JP3618140B2 - マンガン乾電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、マンガン乾電池に関し、さらに詳しくは、水銀、カドミウム、鉛などの有害な重金属を用いることなく、亜鉛缶の耐食性を向上させたマンガン乾電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のマンガン乾電池は、亜鉛缶の腐食防止のために、水銀を電解液に添加したり、カドミウムや鉛を亜鉛缶の合金成分として添加し、亜鉛と合金化させていた。
【0003】
しかし、最近は環境汚染防止の観点から、水銀、カドミウム、鉛などの有害な重金属は使用することができなくなり、その結果、亜鉛缶の耐食性が低下し、亜鉛缶から水素ガスが発生して、放電性能が低下するという問題が発生した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水銀、カドミウム、鉛などの使用廃止に伴う亜鉛缶の耐食性の低下を解消し、水銀、カドミウム、鉛などの有害な重金属を用いることなく、亜鉛缶の耐食性を向上させたマンガン乾電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、セリウムおよびマグネシウムを合金成分として添加した亜鉛缶を用いることによって、亜鉛缶にカドミウムや鉛を添加せず、かつ電解液に水銀を添加することなく、亜鉛缶の耐食性を向上させて、上記目的を達成したものである。
【0006】
上記セリウムの添加量は、亜鉛缶を構成する全金属中0.005〜1重量%程度が好ましく、特に0.1〜0.2重量%程度が好ましい。セリウムの添加量が上記範囲より少ない場合は、亜鉛缶の耐食性が充分に向上せず、また製缶性も悪く、作製後の亜鉛缶の表面に傷、曲がり、へこみなどの外観不良が生じ、セリウムの添加量が上記範囲より多くなると、電位劣化や放電性能の低下が大きくなる傾向がある。
【0007】
また、本発明のマンガン乾電池では、亜鉛缶にカドミウムや鉛などの有害な重金属は添加しないが、製缶性などを向上させる目的で、人体や環境に悪影響を及ぼすおそれのないマグネシウムを亜鉛缶に合金成分として添加しているが、このマグネシウムは硬さを増す上で有用であり、このマグネシウムの添加量は、特に限定されるものではないが、通常、亜鉛缶を構成する全金属中0.0001〜0.003重量%程度が好ましい。さらに、本発明のマンガン乾電池では、亜鉛缶にカドミウムや鉛などの有害な重金属は添加しないが、製缶性などを向上させる目的で、人体や環境に悪影響を及ぼすおそれのないアルミニウムを亜鉛缶に合金成分として添加してもよい。このアルミニウムは延性を付与する上で有用であり、このアルミニウムの添加量は、特に限定されるものではないが、通常、亜鉛缶を構成する全金属中0.001〜0.1重量%程度が好ましい。
【0008】
なお、本発明のマンガン乾電池では、亜鉛缶に鉛を添加していないが、亜鉛缶を作製する地金中に鉛が30ppm以下の範囲内で混入している場合があり、それに基づいて亜鉛缶が鉛を30ppm以下の範囲で含有する場合がある。ただし、30ppm以下の低い鉛含有量であれば、鉛による環境や人体への影響はそれほど多くないので、30ppm以下の含有量で亜鉛缶が鉛を含有していてもよい。ただし、鉛を含有しない方が好ましいことはいうまでもない。なお、最純亜鉛地金のJIS規格はJIS−H2107で規定されているが、このJIS−H2107の許容鉛含有量が30ppm以下である。また、従来において亜鉛缶の耐食性を向上させるために鉛を添加していた場合は、鉛の添加量は一般に0.4重量%(4000ppm)程度であり、これに比べれば30ppm以下という鉛含有量ははるかに少なく、環境や人体への影響が少ない。
【0009】
本発明のマンガン乾電池は、上記のようにセリウムおよびマグネシウムを合金成分として添加し、カドミウムや鉛を添加していない亜鉛缶を用い、かつ水銀を使用しないが、それらを除いては従来同様に構成することができる。たとえば、正極活物質としては従来同様に各種の二酸化マンガンを用いることができるし、また電解液も従来同様に塩化亜鉛形の電解液、塩化アンモニウム型の電解液のいずれも用いることができる。
【0010】
【発明の効果】
本発明によれば、セリウムおよびマグネシウムを合金成分として添加した亜鉛缶を用いることにより、水銀、カドミウム、鉛などの有害な重金属を用いることなく、亜鉛缶の耐食性を向上させたマンガン乾電池を提供することができる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例などにおいて、濃度を示す%は重量%である。
【0012】
実施例1〜3および比較例1〜2
セリウム、マグネシウム、アルミニウム、鉛などを表1に示す組成で合金成分として添加した亜鉛スラグを用い、衝撃押出法によって単3形の亜鉛缶を作製し、その外観不良率、圧縮強度および腐食減量を調べた。その結果を表2に示す。なお、上記外観不良率、圧縮強度および腐食減量の測定方法は次の通りである。
【0013】
外観不良率:
表1に示す組成で各種金属を合金成分として添加した亜鉛スラグを用い、衝撃押出法によって単3形亜鉛缶を1000個作製し、その外観を検査して、傷・曲がり・へこみなどの発生を調べ、それによって外観不良率を求める。
【0014】
圧縮強度:
亜鉛缶に縦方向に1mm/10秒の定速で荷重をかけ、2mm変形するのに要する荷重を測定する。
【0015】
腐食減量:
重量を測定した亜鉛缶を塩化亜鉛濃度が34%の塩化亜鉛水溶液からなるマンガン乾電池用電解液に浸漬して密閉し、45℃で17日間放置する。そして、上記放置後、亜鉛缶を電解液から取り出し、水洗後、乾燥して、再び重量を測定し、その重量減少量を腐食減量とする。
【0016】
【表1】
Figure 0003618140
【0017】
【表2】
Figure 0003618140
【0018】
表2に示す結果から明らかなように、セリウムおよびマグネシウムを合金成分として添加した実施例1〜3の亜鉛缶は、セリウムを添加していない比較例1の亜鉛缶に比べて、外観不良の発生が少なく、かつ圧縮強度が大きく、製缶性が良好であり、しかも腐食減量が少なく、耐食性も良好であり、これら外観不良率、圧縮強度、腐食減量に関して、鉛を合金成分として0.4%(4000ppm)添加した比較例2の亜鉛缶と同程度の性能を有していた。
【0019】
つぎに、上記実施例1〜3および比較例1〜2の亜鉛缶(ただし、外観不良のないもの)を用い、それ以外は常法に従い、図1に示す構造で単3形の塩化亜鉛型マンガン乾電池を作製し、初度および45℃で30日間貯蔵後の開路電圧ならびに45℃で所定期間貯蔵中のガス発生量を測定した。その結果を表3に示す。
【0020】
ここで、図1に示すマンガン乾電池について説明すると、図中、1は負極としての亜鉛缶、2はセパレータ、3は正極合剤、4は底紙、5は上蓋紙、6は炭素棒、7は封口体、8は密封材、9は負極端子板、10は絶縁リング、11は熱収縮性樹脂チューブ、12は正極端子板、13は絶縁リング、14は金属外装缶である。
【0021】
上記亜鉛缶1はコップ状をしており、それぞれ表1に記載の金属を合金成分として添加した亜鉛スラグを用いて作製したものである。セパレータ2はクラフト紙からなり、このセパレータ2の亜鉛缶1と接触する側の表面には糊材が塗付され、セパレータ2はその糊材が亜鉛缶1に接触するようにして正極合剤3と亜鉛缶1との間に配置されている。
【0022】
正極合剤3は正極活物質の二酸化マンガンとアセチレンブラックとの混合物に電解液を加えて混合したものからなり、この電池の電解液としては34%塩化亜鉛水溶液が用いられている。
【0023】
上記電池は次に示すように組み立てた。まず、コップ状の亜鉛缶1の内部にセパレータ2、底紙4および正極合剤3を挿入し、電解液を注入したのち、正極合剤3上に上蓋紙5を配置し、予備プレス後、炭素棒6を上蓋紙5の中央に設けた貫通孔を通して正極合剤3中に挿入した。
【0024】
ついで、亜鉛缶1の開口縁を内方へカールし、炭素棒6の上端部近傍に密封材8を塗布し、中央に透孔を有する封口体7を炭素棒6に嵌合し、亜鉛缶1の底部外面側に負極端子板9を配置し、該負極端子板9の周縁部に絶縁リング10を配置したのち、亜鉛缶1の側面に熱収縮性樹脂チューブ11を配置し、加熱して上記熱収縮性樹脂チューブ11を熱収縮させ、亜鉛缶1の側面および亜鉛缶1の底部に配置した絶縁リング10上および亜鉛缶1の上部に配置する封口体7の周縁部を被覆した。
【0025】
つぎに、炭素棒6の頭部に正極端子板12を嵌め込み、正極端子板12の外周縁部に絶縁リング13を配置したのち、金属外装缶14で各構成部材を軸方向に締め付けるとともに外装して、図1に概略構造を示すマンガン乾電池にした。
【0026】
電池はいずれも50個ずつ作製し、そのうちの40個について初度(組立直後)の開路電圧を測定し、その後、45℃で30日間貯蔵し、再度開路電圧を測定した。
【0027】
また、残りの電池については、45℃で5日間貯蔵し、貯蔵中に発生するガス量を測定した。その結果を表3に1日あたりのガス発生量で示す。なお、ガス発生量の測定は、封口体に孔をあけ、その孔にチューブを取り付け、電池内で発生したガスを上記チューブで電池外の流動パラフィン中に導き、そのガス量を測定することによって行った。表3中の開路電圧、ガス発生量は、いずれも平均値である。
【0028】
【表3】
Figure 0003618140
【0029】
表3に示す結果から明らかなように、セリウムおよびマグネシウムを合金成分として添加した亜鉛缶を用いた実施例1〜3の電池では、セリウムを添加していない亜鉛缶を用いた比較例1の電池に比べて、ガスの発生量が少なく、鉛を合金成分として0.4%(4000ppm)添加した亜鉛缶を用いた比較例2の電池と同等またはそれに近いガス発生量であり、亜鉛缶の耐食性が向上していた。
【0030】
上記のように、ガス発生の抑制、すなわち、亜鉛缶の耐食性の向上はセリウムの添加量が多くなるにつれてより顕著になるが、開路電圧はセリウムの添加量の増加に伴って低下する傾向があり、放電性能面からはセリウムの添加量が多くなりすぎると好ましくないことも判明した。ただし、実施例1〜3の範囲では支障をきたすほどの大きな開路電圧の低下はなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマンガン乾電池の一例を概略的に示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 亜鉛缶
2 セパレータ
3 正極合剤

Claims (4)

  1. 二酸化マンガンを正極活物質とし、水銀、カドミウム、鉛などの有害な重金属を添加していない亜鉛缶を負極とするマンガン乾電池において、セリウムおよびマグネシウムを合金成分として添加した亜鉛缶を用いたことを特徴とするマンガン乾電池。
  2. セリウムの添加量が、亜鉛缶を構成する全金属中0.005〜1重量%であり、マグネシウムの添加量が、亜鉛缶を構成する全金属中0.0001〜0.003重量%である請求項1記載のマンガン乾電池。
  3. 亜鉛缶が、アルミニウムを合金成分として添加したものである請求項1または2記載のマンガン乾電池。
  4. アルミニウムの添加量が、亜鉛缶を構成する全金属中0.001〜0.1重量%である請求項記載のマンガン乾電池。
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