JP3614261B2 - マイクロカプセルの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品のマイクロカプセルの製造方法に関し、特に、ローヤルゼリーやプロポリスのマイクロカプセルを製造するのに好適な方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
食品の多様化に伴い、長期保存性および食べやすさなどを考慮して各種の食品のマイクロカプセル化が試みられている。
【0003】
例えば、ミツバチ(働きバチ)の咽頭腺から分泌され女王バチの幼虫の成長に必要なローヤルゼリーは健康食品として珍重されているが、このローヤルゼリーは常温下では変質や変色を起こし易く、長期保存のためには低温で保存する必要がある。これを防止するため、乾燥させて粉末状にしたものや、ビール酵母や乳糖を添加した調製ゼリーもあるが、これでも充分でなく、ハードカプセルに充填するか錠剤化を行わないと長期保存は難しい。
【0004】
また、最近、ミツバチ由来の別の健康食品としてプロポリスが注目されている。プロポリスは、ハチヤニとも呼ばれ、ミツバチが花や樹脂のヤニ状成分をかみ続けることにより、該成分とミツバチの唾液中の酵素とが混合されて生じる物質であり、フラボノイド類、ミネラル、ビタミンなどの微量栄養素を含有しているため、健康増進や疾病治療を促進する食品素材として注目されている。このプロポリスは、一般に、原料プロポリスからエチルアルコールを用いて有用成分を抽出した後、エチルアルコールを蒸発除去した抽出エキスとして供されているが、そのままでは利用しにくく、また、長期の間に酸化してしまうので、カプセル化によりこれを防ぐことが必要である。
【0005】
従来より食品のマイクロカプセル化に多用されている技術は、ゼラチンを用いる油中造粒法であり、これは、ゼラチンを皮膜剤として水に溶解し、これを所望の食品と混合した後、植物油などを用いて攪拌、分散させてマイクロカプセル化するものである。この技術の欠点は、造粒中に食品の有用成分(ローヤルゼリーの場合、デセン酸)の一部が分散媒の油脂類に吸収(溶出)されるため、最終的に得られるマイクロカプセル化食品中の該有用成分の含有量が低くなってしまうことである。
【0006】
これを解決する方法として、特公平4−39305号においては、サイクロデキストリンをゼラチンに添加、混合することによりマイクロカプセル化する方法が提示されている。この方法は、ローヤルゼリーをマイクロカプセル化するのに優れた技術ではあるが、サイクロデキストリンが高価であるので、製造コストが高くなってしまう。さらに、サイクロデキストリンを使用する場合、均一に溶解しておかないとマイクロカプセル化できず、サイクロデキストリンがダマ状(だんご状)になるという難点がある。
【0007】
【課題を解決するための手段と発明の効果】
本発明者は、油中造粒法によりローヤルゼリーやプロポリス抽出エキスのような食品をマイクロカプセル化するに際し、有用成分の回収率が可及的に高く、カプセル形成が容易で且つ安価な方法を求めて研究を重ねた結果、ゼラチン皮膜にマルトース(麦芽糖)を添加、混合することにより所望のようにマイクロカプセルを製造できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、油中造粒法により食品のマイクロカプセルを製造するに際して、ゼラチンとマルトースとを水の存在下に混合し、この混合液に当該食品を添加して油中造粒を行うことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法を提供する。
【0009】
本発明の方法により、ローヤルゼリーのマイクロカプセルを製造する場合、安価なマルトースを用いるのに、デセン酸の回収率は前記公報記載の技術のようにサイクロデキストリンを用いる場合と同等またはそれ以上であり、また、カプセル形成時のダマ状化の問題もない。
【0010】
また、本発明の方法は、プロポリス抽出エキスのマイクロカプセル化にも適用でき、得られるプロポリス抽出エキスカプセル中の有用成分、すなわち、ケルセチンやケンフェノールのようなフラボノイドの回収率はきわめて高く100%にすることもできる。
【0011】
このように本発明に従いマルトースを採用することにより有用成分の回収率のきわめて高い油中造粒が可能になった理由は、詳細には分からないがゼラチンとマルトースが結合することにより食品を強くガードするために有用成分が分散油脂中に溶出するのが防止されるためと解される。
【0012】
本発明の方法は、ローヤルゼリーやプロポリス抽出エキスのようなミツバチ由来の食品素材のマイクロカプセル化に特に好適であるが、他の食品素材、例えば、霊芝菌糸体エキスのパウダーのマイクロカプセル化にも適用可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の方法を実施するには、先ず、ゼラチンとマルトースとを水の存在下に充分に混合する。一般に、混合は、ゼラチン+マルトースに対して重量比で約10〜20倍量の水を加え、50〜70℃の温度で行う。次に、得られた混合液に、粉状、顆粒状またはゼリー状の所定の食品を添加し、よく攪拌する。
【0014】
食品に対するゼラチンおよびマルトースの量は、食品の種類、組成、形状、粘度などによって異なるが、ローヤルゼリーの場合は、重量比でローヤルゼリー1に対して、ゼラチン約0.7〜1.5、マルトース約0.1〜1.0、好ましくはゼラチン約0.8〜1.0、マルトース約0.4〜0.5を添加する。プロポリス抽出エキスの場合は、重量比で、プロポリス抽出エキス1に対して、ゼラチン約1.0〜2.5、マルトース約0.1〜1.0、好ましくは、ゼラチン約1.4〜1.8、マルトース約0.5〜0.9を添加する。
【0015】
次に、このようにして得られた食品、ゼラチン、およびマルトースの混合液を50〜70℃に加熱し、食品に対し重量比で3〜10倍量の植物油などの分散用油脂に滴下して攪拌分散させてマイクロカプセル化した後、冷却して(10〜15℃)、分散用油脂を除去し、エチルアルコールで脱水する。その後、約40〜45℃で乾燥することにより10〜40メッシュの粒度のマイクロカプセル化食品が得られる。
【0016】
【実施例】
本発明の特徴をさらに明らかにするため、以下に、本発明に従いゼラチンとマルトースを用いて、ローヤルゼリーおよびプロポリス抽出エキスをマイクロカプセル化する場合の実施例を示す。
【0017】
実施例1
表1に示す配合割合により、ゼラチン(西日本食品社製)とマルトース(和光純薬工業社製)を水の存在下60℃において充分に混合した。次いでこの混合液にローヤルゼリー50g(水分66%、デセン酸2.14%)を加え、よく攪拌混合する。得られた混合液を60℃に加熱した植物油(日清製油(株)のサラダ油,大豆油4:なたね油1の天然油脂混合物)250g中に滴下して攪拌分散させ、マイクロカプセル化し、その後10℃に冷却して植物油を除去、エチルアルコールで脱水した。約40〜45℃において乾燥することにより10〜40メッシュの粒度のローヤルゼリーのマイクロカプセルを得た。なお、比較のために、サイクロデキストリンを用いる場合についてもマイクロカプセル化を行った。
【0018】
得られたマイクロカプセル中のデセン含有量を測定しその回収率を求めた。なお、デセン含有量の測定は高速液体クロマトグラフ法により行った。
Figure 0003614261
【0019】
Figure 0003614261
【0020】
本発明に従いマルトースを用いると、ローヤルゼリーのマイクロカプセル化を行うと、サイクロデキストリンを用いる場合と同等以上のデセン酸回収率が得られることが確認された。
【0021】
実施例2
表3に示す割合でゼラチンとマルトースを水の存在下60℃において充分に混合した。次いで混合液に粉末状のプロポリス抽出エキスを加えてよく攪拌混合した。この混合液を60℃に加熱した植物油200g中に滴下して、攪拌分散して、マイクロカプセル化し、その後10℃に冷却して植物油を除去、エチルアルコールで脱水した。乾燥工程を経て10〜40メッシュの粒度のプロポリス抽出エキスのマイクロカプセルを得た。
【0022】
比較のために、サイクロデキストリンを用いる場合についてもマイクロカプセル化を実施した。得られたマイクロカプセル中のケルセチンおよびケンフェロールの含有量とその回収率は表4の通りである。なお、ケルセチンおよびケンフェロールの測定は高速液体クロマトグラフ法により行った。
【0023】
Figure 0003614261
【0024】
Figure 0003614261
マルトースを用いる本発明の方法は、プロポリス抽出エキスのマイクロカプセル化においても有用成分の溶出をなくした優れた技術であることが確認された。

Claims (3)

  1. 油中造粒法により食品のマイクロカプセルを製造するに際して、ゼラチンとマルトースとを水の存在下に混合し、この混合液に当該食品を添加して油中造粒を行うことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
  2. 食品がローヤルゼリーであることを特徴とする請求項1のマイクロカプセルの製造方法。
  3. 食品がプロポリス抽出エキスであることを特徴とする請求項2のマイクロカプセルの製造方法。
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