JP3614289B2 - 鉄心の製造方法および鉄心の製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プッシュバック方式を採用した鉄心の製造方法および鉄心の製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、帯板から打抜き形成されるモーター用鉄心等において、巻線の施される部分にバリがあると巻線を切ってしまうので、鉄心を打抜き形成する際にはバリの発生を抑える必要がある。
鉄心を打抜き形成する際に、バリの発生を抑える方法としては、帯板に対して鉄心を半抜きし、次いで半抜きされた鉄心の部分を帯板に押戻し、こののち帯板から鉄心を打抜き形成する、いわゆるプッシュバック方式による形成方法が従来より提供されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したプッシュバック方式によって鉄心を打ち抜き形成する場合、半抜きされた鉄心の部分を帯板に押戻す際に変形が生じ、製品の寸法に悪影響を及ぼしてしまう不都合があった。
また、順送り金型等の製造装置において帯板の送りを制御するための設けられたパイロット穴の間隔が、帯板の変形に伴って変化してしまうため、帯板の送りに支承をきたす問題があった。
このような問題を解消するには、プッシュバック方式に基づく帯板の変形量を考慮して、製造装置における各ステーション間のピッチを微調整しなければならず、極めて煩雑な作業を必要とする不都合があった。
上記実状に鑑みて本発明の目的は、プッシュバック方式に起因する製品の品質低下や製造工程への悪影響を未然に防止することの可能な、鉄心の製造方法および鉄心の製造装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するべく、本発明に関わる鉄心の製造方法は、半抜き工程、押戻し工程および打抜き工程を含むプッシュバック方式を用いて帯板から鉄心を打抜き形成する鉄心の製造方法であって、プッシュバック方式に関わる工程の前時点で、帯板上において鉄心が打抜かれる領域の近傍に、プッシュバック方式に伴う帯板の変形を吸収するためのスリットを、千鳥状に配列設置するとともに上記領域の全周を囲む態様で形成することを特徴としている。
【0005】
また、上記目的を達成するべく、本発明に関わる鉄心の製造装置は、半抜き工程、押戻し工程および打抜き工程を含むプッシュバック方式を用いて帯板から鉄心を打抜き形成する鉄心の製造装置であって、プッシュバック方式に関わる工程の前のステーションに、帯板上において製品が打抜かれる領域の近傍に、プッシュバック方式に伴う帯板の変形を吸収するためのスリットを形成するパンチを、千鳥状かつ上記領域の全周を囲む態様に配列させて設置したことを特徴としている。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、一実施例を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に関わる鉄心の製造装置としての順送り金型1を示し、この順送り金型1は、図2に示す如く帯板Wから巻きコア型鉄心Tを打抜き形成するものである。
【0007】
帯板Wから打抜き形成される巻きコア型鉄心Tは、図3に示す如く、図中上下方回向に延びるバンド状のベース部Taと、該ベース部Taから等間隔に突設されたハブTb、Tb…とから成っている。
なお、上記巻きコア型鉄心Tは、多数枚を一体に積層したのち、各ハブTbに巻線が施され、ベース部Taを屈曲させて環状とすることにより、コア(ステータ)を構成するものである。
【0008】
上記順送り金型1は、下型1L、上型1U、およびストリッパプレート1Pを備え、かつ間欠搬送される帯板Wに対して、順次加工を実施するためのステーションS1〜S8を具備している。
【0009】
ステーションS1〜S4は、帯板Wに対して後述するスリットs1〜s4を形成するステーションであり、各ステーションS1、S2、S3、S4には、それぞれスリットs1、s2、s3、s4を形成するための、スリットパンチ11、12、13、14が設けられている。
【0010】
ステーションS5〜S7は、プッシュバック方式の加工を実施するステーションであり、半抜き工程を実施するステーションS5には半抜きパンチ15が設けられ、押戻し工程を実施するステーションS6にはストリッパプレート1Pが占位し、打抜き工程を実施するステーションS7には打抜きパンチ17が設けられている。
【0011】
最終のステーションS8は、帯板Wから製品としての巻きコア型鉄心T(以下では鉄心Tと称する)を打抜き形成するステーションであり、外形打抜きパンチ18が設けられている。
【0012】
以下では、図1および図2を参照しながら、上述した順送り金型1によって、帯板Wから鉄心Tを製造する工程を詳細に説明する。
なお、図2からも明らかなように、鉄心Tは帯板Wの幅方向に延在する態様で材料取りされている。
【0013】
先ず、ステーションS1にて、帯板Wの長手方向に伸びるスリットs1が、スリットパンチ11により、帯板Wの左右の縁部に打抜き形成され、次いでステーションS2において、帯板Wの長手方向に伸びるスリットs2が、スリットパンチ12により、帯板Wの左右の縁部に打抜き形成される。
【0014】
上述したスリットs1と、スリットs2とは、帯板W上において鉄心Tの打抜かれる領域に倣って延在し、かつ互いに千鳥状を呈する配置態様で形成されている。
【0015】
次いで、ステーションS3において、帯板Wの幅方向に伸びる複数個のスリットs3が、スリットパンチ13により打抜き形成されたのち、ステーションS4において、帯板Wの長手方向に伸びる複数個のスリットs4が、スリットパンチ14により打抜き形成される。
【0016】
上述した複数個のスリットs3と、複数個のスリットs4とは、帯板W上において鉄心Tの打抜かれる領域に倣って延在し、かつ互いに千鳥状を呈する配置態様にて形成されている。
【0017】
ここで、図2から明らかなように、各スリットs1、s2、s3、s4は、それぞれ帯板W上において鉄心Tが打抜かれる領域の近傍に形成されている。
また、各スリットs1、s2、s3、s4は、それぞれ帯板W上におけるプッシュバック領域、すなわち帯板W上の後述する部位Waの近傍に形成される格好となる。
【0018】
さらに、上述した如く互いに千鳥状に配置形成されたスリットs1、s2と、同じく互いに千鳥状に配置形成されたスリットs3、s4とによって、帯板W上における鉄心Tの形成領域が、その全周に亘って囲まれることとなる。
【0019】
ステーションS1〜S4において、スリットs1〜s4が形成されたのち、上述の如くプッシュバック方式における加工の半抜き工程を実施するステーションS5において、帯板Wにおける鉄心Tの形成領域の一部分、詳しくは図3に示すハブTbの側縁部Tb′とベース部Taの縁部Ta′とを含んだ略矩形状の部位(プッシュバック領域)Waが、半抜きパンチ15により帯板Wに対して半抜きされる。
【0020】
次いで、上述した如くプッシュバック方式における加工の押戻し工程を実施するステーションS6において、下型1L上の帯板Wをストリッパープレート1Pで押圧することにより、上述した如く帯板Wから半抜きされた部位Waが、帯板Wに押し戻される。
【0021】
こののち、上述した如くプッシュバック方式における加工の打抜き工程を実施するステーションS7において、打抜きパンチ17により、上述の如く半抜きされて押し戻された部位Waが帯板Wから抜き落とされる。
【0022】
ステーションS5〜S7において、プッシュバック方式における加工の各工程を経たのち、最終のステーションS8において、外形打抜きパンチ18により帯板Wから製品としての鉄心Tが打抜き形成され、これによって鉄心Tの製造が完了することとなる。
【0023】
上述した如く、順送り金型1においては、プッシュバック方式の加工を実施するステーションS5〜S7よりも前のステーションS1〜S4にスリットパンチ11〜14を設けたことにより、言い換えれば帯板Wに対してプッシュバック方式の加工が実施される前に、帯板W上において鉄心Tが打抜かれる領域の近傍にスリットs1〜s4を形成したことで、プッシュバック方式に伴う帯板Wの変形が、帯板W上のスリットs1〜s4によって有効に吸収されることとなる。
【0024】
また、上述した実施例では、巻きコア型鉄心Tを帯板Wの幅方向に延在する態様で材料取したことで、プッシュバック領域としての部位Wa、Wa…が帯板Wの幅方向に沿って並ぶために、個々の部位Waにおける変形が帯板Wの幅方向に累積されたとしても、帯板Wにおける左右の縁部に各々スリットs1とスリットs2とを形成していることにより、幅方向における帯板Wの変形が有効に吸収され、もってプッシュバック方式に伴なう帯板の変形に起因する様々な不都合を防止することができる。
【0025】
なお、上述した実施例では、帯板W上において鉄心Tの形成される領域の全周を、スリットs1、s2、s3、s4によって囲うよう構成しているが、帯板W上におけるプッシュバック領域の近傍のみに、スリットを形成しても良いことは言うまでもない。
【0026】
また、上述した実施例では、巻きコア型鉄心Tの製造を例示しているが、様々な形状の鉄心を打抜き形成する場合においても、本発明に関わる製造方法および製造装置を有効に適用し得ることは勿論である。
【0027】
【発明の効果】
以上、詳述した如く、本発明に関わる鉄心の製造方法は、半抜き工程、押戻し工程および打抜き工程を含むプッシュバック方式を用いて帯板から鉄心を打抜き形成する鉄心の製造方法であって、プッシュバック方式に関わる工程の前時点で、帯板上において鉄心が打抜かれる領域の近傍に、プッシュバック方式に伴う帯板の変形を吸収するためのスリットを、千鳥状に配列設置するとともに上記領域の全周を囲む態様で形成している。
すなわち、本発明に関わる鉄心の製造方法によれば、プッシュバック方式に伴う帯板の変形が、帯板上のスリットによって有効に吸収されるために、プッシュバック方式に起因する製品の品質低下や製造工程への悪影響を、未然に防止することが可能となる。
【0028】
また、本発明に関わる鉄心の製造装置は、半抜き工程、押戻し工程および打抜き工程を含むプッシュバック方式を用いて帯板から鉄心を打抜き形成する鉄心の製造装置であって、プッシュバック方式に関わる工程の前のステーションに、帯板上において製品が打抜かれる領域の近傍に、プッシュバック方式に伴う帯板の変形を吸収するためのスリットを形成するパンチを、千鳥状かつ上記領域の全周を囲む態様に配列させて設けている。
すなわち、本発明に関わる鉄心の製造装置によれば、プッシュバック方式に伴う帯板の変形が、帯板上のスリットによって有効に吸収されるために、プッシュバック方式に起因する製品の品質低下や製造工程への悪影響を、未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わる鉄心の製造装置を示す概念的な側面図。
【図2】図1に示した鉄心の製造装置の各ステーションで加工された帯板および鉄心を示す平面図。
【図3】帯板から打抜き形成された製品としての鉄心を示す平面図。
【符号の説明】
1…順送り金型(製造装置)、
11,12,13,14…スリットパンチ(パンチ)、
W…帯板、
s1,s2,s3,s4…スリット、
T…巻きコア型鉄心(鉄心)。

Claims (4)

  1. 半抜き工程、押戻し工程および打抜き工程を含むプッシュバック方式を用いて帯板から鉄心を打抜き形成する鉄心の製造方法であって、
    上記プッシュバック方式に関わる工程の前時点で、帯板上において鉄心が打抜かれる領域の近傍に、上記プッシュバック方式に伴う帯板の変形を吸収するためのスリットを、千鳥状に配列設置するとともに上記領域の全周を囲む態様で形成することを特徴とする鉄心の製造方法。
  2. 前記帯板上における前記スリットは、前記帯板上におけるプッシュバック領域の近傍に形成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄心の製造方法。
  3. 半抜き工程、押戻し工程および打抜き工程を含むプッシュバック方式を用いて帯板から鉄心を打抜き形成する鉄心の製造装置であって、
    上記プッシュバック方式に関わる工程の前のステーションに、帯板上において製品が打抜かれる領域の近傍に、上記プッシュバック方式に伴う帯板の変形を吸収するためのスリットを形成するパンチを、千鳥状かつ上記領域の全周を囲む態様に配列させて設置したことを特徴とする鉄心の製造装置。
  4. 前記スリットを形成する前記パンチは、前記帯板上におけるプッシュバック領域の近傍に設けられていることを特徴とする請求項3記載の鉄心の製造装置。
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