または複数種のハロゲン化物である。そして、第2のハロゲン化物は、相対的に蒸気圧が大きく、かつ、第1のハロゲン化物の金属と比較して、可視域に発光しにくい金属の1種または複数種のハロゲン化物である。具体的な第2のハロゲン化物としては、Mg、Fe、Co、Cr、Zn、Ni、Mn、Al、Sb、Be、Re、Ga、Ti、ZrおよびHfからなる群から選択された少なくとも一種の金属のハロゲン化物である。そして、少なくともZnのハロゲン化物を含むような第2のハロゲン化物がより好適である。
【0217】
また、他の組み合わせ例を挙げると、透光性の発光管(気密容器)1と、発光管1内に設けられた一対の電極3と、発光管1に連結された一対の封止部2とを備えた無水銀メタルハライドランプにおける発光管1内に、発光物質であるScI(ヨウ化スカンジウム)およびNaI(ヨウ化ナトリウム)と、水銀代替物質であるInI(ヨウ化インジウム)およびTlI(ヨウ化タリウム)と、始動補助ガスとしての希ガス(例えば1.4MPaのXeガス)が封入されているものである。この場合、第1のハロゲン化物は、ScI(ヨウ化スカンジウム)、NaI(ヨウ化ナトリウム)となり、第2のハロゲン化物は、InI(ヨウ化インジウム)、TlI(ヨウ化タリウム)となる。なお、第2のハロゲン化物は、比較的蒸気圧が高く、水銀の役割の代わりを担うものであればよいので、InI(ヨウ化インジウム)等に代えて、例えば、Znのヨウ化物を用いても良い。
【0218】
このような無水銀メタルハライドランプにおいて、上記実施形態1の技術が好適に適用可能な理由を次に説明する。
【0219】
まず、Hgの代替物質(Znのハロゲン化物など)を用いた無水銀メタルハライドランプの場合、有水銀のランプと比べて、効率が低下する。効率を上げるためには、点灯動作圧を上げることが非常に有利に働く。上記実施形態のランプの場合、耐圧を向上させた構造であるので、希ガスを高圧封入できるので、簡便に効率を向上させることができるので、実用化可能な無水銀メタルハライドランプを容易に実現することができる。この場合、希ガスとしては、熱伝導率の低いXeが好ましい。
【0220】
そして、無水銀メタルハライドランプの場合、水銀を封入しない関係上、有水銀のメタルハライドランプよりも、ハロゲンを多く封入する必要がある。したがって、電極棒3付近の隙間を通って金属箔4まで達するハロゲンの量も多くなり、ハロゲンが金属箔4(場合によっては、電極棒3の根本部分)と反応する結果、封止部構造が弱くなり、リークが生じやすくなる。図33および図34に示した構成では、電極棒3の表面を金属膜30(またはコイル40)で被覆しているので、電極棒3とハロゲンとの反応を効果的に防止することができる。また、図1のように、電極棒3の周辺に第2のガラス部7が位置している構成の場合、その第2のガラス部7によって、ハロゲン化物(例えば、Scのハロゲン化物)の侵入を防ぐことができ、それによって、リークの発生を防止することが可能となる。それゆえ、上記実施形態の構造を備えた無水銀メタルハライドランプの場合、従来の無水銀メタルハライドランプよりも、高効率化および長寿命化を図ることができる。このことは、一般照明用のランプに広く言えることである。車の前照灯用のランプについていえば、さらに次のような利点がある。
【0221】
車の前照灯に使用する場合、スイッチをONした次の瞬間に、100%の光を得たいという要求がある。この要求に応えるには、希ガス(具体的には、Xe)を高圧で封入することが効果的である。しかしながら、通常のメタルハライドランプでXeを高圧で封入すれば、破裂の可能性が高まる。これは、より高度の安全性が求められる前照灯用のランプとしては好ましくない。つまり、夜間における前照灯の故障は、車の事故につながるからである。上記実施形態の構造を備えた無水銀メタルハライドランプの場合には、耐圧が向上させた構造となっているので、そのような高圧のXeの封入でも、安全性を確保しながら、点灯の始動性を向上させることができる。また、長寿命化も図られているので、前照灯用としてより好適に適用可能となっている。
【0222】
さらに、上記実施形態では、水銀蒸気圧が20MPa程度または30MPa程度以上の場合(いわゆる超高圧水銀ランプの場合)について説明したが、上述したように、水銀蒸気圧が1MPa程度の高圧水銀ランプに適用することを排除するものではない。つまり、超高圧水銀ランプおよび高圧水銀ランプを含む高圧放電ランプ全般に適用できるものである。なお、今日の超高圧水銀ランプと呼ばれるものの水銀蒸気圧は、15MPaまたはそれ以上(封入水銀量150mg/ccまたはそれ以上)である。
【0223】
動作圧力が極めて高くても安定して動作できるということは、ランプの信頼性が高いことを意味するので、本実施形態の構成を、動作圧力のそれほど高くないランプ(ランプの動作圧力が30MPa程度未満、例えば、20MPa程度〜1MPa程度)に適用した場合、当該動作圧力で動作するランプの信頼性を向上させることができる。
【0224】
高い耐圧強度を実現できるランプの技術的意義をさらに説明すると、次の通りである。近年、より高出力・高電力の高圧水銀ランプを得るために、アーク長(電極間距離)が短いショートアーク型の水銀ランプ(例えば、電極間距離が2mm以下)の開発が進んでいるところ、ショートアーク型の場合、電流の増大に伴って電極の蒸発が早くなることを抑制するために、通常よりも多くの水銀量を封入する必要がある。上述したように、従来の構成においては、耐圧強度に上限があったため、封入水銀量にも上限(例えば、200mg/cc程度以下)があり、さらなる優れた特性を示すようなランプの実現化に制限が加えられていた。本実施形態のランプは、そのような従来における制限を取り除け得るものであり、従来では実現できなかった優れた特性を示すランプの開発を促進させることができるものである。本実施形態のランプにおいては、封入水銀量が200mg/cc程度を超える、300mg/cc程度またはそれ以上のランプを実現することが可能となる。
【0225】
なお、上述したように、封入水銀量が300〜400mg/cc程度またはそれ以上(点灯動作圧30〜40MPa)を実現できる技術というのは、特に点灯動作圧20MPaを超えるレベルのランプ(すなわち、今日の15MPa〜20MPaのランプを超える点灯動作圧を有するランプ。例えば、23MPa以上または25MPa以上のランプ)について、その安全性および信頼性を確保できる意義も有している。つまり、ランプを大量生産する場合には、ランプの特性にどうしてもばらつきが生じ得るため、点灯動作圧が23MPa程度のランプであっても、マージンを考えた上で耐圧を確保する必要があるので、30MPa以上の耐圧を達成できる技術は、30MPa未満のランプについても、実際に製品を供給できるという観点からの利点は大きい。もちろん、30MPa以上の耐圧を達成できる技術を用いて、23MPaあるいはそれ以下の耐圧でもよいランプを作製すれば、安全性および信頼性の向上を図ることができる。
【0226】
したがって、本実施形態の構成は、信頼性等の面からも、ランプ特性を向上させることができるものである。また、上記実施形態のランプでは、封止部2をシュリンク手法によって作製したが、ピンチング手法で作製してもよい。また、ダブルエンド型の高圧放電ランプについて説明したが、シングルエンド型の放電ランプに上記実施形態の技術を適用することも可能である。なお、上記実施形態では、例えばバイコール製のガラス管(70)から、第2のガラス部7を形成したが、必ずしもガラス管から形成しなくてもよい。金属箔4の全周囲を覆うような構成に限らず、金属箔4に接触して、封止部2の一部に圧縮応力が存在させ得るガラス構造体であれば、ガラス管に限定されない。例えば、ガラス管70の一部にスリットが入って「C字」状となったガラス構造体も用いられるし、金属箔4の片側または両側に接触するように例えばバイコール製のカラット(ガラス片)を配置させてもよいし、金属箔4の周囲を覆うように、例えばバイコール製のガラスファイバーを配置させてもよい。ただし、ガラス構造体ではなく、ガラス粉体、例えば、ガラス粉末を圧縮形成して焼結してなる焼結ガラス体を用いても、封止部2の一部に圧縮応力を存在させることができないので、ガラス粉体は利用できない。
【0227】
加えて、一対の電極3間の間隔(アーク長)は、ショートアーク型であってもよいし、それより長い間隔であってもよい。上記実施形態のランプは、交流点灯型および直流点灯型のいずれの点灯方式でも使用可能である。また、上記実施形態で示した構成および改変例は相互に採用することが可能である。なお、金属箔4を含む封止部構造について説明したが、箔無し封止部構造について上記実施形態の構成を適用することも可能である。箔無しの封止部構造の場合においても、耐圧を高めること、および、信頼性を高めることは重要なことだからである。より具体的に述べると、電極構造体50として、モリブデン箔4を用いずに、一本の電極棒(タングステン棒)3を電極構造体とする。その電極棒3の少なくとも一部に第2のガラス部7を配置し、その第2のガラス部7および電極棒3を覆うように第1のガラス部8を形成して、封止部構造を構築することも可能である。この構成の場合、外部リード5も電極棒3によって構成することが可能となる。
【0228】
上述した実施形態では、放電ランプについて説明したが、上記実施形態1の技術は、放電ランプに限らず、封止部(シール部)によって発光管の気密を保持する構成のランプであれば、放電ランプ以外のランプ(例えば、電球)にも適用可能である。上記実施形態1の技術を適用した電球を図45および図46に示す。
【0229】
図45に示した電球500は、図1に示した構成において、発光管1内にフィラメント9が設けられたダブルエンド型の電球(例えば、ハロゲン電球)である。フィラメント9は、インナーリード(内部導入線)3aに接続されている。発光管1内にアンカーを設けても良い。
【0230】
図46に示した電球600は、同図からわかるように、シングルエンド型の電球である。この例では、シングルエンド型のハロゲン電球を示している。電球600は、例えば、石英製のガラス球1、封止部2(第1のガラス部8、第2のガラス部7、モリブデン箔4)、フィラメント9、インナーリード31、アンカー32、アウターリード(外部導入線)5、インシュレーター51、口金52から構成されている。このようなハロゲン電球でも破裂の問題は重要な課題であり、上記実施形態1の技術により、破裂を防止できるようになることの技術的意義は大きい。
【0231】
以上、本発明の好ましい例について説明したが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の変形が可能である。
【0232】
なお、封止部の構造に工夫をこらした公知の技術としては、次のものを挙げることができる。図47および図48は、特開平6−208831号公報(対応米国特許第5,468,168号)に開示されたランプ2000を示している。ランプ2000では、ランプの発光手段を正確に位置決めするためのリード線用の密閉および支持手段について工夫がなされている。
【0233】
図47に示したランプ2000は、光発生用内部空間210を取り囲んでいる石英ガラスからなるエンベロープ201と、内部空間210に突出している導電性リード線構造250とから構成されている。図48は、導電性リード線構造250の構成を拡大して示している。
【0234】
導電性リード線構造250は、先端212を有する電極棒203と、金属箔204と、外部リード線205とを有しており、これらは、ガラス質材料の粒子を圧縮成形して焼結して構成した本体部208によって取り囲まれて、密閉されている。この本体部208は、内部空間210と連通するエンベロープ201の開口部を通って延在し、密閉部がエンベロープ201と本体部の間の界面領域で、エンベロープ201と本体部との間に形成されるようにされている。
【0235】
このランプ2000では、脚部202の内側に、ガラス質材料の粒子を圧縮成形して焼結して構成した本体部208が位置して、それにより、エンベロープ201の開口部を密閉する構成を採用しているものであり、本実施形態のランプ100のように、圧縮歪みが入った第2のガラス部7を含む封止部を備えた構成のものではない。それゆえ、両者は、基本的構成を異にするものである。
【0236】
より具体的に説明すると、ランプ2000では、両者の熱膨張係数がほぼ同じになるように、融解シリカ粉末から本体部208を形成し、脚部202を融解石英から形成している。この場合、両者のほぼ同一組成であるので、本体部208に圧縮歪みが入ることはない。同公報には、バイコールガラス焼結石英のようなガラス質材料からなる多孔性母材から、本体部208を作製する手法も開示されているが、そのような多孔性母材から作製された本体部208を、脚部202内に設けても、電極軸方向の圧縮歪みが本体部208に残留する理由は見あたらないし、実際、同公報に開示されたランプ2000の本体部208に圧縮歪みが残留することは記載も示唆もされていない。
【0237】
同公報には、信頼性の高い密閉を得るうえで、周囲と本体部208との熱膨張係数をぴったり合わせることの教示があるので、できるだけ、本体部208とその周囲の組成はできるだけ同一となるようにすることが示唆されているものと思われる。そして、仮に、ガラス質材料の粒子を圧縮成形して焼結してガラス部を中心側に配置して、外側から本実施形態のような側管部2’で収縮させたとしても、ガラス管(70)と異なり、粒子が圧縮形成された焼結体は、その粒子が分散してしまい、残留する圧縮歪み(圧縮応力)どころか、側管部2’のガラス部へ、焼結体のガラス粉末が濃度勾配をもって分散する結果に帰することになるからである。
【0238】
【発明の効果】
本発明によると、側管部を構成する第1のガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス部材を側管部内に挿入し、次いで、側管部を加熱してガラス部材と側管部とを密着させた後、前記第2のガラスの歪点温度よりも高く、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度で、前記ガラス部材および前記側管部を少なくとも含む部分を加熱する工程を行うことにより、圧縮応力が印加されている部位を有する封止部を備えた高圧放電ランプを製造することができる。この高圧放電ランプには、圧縮応力が印加されている部位が形成されるので、耐圧強度が向上している。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)および(b)は、本発明の実施形態にかかる高圧放電ランプ100の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)および(b)は、封止部2の長手方向(電極軸方向)に沿った圧縮歪みの分布を模式的に示す要部拡大図である。
【図3】(a)および(b)は、光弾性効果を利用した鋭敏色板法を用いて測定されたランプの圧縮歪みの分布を示す図面代用写真である。
【図4】(a)および(b)は、それぞれ、図3(a)および(b)についてのトレース図である。
【図5】(a)および(b)は、光弾性効果を利用した鋭敏色板法による歪み測定の原理を説明するための図である。
【図6】応力[kgf/cm]とランプ本数[本]との関係を示すグラフである。
【図7】(a)および(b)は、第2のガラス部7に圧縮歪が入っていることによって、ランプ100の耐圧強度が上がる理由を説明するための要部拡大図である。
【図8】ランプ100の改変例を模式的に示す要部拡大図である。
【図9】ランプ100の改変例を模式的に示す要部拡大図である。
【図10】ランプ100の改変例を模式的に示す要部拡大図である。
【図11】ランプ100の改変例を模式的に示す要部拡大図である。
【図12】放電ランプ用ガラスパイプ80の構成を模式的に示す断面図である。
【図13】ガラス管70の構成を模式的に示す断面図である。
【図14】ガラスパイプ80の側管部2’にガラス管70を固定する工程を説明するための工程断面図である。
【図15】電極構造体50の構成を模式的に示す図である。
【図16】径小部83が設けられたガラスパイプ80の構成を模式的に示す断面図である。
【図17】電極構造体50の挿入工程を説明するための工程断面図である。
【図18】図17中の線c−cにおける断面図である。
【図19】封止部形成工程を説明するための工程断面図である。
【図20】(a)および(b)は、第2のガラス部7に圧縮歪みが入る機構を説明するための断面図である。
【図21】(a)から(d)は、アニールによって圧縮応力が加わる機構を説明するための断面図である。
【図22】加熱工程(アニール工程)のプロファイルを模式的に示すグラフである。
【図23】水銀蒸気圧によって第2のガラス部7に圧縮応力が入る機構を説明するための概略図である。
【図24】発光管内の水銀量と圧縮応力との関係を示すグラフである。
【図25】ガラス管70の構成を模式的に示す断面図である。
【図26】ガラス管70に電極構造体50を挿入する工程を説明するための工程断面図である。
【図27】ガラス管70をシュリンクさせる工程を説明するための工程断面図である。
【図28】ガラス管70付きの電極構造体50の構成を模式的に示す断面図である。
【図29】ガラスパイプ80の側管部2’に、ガラス管70付きの電極構造体50を挿入する工程を説明するための工程断面図である。
【図30】(a)〜(d)は、本発明の他の実施形態にかかる製造方法を説明するための工程断面図である。
【図31】(a)〜(c)は、本発明の他の実施形態にかかる製造方法を説明するための工程断面図である。
【図32】(a)および(b)は、本発明の他の実施形態にかかる製造方法を説明するための工程断面図である。
【図33】本発明の実施形態にかかる高圧放電ランプ200の構成を模式的に示す断面図である。
【図34】本発明の実施形態にかかる高圧放電ランプ300の構成を模式的に示す断面図である。
【図35】静水圧を用いた耐圧試験を行うときのランプ構成を模式的に示す断面図である。
【図36】耐圧と破損確率との関係を示すワイブルプロットである。
【図37】点灯時間に対する残存率を示すグラフである。
【図38】第2のガラス部7の位置と、初期点灯中(5時間)の破裂率との関係を示すものである。
【図39】点灯動作圧40MPaで動作させた時の分光分布を示すグラフである。
【図40】点灯動作圧19MPaで動作させた時の分光分布を示すグラフである。
【図41】従来のランプの分光分布を示すグラフである。
【図42】平均演色評価指数Raと点灯動作圧との関係を示すグラフである。
【図43】ミラー付きランプ900の構成を模式的に示す断面図である。
【図44】動作圧(MPa)と平均照度(lx)との関係を示すグラフである。
【図45】電球500の構成を模式的に示す断面図である。
【図46】電球600の構成を模式的に示す斜視図である。
【図47】従来のランプ2000の構成を模式的に示す断面図である。
【図48】導電性リード線構造250の要部拡大図である。
【図49】従来の高圧水銀ランプの構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 発光管
1’ 発光管部
2 封止部
2’ 側管部
3 電極棒
4 金属箔
5 外部リード
6 発光物質(水銀)
7 第2のガラス部
8 第1のガラス部
9 フィラメント
10 放電空間(管内)
11 支持部材
12 コイル
20 歪み境界領域
50 電極構造体
56 口金
60 反射鏡
62 リード線用開口部
65 リード線
70 ガラス管
80 放電ランプ用ガラスパイプ
82 チャック
100、200、300 高圧放電ランプ
500、600 電球(ハロゲン電球)
900 ミラー付ランプ(ランプユニット)
1000 超高圧水銀ランプ
2000 ランプ

Claims (11)

  1. 管内に発光物質が封入される発光管と、
    前記発光管内に配置された一対の電極棒と、
    前記電極棒に接続された金属箔と、
    前記発光管から延在した第1のガラス部と当該第1のガラス部よりも歪点温度が低く当該第1のガラス部に外周が覆われている第2のガラス部とからなり、かつ、前記電極棒の軸方向に略垂直な断面において前記金属箔の断面が当該第2のガラス部に覆われている封止部と、
    を有する高圧放電ランプの製造方法であって、
    前記第2のガラスの歪点温度よりも高く、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度範囲で、前記第2のガラス部が位置する部分を含む前記封止部を保持した状態で前記第2のガラス部に圧力を印加する工
    を包含する、高圧放電ランプの製造方法。
  2. 管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の両端から延びた一対の封止部とを有する高圧放電ランプの製造方法であって、
    高圧放電ランプの発光管となる発光管部と、前記発光管部の両端から延在した一対の側管部とを有する放電ランプ用ガラスパイプを用意する工程と、
    前記一対の側管部のうちの一方の側管部に、前記側管部を構成する第1のガラスよりも歪点温度の低い第2のガラスから構成されたガラス管と、電極棒と当該電極棒に接続された金属箔を含む電極構造体とを挿入し、次いで、前記ガラス管内に前記金属箔が挿入され且つ前記電極棒と前記金属箔との接続部が前記ガラス管内に位置した状態で前記側管部を加熱収縮することによって、前記一対の封止部のうちの一方の封止部を形成する工程と、
    前記一方の封止部を形成した後、前記発光管部内に発光物質を導入する工程と、
    前記発光物質を導入した後、前記一方に対する他方の側管部に、前記第2のガラスから構成されたガラス管と、電極棒と当該電極棒に接続された金属箔とを含む電極構造体とを挿入し、次いで、前記ガラス管内に前記金属箔が挿入され且つ前記電極棒と前記金属箔との接続部が前記ガラス管内に位置した状態で前記側管部を加熱収縮することによって、前記一方に対する他方の封止部および前記発光物質が封入された発光管を形成する工程と、
    両方の封止部および発光管が形成されたランプ完成体に対して、前記第2のガラスの歪点温度よりも高い温度で、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度で、前記発光管および前記ガラス管および前記側管部を少なくとも含む部分を加熱する工程と
    を包含する、高圧放電ランプの製造方法。
  3. 前記加熱工程は、2時間以上行われる、請求項2に記載の高圧放電ランプの製造方法。
  4. 光弾性効果を利用した鋭敏色板法を用いて前記封止部を測定した場合、前記第2のガラス部に相当する領域に10kgf/cm2以上50kgf/cm2以下の長手方向の圧縮応力が存在するように圧力を印加する工程が実施される、請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
  5. 光弾性効果を利用した鋭敏色板法を用いて前記封止部を測定した場合、前記ガラス管に相当する領域に10kgf/cm2以上50kgf/cm2以下の長手方向の圧縮応力が存在するように加熱工程が実施される、請求項2に記載の高圧放電ランプの製造方法。
  6. 前記加熱は、前記第2のガラスの歪点温度よりも高く且つ前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度の炉に、前記ランプ完成体を配置することよって実行される、請求項2または3に記載の高圧放電ランプの製造方法。
  7. 前記第1のガラスは、SiO2を99重量%以上含み、
    前記第2のガラスは、15重量%以下のAl23および4重量%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiO2とを含む、請求項1から6の何れか一つに記載の高圧放電ランプの製造方法。
  8. 前記高圧放電ランプは、高圧水銀ランプであり、
    前記発光物質として水銀を、前記発光管の内容積を基準に、150mg/cm3以上封入する、請求項1から7の何れか一つに記載の高圧放電ランプの製造方法。
  9. 管内に発光物質が封入される発光管と、
    前記発光管内に配置された一対の電極棒と、
    前記電極棒に接続された金属箔と、
    前記発光管から延在した第1のガラス部と当該第1のガラス部よりも歪点温度が低く当該第1のガラス部に外周が覆われている第2のガラス部とからなり、かつ、前記電極棒の軸方向に略垂直な断面において前記金属箔の断面が当該第2のガラス部に覆われている封止部と、
    を有する高圧放電ランプであって、
    前記第2のガラスの歪点温度よりも高く、且つ、前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度範囲で、前記第2のガラス部が位置する部分を含む前記封止部を保持した状態で前記第2のガラス部に圧力を印加する工程によって、前記第2のガラス部に圧縮応力が印加された、高圧放電ランプ。
  10. 前記第1のガラス部は、SiO 2 を99重量%以上含み、
    前記第2のガラス部は、15重量%以下のAl 2 3 および4重量%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiO 2 とを含む、請求項9に記載の高圧放電ランプ。
  11. 前記高圧放電ランプは、高圧水銀ランプであり、
    前記発光物質として水銀が、前記発光管の内容積を基準に、150mg/cm 3 以上封入されている、請求項9または10に記載の高圧放電ランプ。
    放電ランプ。
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