JP2004247124A - 高圧放電ランプおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】より信頼性を高めることができる高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】発光管1と側管部2とを備え、側管部2は、発光管1から延在した第1のガラス部17と、電極棒3と金属箔4との接合部および電極棒3の少なくとも一部を覆う第2のガラス部9と有し、第2のガラス部9における発光管1側の端部の前面は、電極棒3に設けられたコイル6に接している、高圧放電ランプである。
【選択図】 図1
【解決手段】発光管1と側管部2とを備え、側管部2は、発光管1から延在した第1のガラス部17と、電極棒3と金属箔4との接合部および電極棒3の少なくとも一部を覆う第2のガラス部9と有し、第2のガラス部9における発光管1側の端部の前面は、電極棒3に設けられたコイル6に接している、高圧放電ランプである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧放電ランプおよびその製造方法に関する。特に、一般照明や、反射鏡と組み合わせてプロジェクター、自動車の前照灯などの用途に使用され、点灯時に内圧が1気圧以上になる高圧放電ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
図23に、従来の高圧放電ランプの一例を示す。図23に示した高圧放電ランプは、発光管1と側管部2とから構成されており、側管部2は、発光管1から延在している。発光管1内には、電極棒3が対向して配置されており、電極棒3は、金属箔4に電気的に接続されている。なお、金属箔4の他端には、外部リード線5が電気的に接続されている。発光管1には、水銀7が封入されており、図示しないが希ガスも封入されている。このような高圧放電ランプは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
ここで、電極棒3は、タングステンを主たる材料としており、また、発光管1および側管部2は、石英ガラスを主たる材料としている。そもそも、タングステンと石英ガラスとは、互いに熱膨張係数が違うため、両者を密着させることは非常に困難である。そこで、高圧放電ランプにおいては、薄い金属箔4を塑性変形させることで、側管部2の石英ガラスと封着させ、それによって、発光管1内の気密を保持している。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−148561号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の高圧放電ランプには、ランプ点灯中、発光管1側の金属箔4の端部を起点として、ガラスに亀裂が入りやすいという問題があった。このような問題を解決するための取り組みは従来よりなされており、例えば、特開平11−7918号公報では、次のような技術が開示されている。モリブデン箔(金属箔4と同等品)は、貯蔵ロール上に巻き付けられたモリブデンテープを切断することによって作製するが、この切断の際に生じるモリブデン箔端部のまくれが、ガラスに亀裂あるいは割れ目を生じさせる要因となるので、当該技術では、この切断時にできるまくれを防止するために、モリブデン箔の圧延加工により、モリブデン箔の端部をくさび状に形成し、それによって、ガラスに亀裂が入ることを防止している。
【0006】
しかしながら、上記取り組みだけでは、金属箔の端部から発生するガラスの亀裂を必ずしも確実に防止できないことが、本願発明者の検討によりわかった。本願発明者が検討により導き出した、箔端部のガラスに亀裂が発生するメカニズムを以下に説明する。
【0007】
まず前提として、電極棒3と側管部2は、あたかも封着されているように見えるが、実はごくわずかな間隙8がある。例えばシュリンク封止行なった場合、電極棒3と側管部2との間隙8を、図21(a)中のA−A’の断面に沿って見てみると、これは、図21(b)に示すように、略円形の間隙8aであり、特に応力が集中する形状とはなっていない。しかしながら、金属箔4と電極棒3との接合部B−B’断面の間隙8は、図21(c)に示すように、金属箔4の箔エッジ部に沿って、鋭い切り欠け形状の間隙8bとなっている。間隙8bは、応力が集中する形状となっているので、ここを起点にして、ガラスに亀裂が入るのである。
【0008】
上記特開平11−7918号公報の技術では、箔端部をくさび状にするので、箔端部からの亀裂の発生については緩和できるかもしれないが、接合部の間隙8bに関する亀裂の発生まで抑制できるわけではない。
【0009】
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、より信頼性を高めることができる高圧放電ランプおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管から延在し、前記発光管の気密性を保持する側管部と、前記発光管内に放電アークを維持するために一端が配置された一対の電極棒と、前記側管部に配置され、前記電極棒の他端と電気的に接続された金属箔とを備え、前記側管部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側であって、前記電極棒と前記金属箔との接合部および前記電極棒の少なくとも一部を覆う第2のガラス部とを有しており、前記第2のガラス部における前記発光管側の端部の前面は、前記電極棒に設けられたコイルに接している。
【0011】
ある好適な実施形態において、前記第2のガラス部内には、前記電極棒の一部と、当該電極棒と前記金属箔との接続部が位置しており、前記発光管の側を前方としたときに、前記コイルが位置する領域の後方に、前記第2のガラス部が配置されており、前記第2のガラス部における前記前面は、前記第1のガラス部に接触していない。
【0012】
本発明の第2の高圧放電ランプは、一対の電極棒のそれぞれの一端が管内に配置された発光管と、前記発光管の両端から延在する側管部とを備え、前記側管部内には、前記電極棒の前記一端に対する他端に電気的に接続された前記金属箔が位置しており、少なくとも一方の前記側管部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられ、当該第1のガラス部の軟化点よりも低い第2のガラス部と、前記第1のガラス部と第2のガラス部との間に設けられ、前記第1のガラス部と前記2のガラス部との中間の軟化点を有する第3のガラス部とを含んでおり、前記電極棒のうち、前記少なくとも一方の側管部内に位置している部位の少なくとも一部には、コイルが設けられており、前記第2のガラス部内には、前記電極棒と前記金属箔との接続部が位置しており、前記第2のガラス部のうち前記発光管側に位置する部位は、前記コイルと前記第3のガラス部によって囲まれている。
【0013】
ある好適な実施形態において、前記第2のガラス部の前記前方に位置する前面は、前記コイルが位置する領域に接触しており、且つ、前記第2のガラス部の前記前面は、前記第1のガラス部に接触していない。
【0014】
ある好適な実施形態において、前記第2のガラス部は、銅、アルミニウム、鉄、ナトリウムおよびホウ素ならびにそれらの酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいる。
【0015】
ある好適な実施形態において、前記第2のガラス部は、シリカと、銅および酸化銅の少なくとも一方と、アルミナとを含んでいるガラスから構成されている。
【0016】
本発明の第3の高圧放電ランプは、一対の電極棒のそれぞれの一端が管内に配置された発光管と、前記発光管の両端から延在する側管部とを備え、前記側管部内には、前記電極棒の前記一端に対する他端に電気的に接続された前記金属箔が位置しており、少なくとも一方の前記側管部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられ、当該第1のガラス部の軟化点よりも低い第2のガラス部と、前記第1のガラス部と第2のガラス部との間に設けられ、前記第1のガラス部と前記2のガラス部との中間の軟化点を有する第3のガラス部とを含んでおり、前記電極棒のうち、前記少なくとも一方の側管部内に位置している部位の少なくとも一部には、円盤状構造体が設けられており、前記第2のガラス部内には、前記電極棒と前記金属箔との接続部が位置しており、前記第2のガラス部のうち前記発光管側に位置する部位は、前記円盤状構造体と前記第3のガラス部によって囲まれている。
【0017】
本発明の第4の高圧放電ランプは、一対の電極棒のそれぞれの一端が管内に配置された発光管と、前記発光管の両端から延在する側管部とを備え、前記側管部内には、前記電極棒の前記一端に対する他端に電気的に接続された前記金属箔が位置しており、少なくとも一方の前記側管部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられ、当該第1のガラス部の軟化点よりも低い第2のガラス部とを含んでおり、前記第2のガラス部のうち前記発光管側に位置する部位は、前記第1のガラスに接触していない。
【0018】
ある好適な実施形態において、前記高圧放電ランプは、高圧水銀ランプであり、前記発光物質として水銀が、前記発光管の内容積を基準に、150mg/cm3以上封入されている。
【0019】
ある好適な実施形態では、前記水銀は300mg/cm3以上封入されている。
【0020】
本発明の第1の高圧放電ランプの製造方法は、一端および他端の間にコイルまたは円盤構造体が配置された電極棒を用意する工程と、前記電極棒に、第1のガラスである石英ガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス筒構造体を挿入し、それによって、前記コイルまたは前記円盤構造体と前記他端との間に、前記ガラス筒構造体を配置した後、前記他端と金属箔とを溶接する工程と、前記電極棒、前記ガラス筒構造体および前記金属箔を含む電極組立体を、第2のガラスから構成された側管部に挿入する工程とを包含する。
【0021】
本発明の第2の高圧放電ランプの製造方法は、他端に金属箔が溶接された電極棒の一端に、第1のガラスである石英ガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス筒構造体を挿入する工程と、前記電極棒にコイルを溶接し、それによって、前記ガラス筒構造体を前記金属棒に固定する工程と、前記電極棒、前記ガラス筒構造体および前記金属箔を含む電極組立体を、第2のガラスから構成された側管部に挿入する工程とを包含する。
【0022】
ある好適な実施形態では、前記ガラス筒構造体を覆うように、前記第1のガラスと前記2のガラスとの中間の軟化点を有する第3のガラスから構成された更なるガラス筒構造体を配置する工程をさらに包含する。
【0023】
ある好適な実施形態では、前記第2のガラスの軟化点よりも高い温度で、加熱処理を行う工程をさらに包含する。
【0024】
ある実施形態において、高圧放電ランプの側管部は、発光管から延在した第1のガラス部と、第1のガラス部の内側であって、電極棒と金属箔との接合部および電極棒の少なくとも一部を覆う第2のガラス部とを有しており、第2のガラス層の発光管側の端部の前面は、電極棒に設けられたコイルの少なくとも一部に接している構成となっている。
【0025】
ある実施形態において、高圧放電ランプの側管部は、発光管から延在した第1のガラス部と、第1のガラス部の内側であって、電極棒と金属箔との接合部および電極棒の少なくとも一部を覆う第2のガラス部とを有しており、第2のガラス層の発光管側の端部の前面は、電極棒に設けられた円盤状金属体の少なくとも一部に接している構成となっている。
【0026】
ある実施形態において、前記円盤状金属体は、前記電極棒に一体成形されている。
【0027】
ある実施形態では、前記第1のガラス部と前記第2のガラス部との間に第3のガラス部を有しており、前記第3のガラス部の融点は、前記第1のガラス部の融点より低く、前記第2のガラス部の融点より高い。
【0028】
ある実施形態では、第2のガラス層は、銅、もしくは酸化銅、もしくはアルミナを含有している。
【0029】
ある実施形態では、点灯時、発光管内圧力は、30MPa以上になる。
【0030】
ある実施形態の高圧放電ランプの製造方法では、電極棒とコイルと金属箔と常温でガラス化している第1の筒状構造物を準備し、電極棒にコイルを挿入、溶接し、コイルの溶接された電極棒に第1の筒状構造物を挿入し、その後電極棒と金属箔を溶接する工程を含んでいる。
【0031】
ある実施形態の高圧放電ランプの製造方法では、電極棒とコイルと金属箔と常温でガラス化している第1の筒状構造物を準備し、電極棒に金属箔を溶接し、電極棒に第1の筒状構造物を挿入し、電極棒にコイルを挿入、溶接する工程を含んでいる。
【0032】
ある実施形態の高圧放電ランプの製造方法では、電極棒とコイルと金属箔と常温でガラス化している第1の筒状構造物を準備し、電極棒に第1の筒状構造物を挿入し、電極棒にコイルを挿入、溶接し、電極棒に金属箔を溶接する工程を含んでいる。
【0033】
ある実施形態では、少なくとも第1の筒状構造物の周りに、石英ガラスよりも融点が低く、第1の筒状構造物よりも融点が高い常温でガラス化している第2の筒状構造物を包む工程をさらに包含している。
【0034】
ある実施形態では、第1の筒状構造物の周りに、第2の筒状構造物を包んだ状態で、第1の筒状構造物の軟化点より高い温度で、加熱処理する工程をさらに包含している。
【0035】
ある実施形態において、前記発光物質として水銀が、前記発光管の内容積を基準に、150mg/cm3以上封入されている。ある好適な実施形態では、前記水銀は、220mg/cm3以上封入されている。
【0036】
ある実施形態において、前記電極組立体は、前記電極棒と、前記電極棒に接続された金属箔と、前記金属箔に接続された外部リード線とから構成されている。
【0037】
前記電極棒の少なくとも一部に、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成された金属膜が形成されていることが好ましい。
【0038】
ある実施形態において、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属を少なくとも表面に有するコイルが、前記電極棒の少なくとも一部に巻き付けられている。
【0039】
ある実施形態に高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の気密性を保持する封止部とを備え、前記封止部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、かつ、前記封止部は、圧縮応力が印加されている部位を有している。
【0040】
ある実施形態における高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の気密性を保持する封止部とを備え、前記封止部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、光弾性効果を利用した鋭敏色板法による歪み測定を実行すると、前記封止部のうち、前記第2のガラス部に相当する領域の少なくとも一部に、圧縮応力が観察される。
【0041】
ある好適な実施形態において、前記発光管は、チップレスの発光管である。
【0042】
前記歪み測定は、東芝製のSVP−200の歪検査器を用いて行えばよい。
【0043】
ある実施形態におけるランプユニットは、上記高圧放電ランプと、前記高圧放電ランプから発する光を反射する反射鏡とを備えている。
【0044】
【発明の実施の形態】
本願発明者らは、間隙8b周囲におけるガラスに亀裂が入ることを防止するために鋭意研究し、その結果、電極棒3と金属箔4の溶接部と、側管部2との間隙8bをなくし、応力の集中をなくすことで、箔端部を起点とするガラスの亀裂を防止し、ランプ寿命と安全性を高めた高圧放電ランプを実現することに成功し、そのことを特願2001−260745号明細書に開示した。
【0045】
そのランプの構成を図26に示す。なお、説明の簡素化を図るために、後述する図1中の構成要素と実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。図26に示したランプは、電極棒3と金属箔4の接合部が、側管部2と間隙なく封着した構成となっている。また、少なくとも電極棒3と金属箔4の接合部を含む、電極棒3の一部もしくは、金属箔4の一部もしくは、金属箔4部全体が、銅または酸化銅、またはアルミナ、または酸化鉄、または鉄、または炭酸ナトリウム、またはナトリウム、または酸化ボロンのいずれか少なくとも一つと、SiO2を含むガラス層9と密着していて、ガラス層9と接する一部にコイル状の金属体6を被膜している構成となっている。
このように、電極棒3と金属箔4の接合部を、隙間が存在しない構成にすることで、ランプの耐圧強度が向上し、また、点灯中でのリークによる不点灯もなくなった。
【0046】
しかしながら、図26に示したランプには、次のような問題が生じることを、本願発明者は、新たに見出した。すなわち、ランプを数多く製作した場合、ガラス層9と、側管部2の境界面にクラックが入るランプが製作される場合がある。
特願2001−260745号明細書で開示したランプ(比較例2)の耐圧強度は、図27に示すように、30MPaから40MPaとばらつきがあった。なお、従来のランプは、図23に示したランプであり、比較例1のランプは、図26に示したランプ(比較例2)から、コイル6を取り除いた構造のランプである。
【0047】
比較例2のランプについて、ガラス層9と側管部2との境界面にできるクラックに注目して解析しなおした結果、35MPa未満のランプには、ガラス層9と側管部2との境界面にできるクラックが入っていたことが新たに判明した。すなわち、同一製作条件下において、入ったり入らなかったりするこのガラス層9と側管部2との境界面にできるクラックが、ランプの耐圧強度のばらつきを大きくしており、これは品質を落とす可能性がある。
【0048】
そこで、なぜ同一製作条件下において、ガラス層9と側管部ガラスとの境界面にクラックが入ったり入らなかったりするのか、本願出願人は検討行なった。
【0049】
その結果、おそらく次のような理由で、ガラス層9と側管部2との境界面にクラックが入るのではないかと考える。すなわち、封止工程において、一旦加熱溶融された側管部2、ガラス層9は、封止後、冷却され、固化する。その際、ガラス層9は、側管部2よりも、歪点が低く、側管部2が歪点を通過した後に、ガラス層9が歪点を通過冷却する。そこで、ガラス層9が固化しつつ歪点を通過する際に、電極棒3の長軸方向に残留応力が入る。ガラスの冷却速度は、特に管理していないため、その冷却速度の違いにより、応力が強く残ったり、弱く残ったりする。このガラスに残る応力が強いと、ガラス層9と側管部2との境界にクラックが入るのだと考えられる。図28に、応力がクラックを発生させるイメージ図を示す。
【0050】
そこで、本願発明者は、製作ばらつきに左右されず、高耐圧強度ランプを安定供給でき、ランプ寿命と安全性をより高めた高圧放電ランプを実現すべく研究開発を行い、その結果、そのようなランプを完成させ、本発明に至った。
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本実施形態の高圧放電ランプの構成を模式的に示している。
【0051】
本実施形態の高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管1と、発光管1の気密性を保持する側管部2とから構成されている。側管部2は、発光管1から延在しており、発光管1内には、一対の電極棒3が配置されている。電極棒3の一端は、放電アークを維持するために発光管1内に露出して配置されている。側管部2内には、電極棒3の他端と電気的に接続された金属箔4が配置されている。
【0052】
側管部2は、発光管1から延在した第1のガラス部17と、第2のガラス部9とを有している。第2のガラス部9は、第1のガラス部17の内側であって、電極棒3と金属箔4との接合部を覆っており、また、電極棒3の一部も覆っている。ここで、第2のガラス部9の前面(すなわち、発光管1側の端部の前面)は、電極棒3に設けられたコイル6に接している。
【0053】
図1に示した本実施形態のランプと、図26に示したランプとでは、第2のガラス部9の前面がコイル6に接している点が異なる。加えて、本実施形態のランプの場合、第2のガラス部9の前面は、第1のガラス部17に接触していない。
つまり、図26に示したランプでは、電極棒3の径方向において、第2のガラス部9の前面(発光管1側の端部の前面)と、石英ガラス(発光管1から延在した第1のガラス部)とが密着している部分が存在するが、本実施形態のランプでは、そのような構成とはなっていない。
【0054】
さらに、本実施形態の構成について説明を続ける。図1において、発光管1は、石英ガラスを主なる材料とし、その内容積は、例えば約0.025ccである。発光管1から側管部2が延在しているので、側管部2の第1のガラス部8は石英ガラスから構成されている。発光管1には、発光種である水銀7が7.5mgと、図示しないが、アルゴンガスが200mbar(25℃時)封入されている。
【0055】
また、側管部2には、棒径0.25mmのタングステンを主なる材料とする電極棒3と、電極棒3に電気的に接続されたモリブデンを主なる材料とする金属箔4、そして更に金属箔4の他端には、外部リード線5が電気的に接続されている。
【0056】
側管部2に位置する電極棒3のまわりには、図2に示すような、断面直径60ミクロンのタングステン製のコイル6が配置されている。このコイル6の外径は、約0.42mmから0.52mmである。もともとコイル6は内径0.3mmになるよう巻かれているものの、巻き緩み等から出来あがり寸法はばらつきができる。
【0057】
上述したように、側管部2には、発光管1から延在した石英ガラスを材料とする第1のガラス部17の内側に、電極棒3と金属箔4との接合部および電極棒3の一部を覆う第2のガラス部9が設けられている。そして、この第2のガラス部9の発光管1側の端部前面は、コイル6に接している。また、電極棒3と側管部2との間と、コイル6と側管部2との間には、熱膨張係数の違いにより、電極の封止工程で自然と発生するごくわずかな間隙8がある。図1では、分かりやすくするために大きく間隙8を図示しているが、実際には目視で観察できないほど狭い隙間である。
【0058】
さらに、第2のガラス部9には、銅および/または酸化銅と、アルミナと、SiO2とが存在している。ここでは、SEM−COM社のSCY−2ガラスを用いた。第2のガラス部9と第1のガラス部(石英ガラス)17とは電極棒3の長軸方向では密着している。一方、第2のガラス部9の前面(発光管1側の端部)は、コイル6と接しているため、第1のガラス部17とは電極棒3の径方向では接していない。また、第2のガラス部9と第1のガラス部との電極棒3の長軸方向での境界部分は、互いに拡散し合うことで、混在している。また、第2のガラス部9と電極棒3は密着しており、また、第2のガラス部9と金属箔4も密着しており、其々の間に、間隙はない。
【0059】
封止工程後の側管部様子を、歪計で観察してみると、その差は明らかであった。観察は、電極棒3の長軸方向に残る第2のガラス部9に対して行なった。
【0060】
観察では、東芝歪検査器(SVP−200)を用いた。歪計は、一般にガラスに、偏光板を通過して生じた直線偏光を入れて観察する。その直線偏光の振動方向をUとする。Uは、u1とu2が合成されてできたものとみなす。ガラスに歪がない場合は、u1とu2は同じ速さでその中を通過する。しかし、ガラス内に歪が残り、応力Fが働いているときは、u1とu2は同じ速さでは通過しない。
この遅れた距離を光路差Rといい、光路差Rを観察することで、ガラスに残る歪の大きさを比較したり、ガラスにかかっている応力を測ったりすることができる。以下に、光路差Rと応力Fの関係式を表す。
R=C×F×L
ここで、Rは光路差(nm)、Fは応力(kg/cm2)、Lはガラスの厚み(cm)、Cはガラス材料の光弾性常数((nm/cm)/(kg/cm2))である。
【0061】
今回用いたSCY−2ガラスの光弾性常数は、不明だったので、そのままCとして計算した。Cとして計算しても、本測定に用いた比較ランプと、本実施形態のランプのガラス9は、同じくSCY−2ガラスを用いたので、応力Fを比較するためには、特に問題はないことを付言しておく。
【0062】
測定結果を示すと、比較ランプのガラス9に残るC×Fは約150〜400であったのに対し、本実施形態のランプのガラス9に残るC×Fは約40から140であった。つまり、本実施形態のランプの第2のガラス部9に残る応力は、著しく減少した。この観察により、第2のガラス部9に残る応力が、第2のガラス部9の端部にクラックを生じさせる可能性が減ったことがわかる。
【0063】
この応力の減少した原因は、詳しくは不明だが、おそらく以下のことが起こっているのではないかと推測される。すなわち、本発明の実施形態のランプは、第2のガラス部9と、コイル6が接しているため、両者の熱膨張係数の違いにより、封止直後に両者に隙間ができる。そこで、封止後、ガラス部9が冷却、固化してもそこに応力は残らない、と推測する。
【0064】
一方、第2のガラス部9と、第1のガラス部の、電極棒3の長軸方向の界面は、密着しているにもかかわらず、クラックがはいったりしない。この現象は、電極棒3の径方向に、第2のガラス部9と、第1のガラスが接していると、クラックが入る原因は、第2のガラス部9にある残留応力である、という発明が解決しようとする課題で述べた推測から一見矛盾しているように思える。しかし、本願発明者は、そのことを次のように考えた。
【0065】
すなわち、第2のガラス部9は、もともとSCY―2ガラス製の筒状構造物を配置し、加熱溶融してできている。この筒状構造物は、図13に示すように、厚みが0.1mmで、長さが1mmである。すなわち、この筒状構造物を電極棒3に挿入し、加熱溶融した結果、電極棒3の径方向に、第2のガラス部9は最高で0.1mmの厚さをもつ。第2のガラス部9の電極棒3の径方向の厚みは、加熱条件に依り、第2のガラス部が拡散することで、さらに薄くなる可能性がある。
それに比べて、電極棒3の長軸方向に第2のガラス部9は、最低でも1mmの長さを有している。第2のガラス部9の電極棒3の長軸方向の長さは、加熱条件により、第2のガラス部が拡散することで、さらに伸びる可能性がある。つまり、第2のガラス部9が冷却していくとき、電極棒3の径方向に収縮する量は、長軸方向に収縮する量の最高でも約10分の1なのである。
【0066】
この収縮量の違いにより、第1のガラス部と第2のガラス部9が密着している点では同じであっても、電極棒3の径方向ではクラックが発生し、電極棒3の長軸方向にはクラックが発生しないという、違いがでると推測する。
【0067】
以上の検討により、第2のガラス部9の発光管部1側端部にクラックを発生させない効果を得るために重要なことは、第2のガラス部9と、コイル6の位置関係において、電極棒3の径方向での接触面が、コイル6の外径とほぼ同等かそれ以下であることが重要であるとわかる。
【0068】
上記同等の意味する所は、図3のように、第2のガラス部9の、電極棒3の径方向でのコイル6との接触面が、コイル6の外径より大きくても、第2のガラス部9と第1のガラス部の断極棒3の径方向での接触面厚みが0.1mmより小さければ、第2のガラス部9の発光管部1側端部にクラックを発生させない効果に影響はない、ということである。これは、第1のガラスと第2のガラス部9が、電極棒3の長軸方向に密着していてもクラックを生じないことから、厚み0.1mm以下の密着であれば、クラックが発生しないと判る。また、例えば、図4のように、コイルと接触していない部分の第2のガラス部9の電極棒3の径方向が、コイルの径以上に大きくても、コイルと接触しているクラックを生じさせないという構成に影響はない。
【0069】
図26に示した構成を有するランプの製作を行なったところ、8本中4本にクラックが生じた。一方、本実施形態の構成を有するランプの製作を行なったところ、8本中8本が、クラックを生じなかった。
【0070】
同様に、図3に示した構成のランプと、図4に示した構成のランプにおいても、8本ずつ製作した結果、全数クラックが発生しなかった。
【0071】
次に、ランプの耐圧強度テストを行なった。測定用には、図5に示すようなランプを用いた。すなわち、一方側の閉塞側管部10は、図1構成の側管部2と同様の構成であり、電極は側管部10内に封止している。他方の開口側管部11は、封止せずに、開放状態である。この開口側管部11から高圧水を導入し、破壊する圧力を測定する。そのランプ破壊圧力を、ランプの初期耐圧とした。
【0072】
その結果、図6に示すように、図26に示した構成で製作したランプ(比較例)で、クラックが発生したランプの耐圧強度は、30MPa〜35MPaであった。また、破壊後ランプの様子を観察した結果、全数、クラックの部分を起点として破壊していることが観察できた。
【0073】
一方、本実施形態の構成で製作したランプ(本発明)の耐圧強度は、図6に示すように38MPa以上であった。
【0074】
もちろん、両者の製作条件は、ばらつき、管理を含めて同等である。つまり、構成の違いにより、ばらつきなく、より確実に耐圧強度を増したランプを製作することができたのである。
【0075】
また、例えば、コイル6にプラチナなどのガラスとの濡れ性を悪くするような物質をメッキを施すことにより、第1のガラスとコイル6の界面にできる微小なクラックの防止をすることもでき、さらに高耐圧構造の効果をあげることができるので、有用である。また、図7に示すように、第2のガラス部9で覆う電極棒3の部分に、コイル12を巻くと、ガラス部9と電極棒3との密着性がより向上し、高耐圧構造の効果をあげることができる。
【0076】
また、図8に示すように、コイル6を用いない構成であっても、同様の効果を得ることができる。図8に示した構成のランプに用いた電極棒15を図9に示す。 電極棒15は、例えば、外径が0.25mmの電極棒で、更に、電極棒の一部に外径が0.9mm、厚みが0.1mmの円盤状金属体16が成形されている。図8に示した構成のランプでは、円盤状金属体16と第2のガラス部9は、第2のガラス部9の発光管部1側端部の前面において接するように配置されている。図8に示した構成のランプにおいても、第2のガラス部9の端部にクラックが入ることなく、38MPa以上の高耐圧なランプを得ることができた。また、この構成の利点として、図1に示した構成のランプに比べて、より発光管1側に近い部分に第2のガラス部9を配置することができる。図1に示した構成のランプは、ランプ点灯動作温度時に、第2のガラス部9の融点よりも低い場所に、第2のガラス部9を配置するのが望ましい。それは、第2のガラス部9が、ランプの点灯中に溶け、発光管内1に第2のガラス部9の成分が進入するのを防ぐためである。しかし、図8構成のランプでは、円盤状金属体16が、第2のガラス部9の発光管1内への進入を防ぐため、第2のガラス部9の成分が、点灯中に、発光管1内に溶け出て行くことを防止することができる。
【0077】
また、円盤状金属体16の厚みについては、その厚み量により、第2のガラス部9のクラックがなくなる効果は変わらない。図10に示すように、例えば金属体16の部分が発光管1内にまで延在してもよい。この場合、電極棒15の成形が簡便になる。というのも、ここでは図示していないが、一般に電極棒の発光管1内にある端部は、放電アークを保持するため、コイルを巻くなどして、電極先端温度をコントロールしている。しかし、図10では、円盤状金属体16が、その電極先端コイルの役割をも兼ねてくれるため、新たに先端コイルを巻くなどの工程が減るのである。
【0078】
また、図8に示した構成の円盤状金属体16をより薄いものにしてもよい。これは、円盤状金属体16の厚みは、ランプを設計する時々の工夫により変更しても、第2のガラス部9のクラックをなくし、高耐圧構造のランプを製作するという効果に影響しないはずだからである。また、円盤状金属体16を薄くすると、それだけ、電極棒3の外径の細い部分が多くなり、その結果、電極棒3と第1のガラスとの間にできうる微小クラック発生が小さくなるという利点も得られる。
なぜなら、電極棒3と第1のガラスとの間の微小クラックは、両者の熱膨張係数の差より起こるが、電極棒3の外径が小さければ、その収縮量の違いも緩和されるからである。
【0079】
また、円盤状金属体16に例えばプラチナなどのガラスとの濡れ性を悪くするような物質を塗っておくと、封止時にプラチナなどは拡散し、電極棒とコイル6の界面にできる微小なクラックの防止をすることもでき、さらに高耐圧構造の効果をあげることができるので、有用である。
【0080】
また、図11は、第2のガラス部9と第1のガラス部17との間に、第3のガラス部20を設けたランプの構成を示している。この第3のガラス部20は、第1のガラス(石英ガラス)よりも融点が低く、第2のガラス部9よりも融点が高い。本実施形態では、コーニング社製バイコール(Vycor)を用いた。バイコールの組成は、例えば、シリカ(SiO2)96.5重量%、アルミナ(Al2O3)0.5重量%、ホウ素(B)3重量%である。
【0081】
なお、第3のガラス部20のガラスとしては、15重量%以下のAl2O3および4重量%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiO2とを含むものを用いればよい。ここで、第1のガラス部17のガラスとしては、SiO2を99重量%以上含むものを用いればよく、上述したように、例えば、石英ガラスを用いればよい。そして、第2のガラス部9のガラスは、銅、アルミニウム、鉄、ナトリウムおよびホウ素ならびにそれらの酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいるガラスであり、本実施形態では、シリカと、銅および酸化銅の少なくとも一方と、アルミナとを含んでいるガラスから第2のガラス部9を構成している。この例でも、第2のガラス部9は、SEM−COM社のSCY−2ガラスから構成しており、そのガラス組成は、例えば、SiO2:62重量%、Al2O3:13.8重量%、CuO:23.7重量%である。
【0082】
第2のガラス部9よりも融点の高いバイコール(第3のガラス)で、第2のガラス部9を覆うことにより、封止工程時、第2のガラス部9が加熱軟化した際に、第2のガラス部9が過剰に拡散することを防ぐことができる。第2のガラス部9が、拡散しすぎると、電極棒3と金属箔4の接合部付近に存在する第2のガラス部9が減り、電極棒3と金属箔4の接合部と、ガラスとの密着が悪くなり、隙間が形成されやすい。隙間が断続的に存在していても、密着力が低下するので、ランプの耐圧低下の要因となる。さらに、隙間が発光管1と貫通してしまうと、せっかくの電極棒3と金属箔4の接合部の隙間をなくすという有用な構成が得られなくなり、ランプの耐圧低下をもたらす。以上のような第2のガラス部9の溶けだしは、バイコールガラスを用いない構成においても、発生しない製作条件や使用条件がある。しかし、封止時のガラス温度など、管理することが必要であって、バイコールガラスを用いた図9に示した構成にすることで、より安定した高耐圧ランプを簡便に供給することができる。さらに、電極棒3と金属箔4の接合部だけでなく、金属箔4を第3のガラス部20で、覆うことにより、金属箔4と側管部ガラスとの密着性も向上し、よりランプの高耐圧化に貢献することができる。
【0083】
また、第3のガラスを、第1のガラスと同等の融点のガラスを用いても、第2のガラス部9の過剰な拡散を防止する効果はある。しかし、封止する工程において、側管部2の外側から加熱する方法では、第1のガラスの最外部と、第3のガラス部では、温度差ができる。特に、側管部内を減圧状態で加熱する場合、断熱効果もあり、第1のガラスと第3のガラスの温度差はより大きくなると推測される。実際、第3のガラスを、第1のガラスと同等の融点のガラスを用いると、第3のガラスの溶融が不充分で、封止後も第1のガラスと第3のガラスの境がすじとして残り、ランプの耐圧強度が低下する要因となったり、第3のガラスのシュリンクが不充分で空洞が残り、封止が不完全になったりする場合がある。もちろん、これは加熱条件などで改善できるが、第3のガラスとして、第1のガラスより低い融点のガラスを使用することにより、より安定した高耐圧ランプを簡便に供給することができる。
【0084】
また、ここでは、コイル6や、円盤状金属体16は、タングステン材料を用いたが、タングステンに限定されることはない。設計仕様に応じて、適宜、他の金属を用いることも可能である。
【0085】
本実施形態の構成を用いると、特に30MPa以上の圧力で点灯する時に、ランプ電圧を電極間距離でわった値(以下、単位あたりのランプ電圧と称す)が急激に高くなるという有用な利点が発生する。図12に、様々な動作圧のランプのランプ電圧を示す。ここで、動作圧とは、発光管1内に封入した水銀7量を、発光管1の内容積で割ったものと定義する。図12によれば、動作圧30MPa以上で、単位あたりのランプ電圧は、上昇する。単位あたりのランプ電圧の上昇がもたらす有用な利点を、以下に説明する。
【0086】
特に、液晶プロジェクター用光源などのミラーと組み合わせて用いるランプは、光利用率向上のため、より点光源に近づける工夫がなされている。具体的には、電極間距離を短くするが、その際、ランプ電圧が足りないという課題が発生する。ランプ内抵抗を決める電極間の距離が短くなることで、ランプ電圧が低くなると、その分ランプ電流を多く流す必要がある。しかし、適正なランプ電流は電極棒径等で決まり、それ以上に電流を流すと、電極棒の温度が過度に上昇し、電極材料が飛散し、発光管は黒化し、ランプ寿命を低下させる原因となる。そこで、電極棒を大きくして、電流を多く流そうとすれば、今度は、アークが太り、点光源化に反する。さらに極端な電極棒の太化は、輝点移動等によりアークが不安定動作になりやすい。また、電流をより多く流そうとすれば、安定器は大きく、高価になるため、システムの小型化、安価化に合わない。
【0087】
このような理由により、単位あたりのランプ電圧が上昇することは、ランプの点光源化にする際の技術的な課題を解決するという有用な利点である。また、もちろん耐圧向上により、例えば10MPa動作圧のランプに対しても、その安全性がより向上するという大きな利点がある。
(実施の形態2)
次に、上記実施形態1のランプの製造方法について説明する。
【0088】
図2に、電極棒3に溶接するコイル6を示す。コイル6は、コイル線径は約60ミクロンで、0.3mmの芯線に巻き、製作している。出来上がりのコイル内径は、およそ0.3mmから0.4mmである。これは、コイルの巻き緩みのために出来上がり内径がばらつくためである。出来あがりのコイル外径は、およそ0.42mmから0.52mmになっている。コイル6の全長は約5mmである。なお、電極棒3の外径は0.25mmで、長さは12mmである。
【0089】
さらに、図13に示すような、SEM−COM社製SCY―2ガラスからなる第1の筒状構造物103を準備する。この第1の筒状構造物103の外径は、約0.6mm、内径は約0.4mmである。また、長さは約1mmである。そして、金属箔4も準備する。金属箔4は、幅1.0mmで長さが6mmであり、モリブデンからできている。
【0090】
まず、図14に示すように、コイル6を電極棒3に挿入する。コイル6の配置は、金属箔と電極棒3との溶接部となる部分1mmと、第1の筒状構造物103が位置する部分1mmを空けるために、端部より約2mmの部分を空ける。そして、電極棒3とコイル6を溶接する。溶接時、コイルの変形防止のため、圧潰しないよう溶接圧力は極力小さくする方が良い。このようにして、コイル6付き電極棒100が作製される。
【0091】
次に、コイル6付き電極棒100に、第1の筒状構造物103を挿入する。さらに、コイル6に第1の筒状構造物103をしっかり接するように配置したまま、コイル6付き電極棒100と、金属箔4を溶接する。このようにして製作したのが、図15に示す電極組立体101である。ここで、外部リード線5や、金属バネ(保持部材)21は、あらかじめ、金属箔4に溶接していても良いし、金属箔4とコイル6付き電極棒100を溶接した後で、溶接してもどちらでもよい。
外部リード線5は、例えばモリブデンからなり、金属バネ21も、例えばモリブデンからなる。金属バネ21は、電極組立体101を側管部中に保持できるように外部リード線の端部に接続されている。
【0092】
以上の工程で電極組立体101を製作することにより、第1の筒状構造物103が、簡便に、また確実にコイル6と接した状態で保持される。また、この工程では、電極棒3にあらかじめ、図16に示すような放電を維持するためのコイル110が溶接していてもよい。放電を維持するためのコイルの清浄性は、ランプの性能に大きく影響する。放電を維持するためのコイルは、点灯中非常に高温となり、不純物などがあると、燃えて発光管内を黒く汚し、光の出力を低下させるためである。そこで、放電を維持するためのコイル110が溶接された状態で電極棒3を例えば酸などで洗浄したりすることは、ランプの性能向上に大きな効果がある。このように、コイル110付き電極棒3を洗浄した後で、コイル6や第1の筒状構造物103を取り付ける工程を踏むことで、より清浄性が向上した電極組立体101を製作することができ、ランプの性能向上も図ることが出来る。
【0093】
あるいは、電極棒3に金属箔4を溶接した後で、電極棒3に第1の筒状構造物103を挿入し、次いで、電極棒3にコイル6を挿入し、第1の筒状構造物103を、一方の端部は、金属箔4に接するように、他方の端部はコイル6に接するように配置し、その後、コイル6を電極棒3に溶接することによって、電極組立体101を作製しても良い。
【0094】
この工程の利点は、第1の筒状構造物103の配置をする際に、金属箔4で規制され、簡便に行なえる点である。すなわち、量産工程において、電極組立体101の製作を自動化しやすい点にある。
【0095】
また、まず、電極棒3に第1の筒状構造物103を挿入し、電極棒3の金属箔4と溶接する端部約1mmを残して配置し、それから、コイル6を電極棒3に挿入し、第1の筒状構造物103に接するように配置した後、コイル6と電極棒3とを溶接し、次いで、電極棒3と金属箔4とを溶接することによって、電極組立体101を作製しても良い。
【0096】
この工程の利点は、溶接工程を一度にまとめることが出来るという点である。すなわち、コイル6と電極棒3の溶接工程と、金属箔4と電極棒3の溶接工程を続けて行なうことが出来るので、工程が単純化できる。
【0097】
さらに、電極棒3の代わりに、図9に示したような構成の電極棒15を用いても良い。すなわち、電極棒15は、外径が0.25mmの電極棒で、更に、電極棒の一部に外径が0.5mm、厚みが0.1mmの部分(円盤状金属体16)が成形されている。この電極棒15は、棒径0.9mmのタングステン棒を、削り出して製作しても良いし、あるいは、上記電極組立体101の製作工程において、コイル6の代わりに円盤状金属体16を用いてもよい。円盤状金属体16を用いて製作することで、コイルよりも簡便に取り扱いが出来、また作製も簡単でコストを下げるという利点がある。
【0098】
また、図17に示すような、電極組立体105を用いて封止行なっても良い。この電極組立体105には、第1の筒状構造物103の周りに第2の筒状構造物106が配置されている。本実施形態では、第2の筒状構造物106として、例えば、コーニング社製のバイコールからなるガラス管を用いた。
【0099】
この第2の筒状構造物106を固定するために、電極組立体105を、真空炉にて1000℃30分焼成すれば、第1の筒状構造物103が溶け、第2の筒状構造物106と一体化する。
【0100】
あるいは、例えば、水素炉を用いて焼成すれば、電極組立体105の還元もでき、より不純物混入の恐れのないランプを製作することができる。この焼成温度は、第1の筒状構造物103よりも高く、第2の筒状構造物106よりも低ければ、第1の筒状構造物103と第2の筒状構造物106の一体化には、影響がない。つまり、1000℃という焼成温度や、焼成時間、その雰囲気に左右されるものではない。
【0101】
以上のようにして作製した電極組立体101を用いてランプを製造する工程を以下に説明する。
【0102】
図18は、別の工程で準備した管(放電ランプ用ガラスパイプ)102で、石英ガラスを加熱し膨張させて、所定の形状に形成された中空の略球状の発光管部1と、発光管部1の両端から延在する石英ガラス管の側管部13a,13bから構成されている。側管部13a,13bの径は外径約4mm、内径約2mmである。側管部13aは開口している。側管部13bの一端は閉じている。
【0103】
次に、図19に示すように、側管部13aより電極組立体101を挿入する。電極組立体101は、側管部13a内径よりも充分細い挿入棒104により押し入れる。この時、金属バネ21と、側管部13aの内径が接ることで、電極組立体101は固定されている。電極組立体101を挿入する様子は、例えばCCDカメラにより観察し、所定の位置に配置する。
【0104】
この状態で、管102内の排気を行なう。図20にその様子を示す。図20には示さないが、回転可能なチャックにて管102を保持し、矢印Aで示すように、管102を回転させる。そして、管102内を排気しながら、端部がまだ封止されていない側管部13aの端付近14aを、加熱し封止する。
【0105】
続いて回転可能なチャックにて管102を保持した状態で、図21に示すように、管102を矢印Bが示すように回転させ、まず、発光管部1と側管部13aの境界あたりの部分から、外部リード線5まで、加熱しシュリンクする。
【0106】
このとき、加熱の方向は重要である。すなわち、図21に矢印で示すように、発光管部1側から、外部リード線21の配している側へと加熱をする方が良い。
というのは、封止時に融点の低い第1の筒状構造物103が溶け流れて拡散する場合、発光管部1内へ拡散すると、発光管部1が、第1の筒状構造物103の成分により、汚染される。ガラスは、温度の高いところから、温度の低いところへ拡散されるので、発光管部1側から加熱をすることで、発光管部1内に第1の筒状構造物103の成分が拡散することを防ぐことが出来る。また、発光管部1側から、外部リード線5の配している側へと加熱をすることで、第1の筒状構造物103とコイル6の、電極棒3の径方向の接触面積が小さくなるという利点もある。すなわち、第1の筒状構造物103の外径は0.6mmでコイル6の外径0.52mmより大きい。しかし、封止後、第1の筒状構造物103とコイル6の、電極棒3の径方向の接触面積は、コイル6の外径より小さくなっている。ちょうど、図24のように第1の筒状構造物は、丸みを帯びて封止されている。これは、発光管部1側から、外部リード線5の配している側へと加熱をすることで、第1の筒状構造物103が、金属箔4側へ拡散し、第1の筒状構造物のコイル6側端部を細らせているためだと推測する。
【0107】
また、まず発光管部1と側管部13aの境部分から、第1の筒状構造物103の位置する手前まで加熱しシュリンク行ない(第1の封止と称す)、この第1の封止した部分が冷却した後で、ガラス筒103の位置する部分から、外部リード線5まで加熱封止(第2の封止)行なう方法でも良い。
【0108】
このように2段階に分けて、封止行なうことで、第2の封止工程中に第1の筒状構造物103が溶融し、第1の筒状構造物103内から発生する、ランプにとっては不純物となるガスが、第1の封止部の冷えたガラスに阻まれ、発光管内に進入するのを防ぐことができる。もちろん第1の封止部と第2の封止部は、全封止工程が終了した後に、その境界に隙間が残らぬよう充分溶融するのが望ましい。
【0109】
また更に、箔部を加熱する際、箔部のみ外部から圧潰(ピンチング)してもよい。その利点は、金属箔4と側管部ガラスとの密着がより向上する。
【0110】
次に、封止のための加熱をやめ、自然冷却する時、収縮量の違いにより、第1のガラスと電極棒3の密着は剥がれ、ごくわずかに間隙ができる。しかし、電極棒3と、第1の筒状構造物103が密着している部分は、間隙はできない。以上の工程において、発光管中に電極が1本封止された。
【0111】
ランプには電極が一対必要であるから、他端の電極を挿入するため、閉じてあった側管部13bの端部をカッターにより切断する。その開口部より、ランプの発光材料である水銀を封入する。この状態で上記と同様に電極を挿入する。
【0112】
次に、図22に示すように、管102内の排気を再び行なう。図22に示した符号7は、発光管内に封入した水銀である。図22には示していないが、回転可能なチャックで管102を保持し、矢印Dで示すように、管102を回転させる。そして管102内を真空排気して、今度は、乾燥した所定量のアルゴンガスを導入し、側管部13bの端付近14bを加熱封止する。
【0113】
そして、図21に示した側管部13aを気密封着する工程と同様の手順で、側管部13bに対して電極封止を行なう。ただし、発光管部には水銀や、希ガスが封入されているので、例えば水冷などによる冷却を行ないながら、気密封着を行なうことが好ましい。そして、図1と同じ形のランプを得るために、両側管端部のガラスをカッターにより切断し、外部リード線5を露出させる。この時点で、両電極端にある金属バネ21は、除去しておいても良い。
【0114】
(他の実施形態)
さらに、本発明の実施形態のランプは、反射鏡と組み合わせて、ミラー付きランプないしランプユニットにすることができる。
【0115】
反射鏡は、例えば、平行光束、所定の微小領域に収束する集光光束、または、所定の微小領域から発散したのと同等の発散光束になるようにランプからの放射光を反射するように構成されており、反射鏡としては、例えば、放物面鏡や楕円面鏡を用いることができる。
【0116】
ミラー付ランプないしランプユニットは、例えば、液晶やDMDを用いたプロジェクタ等のような画像投影装置に取り付けることができ、画像投影装置用光源として使用される。また、このようなミラー付ランプないしランプユニットと、画像素子(DMD(Digital Micromirror Device)パネルや液晶パネルなど)を含む光学系とを組み合わせることにより、画像投影装置を構成することができる。例えば、DMDを用いたプロジェクタ(デジタルライトプロセッシング(DLP)プロジェクタ)や、液晶プロジェクタ(LCOS(Liquid Crystal on Silicon)構造を採用した反射型のプロジェクタも含む。)を提供することができる。さらに、本実施形態のランプ、およびミラー付ランプないしランプユニットは、画像投影装置用光源の他に、紫外線ステッパ用光源、または競技スタジアム用光源や自動車のヘッドライト用光源、道路標識を照らす投光器用光源などとしても使用することができる。
【0117】
上記実施形態では、発光物質として水銀を使用する水銀ランプを高圧放電ランプの一例として説明したが、本発明は、側管部(シール部)によって発光管の気密を保持する構成を有するいずれの高圧放電ランプにも適用可能である。例えば、金属ハロゲン化物を封入したメタルハライドランプやキセノンランプなどの高圧放電ランプにも適用することができる。メタルハライドランプ等においても、耐圧が向上すればするほど好ましいからである。つまり、リーク防止やクラック防止を図ることにより、高信頼性で長寿命のランプを実現することができるからである。
【0118】
また、水銀だけでなく金属ハロゲン化物も封入されているメタルハライドランプに、上記実施形態の構成を適用する場合には、次のような効果も得られる。すなわち、第2のガラス部9によって、金属棒3と封止部2のガラスの間にある僅かな隙間から侵入して金属箔4に反応して箔の脆化をもたらす金属ハロゲン化物の侵入を、効果的に軽減させることが可能となる。このように、上記実施形態の構成は、メタルハライドランプに好適に適用可能である。近年、水銀を封入しない無水銀メタルハライドランプの開発も進んでいるが、そのような無水銀メタルハライドランプに、上記実施形態の技術を適用することも可能である。
【0119】
なお、封入水銀量が300〜400mg/cc程度またはそれ以上(点灯動作圧30〜40MPa)を実現できる技術というのは、特に点灯動作圧20MPaを超えるレベルのランプ(すなわち、今日の15MPa〜20MPaのランプを超える点灯動作圧を有するランプ。例えば、23MPa以上または25MPa以上のランプ)について、その安全性および信頼性を確保できる意義も有している。つまり、ランプを大量生産する場合には、ランプの特性にどうしてもばらつきが生じ得るため、点灯動作圧が23MPa程度のランプであっても、マージンを考えた上で耐圧を確保する必要があるので、30MPa以上の耐圧を達成できる技術は、30MPa未満のランプについても、実際に製品を供給できるという観点からの利点は大きい。もちろん、30MPa以上の耐圧を達成できる技術を用いて、23MPaあるいはそれ以下の耐圧でもよいランプを作製すれば、安全性および信頼性の向上を図ることができる。
【0120】
また、点灯動作圧が約30〜40MPaまたはそれ以上(約300〜400気圧またはそれ以上)である極めて高耐圧を示す高圧水銀ランプについては、本願出願人による特願2001−371365号明細書および特願2002−351524号明細書にも開示がある。ここでは、これらの特許出願を本願明細書に参考のため援用することとする。
【0121】
これらの出願には、約10kgf/cm2以上約50kgf/cm2以下の圧縮応力が、側管部の一部(特に、第2のガラス部9の内部および/または境界)に、少なくとも長手方向にて生じていることが開示されており、また、一対の側管部のそれぞれについて、圧縮応力が生じることが好ましいことが開示されている。
【0122】
また、その圧縮応力(圧縮歪み)を生じさせるには、加熱(アニール)を、2時間以上行うこと(例えば、100時間以上)行うことがよいことが開示されており、そして、その加熱は、前記第2のガラスの歪点温度よりも高く且つ前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度の炉に、ランプ完成体(加熱する前の高圧放電ランプの形態)を配置することよって実行されることが開示されている。その炉内は、例えば、真空または減圧状態となっている。
【0123】
以上、本発明の好ましい例について説明したが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の変形が可能である。
【0124】
【発明の効果】
以上のように本発明の高圧放電ランプは、側管部に、発光管から延在した第1のガラス部と、第1のガラス部の内側であって、電極棒と金属箔との接合部および電極棒の少なくとも一部を覆う第2のガラス部とを有しており、第2のガラス部の発光管側の端部の前面が、電極棒に設けられたコイルに接していることにより、より信頼性を高めることができる高圧放電ランプを提供することができる。
特に、本発明によれば、製作ばらつきに左右されず、高耐圧強度ランプを安定供給でき、ランプ寿命と安全性をより高めるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図2】本発明の実施の形態におけるコイルを示す図
【図3】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図5】本発明の実施の形態における耐圧測定をするためのランプの構成を示す模式図
【図6】本発明の実施の形態を説明するランプを示す図
【図7】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図8】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図9】本発明の実施の形態における電極棒の構成を示す図
【図10】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図11】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図12】本発明の実施の形態を説明するグラフを示す図
【図13】本発明の実施の形態における第1の筒状構造物を示す図
【図14】本発明の実施の形態における電極棒の構成を示す図
【図15】本発明の実施の形態における電極組立体の構成を示す図
【図16】本発明の実施の形態における電極棒の構成を示す図
【図17】本発明の実施の形態における電極組立体の構成を示す図
【図18】本発明の実施の形態における管の構成を示す図
【図19】本発明の実施の形態における管に電極組立体を挿入する方法を示す図
【図20】本発明の実施の形態における管を真空排気する方法を示す図
【図21】本発明の実施の形態における電極封止をする方法を示す図
【図22】本発明の実施の形態における電極封止をする方法を示す図
【図23】封止構造を備えた高圧放電ランプの構成を示す図
【図24】封止構造の断面図
【図25】封止構造の断面図
【図26】封止構造を備えた高圧放電ランプの構成を示す図
【図27】封止構造を備えた高圧放電ランプの説明をするグラフを示す図
【図28】封止構造を備えた高圧放電ランプの説明をするイメージ図
【符号の説明】
1 発光管
2 側管部
3 電極棒
4 金属箔
5 外部リード線
6 コイル
7 水銀
8、8a、8b 間隙
9 ガラス層、第2のガラス部
10 閉塞側管部
11 開口側管部
12 コイル
13a、b 側管部
14a,b 端付近
15 電極棒
16 円盤状金属体
17 第1のガラス部
20 第3のガラス部
21 金属バネ
100 コイル6付き電極棒
101 電極組立体
102 管
103 第1の筒状構造物
104 電極組立体
105 電極組立体
106 第2の筒状構造物
110 コイル
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧放電ランプおよびその製造方法に関する。特に、一般照明や、反射鏡と組み合わせてプロジェクター、自動車の前照灯などの用途に使用され、点灯時に内圧が1気圧以上になる高圧放電ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
図23に、従来の高圧放電ランプの一例を示す。図23に示した高圧放電ランプは、発光管1と側管部2とから構成されており、側管部2は、発光管1から延在している。発光管1内には、電極棒3が対向して配置されており、電極棒3は、金属箔4に電気的に接続されている。なお、金属箔4の他端には、外部リード線5が電気的に接続されている。発光管1には、水銀7が封入されており、図示しないが希ガスも封入されている。このような高圧放電ランプは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
ここで、電極棒3は、タングステンを主たる材料としており、また、発光管1および側管部2は、石英ガラスを主たる材料としている。そもそも、タングステンと石英ガラスとは、互いに熱膨張係数が違うため、両者を密着させることは非常に困難である。そこで、高圧放電ランプにおいては、薄い金属箔4を塑性変形させることで、側管部2の石英ガラスと封着させ、それによって、発光管1内の気密を保持している。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−148561号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の高圧放電ランプには、ランプ点灯中、発光管1側の金属箔4の端部を起点として、ガラスに亀裂が入りやすいという問題があった。このような問題を解決するための取り組みは従来よりなされており、例えば、特開平11−7918号公報では、次のような技術が開示されている。モリブデン箔(金属箔4と同等品)は、貯蔵ロール上に巻き付けられたモリブデンテープを切断することによって作製するが、この切断の際に生じるモリブデン箔端部のまくれが、ガラスに亀裂あるいは割れ目を生じさせる要因となるので、当該技術では、この切断時にできるまくれを防止するために、モリブデン箔の圧延加工により、モリブデン箔の端部をくさび状に形成し、それによって、ガラスに亀裂が入ることを防止している。
【0006】
しかしながら、上記取り組みだけでは、金属箔の端部から発生するガラスの亀裂を必ずしも確実に防止できないことが、本願発明者の検討によりわかった。本願発明者が検討により導き出した、箔端部のガラスに亀裂が発生するメカニズムを以下に説明する。
【0007】
まず前提として、電極棒3と側管部2は、あたかも封着されているように見えるが、実はごくわずかな間隙8がある。例えばシュリンク封止行なった場合、電極棒3と側管部2との間隙8を、図21(a)中のA−A’の断面に沿って見てみると、これは、図21(b)に示すように、略円形の間隙8aであり、特に応力が集中する形状とはなっていない。しかしながら、金属箔4と電極棒3との接合部B−B’断面の間隙8は、図21(c)に示すように、金属箔4の箔エッジ部に沿って、鋭い切り欠け形状の間隙8bとなっている。間隙8bは、応力が集中する形状となっているので、ここを起点にして、ガラスに亀裂が入るのである。
【0008】
上記特開平11−7918号公報の技術では、箔端部をくさび状にするので、箔端部からの亀裂の発生については緩和できるかもしれないが、接合部の間隙8bに関する亀裂の発生まで抑制できるわけではない。
【0009】
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、より信頼性を高めることができる高圧放電ランプおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管から延在し、前記発光管の気密性を保持する側管部と、前記発光管内に放電アークを維持するために一端が配置された一対の電極棒と、前記側管部に配置され、前記電極棒の他端と電気的に接続された金属箔とを備え、前記側管部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側であって、前記電極棒と前記金属箔との接合部および前記電極棒の少なくとも一部を覆う第2のガラス部とを有しており、前記第2のガラス部における前記発光管側の端部の前面は、前記電極棒に設けられたコイルに接している。
【0011】
ある好適な実施形態において、前記第2のガラス部内には、前記電極棒の一部と、当該電極棒と前記金属箔との接続部が位置しており、前記発光管の側を前方としたときに、前記コイルが位置する領域の後方に、前記第2のガラス部が配置されており、前記第2のガラス部における前記前面は、前記第1のガラス部に接触していない。
【0012】
本発明の第2の高圧放電ランプは、一対の電極棒のそれぞれの一端が管内に配置された発光管と、前記発光管の両端から延在する側管部とを備え、前記側管部内には、前記電極棒の前記一端に対する他端に電気的に接続された前記金属箔が位置しており、少なくとも一方の前記側管部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられ、当該第1のガラス部の軟化点よりも低い第2のガラス部と、前記第1のガラス部と第2のガラス部との間に設けられ、前記第1のガラス部と前記2のガラス部との中間の軟化点を有する第3のガラス部とを含んでおり、前記電極棒のうち、前記少なくとも一方の側管部内に位置している部位の少なくとも一部には、コイルが設けられており、前記第2のガラス部内には、前記電極棒と前記金属箔との接続部が位置しており、前記第2のガラス部のうち前記発光管側に位置する部位は、前記コイルと前記第3のガラス部によって囲まれている。
【0013】
ある好適な実施形態において、前記第2のガラス部の前記前方に位置する前面は、前記コイルが位置する領域に接触しており、且つ、前記第2のガラス部の前記前面は、前記第1のガラス部に接触していない。
【0014】
ある好適な実施形態において、前記第2のガラス部は、銅、アルミニウム、鉄、ナトリウムおよびホウ素ならびにそれらの酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいる。
【0015】
ある好適な実施形態において、前記第2のガラス部は、シリカと、銅および酸化銅の少なくとも一方と、アルミナとを含んでいるガラスから構成されている。
【0016】
本発明の第3の高圧放電ランプは、一対の電極棒のそれぞれの一端が管内に配置された発光管と、前記発光管の両端から延在する側管部とを備え、前記側管部内には、前記電極棒の前記一端に対する他端に電気的に接続された前記金属箔が位置しており、少なくとも一方の前記側管部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられ、当該第1のガラス部の軟化点よりも低い第2のガラス部と、前記第1のガラス部と第2のガラス部との間に設けられ、前記第1のガラス部と前記2のガラス部との中間の軟化点を有する第3のガラス部とを含んでおり、前記電極棒のうち、前記少なくとも一方の側管部内に位置している部位の少なくとも一部には、円盤状構造体が設けられており、前記第2のガラス部内には、前記電極棒と前記金属箔との接続部が位置しており、前記第2のガラス部のうち前記発光管側に位置する部位は、前記円盤状構造体と前記第3のガラス部によって囲まれている。
【0017】
本発明の第4の高圧放電ランプは、一対の電極棒のそれぞれの一端が管内に配置された発光管と、前記発光管の両端から延在する側管部とを備え、前記側管部内には、前記電極棒の前記一端に対する他端に電気的に接続された前記金属箔が位置しており、少なくとも一方の前記側管部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられ、当該第1のガラス部の軟化点よりも低い第2のガラス部とを含んでおり、前記第2のガラス部のうち前記発光管側に位置する部位は、前記第1のガラスに接触していない。
【0018】
ある好適な実施形態において、前記高圧放電ランプは、高圧水銀ランプであり、前記発光物質として水銀が、前記発光管の内容積を基準に、150mg/cm3以上封入されている。
【0019】
ある好適な実施形態では、前記水銀は300mg/cm3以上封入されている。
【0020】
本発明の第1の高圧放電ランプの製造方法は、一端および他端の間にコイルまたは円盤構造体が配置された電極棒を用意する工程と、前記電極棒に、第1のガラスである石英ガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス筒構造体を挿入し、それによって、前記コイルまたは前記円盤構造体と前記他端との間に、前記ガラス筒構造体を配置した後、前記他端と金属箔とを溶接する工程と、前記電極棒、前記ガラス筒構造体および前記金属箔を含む電極組立体を、第2のガラスから構成された側管部に挿入する工程とを包含する。
【0021】
本発明の第2の高圧放電ランプの製造方法は、他端に金属箔が溶接された電極棒の一端に、第1のガラスである石英ガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス筒構造体を挿入する工程と、前記電極棒にコイルを溶接し、それによって、前記ガラス筒構造体を前記金属棒に固定する工程と、前記電極棒、前記ガラス筒構造体および前記金属箔を含む電極組立体を、第2のガラスから構成された側管部に挿入する工程とを包含する。
【0022】
ある好適な実施形態では、前記ガラス筒構造体を覆うように、前記第1のガラスと前記2のガラスとの中間の軟化点を有する第3のガラスから構成された更なるガラス筒構造体を配置する工程をさらに包含する。
【0023】
ある好適な実施形態では、前記第2のガラスの軟化点よりも高い温度で、加熱処理を行う工程をさらに包含する。
【0024】
ある実施形態において、高圧放電ランプの側管部は、発光管から延在した第1のガラス部と、第1のガラス部の内側であって、電極棒と金属箔との接合部および電極棒の少なくとも一部を覆う第2のガラス部とを有しており、第2のガラス層の発光管側の端部の前面は、電極棒に設けられたコイルの少なくとも一部に接している構成となっている。
【0025】
ある実施形態において、高圧放電ランプの側管部は、発光管から延在した第1のガラス部と、第1のガラス部の内側であって、電極棒と金属箔との接合部および電極棒の少なくとも一部を覆う第2のガラス部とを有しており、第2のガラス層の発光管側の端部の前面は、電極棒に設けられた円盤状金属体の少なくとも一部に接している構成となっている。
【0026】
ある実施形態において、前記円盤状金属体は、前記電極棒に一体成形されている。
【0027】
ある実施形態では、前記第1のガラス部と前記第2のガラス部との間に第3のガラス部を有しており、前記第3のガラス部の融点は、前記第1のガラス部の融点より低く、前記第2のガラス部の融点より高い。
【0028】
ある実施形態では、第2のガラス層は、銅、もしくは酸化銅、もしくはアルミナを含有している。
【0029】
ある実施形態では、点灯時、発光管内圧力は、30MPa以上になる。
【0030】
ある実施形態の高圧放電ランプの製造方法では、電極棒とコイルと金属箔と常温でガラス化している第1の筒状構造物を準備し、電極棒にコイルを挿入、溶接し、コイルの溶接された電極棒に第1の筒状構造物を挿入し、その後電極棒と金属箔を溶接する工程を含んでいる。
【0031】
ある実施形態の高圧放電ランプの製造方法では、電極棒とコイルと金属箔と常温でガラス化している第1の筒状構造物を準備し、電極棒に金属箔を溶接し、電極棒に第1の筒状構造物を挿入し、電極棒にコイルを挿入、溶接する工程を含んでいる。
【0032】
ある実施形態の高圧放電ランプの製造方法では、電極棒とコイルと金属箔と常温でガラス化している第1の筒状構造物を準備し、電極棒に第1の筒状構造物を挿入し、電極棒にコイルを挿入、溶接し、電極棒に金属箔を溶接する工程を含んでいる。
【0033】
ある実施形態では、少なくとも第1の筒状構造物の周りに、石英ガラスよりも融点が低く、第1の筒状構造物よりも融点が高い常温でガラス化している第2の筒状構造物を包む工程をさらに包含している。
【0034】
ある実施形態では、第1の筒状構造物の周りに、第2の筒状構造物を包んだ状態で、第1の筒状構造物の軟化点より高い温度で、加熱処理する工程をさらに包含している。
【0035】
ある実施形態において、前記発光物質として水銀が、前記発光管の内容積を基準に、150mg/cm3以上封入されている。ある好適な実施形態では、前記水銀は、220mg/cm3以上封入されている。
【0036】
ある実施形態において、前記電極組立体は、前記電極棒と、前記電極棒に接続された金属箔と、前記金属箔に接続された外部リード線とから構成されている。
【0037】
前記電極棒の少なくとも一部に、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成された金属膜が形成されていることが好ましい。
【0038】
ある実施形態において、Pt、Ir、Rh、Ru、Reからなる群から選択される少なくとも1種の金属を少なくとも表面に有するコイルが、前記電極棒の少なくとも一部に巻き付けられている。
【0039】
ある実施形態に高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の気密性を保持する封止部とを備え、前記封止部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、かつ、前記封止部は、圧縮応力が印加されている部位を有している。
【0040】
ある実施形態における高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管と、前記発光管の気密性を保持する封止部とを備え、前記封止部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられた第2のガラス部とを有しており、光弾性効果を利用した鋭敏色板法による歪み測定を実行すると、前記封止部のうち、前記第2のガラス部に相当する領域の少なくとも一部に、圧縮応力が観察される。
【0041】
ある好適な実施形態において、前記発光管は、チップレスの発光管である。
【0042】
前記歪み測定は、東芝製のSVP−200の歪検査器を用いて行えばよい。
【0043】
ある実施形態におけるランプユニットは、上記高圧放電ランプと、前記高圧放電ランプから発する光を反射する反射鏡とを備えている。
【0044】
【発明の実施の形態】
本願発明者らは、間隙8b周囲におけるガラスに亀裂が入ることを防止するために鋭意研究し、その結果、電極棒3と金属箔4の溶接部と、側管部2との間隙8bをなくし、応力の集中をなくすことで、箔端部を起点とするガラスの亀裂を防止し、ランプ寿命と安全性を高めた高圧放電ランプを実現することに成功し、そのことを特願2001−260745号明細書に開示した。
【0045】
そのランプの構成を図26に示す。なお、説明の簡素化を図るために、後述する図1中の構成要素と実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。図26に示したランプは、電極棒3と金属箔4の接合部が、側管部2と間隙なく封着した構成となっている。また、少なくとも電極棒3と金属箔4の接合部を含む、電極棒3の一部もしくは、金属箔4の一部もしくは、金属箔4部全体が、銅または酸化銅、またはアルミナ、または酸化鉄、または鉄、または炭酸ナトリウム、またはナトリウム、または酸化ボロンのいずれか少なくとも一つと、SiO2を含むガラス層9と密着していて、ガラス層9と接する一部にコイル状の金属体6を被膜している構成となっている。
このように、電極棒3と金属箔4の接合部を、隙間が存在しない構成にすることで、ランプの耐圧強度が向上し、また、点灯中でのリークによる不点灯もなくなった。
【0046】
しかしながら、図26に示したランプには、次のような問題が生じることを、本願発明者は、新たに見出した。すなわち、ランプを数多く製作した場合、ガラス層9と、側管部2の境界面にクラックが入るランプが製作される場合がある。
特願2001−260745号明細書で開示したランプ(比較例2)の耐圧強度は、図27に示すように、30MPaから40MPaとばらつきがあった。なお、従来のランプは、図23に示したランプであり、比較例1のランプは、図26に示したランプ(比較例2)から、コイル6を取り除いた構造のランプである。
【0047】
比較例2のランプについて、ガラス層9と側管部2との境界面にできるクラックに注目して解析しなおした結果、35MPa未満のランプには、ガラス層9と側管部2との境界面にできるクラックが入っていたことが新たに判明した。すなわち、同一製作条件下において、入ったり入らなかったりするこのガラス層9と側管部2との境界面にできるクラックが、ランプの耐圧強度のばらつきを大きくしており、これは品質を落とす可能性がある。
【0048】
そこで、なぜ同一製作条件下において、ガラス層9と側管部ガラスとの境界面にクラックが入ったり入らなかったりするのか、本願出願人は検討行なった。
【0049】
その結果、おそらく次のような理由で、ガラス層9と側管部2との境界面にクラックが入るのではないかと考える。すなわち、封止工程において、一旦加熱溶融された側管部2、ガラス層9は、封止後、冷却され、固化する。その際、ガラス層9は、側管部2よりも、歪点が低く、側管部2が歪点を通過した後に、ガラス層9が歪点を通過冷却する。そこで、ガラス層9が固化しつつ歪点を通過する際に、電極棒3の長軸方向に残留応力が入る。ガラスの冷却速度は、特に管理していないため、その冷却速度の違いにより、応力が強く残ったり、弱く残ったりする。このガラスに残る応力が強いと、ガラス層9と側管部2との境界にクラックが入るのだと考えられる。図28に、応力がクラックを発生させるイメージ図を示す。
【0050】
そこで、本願発明者は、製作ばらつきに左右されず、高耐圧強度ランプを安定供給でき、ランプ寿命と安全性をより高めた高圧放電ランプを実現すべく研究開発を行い、その結果、そのようなランプを完成させ、本発明に至った。
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本実施形態の高圧放電ランプの構成を模式的に示している。
【0051】
本実施形態の高圧放電ランプは、管内に発光物質が封入される発光管1と、発光管1の気密性を保持する側管部2とから構成されている。側管部2は、発光管1から延在しており、発光管1内には、一対の電極棒3が配置されている。電極棒3の一端は、放電アークを維持するために発光管1内に露出して配置されている。側管部2内には、電極棒3の他端と電気的に接続された金属箔4が配置されている。
【0052】
側管部2は、発光管1から延在した第1のガラス部17と、第2のガラス部9とを有している。第2のガラス部9は、第1のガラス部17の内側であって、電極棒3と金属箔4との接合部を覆っており、また、電極棒3の一部も覆っている。ここで、第2のガラス部9の前面(すなわち、発光管1側の端部の前面)は、電極棒3に設けられたコイル6に接している。
【0053】
図1に示した本実施形態のランプと、図26に示したランプとでは、第2のガラス部9の前面がコイル6に接している点が異なる。加えて、本実施形態のランプの場合、第2のガラス部9の前面は、第1のガラス部17に接触していない。
つまり、図26に示したランプでは、電極棒3の径方向において、第2のガラス部9の前面(発光管1側の端部の前面)と、石英ガラス(発光管1から延在した第1のガラス部)とが密着している部分が存在するが、本実施形態のランプでは、そのような構成とはなっていない。
【0054】
さらに、本実施形態の構成について説明を続ける。図1において、発光管1は、石英ガラスを主なる材料とし、その内容積は、例えば約0.025ccである。発光管1から側管部2が延在しているので、側管部2の第1のガラス部8は石英ガラスから構成されている。発光管1には、発光種である水銀7が7.5mgと、図示しないが、アルゴンガスが200mbar(25℃時)封入されている。
【0055】
また、側管部2には、棒径0.25mmのタングステンを主なる材料とする電極棒3と、電極棒3に電気的に接続されたモリブデンを主なる材料とする金属箔4、そして更に金属箔4の他端には、外部リード線5が電気的に接続されている。
【0056】
側管部2に位置する電極棒3のまわりには、図2に示すような、断面直径60ミクロンのタングステン製のコイル6が配置されている。このコイル6の外径は、約0.42mmから0.52mmである。もともとコイル6は内径0.3mmになるよう巻かれているものの、巻き緩み等から出来あがり寸法はばらつきができる。
【0057】
上述したように、側管部2には、発光管1から延在した石英ガラスを材料とする第1のガラス部17の内側に、電極棒3と金属箔4との接合部および電極棒3の一部を覆う第2のガラス部9が設けられている。そして、この第2のガラス部9の発光管1側の端部前面は、コイル6に接している。また、電極棒3と側管部2との間と、コイル6と側管部2との間には、熱膨張係数の違いにより、電極の封止工程で自然と発生するごくわずかな間隙8がある。図1では、分かりやすくするために大きく間隙8を図示しているが、実際には目視で観察できないほど狭い隙間である。
【0058】
さらに、第2のガラス部9には、銅および/または酸化銅と、アルミナと、SiO2とが存在している。ここでは、SEM−COM社のSCY−2ガラスを用いた。第2のガラス部9と第1のガラス部(石英ガラス)17とは電極棒3の長軸方向では密着している。一方、第2のガラス部9の前面(発光管1側の端部)は、コイル6と接しているため、第1のガラス部17とは電極棒3の径方向では接していない。また、第2のガラス部9と第1のガラス部との電極棒3の長軸方向での境界部分は、互いに拡散し合うことで、混在している。また、第2のガラス部9と電極棒3は密着しており、また、第2のガラス部9と金属箔4も密着しており、其々の間に、間隙はない。
【0059】
封止工程後の側管部様子を、歪計で観察してみると、その差は明らかであった。観察は、電極棒3の長軸方向に残る第2のガラス部9に対して行なった。
【0060】
観察では、東芝歪検査器(SVP−200)を用いた。歪計は、一般にガラスに、偏光板を通過して生じた直線偏光を入れて観察する。その直線偏光の振動方向をUとする。Uは、u1とu2が合成されてできたものとみなす。ガラスに歪がない場合は、u1とu2は同じ速さでその中を通過する。しかし、ガラス内に歪が残り、応力Fが働いているときは、u1とu2は同じ速さでは通過しない。
この遅れた距離を光路差Rといい、光路差Rを観察することで、ガラスに残る歪の大きさを比較したり、ガラスにかかっている応力を測ったりすることができる。以下に、光路差Rと応力Fの関係式を表す。
R=C×F×L
ここで、Rは光路差(nm)、Fは応力(kg/cm2)、Lはガラスの厚み(cm)、Cはガラス材料の光弾性常数((nm/cm)/(kg/cm2))である。
【0061】
今回用いたSCY−2ガラスの光弾性常数は、不明だったので、そのままCとして計算した。Cとして計算しても、本測定に用いた比較ランプと、本実施形態のランプのガラス9は、同じくSCY−2ガラスを用いたので、応力Fを比較するためには、特に問題はないことを付言しておく。
【0062】
測定結果を示すと、比較ランプのガラス9に残るC×Fは約150〜400であったのに対し、本実施形態のランプのガラス9に残るC×Fは約40から140であった。つまり、本実施形態のランプの第2のガラス部9に残る応力は、著しく減少した。この観察により、第2のガラス部9に残る応力が、第2のガラス部9の端部にクラックを生じさせる可能性が減ったことがわかる。
【0063】
この応力の減少した原因は、詳しくは不明だが、おそらく以下のことが起こっているのではないかと推測される。すなわち、本発明の実施形態のランプは、第2のガラス部9と、コイル6が接しているため、両者の熱膨張係数の違いにより、封止直後に両者に隙間ができる。そこで、封止後、ガラス部9が冷却、固化してもそこに応力は残らない、と推測する。
【0064】
一方、第2のガラス部9と、第1のガラス部の、電極棒3の長軸方向の界面は、密着しているにもかかわらず、クラックがはいったりしない。この現象は、電極棒3の径方向に、第2のガラス部9と、第1のガラスが接していると、クラックが入る原因は、第2のガラス部9にある残留応力である、という発明が解決しようとする課題で述べた推測から一見矛盾しているように思える。しかし、本願発明者は、そのことを次のように考えた。
【0065】
すなわち、第2のガラス部9は、もともとSCY―2ガラス製の筒状構造物を配置し、加熱溶融してできている。この筒状構造物は、図13に示すように、厚みが0.1mmで、長さが1mmである。すなわち、この筒状構造物を電極棒3に挿入し、加熱溶融した結果、電極棒3の径方向に、第2のガラス部9は最高で0.1mmの厚さをもつ。第2のガラス部9の電極棒3の径方向の厚みは、加熱条件に依り、第2のガラス部が拡散することで、さらに薄くなる可能性がある。
それに比べて、電極棒3の長軸方向に第2のガラス部9は、最低でも1mmの長さを有している。第2のガラス部9の電極棒3の長軸方向の長さは、加熱条件により、第2のガラス部が拡散することで、さらに伸びる可能性がある。つまり、第2のガラス部9が冷却していくとき、電極棒3の径方向に収縮する量は、長軸方向に収縮する量の最高でも約10分の1なのである。
【0066】
この収縮量の違いにより、第1のガラス部と第2のガラス部9が密着している点では同じであっても、電極棒3の径方向ではクラックが発生し、電極棒3の長軸方向にはクラックが発生しないという、違いがでると推測する。
【0067】
以上の検討により、第2のガラス部9の発光管部1側端部にクラックを発生させない効果を得るために重要なことは、第2のガラス部9と、コイル6の位置関係において、電極棒3の径方向での接触面が、コイル6の外径とほぼ同等かそれ以下であることが重要であるとわかる。
【0068】
上記同等の意味する所は、図3のように、第2のガラス部9の、電極棒3の径方向でのコイル6との接触面が、コイル6の外径より大きくても、第2のガラス部9と第1のガラス部の断極棒3の径方向での接触面厚みが0.1mmより小さければ、第2のガラス部9の発光管部1側端部にクラックを発生させない効果に影響はない、ということである。これは、第1のガラスと第2のガラス部9が、電極棒3の長軸方向に密着していてもクラックを生じないことから、厚み0.1mm以下の密着であれば、クラックが発生しないと判る。また、例えば、図4のように、コイルと接触していない部分の第2のガラス部9の電極棒3の径方向が、コイルの径以上に大きくても、コイルと接触しているクラックを生じさせないという構成に影響はない。
【0069】
図26に示した構成を有するランプの製作を行なったところ、8本中4本にクラックが生じた。一方、本実施形態の構成を有するランプの製作を行なったところ、8本中8本が、クラックを生じなかった。
【0070】
同様に、図3に示した構成のランプと、図4に示した構成のランプにおいても、8本ずつ製作した結果、全数クラックが発生しなかった。
【0071】
次に、ランプの耐圧強度テストを行なった。測定用には、図5に示すようなランプを用いた。すなわち、一方側の閉塞側管部10は、図1構成の側管部2と同様の構成であり、電極は側管部10内に封止している。他方の開口側管部11は、封止せずに、開放状態である。この開口側管部11から高圧水を導入し、破壊する圧力を測定する。そのランプ破壊圧力を、ランプの初期耐圧とした。
【0072】
その結果、図6に示すように、図26に示した構成で製作したランプ(比較例)で、クラックが発生したランプの耐圧強度は、30MPa〜35MPaであった。また、破壊後ランプの様子を観察した結果、全数、クラックの部分を起点として破壊していることが観察できた。
【0073】
一方、本実施形態の構成で製作したランプ(本発明)の耐圧強度は、図6に示すように38MPa以上であった。
【0074】
もちろん、両者の製作条件は、ばらつき、管理を含めて同等である。つまり、構成の違いにより、ばらつきなく、より確実に耐圧強度を増したランプを製作することができたのである。
【0075】
また、例えば、コイル6にプラチナなどのガラスとの濡れ性を悪くするような物質をメッキを施すことにより、第1のガラスとコイル6の界面にできる微小なクラックの防止をすることもでき、さらに高耐圧構造の効果をあげることができるので、有用である。また、図7に示すように、第2のガラス部9で覆う電極棒3の部分に、コイル12を巻くと、ガラス部9と電極棒3との密着性がより向上し、高耐圧構造の効果をあげることができる。
【0076】
また、図8に示すように、コイル6を用いない構成であっても、同様の効果を得ることができる。図8に示した構成のランプに用いた電極棒15を図9に示す。 電極棒15は、例えば、外径が0.25mmの電極棒で、更に、電極棒の一部に外径が0.9mm、厚みが0.1mmの円盤状金属体16が成形されている。図8に示した構成のランプでは、円盤状金属体16と第2のガラス部9は、第2のガラス部9の発光管部1側端部の前面において接するように配置されている。図8に示した構成のランプにおいても、第2のガラス部9の端部にクラックが入ることなく、38MPa以上の高耐圧なランプを得ることができた。また、この構成の利点として、図1に示した構成のランプに比べて、より発光管1側に近い部分に第2のガラス部9を配置することができる。図1に示した構成のランプは、ランプ点灯動作温度時に、第2のガラス部9の融点よりも低い場所に、第2のガラス部9を配置するのが望ましい。それは、第2のガラス部9が、ランプの点灯中に溶け、発光管内1に第2のガラス部9の成分が進入するのを防ぐためである。しかし、図8構成のランプでは、円盤状金属体16が、第2のガラス部9の発光管1内への進入を防ぐため、第2のガラス部9の成分が、点灯中に、発光管1内に溶け出て行くことを防止することができる。
【0077】
また、円盤状金属体16の厚みについては、その厚み量により、第2のガラス部9のクラックがなくなる効果は変わらない。図10に示すように、例えば金属体16の部分が発光管1内にまで延在してもよい。この場合、電極棒15の成形が簡便になる。というのも、ここでは図示していないが、一般に電極棒の発光管1内にある端部は、放電アークを保持するため、コイルを巻くなどして、電極先端温度をコントロールしている。しかし、図10では、円盤状金属体16が、その電極先端コイルの役割をも兼ねてくれるため、新たに先端コイルを巻くなどの工程が減るのである。
【0078】
また、図8に示した構成の円盤状金属体16をより薄いものにしてもよい。これは、円盤状金属体16の厚みは、ランプを設計する時々の工夫により変更しても、第2のガラス部9のクラックをなくし、高耐圧構造のランプを製作するという効果に影響しないはずだからである。また、円盤状金属体16を薄くすると、それだけ、電極棒3の外径の細い部分が多くなり、その結果、電極棒3と第1のガラスとの間にできうる微小クラック発生が小さくなるという利点も得られる。
なぜなら、電極棒3と第1のガラスとの間の微小クラックは、両者の熱膨張係数の差より起こるが、電極棒3の外径が小さければ、その収縮量の違いも緩和されるからである。
【0079】
また、円盤状金属体16に例えばプラチナなどのガラスとの濡れ性を悪くするような物質を塗っておくと、封止時にプラチナなどは拡散し、電極棒とコイル6の界面にできる微小なクラックの防止をすることもでき、さらに高耐圧構造の効果をあげることができるので、有用である。
【0080】
また、図11は、第2のガラス部9と第1のガラス部17との間に、第3のガラス部20を設けたランプの構成を示している。この第3のガラス部20は、第1のガラス(石英ガラス)よりも融点が低く、第2のガラス部9よりも融点が高い。本実施形態では、コーニング社製バイコール(Vycor)を用いた。バイコールの組成は、例えば、シリカ(SiO2)96.5重量%、アルミナ(Al2O3)0.5重量%、ホウ素(B)3重量%である。
【0081】
なお、第3のガラス部20のガラスとしては、15重量%以下のAl2O3および4重量%以下のBのうちの少なくとも一方と、SiO2とを含むものを用いればよい。ここで、第1のガラス部17のガラスとしては、SiO2を99重量%以上含むものを用いればよく、上述したように、例えば、石英ガラスを用いればよい。そして、第2のガラス部9のガラスは、銅、アルミニウム、鉄、ナトリウムおよびホウ素ならびにそれらの酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいるガラスであり、本実施形態では、シリカと、銅および酸化銅の少なくとも一方と、アルミナとを含んでいるガラスから第2のガラス部9を構成している。この例でも、第2のガラス部9は、SEM−COM社のSCY−2ガラスから構成しており、そのガラス組成は、例えば、SiO2:62重量%、Al2O3:13.8重量%、CuO:23.7重量%である。
【0082】
第2のガラス部9よりも融点の高いバイコール(第3のガラス)で、第2のガラス部9を覆うことにより、封止工程時、第2のガラス部9が加熱軟化した際に、第2のガラス部9が過剰に拡散することを防ぐことができる。第2のガラス部9が、拡散しすぎると、電極棒3と金属箔4の接合部付近に存在する第2のガラス部9が減り、電極棒3と金属箔4の接合部と、ガラスとの密着が悪くなり、隙間が形成されやすい。隙間が断続的に存在していても、密着力が低下するので、ランプの耐圧低下の要因となる。さらに、隙間が発光管1と貫通してしまうと、せっかくの電極棒3と金属箔4の接合部の隙間をなくすという有用な構成が得られなくなり、ランプの耐圧低下をもたらす。以上のような第2のガラス部9の溶けだしは、バイコールガラスを用いない構成においても、発生しない製作条件や使用条件がある。しかし、封止時のガラス温度など、管理することが必要であって、バイコールガラスを用いた図9に示した構成にすることで、より安定した高耐圧ランプを簡便に供給することができる。さらに、電極棒3と金属箔4の接合部だけでなく、金属箔4を第3のガラス部20で、覆うことにより、金属箔4と側管部ガラスとの密着性も向上し、よりランプの高耐圧化に貢献することができる。
【0083】
また、第3のガラスを、第1のガラスと同等の融点のガラスを用いても、第2のガラス部9の過剰な拡散を防止する効果はある。しかし、封止する工程において、側管部2の外側から加熱する方法では、第1のガラスの最外部と、第3のガラス部では、温度差ができる。特に、側管部内を減圧状態で加熱する場合、断熱効果もあり、第1のガラスと第3のガラスの温度差はより大きくなると推測される。実際、第3のガラスを、第1のガラスと同等の融点のガラスを用いると、第3のガラスの溶融が不充分で、封止後も第1のガラスと第3のガラスの境がすじとして残り、ランプの耐圧強度が低下する要因となったり、第3のガラスのシュリンクが不充分で空洞が残り、封止が不完全になったりする場合がある。もちろん、これは加熱条件などで改善できるが、第3のガラスとして、第1のガラスより低い融点のガラスを使用することにより、より安定した高耐圧ランプを簡便に供給することができる。
【0084】
また、ここでは、コイル6や、円盤状金属体16は、タングステン材料を用いたが、タングステンに限定されることはない。設計仕様に応じて、適宜、他の金属を用いることも可能である。
【0085】
本実施形態の構成を用いると、特に30MPa以上の圧力で点灯する時に、ランプ電圧を電極間距離でわった値(以下、単位あたりのランプ電圧と称す)が急激に高くなるという有用な利点が発生する。図12に、様々な動作圧のランプのランプ電圧を示す。ここで、動作圧とは、発光管1内に封入した水銀7量を、発光管1の内容積で割ったものと定義する。図12によれば、動作圧30MPa以上で、単位あたりのランプ電圧は、上昇する。単位あたりのランプ電圧の上昇がもたらす有用な利点を、以下に説明する。
【0086】
特に、液晶プロジェクター用光源などのミラーと組み合わせて用いるランプは、光利用率向上のため、より点光源に近づける工夫がなされている。具体的には、電極間距離を短くするが、その際、ランプ電圧が足りないという課題が発生する。ランプ内抵抗を決める電極間の距離が短くなることで、ランプ電圧が低くなると、その分ランプ電流を多く流す必要がある。しかし、適正なランプ電流は電極棒径等で決まり、それ以上に電流を流すと、電極棒の温度が過度に上昇し、電極材料が飛散し、発光管は黒化し、ランプ寿命を低下させる原因となる。そこで、電極棒を大きくして、電流を多く流そうとすれば、今度は、アークが太り、点光源化に反する。さらに極端な電極棒の太化は、輝点移動等によりアークが不安定動作になりやすい。また、電流をより多く流そうとすれば、安定器は大きく、高価になるため、システムの小型化、安価化に合わない。
【0087】
このような理由により、単位あたりのランプ電圧が上昇することは、ランプの点光源化にする際の技術的な課題を解決するという有用な利点である。また、もちろん耐圧向上により、例えば10MPa動作圧のランプに対しても、その安全性がより向上するという大きな利点がある。
(実施の形態2)
次に、上記実施形態1のランプの製造方法について説明する。
【0088】
図2に、電極棒3に溶接するコイル6を示す。コイル6は、コイル線径は約60ミクロンで、0.3mmの芯線に巻き、製作している。出来上がりのコイル内径は、およそ0.3mmから0.4mmである。これは、コイルの巻き緩みのために出来上がり内径がばらつくためである。出来あがりのコイル外径は、およそ0.42mmから0.52mmになっている。コイル6の全長は約5mmである。なお、電極棒3の外径は0.25mmで、長さは12mmである。
【0089】
さらに、図13に示すような、SEM−COM社製SCY―2ガラスからなる第1の筒状構造物103を準備する。この第1の筒状構造物103の外径は、約0.6mm、内径は約0.4mmである。また、長さは約1mmである。そして、金属箔4も準備する。金属箔4は、幅1.0mmで長さが6mmであり、モリブデンからできている。
【0090】
まず、図14に示すように、コイル6を電極棒3に挿入する。コイル6の配置は、金属箔と電極棒3との溶接部となる部分1mmと、第1の筒状構造物103が位置する部分1mmを空けるために、端部より約2mmの部分を空ける。そして、電極棒3とコイル6を溶接する。溶接時、コイルの変形防止のため、圧潰しないよう溶接圧力は極力小さくする方が良い。このようにして、コイル6付き電極棒100が作製される。
【0091】
次に、コイル6付き電極棒100に、第1の筒状構造物103を挿入する。さらに、コイル6に第1の筒状構造物103をしっかり接するように配置したまま、コイル6付き電極棒100と、金属箔4を溶接する。このようにして製作したのが、図15に示す電極組立体101である。ここで、外部リード線5や、金属バネ(保持部材)21は、あらかじめ、金属箔4に溶接していても良いし、金属箔4とコイル6付き電極棒100を溶接した後で、溶接してもどちらでもよい。
外部リード線5は、例えばモリブデンからなり、金属バネ21も、例えばモリブデンからなる。金属バネ21は、電極組立体101を側管部中に保持できるように外部リード線の端部に接続されている。
【0092】
以上の工程で電極組立体101を製作することにより、第1の筒状構造物103が、簡便に、また確実にコイル6と接した状態で保持される。また、この工程では、電極棒3にあらかじめ、図16に示すような放電を維持するためのコイル110が溶接していてもよい。放電を維持するためのコイルの清浄性は、ランプの性能に大きく影響する。放電を維持するためのコイルは、点灯中非常に高温となり、不純物などがあると、燃えて発光管内を黒く汚し、光の出力を低下させるためである。そこで、放電を維持するためのコイル110が溶接された状態で電極棒3を例えば酸などで洗浄したりすることは、ランプの性能向上に大きな効果がある。このように、コイル110付き電極棒3を洗浄した後で、コイル6や第1の筒状構造物103を取り付ける工程を踏むことで、より清浄性が向上した電極組立体101を製作することができ、ランプの性能向上も図ることが出来る。
【0093】
あるいは、電極棒3に金属箔4を溶接した後で、電極棒3に第1の筒状構造物103を挿入し、次いで、電極棒3にコイル6を挿入し、第1の筒状構造物103を、一方の端部は、金属箔4に接するように、他方の端部はコイル6に接するように配置し、その後、コイル6を電極棒3に溶接することによって、電極組立体101を作製しても良い。
【0094】
この工程の利点は、第1の筒状構造物103の配置をする際に、金属箔4で規制され、簡便に行なえる点である。すなわち、量産工程において、電極組立体101の製作を自動化しやすい点にある。
【0095】
また、まず、電極棒3に第1の筒状構造物103を挿入し、電極棒3の金属箔4と溶接する端部約1mmを残して配置し、それから、コイル6を電極棒3に挿入し、第1の筒状構造物103に接するように配置した後、コイル6と電極棒3とを溶接し、次いで、電極棒3と金属箔4とを溶接することによって、電極組立体101を作製しても良い。
【0096】
この工程の利点は、溶接工程を一度にまとめることが出来るという点である。すなわち、コイル6と電極棒3の溶接工程と、金属箔4と電極棒3の溶接工程を続けて行なうことが出来るので、工程が単純化できる。
【0097】
さらに、電極棒3の代わりに、図9に示したような構成の電極棒15を用いても良い。すなわち、電極棒15は、外径が0.25mmの電極棒で、更に、電極棒の一部に外径が0.5mm、厚みが0.1mmの部分(円盤状金属体16)が成形されている。この電極棒15は、棒径0.9mmのタングステン棒を、削り出して製作しても良いし、あるいは、上記電極組立体101の製作工程において、コイル6の代わりに円盤状金属体16を用いてもよい。円盤状金属体16を用いて製作することで、コイルよりも簡便に取り扱いが出来、また作製も簡単でコストを下げるという利点がある。
【0098】
また、図17に示すような、電極組立体105を用いて封止行なっても良い。この電極組立体105には、第1の筒状構造物103の周りに第2の筒状構造物106が配置されている。本実施形態では、第2の筒状構造物106として、例えば、コーニング社製のバイコールからなるガラス管を用いた。
【0099】
この第2の筒状構造物106を固定するために、電極組立体105を、真空炉にて1000℃30分焼成すれば、第1の筒状構造物103が溶け、第2の筒状構造物106と一体化する。
【0100】
あるいは、例えば、水素炉を用いて焼成すれば、電極組立体105の還元もでき、より不純物混入の恐れのないランプを製作することができる。この焼成温度は、第1の筒状構造物103よりも高く、第2の筒状構造物106よりも低ければ、第1の筒状構造物103と第2の筒状構造物106の一体化には、影響がない。つまり、1000℃という焼成温度や、焼成時間、その雰囲気に左右されるものではない。
【0101】
以上のようにして作製した電極組立体101を用いてランプを製造する工程を以下に説明する。
【0102】
図18は、別の工程で準備した管(放電ランプ用ガラスパイプ)102で、石英ガラスを加熱し膨張させて、所定の形状に形成された中空の略球状の発光管部1と、発光管部1の両端から延在する石英ガラス管の側管部13a,13bから構成されている。側管部13a,13bの径は外径約4mm、内径約2mmである。側管部13aは開口している。側管部13bの一端は閉じている。
【0103】
次に、図19に示すように、側管部13aより電極組立体101を挿入する。電極組立体101は、側管部13a内径よりも充分細い挿入棒104により押し入れる。この時、金属バネ21と、側管部13aの内径が接ることで、電極組立体101は固定されている。電極組立体101を挿入する様子は、例えばCCDカメラにより観察し、所定の位置に配置する。
【0104】
この状態で、管102内の排気を行なう。図20にその様子を示す。図20には示さないが、回転可能なチャックにて管102を保持し、矢印Aで示すように、管102を回転させる。そして、管102内を排気しながら、端部がまだ封止されていない側管部13aの端付近14aを、加熱し封止する。
【0105】
続いて回転可能なチャックにて管102を保持した状態で、図21に示すように、管102を矢印Bが示すように回転させ、まず、発光管部1と側管部13aの境界あたりの部分から、外部リード線5まで、加熱しシュリンクする。
【0106】
このとき、加熱の方向は重要である。すなわち、図21に矢印で示すように、発光管部1側から、外部リード線21の配している側へと加熱をする方が良い。
というのは、封止時に融点の低い第1の筒状構造物103が溶け流れて拡散する場合、発光管部1内へ拡散すると、発光管部1が、第1の筒状構造物103の成分により、汚染される。ガラスは、温度の高いところから、温度の低いところへ拡散されるので、発光管部1側から加熱をすることで、発光管部1内に第1の筒状構造物103の成分が拡散することを防ぐことが出来る。また、発光管部1側から、外部リード線5の配している側へと加熱をすることで、第1の筒状構造物103とコイル6の、電極棒3の径方向の接触面積が小さくなるという利点もある。すなわち、第1の筒状構造物103の外径は0.6mmでコイル6の外径0.52mmより大きい。しかし、封止後、第1の筒状構造物103とコイル6の、電極棒3の径方向の接触面積は、コイル6の外径より小さくなっている。ちょうど、図24のように第1の筒状構造物は、丸みを帯びて封止されている。これは、発光管部1側から、外部リード線5の配している側へと加熱をすることで、第1の筒状構造物103が、金属箔4側へ拡散し、第1の筒状構造物のコイル6側端部を細らせているためだと推測する。
【0107】
また、まず発光管部1と側管部13aの境部分から、第1の筒状構造物103の位置する手前まで加熱しシュリンク行ない(第1の封止と称す)、この第1の封止した部分が冷却した後で、ガラス筒103の位置する部分から、外部リード線5まで加熱封止(第2の封止)行なう方法でも良い。
【0108】
このように2段階に分けて、封止行なうことで、第2の封止工程中に第1の筒状構造物103が溶融し、第1の筒状構造物103内から発生する、ランプにとっては不純物となるガスが、第1の封止部の冷えたガラスに阻まれ、発光管内に進入するのを防ぐことができる。もちろん第1の封止部と第2の封止部は、全封止工程が終了した後に、その境界に隙間が残らぬよう充分溶融するのが望ましい。
【0109】
また更に、箔部を加熱する際、箔部のみ外部から圧潰(ピンチング)してもよい。その利点は、金属箔4と側管部ガラスとの密着がより向上する。
【0110】
次に、封止のための加熱をやめ、自然冷却する時、収縮量の違いにより、第1のガラスと電極棒3の密着は剥がれ、ごくわずかに間隙ができる。しかし、電極棒3と、第1の筒状構造物103が密着している部分は、間隙はできない。以上の工程において、発光管中に電極が1本封止された。
【0111】
ランプには電極が一対必要であるから、他端の電極を挿入するため、閉じてあった側管部13bの端部をカッターにより切断する。その開口部より、ランプの発光材料である水銀を封入する。この状態で上記と同様に電極を挿入する。
【0112】
次に、図22に示すように、管102内の排気を再び行なう。図22に示した符号7は、発光管内に封入した水銀である。図22には示していないが、回転可能なチャックで管102を保持し、矢印Dで示すように、管102を回転させる。そして管102内を真空排気して、今度は、乾燥した所定量のアルゴンガスを導入し、側管部13bの端付近14bを加熱封止する。
【0113】
そして、図21に示した側管部13aを気密封着する工程と同様の手順で、側管部13bに対して電極封止を行なう。ただし、発光管部には水銀や、希ガスが封入されているので、例えば水冷などによる冷却を行ないながら、気密封着を行なうことが好ましい。そして、図1と同じ形のランプを得るために、両側管端部のガラスをカッターにより切断し、外部リード線5を露出させる。この時点で、両電極端にある金属バネ21は、除去しておいても良い。
【0114】
(他の実施形態)
さらに、本発明の実施形態のランプは、反射鏡と組み合わせて、ミラー付きランプないしランプユニットにすることができる。
【0115】
反射鏡は、例えば、平行光束、所定の微小領域に収束する集光光束、または、所定の微小領域から発散したのと同等の発散光束になるようにランプからの放射光を反射するように構成されており、反射鏡としては、例えば、放物面鏡や楕円面鏡を用いることができる。
【0116】
ミラー付ランプないしランプユニットは、例えば、液晶やDMDを用いたプロジェクタ等のような画像投影装置に取り付けることができ、画像投影装置用光源として使用される。また、このようなミラー付ランプないしランプユニットと、画像素子(DMD(Digital Micromirror Device)パネルや液晶パネルなど)を含む光学系とを組み合わせることにより、画像投影装置を構成することができる。例えば、DMDを用いたプロジェクタ(デジタルライトプロセッシング(DLP)プロジェクタ)や、液晶プロジェクタ(LCOS(Liquid Crystal on Silicon)構造を採用した反射型のプロジェクタも含む。)を提供することができる。さらに、本実施形態のランプ、およびミラー付ランプないしランプユニットは、画像投影装置用光源の他に、紫外線ステッパ用光源、または競技スタジアム用光源や自動車のヘッドライト用光源、道路標識を照らす投光器用光源などとしても使用することができる。
【0117】
上記実施形態では、発光物質として水銀を使用する水銀ランプを高圧放電ランプの一例として説明したが、本発明は、側管部(シール部)によって発光管の気密を保持する構成を有するいずれの高圧放電ランプにも適用可能である。例えば、金属ハロゲン化物を封入したメタルハライドランプやキセノンランプなどの高圧放電ランプにも適用することができる。メタルハライドランプ等においても、耐圧が向上すればするほど好ましいからである。つまり、リーク防止やクラック防止を図ることにより、高信頼性で長寿命のランプを実現することができるからである。
【0118】
また、水銀だけでなく金属ハロゲン化物も封入されているメタルハライドランプに、上記実施形態の構成を適用する場合には、次のような効果も得られる。すなわち、第2のガラス部9によって、金属棒3と封止部2のガラスの間にある僅かな隙間から侵入して金属箔4に反応して箔の脆化をもたらす金属ハロゲン化物の侵入を、効果的に軽減させることが可能となる。このように、上記実施形態の構成は、メタルハライドランプに好適に適用可能である。近年、水銀を封入しない無水銀メタルハライドランプの開発も進んでいるが、そのような無水銀メタルハライドランプに、上記実施形態の技術を適用することも可能である。
【0119】
なお、封入水銀量が300〜400mg/cc程度またはそれ以上(点灯動作圧30〜40MPa)を実現できる技術というのは、特に点灯動作圧20MPaを超えるレベルのランプ(すなわち、今日の15MPa〜20MPaのランプを超える点灯動作圧を有するランプ。例えば、23MPa以上または25MPa以上のランプ)について、その安全性および信頼性を確保できる意義も有している。つまり、ランプを大量生産する場合には、ランプの特性にどうしてもばらつきが生じ得るため、点灯動作圧が23MPa程度のランプであっても、マージンを考えた上で耐圧を確保する必要があるので、30MPa以上の耐圧を達成できる技術は、30MPa未満のランプについても、実際に製品を供給できるという観点からの利点は大きい。もちろん、30MPa以上の耐圧を達成できる技術を用いて、23MPaあるいはそれ以下の耐圧でもよいランプを作製すれば、安全性および信頼性の向上を図ることができる。
【0120】
また、点灯動作圧が約30〜40MPaまたはそれ以上(約300〜400気圧またはそれ以上)である極めて高耐圧を示す高圧水銀ランプについては、本願出願人による特願2001−371365号明細書および特願2002−351524号明細書にも開示がある。ここでは、これらの特許出願を本願明細書に参考のため援用することとする。
【0121】
これらの出願には、約10kgf/cm2以上約50kgf/cm2以下の圧縮応力が、側管部の一部(特に、第2のガラス部9の内部および/または境界)に、少なくとも長手方向にて生じていることが開示されており、また、一対の側管部のそれぞれについて、圧縮応力が生じることが好ましいことが開示されている。
【0122】
また、その圧縮応力(圧縮歪み)を生じさせるには、加熱(アニール)を、2時間以上行うこと(例えば、100時間以上)行うことがよいことが開示されており、そして、その加熱は、前記第2のガラスの歪点温度よりも高く且つ前記第1のガラスの歪点温度よりも低い温度の炉に、ランプ完成体(加熱する前の高圧放電ランプの形態)を配置することよって実行されることが開示されている。その炉内は、例えば、真空または減圧状態となっている。
【0123】
以上、本発明の好ましい例について説明したが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の変形が可能である。
【0124】
【発明の効果】
以上のように本発明の高圧放電ランプは、側管部に、発光管から延在した第1のガラス部と、第1のガラス部の内側であって、電極棒と金属箔との接合部および電極棒の少なくとも一部を覆う第2のガラス部とを有しており、第2のガラス部の発光管側の端部の前面が、電極棒に設けられたコイルに接していることにより、より信頼性を高めることができる高圧放電ランプを提供することができる。
特に、本発明によれば、製作ばらつきに左右されず、高耐圧強度ランプを安定供給でき、ランプ寿命と安全性をより高めるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図2】本発明の実施の形態におけるコイルを示す図
【図3】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図5】本発明の実施の形態における耐圧測定をするためのランプの構成を示す模式図
【図6】本発明の実施の形態を説明するランプを示す図
【図7】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図8】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図9】本発明の実施の形態における電極棒の構成を示す図
【図10】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図11】本発明の実施の形態のランプの構成を示す模式図
【図12】本発明の実施の形態を説明するグラフを示す図
【図13】本発明の実施の形態における第1の筒状構造物を示す図
【図14】本発明の実施の形態における電極棒の構成を示す図
【図15】本発明の実施の形態における電極組立体の構成を示す図
【図16】本発明の実施の形態における電極棒の構成を示す図
【図17】本発明の実施の形態における電極組立体の構成を示す図
【図18】本発明の実施の形態における管の構成を示す図
【図19】本発明の実施の形態における管に電極組立体を挿入する方法を示す図
【図20】本発明の実施の形態における管を真空排気する方法を示す図
【図21】本発明の実施の形態における電極封止をする方法を示す図
【図22】本発明の実施の形態における電極封止をする方法を示す図
【図23】封止構造を備えた高圧放電ランプの構成を示す図
【図24】封止構造の断面図
【図25】封止構造の断面図
【図26】封止構造を備えた高圧放電ランプの構成を示す図
【図27】封止構造を備えた高圧放電ランプの説明をするグラフを示す図
【図28】封止構造を備えた高圧放電ランプの説明をするイメージ図
【符号の説明】
1 発光管
2 側管部
3 電極棒
4 金属箔
5 外部リード線
6 コイル
7 水銀
8、8a、8b 間隙
9 ガラス層、第2のガラス部
10 閉塞側管部
11 開口側管部
12 コイル
13a、b 側管部
14a,b 端付近
15 電極棒
16 円盤状金属体
17 第1のガラス部
20 第3のガラス部
21 金属バネ
100 コイル6付き電極棒
101 電極組立体
102 管
103 第1の筒状構造物
104 電極組立体
105 電極組立体
106 第2の筒状構造物
110 コイル
Claims (14)
- 管内に発光物質が封入される発光管と、
前記発光管から延在し、前記発光管の気密性を保持する側管部と、
前記発光管内に放電アークを維持するために一端が配置された一対の電極棒と、
前記側管部に配置され、前記電極棒の他端と電気的に接続された金属箔とを備え、
前記側管部は、前記発光管から延在した第1のガラス部と、前記第1のガラス部の内側であって、前記電極棒と前記金属箔との接合部および前記電極棒の少なくとも一部を覆う第2のガラス部とを有しており、
前記第2のガラス部における前記発光管側の端部の前面は、前記電極棒に設けられたコイルに接している、高圧放電ランプ。 - 前記第2のガラス部内には、前記電極棒の一部と、当該電極棒と前記金属箔との接続部が位置しており、
前記発光管の側を前方としたときに、前記コイルが位置する領域の後方に、前記第2のガラス部が配置されており、
前記第2のガラス部における前記前面は、前記第1のガラス部に接触していない、請求項1に記載の高圧放電ランプ。 - 一対の電極棒のそれぞれの一端が管内に配置された発光管と、
前記発光管の両端から延在する側管部とを備え、
前記側管部内には、前記電極棒の前記一端に対する他端に電気的に接続された前記金属箔が位置しており、
少なくとも一方の前記側管部は、
前記発光管から延在した第1のガラス部と、
前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられ、当該第1のガラス部の軟化点よりも低い第2のガラス部と、
前記第1のガラス部と第2のガラス部との間に設けられ、前記第1のガラス部と前記2のガラス部との中間の軟化点を有する第3のガラス部とを含んでおり、
前記電極棒のうち、前記少なくとも一方の側管部内に位置している部位の少なくとも一部には、コイルが設けられており、
前記第2のガラス部内には、前記電極棒と前記金属箔との接続部が位置しており、
前記第2のガラス部のうち前記発光管側に位置する部位は、前記コイルと前記第3のガラス部によって囲まれている、高圧放電ランプ。 - 前記第2のガラス部の前記前方に位置する前面は、前記コイルが位置する領域に接触しており、且つ、前記第2のガラス部の前記前面は、前記第1のガラス部に接触していない、請求項3に記載の高圧放電ランプ。
- 前記第2のガラス部は、銅、アルミニウム、鉄、ナトリウムおよびホウ素ならびにそれらの酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいる、請求項1から4の何れか一つに記載の高圧放電ランプ。
- 前記第2のガラス部は、シリカと、銅および酸化銅の少なくとも一方と、アルミナとを含んでいるガラスから構成されている、請求項1から4の何れか一つに記載の高圧放電ランプ。
- 一対の電極棒のそれぞれの一端が管内に配置された発光管と、
前記発光管の両端から延在する側管部とを備え、
前記側管部内には、前記電極棒の前記一端に対する他端に電気的に接続された前記金属箔が位置しており、
少なくとも一方の前記側管部は、
前記発光管から延在した第1のガラス部と、
前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられ、当該第1のガラス部の軟化点よりも低い第2のガラス部と、
前記第1のガラス部と第2のガラス部との間に設けられ、前記第1のガラス部と前記2のガラス部との中間の軟化点を有する第3のガラス部とを含んでおり、
前記電極棒のうち、前記少なくとも一方の側管部内に位置している部位の少なくとも一部には、円盤状構造体が設けられており、
前記第2のガラス部内には、前記電極棒と前記金属箔との接続部が位置しており、
前記第2のガラス部のうち前記発光管側に位置する部位は、前記円盤状構造体と前記第3のガラス部によって囲まれている、高圧放電ランプ。 - 一対の電極棒のそれぞれの一端が管内に配置された発光管と、
前記発光管の両端から延在する側管部とを備え、
前記側管部内には、前記電極棒の前記一端に対する他端に電気的に接続された前記金属箔が位置しており、
少なくとも一方の前記側管部は、
前記発光管から延在した第1のガラス部と、
前記第1のガラス部の内側の少なくとも一部に設けられ、当該第1のガラス部の軟化点よりも低い第2のガラス部とを含んでおり、
前記第2のガラス部のうち前記発光管側に位置する部位は、前記第1のガラスに接触していない、高圧放電ランプ。 - 前記高圧放電ランプは、高圧水銀ランプであり、
前記発光物質として水銀が、前記発光管の内容積を基準に、150mg/cm3以上封入されている、請求項1から8の何れか一つに記載の高圧放電ランプ。 - 前記水銀が300mg/cm3以上封入されている、請求項9に記載の高圧放電ランプ。
- 一端および他端の間にコイルまたは円盤構造体が配置された電極棒を用意する工程と、
前記電極棒に、第1のガラスである石英ガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス筒構造体を挿入し、それによって、前記コイルまたは前記円盤構造体と前記他端との間に、前記ガラス筒構造体を配置した後、前記他端と金属箔とを溶接する工程と、
前記電極棒、前記ガラス筒構造体および前記金属箔を含む電極組立体を、第2のガラスから構成された側管部に挿入する工程とを包含する、高圧放電ランプの製造方法。 - 他端に金属箔が溶接された電極棒の一端に、第1のガラスである石英ガラスよりも軟化点の低い第2のガラスから構成されたガラス筒構造体を挿入する工程と、
前記電極棒にコイルを溶接し、それによって、前記ガラス筒構造体を前記金属棒に固定する工程と、
前記電極棒、前記ガラス筒構造体および前記金属箔を含む電極組立体を、第2のガラスから構成された側管部に挿入する工程とを包含する、高圧放電ランプの製造方法。 - 前記ガラス筒構造体を覆うように、前記第1のガラスと前記2のガラスとの中間の軟化点を有する第3のガラスから構成された更なるガラス筒構造体を配置する工程をさらに包含する、請求項11または12に記載の高圧放電ランプの製造方法。
- 前記第2のガラスの軟化点よりも高い温度で、加熱処理を行う工程をさらに包含する、請求項13に記載の高圧放電ランプの製造方法。
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WO2009025119A1 (ja) * | 2007-08-21 | 2009-02-26 | Harison Toshiba Lighting Corp. | メタルハライドランプ |
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-
2003
- 2003-02-13 JP JP2003034746A patent/JP2004247124A/ja active Pending
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