JP3613870B2 - ポリエステル系水分散体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル系水分散体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは耐水性および耐候性に優れた皮膜を形成し得る粒子径の微小なポリエステル系水分散体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から塗料、インキ、コーティング剤、接着剤、および繊維製品や紙等の各種処理剤の分野で有機溶剤が大量に用いられているが、近年の石油資源の節約および環境汚染防止の観点により有機溶剤の使用は困難な状況となりつつある。そこで種々の方法、例えば、(1)ハイソリッドタイプ、(2)非水系ディスパージョンタイプ、(3)水系ディスパージョンタイプ、(4)エマルジョンタイプ、 (5)無溶剤タイプの各種処理剤が提案され、すでに実施されているものが多い。これらの中でも水系ディスパージョンタイプはその取り扱い易さからもっとも汎用性があり有望視されている。ところが、現在使用されている樹脂の多くは疎水性であり、これを如何に水に分散または水に可溶化させるかが大きな課題である。また、一旦何らかの方法により、水に分散または水に可溶化された樹脂から形成される皮膜に耐水性や耐候性を付与することも重要な課題である。これらの技術的解決はいかなる樹脂についても共通したものであり、ポリエステル樹脂も例外ではない。
【0003】
すでにポリエステル樹脂を水に分散または可溶化させる方法としては親水性の原料を共重合する方法、例えばスルホン酸金属塩を有する原料やポリアルキレングリコールまたは脂肪族ジカルボン酸等を単独または併せて共重合する方法が知られている。しかしいずれの方法においても、ポリエステル樹脂に水に対する優れた溶解性または分散性を付与するためには、多量の上記した親水性原料の使用が必要となり、その結果得られた皮膜の耐水性や耐候性は非常に劣ったものとなるという問題があった。
【0004】
例えば特公昭47−40873号公報には、十分に水に溶解、分散させることができるポリエステルを製造するためには、全酸成分に対して8モル%以上のスルホン酸金属塩を有する化合物と全グリコール成分に対して20モル%以上のポリエチレングリコールの使用が必要であることが記載されている。かかるポリエステル樹脂の耐水性や耐候性が劣ったものであることは容易に想像できる。すなわち、ポリエステルが水に十分に溶解または分散するということは、乾燥後形成される皮膜の耐水性が劣ることを意味する。この場合、皮膜が水と接すると被着体との密着性が低下するばかりでなく、色相の変化が起こるので、このようなポリエステルは塗料、インキ、コーティング剤、接着剤等の使用に耐えない。また多量のポリエチレングリコールの使用は耐水性ばかりでなく耐候性を著しく低下させてしまう。
【0005】
かかる問題点を解決するために、特開昭57−40525号公報は、エステル形成性スルホン酸金属塩単量体を0.1〜7.4モル%、およびジエチレングリコールを含有するポリエステル共重合体を、脂肪族および脂環族のアルコール、エーテルエステルおよびケトン化合物に溶解して水分散させる方法を、また、特開昭55−99947号公報は、エステル形成性スルホン酸金属塩単量体1〜5モル%を含むポリエステル共重合体を主としてテトラヒドロフランに溶解して水分散化する方法を提案している。しかしながら、これらの方法が適用できるのは実質的に非晶性でしかも溶剤溶解性の高いポリエステル共重合体に限定され、また、毒性の高い有機溶剤を多量に使用している。また特開平7−188423号公報では、テレフタル酸成分の多い実質的に難溶性のポリエステルを適当な有機溶剤に溶解した後に水を加えて水分散体を得ている。ここでは比較的沸点の低い有機溶剤を使用しているため、実質的に分子量が比較的低いポリエステル樹脂に限定されている。
【0006】
このように、従来より提案されているポリエステル樹脂の水分散化の方法は、実用上の観点から要求される、高分子量で比較的高い軟化温度を有するポリエステル系樹脂を水分散化する場合においては、毒性の高い溶剤を使用するか、または、ポリエステル樹脂および得られる水分散体に対し数倍から数十倍もの溶剤を多量に使用しなければならないといった問題点を有するものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の欠点を解決しようとするものであり、その目的は、高分子量で比較的高い軟化温度を有するポリエステル系樹脂であっても、溶媒の使用量が少量であり、毒性の高い溶剤を使用する必要がなく、微細かつ安定で均一であり、かつ得られる皮膜の耐水性および耐候性が良好となるようなポリエステル系水分散体およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は(A)酸成分として、スルホン酸金属塩を有しない芳香族ポリカルボン酸と、スルホン酸金属塩を有する芳香族ジカルボン酸0.5〜8モル%とを含有し、グリコール成分として、脂肪族グリコールおよび脂環族グリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコール60モル%以上を含有し、かつ軟化温度が100℃以上で分子量が5000〜50000のポリエステル樹脂、(B)水との共沸点が75℃以上で沸点が160℃以下のケトンと、水との共沸点が75℃以上で沸点が160℃以下のアルコールを必須成分として含有する混合溶媒、および(C)水を含有することを特徴とする(D)ポリエステル系水分散体に関する。
好適な実施態様は、上記混合溶媒(B)の含有率が1重量%以下である。
【0009】
また本発明は、上記ポリエステル樹脂(A)、上記混合溶媒(B)および水(C)を下記式(I)〜(III)を満足するような配合比で混合することを特徴とするポリエステル系水分散体の製造方法に関する。
(A)+(B)+(C)=100(重量比) (I)
(A)/(B)/(C)=5〜60/5〜60/30〜90(重量比) (II)
(B)/(C)=5/95〜70/30(重量比) (III)
【0010】
次に本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル系水分散体は、(A)ポリエステル樹脂、(B)混合溶媒、および(C)水を含有する。
上記ポリエステル樹脂(A)は、酸成分として、スルホン酸金属塩を有しない芳香族ポリカルボン酸、およびスルホン酸金属塩を有する芳香族ジカルボン酸を含有する。
【0011】
スルホン酸金属塩を有しない芳香族ポリカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等のトリ、またはテトラカルボン酸等が挙げられる。またp−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸も用いることができる。これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が好適に用いられる。また高分子量でかつ水に分散可能なポリエステル樹脂を得るためには、上記トリ、またはテトラカルボン酸の配合量は全酸成分中5モル%以下であることが好ましい。
【0012】
このようなスルホン酸金属塩を有しない芳香族ポリカルボン酸の配合量は、全酸成分中、好ましくは40モル%〜99.5モル%、より好ましくは50モル%〜98モル%、特に好ましくは55モル%〜97.5モル%である。この配合量が40モル%未満の場合、得られる皮膜の耐水性が低下する場合があり、逆に配合量が99.5モル%を超える場合、安定な水分散体が得られない。
【0013】
スルホン酸金属塩を有する芳香族ジカルボン酸としては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸等の金属塩が用いられ、中でも5−スルホイソフタル酸が好ましい。金属塩としては、Li、Na、K、Mg、Ca等が挙げられ、中でもNaが好ましい。特に好ましいジカルボン酸としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸である。
【0014】
これらのスルホン酸金属塩を有するジカルボン酸配合量は、全酸成分中0.5〜8モル%、好ましくは2〜7.5モル%、より好ましくは2.5〜7モル%である。この配合量が0.5モル%未満の場合、安定な水分散体が得られず、逆に8モル%を超える場合、得られる皮膜の耐水性が低下する。
【0015】
上記酸成分以外に、さらにスルホン酸金属塩を有しない脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸を含有してもよい。スルホン酸金属塩を有しない脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。また、スルホン酸金属塩を有しない脂環族ジカルボン酸としては、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸等の飽和脂環族ジカルボン酸;テトラヒドロテレフタル酸、テトラヒドロオルソフタル酸等の不飽和脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好適に使用される。
【0016】
脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸の配合量は、全酸成分中、好ましくは59.5〜5モル%以下、より好ましくは49.5〜5モル%以下、特に好ましくは44.5〜10モル%以下である。この配合量が5モル%未満の場合、安定な水分散体を得ることが困難となる場合があり、逆に59.5モル%を超える場合、水分散体の安定性、および得られる皮膜の耐久性、強度が低下することがあり好ましくない。
【0017】
本発明に使用されるポリエステル(A)は、グリコール成分として、脂肪族グリコールおよび脂環族グリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコールを含有する。
脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等が用いられる。これらの中でもエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオールが好適に使用される。
【0018】
脂環族グリコールとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロへキサンジオール、1,3−シクロへキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノール−A、スピログリコール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が用いられ、中でも1,4−シクロヘキサンジメタノールが好適に使用される。
【0019】
これらの脂肪族グリコールおよび/または脂環族グリコールの配合量は、全グリコール成分中、60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。このグリコールの配合量が60モル%未満の場合、得られる皮膜の耐久性、耐候性および強度等の物性が低下する。
【0020】
残り40モル%未満のグリコール成分としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテルグリコール等;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のトリオールまたはテトラオール;ビスフェノール−Aのエチレンオキサイド付加物、およびプロピレンオキサイド付加物等を用いることができる。高分子量で水に分散可能なポリエステルを得るためにはトリオール、テトラオールの配合量は、全グリコール成分中、5モル%以下であることが好ましい。また、得られる皮膜が優れた耐水性を有するためには、分子量l50以上のポリエチレングリコールの配合量は、全グリコール成分中、20モル%以下であることが好ましい。
【0021】
上記の酸成分とグリコール成分とからなるポリエステル樹脂は、軟化温度が100℃以上で分子量が5000〜50000である。軟化温度が100℃未満の場合、得られる皮膜の強度等の物性が低下する。また分子量が5000未満の場合、得られる皮膜の強度等の物性が低下し、逆に50000を超える場合、安定な水分散体が得られない。
【0022】
本発明で用いられる混合溶媒(B)は、水との共沸点が75℃以上で沸点が160℃以下のケトンと、水との共沸点が75℃以上で沸点が160℃以下のアルコールとを必須成分とする混合溶媒である。このような混合溶媒を用いることにより、上記ポリエステル樹脂(A)を平均粒径1μm以下の粒径で水に分散させることが可能となる。
【0023】
上記ケトンとしては、例えば2−ペンタノン(水との共沸点83℃、沸点102℃)、メチルイソプロピルケトン(水との共沸点81℃、沸点116.7℃)、3−ペンタノン(水との共沸点83℃、沸点101.5℃)、メチルイソアミルケトン(水との共沸点95℃、沸点144℃)、2−ヘキサノン(水との共沸点90℃、沸点127.8℃)、3−へキサノン(水との共沸点89℃、沸点125℃)、メチルイソブチルケトン(水との共沸点88℃、沸点116℃)、シクロヘキサノン(水との共沸点95℃、沸点155℃)等が挙げられる。このケトンの水との共沸点が75℃未満の場合、ポリエステル樹脂の分散時に内温を上げることができないために平均粒径1μm以下の均一な分散体が得られない。また、ケトンの沸点が160℃を超える場合、当該混合溶媒を留去して水分散体中1重量%以下にするのが困難となる。このケトンの水との共沸点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、沸点は好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0024】
上記アルコール系溶媒としては、例えばエタノール(水との共沸点78℃、沸点78.3℃)、1−プロパノール(水との共沸点87℃、沸点97.2℃)、2−プロパノール(水との共沸点80℃、沸点82.4℃)、2−ブタノール(水との共沸点87℃、沸点99.5℃)、2−メチルプロパノール(水との共沸点90℃、沸点107.9℃)、1−ブタノール(水との共沸点93℃、沸点117.9℃)、1−ペンタノール(水との共沸点96℃、沸点137.5℃)、2−ペンタノール(水との共沸点92℃、沸点119.9℃)、イソブチルメチルカルビノール(水との共沸点94.3℃、沸点131.6℃)等が挙げられる。このアルコールの水との共沸点が75℃未満の場合、ポリエステル樹脂の分散時に内温が上げることができないために平均粒径1μm以下の均一な分散体が得られない。またアルコールの沸点が160℃を超える場合、当該混合溶媒を留去して水分散体中1重量%以下にするのが困難となる。このアルコールの水との共沸点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、沸点は好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0025】
上記のケトンとアルコールの混合比は、重量比で好ましくは5:95=95:5、より好ましくは20:80=80:20である。混合溶媒中、ケトンの割合が5未満の場合や95を超える場合、安定な水分散体を得ることが困難となる場合があり好ましくない。
【0026】
本発明のポリエステル系水分散体は、例えばポリエステル樹脂(A)と混合溶媒(B)と水(C)とを好ましくは50〜95℃、より好ましくは70〜90℃で混合する方法、あるいはポリエステル樹脂(A)を混合溶媒(B)に予め溶解した後に、水(C)を添加する方法により製造される。この時のポリエステル樹脂(A)、混合溶媒(B)および水(C)の配合比は、水分散体の形態を保持する上で重要な要素であり、以下の式(I)〜(III)を満足することが好ましい。
(A)+(B)+(C)=100(重量比) (I)
(A)/(B)/(C)=5〜60/5〜60/30〜90(重量比) (II)
(B)/(C)=5/95〜70/30(重量比) (III)
【0027】
式(II)において、ポリエステル樹脂(A)の配合量が水分散体全体に対して5重量%未満の場合、水分散体の粘度が低すぎて好ましくない。逆にこの配合量が60重量%を超える場合、水分散体の粘度が高すぎて好ましくない。混合溶媒(B)の配合量が水分散体全体に対して5重量%未満の場合、均一な水分散体を得ることができず、逆にこの配合量が60重量%を超える場合、混合溶媒を留去することが困難となり好ましくない。
【0028】
またポリエステル樹脂(A)に対する混合溶媒(B)の配合量は、特に限定されるものではないが、実質上の観点から好ましくは0.3〜2倍、より好ましくは0.5〜1.5倍である。
【0029】
ポリエステル樹脂(A)、混合溶媒(B)および水(C)を混合した後、さらに混合溶媒(B)を留去した後、必要量の水を追加して所定の固形分濃度に調製した後の、混合溶媒(B)の含有率を好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.7重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下となるように調製する。混合溶媒(B)の留去は、常圧下または減圧下で行われる。
【0030】
本発明のポリエステル系水分散体は、塗料、インキ、コーティング剤、接着剤等の分野に使用され、従来にない優れた耐水性を発揮するものである。本発明のポリエステル系水分散体には顔料、染料、各種添加剤、各種硬化剤などを配合することができる。
【0031】
【実施例】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例中に単に部とあるのは重量部を表す。実施例に用いた飽和共重合ポリエステルの組成を表1に示した。
【0032】
なお、飽和共重合ポリエステルの合成は、常法に従って行った。また各種の特性値の測定方法は以下の方法で行なった。
1.ポリエステルの数平均分子量
数平均分子量はGPCにより以下のようにして求めた。テトラヒドロフラン溶媒10mlにポリエステル0.03gを溶解しポリマー溶液を調整した。カラムとして昭和電工(株)社製ShodexKF−806、804、802を用い、キャリアー溶媒としてテトラヒドロフランを用い、流量1.0ml/min、カラム温度30℃で測定を行った。数平均分子量は標準ポリスチレン換算により求めた。
2.ポリエステルの融点(℃)、ガラス転移温度(℃)
セイコー(株)社製DSC200型示差走査型熱量計により、サンプル5mgを用いて昇温速度20℃/分にて測定した。
3.ポリエステルの環球法軟化点(℃)
JIS K−2531に準拠した。
4.水分散体の分散粒子径
グラインドメーターおよび光学顕微鏡により測定した。
5.水分散体の粘度
25℃においてB型粘度計により測定した。
6.塗膜の密着性
ASTM D−3359に準拠した。
7.塗膜の耐水性
JIS K−5400に準拠した。
8.水分散体中に含まれる溶媒含有量
水分散体約0.1gを重水0.9gに溶解し、H−NMRで測定し、分散体に含まれる水のプロトン吸収に対する溶媒のプロトン吸収から求めた。
【0033】
製造例1
ジメチルテレフタレート95部、ジメチルイソフタレート95部、エチレングリコール71部、ネオペンチルグリコール110部、酢酸亜鉛0.1部および三酸化アンチモン0.1部を反応容器に仕込み、140℃から徐々に220℃まで昇温し約3時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0部を添加し、220℃から240℃まで約1時間かけてエステル化反応を行った後、240℃から270℃まで昇温しつつ減圧下で2時間かけて重縮合反応を行い、分子量19500、軟化温度160℃のポリエステル樹脂A−1を得た。得られたポリエステル樹脂の特性値を表1に示す。
【0034】
実施例1
製造例1の共重合ポリエステル樹脂30部(A−1)とメチルイソブチルケトン10部、イソプロピルアルコール10部(B)、水50部(C)を容器中に仕込み、80℃で約3時間加熱し、均一で粒子径が約0.1μmの溶媒含有水分散体を得た。得られた分散体に水20部を加えた後、留分温度が100℃に達するまで、混合溶媒と水を留去し、冷却後にさらに水を加え固形分濃度30%とし、水分散体(D−1)を得た。この分散体中に含まれる溶媒量を測定したところ、それぞれメチルイソブチルケトン0.2重量%、イソプロピルアルコール0.2重量%であった。またこの水分散体を3ヶ月間、5℃、25℃、40℃下に放置したが外観変化は見られず、粘度変化もなくきわめて優れた貯蔵安定性を示した。
得られた水分散体を厚さ125μmのコロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の塗膜の厚さが5μmとなるように塗布した後、120℃で30分間乾燥した。得られた皮膜の密着性は良好であった。またこれを25℃で3日間または60℃で2時間水に浸漬した後の皮膜はいずれも白化はなく密着性も良好であり、優れた耐水性を示した。
【0035】
製造例2〜7
製造例1で用いたモノマ−の代わりに、表1に示した種々のモノマーを用いて、製造例1と同様にしてポリエステル(A−2〜A−7)を得た。得られたポリエステルの特性値を表1に示す。
【0036】
実施例2〜10
実施例1で用いたポリエステル(A−1)、混合溶媒(B)を用いる代わりに、表3に示したポリエステル(A−2〜A−7)と溶媒(B)を用いて実施例1と同様にして水分散体(D−2〜D−10)を得た。得られた水分散体の性能を表3および表4に示す。
【0037】
比較製造例1〜4
製造例1で用いたモノマーの代わりに、表2に示した種々のモノマーを用いて、製造例1と同様にしてポリエステル(A−8〜A−11)を得た。得られたポリエステルの特性値を表2に示す。
【0038】
比較例1〜9
実施例1で用いたポリエステル(A−1)、混合溶媒(B)を用いる代わりに、表5に示したポリエステル(A−1、A−4、A−5、A−8〜A−11)と混合溶媒(B) を用いて実施例1と同様にして水分散体(D−11〜D−19)を得た。得られた水分散体の性能を表5に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
実施例1〜10で得られたポリエステル水分散体は、いずれもポリエステルの分散状態、安定性および塗膜の耐水性が良好であることがわかる。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、高分子量で比較的高い軟化温度を有するポリエステル系樹脂であっても、溶媒の含有量が少量であり、毒性の高い溶剤を使用する必要がなく、微細かつ安定で均一であり、かつ得られる皮膜の耐水性および耐候性が良好となるようなポリエステル系水分散体を提供することができる。
Claims (3)
- (A)酸成分として、スルホン酸金属塩を有しない芳香族ポリカルボン酸と、スルホン酸金属塩を有する芳香族ジカルボン酸0.5〜8モル%とを含有し、グリコール成分として、脂肪族グリコールおよび脂環族グリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコール60モル%以上を含有し、かつ軟化温度が100℃以上で分子量が5000〜50000のポリエステル樹脂、
(B)水との共沸点が75℃以上で沸点が160℃以下のケトンと、水との共沸点が75℃以上で沸点が160℃以下のアルコールを必須成分として含有する混合溶媒、および
(C)水
を含有することを特徴とする(D)ポリエステル系水分散体。 - 混合溶媒(B)の含有率が1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系水分散体。
- (A)酸成分として、スルホン酸金属塩を有しない芳香族ポリカルボン酸と、スルホン酸金属塩を有する芳香族ジカルボン酸0.5〜8モル%とを含有し、グリコール成分として、脂肪族グリコールおよび脂環族グリコールからなる群より選択される少なくとも1種のグリコール60モル%以上を含有し、かつ軟化温度が100℃以上で分子量が5000〜50000のポリエステル樹脂、
(B)水との共沸点が75℃以上で沸点が160℃以下のケトンと、水との共沸点が75℃以上で沸点が160℃以下のアルコールを必須成分として含有する混合溶媒、および
(C)水
を下記式(I)〜(III)を満足するような配合比で混合することを特徴とするポリエステル系水分散体の製造方法。
(A)+(B)+(C)=100(重量比) (I)
(A)/(B)/(C)=5〜60/5〜60/30〜90(重量比) (II)
(B)/(C)=5/95〜70/30(重量比) (III)
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