JP3656197B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、紫外線吸収剤とノニオン系界面活性剤を含み、かつ、pHを4ないし5に調整したコウジ酸および/またはその誘導体配合の外用組成物に、安定化剤として、特定の脂質類を添加することによって、上記コウジ酸および/またはその誘導体配合の外用剤の紫外線吸収剤の析出を防止し、コウジ酸類の着色・分解の経時的安定性および薬効の持続性を改善した皮膚外用剤およびその安定化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
皮膚外用剤の代表的な剤型としては、O/W型エマルジョンとW/O型エマルジョンがあげられ、水や油分の組成比や物性はそれぞれ異なるが、ともに界面活性剤の介在によって水相と油相が安定に乳化分散された均一の製剤である。
【0003】
本出願人が長年研究を続けてきたコウジ酸およびその誘導体は、種々の優れた特性をもつ有用性の高い薬物として知られている。かかる技術的成果は、例えば、特開昭55−157509号公報、特公昭56−18569号公報、特公昭58−22151号公報、特公昭58−22152号公報、特公昭58−34446号公報、特公昭60−7961号公報、特公昭60−9722号公報、特公昭60−10005号公報、特開昭60−137253号公報、特公昭61−10447号公報、特公昭61−60801号公報、特開昭62−5909号公報、特公昭62−3820号公報、特公昭63−27322号公報、特開平1−132502号公報および特公平5−30422号公報等に開示されている。
【0004】
しかしながら、コウジ酸およびその誘導体(以下、これらを総称して単に「コウジ酸類」と呼ぶことがある)は、それ自体非常に安定性確保の難しい薬物としても知られている。とりわけ、コウジ酸類を先に述べたようなO/W型エマルジョンまたはW/O型エマルジョンに配合して製剤化するときの処方設計にはかなり高度な技術を要することから、使用感に悪い影響を与えずしかも過酷な流通過程にたえ得る製剤の技術開発がコウジ酸類の製剤化上の当面の課題であった。
【0005】
コウジ酸類を種々の剤型に配合した場合には、大なり小なり、その着色・分解の外的原因となる紫外線にさらされやすい条件下にある。このことから、紫外線吸収剤を適宜配合する対策が講じられてきた。
その一例としては、特開昭62−108804号公報、特開昭64−83008号公報および特公平4−46924号公報などが例示できる。
【0006】
しかしながら、紫外線吸収剤の多くは溶解性に問題があり、製剤中で析出することが多いために紫外線吸収剤そのものの効果が充分発揮されず、コウジ酸類の安定性低下へと波及していた。
【0007】
この欠点をなくすために、溶解助剤が適宜使用されていたが、油性の助剤を多量配合することによってべたつくなど使用感に悪影響を及ぼしていた。
また、コウジ酸類を配合した外用剤を製剤化する際に、着色安定性、使用感および皮膚への安全性の点で好適に使用される界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンラノリン酸およびアルキロールアミド類などのノニオン系のものが挙げられるが、そもそも、このノニオン系の界面活性剤は、イオン系の界面活性剤等のように強い乳化力を持ち合わせていないうえに、極性の高い成分やpHの影響によって乳化力が低下するという欠点を有するため、pHを4ないし5に調整することが多いコウジ酸類製剤においては、極性の高い紫外線吸収剤を配合することによって、乳化安定性が経時的に低下するという問題を抱えていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記特定のコウジ酸類配合製剤の持つ問題点を解決すること、つまり、紫外線吸収剤の析出がなく、かつ、コウジ酸類の着色・分解の経時的安定性および薬効の持続性を改善した製剤特性に優れた皮膚外用剤を提供することにある
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、紫外線吸収剤とノニオン系界面活性剤を含み、かつ、pHを4ないし5に調整したコウジ酸および/またはその誘導体配合の外用組成物に、安定化剤として、大豆リン脂質、フォスァチジルコリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリンおよびジパルミトイルフォスファチジルコリンからなる群より選ばれた脂質類を添加したことを特徴とする皮膚外用剤ならびにその安定化方法が提供される。
【0010】
【発明の具体的説明】
本発明において使用されるコウジ酸(5−オキシ−2−オキシメチル−γ−ピロン)としては、5−オキシ−2−オキシメチル−γ−ピロンの純品、コウジ酸生産能を有する公知の菌株を培養して得られるコウジ酸を主成分とする醗酵液、該醗酵液の濃縮液、および該醗酵液からコウジ酸を抽出して結晶化したもの等が使用される。
【0011】
また、コウジ酸誘導体としては、例えば特公昭60−10005号公報、特公平1−45472号公報、特公平3−74229号公報等に開示されたもの、あるいは、特公昭58−22151号公報、特公昭58−22152号公報等に開示されているコウジ酸のエステル化物およびコウジ酸の2位の−CH2 OH基に糖類を結合させたコウジ酸誘導体など公知のものを単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記コウジ酸および/またはその誘導体の製剤に対する配合量は、外用剤全体に対し0.001ないし10重量%、好ましくは0.1ないし5重量%の範囲である。
【0012】
本発明において、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンラノリン酸およびアルキロールアミド類などのノニオン系界面活性剤と併用される紫外線吸収剤としては、特に制限はされないが、例えば、ベンゾフェノン系のオキシベンゾン、オキシベンゾンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンなど、サリチル酸系のサリチル酸エチレングリコール、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸フェニルなど、ウロカニン酸およびウロカニン酸エチル、桂皮酸系のパラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、メトキシ桂皮酸オクチルなど、パラアミノ安息香酸系のパラアミノ安息香酸グリセチル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、ジベンゾイルメタン系の4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンなどやベンゾトリアゾール系の2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが好適なものとして挙げられ、これらを単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。また、その他にも紫外線吸収能を有する公知の動・植物エキスを適宜任意の組み合わせによって使用できる。
これら紫外線吸収剤の配合量は、その種類によって多少異なるが、通常外用剤全体に対し0.001ないし10重量%、好ましくは0.1ないし5重量%である。
【0014】
本発明において、第3成分の安定化剤として使用される脂質類とは、大豆リン脂質、フォスァチジルコリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリンおよびジパルミトイルフォスファチジルコリンからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、その配合量は、種類によって多少異なるが、通常外用剤全体に対し0.001ないし20重量%、好ましくは0.1ないし10重量%である
【0016】
以上の成分群を必須成分とする外用剤を公知の製法によって調製すれば、紫外線吸収剤の析出がなく、経時的に安定な乳化製剤を得ることができる。また、本製剤中におけるコウジ酸類の着色・分解の経時的安定性が著しく改善できる他、コウジ酸類の薬効が持続的に発揮される皮膚外用剤を提供することができる。もちろん、上記の本発明の製剤は、O/W型エマルジョンおよびW/O型エマルジョンなどの乳化タイプに制限されるものではなく、成分の選択によって透明タイプの製剤に対しても同様に適用されるものである。また、その他にもW/O/W型やO/W/O型などの多層乳化型製剤やマイクロカプセル製剤化のための基礎技術として利用しても良い。
【0017】
本発明の皮膚外用剤は、外用施用上適するものであれば特に制限はなく、例えばパップ剤、プラスター剤、ペースト剤、クリーム、軟膏、エアゾール剤、乳剤、ローション、乳液、エッセンス、パック、ゲル剤、パウダー、ファンデーション、サンケア、バスソルトなどの医薬品、医薬部外品、化粧品として公知の形態で幅広く使用に供されるものである。
【0018】
本発明の外用剤を調製する場合、通常に用いられる種々の公知の有効成分、例えば、塩化カルプロニウム、セファランチン、ビタミンE、ビタミンEニコチネート、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキなどの末梢血管拡張剤、カンフル、メントール、ハッカ油などの清涼剤、ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、ウンデシレン酸などの抗菌剤、副腎皮質ホルモン、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン、アラントインなどの消炎剤、アスコルビン酸、アルブチンなどの色白剤、胎盤抽出液、肝臓抽出物、紫根エキス、乳酸菌培養抽出物などの動物・植物・微生物由来の各種抽出物などを本発明の目的を損なわない範囲でその時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。
さらに、前述の医薬品、医薬部外品、化粧品には公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分の他、必要に応じて公知の保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、着色剤など種々の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で併用することができる。
【0019】
【実施例】
次に実験ならびに処方例を開示して本発明を説明するが、これらの例は本発明の好適な態様を開示するものであって、本発明を限定するものではないことは理解されるであろう。
【0020】
<実験1> 製剤安定性試験
試験方法
表1のような処方条件で各々のクリーム製剤(pH約4.5)を調製した。これらを4オンスローソク瓶に充填後、紫外線を照射しながら、50℃の過酷な温度条件で2ケ月間保存した。2ケ月後、色差(ΔE)を測定した(色差計:日本電色工業 Z-1001DP使用)。その際、外観変化(紫外線吸収剤析出の有無、乳化安定性)の観察、使用感の評価も行った。
【0021】
実験結果
表1に示したように、本発明の製剤は、いずれも、紫外線吸収剤の析出もなく乳化安定性も極めて良好であった。また、製剤中におけるコウジ酸の着色安定性も良好で、使用感も良好な状態が維持されていた。
【0022】
Figure 0003656197
Figure 0003656197
【0023】
<実験2> モルモット紫外線色素沈着抑制効果
黄褐色モルモットを用い、色素沈着の改善効果を調べた。
この結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、本発明の製剤は、色素沈着抑制効果に優れ、しかも、その効果が長時間維持される持続的な製剤であることが確認された。
【0024】
実験方法
黄褐色モルモットの背部皮膚を用い、該モルモットの背部毛をバリカンにて刈毛し、更に電気カミソリにて剃毛した。このモルモットの背部を、4ヶ所正方形(2.0×2.0cm)の穴の開いたアルミ箔で覆い、UV−B(SEランプ3本、140mJ/cm2 )で1日1回90秒、3日毎に4回照射した。照射開始日から、実験1で調製した製剤をモルモットの被験部位に1日3回10日間連続して塗布した。塗布開始後10日目、20日目に色素沈着の判定を行った。
【0025】
皮膚色の黒化度は以下に示す如く判定基準にて肉眼判定した。
Figure 0003656197
【0026】
Figure 0003656197
Figure 0003656197
【0027】
【処方例】
以下に本発明の処方例をあげる。
なお、処方例中、「適量」とは処方全体が100重量%になる量を意味する。
【0028】
Figure 0003656197
【0029】
Figure 0003656197
【0033】
<処方例クリームパック
(重量%)
1.コウジ酸エチル 2.00
2.4-tert- ブチル−4'−メトキシ−ジベンゾイルメタン 0.50
3.トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン
硬化ヒマシ油(100E.0.) 2.00
4.フォスファチジルイノシトール 5.00
5.ステアリン酸ジエタノールアミド 5.00
6.ステアリン酸 5.00
7.ミリスチン酸 0.50
8.ヤシ油 15.00
9.天然ビタミンE 0.04
10.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
11.dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 5.00
12.エデト酸二ナトリウム 0.01
13.精製水 適 量
【0036】
<処方例エッセンス
(重量%)
1.コウジ酸 1.00
2.ウロカニン酸 0.50
3.パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 1.00
4.流動イソパラフィン 0.50
5.ジパルミトイルフォスファチジルコリン 1.50
6.ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド 2.00
7.ステアリン酸 0.50
8.リノレン酸 0.50
9.アボカド油 2.00
10.タートル油 3.00
11.天然ビタミンE 0.04
12.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
13.1%カルボキシビニルポリマー水溶液 5.00
14.キサンタンガム 0.14
15.エデト酸二ナトリウム 0.01
16.精製水 適 量
上記の処方例1ないしは、いずれも上記表1および表2に開示されたデータと同様に、本発明の目的を満足する効果を有する製剤であることが確認された。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、紫外線吸収剤とノニオン系界面活性剤を含み、かつ、pHを4ないし5に調整したコウジ酸および/またはその誘導体配合の外用組成物に、安定化剤として、特定の脂質類を添加した皮膚外用剤ならびにの安定化方法が提供され、該外用剤は紫外線吸収剤の析出がなく、経時的に安定な製剤であり、かつ、コウジ酸類の着色・分解の経時的安定性が著しく改善できる他、薬効が持続的に発揮される製剤である。

Claims (2)

  1. 紫外線吸収剤とノニオン系界面活性剤を含み、かつ、pHを4ないし5に調整したコウジ酸および/またはその誘導体配合の外用組成物に、安定化剤として、大豆リン脂質、フォスァチジルコリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリンおよびジパルミトイルフォスファチジルコリンからなる群より選ばれた脂質類を添加したことを特徴とする皮膚外用剤。
  2. 紫外線吸収剤とノニオン系界面活性剤を含み、かつ、pHを4ないし5に調整したコウジ酸および/またはその誘導体配合の外用組成物に、大豆リン脂質、フォスァチジルコリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリンおよびジパルミトイルフォスファチジルコリンからなる群より選ばれた脂質類を添加することを特徴とする皮膚外用剤の安定化方法。
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