JP3612127B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コウジ酸および/またはその誘導体とUV−A領域に紫外線吸収特性を有するアミノ酸誘導体の少なくとも一種を配合することによって、コウジ酸および/またはその誘導体の製剤安定性を向上させた皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人が長年研究を続けてきたコウジ酸およびその誘導体は、種々の優れた特徴を持つ有用性の高い薬物として知られており、例えば、特開昭55−157509号公報、特公昭56−18569号公報、特公昭58−22151号公報、特公昭58−22152号公報、特公昭58−34446号公報、特公昭60−7961号公報、特公昭60−9722号公報、特公昭60−10005号公報、特開昭60−137253号公報、特公昭61−10447号公報、特公昭61−60801号公報、特開昭62−5909号公報、特公昭62−3820号公報、特公昭63−27322号公報、特開平1−132502号公報および特公平5−30422号公報等に開示されている。
【0003】
また一方、最近では、紫外線の皮膚に及ぼす影響への関心の高まりとともに、紫外線吸収剤に関する研究が積極的に進められ、特に皮膚の老化に大きく関与するとされているUV−A(400ないし320nm)を防御する物質を利用した皮膚外用剤が開発されているが、コウジ酸を利用した製剤においても当該紫外線吸収剤を有効に利用する試みがなされてきた。その一例として、特開昭64−83008号公報および特開平2−108614号公報などが例示できる。
【0004】
しかしながら、紫外線吸収剤の多くは溶解性に問題があり、製剤中で析出することが多いために、紫外線吸収剤そのものの効果が充分発揮されず、コウジ酸の着色・分解が生じる等の安定性低下の問題へと波及していた。また、皮膚外用剤の形態がO/W型エマルジョン或いはW/O型エマルジョンの場合には、紫外線吸収剤の溶解性が水相と油相との乳化バランスにも影響を与え、経時的な分離が問題となっており、特にこの現象はコウジ酸自体の着色安定性を考慮した条件(例えば、ノニオン系の界面活性剤を使用し、製剤のpHを4ないし5に調製する場合)において顕著であった。
【0005】
この欠点をなくすために、溶解助剤が適宜使用されていたが、油性の助剤を多量配合することによってべたつくなど使用感に悪影響を及ぼす等の問題が残り抜本的な解決法としては不十分であったため、本発明者は特定の安定化剤を添加することによってこのような問題を解決した。かかる技術は、例えば、特開平7−126121号公報、特開平7−126122号公報および特開平7−126135号公報等に開示されている。
【0006】
コウジ酸およびその誘導体(以下、これらを総称して単に「コウジ酸類」と呼ぶことがある)は、それ自体非常に安定性確保の難しい薬物としても知られているが、とりわけ、先に述べたようなO/W型エマルジョンまたはW/O型エマルジョンとして製剤化される際には、処方設計上かなり高度な技術が要求されることから、使用感に悪い影響を与えず、しかも過酷な流通過程に耐え得るコウジ酸類の製剤技術の開発は引続いての課題であった。
【0007】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、UV−A領域に紫外線吸収特性を有するアミノ酸誘導体の少なくとも一種を配合することによって、コウジ酸および/またはその誘導体の製剤安定性を向上させた皮膚外用剤を得ることを見い出し本発明を完成した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、コウジ酸および/またはその誘導体に特定の紫外線吸収剤を配合することにより従来のコウジ酸類製剤の持つ上記の問題点を解決することにあり、特にコウジ酸類の熱に対する着色・分解の経時的安定性を改善し、乳化特性にも優れた皮膚外用剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、コウジ酸および/またはその誘導体を含む外用剤に、UV−A領域に紫外線吸収特性を有する特定のアミノ酸誘導体の少なくとも一種を配合したことを特徴とするコウジ酸類の熱に対する着色・分解の経時的安定性を改善した乳化特性にも優れた皮膚外用剤が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
元来、コウジ酸類はアミノ酸化合物との併用によって着色が進行し易い傾向にあり、本発明者もその現象を熟知していたが、皮膚への親和性や安全性を優先的に考慮して、敢えてアミノ酸誘導体の応用研究を続けた。その結果、意外にも特定のアミノ酸誘導体にコウジ酸の熱に対する着色・分解を抑制することに加えてクリームや乳液等の乳化系を安定化する作用があるとの知見を得、この知見を元に本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明において第1の成分として使用されるコウジ酸(5−オキシ−2−オキシメチル−γ−ピロン)としては、5−オキシ−2−オキシメチル−γ−ピロンの純品、コウジ酸生産能を有する公知の菌株を培養して得られるコウジ酸を主成分とする醗酵液、該醗酵液の濃縮液、および該醗酵液からコウジ酸を抽出して結晶化したもの等が例示できる。
【0012】
コウジ酸誘導体としては、例えば、特公昭60−10005号公報、特公平1−45472号公報、特公平3−74229号公報等に開示されたもの、または特公昭58−22151号公報、特公昭58−22152号公報等に開示されているコウジ酸のエステル化物およびコウジ酸の2位の−CH OH基に糖類を結合させたコウジ酸誘導体など公知のものを単独または二種以上を組合せて用いることができる。
これらコウジ酸類の製剤に対する配合量は、外用剤全体に対し0.001ないし10重量%、好ましくは0.1ないし5重量%の範囲である。
【0013】
本発明において第2の成分として使用されるアミノ酸誘導体は、次の一般式(1)で表わされる化合物である。
【化2】
Figure 0003612127
(但し、式(1)において、Rは−CH 2 CH 2 CO 2 である。
Xは炭素数1ないし10のアルキル基である。)
【0014】
上記一般式(1)のうち、特に好ましいものとしては、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸メチルエステル、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸エチルエステル、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸n−ブチルエステル、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸iso−ブチルエステル、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル等が具体的に例示でき、これらを単独または二種以上を組合せて使用することができる。
これらアミノ酸誘導体の配合量は、その種類によって多少異なるが、通常、外用剤全体に対し0.001ないし10重量%、好ましくは0.1ないし5重量%である。
【0015】
その他にも前記アミノ酸誘導体に従来から使用されている公知の紫外線吸収剤ならびに紫外線散乱剤を適宜配合して効果の増強を図っても良い。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系のオキシベンゾン、オキシベンゾンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノンなど、サリチル酸系のサリチル酸エチレングリコール、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸フェニルなど、ウロカニン酸およびウロカニン酸エチル、桂皮酸系のパラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、メトキシ桂皮酸オクチルなど、ジベンゾイルメタン系の4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンなどやベンゾトリアゾール系の2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられ、これらを単独または二種以上を組合せて使用することができるほか、紫外線吸収能を有する公知の動・植物エキスを適宜任意に組合せることによって本発明を実施することができる。
紫外線散乱剤としては、酸化チタンなどの一般的に使用可能な粉体類が適宜配合可能である。
【0016】
以上の第1の成分ならびに第2の成分群を必須成分とする外用剤を、公知の製法によって調製すれば、経時的に安定な乳化製剤を得ることができ、本製剤中におけるコウジ酸類の特に熱に対する着色・分解の経時的安定性が改善された皮膚外用剤を提供することができる。
【0017】
また、本発明の製剤はO/W型エマルジョンおよびW/O型エマルジョンなどの乳化タイプに制限されるものではなく、成分の選択によって透明タイプの製剤にも同様に適用されるものである。それ以外にもW/O/W型やO/W/O型などの多層乳化型製剤やマイクロカプセル製剤化のための基礎技術として利用しても良い。
【0018】
本発明の外用剤の剤型は、外用施用上適するものであれば特に制限はなく、例えば、パップ剤、プラスター剤、ペースト剤、クリーム、軟膏、エアゾール剤、乳剤、ローション、乳液、エッセンス、パック、ゲル剤、パウダー、ファンデーション、サンケア、バスソルトなどの医薬品、医薬部外品ならびに化粧品として公知の形態で幅広く使用に供されるものである。
【0019】
さらに、本発明の外用剤を調製する場合、通常に用いられる種々の公知の有効成分、例えば、塩化カルプロニウム、セファランチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキなどの末梢血管拡張剤、カンフル、メントール、ハッカ油などの清涼剤、ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、ウンデシレン酸などの抗菌剤、副腎皮質ホルモン、ε−アミノカプロン酸などの消炎剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、胎盤抽出物、オウゴンエキス、乳酸菌培養抽出物などの動物・植物・微生物由来の各種抽出物などを本発明の目的を損なわない範囲でその時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。更に、前述の医薬品、医薬部外品、化粧品には公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分の他、必要に応じて公知の保湿剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、香料、着色剤など種々の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で併用することができる。
【0020】
【実施例】
次に試験および処方例を開示して本発明を説明するが、これらの開示は本発明の好適な態様を示すものであって、本発明を限定するものではない。
【0021】
〈試験〉製剤安定性試験
試験方法
表1(別表)に示した処方条件で各々のクリーム製剤(pH約4.5)を調製した。これを4オンスローソク瓶に充填後、紫外線を照射しながら、50℃の過酷な温度条件で2ヶ月間保存した。2ヶ月後、式差(ΔE)を測定した(式差計:日本電色工業Z−1001DP使用)。その際、外観変化(紫外線吸収剤の析出の有無、乳化安定性)の観察、コウジ酸の残存率の測定(常法によりHPLCを使用し、試験開始時を100として算出)、使用感の評価も行った。
【0022】
【表1】
Figure 0003612127
【0023】
試験結果
表1に示したように、本発明の製剤は、紫外線吸収剤の析出もなく乳化安定性も極めて良好であった。また、製剤中におけるコウジ酸の熱に対する着色・分解がなく安定で、使用感も良好な状態が維持されていた。
【0024】
【処方例】
以下に本発明の処方例を挙げる。なお、処方例中、「適量」とは処方全体が100重量%になる量を意味する。
Figure 0003612127
【0025】
Figure 0003612127
【0026】
Figure 0003612127
【0027】
Figure 0003612127
【0028】
Figure 0003612127
【0029】
Figure 0003612127
【0030】
Figure 0003612127
【0031】
Figure 0003612127
【0032】
Figure 0003612127
上記の処方1ないし9は、いずれも表1に示したのと同様に、本発明の目的において満足する効果を有する製剤であることが確認された。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、コウジ酸および/またはその誘導体を含む外用剤に、UV−A領域に紫外線吸収特性を有する特定のアミノ酸誘導体の少なくとも一種を配合した外用剤が提供され、該外用剤はコウジ酸類の熱に対する着色・分解の経時的安定性が改善され、乳化特性に優れたものである。

Claims (2)

  1. コウジ酸および/またはその誘導体とUV−A領域に紫外線吸収特性を有する下記一般式(1)で表わされるアミノ酸誘導体の少なくとも一種を配合したことを特徴とする皮膚外用剤。
    Figure 0003612127
    (但し、式(1)において、Rは−CH 2 CH 2 CO 2 である。
    Xは炭素数1ないし10のアルキル基である。)
  2. 上記一般式(1)で表わされるアミノ酸誘導体が、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸メチルエステル、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸エチルエステル、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸n−ブチルエステル、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸iso−ブチルエステル、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシルエステルからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1記載の皮膚外用剤。
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