JP3611141B2 - 起毛様不織布及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に多数の繊維ループを持つ起毛様不織布及びその製造方法に関し、特に繊維ループによる汚れ除去性に優れ、拭き布として好適に使用しうる起毛様不織布及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、表面に多数の繊維ループを持つ織物、即ちタオル地等は、拭き布として使用されている。一方、短繊維不織布や長繊維不織布等の各種の不織布も、拭き布として使用されている。しかし、不織布の場合、表面に畝状のシワを設けることによって、拭き布としての特性を付与するのが一般的であり、表面に多数の繊維ループを持つ不織布を拭き布として使用することは、殆ど提案されていないのが現状である。この理由は定かではないが、不織布は、短繊維又は長繊維を集積して製造するものであるため、繊維ループを織り込む又は編み込むと、製造工程が煩雑になって、得られる不織布が高価になり、拭き布として用いるのに適さないためであると考えられる。
【0003】
このため、本発明者は、不織布にニードルパンチ処理を施すことによって、不織布の構成繊維を表面に突出させて、繊維ループを形成することを考えた。このような方法によって、比較的容易に繊維ループを持つ不織布が得られるのであるが、得られた繊維ループを構成している繊維としては、比較的太デニールのものになってしまうということがあった。太デニールの繊維群よりなる繊維ループを持つ不織布の場合、拭き布としては、細かな塵埃を除去する能力に欠けるという欠点があった。この理由は、太デニールの繊維群よりなる繊維ループの場合、繊維相互間の間隙も大きくなり、細かな塵埃を捕捉しにくいからである。
【0004】
従って、細デニールの構成繊維よりなる不織布に、ニードルパンチ処理を施して繊維ループを形成させれば、細デニールの繊維群よりなる繊維ループを持つ不織布が得られるのであるが、細デニールの構成繊維の場合、パンチ針に構成繊維が引っ掛けられた時点で、構成繊維が切断してしまうということが多い。即ち、細デニールの構成繊維は、切断強度も低いために、ニードルパンチ処理によって繊維の切断を惹起するのである。このような事情によって、どうしても細デニールの繊維群で形成された繊維ループを持つ不織布が得られにくいという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、構成繊維として分割型複合繊維を使用し、ニードルパンチ処理の際には、比較的太デニールであり、繊維の切断を引き起こさないようにし、且つニードルパンチ処理の際の衝撃により分割型複合繊維を分割割繊させ、表面に突出して繊維ループを形成する繊維を、比較的細デニールの分割繊維に割繊させ、もって、細デニールの繊維群で形成された繊維ループを持つ不織布を得ようというものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、繊維形成性熱可塑性樹脂Aと該熱可塑性樹脂Aよりも高融点の繊維形成性熱可塑性樹脂Bとで構成された二成分系の分割型複合繊維を構成繊維とする不織布であって、該不織布の少なくとも片面には該構成繊維の一部によって形成された繊維ループが多数存在し、該繊維ループは該分割型複合繊維の分割割繊により発現した該熱可塑性樹脂Aで形成される分割繊維A及び該熱可塑性樹脂Bで形成される分割繊維Bよりなる分割繊維群によって形成されていると共に、該繊維ループの不存在区域には、該熱可塑性樹脂Aの軟化又は溶融によって、該分割型複合繊維相互間が圧着された多数の熱圧着部が存在することを特徴とする起毛様不織布及びその製造方法に関するものである。
【0007】
本発明において、不織布を構成する繊維である分割型複合繊維は、一般的に、繊維形成性熱可塑性樹脂Aと、この熱可塑性樹脂Aとは非相溶性の繊維形成性熱可塑性樹脂Bとが複合されてなるものである。両者が非相溶性であるため、この分割型複合繊維に、外力を与えると、熱可塑性樹脂Aよりなる分割繊維と、熱可塑性樹脂Bよりなる分割繊維とに割繊するのである。分割型複合繊維は、一般的に非相溶性の二成分より構成される場合が多いが、非相溶性の三成分以上より構成されるものであってもよい。また、本発明において、分割型複合繊維とは、外力を負荷することによって分割割繊する繊維のことを意味しているのであり、外力を負荷しても分割割繊しない繊維は、二成分以上で構成されていても、本発明において、分割型複合繊維とは呼ばない。分割型複合繊維の横断面は、どのような形態であってもかまわないが、例えば、図1乃至図5に示したような形態が採用される。図1乃至図5において、斜線部で示した部分が熱可塑性樹脂Aよりなり、散点部で示した部分が熱可塑性樹脂Bよりなるものである。なお、図2中の白地部は中空を表しており、従って、この繊維は中空繊維であることを示している。
【0008】
分割型複合繊維は、長繊維であっても短繊維であっても差し支えないが、本発明においては、長繊維を採用するのが好ましい。長繊維の方が、不織布表面に比較的高さの高い繊維ループを形成することが可能だからである。短繊維であると、その繊維長よりも長い繊維ループを形成することはできず、またループ状にならずに、毛羽状になりやすいという傾向が生じる。分割型複合繊維は、従来公知の複合溶融紡糸法によって、容易に製造することができる。分割型複合繊維の繊度は、2〜8デニールであるのが好ましく、特に2.5〜5デニールであるのが好ましい。繊度が2デニール未満であると、ニードルパンチ処理の際に、分割型複合繊維が切断しやすくなる恐れがある。また、分割型複合繊維を複合溶融紡糸法で製造しにくくなり、実用的ではない。一方、繊度が8デニールを超えると、分割型複合繊維が分割割繊した際に発現する分割繊維の繊度が太くなって、拭き布として使用した場合、細かな塵埃を除去する性能に劣る傾向が生じる。
【0009】
図1乃至図5からも明らかなように、分割型複合繊維が分割割繊した場合、少なくとも4本以上の分割繊維が発現するのが好ましい。即ち、図1に示した分割型複合繊維が分割割繊した場合、12本の分割繊維が発現し、図2の場合にも12本の分割繊維が発現し、図3の場合には7本の分割繊維が発現し、図4の場合にも7本の分割繊維が発現し、図5の場合には5本の分割繊維が発現する。分割繊維の本数が3本以下であると、発現した分割繊維の繊度が比較的太くなって、拭き布として使用した場合、細かな塵埃を除去する性能に劣る傾向が生じる。
【0010】
本発明において、分割型複合繊維は、少なくとも二成分以上の非相溶性の繊維形成性熱可塑性樹脂で構成されているのが好ましい。これは、分割型複合繊維に熱及び圧力を作用させて、二成分以上の熱可塑性樹脂の少なくとも一成分又は全成分を軟化又は溶融させ、分割型複合繊維が集積してなる繊維ウェブに、分割型複合繊維相互間が圧着されてなる熱圧着部を形成させるためである。例えば、最も好ましい態様は、繊維形成性熱可塑性樹脂Aが低融点で、繊維形成性熱可塑性樹脂Bが高融点である二成分系の分割型複合繊維を使用することである。この場合、繊維形成性熱可塑性樹脂Aのみを軟化又は溶融させ、一方繊維形成性熱可塑性樹脂Bは軟化又は溶融させずに、分割型複合繊維相互間を圧着させて、熱圧着部を形成させることができる。従って、この場合、繊維形成性熱可塑性樹脂Aは、分割型複合繊維の表面に少なくとも露出しているのである。低融点の繊維形成性熱可塑性樹脂Aと、高融点の繊維形成性熱可塑性樹脂Bとの組み合わせとしては、ポリオレフィン/ポリアミド、ポリオレフィン/ポリエステル、ポリアミド/ポリエステル等の組み合わせが代表的である。また、この組み合わせ以外であっても、任意の組み合わせを採用することができる。
【0011】
繊維形成性熱可塑性樹脂であるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン,プロピレン,ブテン−1,ペンテン−1,3−メチルブテン−1,ヘキセン−1,オクテン−1,ドデセン−1,オクタデセン−1等の炭素数2〜18の脂肪族α−モノオレフィンを重合してなるホモポリオレフィンが採用される。また、これらの炭素数2〜18の脂肪族モノオレフィンを共重合してなる共重合ポリオレフィンも採用することができる。更に、これらの炭素数2〜18の脂肪族モノオレフィンと、他のオレフィン及び/又は少量(重合体重量の約10重量%まで)のエチレン系不飽和モノマーとが共重合されてなるオレフィン系共重合体を使用してもよい。エチレン系不飽和モノマーとしては、ブタジエン,イソプレン,ペンタジエン−1・3,スチレン,α−メチルスチレン等が採用される。特に、炭素数2〜18の脂肪族モノオレフィンとしてエチレンを採用した場合には、重合体重量の約10重量%までのプロピレン,ブテン−1,ヘキセン−1,オクテン−1又は他の高級α−オレフィンと共重合させた共重合ポリエチレンを採用するのが好ましい。
【0012】
繊維形成性熱可塑性樹脂であるポリアミド系樹脂としては、ナイロン4,ナイロン46,ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610,ナイロン11,ナイロン12,ポリメタキシレンアジパミド(MXD−6),ポリパラキシレンデカンアミド(PXD−12),ポリビスシクロヘキシルメタンデカンアミド(PCM−12)等を採用することができる。また、この重合体を構成する各種モノマーを共重合させた共重合ポリアミド系樹脂も使用することができる。
【0013】
繊維形成性熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂としては、酸成分とアルコール成分とを縮合してなるホモポリエステル、又は合計で三種以上の酸成分とアルコール成分とを共縮合してなる共重合ポリエステルを採用することができる。酸成分としては、テレフタル酸,イソフタル酸,フタル酸,2,6−ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸,セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、又は芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸のエステル類が使用される。また、アルコール成分としては、エチレングリコール,ジエチレングリコール,1,4−ブタンジオール,ネオペンチルグリコール,1,4−シクロヘキサンジメタノール等が使用される。また、ホモポリエステルや共重合ポリエステルに、更に、パラオキシ安息香酸,5−ナトリウムスルフォイソフタル酸,ポリアルキレングリコール,ペンタエリスリトール,ビスフェノールA等が添加若しくは共重合されたものも、ポリエステル系樹脂として採用することができる。なお、上記した繊維形成性熱可塑性樹脂には、艶消し剤,顔料,防炎剤,消臭剤,帯電防止剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤等の任意の添加剤が添加されていてもよい。
【0014】
本発明に係る起毛様不織布は、上記した分割型複合繊維を構成繊維とするものであり、その外観は、例えば図6(起毛様不織布の模式的側面図)に示す如くである。起毛様不織布の片面には、分割型複合繊維の一部によって形成された繊維ループ1が多数存在する。この繊維ループ1は、分割型複合繊維の分割割繊により発現した分割繊維群によって形成されている。分割繊維群の繊度は、採用した分割型複合繊維の繊度、及び分割数によって決定されるが、分割型複合繊維に比べて、極めて細くなっているものである。例えば、分割型複合繊維として5デニールのものを使用し、また分割数として図1に示すような12本になるものを使用すれば、分割繊維の繊度は約0.4デニールとなるのである。このような極細の分割繊維で形成された繊維ループ1を持つ不織布を、拭き布として使用すれば、細かな塵埃が繊維ループ1の分割繊維相互間の間隙に捕捉されると共に脱落しにくく、また隣接する繊維ループ1間の間隙にも塵埃が捕捉され、塵埃除去性能に優れたものとなるのである。繊維ループ1の高さは15mm以下であるのが好ましい。ここで、繊維ループ1の高さとは、繊維ループ1をピンセット等で把持し、不織布平面に対して垂直に立てた場合の高さのことを意味している。繊維ループ1の高さが15mmを超えると、拭き布として使用した場合、取り扱いにくくなり、また隣接する繊維ループ1間の間隙に捕捉された塵埃が、拭き取り中に脱落しやすくなる。
【0015】
また、本発明に係る起毛様不織布の外観は、例えば図7に示す如くである。即ち、繊維ループ1の不存在区域に、分割型複合繊維相互間が圧着された熱圧着部2が存在する点で、図6と相違する。なお、図6及び図7では、繊維ループ1が片面にのみ形成されている例を示したが、両面に繊維ループ1が形成されていてもよいことは、言うまでもない。熱圧着部2は、一般的に繊維ループ1を形成する前に設けられ、繊維ループ1を形成しやすくすると共に、起毛様不織布の形態安定性にも寄与するものである。熱圧着部2は、分割型複合繊維を形成している熱可塑性樹脂の軟化又は溶融によって、分割型複合繊維相互間が圧着されているものである。例えば、分割型複合繊維に熱と圧力を作用させて、分割型複合繊維を軟化又は溶融させ、その後冷却すれば、分割型複合繊維相互間が圧着した熱圧着部2が得られるのである。また、分割型複合繊維として、低融点の繊維形成性熱可塑性樹脂Aと、高融点の繊維形成性熱可塑性樹脂Bとを複合してなるものを使用した場合、熱可塑性樹脂Aのみを軟化又は溶融させ、その後冷却して分割型複合繊維相互間が圧着した熱圧着部2が得られる。熱圧着部2の大きさは、一般的に0.1〜2.0mm程度が好ましく、また熱圧着部2の密度は、一般的に2〜100個/cm程度であるのが好ましい。
【0016】
図6で示したような起毛様不織布の繊維ループ1以外の部分、即ち起毛様不織布の本体は、分割型複合繊維で構成されているが、この分割型複合繊維は、分割割繊されていてもよいし、分割割繊されていなくてもよい。一般的には、繊維ループ1を形成する際のニードルパンチによる衝撃が伝播し、分割割繊されている場合が多い。また、図7で示したような起毛様不織布の繊維ループ1及び熱圧着部2以外の部分も、分割型複合繊維で構成されており、分割割繊されている場合もあるし、分割割繊されていない場合もある。一般的に、熱圧着部2の近傍付近では、分割型複合繊維が分割割繊されておらず、熱圧着部2から離れるに従って、分割割繊されている割合が多くなる。また、熱圧着部2においては、分割型複合繊維相互間が圧着された状態となっているので、一般的に分割割繊されていることは少ない。
【0017】
次に、本発明に係る起毛様不織布を製造する方法について説明する。まず、分割型複合繊維を集積して繊維ウェブを作成する。分割型複合繊維としては、互いに非相溶性である複数の繊維形成性熱可塑性樹脂で形成されたものを使用する。特に、低融点の繊維形成性熱可塑性樹脂Aと、これに対して非相溶性で且つ高融点の繊維形成性熱可塑性樹脂Bとで形成された二成分系の分割型複合繊維を使用するのが好ましい。繊維ウェブの形成方法としては、分割型複合繊維が長繊維の場合には、いわゆるスパンボンド法を採用するのが好ましい。即ち、従来公知の複合溶融紡糸法で、長繊維群を紡糸し、横吹付や環状吹付等の従来公知の冷却装置を用いて、吹付風により冷却した後、エアーサッカー等の吸引装置を用いて、所望の繊度となるように牽引細化して、分割型複合長繊維群を得る。この後、コロナ放電装置等を用いて、分割型複合長繊維群を帯電させて開繊し、コンベアーネットの如き移動堆積装置上に、分割型複合長繊維群を堆積・集積して繊維ウェブを得るのである。また、分割型複合繊維が短繊維の場合には、従来公知のカード法等によって、繊維ウェブを得ればよい。
【0018】
次に、この繊維ウェブに部分的に熱及び圧力を与える。熱及び圧力を与える具体的な方法としては、繊維ウェブを、加熱した凹凸ロールとフラットロール又は凹凸ロールとの間に通せばよい。これにより、凹凸ロールから熱が与えられ、ロール間の線圧によって圧力が与えられる。凹凸ロールの凸部先端面の形状は、丸型,楕円型,菱型,三角形型,T型,#型等の任意の形状を採用することができる。この凸部が加熱されていることにより、繊維ウェブに熱が与えられるのである。凸部の加熱温度は、分割型複合繊維を形成している二成分以上の繊維形成性熱可塑性樹脂の中、最も低融点の熱可塑性樹脂の融点未満の温度であるのが好ましい。凸部の加熱温度が最も低融点の熱可塑性樹脂の融点以上の温度であると、この熱可塑性樹脂の流動性が大きくなって、凸部が当接した繊維ウェブの区域(熱圧着部)外の区域に樹脂が流れ込み、後の繊維ループの形成や分割割繊による分割繊維の発現の障害になりやすい。なお、加熱した凹凸ロールと対をなすフラットロール又は凹凸ロールは、常温以下の温度に保持されていてもよいし、同様に加熱されていてもよい。
【0019】
圧力を与える際のロール間の線圧は、20〜90kgf/cmであるのが好ましく、特に30〜70kgf/cmであるのが最も好ましい。線圧が20kgf/cm未満であると、分割型複合繊維相互間の圧着が弱まり、熱圧着部において分割型複合繊維が十分に固定されない傾向が生じる。分割型複合繊維が十分に固定されていないと、得られる不織布の引張強力が低くなり、拭き布としては適当ではない。しかしながら、十分な引張強力が不要な用途においては、熱圧着部における分割型複合繊維の固定が不十分であってもよい。即ち、分割型複合繊維の固定が不十分であると、ニードルパンチ処理による外力の負荷によって、分割型複合繊維の固定が解除され、熱圧着部が実質的に破壊されて存在しない、極めて柔軟ではあるが引張強力の低い不織布が得られるのである。本発明においては、このように熱圧着部が実質的に破壊されて存在しない起毛様不織布についても、その範囲とするものである。一方、線圧が90kgf/cmを超えると、熱圧着部における分割型複合繊維の固定が強くなりすぎて、柔軟性に欠ける不織布しか得られない傾向となる。
【0020】
繊維ウェブに、部分的に熱及び圧力を与えることによって、熱圧着部が多数形成されてなる繊維フリースを得ることができる。熱圧着部の形状は、加熱された凹凸ロールの凸部先端の形状によって決定される。また、熱圧着部の大きさも、凸部先端面の面積によって決定され、一般的に0.1〜2.0mm程度が好ましい。更に、熱圧着部の密度も、凹凸ロールに設けられた凸部の密度によって決定され、一般的に2〜100個/cmであるのが好ましく、特に4〜60個/cmであるのが最も好ましい。また、1個1個の熱着部の合計面積は、繊維フリースの表面積に対して、5〜20%であるのが好ましく、特に7〜15%であるのが最も好ましい。この合計面積が5%未満であると、得られる起毛様不織布を拭き布として使用するには、引張強力が不十分である。勿論、拭き布としての用途ではなく、十分な引張強力が必要ない用途であれば、この程度の合計面積であっても差し支えない。逆に、合計面積が20%を超えると、熱圧着部が相対的に多くなり、得られる起毛様不織布の柔軟性が低下する傾向が生じる。また、熱圧着部が多いと、繊維ループ以外の箇所における分割割繊の割合も低下し、柔軟性が低下する傾向がある。
【0021】
以上のようにして得られた繊維フリースの少なくとも片面からニードルパンチ処理を施す。ニードルパンチ処理は、パンチ針を繊維フリースの表面から裏面に向けて埋入させる処理である。そうすると、パンチ針に引っ掛けられた分割型複合繊維は、繊維フリースの裏面に突出するのである。パンチ針としては、針先端がフォーク形状となっているフォーク型パンチ針(図8)を使用するのが好ましい。何故なら、針先端に分割型複合繊維を引っ掛けて、裏面側に突出させることができるからである。また、パンチ針として、刺の如きバーブを持つレギュラー型パンチ針(図9)を使用することもできる。しかし、レギュラー型パンチ針を使用すると、分割型複合繊維の裏面側への突出よりも、分割型複合繊維相互間の交絡の方が進行し、繊維ループを形成させにくい傾向がある。従って、本発明においては、レギュラー型パンチ針のみでニードルパンチ処理することはまれであり、フォーク型パンチ針のみ又はフォーク型パンチ針とレギュラー型パンチ針とを混在させてニードルパンチ処理するのが一般的である。
【0022】
ニードルパンチ処理における、パンチ密度(パンチ針が繊維フリース中に何回埋入したかを表すもの)は、パンチ針の種類にもよるが、一般的に30〜60回/cmであるのが好ましい。パンチ密度が30回/cm未満であると、パンチ針によって繊維フリースに与えられる衝撃が十分でないので、分割型複合繊維の分割割繊があまり進行しない傾向がある。但し、図9に示す如き、レギュラー型パンチ針を使用した場合には、バーブが多数あるので、分割型複合繊維に与えられる外力も大きくなって、ある程度満足のゆく分割割繊が可能となる。逆に、パンチ密度が60回/cmを超えると、熱圧着部における分割型複合繊維間の固定が解除されやすくなり、拭き布として十分な引張強力を持つ起毛様不織布が得られない場合がある。しかし、拭き布としての用途以外の用途であって、引張強力をあまり必要としない用途に、起毛様不織布を使用する場合には、パンチ密度が多くても差し支えない。特に、フォーク型パンチ針を使用したときには、分割型複合繊維相互間の交絡もあまり進まないため、パンチ密度が多くても差し支えない場合が多い。
【0023】
また、ニードルパンチ処理における、パンチ針の深度(針深度)は7〜20mm程度であるのが好ましい。ここで言う針深度とは、ニードルパンチ機に備えられたベッドプレート面の下へ、パンチ針が埋入する長さを意味している。繊維フリースは、ベッドプレートの上に載置されて、ニードルパンチ処理されるわけであるから、針深度が深いほど、繊維フリースの裏面側(ベッドプレート側)に突出するパンチ針の長さが長いことを意味する。針深度が7mm未満であると、繊維フリースの裏側に突出するパンチ針の長さが短くて、繊維ループが形成されにくい場合がある。特に、パンチ針としてレギュラー型パンチ針を使用した場合、このパンチ針の先端近傍には、分割型複合繊維を引っ掛けるためのバーブがないため、繊維ループを形成することは困難である。一方、針深度が20mmを超えると、形成される繊維ループの高さが非常に高くなり、拭き布として好適な起毛様不織布にならない。
【0024】
ニードルパンチ処理は、繊維フリースの少なくとも片面から施される。片面のみから施した場合、繊維ループは片面にのみ生成する。また、最初に片面から施した後、他面から再度ニードルパンチ処理を施すと、繊維ループは両面に生成する。後者の場合、最初のニードルパンチ処理のパンチ密度よりも、再度のニードルパンチ処理のパンチ密度を少なくする方が好ましい。何故なら、再度のニードルパンチのパンチ密度を多くすると、片面に生成している繊維ループの殆どが他面に移行し、両面に繊維ループが生成した起毛様不織布を得にくくなるからである。
【0025】
このニードルパンチ処理によって、引っ掛けられて裏面側に突出して繊維ループを生成する分割型複合繊維には、引っ掛けられた時点又はその後突出する際等において、外力が与えられ、これにより分割割繊する。従って、生成する繊維ループは分割割繊した分割繊維群で構成されることになる。例えば、図1に示すような分割型複合繊維を使用した場合には、繊維形成性熱可塑性樹脂Aよりなる分割繊維Aが6本、及び繊維形成性熱可塑性樹脂Bよりなる分割繊維Bが6本で構成される分割繊維群が発現するのである。
【0026】
ニードルパンチ処理によって、繊維ループが生成し、且つ分割型複合繊維が分割割繊して分割繊維群が発現するため、起毛様不織布の見掛け密度は、ニードルパンチ処理する前の繊維フリースの見掛け密度よりも小さくなる。即ち、繊維ループが存在することによって、ループによる空隙が形成され、また分割繊維群相互間に空隙が形成されることによって、見掛け密度が小さくなるのである。起毛様不織布の見掛け密度は、0.01〜0.1g/cm程度であるのが好ましい。見掛け密度は、起毛様不織布の厚さ方向に、荷重7g/cmを負荷して、厚さを測定し、見掛け密度(g/cm)=[目付(g/m)]/[厚さ(mm)]/1000で算出されるものである。
【0027】
本発明に係る起毛様不織布の目付は、任意に決定し得る事項であるが、一般的には、15g/m〜130g/m程度であるのが好ましい。そして、この起毛様不織布は、拭き布として好適に使用されるものである。また、比較的低目付の起毛様不織布は、ベッドシーツ,枕カバー等の寝具類,生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の衛生材料の吸収材若しくは表面材,家庭用若しくは工業用の油吸着材としても好適に使用しうるものである。また、比較的高目付の不織布は、フィルター,寝袋や寝具等の中入れ綿,増量材,カーペットや人工皮革用基布,園芸や苗床等の肥料吸収材,建築物の壁内等に収納する保温材としても好適に使用しうるものである。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。ここで、実施例中に示した物性値等の測定方法は、次のとおりである。なお、ここに挙がっていない物性値等の測定方法については、前述したとおりの方法を採用したものである。
[繊維形成性熱可塑性樹脂の融点]:パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸熱ピークの最大値を示す温度を融点とした。
[ポリエチレンテレフタレートの固有粘度]:フェノールと四塩化エタンの等重量混合溶媒を用い、濃度0.5g/100ml、温度20℃で測定した。
[ナイロン6の相対粘度]:JIS−K−6810に準じ、98%硫酸を溶媒として、濃度0.1g/100ml、温度20℃で測定した。
[ポリエチレンのメルトインデックス値]:ASTM−D1238(E)の方法で測定した。
[ポリプロピレンのメルトフローレート値]:ASTM−D1238(L)の方法で測定した。
[起毛様不織布の嵩高性]:ニードルパンチ処理前の繊維フリースに比べて、得られた起毛様不織布の見かけ密度が小さくなったものを○、変わらないものを△、大きくなったものを×と評価した。
[複合繊維の分割性]:得られた起毛様不織布を顕微鏡で観察し、複合繊維が十分に分割割繊しているものを○、殆ど分割割繊していないものを×と評価した。
[起毛様不織布の拭き取り性]:得られた起毛様不織布を10人の人が各々拭き布として使用し、その使用感が良かったと評価した人が5人以上いる場合を拭き取り性「良好」と評価し、5人未満である場合を拭き取り性「不良」と評価した。
【0029】
実施例1
繊維形成性熱可塑性樹脂Aとして、融点128℃、メルトインデックス値25の高密度ポリエチレンを準備した。一方、繊維形成性熱可塑性樹脂Bとして、融点258℃、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを準備した。そして、断面が図1に示すような形態で、全分割数が24本となるような分割型複合繊維を溶融紡糸しうる複合紡糸口金を用いて、複合溶融紡糸した後、冷却装置で紡出長繊維群を冷却し、次いで吸引装置で牽引細化して4デニール(単糸デニール)の分割型複合長繊維群を得、続いて開繊装置で開繊して、移動する捕集ネット上に、この分割型複合長繊維を堆積・集積させて、目付40g/mの繊維ウェブを得た。
【0030】
この繊維ウェブを、125℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧40kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、12%であった。次に、この繊維フリースを、フォーク型パンチ針が植えられたニードルパンチ機に導入し、パンチ密度40回/cm、針深度8mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が40g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。また、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0031】
実施例2
繊度のみを5デニールとした他は、実施例1で使用したのと同様の分割型複合長繊維を使用して、目付60g/mの繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、125℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧50kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、15%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、パンチ密度40回/cm、針深度10mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が60g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。また、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0032】
実施例3
繊度のみを5デニールとした他は、実施例1で使用したのと同様の分割型複合長繊維を使用して、目付80g/mの繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、125℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧60kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、15%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、パンチ密度50回/cm、針深度12mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が80g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。また、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0033】
実施例4
繊度のみを3デニールとした他は、実施例1で使用したのと同様の分割型複合長繊維を使用して、目付25g/mの繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、125℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧20kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、6%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、パンチ密度30回/cm、針深度7mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が25g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。また、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0034】
実施例5
繊度のみを6デニールとした他は、実施例1で使用したのと同様の分割型複合長繊維を使用して、目付100g/mの繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、125℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧65kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、18%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、パンチ密度60回/cm、針深度15mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が100g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。また、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0035】
実施例6
繊維形成性熱可塑性樹脂Aとして、融点225℃、相対粘度2.65のナイロン6を準備した。一方、繊維形成性熱可塑性樹脂Bとして、融点258℃、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを準備した。そして、断面が図2に示すような形態で、全分割数が24本となるような分割型複合繊維を溶融紡糸しうる複合紡糸口金を用いて、複合溶融紡糸した後、実施例1と同様の方法で目付60g/mの繊維ウェブを得た。なお、分割型複合長繊維の繊度は、実施例1と同様で4デニールであった。
【0036】
この繊維ウェブを、210℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧50kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、12%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、パンチ密度40回/cm、針深度10mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が60g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。また、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0037】
実施例7
繊維形成性熱可塑性樹脂Aとして、融点165℃、メルトフローレート値30のポリプロピレンを準備した。一方、繊維形成性熱可塑性樹脂Bとして、融点258℃、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを準備した。そして、断面が図1に示すような形態で、全分割数が12本となるような分割型複合繊維を溶融紡糸しうる複合紡糸口金を用いて、複合溶融紡糸した後、実施例1と同様の方法で目付50g/mの繊維ウェブを得た。なお、分割型複合長繊維の繊度は、5デニールであった。
【0038】
この繊維ウェブを、155℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧50kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、15%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、パンチ密度40回/cm、針深度8mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が50g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。また、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0039】
実施例8
繊度のみを1デニールとした他は、実施例1で使用したのと同様の分割型複合長繊維を使用して、目付40g/mの繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、125℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧50kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、10%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、パンチ密度30回/cm、針深度7mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が40g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。しかし、この起毛様不織布を拭き布として使用すると、全体に毛羽立ちやすいものであった。この理由は、分割型複合長繊維の繊度が1デニールで、これが24本に分割割繊されているため、繊維ループ等を構成している分割繊維の繊度は0.04デニールと極めて細いものである。従って、分割繊維自体の引張強力が低く、拭き取りの際に負荷された引張力で、簡単に分割繊維が切断してしまうためであると考えられる。依って、この起毛様不織布は拭き布としては適当なものではないが、その他の用途、例えばフィルター素材等には好適に使用しうるものである。なお、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0040】
実施例9
繊度のみを10デニールとした他は、実施例1で使用したのと同様の分割型複合長繊維を使用して、目付40g/mの繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、125℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧60kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、15%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、パンチ密度40回/cm、針深度8mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が40g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。しかし、この起毛様不織布は拭き布として使用する場合、細かな塵埃の除去性能に劣るものであった。この理由は、分割型複合長繊維の繊度が10デニールで、これが24本に分割割繊されているため、繊維ループ等を構成している分割繊維の繊度は0.4デニールと比較的太いものである。従って、分割繊維群の間隙が比較的大きく、細かな塵埃を捕捉する性能に劣るためであると考えられる。依って、この起毛様不織布は拭き布としては適当なものではないが、その他の用途、例えば衛生材料の表面材等には好適に使用しうるものである。なお、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0041】
実施例10
断面が図5に示すような形態で、全分割数が3本となるような分割型複合繊維を溶融紡糸しうる複合紡糸口金を用いる他は、実施例1と同様の方法で、目付60g/mの繊維ウェブを得た。なお、分割型複合長繊維の繊度は、実施例1の場合と同様で3デニールであった。この繊維ウェブを、125℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧50kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、15%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、パンチ密度40回/cm、針深度10mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が60g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。しかし、この起毛様不織布は拭き布として使用する場合、細かな塵埃の除去性能に劣るものであった。この理由は、分割型複合長繊維の繊度が3デニールで、これが3本に分割割繊されているため、繊維ループ等を構成している分割繊維の繊度は平均して1デニールと比較的太いものである。従って、分割繊維群の間隙が比較的大きく、細かな塵埃を捕捉する性能に劣るためであると考えられる。依って、この起毛様不織布は拭き布としては適当なものではないが、その他の用途、例えば衛生材料の表面材等には好適に使用しうるものである。なお、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0042】
実施例11
繊度のみを5デニールとした他は、実施例1で使用したのと同様の分割型複合長繊維を使用して、目付80g/mの繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、125℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧60kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、10%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、パンチ密度70回/cm、針深度15mmで、繊維フリースの片面にのみニードルパンチ処理を施した。得られた起毛様不織布は、目付が80g/mで、他面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループ中の分割型複合長繊維は分割割繊されており分割繊維群を観察することができた。しかし、この起毛様不織布は拭き布として使用する場合、捕捉した塵埃が脱落しやすいものであった。この理由は、繊維ループの高さが18mmと高いため、拭き取り中に繊維ループが大きく動いて、隣接する繊維ループ間の間隙に捕捉された塵埃が、脱落しやすいと考えられる。依って、この起毛様不織布は拭き布としては適当なものではないが、その他の用途、油吸着材や寝具等の中入れ綿に好適に使用しうるものである。なお、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0043】
比較例
繊維形成性熱可塑性樹脂Aとして、融点128℃、メルトインデックス値25の高密度ポリエチレンを準備した。一方、繊維形成性熱可塑性樹脂Bとして、融点165℃、メルトフローレート値30のポリプロピレンを準備した。そして、実施例7で使用した複合紡糸口金を用いて、複合溶融紡糸した後、実施例1と同様の方法で、目付50g/mの繊維ウェブを得た。なお、このようにして得られた複合長繊維の繊度は、5デニールであった。
【0044】
この繊維ウェブを、125℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロールとの間に導入し、線圧50kgf/cmで熱圧着して、熱圧着部を多数持つ繊維フリースを得た。熱圧着部の面積の合計は、繊維フリースの全体の面積に対して、15%であった。次に、この繊維フリースを、実施例1で使用したニードルパンチ機に導入し、種々の条件でニードルパンチ処理を施して起毛様不織布を得た。この起毛様不織布は、目付が50g/mで、他面に多数の繊維ループを持つものであったが、この繊維ループ中の複合長繊維は分割割繊されていないものであった。即ち、どのような条件でニードルパンチ処理を施しても、この複合長繊維は分割割繊されず、結局、この複合長繊維は分割型複合長繊維ではないものであった。この理由は、繊維形成性熱可塑性樹脂A及びBとして、相溶性に富むポリエチレンとポリプロピレンを採用しているためである。なお、この起毛様不織布の物性等は表1に示すとおりであった。
【0045】
【表1】
Figure 0003611141
【0046】
【発明の効果】
本発明に係る起毛様不織布は、少なくとも片面に多数の繊維ループを持ち、この繊維ループは、繊維形成性熱可塑性樹脂Aと、熱可塑性樹脂Aよりも高融点の繊維形成性熱可塑性樹脂Bとで構成された分割型複合繊維の分割割繊により発現した、比較的繊度の細い分割繊維群で形成されているため、この起毛様不織布を拭き布として使用した場合には、繊維ループ中の分割繊維相互間の間隙に細かな塵埃が捕捉され、汚れ除去性能に優れるという効果を奏する。そして、本発明に係る起毛様不織布は、熱可塑性樹脂Aの軟化又は溶融によって、分割型複合繊維相互間を圧着する工程を経て製造されるものであるため、その形態安定性にも優れているという効果を奏する。また、拭き布としての用途以外に使用した場合においても、比較的繊度の細い分割繊維群で形成された繊維ループを持つため、全体的柔軟で、また触感も柔軟であるという効果を奏する。更に、分割型複合繊維の分割割繊により、分割繊維相互間に間隙(空隙)が形成されるので、全体として嵩高性に優れるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する分割型複合繊維の一例の横断面図である。
【図2】本発明で使用する分割型複合繊維の一例の横断面図である。
【図3】本発明で使用する分割型複合繊維の一例の横断面図である。
【図4】本発明で使用する分割型複合繊維の一例の横断面図である。
【図5】本発明で使用する分割型複合繊維の一例の横断面図である。
【図6】本発明の一例に係る起毛様不織布の模式的側面図である。
【図7】本発明の一例に係る起毛様不織布の模式的側面図である。
【図8】本発明において使用するフォーク型パンチ針の一例の側面図である。
【図9】レギュラー型パンチ針の一例の側面図である。
【符号の説明】
1 繊維ループ
2 熱圧着部

Claims (15)

  1. 繊維形成性熱可塑性樹脂Aと該熱可塑性樹脂Aよりも高融点の繊維形成性熱可塑性樹脂Bとで構成された二成分系の分割型複合繊維を構成繊維とする不織布であって、該不織布の少なくとも片面には該構成繊維の一部によって形成された繊維ループが多数存在し、該繊維ループは該分割型複合繊維の分割割繊により発現した該熱可塑性樹脂Aで形成される分割繊維A及び該熱可塑性樹脂Bで形成される分割繊維Bよりなる分割繊維群によって形成されていると共に、該繊維ループの不存在区域には、該熱可塑性樹脂Aの軟化又は溶融によって、該分割型複合繊維相互間が圧着された多数の熱圧着部が存在することを特徴とする起毛様不織布。
  2. 構成繊維が長繊維である請求項1記載の起毛様不織布。
  3. 分割型複合繊維の繊度が2〜8デニールである請求項1又は2記載の起毛様不織布。
  4. 分割型複合繊維の分割割繊により発現する分割繊維の本数が4本以上である請求項1乃至のいずれか一項に記載の起毛様不織布。
  5. 繊維ループの高さが15mm以下である請求項1乃至のいずれか一項に記載の起毛様不織布。
  6. 複数の繊維形成性熱可塑性樹脂で形成された分割型複合繊維を集積させてなる繊維ウェブに、部分的に熱及び圧力を与え、該複数の熱可塑性樹脂の少なくとも一成分を軟化又は溶融させることによって、該分割型複合繊維相互間が熱圧着された熱圧着部を多数形成してなる繊維フリースを得た後、該繊維フリースの少なくとも片面からニードルパンチ処理を施すことによって、該熱圧着部外の区域に存在する分割型複合繊維の一部を他面に突出させて多数の繊維ループを生成させると共に、該ニードルパンチ処理の衝撃によって、突出させた分割型複合繊維を分割割繊して分割繊維群を発現させることを特徴とする起毛様不織布の製造方法。
  7. 繊維形成性熱可塑性樹脂Aと該熱可塑性樹脂Aよりも高融点の繊維形成性熱可塑性樹脂Bとで構成された二成分系の分割型複合繊維を集積させてなる繊維ウェブに、部分的に熱及び圧力を与えて、該熱可塑性樹脂Aを軟化又は溶融させることによって、該分割型複合繊維相互間が熱圧着された熱圧着部を多数形成してなる繊維フリースを得た後、該繊維フリースの少なくとも片面からニードルパンチ処理を施すことによって、該熱圧着部外の区域に存在する該分割型複合繊維を他面に突出させて多数の繊維ループを生成させると共に、該ニードルパンチ処理の衝撃によって、突出させた該分割型複合繊維を分割割繊して、該熱可塑性樹脂Aで形成される分割繊維A及び該熱可塑性樹脂Bで形成される分割繊維Bよりなる分割繊維群を発現させることを特徴とする起毛様不織布の製造方法。
  8. 分割型複合繊維が長繊維である請求項6又は7記載の起毛様不織布の製造方法。
  9. 分割型複合繊維の繊度が2〜8デニールである請求項6乃至8のいずれか一項に記載の起毛様不織布の製造方法。
  10. 分割型複合繊維の分割割繊により発現する分割繊維の本数が4本以上である請求項6乃至9のいずれか一項に記載の起毛様不織布の製造方法。
  11. 繊維ループの高さが15mm以下である請求項6乃至10のいずれか一項に記載の起毛様不織布の製造方法。
  12. 熱圧着部の合計面積が、繊維フリースの表面積に対して5〜20%である請求項6乃至11のいずれか一項に記載の起毛様不織布の製造方法。
  13. 熱圧着部を形成する際の熱が、繊維形成性熱可塑性樹脂Aの融点未満の温度であり、該熱圧着部を形成する際の圧力が、線圧20〜90kgf/cmである請求項6乃至12のいずれか一項に記載の起毛様不織布の製造方法。
  14. ニードルパンチ処理をフォーク型パンチ針を用いて行う請求項6乃至13のいずれか一項に記載の起毛様不織布の製造方法。
  15. 起毛様不織布の見掛け密度は、ニードルパンチを施す前の繊維フリースの見掛け密度よりも小さい請求項6乃至14のいずれか一項に記載の起毛様不織布の製造方法。
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