JP3615155B2 - エアバッグ用カバー体成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などに装備されるエアバッグをインストルメントパルの内側に収納するためのエアバッグ用カバー体を、インストルメントパネルに対して一体的に成形する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車などの高速移動車両には、乗員の安全性を確保するため、エアバッグシステムが装備されることが多い。エアバッグシステムは、衝突事故などにおいて車両に衝撃が加わった際に、その衝撃の乗員への伝達を吸収するための装置であって、一般に、車両への衝撃を検知し且つその衝撃の程度を判断して作動信号を発信するセンサ、この作動信号に基づいて所要のガスを発生するガス発生器、及び、ガス発生器からのガスにより膨張展開して乗員を保護するエアバッグの3つのサブシステムより構成されている。エアバッグシステム作動時に膨張展開するエアバッグは通常時には折り畳まれて所定箇所に収納されているが、例えば自動車用エアバッグシステムにおける助手席用エアバッグの場合は、インストルメントパネルの内側に収納されている。従って、エアバッグが収納装備されたインストルメントパネルには、システム作動緊急時にエアバッグの乗員方向への膨出を許容するための開口部、及び、システム非作動通常時にこの開口部を閉塞し且つシステム作動時には開口部を開放するためのカバー体が必要とされる。
【0003】
図12は、従来の方法により別体として樹脂成形されたエアバッグ用カバー体101が配設されたインストルメントパネル100の斜視図であり、図13は、図12に示すインストルメントパネル100におけるエアバッグ用カバー体101配設箇所の一部断面拡大斜視図である。図13に示される断面形状は、図12の線XII−XIIに沿った断面形状に相当する。
【0004】
インストルメントパネルへのエアバッグ用カバー体の形成においては、従来、インストルメントパネル100とエアバッグ用カバー体101は互いに別体として樹脂成形され、その後に、図13によく表されているように、カバー体101がエアバッグ用開口部102を閉塞するようにインストルメントパネル100に取付けられていた。そのため、従来では、パネル本体の成形とは独立したカバー体成形工程、及びそのための金型などが別途必要であって、インストルメントパネルの製造工程が煩雑であった。
【0005】
また、別部材としてのカバー体101をインストルメントパネル100に取付けると、図13に示すように、インストルメントパネル100の外側面において、カバー体101とパネル本体100との境目に隙間ないし段部103が形成され、その結果、図12に示すように、カバー体101が視覚的に認識されるようになる。カバー体が視認可能であることは、乗員がエアバッグの存在および搭載箇所を認知するうえでは有益であるが、インストルメントパネルのデザインの自由度を制限してしまうことになり、インストルメントパネルのデザインにおいて好ましくない場合がある。
【0006】
特開平11−291069号公報、特開平6−143357号公報および特開2000−108833号公報には、エアバッグ用カバー体の別体成形に基づく以上のような問題を解消するため、エアバッグ用カバー体とインストルメントパネルとを一体的に成形する方法が開示されている。
【0007】
具体的には、特開平11−291069号公報によると、インストルメントパネル本体を、エアバッグ用開口部を設けずに射出成形した後に、パネルの裏面におけるエアバッグ収納位置に対応する所定箇所にレーザ加工により破断溝が形成される。ここで破断溝とは、エアバッグシステム作動時にエアバッグの膨張力を受けることにより破断して、エアバッグ収納位置に対応するインストルメントパネルの所定部分を開裂可能にするために形成される溝をいう。このような破断溝をインストルメントパネルに形成することにより、破断溝により規定されるエアバッグ用カバー体がインストルメントパネルに一体的に成形されることとなる。
【0008】
一方、特開平6−143357号公報および特開2000−108833号公報によると、型締されたインストルメントパネル金型の空隙部に対して、パネルの裏面側に所望の破断溝が形成されるようにコアが配設され、この状態で空隙部に樹脂材料が充填される。すると、インストルメントパネルを射出成形する際に、破断溝により規定されたエアバッグ用カバー体がインストルメントパネルに一体的に成形されることとなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のレーザ加工法では、レーザ照射によってインストルメントパネルに形成される破断溝の深さについて微調節することが比較的困難であり、特に単層構造のインストルメントパネルの場合には、過剰なレーザ照射によってインストルメントパネルを貫通してしまうおそれがある。また、インストルメントパネルの射出成形工程とは別に複雑なレーザ加工機による加工工程が必要であるため、インストルメントパネルの製造効率の低下を招来してしまう。
【0010】
一方、樹脂材料の射出時にコアを配設しておく方法では、コアは、インストルメントパネルに破断溝即ち薄肉部を形成するように他の金型部分に比べて空隙部内に突出して配設されているため、空隙部内を流動する樹脂材料の障害となってしまう。すると、コアに挟まれた領域や囲まれた領域、すなわちエアバッグ用カバー体形成領域には充分量の樹脂が供給されなくなり、その結果、インストルメントパネルに一体成形されるエアバッグ用カバー体の一部または全体が所望の肉厚よりも薄い状態となる、欠肉の問題が生じてしまう。
【0011】
そこで本発明は、上記従来の問題点を解決または軽減することを課題とし、欠肉を生ぜずにエアバッグ用カバー体をインストルメントパネルに一体的に成形する方法を提供することを目的とする。
【0012】
【発明の開示】
本発明によると、エアバッグ用カバー体をインストルメントパネルに一体的に成形する方法が提供される。当該方法は、第1の型体と第2の型体を接近させて型締を行う型締工程と、第1および第2の型体によって形成される空隙部に樹脂材料を射出する樹脂材料射出工程とを含み、当該樹脂材料射出工程から樹脂材料が固化するまでの過程において、第2の型体に対して摺動可能に設けられている破断溝形成用のコアを第1の型体に向けて退避位置から破断溝形成位置まで変位させる破断溝形成工程を行うことを特徴とする。
【0013】
このような構成によると、インストルメントパネル金型を用いてインストルメントパネルを射出成形する際の樹脂材料射出工程において、破断溝形成用のコアがその破断溝形成位置よりも退避した位置にある状態で、樹脂材料が空隙部に射出される。そして、空隙部に対して樹脂材料を充填中または充填完了後に破断溝形成用のコアが破断溝形成位置に変位させられる。そのため、破断溝形成用コアは空隙部における樹脂材料の流動を一切または殆ど妨害せず、空隙部において破断溝形成用コアによって規定されるカバー体形成領域には充分量の樹脂材料が供給される。その結果、完成品のカバー体には欠肉が生ずることはなく、所望の肉厚を有するエアバッグ用カバー体がインストルメントパネルに一体的に成形されるのである。
【0014】
樹脂材料としては、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂などの熱可塑性樹脂を使用することができる。また、樹脂成形体の補強の観点から、樹脂材料は、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどの無機充填材を含んでいてもよい。
【0015】
コアは、所望のエアバッグ用カバー体に対応する破断溝を形成するための形状を有し、その先端は、先細り状に形成されていてもよいし、第2の型体の型規定面に対して略平行の平坦面が形成されていてもよい。好ましくは、コアの退避位置とは、コアの最先端が第2の型体の型規定面と同一面上に存在する位置あるいは型規定面よりも後退する位置をいうが、完成品のカバー体に欠肉を生じない限りにおいて、破断溝形成位置よりも退避した位置であって、コアの最先端が型規定面よりも第1の型体に向かって延出する位置を、コアの退避位置としてもよい。このような構成を採用する場合には、コアが型規定面から延出する長さは、好ましくはカバー体の肉厚の2分の1以下であり、より好ましくは5分の1以下であり、更に好ましくは10分の1以下である。型規定面に対して略平行な平坦面をその先端に有するコアを使用する場合には、当該平坦面が第2の型体の型規定面と面一状となる位置をコアの退避位置とすれば、コアの摺動箇所として第2の型体に形成されている溝部に樹脂材料が過剰に流入することを適切に防止することができる。
【0016】
エアバッグ用カバー体をインストルメントパネルに一体成形しつつも、エアバッグカバー体が乗員側から確実に視認可能となるように、インストルメントパネルをデザインしたい場合には、第1の型体として、第2の型体に対して摺動可能である破断溝コアの先端に沿って第2の型体へ向かって突出する突条部を有するものを使用する。このような突条部を有する第1の型体を使用すれば、この突条部に応じてインストルメントパネルの表面に溝部が形成される。この溝部は、コアの先端形状に応じてインストルメントパネルの裏面に形成される破断溝とともにカバー体を規定しているので、インストルメントパネルに一体的に成形されるエアバッグカバー体が乗員側から視認できることとなる。エアバッグカバー体を視認することにより、乗員は、エアバッグシステムの存在およびエアバッグの搭載箇所を認識でき、安心感を得ることができる。
【0017】
このような第1の型体の突条部は、樹脂材料射出工程において、樹脂材料が流入すべき空隙部に対して局所的に突出する。従来の、コアを用いたカバー体一体成形方法であれば、破断溝形成用コアの先端部と突条部との距離が著しく短くなってしまい、このような突条部の存在によって樹脂材料の流入が阻害されてしまうと推測されるが、本発明によれば、樹脂材料の流入が著しく阻害されてしまうような事態は回避される。樹脂材料射出工程におけるコアの先端部が、破断溝形成位置よりも第2の型体側に退避し、それにより、破断溝形成箇所における空隙部の幅、すなわち樹脂材料の流動スペースが従来と比較して充分に広く確保することができるからである。従って、好ましくは、破断溝形成用コアの退避位置は、当該コアの先端が、突条部の突出長さ以上に第2の型体の型規定面から退避する位置である。
【0018】
また、成形体において、表面は付近の部分と面一であり且つ厚みが急激に小さくなるような薄肉部を形成すると、成形体表面の当該薄肉部付近で、つやむらが発生する場合があるが、本発明において突条部を有する第1の型体を使用すると、エアバッグカバー体を規定する薄肉部のインストルメントパネ表面側の表面が、肉厚部のインストルメントパネル表面側の表面と面一でなくなるため、つやむらが発生しにくくなる。特別な条件下において、たとえ薄肉部表面につやむらが発生したとしても、当該箇所は溝部であり、インストルメントパネルの美観に与える影響は軽減される。
【0019】
好ましくは、樹脂材料射出工程においては、型体をヒータで加温することによって空隙部に存在する樹脂材料の溶融軟化状態を維持しつつ、空隙部に樹脂材料を射出する。特に、第1の型体、及び/又は、第2の型体における破断溝形成部位に対応する箇所およびその付近を加温することが望ましい。このような構成により、コアを破断溝形成位置に変位させる前に空隙部の樹脂材料が固化してしまうことを適切に回避することができる。このようなヒータは、ヒータが内設されたコアを第1の及び/又は第2の型体に嵌設することによって設けてもよいし、型体内に直接的に設置してもよい。また、ヒータには温度センサを付設し、温度センサの信号に基いてヒータが所定温度にコントロールされるように構成するのが望ましい。
【0020】
好ましくは、本発明に係る方法は、更に、コアを破断溝形成位置から後退させるコア後退工程と、当該コア後退工程後に樹脂材料を冷却する冷却工程とを含む。コアを後退させてから空隙部の樹脂材料を冷却することにより、冷却過程における樹脂材料は、コアにより規制されることなく、自由に均一収縮することができる。そのため、完成品において、樹脂材料の不均一な収縮に起因する収縮斑の発生を回避することが可能となる。
【0021】
好ましくは、第1の型体は、金型装置の固定型取付板に支持固定された固定型であり、第2の型体は、同装置の可動型取付板に支持固定され且つ固定型に対して進退可能な可動型である。そして好ましくは、固定型には、その表面に開口し且つ空隙部に連している射出孔が設けられており、樹脂材料射出工程においては、射出装置で用意された溶融状態にある樹脂材料がこの射出孔を介して空隙部に射出される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0023】
図1〜4は、本発明に係るエアバッグ用カバー体成形方法に含まれる一連の工程を表す。本発明は、インストルメントパネルを射出成形する際に、パネルの所定箇所にエアバッグ用カバー体を成形する方法に係るものである。従って、図1〜4には、本発明を実行するための射出成形装置におけるエアバッグ用カバー体形成領域Sおよびその付近の構成を一部断面図として示す。ここでカバー体形成領域Sとは、完成したインストルメントパネルにおいて破断溝により規定される領域に対応する領域であってエアバッグ用カバー体として機能する領域に対応する領域をいうものとする。
【0024】
本発明を実行するための射出成形装置は、固定型取付板1と、これに対して進退可能な可動型取付板2とを備える。固定型取付板1および可動型取付板2は、各々、インストルメントパネル金型の固定型3および可動型4を固定支持している。固定型3には、カバー体形成領域Sに対応する位置にヒータ付コア5が配設されている。ヒータ付コア5は、その露出面が固定型3の型規定面3aに対して面一状となるように、固定型3に嵌設されている。可動型4には、カバー体形成領域Sに対応する位置にカバー体形成機構6が配設されている。カバー体形成機構6は、所望形状の破断溝に対応するコア7と、このコア7を固定支持するためのコア支持板8と、この支持板8を上下動させるための油圧シリンダ9とを備える。このカバー体形成機構6を配設するために、可動型4には、コア用貫通溝10、支持板収容室11、及びシリンダ収容室12が開設されている。油圧シリンダ9は、固定型4のシリンダ収容室12に固定されており、伸縮動可能なピストンロッド9aを有する。ピストンロッド9aは、支持板収容室11内で支持板8に連結されている。支持板8は、ピストンロッド9aの伸縮動により、支持板収容室11内を上下動する。支持板8に支持固定されているコア7は、支持板8とともに上下動するが、コア7の形状に対応して開設されているコア用貫通溝10内を摺動可能である。コア7は、油圧シリンダ9により支持板8を介して位置決めされる。図1の断面図においては、見かけ上2本のコア7が示されているが、これらは、図外で繋がって一体のコア7を構成している。コア7および支持板8の運動方向がピストン伸縮方向から傾斜するのを防止するため、ピストン伸縮方向に対して平行方向に支持板8を貫通するガイドポスト13が支持板収容室11に固定されている。
【0025】
図1は、本発明に係るエアバッグ用カバー体成形方法における型締工程を表す。本工程においては、可動型4は、可動型取付板2と一体となって固定型3に接近し、図外の所定箇所にて固定型3に合わされる。可動型4が固定型3に対して合わされた状態すなわち型締状態において、両型の間には樹脂が充填される空間としての空隙部14が形成される。本実施形態においては、空隙部14におけるカバー体形成領域Sの幅Wは1〜5mmである。コア7は、油圧シリンダ9によって退避位置に位置決めされており、待機状態にある。図1においては、コア7の先端部は先細り状とされており、退避位置とはコア7の最先端が可動型4の型規定面4aから退避した位置をいう。このとき、ヒータ付コア5は、その内部に温度センサ(図示略)を備え、カバー体形成領域Sおよびその近傍の金型を30〜300℃の温度範囲で加温している。
【0026】
図2は、上述の型締工程に続いて行われる樹脂材料射出工程を表す。本工程では、型締工程で形成された空隙部14に、溶融状態にある樹脂材料15が充填される。具体的には、図外の樹脂射出装置で溶融された樹脂材料15が、当該射出装置から、空隙部に連通するように固定型3に形成された図外の射出孔を介して、所定の圧力で空隙部14に射出される。このとき、コア7は上述の退避位置に待機したままとされる。そのため、樹脂材料15が空隙部14におけるカバー体形成領域Sを通過する際、コア7の先端は樹脂材料15の流動の妨げとはならず、カバー体形成領域Sには充分な樹脂材料15が供給される。このとき、ヒータ付コア5は、カバー体形成領域Sを通過または填塞する溶融状態の樹脂材料15を100〜300℃の温度範囲で加温しており、樹脂材料15が次の破断溝形工程以前に固化することを防止する役割を担う。
【0027】
図3は、空隙部14に樹脂材料15が充填された後に行われる破断溝形成工程を表す。本工程では、油圧シリンダ9が、そのピストンロッド9aを伸長駆動することによって、支持板8およびこれに支持固定されるコア7を上述の退避位置から破断溝形成位置に進出させる。ここで破断溝形成位置とは、コア7の先端が、樹脂材料15が既に充填されている空隙部14に押入して、インストルメントパネルの本体とエアバッグ用カバー体との境界である破断溝を形成する位置をいう。本実施形態では、破断溝形成位置におけるコア7の先端と固定型側の型規定面との距離は、0.1〜1.5mmである。ヒータ付コア5は、コア7が破断溝形成位置に変位した後に、それまで継続していた加温動作を停止する。そして、溶融していた樹脂材料15が型崩れしない程度に固化するまで、コア7を破断溝形成位置に待機させ、空隙部14に充填された樹脂材料15を保圧する。この保圧過程の期間については、予め装置に設定しておくことによって当該期間経過後に自動的に次の工程に移るように装置を構成してもよいし、ヒータ付コア5に設けられた温度センサ(図示略)により空隙部14に充填された樹脂材料15の温度を検知し、所定温度にまで樹脂材料温度が低下したときに自動的に次の工程に移るように装置を構成してもよい。また、本実施形態では、樹脂材料15が空隙部14に完全に充填された後に破断溝形成工程が開始されるが、完全に充填される以前であっても樹脂材料15が空隙部14におけるカバー体形成領域Sを通過した後であれば、コア7を空隙部14の樹脂材料15に対して押入してもよい。このようなタイミングで破断溝形成工程を行っても、樹脂材料15は既にカバー体形成領域Sに充分に供給されているため、成形されたカバー体に欠肉は生じない。また、樹脂材料15は、領域S以外の空隙部14には破断溝形成位置に変位したコア7を迂回して流入可能であるので、インストルメントパネルの他の領域においても欠肉の問題は回避される。
【0028】
図4は、上述の破断溝形成工程の保圧過程に続いて行われるコア後退工程を表す。本工程では、油圧シリンダ9が、そのピストンロッド9aを短縮駆動することによって、支持板8およびこれに支持固定されるコア7を上述の破断溝形成位置から退避位置に後退させる。本工程の後、コア7を退避位置に待機させ、空隙部14の樹脂材料15が充分に固化するまで冷却する。冷却手段としては、自然放冷でもよいし、固定型3及び/又は可動型4に空冷式や水冷式などの冷却機構(図示略)を設けてもよい。冷却工程の後、可動型取付板2を駆動して可動型4を固定型3から離隔して型開し、成形されたインストルメントパネルを取出す。
【0029】
図5は、上述の一連の工程によりインストルメントパネル20に一体成形されたエアバッグ用カバー体21の一部断面斜視図である。本発明によると、インストルメントパネル20の裏面側に破断溝24が形成されることにより、破線で示すような形状で、他の箇所よりも薄肉の脆弱部25が形成される。この脆弱部25により規定される領域がエアバッグ用カバー体21としてインストルメントパネルに一体的に成形されている。カバー体21のうち図示されていない部分の形状は、断面を対称面として、図示されている部分の形状と略対称であるものとする(以下の図7および図9において同じ)。本発明により成形されたカバー体21は金型成形の際の空隙部14に対応した充分な肉厚を有し、部材厚において薄肉な箇所は形成されていない。そのため、システム作動時に膨張展開しようとするエアバッグから押圧力を受けた場合には、破線で示された脆弱部25のみが適切に破断可能である。また、カバー体21はインストルメントパネル20に対して一体成形されているため、パネル20の外側表面において隙間や段部は形成されない。従って、エアバッグ用カバー体の存在によりインストルメントパネルの外観構成が影響ないし制約を受けることはない。本実施形態では、矩形郭の破断溝を形成することによって矩形のカバー体21が成形されるが、破断溝24の形状を適宜変更することによって、円形や他の多角形のカバー体を形成することもできる。また、破断溝24をコの字型に形成し、且つコの字の開放部に破断しない程度の脆弱部を形成することにより、当該脆弱部をヒンジ部としてカバー体21を片開き可能に構成してもよい。
【0030】
図6は、本発明の樹脂材料射出工程について、他の態様を表す。本態様のコア7は、その先端に、可動型4の型規定面4aに対して面一可能である平坦面7aを有する。この平坦面7aが型規定面4aと面一となる位置にてコア7を待機させつつ、空隙部14に樹脂材料15を射出する。本態様によると、樹脂材料15がコア用貫通溝10に流入することを防止することができるうえに、樹脂材料15のカバー体形成領域Sへの流入はコア7によって全く阻害されず、カバー体形成領域Sには充分量の樹脂材料15が供給される。従って、本態様によっても、肉厚を生ぜずにエアバッグ用カバー体をインストルメントパネルに一体的に成形できる。
【0031】
図7は、図6に示す樹脂材料射出工程を採用してインストルメントパネル30に一体成形されたエアバッグ用カバー体31の一部断面斜視図である。脆弱部35により規定されるカバー体31は、図5に示されるカバー体21と略同様の矩形状であり、血肉を生じていない。脆弱部35は、上述のコア7の平坦面7aに対応して面的に形成されているため、樹脂材料15の種類に応じて平坦面7aの幅を変更し、脆弱部35の脆弱の度合いを調節することができる。
【0032】
図8は、本発明の実施に用いるカバー体形成機構について、他の態様を表す。本態様のカバー体形成機構6’は、上述の実施形態とは異なるコア7’を有する。このコア7’は、エアバッグ用カバー体を規定する破断溝のみならず、カバー体自体を開裂可能にするような破断溝を形成するための形状を有する。即ち、図8の断面図において見かけ上3本のコア7’のうち両側の2本がカバー体を規定する破断溝形成用であり、中央の1本がカバー体を開裂可能にする破断溝形成用である。ただし、本態様においては、これら見かけ上3本のコア7’は、図外で繋がり、一体のコア7’を構成している。そして可動型4には、このようなコア7’の形状に対応したコア用貫通溝10’が形成されている。その他の構成については、上述の実施形態と同様の構成である。
【0033】
図9は、図8に示されたカバー体形成機構を用いてインストルメントパネル40に一体成形されたエアバッグ用カバー体41の一部断面斜視図である。破断溝44aの形成によりインストルメントパネル40に脆弱部45aが形成され、破断溝44bの形成により脆弱部45bが形成されている。脆弱部45aはカバー体41を規定している。このカバー体41は、膨張するエアバッグから押圧力を受けた場合には、脆弱部45aの破断によりインストルメントパネル40から外れるとともに、脆弱部45bの破断により割裂する。破断溝の深さを調節して脆弱部45bを脆弱部45aよりも薄肉に形成すれば、エアバッグ膨張時に脆弱部45bが先に破断し易くなり、従って、エアバッグ用開口部の中央付近からの膨出が担保される。また、エアバッグ膨張力を受けても破断しない程度の脆弱部を脆弱部45bに平行な脆弱部45aの代わりに形成することにより、当該脆弱箇所をヒンジ部としてカバー体41を蝶開き可能に構成してもよい。
【0034】
図10は、本発明の型体について、他の態様を表す。本態様における固定型3には、カバー体形成領域Sに対応する位置にヒータ付コア5’が配設されている。コア5’は、その露出面における固定型3との境界部が固定型3の型規定面3aに対して面一状となるように、固定型3に嵌設されている。また、コア5’は、破断溝形成用コア7の先端に沿って可動型4へ向かって突出する突条部5’aを有する。突条部5’aが空隙部14に突出していることによって、コア7に応じてインストルメントパネルの裏側に形成される破断溝に加えて、パネルの表側からも破断溝が形成されることとなる。樹脂材料射出工程時には、破断溝形成用コア7は、その先端が突条部5’の突出長さ以上の距離だけ、可動型4の型規定面4aから退避させておく。その状態で、空隙部14へ樹脂材料を射出する(図示せず)。そうすることによって、カバー体形成領域Sに対応する空隙部14に突条部5’aが突出する状態であっても、破断溝形成箇所における空隙部14の幅は、カバー体形成領域Sの内部に樹脂材料が充分に流入する程度に広く確保される。
【0035】
図11は、図10に示す型体を採用してインストルメントパネル50に一体成形されたエアバッグ用カバー体51の一部断面斜視図である。脆弱部55は、パネル50の裏側に形成されている破断溝54aと表側に形成されている破断溝54bとに挟まれている。脆弱部55により外郭が規定されるカバー体51は、図5に示されるカバー体21と略同様の矩形状であり、欠肉を生じていない。カバー体51の外郭を規定する脆弱部55が、インストルメントパネル50の表面から退避しているため、インストルメントパネル50におけるエアバッグ用カバー体形成位置は視覚的に認識可能となっている。
【0036】
以上、本発明の実施形態について助手席用エアバッグのカバー体を例に挙げて説明したが、本発明はステアリング用エアバッグのカバー体にも適用できる。
【0037】
【発明の効果】
本発明によると、エアバッグ用カバー体をインストルメントパネルに一体的に成形する方法において、樹脂材料の射出中又は射出後であって樹脂材料が固化する前に、破断溝形成用のコアが樹脂材料に押入され、樹脂材料に破断溝の形状が型取られる。そのため、カバー体形成領域に充分な樹脂材料が供給された状態で、カバー体を成形することが可能となり、その結果、欠肉を生じていないエアバッグ用カバー体を備えたインストルメントパネルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエアバッグ用カバー体成形方法における型締工程を表す。
【図2】本発明に係るエアバッグ用カバー体成形方法における樹脂材料射出工程を表す。
【図3】本発明に係るエアバッグ用カバー体成形方法における破断溝形成工程を表す。
【図4】本発明に係るエアバッグ用カバー体成形方法におけるコア後退工程を表す。
【図5】本発明によりインストルメントパネルに一体成形されたエアバッグ用カバー体の一部断面斜視図である。
【図6】本発明の樹脂材料射出工程について、他の態様を表す。
【図7】図6に示された樹脂材料射出工程を採用してインストルメントパネルに一体成形されたエアバッグ用カバー体の一部断面斜視図である。
【図8】本発明の実施に用いるカバー体形成機構について、他の態様を表す。
【図9】図8に示されたカバー体形成機構を採用してインストルメントパネルに一体成形されたエアバッグ用カバー体の一部断面斜視図である。
【図10】本発明の型体について、他の態様を表す。
【図11】図10に示された第1の型体を採用してインストルメントパネルに一体成形されたエアバッグ用カバー体の一部断面斜視図である。
【図12】従来の方法により別体として形成されたエアバッグ用カバー体が配設されたインストルメントパネルの斜視図である。
【図13】図12に示すインストルメントパネルにおけるエアバッグ用カバー体配設箇所の一部断面斜視図である。
【符号の説明】
S カバー体形成領域
3 固定型
4 可動型
5,5’a ヒータ付コア
7,7’ コア
7a 平坦面
8 コア支持板
10,10’ コア用貫通溝
13 ガイドポスト
14 空隙部
15 樹脂材料
20,30,40,50,100 インストルメントパネル
21,31,41,51,101 エアバッグ用カバー体
24,34,44a,44b,54a,54b 破断溝
25,35,45a,45b,55 脆弱部
Claims (4)
- 第1の型体、第2の型体、及び当該第2の型体に対して摺動可能に設けられている破断溝形成用のコアを含む射出成形装置を用いて、上記第1の型体と第2の型体を接近させて型締を行う型締工程と、上記第1および第2の型体によって形成される空隙部に樹脂材料を射出する樹脂材料射出工程と、当該樹脂材料射出工程から上記樹脂材料が固化するまでの過程において、上記第2の型体に対して上記コアを、上記第1の型体に向けて退避位置から破断溝形成位置まで変位させる破断溝形成工程と、を含むエアバッグ用カバー体をインストルメントパネルに一体的に成形する方法であって、
上記樹脂材料が型崩れしない程度に固化したときに、上記コアを破断溝形成位置から後退させるコア後退工程を更に含むことを特徴とする、エアバッグ用カバー体成形方法。 - 上記樹脂材料射出工程において、上記空隙部に射出された樹脂材料を加温することを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ用カバー体成形方法。
- 上記コア後退工程後に上記樹脂材料を冷却する冷却工程を更に含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のエアバッグ用カバー体成形方法。
- 上記コアの上記先端部は先細り状に構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載のエアバッグ用カバー体成形方法。
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