JP3614275B2 - ポリブタジエンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、1,3−ブタジエンを重合してゲル含有量の少ない高シス−1,4− ポリブタジエンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1,3−ブタジエンの重合触媒については、従来より数多くの提案がなされており、特に高シス−1,4− ポリブタジエン、すなわち、シス−1,4結合含量の高いポリブタジエンは、熱的、機械的に優れた特性を有することから、多くの重合触媒が開発されてきた。
【0003】
ポリブタジエンは鎖中に二重結合を有しており、架橋ゲル化が起こりやすく、ポリブタジエンの品質を低下させる原因の一つであり、ゲル含量を低減させる種々の改良方法が提案されている。
【0004】
例えば、特公昭43−11234号公報、特公昭61−28684号公報には、コバルト化合物、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物から得られる触媒の重合系にエーテル化合物を添加する方法が開示されている。エーテル化合物として例示されている化合物は、脂肪族エーテル、環状エーテル、芳香族モノエーテルなどであり、ゲル低減効果は小さい。
特開平4−298509号公報にはゲル化抑制剤としてオルトエステルを使用する方法が開示されている。しかしながら、特に低沸点の脂肪族炭化水素溶媒を用いたブタジエンの重合においては、ポリマー中のゲル含量が多くなり、かつ反応槽内のゲルの付着が激しくなり、改良が望まれている。
【0005】
また、ポリマー鎖の分岐度が小さい(線状性が高い)高シス−1,4− ポリブタジエンは、耐磨耗性、耐発熱性、反発弾性等に優れている特徴を有している。しかし、芳香族化合物を含有しない溶媒系では、芳香族化合物を含有する溶媒系と比較して、高シス−1,4− ポリブタジエンのポリマー鎖の分岐度が大きくなる。芳香族化合物を含有しない溶媒系においても、分岐度の小さい高シス−1,4− ポリブタジエンが得られる製造方法が求められている。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】
本発明は、高いシス−1,4含量を有し、ゲル含量の少ない、かつ、線状性の高いポリブタジエンの製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、(A)コバルト化合物、(B)ハロゲン含有有機アルミニウム化合物、(C)水、及び(D)ジアルコキシベンゼンからなる触媒を用いるポリブタジエンの製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
(A)成分のコバルト化合物としては、コバルトの塩や錯体が好ましく用いられる。特に好ましいものは、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト、マロン酸コバルト等のコバルト塩や、コバルトのビスアセチルアセトネートやトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルコバルト、ハロゲン化コバルトのトリアリールフォスフィン錯体、トリアルキルフォスフィン錯体、ピリジン錯体やピコリン錯体等の有機塩基錯体、もしくはエチルアルコール錯体等が挙げられる。
【0010】
(B)成分のハロゲン含有有機アルミニウム化合物としては、R 3−nAlX(式中、Rは炭素数 1〜10の炭化水素基、Xはハロゲンを示し、n は 1〜2 の数である。)で表されるハロゲン含有アルミニウム化合物を挙げることができる。
例えば、ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイドなどのジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジクロライド、アルキルアルミニウムジブロマイド等のアルキルアルミニウムジハライド等が挙げられる。具体的化合物としては、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノブロマイド、ジブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジシクロヘキシルアルミニウムモノクロライド、ジフェニルアルミニウムモノクロライド等が挙げられる。
【0011】
(D)成分のジアルコキシベンゼンとしては、一般式 (C)(OR)で表される化合物である。式中、Rは、脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数 1〜8 の脂肪族炭化水素基を示す。Rの具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどが挙げられる。具体的な化合物としては、o−ジメトキシベンゼン、m−ジメトキシベンゼン、p−ジメトキシベンゼン、o−ジエトキシベンゼン、m−ジエトキシベンゼン、p−ジエトキシベンゼンなどが挙げられる。
【0012】
(A)成分のコバルト化合物の使用量は、ブタジエン1モルに対し、通常、 1×10−8〜 1×10−4モル、好ましくは 1×10−7〜 1×10−5モルの範囲である。
【0013】
(B)成分のハロゲン含有有機アルミニウム化合物の使用量は、コバルト化合物 1モルに対して、通常、 1〜 1×10モル、好ましくは 5〜 5×10モルの範囲である。
【0014】
(C)成分の水の使用量は、(B)成分 1モルに対して、通常、0.01〜 1.2モル、好ましくは 0.05 〜1 モルである。
【0015】
(D)成分のジアルコキシベンゼンの使用量は、(B)成分 1モルに対して、通常、0.01〜 5モル、好ましくは 0.02 〜2 モルである。
【0016】
触媒成分の添加順序は特に制限はないが、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物と水が接触する時にはジアルコキシベンゼンが存在していた方が好ましい。
【0017】
重合方法は、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合などを適用できる。溶液重合での溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1−ブテン、シス−2− ブテン、トランス−2− ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒や、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。また、1,3−ブタジエンそのものを重合溶媒としてもよい。
【0018】
中でも、シクロヘキサン、あるいは、シス−2− ブテンとトランス−2− ブテンとの混合物などが好適に用いられる。
【0019】
本発明においては、重合時に公知の分子量調節剤、例えば、シクロオクタジエン、アレンなどの非共役ジエン類、またはエチレン、プロピレン、ブテン−1などのα−オレフィン類を使用することができる。
【0020】
重合温度は −30〜 100℃の範囲が好ましく、30〜80℃の範囲が特に好ましい。重合時間は10分〜12時間の範囲が好ましく、30分〜 6時間が特に好ましい。また、重合圧は、常圧又は10気圧(ゲージ圧)程度までの加圧下に行われる。
【0021】
所定時間重合を行った後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、洗浄、乾燥工程等の後処理を行う。
【0022】
本発明の方法により、シス−1,4− 構造含有率が 95%以上であり、トルエン溶液粘度(Tcp)と 100℃におけるムーニー粘度(ML1+4 )の比(TCP/ML1+4 )が 2以上であり、かつ、ゲル含量が 0.1wt% 以下であるポリブタジエンを製造することができる。
【0023】
上記のTCP/ML1+4 は、高シス−1,4− ポリブタジエンの分岐度の指標である。TCPは濃厚溶液中での分子の絡み合いの程度を示すのであって、同程度の分子量分布の高シス−1,4− ポリブタジエンにあっては、分子量が同一であれば(すなわち、ML1+4 が同一であれば)分岐度の指標(Tcpが大きい程、分岐度は小さい)となるものである。また、TCP/ML1+4 はML1+4 の異なる高シス−1,4− ポリブタジエンの分岐度を比較する場合に指標(TCP/ML1+4 が大きい程、分岐度は小さい)として用いられる。
【0024】
【実施例】
ミクロ構造は、赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス 740cm −1 、トランス 967cm −1 、1,2− 910cm −1 の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
分子量分布は、ポリスチレンを標準物質として用いたGPC から求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの比Mw/Mn によって評価した。
【0025】
ムーニー粘度(ML1+4 )は、JIS K6300 に準拠して測定した。
トルエン溶液粘度(Tcp)は、ポリマー2.28g をトルエン 50ml に溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS Z8809 )を用い、キャノンフェンスケ粘度計 No.400 を使用して、25℃で測定した。
ゲル含量は、ポリマー約5gをトルエン200mL に溶解したのち、これを250 メッシュの金網によりロ過し、トルエンにて金網を充分洗浄して、80℃、 5時間真空乾燥後の金網の重量増加分から算出した。
【0026】
実施例1
内容量 1L のオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン 400mL及び1,3−ブタジエン 200mL(124g)を仕込んだ。ついで、(D)成分としてo−ジメトキシベンゼン 0.15mmol を添加した。(C)成分として水 1.44mmol を添加して室温で30分攪拌して溶解した。ついで、シクロオクタジエン(COD) 6mmol、(B)成分としてジエチルアルミニウムモノクロライド 1.92mmol をこの順序で加えた。 5分後、60℃に加温して、(A)成分としてオクテン酸コバルト(Co(Oct)) 0.0048mmol を加えて、65℃で30分間重合を行った。重合後、未反応の1,3−ブタジエンの一部をオートクレーブから放出し、老化防止剤を添加した。重合液をエタノールに投入してポリマーを沈澱させ、洗浄、乾燥した。重合条件、重合結果及び得られたポリブタジエンの分析結果を表1〜表3に示した。
【0027】
実施例2
表1に示した重合条件で行った以外は、実施例1と同様に行った。重合条件、重合結果及び得られたポリブタジエンの分析結果を表1〜表3に示した。
【0028】
実施例3〜4
(D)成分としてm−ジメトキシベンゼンを用い、表1に示した重合条件で行った以外は、実施例1と同様に行った。重合条件、重合結果及び得られたポリブタジエンの分析結果を表1〜表3に示した。
【0029】
実施例5
(D)成分としてp−ジメトキシベンゼンを用い、表1に示した重合条件で行った以外は、実施例1と同様に行った。重合条件、重合結果及び得られたポリブタジエンの分析結果を表1〜表3に示した。
【0030】
比較例1〜5
(D)成分を用いず、表1に示した重合条件で行った以外は、実施例1と同様に行った。重合条件、重合結果及び得られたポリブタジエンの分析結果を表1〜表3に示した。
【0031】
比較例6
(D)成分としてアニソールを用い、表1に示した重合条件で行った以外は、実施例1と同様に行った。重合条件、重合結果及び得られたポリブタジエンの分析結果を表1〜表3に示した。
【0032】
【表1】
Figure 0003614275
【0033】
【表2】
Figure 0003614275
【0034】
【表3】
Figure 0003614275
【0035】
【発明の効果】
高いシス−1,4含量を有し、ゲル含量の少ない、かつ、線状性の高いポリブタジエンの製造方法を提供する。

Claims (1)

  1. (A)コバルト化合物、(B)ハロゲン含有有機アルミニウム化合物、(C)水、及び(D)ジアルコキシベンゼンからなる触媒を用いるポリブタジエンの製造方法。
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