JP3577778B2 - ポリエステル樹脂水性分散体 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はポリエステル樹脂水性分散体に関するものであり、更に詳しくは保存安定性が良好であり、かつ耐水性、耐溶剤性、硬度あるいは強度、および耐熱性に優れた皮膜を形成するポリエステル樹脂水性分散体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂水性分散体として、(1)有機溶剤と水との混合物に水分散性のポリカルボン酸成分としてスルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸が0.5〜10モル%含まれ、分子量2,500〜30,000、軟化点40〜200℃のポリエステル樹脂を溶解あるいは分散せしめて得られるポリエステル樹脂水性分散体(特公昭61−58092号公報)が知られている。
【0003】
また、(2)ポリエステル樹脂がカルボン酸成分、ジオール成分に対して1〜5モル%のエステル形成性スルホン酸金属塩単量体を使用して得られ、一旦有機溶剤を含有するポリエステル樹脂水性分散体を製造したのち、該水性分散体より常圧あるいは減圧下に有機溶剤を溜去せしめることにより得られる、実質的に溶剤を含有しないポリエステル樹脂水性分散体(特公昭64−10547公報)が知られている。
【0004】
(3)水分散性ポリエステル樹脂がスルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸とポリエチレングリコールセグメントの両方を有するものである、水に消散し得るポリエステル樹脂の製造方法(特公昭47−40873号公報)も知られている。
【0005】
また複数の異なるポリエステル樹脂よりなるポリエステル樹脂水性分散体としては、(4)いずれも水性分散体を形成しうる結晶性および非結晶性のポリエステル樹脂を含む水性分散体(特公昭60ー1334号公報)や、(5)カルボキシル基を有する分子量1,000〜10,000のポリエステル樹脂と分子量10,000〜100,000の疎水性ポリエステル樹脂とを部分的に反応させたポリエステル樹脂の水性分散体(特公平6ー99662号公報)が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、有機溶剤などを使用して得られるポリエステル樹脂水性分散体のうち、特に特公昭61−58092号公報に開示されるような、水分散性ポリエステル樹脂が有機溶剤を含む水性媒体中に単に分散されているものは、分散体としての安定性が有機溶剤の存在に依存しており、水性媒体の蒸発や水などによる希釈で媒体の組成が変化すると不安定化して粘度が非常に高いものになったり、分散体粒子の合一などが起こって沈降物を生じたり、甚だしくは凝集物を生ずることがある。
【0007】
特公昭64−10547号公報に開示されるような、THFなどの有機溶剤を含む水性媒体に水分散性ポリエステル樹脂を溶解あるいは分散させた後、有機溶剤を溜去せしめることで得られるポリエステル樹脂水性分散体は、最終的に得られる水性分散体は実質的に水のみを媒体とするものであるが、水分散性ポリエステル樹脂は、有機溶剤に対して充分な親和性を有し、かつ有機溶剤を含む水性媒体および水に対しても適度な親和性を持つ必要があり、耐水性と耐溶剤性が不充分なものになり易い。
【0008】
特公昭47ー40873号公報に開示されるような、スルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸とポリエチレングリコールセグメントの両方を有する水分散性ポリエステル樹脂は、容易に水に溶解あるいは分散し得るものであるが、このような水分散性ポリエステル樹脂は、耐水性が劣ったものとなり易い。また、ポリマー骨格中にポリエチレングリコールセグメントを含むことは、ガラス転移点の高い水分散性ポリエステルを得にくく、形成する皮膜がべたつきやすく、強度が低くなるという欠点を有する。
【0009】
特公昭60ー1334号公報に開示されるような結晶性および非結晶性のポリエステル樹脂を含んでなる水性分散体は、結晶性ポリエステルを分散化するために多量の親水成分が必要となり、耐水性の劣ったものとなったり、結晶性成分のために分散体粒子の安定性が劣ったものとなりやすい。
【0010】
さらに特公平6ー99662号公報に開示されるようなカルボキシル基を有するポリエステル樹脂と疎水性の高分子量ポリエステル樹脂とを部分的に反応させたものは、その製造中に2種類のポリエステル樹脂が結合する反応だけでなく、高分子量ポリエステル樹脂が加水分解やエステル交換反応によって分解されてしまうため、架橋剤の使用なくしては充分な耐水性あるいは皮膜強度が得られないものとなる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するポリエステル樹脂水性分散体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述したような従来型技術における種々の欠点を解消すべく鋭意検討したところ、特定の2種類ポリエステル樹脂を水性媒体中に分散することにより、保存安定性が良好であり、かつ耐水性、耐溶剤性、硬度あるいは強度、および耐熱性に優れた皮膜を形成するポリエステル樹脂水性分散体が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、軟化点40〜200℃、数平均分子量5,000〜30,000のポリエステル樹脂(A)とスルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸を5〜20モル%含有するポリカルボン酸成分とポリオール成分とからなる分子量3,000〜10,000の軟化点を有するポリエステル樹脂(B)〔以下、ポリエステル(B)と略すこともある。〕とが、水性媒体(C)中に分散していることを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体を提供するものである。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、保存安定性が良好であり、かつ耐水性、耐溶剤性、硬度あるいは強度、および耐熱性に優れた皮膜を形成するものである。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体に含まれるポリエステル樹脂(A)は、軟化点40〜200℃、数平均分子量5,000〜30,000のものである必要がある。なぜならば、ポリエステル樹脂(A)は、本発明のポリエステル樹脂水性分散体の構成成分中、主に耐水性、耐溶剤性、硬度あるいは強度、および耐熱性の性能を発現する成分であり、分散体粒子の核として水性分散体中に存在している。その軟化点が40℃より低い場合や、数平均分子量が5,000より小さい場合、充分な前記の諸物性を有する皮膜を形成しないものとなるからである。また、軟化点が200℃より高い場合や、数平均分子量が30,000より大きい場合、保存安定性が良好な水性分散体が得られにくくなるばかりか、皮膜を形成しないおそれがある。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体に含まれるポリエステル樹脂(B)は、スルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸を5〜20モル%含有するポリカルボン酸成分とポリオール成分とからなる数平均分子量3,000〜10,000のものである必要がある。なぜならば、ポリエステル樹脂(B)は本発明のポリエステル樹脂水性分散体の構成成分中、主に保存安定性を発現する成分であり、その一部が上記ポリエステル樹脂(A)を包むか、あるいは(A)の周囲に付着する形で存在し、一部が水性媒体中に溶解あるいは分散している状態で存在している。スルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸が5モル%より少ない場合には、保存安定性が不良となるか、甚だしくは水性分散体そのものが得られないおそれがある。スルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸が20モル%より多い場合には、得られる水性分散体の粘度が非常に高いものであったり、形成する皮膜などが耐水性の不良なものであるおそれがある。また、数平均分子量が3,000より小さいものであると、水性分散体が形成する皮膜の耐水性が不良になるし、上記ポリエステル(A)によって発現されている諸物性を低下させる原因にもなる。数平均分子量が10,000以上である場合には、水性分散体の保存安定性が劣ったものとなるおそれがある。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂(A)および(B)は、本発明で開示する(A)あるいは(B)の要件を満たすものであれば、それぞれが異なる成分のポリエステル樹脂の2種類以上よりなる群で構成されていてもよい。すなわち、ポリエステル樹脂(A)は、軟化点40〜200℃、数平均分子量5,000〜30,000のポリエステル樹脂の1種類あるいは2種類以上で構成されるものであってよいし、ポリエステル樹脂(B)は、スルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸を5〜20モル%含有するポリカルボン酸成分とポリオール成分とからなる数平均分子量3,000〜10,000のポリエステル樹脂の1種類あるいは2種類以上で構成されるものであってよい。
【0018】
ポリエステル樹脂(A)は、軟化点40〜200℃、数平均分子量5,000〜30,000のポリエステル樹脂であればその他特に限定されるものではないが、スルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸を含有しないか、あるいは4モル%以下で含有するポリカルボン酸成分とポリオール成分とからなるポリエステル樹脂である場合が好ましい。この場合さらに水性媒体(C)が、数平均分子量32〜300、sp値8.5〜15である有機化合物を50重量%以下の濃度で含む水を主たる成分とするものである場合が好ましい。この要件を満足する場合には水性分散体の保存安定性が良好であり、形成する皮膜が耐溶剤性に優れ、強度が高く、耐水性が特に良好なポリエステル樹脂水性分散体が得られる。
【0019】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、さらにポリエステル樹脂(A)と(B)と水性媒体(C)との割合が、
(B)/{(A)+(B)}=5〜50重量%
{(A)+(B)}/{(A)+(B)+(C)}=5〜50重量%
の式を満たすものであることが好ましい。
【0020】
上記の式(B)/{(A)+(B)}で示される値が5重量%より小さい場合には、保存安定性が不良な水性分散体となるか、甚だしくは水性分散体が得られないおそれがある。また50重量%より大きい場合には、得られる水性分散体の粘度が非常に高いものであったり、形成する皮膜などが耐水性の不良なものであるおそれがある。
【0021】
上記の式{(A)+(B)}/{(A)+(B)+(C)}で示される値は使用上の利便性のためには5重量%以下であっても良いが、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、固形分濃度5重量%程度で通常の取扱いができないほど粘度が高いことはありえず、あまりに固形分濃度を低くすることは、輸送や保管の経費を無駄にするばかりでなく、水性分散体を使用に供する際の乾燥工程で余計なエネルギーや時間を消費することとなるので好ましくない。また、50重量%より大きい場合には、水性分散体の粘度が非常に高いものとなるおそれがある。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体に含まれる水性媒体(C)は、水を主たる成分とする液体状の媒体を指す。この水性媒体の組成はポリエステル樹脂(A)および(B)の特徴、主にスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸の含有量に合わせて、得られる水性分散体の特性、特に分散体の平均粒子径と粘度が所望のものとなるように調整すれば良い。
【0023】
本発明においてポリエステル樹脂の数平均分子量とは、LiBrを10ミリモル毎リットル(ミリモル/l)なる濃度で含有するジメチルホルムアミドを移動相とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される数平均分子量をいう。
【0024】
また本発明においてポリエステル樹脂の軟化点とは、ASTM(E28−58T)で規定される方法に準拠して測定した軟化点をいう。
本発明のポリエステル樹脂(A)および(B)は、従来公知にして慣用の方法で合成され得る。
【0025】
上記の好ましいポリエステル樹脂(A)は、例えば以下に示す方法で合成することができるが、この例に示すものに限定されるものではない。
下記ポリカルボン酸成分と下記ポリオール成分は公知にして慣用なる方法で反応させて一般式−SOMで表される基を有する水分散性ポリエステル樹脂を得ることができる。すなわち不活性ガス雰囲気中で触媒の存在下または不存在下に、前述したそれぞれのポリカルボン酸成分とポリオール成分とを好ましくは180〜300℃に加熱してエステル化あるいはエステル交換反応せしめ、次いで減圧下に重縮合せしめることによって目的とするポリエステル樹脂(A)が調製される。
【0026】
減圧下に重縮合せしめる代わりに、この工程をなくするか、あるいは脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素、ないしはこれらの混合物よりなる有機化合物を還流させたのち、前記有機化合物を系外へ溜去することによっても目的とするポリエステル樹脂(A)が調製される。
【0027】
まず、ポリカルボン酸成分のスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸として代表的なものを示せば、4−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸およびこれらの金属塩などであり、さらにこれらの縮合可能なジカルボン酸誘導体も使用することができる。金属塩としてはLi、Na、K、Mg、Ca、Cu、Feなどの塩が挙げられる。特に好ましいものは、5−ソデウムスルホイソフタル酸あるいは5−ソデウムスルホイソフタル酸ジメチルである。
【0028】
上記以外のポリカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、o−フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸以外の芳香族ジカルボン酸、蓚酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ−o−フタル酸、ヘキサヒドロ−o−フタル酸、テトラクロロ−o−フタル酸、ヘット酸、ハイミック酸(「ハイミック酸」は日立化成工業(株)製品、同社の登録商標)などの脂環族ジカルボン酸およびこれらの縮合可能な誘導体を使用することができる。これらのポリカルボン酸は1種あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0029】
また、全ポリカルボン酸成分中に合計で10ミリ%以下であればカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸などの脂肪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、サリチル酸などのヒドロキシ安息香酸類、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のポリカルボン酸およびこれらの縮合可能な誘導体を使用することができる。
【0030】
他方、前記ポリオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコールなどをはじめ、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,7−ジメチル−4,7−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはポリテトラメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール、1,4−ジヒドロキシエトキシベンゼン、ビスフェノールAのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物などの含芳香核ジオールなどが挙げられこれらの1種あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0031】
炭素数4以下の脂肪族グリコールがポリエステル樹脂の全ポリオール成分中に10モル%以上含まれるように使用するればより好ましいものとなる。
さらにポリエステル樹脂中のポリオール成分の10モル%以下であればグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどの3官能以上の種々のポリオールを使用することができる。
【0032】
ここにおいて、上記した触媒として代表的なものを例示すると、酸化アンチモン、酸化バリウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、琥珀酸亜鉛、ほう酸亜鉛、蟻酸カドミウム、一酸化鉛、珪酸カルシウム、ジブチル錫オキシド、ブチルヒドロキシ錫オキシド、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、マグネシウムメトキシド、ナトリウムメトキシドなどが挙げられる。また、上記の重縮合は好ましくは水銀柱0.1〜10mm(mmHg)なる減圧条件の下で行われる。
【0033】
上記の好ましいポリエステル樹脂(B)は、例えば以下に示す方法で合成することができるが、この例に示すものに限定されるものではない。
上記のポリカルボン酸成分とポリオール成分は公知にして慣用なる方法で反応させて一般式−SOMで表される基を有する水分散性ポリエステル樹脂を得ることができる。すなわち、不活性ガス雰囲気中で触媒の存在下または不存在下に、前述したそれぞれのポリカルボン酸成分とポリオール成分とを好ましくは180〜300℃に加熱してエステル化あるいはエステル交換反応せしめ、次いで減圧下に重縮合せしめることによって目的とするポリエステル樹脂(B)が調製される。
【0034】
減圧下に重縮合せしめる代わりに、この工程をなくするか、あるいは脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素、ないしはこれらの混合物よりなる有機化合物を還流させたのち、前記有機化合物を系外へ溜去することによっても目的とするポリエステル樹脂(B)が調製される。
【0035】
ポリエステル樹脂(B)のポリカルボン酸成分としては、上記ポリエステル樹脂(A)の例に示したものと同様のスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸、あるいはこれらの縮合可能なジカルボン酸誘導体、およびスルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸以外の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸あるいはこれらの縮合可能な誘導体が使用できる。全ポリカルボン酸成分中に合計で40モル%以下であれば脂肪酸、ヒドロキシ安息香酸類、あるいは3官能以上のポリカルボン酸およびこれらの縮合可能な誘導体を使用することができる。
【0036】
またポリオール成分としては、ポリエステル樹脂(A)の例に示したものと同様の脂肪族ジオール、脂環族ジオール、含芳香核ジオールなどが挙げられる。ポリオール成分の40モル%以下であればグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどの3官能以上の種々のポリオールを使用することができる。
【0037】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、上記のようにして得られたポリエステル樹脂(A)および(B)が微粒子化して、(B)が(A)を包むか、あるいは(B)が(A)の周囲に付着した形で水性媒体中に存在するように調製したものである。
【0038】
このようなポリエステル樹脂水性分散体は、例えば以下に示す方法で調製することができるが、これらの例に示すものに限定されるものではない。
▲1▼ポリエステル樹脂(A)あるいは(B)のいずれか軟化点の高いほうの軟化点以上の温度で、両者をあらかじめ溶融混合したものを水性媒体(C)中で60〜140℃に加熱してポリエステル樹脂水性分散体を得る。
【0039】
▲2▼ポリエステル樹脂(A)および(B)と、(A)と(B)の合計重量に対して5〜40%重量%の水性媒体(C)とをあらかじめ混合し、さらに水性媒体(C)で希釈してポリエステル樹脂水性分散体を得る。
【0040】
▲3▼ポリエステル樹脂(A)および(B)をそれぞれ粉砕せしめたものを、水性媒体(C)中で60〜140℃に加熱してポリエステル樹脂水性分散体を得る。
▲4▼ポリエステル樹脂(B)を水性媒体(C)にあらかじめ混合し、その混合物中にポリエステル樹脂(A)を投入して60〜140℃に加熱してポリエステル樹脂水性分散体を得る。
【0041】
▲5▼ポリエステル樹脂(A)および(B)とを、数平均分子量32〜300、sp値8.5〜15である有機化合物とあらかじめ混合したものに水を加えてポリエステル樹脂水性分散体をえる。
【0042】
▲6▼ポリエステル樹脂(A)を数平均分子量32〜300、sp値8.5〜15である有機化合物とあらかじめ混合したものと、ポリエステル樹脂(B)を水とあらかじめ混合したものを各種混合装置、乳化分散装置などを使用してポリエステル樹脂水性分散体を得る。さらに必要に応じて、該水性分散体より常圧あるいは減圧下に有機化合物を溜去する。
【0043】
例えば上記の例のようにして得られたポリエステル樹脂水性分散体は、さらに必要に応じて、該水性分散体より常圧あるいは減圧下に有機化合物を溜去することによって、上記の有機化合物の含有量を減少せしめたり、あるいは上記の有機化合物を実質的に含有しないものとしても良い。
【0044】
上記の数平均分子量32〜300、sp値8.5〜15である有機化合物として代表的なものを例示すると、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ノルマルブチルアルコール、セカンダリーブチルアルコール、アミルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグリコールエーテル類の有機化合物のほか、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジオキサンなどが挙げられる。これらの有機化合物は1種類で、あるいは2種類以上を混合して使用することができる。2種類以上を混合して使用する場合には、水性媒体(C)は、それらの合計が50重量%以下の濃度で含まれる水を主たる成分とするものが好ましい。
【0045】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、上記の例に示す方法以外の方法によって調製されたものであっても良い。しかし、最終的に得るポリエステル樹脂水性分散体は、上記のとおりポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)と水性媒体(C)との割合が、
(B)/{(A)+(B)}=5〜50重量%
{(A)+(B)}/{(A)+(B)+(C)}=5〜50重量%
の2式を満たすものであることが好ましい。
【0046】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、中和剤および/または乳化剤を含むものであっても良い。
中和剤としては、代表的なものを例示すると、アンモニア、あるいはトリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルモルホリンなどの有機アミン類、NaOH、KOH、Ca(OH)などのアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。
【0047】
また乳化剤としては、代表的なものを例示すると、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルアリルポリエーテル硫酸のカリウム塩ないしはナトリウム塩、あるいはアンモニウム塩などのような種々のアニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルなどのような種々のノニオン性乳化剤等が挙げられる。
【0048】
中和剤の使用量は、ポリエステル樹脂(A)および(B)が有する酸性を示す官能基を中和するのに足る程度の量であるのが好ましく、ポリエステル樹脂水性分散体のpHが7前後となるように、その使用量を適宜、調整することが望ましい。また乳化剤を使用する場合には、皮膜の耐水性などを低下させるおそれがあるので、その使用量は、ポリエステル樹脂(A)および(B)の合計重量の5重量%以下であることが好ましい。
【0049】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は接着剤、塗料、インキ、バインダーあるいは各種処理剤などの主要な構成成分として、繊維加工、紙加工、フィルム加工、印刷、塗装などの分野に利用できる。
【0050】
本発明のポリエステル樹脂は単独または必要により他の樹脂との併用および架橋剤の併用が可能である。すなわちかかる他の樹脂や架橋剤との組み合わせにより、得られる皮膜などの硬さ、耐熱性、耐水性、耐久性が、さらに向上することが期待できる。
【0051】
上記した他の樹脂として代表的なものを例示すると、アクリルエマルション、合成ゴムラッテクス、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性フェノール樹脂あるいは本発明のポリエステル樹脂水性分散体以外の水性ポリエステル樹脂などが挙げられ、これらのうちの1種類または2種類以上を、それぞれ使用目的ならびに加工方法によって、適宜選択してよい。
【0052】
上記した架橋剤としては、代表的なものを例示するとアミノプラスト、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物およびイソシアネート基を一次的に保護したポリイソシアネート化合物、エチレンイミン化合物などが挙げられ、これらのうちの1種類または2種類以上を、それぞれ使用目的ならびに加工方法によって、適宜選択してよい。
【0053】
また、必要に応じて、無機質フィラーなどを加えてた形で以て、使用することもできる。
【0054】
【実施例】
以下に本発明を、合成例、実施例、比較例により、一層具体的に詳述するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下において部および%は、特に断りのない限り、すべて重量基準であるものとする。
【0055】
なお、各種の試験項目ないしは測定項目は、以下の方法で行ったものである。
(1)数平均分子量
LiBrを10ミリmol/lの濃度で含有するジメチルホルムアミドを移動相とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した。
【0056】
(2)軟化点
ASTM(E28−58T)で規定される方法に準拠して、環球法により測定した。
【0057】
(3)水分散体の粒子径
動的光散乱法による測定を行い、キュムラント法で解析された平均粒径(流体力学的相当径)を採用した。
【0058】
(4)水分散体の保存安定性
ポリエステル樹脂水分散体を40℃で1週間保存し、外観の変化、沈降などの有無を目視評価した。
【0059】
Figure 0003577778
【0060】
(5)皮膜の耐水性
ポリエステル樹脂水分散体を厚さ125マイクロメートル(μm)のポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥後の膜厚が10μmとなる様に塗布し90℃なる温度で2分間乾燥したのち、さらに140℃で1分間加熱した。
【0061】
このようにして得られる塗工フィルムを、25℃のイオン交換水に24時間浸漬し、白色化の程度、および塗工膜の付着の様子を観察した。
評価5:白色化せず、塗工膜はフィルム上に完全に残っている。
【0062】
4:ごく薄く白色化している。塗工膜は完全に残っている。
3:薄くあるいは部分的に白色化している。塗工膜は完全に残っている。
2:塗工膜全体が白色化しているか、部分的な浮きあるいは溶出がある。
1:塗工膜全体が白色化し指でこすると簡単にはがれる。あるいは、塗工膜の半分以上が浮いているか、溶出して失われている。
【0063】
(6)皮膜の耐溶剤性
上記のようにして得られる塗工フィルムを、キシレンをしみ込ませたガーゼで4.9×10 パスカル(Pa)なる接触荷重を与えて往復運動摩擦を行って、皮膜が溶解するか、あるいは皮膜が破れて破壊するかして基材のポリエチレンテレフタレートフィルムが露出するまでの往復運動回数を計測した。
【0064】
Figure 0003577778
(7)皮膜の鉛筆引っかき値
上記のようにして得られる塗工フィルムを鋼板上に固定し、JIS K 5400に規定される手かき法で鉛筆引っかき値を皮膜のすり傷および破れで測定し、皮膜の硬度および強度の評価とした。
【0065】
Figure 0003577778
【0066】
(8)接着剤層の耐熱性
ポリエステル樹脂水性分散体を乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布する以外は上記と同様にして得られる塗工フィルムと、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムとを重ね合わせ、140℃なる温度で1.96×10 Paなる圧力で5分間圧着し、25ミリメートル(mm)幅に切断して試験片を作製した。
【0067】
このようにして得られる試験片を40℃なる温度の雰囲気中に30分間静置したのち、重さ200グラム(g)の重りを使用して、180゜はく離の要領で荷重をかけて、50℃ではく離が60mm進行するまでの時間、あるいは240分間で何mmはく離したかを計測した。
【0068】
Figure 0003577778
【0069】
(9)水分散性ポリエステル樹脂の合成例
合成例1
反応容器にエチレングリコール558部、ネオペンチルグリコール468部、テレフタル酸896部、イソフタル酸598部、ブチルヒドロキシ錫オキシド0.5部を反応容器に仕込み180℃から240℃まで240分間かけて昇温し、その後240℃で反応を続けて約290部の溜出液をトラップした。続いて、テトライソプロピルチタネート0.5部を仕込んで220〜280℃で、水銀柱10〜0.5mmの減圧下に重縮合反応を行った。このようにして分子量16,400、軟化点158℃なるポリエステル樹脂を得た。以下、これをポリエステル樹脂(A1)と記すことにする。あるいは単にA1と略記することがある。
【0070】
合成例2
反応容器にエチレングリコール558部、ネオペンチルグリコール468部、テレフタル酸896部、イソフタル酸553部、ブチルヒドロキシ錫オキシド0.5部を反応容器に仕込み180℃から240℃まで240分間かけて昇温し、その後240℃で反応を続けて約280部の溜出液をトラップした。続いて、5−ソデウムスルホイソフタル酸ジメチル80部、テトライソプロピルチタネート0.5部を仕込んで240℃で反応物が透明になるまで溜出液を除いた後、220〜280℃で、水銀柱10〜0.5mmの減圧下に重縮合反応を行った。分子量14,700、軟化点176℃のポリエステル樹脂(A2)を得た。
【0071】
合成例3〜6
さらに、表1の配合組成で合成例1あるいは2と同様の方法により、ポリエステル樹脂(A3)〜(A6)を得た。これらのポリエステル樹脂の分子量ならびに軟化点を、まとめて表1に示す。
【0072】
合成例7
反応容器にエチレングリコール558部、ジエチレングリコール477部、テレフタル酸896部、イソフタル酸448部、ブチルヒドロキシ錫オキシド0.5部を反応容器に仕込み180℃から240℃まで240分間かけて昇温し、その後240℃で反応を続けて約260部の溜出液をトラップした。続いて、5−ソデウムスルホイソフタル酸ジメチル266部、テトライソプロピルチタネート0.5部を仕込んで240℃で反応物が透明になるまで溜出液を除いた後、220〜280℃で、水銀柱10〜0.5mmの減圧下に重縮合反応を行った。分子量14700、軟化点176℃のポリエステル樹脂(B1)を得た。
【0073】
合成例8、9
さらに用いる原料の比率を表2に示すように変更した以外は、合成例7と同様にして、ポリエステル樹脂(B2)および(B3)を得た。
【0074】
ポリエステル樹脂(B1)〜(B3)の組成、分子量ならびに軟化点を、まとめて表2に示す。
【0075】
【表1】
Figure 0003577778
《表1の脚注》
表中の”組成”を示す数字は、いずれも、「モル%」を意味するものとする。
【0076】
「EG」………………………「エチレングリコール」の略記
「NPG」……………………「ネオペンチルグリコール」の略記
「DEG」……………………「ジエチレングリコール」の略記
「TPA」……………………「テレフタル酸」の略記
「IPA」……………………「イソフタル酸」の略記
「AA」………………………「アジピン酸」の略記
「SSI」……………………「5−ソデウムスルホイソフタル酸」の略記
組成分析は、核磁気共鳴の測定により行った。
【0077】
表中の”分子量”を示す数値は、いずれも測定値の百分の一の数値となっているので、実際にはそれぞれを百倍(×100)したものである。
表中の”軟化点”を示す数値の単位は、「℃」である。
【0078】
【表2】
Figure 0003577778
《表2の脚注》
表中の記号、数値の単位などは、表1の場合と同じ。
【0079】
〔実施例1〕60部のポリエステル樹脂(A1)と、40部のポリエステル樹脂(B1)を90部のN−メチル−2−ピロリドンに溶解させたものを、加熱および撹拌装置を有する容器を使用して60〜80℃なる温度保ちつつ、210部の水を60分間かけて少しづつ添加して、乳白色のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
【0080】
得られた水性分散体の粒子径は210nmであり、水性分散体を40℃で1週間保存したところ、外観になんら変化はなかった。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜は、僅かに白濁したものであったが、耐水性、耐溶剤性、鉛筆引っかき値はいずれも良好であり、接着剤層の耐熱性も良好であった。
【0081】
〔比較例1〕
100部のポリエステル樹脂(A2)の、10mmスクリーン通過の粉砕物を、あらかじめ調製した。90部のノルマルブチルセロソルブと、210部の水を加熱および攪拌装置を有する容器内で攪拌、混合する中へ、前記A2の粉砕物を投入し、120分間、100℃なる温度で攪拌を続けたところ、乳白色のポリエステル樹脂水性分散体が得られたが、仕込んだA2のうち60部に相当する不溶物が容器内に残った。
【0082】
得られた水性分散体の固形分濃度は12重量%、粒子径は320nmであり、水性分散体を40℃で1週間保存したところ、白色の沈降物を大量に生じた。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜の耐水性、鉛筆引っかき値はいずれも良好であり、接着剤層の耐熱性も良好であった。
【0083】
〔実施例2〕
80部のポリエステル樹脂(A2)、および20部のポリエステル樹脂(B1)の、いずれも10mmスクリーン通過の粉砕物を、それぞれ、あらかじめ調製した。90部のノルマルブチルセロソルブと、210部の水を加熱および攪拌装置を有する容器内で攪拌、混合する中へ、前記の2種の粉砕物を投入し、120分間、100℃なる温度で攪拌を続け、乳白色のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
【0084】
得られた水性分散体の粒子径は180nmであり、水性分散体を40℃で1週間保存したところ、外観になんら変化はなかった。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜の耐水性、耐溶剤性、鉛筆引っかき値はいずれも良好であり、接着剤層の耐熱性も良好であった。
【0085】
〔実施例3〕
60部のポリエステル樹脂(A2)および40部のポリエステル樹脂(B1)の、いずれも10mmスクリーン通過の粉砕物を、それぞれ、あらかじめ調製した。90部のイソプロピルアルコールと、310部の水を加熱および攪拌装置を有する容器内で攪拌、混合する中へ、前記の2種の粉砕物を投入し、120分間、80℃なる温度で攪拌を続け、乳白色を呈する半透明のポリエステル樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体から、10〜20mmHgの減圧下でイソプロピルアルコールと水を溜去させて、実質的に水を媒体とする乳白色のポリエステル樹脂水性分散体の400部を得た。
【0086】
得られた水性分散体の粒子径は160nmであり、水性分散体を40℃で1週間保存したところ、外観になんら変化はなかった。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜の耐水性、耐溶剤性、鉛筆引っかき値はいずれも良好であり、接着剤層の耐熱性も良好であった。
【0087】
〔実施例4〕
40部のポリエステル樹脂(A2)、および60部のポリエステル樹脂(B1)の、いずれも10mmスクリーン通過の粉砕物を、それぞれ、あらかじめ調製した。90部のノルマルブチルセロソルブと、210部の水を加熱および攪拌装置を有する容器内で攪拌、混合する中へ、前記の2種の粉砕物を投入し、120分間、100℃なる温度で攪拌を続け、乳白色のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
【0088】
得られた水性分散体の粒子径は86nmであり、水性分散体を40℃で1週間保存したところ、外観になんら変化はなかった。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜の耐溶剤性は良好であり、接着剤層の耐熱性も良好であった。
【0089】
〔実施例5〕
60部のポリエステル樹脂(A3)、および40部のポリエステル樹脂(B1)の、いずれも10mmスクリーン通過の粉砕物を、それぞれ、あらかじめ調製した。90部のノルマルブチルセロソルブと、210部の水を加熱および攪拌装置を有する容器内で攪拌、混合する中へ、前記の2種の粉砕物を投入し、120分間、100℃なる温度で攪拌を続け、半透明のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
【0090】
得られた水性分散体の粒子径は60nmであり、水性分散体を40℃で1週間保存したところ、外観になんら変化はなかった。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜の耐溶剤性は良好であった。
【0091】
〔実施例6〕
60部のポリエステル樹脂(A4)、および40部のポリエステル樹脂(B1)の、いずれも10mmスクリーン通過の粉砕物を、それぞれ、あらかじめ調製した。90部のノルマルブチルセロソルブと、210部の水を加熱および攪拌装置を有する容器内で攪拌、混合する中へ、前記の2種の粉砕物を投入し、120分間、100℃なる温度で攪拌を続け、半透明のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
【0092】
得られた水性分散体の粒子径は160nmであり、水性分散体を40℃で1週間保存したところ、外観になんら変化はなかった。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜の物性は良好であった。
【0093】
〔比較例2〕
60部のポリエステル樹脂(A6)、および40部のポリエステル樹脂(B1)の、いずれも10mmスクリーン通過の粉砕物を、それぞれ、あらかじめ調製した。90部のノルマルブチルセロソルブと、210部の水を加熱および攪拌装置を有する容器内で攪拌、混合する中へ、前記の2種の粉砕物を投入し、120分間、100℃なる温度で攪拌を続け、乳白色のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
【0094】
得られた水性分散体の粒子径は120nmであり、水性分散体を40℃で1週間保存したところ、外観になんら変化はなかった。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜の耐水性、耐溶剤性、鉛筆引っかき値、接着剤層の耐熱性いずれも低下したものであった。
【0095】
〔比較例3〕
60部のポリエステル樹脂(A2)、および40部のポリエステル樹脂(B2)の、いずれも10mmスクリーン通過の粉砕物を、それぞれ、あらかじめ調製した。90部のノルマルブチルセロソルブと、210部の水を加熱および攪拌装置を有する容器内で攪拌、混合する中へ、前記の2種の粉砕物を投入し、120分間、100℃なる温度で攪拌を続けたところ、乳白色のポリエステル樹脂水性分散体が得られたが、仕込んだA2およびB2の50部に相当する重量の不溶物が容器内に残った。
【0096】
得られた水性分散体の固形分濃度は14重量%、粒子径は測定不能であった。水性分散体を40℃で1週間保存したところ、白色の沈降物を大量に生じた。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜の耐水性、鉛筆引っかき値はいずれも良好であり、接着剤層の耐熱性も良好であった。
【0097】
〔比較例4〕
60部のポリエステル樹脂(A2)、および40部のポリエステル樹脂(B3)のいずれも10mmスクリーン通過の粉砕物を、それぞれあらかじめ調製した。90部のノルマルブチルセロソルブと、210部の水を加熱および攪拌装置を有する容器内で攪拌、混合する中へ、前記の2種の粉砕物を投入し、120分間、100℃なる温度で攪拌を続け、半透明のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
【0098】
得られた水性分散体の粒子径は60nmであり、水性分散体を40℃で1週間保存したところ、外観になんら変化はなかった。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜の耐水性、鉛筆引っかき値、耐熱性は劣ったものであった。
【0099】
〔実施例7〕
60部のポリエステル樹脂(A5)と、あらかじめ10mmスクリーン通過に粉砕しておいた40部のポリエステル樹脂(B1)、および25部の水とを雰囲気加圧型ニーダを使用して、ジャケット温度140℃にて40分間混練して淡褐色透明の混合物としたのち、混合物を80〜100℃の温度に維持しながら、1時間かけて水42部を少しづつ投入し、さらに233部の水を加えて乳白色のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
【0100】
得られた水性分散体の粒子径は180nmであり、水性分散体を40℃で1週間保存したところ、外観になんら変化はなかった。ポリエチレンテレフタレートフィルム上の皮膜の耐水性、耐溶剤性、鉛筆引っかき値はいずれも良好であり、接着剤層の耐熱性も良好であった。
【0101】
実施例1〜7と比較例1〜4の、ポリエステル樹脂水性分散体の組成を表3、表4及び表5にまとめて示す。
【0102】
【表3】
Figure 0003577778
【0103】
【表4】
Figure 0003577778
【0104】
【表5】
Figure 0003577778
《表3の脚注》
ポリエステル樹脂”A1”〜”A6”および”B1”〜”B3”の欄に示す数値は、全ポリエステル樹脂中の「重量%」を意味するものである。
【0105】
媒体の欄に示す数値は、全ポリエステル樹脂に対する「重量%」を意味するものである。
「NMP」……………………「N−メチル−2−ピロリドン]の略記
「BCS」……………………「ノルマルブチルセロソルブ」の略記
固形分濃度は、ポリエステル樹脂と媒体を合計した中の、ポリエステル樹脂の「重量%」を意味する。
【0106】
粒子径の単位は、ナノメートル(nm)である。
但し、粒子径の欄に示す”−”は、測定が不可能であったことを示す。
【0107】
【発明の効果】
保存安定性が良好であり、かつ耐水性、耐溶剤性、硬度あるいは強度、および耐熱性に優れた皮膜を形成するポリエステル樹脂水性分散体であるので、接着剤、塗料、インキ用樹脂として、あるいは本発明のポリエステル樹脂水性分散体を単独もしくは少量の架橋剤などを配合してフィルム、紙、繊維加工用途におけるコーティング剤としての利用に好適な水性樹脂が提供される。

Claims (5)

  1. 軟化点40〜200℃、数平均分子量5,000〜30,000のポリエステル樹脂(A)とスルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸を5〜20モル%含有するポリカルボン酸成分とポリオール成分とからなる数平均分子量3,000〜10,000の軟化点を有するポリエステル樹脂(B)とが、水性媒体(C)中に分散していることを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
  2. ポリエステル樹脂(A)のポリカルボン酸成分として、スルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸を含有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  3. ポリエステル樹脂(A)のポリカルボン酸成分が、スルホン酸金属塩基含有芳香族ジカルボン酸を0〜4モル%含有することを特徴とする請求項1又は2記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  4. 水性媒体(C)が、数平均分子量32〜300、sp値8.5〜15である有機化合物を50重量%以下の濃度で含む水を主たる成分とするものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  5. ポリエステル樹脂(A)と(B)と水性媒体(C)との割合が、(B)/{(A)+(B)}=5〜50重量%及び{(A)+(B)}/{(A)+(B)+(C)}=5〜50重量%の式を満たすものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル樹脂水性分散体。
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