JP3813981B2 - 高圧放電ランプの製造方法 - Google Patents
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Description
図1に、上記公報に開示された高圧水銀ランプ1000の構造を示す。
電極構造体は、タングステン(W)製の電極503、モリブデン(Mo)箔504、外部リード線505を順に電気的に接続した構成をとる。なお、電極503の先端には、コイル512が巻回されている。
このような高圧水銀ランプ1000の一対の外部リード線505の両端に始動電圧を印加させると、Arの放電が起こり発光部501内の温度が上昇する。この温度上昇によって、Hg原子は蒸発し発光部501内に気体として充満する。このとき、Hg蒸気圧は15〜20MPaにも達するが、封止部502におけるモリブデン箔504の部分で気密性を保つことができる構造となっている(箔シール構造)。
しかし、封入圧を高くすると、点灯時間の経過と共に封止部502においてモリブデン箔と石英ガラスとの熱膨張係数の差などに起因して両者の剥離が進行し、その結果、発光部501内の封入物がリークするという問題があった。
図2は、上記特開2000−182566号公報に開示された高圧水銀ランプの構造を示す一部切り欠き図である。同図に示すように石英ガラス製の発光官521の両端に延在する側管部522内に、傾斜機能部材である閉塞体523を固着し、この閉塞体523の外側端部付近で給電体524が封止される。
この問題は、酸化銅等を含む別の部材や傾斜機能部材には、それらの性質上どうしても不純物が含まれざるを得ず、高圧水銀ランプの製造過程や点灯中に、当該不純物が発光部内の放電空間内に混入することが避けられないことに起因するものと考えられる。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、耐圧強度を増すために封止部内部に傾斜機能材料や石英ガラスに他の物質を添加した材料などを介在させた高圧放電ランプにおいて、非常に簡単な方法により、特に、発光部内の放電空間に混入している不純物を除去し、発光部における黒化および失透の発生を可及的に抑制できる高圧放電ランプの製造方法を提供することを目的とする。
これにより、発光部内部の不純物がイオン化されやすくなり、それだけ電界の作用により発光部内の放電空間から放出しやすくなる。
<第1の実施の形態>
本願発明者は、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプを含む)において、発光部内の圧力が高くなった場合に封止部の耐圧を上げる新たな構成を発明し、耐圧強度の信頼性を向上させることに成功し、これに基づき特許出願した(特願2002−351523号、特開2003−234067)。
(1)高圧水銀ランプの構成
図3(a)、(b)に、本実施の形態に係る高圧水銀ランプ(以下、単に「ランプ」という。)1100の構造を示す。
図3(a)に示すように封止部2は、発光部1の内部の気密性を保持する部位であり、発光部1から延在した第1のガラス部(側管部)8と、第1のガラス部8の内側(中心側)の少なくとも一部に第2のガラス部7が介在する。
具体的に本実施の形態では、発光部1の寸法は、外径10mm程度、内径5mm程度、放電空間の容量0.06cc程度としている。また、第2ガラス部7の発光部1側の端面から発光部1の放電空間9までの距離Hは、約1mmであった。
ここで、封入するハロゲンは、単体の形態だけでなく、ハロゲン前駆体の形態(化合物の形態)のものでもよく、本実施の形態では、ハロゲンをCH2Br2の形態で発光部1内に導入している。
このようにランプ1100の封止部2において、給電体である金属箔4の放電空間9側の一部を第2のガラス部7を介して第1のガラス部8内に封止することにより、耐圧強度が飛躍的に増大する(40MPa〜50MPa)ことができる。これは、封止部2において圧縮歪み、特に封止部長手方向に圧縮応力が発生しているからであると考えられる。
図4(a)および図4(b)は、封止部2の長手方向(電極軸方向)に沿った圧縮歪みの分布を模式的に示しており、図4(a)は、第2のガラス部7が設けられたランプ1100の構成の場合、一方、図4(b)は、第2のガラス部7のない従来のランプ1100'の構成(比較例)の場合を示している。
図5(a)に示すように、ランプ1100の封止部2のうち、第2のガラス部7の領域7a内の部分が、第1のガラス部8と異なる色(図では白い部分7a)となっているところがあり、第2のガラス部7に圧縮応力(圧縮歪み)が存在していることがわかる。
このように圧縮応力を生じる原因は、石英ガラスとバイコールガラスの軟化点および歪点の相違にあると考えられている。この点については、上掲の特開2003−234067号公報に詳しいので、ここでの詳しい説明は省略するが、要するに側管部を加熱して第1と第2のガラス部を共に軟化させて封止した後に、軟化点の高い外側の第1のガラス部8が先に硬化してしまい、第2のガラス部7は、硬化した第1のガラス部8内部の拘束された空間内において自由度のない状態で硬化するために内部で圧縮応力が生じると考えられる。
因みに、第1のガラス部8である石英ガラスの軟化点は、約1650℃であり、第2のガラス部7であるバイコールガラスの軟化点は、1530℃であって両者には100℃以上も差がある。
このような封止部内部における圧縮応力の存在と、耐圧強度の向上の直接的な因果関係は、明確に解明されているわけではないが、第2のガラス部7の長手方向に圧縮応力が加わっていると、金属箔4からの応力の発生を抑制することができるからであると推測される。
(3)ランプの製造方法
次に、本実施の形態に係るランプの製造方法について説明する。
以下、図6から図12を参照しながら、本実施の形態に係るランプ1100の製造方法を詳しく説明する。
(3−1)ランプ形成工程
まず、図6に示すように、ランプ1100の発光部1となるべき発光部形成予定部1'と、発光部形成予定部1'から延在した側管部2'とを有する放電ランプ用ガラスパイプ80を用意する。
また、図7に示すように、別途、第2のガラス部7となるガラス管70を用意する。本実施の形態のガラス管70は、外径(D1)1.9mm、内径(D2)1.7mm、長さ(L)7mmのバイコール製ガラス管である。ここで、ガラス管70の外径D1は、ガラスパイプ80の側管部2'に挿入できるように、側管部2'の内径よりも小さくしてある。
次に、図9に示すような、別途作製した電極構造体50を用意しておき、ガラス管70が固定された側管部2'に挿入する。電極構造体50は、電極棒3と、電極棒3に接続された金属箔4と、金属箔4に接続された外部リード5とから構成されている。電極棒3は、タングステン製電極棒であり、その先端にはタングステン製コイル12が巻きつけられている。コイル12は、トリウム−タングステン製のものを用いてもよい。また、電極棒も、タングステン棒だけでなく、トリウム−タングステンから構成された棒を使用してもよい。
図11は、図10のc−c線における断面構成を示す図である。
次に、電極構造体50挿入後のガラスパイプ80の両端を、気密性を保ちながら、回転可能なチャック82に取り付ける。
電極棒3を回転中心軸として、矢印81の方向に、ガラスパイプ80を回転させ、側管部2'およびガラス管70を加熱・収縮させて、電極構造体50を封止することにより、図12に示すように、側管部2'であった第1のガラス部8の内側に、ガラス管70であった第2のガラス部7が設けられた封止部2を形成する。
水銀6の導入後、他方の側管部2'についても上記と同様の工程を実行する。すなわち、まだ封止されていない側管部2'に電極構造体50を挿入した後、ガラスパイプ80内を真空引きして(好ましくは、10-4Pa程度まで減圧して)、希ガスを封入し、次いで、加熱封止する。この時の加熱封止の際は、水銀が蒸発するのを防ぐため、発光部形成予定部1を冷却しながら行うことが好ましい。このようにして、両方の側管部2'を封止した後、側管部2'の不要な部分を切除することにより、図3に示したランプ1100の構造が完成する。
(3−2)電界印加工程
電界印加工程は、ランプの少なくとも発光部1に電界を印加することにより、発光部1内部の不純物を除去する工程であり、本実施の形態では、ランプ完成後の初期点灯(エージング)の際に実行される。
20は、ランプの点灯装置であり、直流電源21とバラスト22とからなり、バラスト22から出力される交流電圧が、ランプ1100の一対の外部リード線5のC,Dに接続される。
図14は、上記点灯装置20の、とりわけバラスト22の構成を詳しく示すブロック図である。直流電源21は、交流電源(AC100V)(図示せず)に接続され、所定の直流電圧をバラスト22に供給する。バラスト22は、ランプ1100が点灯に必要とする電力を供給するためのDC/DCコンバータ23と、このDC/DCコンバータ23の出力を所定の周波数の交流電流に変換するDC/ACインバータ24と、始動時にランプ1100に高圧パルスを重畳するための高圧発生器25と、ランプ1100のランプ電流を検知するための電流検出部26と、ランプ1100のランプ電圧を検知するための電圧検出部27と、DC/DCコンバータ23およびDC/ACインバータ24の出力を制御する制御部28とを備えている。
図13に戻り、電界印加工程を実施する装置には、点灯装置20における直流電源21とは別に、直流電源30が備えられており、その出力端子Aが点灯装置21のグランド出力(GND)に接続されると共に、出力端子Bからは所定の負の電圧が出力される。
本実施の形態では、矩形波電流により交流点灯させているため、点灯中、C側、D側の電極が交互にGNDになることになるが、C側、D側の電位差は、ランプ電圧と同等であり、60〜90V程度となる。GNDがC側、D側のいずれである場合でも、発光部内の電極と導電線10の間に約300Vの電位差が生じる。直流点灯形のランプの場合にも、C側、D側いずれかがGNDに固定されることになるだけで効果は同じである。
このような電界印加工程による効果を確認すべく、従来通り、電界を印加せずに初期点灯を行ったランプと、電圧を印加して初期点灯を行ったランプとで比較した。
具体的に、ランプ1100と同じ構成で電界を印加していないランプを15本用意し、そのうち5本を従来通りの方法で点灯させると共に、残りの10本には図13に示す通り、封止部2に導電線10を巻回して直流電源30から−300Vの電圧を印加しながら点灯した。
これに対して、電圧を印加した本発明品は、10本とも黒化することなく、Na発光も観測されなかった(図15(b))。
同表からも明らかなように、従来品では、発光部1のNa含有量が、0.61ppmであるのに対し、本発明品では、その6分の1に近い0.11ppmまで低減されている。
次に、上記のように黒化、失透が抑制されるメカニズムについて考察する。
ランプの安定点灯中、電極棒3の間ではアーク放電が起こっており、その温度は最高で6000℃以上にも達する。そのため、発光部1の温度が上昇し、1000℃以上になる。このような高温下では、放電空間9内、および発光部1を形成するガラス中の不純物がイオン化すると考えられる。
特に、黒化、失透に悪影響を及ぼすのは水素、および、アルカリ金属(カリウム、リチウム、ナトリウム)などのプラスイオンであるため、本電界印加工程により放電空間9内の不純物を低減することができたものと推測される。
また、電界印加工程により放電空間9内の水素(H2)の量も大幅に低減していることも確認されている。従来は、放電空間9内の水素低減と発光管を形成するガラス部材の不要な歪の除去を兼ねて、ランプ封止後の適当な段階でランプ全体を所定時間真空ベークする工程が必要とされていたが、上記電界印加工程の実施により、この真空ベーク工程の時間を大幅に短縮できるものである。
次に、本発明に係るランプ製造方法における第2の実施の形態について説明する。
以下の実施の形態においては、ランプ形成工程は第1の実施の形態と同じであり、電界印加工程のみが異なるので、この点を中心に説明する。
図17は、本第2の実施の形態における電界印加工程の概要を示す図である。
本実施の形態では、この電界印加工程は、ランプ1100を1100℃の温度に加熱しつつ数時間行った。この加熱は、ランプ1100の電極および導電線10が酸化しないように、加熱炉内をAr雰囲気にして行ったが、N2雰囲気であっても真空であっても良い。
本実施の形態においても、有効にランプの黒化、失透が抑制された。
次に、第3の実施の形態に係る電界印加工程について説明する。
本実施の形態においては、ランプを形成する前段階で、発光部1、封止部2の材料となるガラスパイプから不純物を抜くようにした点に特徴がある。
図18は、本第3の実施の形態における電界印加工程の概要を示す図である。
そして、ランプに巻いた導電線10および金属棒2010をそれぞれ直流電源の出力端子B、Aに接続して、金属棒2010をGNDにして、導電線10に−300Vを印加し、この状態でガラスパイプ2000を加熱炉内で過熱した。
本実施の形態においても、ガラスパイプ2000中の不純物はイオン化し、水素やアルカリ金属などのプラスのイオンはガラスパイプ外部へ放出されることになる。
(a)初期にランプを点灯したときの不純物による発光スペクトルが極端に少なくなる(図15(b)参照)。
これは電界を印加させることにより、発光部内の放電空間中の不純物が発光部の材料内か発光部の外に移動したことに起因する。発光スペクトルの差違は、特にバイコールガラス製の第2のガラス部や傾斜機能材料を封止部に使用した場合には顕著に現れる。
特に、Naの含有量の差異は顕著であり、この点から本発明に係るランプを発光部1の単位体積当りのNa含有量が、この発光部から延在した第1のガラス部の単位体積当りのNa含有量よりも少ない構成として特徴付けることもできる。
<ランプユニットおよび画像表示装置>
(1)ランプユニットの構成
ランプを画像表示装置の光源として使用する場合、光束の集光効率を向上させるため、一般的に凹面反射鏡と組み合わせたランプユニットとして構成される。
同図に示すようにランプユニット100は、凹面反射鏡103内に、ランプ1100が、その一対の電極棒3の電極間距離の中心と凹面反射鏡103の焦点位置とがほぼ一致するように、かつランプ1100の長手方向の中心軸Xと凹面反射鏡103の光軸(図1では前記中心軸Xと一致)とがほぼ平行になるように配置されてなる。
他方の外部リード線5(図19では図示せず)は、ランプ1100の一方の封止部2の端部に接着剤(図示せず)によって固着された口金116に電気的に接続されている。
凹面反射鏡103は、前方に開口部117を、後方にネック部118をそれぞれ有し、かつ内面が、例えば回転放物面または回転楕円面等の形状であって、その表面に金属等が蒸着されて反射面119が形成されている。
なお、開口部117には、図示はしていないが、前面ガラスが接着剤等によって固着され、内部に塵埃などが混入するのを防ぐようになっている。
(2) 次に、このようなランプユニット100を用いた画像表示装置の一例として、3板式液晶プロジェクタについて説明する。
同図に示すように液晶プロジェクタ150は、光源としてのランプユニット100と、ミラー128と、ランプユニット100からの白色光を青、緑、赤の三原色に分離するためのダイクロイックミラー129,130と、分離された光をそれぞれ反射するミラー131,132,133と、分離された三原色について、それぞれ単色光画像を形成するための液晶ライトバルブ134,135,136と、フィールドレンズ137,138,139と、リレーレンズ140,141と、液晶ライトバルブ134,135,136をそれぞれ透過した光を合成するダイクロイックプリズム142と、投射レンズ143とを備えている。そして、画像表示装置からの画像は、スクリーンなどの被投射面144上に投影される。
ランプユニット100は、既述の製造方法によって製造されたランプ1100を光源として用いているので、照度維持率を向上させることができ、長寿命化を図ることができる。さらに、このような照度維持率の高いランプユニット100を用いた画像表示装置においては、ランプユニット100を頻繁に交換する必要がないので、そのメンテナンスコストを低減することができる。
<変形例>
なお、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に限られないことは言うまでもなく、例えば、さらに次のような変形例を考えることができる。
電圧を印加する方法は、上記各実施の形態に限定されない。発光部内部と発光部外部に電位差が生じる方法であれば、手段を問わない。
例えば、上記第1の実施の形態では、導電線10を一対の封止部2にそれぞれ10回巻回したが、巻回数はこれより多くても少なくてもよく、例えば、図21(a)に示すように、導電線51,52をそれぞれ一巻きさせるだけでも同様な効果が得られる。また、図21(b)のように、板状もしくは棒状の導電部材12を発光部付近に配置しても良い。さらに、図22(a)に示すように筒状の電極53'の内部にランプ1100を挿入すれば、より効果的に不純物の放出が可能になるであろう。
ここで、上記図21(a)および図22(b)の例を利用して、具体的に電界印加工程を実施する場合の例を、それぞれ変形例1、2として説明する。
図23は、図21(a)の構成を利用した、電界印加工程の変形例を示す図である。
本変形例1におけるランプ1100は、発光部1が、外形形状がほぼ球状またはほぼ回転楕円体状であり、最大外径が12mm、最大肉厚が2.7mm〜3mmであり、封止部2は、直径6mmの円柱状である。ここで、最大外径は、発光部1の外形形状がほぼ回転楕円体状の場合、短軸方向における最大外径を示す。発光部1の内容積は例えば0.2ccである。
また、発光部1内には、水銀のほか、例えばアルゴンガスやキセノンガス等の希ガス、および例えば臭素等のハロゲンがそれぞれ封入される。水銀の封入量は0.15mg/mm3以上、実使用の範囲としては0.35mg/mm3以下が好ましい。希ガスの封入量は5kPa〜40kPa程度である。ハロゲンの封入量は10-7μmol/mm3〜10-2μmol/mm3である。
カリウム 10ppm
ナトリウム 20ppm
そして、電極棒3のうち封止部2内に位置する部分と、封止部2を形成する石英ガラスとの間には、第1の実施の形態と同様にバイコールガラスからなる筒状の第2のガラス部7(図23では図示せず。図3参照)が介在している。
SiO2:96重量%以上
Al2O3:0.5重量%
B2O3:3.0重量%
Na2O:0.04重量%
そして、上記ランプ1100の発光部1と封止部2との境界部分の外周に、線径が0.2mm〜0.5mm、例えば0.2mmである鉄、クロムおよびアルミニウムの合金からなる線状の導電線51,52が近接または接触するように1ターンずつそれぞれ巻き付けられている。
電界印加工程において、ランプ1100を、水平配置となるように保持し、外部リード線5,5をバラスト22に接続すると共に、導電線51,52を別の直流電源30の出力端子Bに接続する。直流電源21の一方の端子と、直流電源30の出力端子Aとは同電位となるように接続されている。
したがって、安定点灯時においては、直流電源21の一方の端子の電位を基準(0V)にすると、両電極5の電位は0V〜100Vの範囲で変動しており、導電線51,52には−50V以下の電圧が印加される。
この状態で5分以上、好ましくは15分以上、さらに好ましくは3時間〜10時間以上放置する。この放置時間は印加直後からの時間である。
この間、ランプ1100は点灯されているので、少なくとも発光部1は所定の温度、例えば800℃に保たれている。また、このとき通常の点灯試験(初期点灯)も兼ねている。
その後、ランプ1100を自然冷却または強制冷却し、導電線51,52を取り外して、最終的な製品として完成する。
本発明品において、300時間点灯経過後、および2000時間点灯経過後における発光部1の内面の黒化の有無、失透の有無、および5時間点灯時間後の照度を100%とした場合の照度維持率(%)をそれぞれ測定したところ、図24の表2に示す通りの結果が得られた。
また、ここでの「照度維持率」は、上記ランプユニットを画像表示装置(図20参照)に搭載して40インチのスクリーンに投影した場合の平均照度維持率(%)である。
さらに、比較のため、ランプ1100の製造過程において、電界を印加させないで通常どおりの点灯試験のみを行った点を除いて本発明品と同じ製造方法を用い、かつ同じ構成を有しているランプユニット(以下、「比較品」という)についても、本発明品と同じ測定を行い、その結果を表2に併せて示す。
表2からも明らかなように、本発明品は、2000時間点灯経過後であっても発光部1に失透や黒化はほとんど見られず、照度維持率も74%を維持していた。一方、比較品は300時間点灯経過後においてすでに発光部1の内面が著しく失透していると共に、黒化しており、照度維持率も85%であり、さらに点灯時間2000時間を経過する前には全数が失透により内部温度が上昇し、発光部1が膨れ上がり変形していた。
特に、ランプ1100を点灯させることによって発光部1を所定の温度以上に保っているので、特別な加熱のための設備を用いることなく、発光部1を所定の温度以上に保つことができ、その結果、設備コストを抑えることができると共に、製造過程において通常行われるランプ点灯試験と兼ねることができるため、効率よく、短時間で前記不純物の除去作業を行うことができる。
さらに、導電線51,52が発光部1の外面のうち上方に位置する部分に近接または接触していないので、使用時に発光部1の上方に位置する部分に、前記不純物、特にアルカリ金属が集中して誘引されないようにすることができ、その部分の石英ガラスが失透するのを抑制することができる。
次に、本発明品において、導電線51,52への印加電圧を0V、−25V、−50、−100V、および−200Vに変化させた場合の1000時間点灯経過後と2000時間点灯経過後との照度維持率(%)をそれぞれ測定したところ、図25の表3に示す通りの結果が得られた。
一方、印加電圧が−50Vを越える、例えば−25Vの場合では点灯経過時間が1000時間であれば照度維持率は71%あるものの、点灯経過時間が2000時間に至るまでに発光部1が失透によって膨れ上がり、変形してしまった。
なお、上記図23の例では、導電線51,52の材料として鉄、クロムおよびアルミニウムの合金を用いた場合について説明したが、他にタングステンやモリブデン等の特に耐熱性の高い金属でも上記と同様の効果を得ることができる。また、導電線51,52の線径は、上記0.2mm〜0.5mmのものに限らず、それ以外の異なる線径でもよく、また形状についても例えば板状であっても上記と同様の効果を得ることができる。
さらに、図23の例では、ランプ1100が水平配置された状態で点灯されることを想定して、導電線51,52を発光部1と封止部2との境界部分に巻き付けた場合について説明したが、ランプ1100の長手方向の軸が鉛直方向に対して45度以上の範囲内にある状態であれば、導電線51,52を発光部1と封止部2との境界部分に巻き付けることにより、上記と同様の効果を得ることができる。
(1−2)変形例2
この変形例2では、図22(b)に示した電界印加方法を用いている。
上記変形例1と同様な仕様のランプ1100を形成した後、図26に示すようにランプ1100を水平配置すると共に、例えば銅製の四角い平らな板状の導電部材54,55を発光部1を挟むようにほぼ平行に対向配置する。
なお、失透や黒化の発生場所が主として発光部1であることを考慮すると、少なくとも発光部1全体を覆うことが好ましい。図26の例では、導電部材54,55のランプ1100の中心軸方向の長さを発光部1の同方向の寸法とほぼ同じとし、中心軸と直交する方向(図26の紙面と直交する方向)における幅は、発光部1における径とほぼ同じになるようにしている。
次に、図26に示すように、このランプ1100の外部リード線5,5を、バラスト22に接続すると共に、導電部材54,55をそれぞれ直流電源30に接続する。
この変形例2に係るランプ1100の製造方法によっても、上記した各実施の形態、変形例1におけるランプ1100の製造方法と同様に、発光部1内の空間に存在する不純物やランプに使用されている部材(電極棒3、封入物である臭化水銀、および第2のガラス部7)中に含まれている不純物、特にアルカリ金属を印加した電界によって誘引させることができ、石英ガラス中に拡散させて発光部1の外部へ放出させることができるため、ランプの使用中において、発光部1の石英ガラス部分が失透するのを抑制することができると共に、発光部1の内面が黒化するのを防止することができる。
また、変形例2では、導電部材54,55を、発光部1の丁度上下に設置した場合について説明したが、図26の状態を基準にして発光部1の左右や、手前側と奥側とに設置した場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
(2)電界印加工程の時期等について
上述したように電界印加工程において、ランプを点灯して発光部1を加熱する場合には、当該電界印加工程は、ランプの初期点灯時に行うことが望ましい。初期点灯(エージング)の工程は出荷前に必ず必要であり、このときに電界印加工程を合わせて行うことにより工程時間が削減できるからである。
また、電界は、最低でも5分間は印加する必要があり、望ましくは2時間以上印加するとよい。電界の印加時間の上限は、特に規定されないが、黒化や失透を抑制するに必要な限りで電界印加工程を実施すればよいので、上限の時間は、具体的には印加する電界の強さや加熱温度などによって、製造コストとのバランスから自ずと決定されるものである。
また、加熱箇所は少なくとも発光部であればよく、その温度も放電空間内のほとんどの不純物がイオン化するために必要な温度(600℃)以上が望ましく、発光部1の素材が石英ガラスの場合には、再結晶化をしないため上限は1100℃までとなる。
(3)ランプ構造の変形例について
(3−1)上記実施の形態においては、第2のガラス部7は、金属箔4の電極棒3との接続部位を囲む位置に配設されていたが、配設位置にこの部分のみに限らない。図27に示すように金属箔4の外部リード5との接続部側の端部を覆うように配設してもよいし、図28のように金属箔4の全体を覆うようにしても構わない。耐圧強度をより増加させるためには、図28のような構成にする方が望ましいが、第2のガラス部7の材料中に不純物が多いことや部品コストの点を考慮すると、第2のガラス部7の部分は、できるだけ少ない量が望ましく、また、封止部2のクラックは、放電による熱の影響により放電空間により近い側に生じやすいことを考えるならば、図3に示すように電極棒3との接合部を覆うように一部分のみに設ける方が望ましいであろう。
なお、第2のガラス部7は、上述のように第1のガラス部8よりも軟化点が低くなることにより、封止部内部に圧縮応力を生ぜしめる役目を果たす。シリカ(SiO2)の軟化点を下げるための添加物としては、Al2O3およびBのうちの少なくとも一方が含まれていればよい。しかし、これらをあまり多く添加すると軟化点が低くなり過ぎてしまい、適当な圧縮応力が得られない場合があり、また、放電空間に混入する不純物の量も不要に多くなってしまうので、SiO2は、70重量%以上99重量%未満が望ましく、添加するAl2O3は、15重量%以下、Bは、4重量%以下が望ましい。
すなわち、ランプ形成工程において、バイコールガラスからなる図7に示すガラス管70の代わりに、これとほぼ同寸法で傾斜機能材料からなる管(以下、「傾斜材料管」という。)71を側管内に挿入して封止部2を形成する。傾斜材料管71は、例えば、石英粉末とモリブデンやタングステンなどの金属粉を混ぜて加熱成形してなり、この際、内側の部分ほど金属粉72の含有量が多くなるように形成されている。
傾斜機能部材を介在させる箇所は、上記バイコールガラスを利用した第2のガラス部7の場合と同様、第2金属箔4の電極棒3との接続位置を含む端部だけに限らず、図27や図28に示す箇所であってもよい。
図30は、その一例として傾斜材料管が2層構造の場合における封止部2の構造を示すものである。
ここでは、金属箔4全体を覆うように2層の傾斜部材管73が配されている。図31は、図30の傾斜材料管73のd−d線における矢視断面図である。同図に示すよう傾斜材料管73は、第1の傾斜材料74と第2の傾斜材料75の2層構造となっており、金属箔4、第1の傾斜材料74、第2の傾斜材料75、第1のガラス部8の熱膨張係数を、それぞれK1、K2、K3、K4とした場合に、K1>K2>K3>K4となるように第1、第2の傾斜材料が選定される。具体的な材料として、例えば、シリカに混入する金属粉の量を違えた2種類の材料を考えることができる。なお、このような多層構造の傾斜材料管の覆う箇所も、金属箔4の長手方向の一部分であっても構わない。
(3−3) また、上記実施の形態では、金属箔4の一部または全部を第2のガラス部もしくは傾斜材料を介して封止するようにしたが、他の電極構造体を使用した場合には、金属箔ではなくその封止部分に存在する給電体の一部もしくは全部について上記第2のガラス部もしくは傾斜材料を介して封止する構成になる。この場合、給電体は電極軸そのものである場合もありうる。
(3−5)上記実施の形態においては、ダブルエンド型の高圧水銀ランプの製造方法について説明したが、シングルエンド型のものであっても構わないし、高圧水銀ランプに限らず、例えばキセノンランプやハロゲンランプなど、およそ封止部を有して点灯時に内部圧が高くなる高圧放電ランプ一般に、本発明の製造方法が適用される。
すなわち、本発明に係る製造方法は、水素やアルカリ金属(カリウム、リチウム、ナトリウム)などの不純物が発光部内に混入することで生じる黒化・失透を起こすおそれのある全ての放電ランプや、放電効果を利用した表示用パネルにも適用可能である。
Claims (20)
- 内部に一対の電極が配設されると共に発光物質が封入されるガラス製の発光部と、前記発光部から延在した第1の部材内に前記電極に接続された給電体を封止して発光部内部を気密に保持する封止部とを有する高圧放電ランプの製造方法であって、
前記給電体を、その長手方向における一部の周囲に第2の部材を介在させた状態で、第1の部材内に封止する封止工程と、
前記発光部を、その内部に存在する不純物をイオン化させるために必要な温度以上に保持し、かつ当該発光管を形成するガラス材料中に前記不純物を拡散させるように当該発光部に当該発光部外部から作用する電界を印加する電界印加工程と、
を含むことを特徴とする高圧放電ランプの製造方法。 - 前記発光部は石英ガラス製であって、前記電界印加工程における前記必要以上の温度は、600℃以上1100℃以下の範囲の温度であることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記第2の部材の軟化点温度は、前記第1の部材の軟化点温度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記第1の部材は、SiO2を99重量%以上含み、前記第2の部材は、SiO2が70重量%以上99重量%未満であることを特徴とする請求項3に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記第2の部材は、Al2O3およびBのうちの少なくとも一方を含み、Al2O3の含有量をP重量%とし、Bの含有量をQ重量%とした場合に、それぞれの材料における含有量の範囲は、0<P≦15、0<Q≦4であることを特徴とする請求項3に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記第2の部材の熱膨張係数は、前記給電体の熱膨張係数よりも小さく、前記第1の部材の熱膨張係数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記第2の部材は、前記給電体側から前記第1の部材側に移るに連れて、連続的あるいは段階的に熱膨張係数が小さくなることを特徴とする請求項6に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記発光部内に、発光物質として少なくとも水銀が封入されており、前記水銀封入量は、230mg/cc以上500mg/cc以下であることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記電界印加工程において、高圧放電ランプを点灯させることにより、発光部を前記必要以上の温度に保持することを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記電界印加工程において、高圧放電ランプを加熱炉内で加熱して、発光部を前記必要以上の温度に保持することを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記電界印加工程において、発光部内に存在する電極、および、発光部の外部に配された導電材料との間に電位差を与えることにより、発光部に電界を印加することを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記導電材料は、封止部の周囲に巻回された導電線であることを特徴とする請求項11に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記導電材料は、高圧放電ランプの発光部に対向する位置に配された金属板であることを特徴とする請求項11に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記導電材料は、高圧放電ランプの発光部に対向する位置に配された金属棒であることを特徴とする請求項11に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記電界印加工程において、発光部の外部に配された導電材料の電位が、電極に印加される電位よりも低いことを特徴とする請求項11に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記電界印加工程において、2枚の金属板の間に発光部を介在させて、当該2枚の金属板の間に電位差を与えることにより発光部に電界を印加することを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記電界印加工程において、前記発光部に印加する電界は、電界強度にして10kV/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記電界印加工程において、電界を印加する時間は5分以上であることを特徴とする請求項17に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記電界印加工程は、初期点灯の実行前もしくは初期点灯時に実行されることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- ガラスパイプを加工して、内部に一対の電極が配設されると共に発光物質が封入されるガラス製の発光部と、前記発光部から延在した第1の部材内に前記電極に接続された給電体を封止して発光部内部を気密に保持する封止部とを有する高圧放電ランプを製造する方法であって、
ガラスパイプに封止部を形成する前に、当該ガラスパイプの少なくとも発光部形成予定部を、その内部に存在する不純物をイオン化させるために必要な温度以上に保持し、かつ当該発光部形成予定部に当該発光部形成予定部外部から作用する電界を印加する電界印加工程と、
前記給電体を、少なくともその長手方向における一部の周囲に第2の部材を介在させた状態で、第1の部材内に封止する封止工程と、
を含むことを特徴とする高圧放電ランプの製造方法。
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