JP3899903B2 - 自動車内装品本体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグ飛び出しのための蓋体部を備えた自動車内装品が硬質樹脂材料を用いて一体成形された自動車内装品本体(硬質樹脂本体)を型成形により製造する方法に関する。
【0002】
以下、本明細書においては、主としてエアバッグ用蓋体部付きのインストルメントパネル(以下「インパネ」と記す。)を例に採り説明するが、その他、サイドドア、ピラー、フロント・バックシート用エアバッグ用蓋体部にも本発明は適応が可能である。
【0003】
【背景技術】
インパネ本体が硬質樹脂(例えばPPF)で成形されたいわゆるハードインパネ(一般射出インパネ)において、助手席用エアバッグ装置のエアバッグ飛び出し口を形成するバッグ蓋体は、従来、インパネ本体とは別体に成形されていた。このため、バッグ蓋体とインパネ本体との間に隙間や段違いが発生しやすく、意匠的に制限を受けるとともに、組み付け工数が嵩んだ。
【0004】
そこで、蓋体部が一体成形された硬質樹脂本体(インパネ本体)と、該蓋体部の裏面に結合されエアバッグモジュールに組み付けられる軟質樹脂連結体(エアバッグ支持アセンブリ)とを備えた構成のハードインパネが提案されている(特開2000−71924:図4・5等参照)。
【0005】
そして、硬質樹脂本体であるインパネの蓋体部には、エアバッグ作動時に破断させる必要があるため破断予定部を溝又は切れ込みを形成させる必要がある。
【0006】
これらの溝又は切れ込みは、インパネ本体を射出成形後、高周波ウェルダー又はレーザー加工等により形成していた。しかし、成形後行うため工数が嵩むとともに、破断位置・深さの制御も困難であった。
【0007】
このため、射出成形時において成形材料注入完了直後に溝形成部材を突出させて破断溝部(ノッチ部)を形成する技術が、ステアリングホイール用パッド(軟質樹脂材料成形品)において提案されている(特開平8−268205・3−254919号公報等)。
【0008】
しかし、上記技術を、硬質樹脂材料からなるハードインパネ(自動車内装品本体)に適用した場合、軟質樹脂材料の場合ほとんど問題とならなかった溝形成部材(溝形成ブロック)の押圧跡が表面(意匠面)側に顕著に出ることが分かった。軟質樹脂材料に比して押圧力を吸収し難いためと推定される。
【0009】
本発明は、上記にかんがみて、エアバッグ飛び出しのための蓋体部が硬質樹脂材料を用いて一体成形された自動車内装品本体を型成形により製造する方法において、溝形成部材の押圧跡が表面側に顕在しない方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意開発に努力をした結果、テアライン賦形ブロック側と反対側である外側賦形面の金型温度を、テアライン賦形ブロックのそれより高くすることにより、上記課題を解決できることを見出して、下記構成の自動車内装品本体の製造方法に想到した。
【0011】
エアバッグ飛び出しのための蓋体部が硬質樹脂材料を用いて一体成形された自動車内装品本体を型成形により製造する方法であって、該型成形に際して、前記蓋体部用のテアライン(破断予定部)に対応させた不連続又は連続のテアライン形成突部を備えたテアライン賦形ブロックをテアライン形成対応位置より後退させた状態で材料を充填後、該材料が流動性を有する状態で、前記テアライン賦形ブロックをテアライン形成対応位置まで前進させてテアラインを形成するとともに、テアライン賦形ブロック側と反対側である外側賦形面の金型温度を、テアライン賦形ブロックのそれより高くすることを特徴とする。
【0012】
テアライン賦形ブロック側と反対側である外側賦形面の金型温度を、成形樹脂材料が硬質樹脂材料であっても、意匠面側の材料が軟化状態に維持され易く、テアライン賦形ブロックによる押圧力が吸収され易くて溝形成部材(溝形成ブロック)の押圧跡が出難い。上記構成は、テアライン賦形ブロックの積極的に本来の金型温度(樹脂硬化温度)より積極的に冷却して上記金型温度条件を満たす場合も含むものである。この場合は、キャビティ内成形材料の硬化を相対的に促進でき、生産性が増大する。
【0013】
上記構成において、テアライン賦形ブロック側と反対側である外側賦形面の金型温度を、成形材料の加熱変形温度(ASTMD648:455kPa)から溶融温度の間に前記テアライン賦形ブロックが前進完了直後まで維持することが、溝形成部材の押圧跡が出難い本発明の効果を担保し易くなる。
【0014】
上記構成において、テアライン(破断予定部)を鎖線状とし、テアラインに対応させて前記テアライン形成突部を鎖線状とすることが望ましい。テアライン(破断予定部)が断続的に形成されるため、自動車内装品本体における蓋体部と蓋体部外周部との一体性(結合性)が増大する。
【0015】
上記構成において、テアライン形成突部を多数の針状ピン及び板状突部の一方又は双方を所定ピッチで連続的に並べて形成したものとすることが、テアライン形成突部を前進させたときの材料流れ及び逃げが均一且つ円滑となり、より表面にテアライン加工跡が出難い。さらには、針状ピン及び板状突部の一方又は双方の先端横断面をテーパ状とすれば、当該作用効果が増大するとともに、テアラインの引き裂き性が増大してエアバッグの展開迅速性に寄与する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の自動車内装品本体に係る製造方法の実施形態について、エアバッグ飛び出しのための蓋体部を備えた自動車内装品として、図1〜2に示すようなインパネ12に適用する場合を例に採り説明をする。図1はインパネ12の全体斜視図、図2はインパネ本体14の裏面要部図である。
【0017】
上記インパネ12におけるインパネ本体(自動車内装品本体:硬質樹脂本体)14は、従来と同様、観音開き可能に一対の前・後蓋体部16、16を備えたもので、硬質樹脂で一体射出成形により製造する。
【0018】
ここで、成形材料と硬質樹脂としては、例えば、PPC(カーボン充填ポリプロピレン)、PPG(ガラス繊維充填ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)/ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体)、PC(ポリカーボネート)、ASG(ガラス繊維充填アリル)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体)、PPE(ポリフェニレンエーテル)等を挙げることができる。これらの硬質樹脂の中、軽量化等の見地から、繊維強化した結晶性ポリオレフィン系樹脂(例えば、ガラス繊維強化ポリプロピレン:PPF)等を好適に使用できる。
【0019】
ここで、観音開きの前・後蓋体部16、16を備えているため、インパネ本体14がH字形の前後の蓋体部16、16の回動外郭に沿う回動部テアライン(破断予定部)18および該H字形の上下端を結ぶ蓋体ヒンジに沿う前後のヒンジ部テアライン(破断予定部)20、20が、インパネ本体14の裏面側から形成されている。各テアライン18、20を裏面側から形成して表面側に顕出させないのは意匠上(リッド部インビジブル)の要請からである。
【0020】
そしてテアライン(破断予定部)18、20は、図例では多数の丸孔又はスリットを所定ピッチで連続的に並べたミシン目(点線(破線)状)とされている(図2・3参照)。
【0021】
ここで、本発明におけるテアラインの形成連続線(曲線・直線問わず)のみでもよく、連続線と不連続線との混在、例えば、図2(A)及び(B)の混在、即ち、一点鎖線状やニ点鎖線状に形成したり、さらには、コーナ部のみ連続線又は点線としてもよい。点線状とした場合は、テアライン(破断予定部)が断続的に形成されるため、自動車内装品本体における蓋体部16、16と蓋体部外周部17(インパネ本体14)との一体性(結合性)が増大する。
【0022】
ここで、上記テアライン18、20は、インパネ本体14の射出成形時(型成形時)に、下記のようにして形成する(主として図4・5参照)。
【0023】
蓋体部16用のテアライン(破断予定部)18、20に対応させたテアライン形成突部22を備えたテアライン賦形ブロック24を、成形材料を充填後、該成形材料が流動性を有する状態で(通常、充填完了後4〜6秒以内)、図5(A)から図5(B)の如く、前進させてテアライン16、18を形成する。すると、図2(A)及び(B)の各3−3線位置では、図3(A)及び(B)に示すような点線状のピン孔又はスリット孔18aが形成される。
【0024】
ここで、成形材料をインパネ本体キャビティCに充填後に、テアライン賦形ブロック24を前進させるのは、成形材料を充填前にテアライン賦形ブロック24が前進状態であると、材料流れ不良や引けが発生して成形品不良が発生しやすいためである。
【0025】
この際、射出成形金型26は、基本的には、雄型(下型:可動型)28と雌型(上型:固定型)30とからなり、雄型28にテアライン賦形ブロック24が、油圧シリンダ32等を介してスライド可能に埋設(付設)されている。
【0026】
全体としては、熱可塑性樹脂を硬化させるため、例えば、成形材料がPPFの場合、通常、金型温度40〜60℃に水通路27、27により温調されている。例えば、結晶性ポリマーであるポリプロピレン(PP)の場合、金型温度が低い方が、成形品剛性が低下するが、耐衝撃性は増大する。このため、インパネ本体14に要求される特性に応じて金型温度を適宜設定する。
【0027】
テアライン賦形ブロック24側と反対側である外側賦形面の金型、すなわち、雌型30の温度を、成形材料の加熱変形温度(ASTMD648:455kPa)から溶融温度の間にテアライン賦形ブロック24が前進完了直後まで維持する。
【0028】
なお、成形材料がPP(ホモポリマー)の場合、溶融温度(イソタチック):165℃、熱変形温度(射出成形品):102.2℃である(「高分子大辞典」丸善、平6.9.20の「プロピレンポリマー」の項参照)。従って、成形材料を、PPFとした場合、生産性、熱効率等の見地から、雌型30の温度を、通常、110〜150℃、望ましくは、120〜140℃に制御する。
【0029】
このように、インパネ本体意匠(外側)面賦形側の金型温度を制御するには、例えば、インパネ本体外側(意匠面)の冷却配管に対して、▲1▼冷却水の通過を一次的に止める、▲2▼積極的に熱水を通過させる、又は、電熱ヒータ等を配して上記インパネ本体意匠面賦形側の金型面を直接的に加熱する等の方法がある。
【0030】
ここで、上記インパネ本体14におけるテアライン(破断予定部)18、20の仕様は、例えば、本体肉厚3mmとした場合、設定孔径:1.0〜1.5mm(ピン孔)、2〜4mm(スリット孔)、孔ピッチ:孔径+0.4〜1.0mm、:孔残肉厚さ:0.05〜0.05mmとする。なお、蓋体部16、16の回動部テアライン18およびヒンジ部テアラインに20に要求される破断特性が異なる場合は、孔ピッチ、孔径等を変えて対応する。通常、ヒンジ部テアラインにおける方が、小さい力で引き裂かれることが要求される。
【0031】
テアライン形成突部22は、多数の針状ピン又は板状突部22aを図4(A)又は(B)に示す如く、連続的に並べて形成してある。このとき、針状ピン又は板状突部22aの先端が横断面テーパ状としてある。材料の逃げが円滑且つ均一にでき、より表面にテアライン加工跡が出難いとともに、テアラインの引き裂き性が増大してエアバッグの展開迅速性に寄与するためである。
【0032】
このとき、テアライン賦形ブロック24の前進開始から終了までの時間は、例えば、10〜25秒とする。
【0033】
そして、上記テアライン賦形後、テアライン賦形ブロック24を前進させたままで、意匠面側金型である雌型の水通路にも冷却水(水道水)を通過させる。そして、冷却によりキャビティC内のPPF等の熱可塑性成形材料が硬化したなら、型開きを行った後、離型をする。このときの冷却時間は、例えば、30〜40秒とする。
【0034】
こうして製造したインパネ本体は、下記の如く、軟質樹脂連結体36と結合させて、インパネとして使用する。
【0035】
軟質樹脂連結体36は、前・後湾曲ヒンジ部40、40におけるヒンジ作用を円滑にするとともに、エアバッグの傷付きを防止する見地から、軟質樹脂で形成されている。
【0036】
軟質樹脂としては、上記同様、軽量化等の見地から、オレフィン系(TPO)、1,2−PB系(RB)、スチレン系(TPS)等の非極性熱可塑性エラストマーを好適に使用できる。ポリエステル系(TPEE)、アミド系(TPA)、ウレタン系(TPU)等の極性熱可塑性エラストマーも使用可能である。
【0037】
軟質樹脂連結体36は、インパネ本体14の裏面で蓋体部16、16のヒンジ(ヒンジ部テアライン)の外側部位に結合される長板状の前・後固定板部(固定部)38、38と、各固定板部38、38から湾曲ヒンジ部40、40を介して蓋体部16、16の裏面に結合され回動端39a、39bで非連続となっている(隙間を有する)一対の前・後回動板部(回動部)39、39とを備えている。そして、図例の軟質樹脂連結体36は、前・後固定板部38、38から、エアバッグモジュール42と結合される前・後取付け壁部44、46を備えている。
【0038】
そして、上記各固定板部38、38のインパネ本体14の裏面に対する又は回動板部39、39の蓋体部16、16に対する結合は、通常、全面接着(化学的結合)とするが、部分結合でも、さらには、熱カシメリベット等による非接着的結合(機械的結合)であってもよい。また、前・後取付け壁部44、46は、軟質樹脂連結体36の一部でなくても別材料で二色成形したり、分割状態でインパネ本体(硬質樹脂本体)から突出させたりしてもよい。
【0039】
上記インパネ12は、エアバッグモジュール42を組み付け、実車に装着して使用をする。
【0040】
エアバッグモジュール42は、基本的には、バッグ本体48と、該バッグ本体48に膨張ガスを流入させるインフレータ50と、それらの部材を一体化させるバッグケース52とからなる。バッグケース52は、インフレ―タ50を保持し、バッグ本体48内に膨張ガス流入をガイドするディフューザ板を兼ねるリテーナ54が一体化されている。
【0041】
バッグケース52の前・後壁52a、52bに、インパネ本体14の結合裏面に形成された軟質樹脂連結体36の前・後取付け壁44、46を挿入係合させて、エアバッグアセンブリとし、図示しないブラケットを介して車体(実車)に装着する。
【0042】
そして、車体に所定値以上の衝撃荷重が作用すると、バッグ蓋体部16、16の回動部テアライン18及びヒンジ部テアライン20が下記の如く破断して、蓋体部16、16がインパネ本体14から分離(観音開き)して、エアバッグ飛び出し口15が形成されエアバッグ(バッグ本体48)が迅速に膨張展開する。
【0043】
まず、バッグ本体48が、膨張することによりインパネ本体14を裏側(下面)から押圧する。そしてインパネ本体14におけるH字形の回動部テアライン18の中央テアラインに応力が集中して破断後、該破断は左右テアラインに波及して、蓋体部16、16が回動(観音開き)可能となる。そして、蓋体部16、16が開方向に回動すると同時にヒンジ部テアライン20にも応力が集中・破断して蓋体部16、16がインパネ本体14から分離する。軟質樹脂連結体36の湾曲ヒンジ部40が、蓋体部16の分離により形成されたインパネ本体14のエアバッグ飛び出し口15の縁部15a,15aを抱き込むように前・後に展開する(図7参照)。そして、該エアバッグ飛び出し口15からエアバッグ(バッグ本体48)が飛び出し乗員を保護する。
【0044】
なお、上記実施形態では、蓋体部を観音開きさせる場合を例に採ったが、蓋体部が片開きさせる場合でも、テアライン形状が矩形状になるだけで、他は同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の蓋体部付きインストルメントパネルを示す外観図
【図2】本発明を適用するインパネ本体の各例を示す要部裏面斜視図
【図3】図2(A)及び(B)の3−3線部位における各断面図
【図4】本発明の製造方法に使用するテアライン賦形ブロックの各例を示す斜視図
【図5】本発明の製造方法に使用する射出成形用金型のモデル断面図
【図6】本発明の方法で製造したインパネ本体を使用するインパネの装着態様説明断面図
【図7】同じくエアバッグ展開時の説明断面図
【符号の説明】
12 インストルメントパネル(インパネ)
14 インパネ本体(自動車内装品本体、硬質樹脂本体)
16 蓋体部
18 回動部テアライン(破断予定部)
20 ヒンジ部テアライン(破断予定部)
22 テアライン形成突部
22a 針状突部
24 テアライン賦形ブロック
26 射出成形金型
27 水通路
28 雄型(下型、可動型)
30 雌型(上型、固定型)

Claims (5)

  1. エアバッグ飛び出しのための蓋体部が硬質樹脂材料を用いて一体成形された自動車内装品本体を型成形により製造する方法であって、該型成形に際して、前記蓋体部用のテアライン(破断予定部)に対応させた不連続又は連続のテアライン形成突部を備えたテアライン賦形ブロックをテアライン形成対応位置より後退させた状態で材料を充填後、該材料が流動性を有する状態で、前記テアライン賦形ブロックをテアライン形成対応位置まで前進させてテアラインを形成するとともに、
    テアライン賦形ブロック側と反対側である外側賦形面の金型温度を、テアライン賦形ブロックのそれより高くすることを特徴とする自動車内装品本体の製造方法。
  2. 前記テアライン賦形ブロック側と反対側である外側賦形面の金型温度を、成形材料の加熱変形温度(ASTMD648:455kPa)から溶融温度の間に前記テアライン賦形ブロックが前進完了直後まで維持することを特徴とする請求項1記載の自動車内装品本体の製造方法。
  3. 前記テアライン(破断予定部)が鎖線状とされ、前記テアラインに対応させて前記テアライン形成突部が鎖線状とされていることを特徴とする請求項1又は2記載の自動車内装品本体の製造方法。
  4. 前記テアライン形成突部が多数の針状ピン及び板状突部の一方又は双方を所定ピッチで連続的に並べて形成されていることを特徴とする請求項3記載の自動車内装品本体の製造方法。
  5. 前記針状ピン及び板状突部の一方又は双方の先端横断面がテーパ状であることを特徴とする請求項3記載の自動車内装品本体の製造方法。
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