JP2000160464A - 柔軟性に優れた伸縮性不織布及びその製造方法 - Google Patents

柔軟性に優れた伸縮性不織布及びその製造方法

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JP2000160464A
JP2000160464A JP33597298A JP33597298A JP2000160464A JP 2000160464 A JP2000160464 A JP 2000160464A JP 33597298 A JP33597298 A JP 33597298A JP 33597298 A JP33597298 A JP 33597298A JP 2000160464 A JP2000160464 A JP 2000160464A
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long
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Fumie Itamura
文恵 板村
Atsushi Matsunaga
篤 松永
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Unitika Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 柔軟性及び嵩高性に優れた伸縮性不織布を提
供する。また、面ファスナー用雄材との接合性に優れた
面ファスナー用雌材を提供する。 【解決手段】 この伸縮性不織布は、多数の熱可塑性長
繊維が集積されてなる。長繊維相互間は、一定の間隔を
置いて配置された多数の熱融着区域において、長繊維自
体の軟化又は溶融による自己融着によって固定されてい
る。この伸縮性不織布は、所定の破断伸度及び所定の伸
長回復率を持つものであり、伸縮性に優れている。更
に、この伸縮性不織布には、ニードルパンチの作用によ
って、長繊維の一部が切断し或いは熱融着区域の一部が
破壊され或いは長繊維の一部が表面にループ状となって
突出している。これによって、伸縮性不織布に柔軟性及
び嵩高性が与えられる。また、このような伸縮性不織布
は、そのままで、或いは補強層と積層して、面ファスナ
ー用雌材として、好適に用いられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、柔軟性に優れると
共に、一方向に伸縮性を持つ不織布及びその製造方法に
関するものである。また、このような不織布からなる面
ファスナー用雌材及びその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、不織布は、衣料用、産業資材
用、土木資材用、農芸園芸資材用、生活関連資材用、医
療衛生資材用等の種々の用途に使用されている。この中
でも、衛生マスク、粘着剤付き簡易包帯、顔面パック用
基布、タオル、紙おむつの表面材、紙おむつの前側基
布、パップ材の基布、スポーツ用サポーター或いは包帯
等の医療衛生資材用に使用される不織布には、人体の動
きに追随し易いこと及び人体になじみ易いこと等の理由
で伸縮性が要求されている。また、掛け布、包装材或い
は覆い布等の生活関連資材用に使用される不織布にも、
使い勝手の良さ等の理由で伸縮性が要求されている。不
織布に伸縮性を付与するためには、不織布を構成する繊
維として、良好な伸縮性能を持つ捲縮繊維を使用する方
法(特開昭63−28960号公報、特開平2−912
17号公報、特公平4−46145号公報、特公平4−
46147号公報)、或いは素材自体が伸縮性能を有す
るポリウレタン繊維等を使用する方法(特開昭59−2
23347号公報)が知られている。
【0003】一方、構成繊維として伸縮性繊維を使用せ
ずに、主として不織布の構造に起因する伸縮性を発揮さ
せた不織布も知られている。例えば、短繊維を主として
一方向(縦方向)に配列させた繊維ウェブに、ゴム系結
合剤を付与した不織布も知られている。即ち、この不織
布は、短繊維の配列とゴム系結合剤との共働作用によっ
て、ある程度、幅方向への伸縮性を発揮するものであ
る。このような短繊維の配列は、カード法による開繊集
積によって容易に得られるものである。しかしながら、
この不織布は、短繊維で構成されているため、破断強力
が低いという欠点があった。
【0004】このような技術状況下において、本件出願
人等は、特定の手段で熱可塑性長繊維が縦方向に配列さ
れていると共に、熱可塑性長繊維相互間が自己融着され
た融着区域が間隔を置いて設けられている一方向伸縮性
長繊維不織布を提案した(特開平9−316765号公
報、特開平10−72756号公報、特開平10−88
457号公報、特開平10−96154号公報)。この
ような一方向伸縮性長繊維不織布は、幅方向に良好な伸
縮性を示し、且つ破断強力も高く、好ましいものであ
る。そして、更に、このような一方向伸縮性長繊維不織
布は、長繊維が融着区域で固定されていると共に、幅方
向に伸長した際に縦方向の長さが縮小するため、繊維密
度の低下を防止できて雄材との接合性が低下しにくく、
面ファスナー用雌材として好適であることも提案した
(特開平10−259560号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した各
提案に係る発明を利用するものであり、一方向伸縮性長
繊維不織布に更なる柔軟性乃至は嵩高性を付与しようと
いうものである。また、一方向伸縮性長繊維不織布より
なる面ファスナー用雌材と、面ファスナー用雄材との接
合性を更に向上させようというものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記した課題
を達成するため、一方向伸縮性長繊維不織布に、ニード
ルパンチを施し、長繊維の一部を切断し、或いは融着区
域の一部を破壊し、或いは長繊維の一部をループ状とな
して表面に突出させることによって、柔軟性、嵩高性及
び面ファスナー用雄材との接合性を向上させたものであ
る。従来より、不織布製造工程において、繊維ウェブに
ニードルパンチを施すことは、周知である。このニード
ルパンチは、繊維ウェブ中の構成繊維相互間を絡合させ
て、不織布とするために施されるものである。しかしな
がら、ニードルパンチを既に出来上がった不織布に施す
ことは、周知ではない。また、ニードルパンチを構成繊
維相互間の絡合のためではなく、繊維切断のため、或い
は融着区域破壊のため、或いはループ状物を表面に突出
させるために用いることも周知ではない。
【0007】本発明は、長繊維が概ね縦方向に配列した
不織布に、ニードルパンチを施すと、長繊維相互間にあ
まり絡合が生ぜずに、繊維切断或いは融着区域破壊或い
はループ状物の表面への突出が図られることを見出し
た。この理由は、長繊維が概ね縦方向に配列している
と、長繊維相互間の交点が少なくなり、交点間での絡み
合いが少なくなるため、絡合が生じにくいと考えられ
る。例えば、長繊維が概ね縦方向に配列せず、無作為に
集積されてなる不織布は、長繊維相互間の交点が比較的
多く、これにニードルパンチを施すと、交点間での絡み
合いが促進され、絡合が生じやすいと考えられるのであ
る。そして、絡合が生じにくいため、不織布の緊密化が
防止されると共に、パンチ針の物理的作用により、繊維
切断或いは融着区域破壊或いはループ状物の表面への突
出が生じるため、柔軟性及び嵩高性に優れた不織布が得
られるのである。本発明は、このような知見に基づいて
なされたものである。
【0008】即ち、本発明は、多数の熱可塑性長繊維が
集積されてなり、該長繊維相互間は、一定の間隔を置い
て配置された多数の熱融着区域において、該長繊維自体
の軟化又は溶融による自己融着によって固定されてな
り、且つ、下記式(1)〜(4)を同時に満足すると共
に、ニードルパンチによって、該長繊維の一部が切断し
或いは該熱融着区域の一部が破壊され或いは該長繊維の
一部が表面にループ状となって突出していることを特徴
とする柔軟性に優れた伸縮性不織布に関するものであ
る。 記 EC≧140% ・・・(1) EC/EM≧3 ・・・(2) EEC(50)≧60 ・・・(3) EEC(100)≧40 ・・・(4) (但し、ECは不織布の幅方向の破断伸度であり、EM
は不織布の縦方向の破断伸度であり、EEC(50)は
不織布を幅方向に50%伸長した時の伸長回復率であ
り、EEC(100)は不織布を幅方向に100%伸長
した時の伸長回復率である。)
【0009】また、本発明は、多数の熱可塑性長繊維
を、捕集コンベア上に堆積させて繊維ウェブを形成し、
該繊維ウェブに、一定の間隔を置いて配置された多数の
区域で熱を与え、該区域において該長繊維表面を軟化又
は溶融させることによって、該長繊維相互間が自己融着
されてなる熱融着区域を持つ繊維フリースを得た後、該
繊維フリースを幅方向に拡幅率0〜50%となるように
拡幅した状態で、縦方向に該繊維フリースを10〜80
%の延伸比で熱延伸することによって、該熱融着区域相
互間を繋ぐ該長繊維を概ね縦方向に配列させ、その後、
ニードルパンチを施して、該長繊維の一部を切断し或い
は該熱融着区域の一部を破壊し或いは該長繊維の一部を
表面にループ状となして突出させることを特徴とする柔
軟性に優れた伸縮性不織布の製造方法に関するものであ
る。
【0010】更に、本発明は、上記柔軟性に優れた伸縮
性不織布よりなる面ファスナー用雌材及びその製造方法
に関するものである。
【0011】本発明に係る柔軟性に優れた伸縮性不織布
は、多数の熱可塑性長繊維が集積されてなるものであ
る。熱可塑性長繊維が用いられる理由は、その熱可塑性
によって、長繊維相互間を自己融着させるためである。
また、長繊維が用いられる理由は、短繊維よりなる不織
布に比べて、高い破断伸度が得られやすく、また高い伸
縮性を発揮させやすいためである。従って、このような
機械的特性が大きく低下しない限り、長繊維群中に短繊
維を若干量混入させても良い。長繊維の繊度は、1.5
〜15.0デニール程度であるのが好ましく、1.5〜
10.0デニールであるのがより好ましく、特に2.0
〜8.0デニールであるのが最も好ましい。長繊維の繊
度が1.5デニール未満であると、溶融紡糸工程におい
て製糸性が低下したり、或いは伸縮性不織布の機械的特
性が低下する傾向が生じる。一方、長繊維の繊度が1
5.0デニールを超えると、伸縮性不織布の風合が硬く
なって、柔軟性が低下する傾向がある。
【0012】熱可塑性長繊維は、ポリオレフィン系重合
体,ポリエステル系重合体,ポリアミド系重合体,生分
解性を有する脂肪族ポリエステル系重合体等の熱可塑性
繊維形成性重合体を、単独で又は任意の組み合わせで、
溶融紡糸することによって得られるものである。熱可塑
性繊維形成性重合体を単独で用いた場合、非複合型の長
繊維(単相型長繊維)となる。単相型長繊維の横断面
は、任意の形状であって良く、例えば、丸形状,中空形
状,偏平形状,或いはその他の異形形状であっても良
い。熱可塑性繊維形成性重合体を任意の組み合わせで用
いた場合、複合型の長繊維となる。複合型長繊維として
は、一般的に、芯鞘型長繊維やサイドバイサイド型長繊
維が採用される。複合型長繊維の横断面も任意の形状で
あって良く、例えば、丸形状,中空形状,偏平形状,或
いはその他の異形形状であっても良い。複合型長繊維と
した場合、低融点重合体と高融点重合体とを組み合わせ
て用い、低融点重合体の熱可塑性を利用し、その軟化又
は溶融によって長繊維相互間を自己融着させるのが好ま
しい。また、複合型長繊維の場合、非相溶性の二種以上
の重合体を組み合わせて用い、割繊複合型長繊維として
も良い。割繊複合型長繊維としては、横断面が楔形状の
各重合体が貼り合わされて、横断面が円形のもの、或い
は中心部に一種の重合体が配され、その周りに他種の重
合体が複数本配されてなるもの等が用いられる。また、
割繊複合型長繊維の場合も、非相溶性の二種以上の重合
体として、低融点重合体と高融点重合体を用い、低融点
重合体によって、長繊維相互間を自己融着させても良
い。
【0013】熱可塑性長繊維は、単相型長繊維であれ複
合型長繊維であれ、一般的には一種の熱可塑性長繊維を
多数集積して、伸縮性不織布とする。しかし、二種以上
の熱可塑性長繊維を均一に混繊しながら多数集積して、
伸縮性不織布としても良いし、各熱可塑性長繊維を層状
に集積して、二層或いはそれ以上の層構造を持つ伸縮性
不織布としても良い。
【0014】熱可塑性長繊維を製造する際に用いるポリ
オレフィン系重合体としては、例えば、エチレン,プロ
ピレン,ブテン−1,ペンテン−1,3−メチルブテン
−1,ヘキセン−1,オクテン−1,ドデセン−1,オ
クタデセン−1等の炭素原子数2〜18の脂肪族α−モ
ノオレフィンを単独で重合させたホモポリオレフィン重
合体、又は2種以上を混合して重合させたポリオレフィ
ン共重合体を用いることができる。ホモポリオレフィン
重合体やポリオレフィン共重合体には、例えば、ブタジ
エン,イソプレン,ペンタジエン−1・3,スチレン,
α−メチルスチレンの如きエチレン系不飽和モノマーが
共重合されていてもよい。ポリオレフィン系重合体とし
て、ポリエチレン系重合体を用いる場合、エチレンに対
してプロピレン,ブテン−1,ヘキセン−1,オクテン
−1又はその他の高級α−オレフィンが10重量%以下
共重合されたものを用いるのが好ましい。また、ポリオ
レフィン系重合体として、ポリプロピレン系重合体を用
いる場合、プロピレンに対してエチレン又はその他の高
級α−オレフィンが10重量%以下共重合されたものを
用いるのが好ましい。なお、前記のポリエチレン系重合
体及びポリプロピレン系重合体の場合において、共重合
割合が10重量%を超えると、長繊維の融点が低下しす
ぎて、自己融着区域外の区域でも、長繊維相互間が融着
する恐れがあり、良好な伸縮性や柔軟性を持つ伸縮性不
織布が得られにくくなる恐れがある。
【0015】ポリエステル系重合体としては、芳香族ポ
リエステル系重合体や脂肪族ポリエステル系重合体等を
用いることができる。芳香族ポリエステル系重合体とし
ては、例えば、テレフタル酸,イソフタル酸,ナフタリ
ン−2・6−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又は
これらのエステル類を酸成分とし、かつエチレングリコ
ール,ジエチレングリコール,1・4−ブタンジオー
ル,ネオペンチルグリコール,シクロヘキサン−1・4
−ジメタノール等のジオール化合物をグリコール成分と
するホモポリエステル重合体又はポリエステル共縮重合
体を用いることができる。なお、これらの芳香族ポリエ
ステル系重合体には、パラオキシ安息香酸,5−ソジウ
ムスルホイソフタール酸,ポリアルキレングリコール,
ペンタエリスリトール,ビスフェノールA等が添加又は
共重合されていてもよい。
【0016】脂肪族ポリエステル系重合体としては、例
えば、α−ヒドロキシ酸や乳酸を重合させてなるポリ
(α−ヒドロキシ酸)[代表的にはポリグリコール酸]
やポリ乳酸、又はこれらの共重合体を用いることができ
る。また、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリ(β−プ
ロピオラクトン)等のポリ(ω−ヒドロキシアルカノエ
ート)も用いることができる。更に、ポリ−3−ヒドロ
キシプロピオネート,ポリ−3−ヒドロキシブチレー
ト,ポリ−3−ヒドロキシカプロレート,ポリ−3−ヒ
ドロキシヘプタノエート,ポリ−3−ヒドロキシオクタ
ノエート等のポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)、
又はこれらにポリ−3−ヒドロキシバリレートやポリ−
4−ヒドロキシブチレート等を構成するモノマー成分を
共重合させたものも用いることができる。また、ポリ乳
酸或いはポリ乳酸系重合体としては、ポリ(D−乳
酸),ポリ(L−乳酸),ポリ(D−乳酸)とポリ(L
−乳酸)との共重合体,ポリ(D−乳酸)とヒドロキシ
カルボン酸との共重合体,ポリ(L−乳酸)とヒドロキ
シカルボン酸との共重合体等を用いることができる。
【0017】更には、アジピン酸やセバチン酸等の脂肪
族ジカルボン酸又はこれらのエステル類を酸成分とし、
エチレングリコール,ジエチレングリコール,ポリエチ
レングリコール,1・4−ブタンジオール,ネオペンチ
ルグリコール,シクロヘキサン−1・4−ジメタノール
等のジオール化合物をグリコール成分とする重合体又は
共縮重合体を用いることもできる。具体的には、ポリエ
チレンオキサレート,ポリエチレンサクシネート,ポリ
エチレンアジペート,ポリエチレンアゼレート,ポリブ
チレンオキサレート,ポリブチレンサクシネート,ポリ
ブチレンアジペート,ポリブチレンセバケート,ポリヘ
キサメチレンセバケート,ポリネオペンチルオキサレー
ト又はこれらの共重合体を用いることもできる。以上の
脂肪族ポリエステル系重合体は、一般的に生分解性に優
れているため、この重合体からなる長繊維を構成繊維と
する伸縮性不織布は、廃棄処理がしやすいという利点が
ある。
【0018】ポリアミド系重合体としては、例えば、ポ
リイミノ−1−オキソテトラメチレン(ナイロン4),
ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46),ポリ
カプラミド(ナイロン6),ポリヘキサメチレンアジパ
ミド(ナイロン66),ポリウンデカナミド(ナイロン
11),ポリラウロラクタミド(ナイロン12),ポリ
メタキシレンアジパミド,ポリパラキシリレンデカナミ
ド,ポリビスシクロヘキシルメタンデカナミドを用いる
ことができる。また、これらのポリアミド系重合体を構
成しているモノマーを、2種以上混合して共重合させた
ポリアミド系共重合体も用いることができる。特に、ポ
リテトラメチレンアジパミドを用いる場合、ポリカプラ
ミド,ポリヘキサメチレンアジパミド,ポリウンデカメ
チレンテレフタラミド等を構成するモノマー成分を30
モル%以下共重合させたポリテトラメチレンアジパミド
系共重合体を用いるのが好ましい。なお、この場合、共
重合割合が30モル%を超えると、長繊維の融点が低下
しすぎて、自己融着区域外の区域でも、長繊維相互間が
融着する恐れがあり、良好な伸縮性や柔軟性を持つ伸縮
性不織布が得られにくくなる恐れがある。
【0019】また、ポリオレフィン系重合体,ポリエス
テル系重合体,ポリアミド系重合体の他に、脂肪族ポリ
エステルアミド系重合体も用いることができる。脂肪族
ポリエステルアミド系共重合体としては、例えば、前記
した脂肪族ポリエステル系重合体と、ポリカプラミド
(ナイロン6),ポリテトラメチレンアジパミド(ナイ
ロン46),ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン
66),ポリウンデカナミド(ナイロン11),ポリウ
ラロラクタミド(ナイロン12)等の脂肪族系ポリアミ
ド重合体とを共重合したものを用いることができる。こ
の脂肪族ポリエステルアミド系共重合体も、生分解性に
優れており、この重合体からなる長繊維を構成繊維とす
る伸縮性不織布は、廃棄処理がしやすいという利点があ
る。
【0020】上記した各種繊維形成性重合体中には、必
要に応じて、艶消し剤、顔料、防炎剤,消臭剤,光安定
剤、熱安定剤、酸化防止剤、結晶化促進剤等の各種添加
剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよ
い。
【0021】低融点重合体と高融点重合体とを組み合わ
せて、複合型長繊維とする際の好ましい具体例として
は、ポリオレフィン系重合体/ポリアミド系重合体,ポ
リオレフィン系重合体/ポリエステル系重合体,ポリア
ミド系重合体/ポリエステル系重合体の組み合わせを挙
げることができる。特に、最も好ましい具体例として
は、芯成分として高融点重合体である芳香族ポリエステ
ルを採用し、鞘成分としてポリオレフィンを用いた、芯
鞘型複合長繊維を用いるのが好ましい。このタイプの長
繊維は、熱融着区域において、ポリオレフィンのみの軟
化又は溶融によって長繊維相互間が自己融着されてお
り、芳香族ポリエステルは当初の繊維形態をそのまま維
持している。従って、熱融着区域がフィルム状になって
しまったり、或いはその区域に孔が開いてしまったりす
るのを防止でき、全体として柔軟性に富み、機械的物性
の良好な伸縮性不織布が得られるからである。また、割
繊複合型長繊維とする際も、ポリオレフィン系重合体/
ポリアミド系重合体,ポリオレフィン系重合体/ポリエ
ステル系重合体,ポリアミド系重合体/ポリエステル系
重合体の組み合わせを採用するのが好ましい。割繊複合
型長繊維を用いた場合、割繊処理によって長繊維を割繊
すると、長繊維の繊度が小さくなり、風合が良好で柔軟
性に優れた伸縮性不織布を得ることができる。割繊処理
としては、揉み加工や水流(液流)によって衝撃を与え
る水流(液流)加工等で容易に行うことができ、また後
で行う延伸処理によっても、ある程度の割繊を行うこと
ができる。なお、複合型長繊維の場合、低融点重合体と
高融点重合体との重量比は、高融点重合体1重量部に対
して、低融点重合体は0.1〜5重量部、特に0.2〜
4重量部であるのが最も好ましい。低融点重合体は、熱
融着区域の融着成分であるため、その重量割合が0.1
重量部未満になると、自己融着が不十分となり、不織布
の引張強力が低くなる恐れがある。また、低融点重合体
が5重量部を超えると、熱融着区域における自己融着が
激しくなり、熱融着区域中において繊維形態を維持して
いる箇所の割合が少なくなり、熱延伸時に、熱融着区域
に孔が開く恐れがある。
【0022】本発明に係る伸縮性不織布は、熱可塑性長
繊維自体の軟化又は溶融による自己融着によって、長繊
維相互間が固定されてなる熱融着区域を具備している。
熱可塑性長繊維が単相型長繊維である場合には、熱融着
区域において、各長繊維が接触している表面同士が自己
融着する。また、熱可塑性長繊維が低融点重合体と高融
点重合体とよりなる複合型長繊維である場合には、熱融
着区域において、低融点重合体が軟化又は溶融して長繊
維相互間が自己融着する。
【0023】熱融着区域は、伸縮性不織布中において、
一定の間隔を置いて多数配置されている。従って、熱融
着区域の面積は任意であって良いが、この区域は多数配
置されるため、必然的にその面積は大きすぎてはいけな
い。何故なら、面積が大きすぎると、熱融着区域を多数
配置することが困難になるからである。一般的には、熱
融着区域の面積は0.1〜1.0mm2程度であるのが
好ましい。熱融着区域の面積が1.0mm2 を超えて
も、熱融着区域を多数配置することはできるが、伸縮性
不織布の柔軟性が低下する傾向が生じる。一方、熱融着
区域の面積を0.1mm2未満にすることは、製造上、
現実には困難である。熱融着区域の配置数については、
多数であれば良いのであるが、具体的には2〜80個/
cm2程度であるのが好ましく、特に4〜60個/cm2
程度であるのがより好ましい。熱融着区域の配置数が2
個/cm2 未満であると、長繊維相互間の固定区域が
少なくなり、伸縮性不織布の引張強度や寸法安定性等の
機械的特性が低下する傾向が生じる。一方、熱融着区域
の配置数が80個/cm2を超えると、長繊維相互間の
固定区域が多くなりすぎて、伸縮性不織布の柔軟性や伸
縮性が低下する恐れがある。この程度の配置数の場合、
隣合う熱融着区域間の距離は、短い箇所で0.3〜2m
m程度、長い箇所で1〜10mm程度である。また、伸
縮性不織布の表面積に対する熱融着区域の総面積の割合
は、2〜50%であるのが好ましく、特に5〜25%で
あるのがより好ましい。この割合が2%未満であると、
全体として長繊維相互間の固定区域が少なくなり、伸縮
性不織布の引張強度や寸法安定性等の機械的特性が低下
する傾向が生じる。一方、この割合が50%を超える
と、全体として長繊維相互間の固定区域が多くなりすぎ
て、伸縮性不織布の柔軟性や伸縮性が低下する恐れがあ
る。
【0024】本発明に係る伸縮性不織布は、長繊維相互
間が固定されている熱融着区域を多数持つことにより、
一定の引張強度を持っているのであるが、少なくとも以
下の四つの物性を具えていなければならない。第一に、
不織布の幅方向の破断伸度は140%以上でなければな
らない。好ましくは、150%以上であるのが良い。こ
の破断伸度が140%未満であると、不織布の幅方向へ
の伸長性が不十分であり、良好な伸縮性が発揮できな
い。第二に、不織布の縦方向の破断伸度に対する、不織
布の幅方向の破断伸度の比が3以上でなければならな
い。好ましくは、4以上であるのが良い。この比が3未
満であると、幅方向における伸長性が縦方向の伸長性と
比較して顕著に高くならず、一方向に良好な伸縮性を持
つものとは言えなくなる。なお、破断伸度(%)はJI
S−L−1096Aに記載の方法に準じて測定されるも
のである。即ち、試料幅5cmの短冊状試料片10点を
準備し、定速伸長型引張試験機(東洋ボールドウイン社
製テンシロンUTM−4−1−100)を用いて、各試
料片をチャック間距離5cm、引張速度10cm/分で
伸長し、各試料片が破断したときの平均伸度を破断伸度
(%)とした。従って、破断伸度(%)={[(破断時
のチャック間距離)−(5)]/(5)}×100で計
算されるものである。なお、不織布の幅方向の破断伸度
を測定するときは、短冊状試料片の長手方向が不織布の
幅方向となるようにして伸長させて測定し、不織布の縦
方向の破断伸度を測定するときは、短冊状試料片の長手
方向が不織布の縦方向となるようにして伸長させて測定
するものであることは、言うまでもない。
【0025】第三に、不織布を幅方向に50%伸長した
時の伸長回復率は、60%以上でなければならない。好
ましくは、70%以上であるのが良い。この伸長回復率
が60%未満であると、外力を加えて不織布を幅方向に
伸長した後、この外力を解除したときの収縮が不十分
で、良好な伸縮性を発揮しないものである。第四に、不
織布を幅方向に100%伸長した時の伸長回復率は、4
0%以上でなければならない。好ましくは、50%以上
であるのが良い。この伸長回復率が40%未満であると
きも、良好な伸縮性を発揮しない。なお、この伸長回復
率はJIS−L−1096 6.13.1Aに記載の方
法に準じて、以下の如き方法で測定されるものである。
まず、試料幅5cmの短冊状試料片を5点準備する。こ
の際、短冊状試料片の長手方向が不織布の幅方向となる
ようにする。そして、定速伸長型引張試験機(東洋ボー
ルドウイン社製テンシロンUTM−4−1−100)を
用いて、チャック間距離5cm、引張速度10cm/分
で、各試料片を幅方向に伸長させ、伸長率が50%とな
った時点(チャック間距離が5×1.5cmとなった時
点)又は100%となった時点(チャック間距離が5×
2cmとなった時点)で、引っ張りを停止する。その
後、各試料片を引張試験機から外して放置し、各試料片
が収縮した後の各試料片のチャック間距離の長さLcm
を測定する。そして、50%伸長した時の伸長回復率
(%)は、[(5×1.5−L)/(5×1.5−
5)]×100で計算される。また、100%伸長した
時の伸長回復率(%)は、[(5×2−L)/(5×2
−5)]×100で計算される。
【0026】また、本発明に係る伸縮性不織布は、ニー
ドルパンチの作用によって、長繊維の一部が切断し或い
は熱融着区域の一部が破壊され或いは長繊維の一部が表
面にループ状となって突出している。ニードルパンチ
は、パンチ針を繊維フリース中に何度も貫通させるもの
である。本発明においては、このパンチ針が、概ね縦方
向に配列している長繊維を引っ掛けることにより、長繊
維相互間の絡合よりも、繊維の切断、熱融着区域の破壊
及びループ状物の突出が生じるのである。繊維切断と熱
融着区域の破壊とループ状物の突出とは、これらの全て
が具現する場合もあるし、いずれか二つが具現する場合
もあるし、いずれか一つしか具現しない場合もある。い
ずれにしても、繊維切断は、伸縮性不織布に柔軟性を与
える。また、熱融着区域の破壊は、伸縮性不織布に柔軟
性と嵩高性を与える。また、ループ状物の突出は、触感
の柔軟性と嵩高性を与えると共に、更に、面ファスナー
用雄材との接合性を向上させる。更に、前述したよう
に、このニードルパンチは、長繊維相互間の絡合をあま
り生じさせないため、不織布の緊密化を防止でき、柔軟
性の低下や嵩高性の低下を伴うことの少ないものであ
る。なお、ニードルパンチに用いるパンチ針としては、
従来公知のバーブ針やフォーク針等を用いることができ
る。
【0027】本発明に係る伸縮性不織布は、以上のよう
に幅方向に良好な伸縮性を持つものであるが、幅方向に
伸縮性を持ち、幅方向と直交する方向(縦方向のことで
ある。また、縦方向のことは機械方向とも言われる。)
には十分な伸縮性を持たないものである。即ち、縦方向
の破断伸度が、不織布の幅方向の破断伸度の(1/3)
以下なのであり、好ましくは(1/4)以下なのであ
る。しかしながら、幅方向に外力を負荷して伸長したと
きには、縦方向はその長さが収縮するものである。本発
明に係る伸縮性不織布は、このような特性を持つため
に、面ファスナー用雌材として好適に用いられるのであ
る。即ち、これを面ファスナー用雌材として、紙おむつ
の前側基布に用いると、紙おむつを人体に適用した際、
前側基布は幅方向に伸長するが縦方向に収縮するので、
繊維密度が低下しにくく、面ファスナー用雄材の突起
が、良好に繊維相互間の間隙に埋め込まれ或いは表面に
突出されたループ状物と係合し、雄材と雌材との強固な
接合が可能となるのである。例えば、面ファスナー用雌
材が幅方向に伸長したときに、その繊維密度が低下して
繊維相互間の間隙が大きくなり、ループ状物の密度も低
下すると、雄材の突起が繊維相互間の間隙に埋め込まれ
にくくなり或いはループ状物と係合しにくくなり、雄材
と雌材とが強固に接合しにくくなるのである。
【0028】本発明に係る伸縮性不織布の目付は、任意
であって良いが、一般的には10〜60g/m2である
のが好ましく、特に10〜40g/m2であるのがより
好ましい。目付が10g/m2未満であると、繊維密度
が比較的低くなるため、使用用途が制限されることが多
い。例えば、面ファスナー用雌材として使用しようとす
ると、繊維密度が低いため、雄材の突起が埋め込まれに
くくなり、雄材との接合性が低下する恐れがある。ま
た、引張強度等の機械的物性も低下する傾向がある。一
方、目付が60g/m2を超えると、重量が重くなりす
ぎて、人体に適用される用途に用いるには、例えば、使
い捨ておむつ等に用いるには、不適当になることもあ
る。
【0029】本発明に係る伸縮性不織布のトータルハン
ド値(THV)は、3.5g/g/m2以下であるのが
好ましく、特に3.0g/g/m2以下であるのが最も
好ましい。トータルハンド値が3.5g/g/m2を超
えると、伸縮性不織布の柔軟性が低下する傾向が生じ
る。なお、トータルハンド値は、JIS L−1096
のハンドルオメーター法に記載の方法に準拠して測定さ
れた値を、目付にて除した値である。
【0030】また、本発明に係る伸縮性不織布には、こ
の不織布の伸縮性等の特性を阻害しないようにして補強
層を貼合しても良い。一般的に、補強層は不織布の片面
のみに貼合されて、二層構造の複合不織布となるが、補
強層の両面に不織布を貼合して三層構造の複合不織布と
しても良い。補強層は、不織布自体の特性を阻害しない
ものとする必要性から、不織布の破断伸度及び伸長回復
率よりも、大きな破断伸度及び伸長回復率を持つものを
用いる。従って、補強層の幅方向及び縦方向の破断伸度
は、上記した不織布のEC及びEMよりも大きな値を持
つ。また、補強層を幅方向に50%及び100%伸長し
た時の伸長回復率も、上記した不織布のEEC(50)
及びEEC(100)よりも大きな値を持つ。なお、補
強層の破断伸度及び伸長回復率の測定方法は、不織布の
破断伸度及び伸長回復率の測定方法と同一であることは
言うまでもない。
【0031】上記したような、補強層が貼合された複合
不織布は、面ファスナー用雌材として好適である。特
に、補強層の両面に不織布を貼合して三層構造の複合不
織布とた面ファスナー用雌材は、表裏面とも雄材との接
合が可能であり、表裏を問わないという利点がある。
【0032】補強層としては、不織布の伸縮性等の特性
を阻害しないものであれば、どのようなものでも用いる
ことができる。具体的には、スチレン−ブタジエン共重
合体,ポリイソプレン,ポリブタジエン,水素添加ポリ
ブタジエン,水素添加ポリイソプレン,ポリスチレン,
非結晶性ポリ塩化ビニル,アクリロニトリル−ブタジエ
ン共重合体等を素材とする伸縮性シート又は伸縮性ネッ
トが好適に用いられる。伸縮性シート又は伸縮性ネット
の厚さは任意であり、極薄いものから厚いものまで、採
用することができる。厚さの薄い伸縮性シートや伸縮性
ネットは、伸縮性フィルム,伸縮性メッシュ等と種々の
呼び名で呼ばれることがあるが、どのような厚みのもの
であっても伸縮性シート又は伸縮性ネットの範疇に属す
るものである。
【0033】補強層を貼合した場合、補強層と不織布と
の剥離強力は150g/5cm幅以上であるのが好まし
い。剥離強力が150g/5cm幅未満であると、複合
不織布が伸長された際に、補強層と不織布とが剥離しや
すくなる傾向が生じる。ここで、剥離強力は以下の如き
方法で測定される。まず、試料幅5cmで試料長15c
mの試料片を5枚準備する。各試料片の長手方向は、不
織布の機械方向と一致するようにする。そして、複合不
織布の端部より補強層と不織布とを強制的に5cm剥離
し、破断伸度を測定したときに用いた定速伸長型引張試
験機を用い、補強層の端部と不織布の端部とを、各チャ
ックで把持し、引張速度10cm/分で引っ張った際の
最大値を求める。このような方法で、各試料片の最大値
を求め、その平均値を剥離強力とするのである。
【0034】補強層と不織布とは、どのような方法で貼
合されていても良く、例えば、接着剤を用いて貼合する
こともできる。しかし、接着剤を用いると、接着剤層が
形成され、複合不織布の柔軟性や伸縮性が低下する恐れ
があるので、以下の如き方法で貼合するのが好ましい。
例えば、補強層として伸縮性熱可塑性シートを用いた場
合には、多数の熱圧接区域で部分的に接着することによ
って、貼合するのが好ましい。このようにすると、非接
着部分において、十分な伸縮性や柔軟性を確保すること
ができるからである。熱圧接区域は、少なくとも伸縮性
熱可塑性シートの軟化又は溶融によって、不織布と伸縮
性熱可塑性シートとを接着するものである。ここで、伸
縮性熱可塑性シートを軟化又は溶融させる理由は、伸縮
性熱可塑性シートの融点は、一般的に、不織布を構成し
ている熱可塑性長繊維よりも低いからである。例えば、
伸縮性熱可塑性シートの融点は110℃前後であること
が多く、熱可塑性長繊維(具体的には、ポリエステルを
芯としてポリエチレンを鞘とする芯鞘型複合長繊維)の
融点(低融点重合体であるポリエチレンの融点)は、1
20〜130℃前後であることが多いのである。しかし
ながら、両者の融点が近接していたり、或いは逆転して
いる場合もあるので、伸縮性熱可塑性シートと不織布中
の熱可塑性長繊維とが共に軟化又は溶融して、両者を接
着していても良い。熱圧接区域の面積,配置数(個数密
度)及び複合不織布の表面積に対する熱圧接区域の総面
積の割合は、前記した熱融着区域の場合と同等程度であ
れば良い。なお、この熱圧接区域の位置と、不織布中の
熱融着区域の位置とは、完全に又は一部重なっていても
良いし、完全に分離していても良い。
【0035】また、補強層として伸縮性熱可塑性ネット
を用いた場合には、ネットの骨格部表面と不織布とを接
着することによって、貼合するのが好ましい。このよう
にすると、ネットの非骨格部分(ネットの孔)では不織
布と接着されておらず、複合不織布に十分な伸縮性や柔
軟性を与えることができるからである。ネットの骨格部
表面と不織布との接着は、骨格部表面を軟化又は溶融さ
せることによって行う。この際、不織布中の熱可塑性長
繊維が一部軟化又は溶融しても差し支えない。なお、伸
縮性ネットの骨格部分の占有割合、孔の大きさや孔数密
度等は任意で良く、例えば、通常、包装用の伸縮性ネッ
トを好適に用いることができる。
【0036】次に、本発明に係る伸縮性不織布の好適な
製造方法について説明する。まず、前記した熱可塑性繊
維形成性重合体を準備する。単相型長繊維を得る場合は
一種の重合体で良いし、複合型長繊維を得る場合は二種
以上の重合体を準備する。そして、公知の溶融紡糸法で
紡出し、冷却しながらエアーサッカー法やドカン(Do
can)法を用いて牽引・細化して引き取り、熱可塑性
長繊維を得る。この際、長繊維の引取速度は2500〜
6000m/分程度とするのが好ましい。引取速度が2
500m/分未満であると、得られる長繊維の分子配向
度が十分に増大せず、長繊維の引張強度が向上せず、機
械的特性や寸法安定性に優れた不織布が得られにくくな
る。一方、引取速度が6000m/分を超えると、溶融
紡糸時の製糸性が低下する傾向が生じる。
【0037】また、この程度の引取速度で製造された長
繊維は、一般的に、50〜110×10-3程度の複屈折
(Δn)を持つことが多い。そして、この長繊維を後の
熱延伸によって、好ましくは複屈折100×10-3
上、より好ましくは複屈折115×10-3 以上に向上
させるのが好ましい。複屈折が100×10-3未満であ
ると、分子配向の程度が不十分で、長繊維の引張強度が
向上しない傾向となる。一般的に、複屈折が90×10
-3 である場合、後の熱延伸によって、長繊維の複屈折
は115〜140×10-3程度となる。複屈折(Δn)
の測定法は、偏向顕微鏡を用いて、繊維軸に平行な屈折
率と繊維軸に直角な屈折率との差を読み取って求める。
なお、長繊維が、高融点成分と低融点成分とよりなる芯
鞘型複合長繊維やサイドバイサイド型複合長繊維等の場
合、複屈折は高融点成分で測定する。最終的には、高融
点成分によって、長繊維の引張強度が決定されるからで
ある。
【0038】得られた長繊維は、捕集コンベア上に堆積
させて繊維ウェブを形成する。この際、溶融紡糸法によ
って長繊維をエアーサッカー等で引き取り、直ちに捕集
コンベア上に堆積させて繊維ウェブを形成する、いわゆ
るスパンボンド法を採用するのが好ましい。この方法に
よって、一般的に、長繊維は無作為に堆積される。そし
て、この繊維ウェブに、一定の間隔を置いて配置された
多数の区域で熱を与える。具体的には、繊維ウェブを、
加熱された凹凸ロールと平滑ロールとよりなるエンボス
ロールに通すことによって、凹凸ロールの凸部先端が繊
維ウェブと当接する区域に熱を与えるのが好ましい。ま
た、加熱された一対の凹凸ロール間を通して熱を与えて
も良い。凹凸ロールの凸部先端は、それが繊維ウェブに
当接して熱融着区域を形成するものであるから、熱融着
区域の面積や配置数(個数密度)等に応じて、所定のも
のを採用すれば良い。また、超音波発振装置を通して、
所定の多数の区域に熱を与えても良い。そして、以上の
ようにして熱を与えた区域において、繊維ウェブ中の熱
可塑性長繊維が軟化又は溶融して、長繊維相互間が自己
融着されてなる熱融着区域を形成することができるので
ある。
【0039】加熱された凹凸ロールと平滑ロール間に繊
維ウェブを通す場合、或いは加熱された一対の凹凸ロー
ル間に繊維ウェブを通す場合には、凹凸ロールは熱可塑
性長繊維の融点(熱可塑性長繊維が複合型繊維であると
きは、その低融点重合体の融点)よりも5〜50℃程度
低い温度に加熱されているのが好ましい。また、ロール
間の線圧は5〜50kg/cm程度に設定されているの
が好ましい。凹凸ロールの温度が、熱可塑性長繊維の融
点近傍或いはそれ以上であったり、或いはロール間の線
圧が50kg/cmを超えると、熱融着区域外でも長繊
維相互間が融着する恐れがあり、後の熱延伸処理の際
に、熱可塑性長繊維が再配列しにくくなる。その結果、
幅方向に所定の伸縮性を持つ不織布が得られにくくなる
恐れがある。また、凹凸ロールの温度が低すぎたり、或
いはロール間の線圧が5kg/cm未満であると、熱融
着区域における長繊維相互間の固定が不十分となり、寸
法安定性や引張強度等の機械的物性に低下する恐れがあ
る。
【0040】以上のようにして、一定の間隔を置いて配
置された多数の熱融着区域を持つ繊維フリースが得られ
る。この繊維フリースを、まず、エキスパンダーロール
やグリード状ギアー等の装置を用いて、幅方向に拡幅率
が0〜50%となるように拡幅する。この拡幅は、加熱
下で行うのが好ましく、40〜80℃の熱風を吹き込ん
だ雰囲気下で行うのが好ましい。加熱下で熱可塑性長繊
維を若干可塑化させることにより、所望の拡幅率で拡幅
を行いやすくなるからである。繊維フリースの幅方向へ
の拡幅率は、5〜50%程度であるのが好ましい。拡幅
率が5%未満になると、後の熱延伸処理後の不織布の目
付増加が大きく、低目付不織布が得られにくくなる。し
かしながら、延伸率を大きくする必要がないときや不織
布の目付が大きくても差し支えないときには、拡幅率が
5%未満であっても良く、更には拡幅を施さなくても良
いことは言うまでもない。また、拡幅率が50%を超え
ると、繊維フリースが破断する恐れがある。なお、繊維
フリースの拡幅率(%)は、{[(拡幅後の幅)−(拡
幅前の幅)]/拡幅前の幅}×100で表されるもので
ある。
【0041】次いで、拡幅した繊維フリースに、その状
態を維持させたまま、繊維フリースの縦方向(機械方
向)に熱延伸を施す。延伸は公知の方法が用いられ、例
えば、供給ロールと、供給ロールよりも速い周速度で回
転する延伸ロール間で行われる。特に、繊維フリースを
供給する第一ロール群、延伸を行う第二及び第三ロール
群よりなる装置を用いて、複数段による延伸を行うこと
が効果的である。また、この延伸も加熱下で行われ、熱
可塑性長繊維の融点以下の温度で行うのが好ましい。例
えば、延伸ロールの表面温度を熱可塑性長繊維の融点以
下の温度に設定して行ったり、延伸の際の雰囲気温度を
熱可塑性長繊維の融点以下の温度に設定して行うのが好
ましい。
【0042】熱延伸の程度は、繊維フリースの縦方向に
おける破断伸度に対して、10〜80%の延伸比とする
必要があり、好ましくは40〜75%程度の延伸比とす
るのが良い。ここで、延伸比とは、繊維フリースの縦方
向における破断伸度に対する延伸時の伸度の割合を百分
率で表したものを意味している。従って、繊維フリース
の縦方向における破断伸度をB%とすると、(0.1×
B〜0.8×B)%、繊維フリースを縦方向に伸ばすと
いうことである。延伸比が10%未満の場合には、繊維
フリース中の熱可塑性長繊維が、機械方向に十分に再配
列しないので、幅方向における伸縮性が不十分となると
共に、ニードルパンチによって長繊維相互間が絡合しや
すくなる傾向が生じる。一方、延伸比が80%を超える
と、延伸が大きすぎて、繊維フリース中の熱可塑性長繊
維が破断する恐れがある。なお、繊維フリースの縦方向
における破断伸度(%)は、JIS−L−1096Aに
記載の方法に準じて、前述した不織布の破断伸度を測定
する場合と同様にして測定する。なお、繊維フリースの
縦方向の破断伸度を測定するのであるから、測定に供せ
られる短冊状試料片の長手方向が、繊維フリースの縦方
向となるようにして、試料片を採取することは言うまで
もない。
【0043】以上のようにして、繊維フリースに熱延伸
を施すと、繊維フリースを構成している長繊維が、機械
方向(縦方向)に再配列し、その結果、幅方向に良好な
伸縮性が発現するのである。即ち、無作為に配列してい
た長繊維が、概ね縦方向に配列されるのである。熱延伸
する際、繊維フリースに形成されている熱融着区域は、
一部破壊されても良いし、全く破壊されなくても良い。
一般的には、長繊維の再配列に伴い、一部破壊されるこ
とが多い。しかし、この破壊は一部に留まるから、各長
繊維は熱融着区域において固定された状態となってお
り、これによって、満足のゆく寸法安定性や引張強度等
を持つ伸縮性不織布となるのである。
【0044】熱延伸した後、ニードルパンチを施す。ニ
ードルパンチは、従来公知のバーブ針やフォーク針を用
いて施される。パンチ密度は、任意で良いが、一般的に
は30〜150回/cm2であるのが好ましい。パンチ
密度が30回/cm2未満であると、繊維切断或いは熱
融着区域の破壊或いはループ状物の突出の程度が低く、
柔軟性等が低下する傾向が生じる。特に、ループ状物の
突出の程度が低いと、面ファスナー用雌材としたとき、
雄材との接合性が低下する傾向が生じる。一方、パンチ
密度が150回/cm2を超えると、特に熱融着区域の
破壊が一部に止まらないこともあり、最終的に得られる
伸縮性不織布の形態安定性が低下する傾向が生じる。な
お、ニードルパンチによって、繊維切断や熱融着区域の
破壊を伴うため、繊維フリースは縦方向及び幅方向に少
し延びる傾向がある。従って、ニードルパンチ前の繊維
フリースの目付が、ニードルパンチ後には少し低下する
傾向がある。
【0045】ニードルパンチを終えれば、そのまま伸縮
性不織布としても良く、そしてこのまま各種用途、例え
ば面ファスナー用雌材としても良いが、好ましくは熱固
定を行う。熱固定は、熱延伸後でニードルパンチ前に行
っても良いし、ニードルパンチ後に行っても良い。熱固
定は、熱可塑性長繊維の融点(複合型熱可塑性長繊維の
場合は、低融点重合体の融点)以下の温度雰囲気下に置
いて行う。熱固定の温度は、熱延伸時の熱履歴を消去す
るために、延伸時に採用した温度よりも高くするのが好
ましい。この熱固定は、繊維フリースを弛緩させて行っ
ても良いし、緊張させて又は定長で行っても良い。特
に、緊張又は定長で行う方が、得られた伸縮性不織布に
良好な伸縮性を付与することができるため好ましい。
【0046】本発明に係る伸縮性不織布の製造方法の代
表例をフロー図で示すと、図1に記載したとおりであ
る。即ち、所定の方法で繊維フリースを得た後(ステッ
プ1)、この繊維フリースを加熱下で拡幅する(ステッ
プ2)。次に、拡幅した状態の繊維フリースを、加熱下
で熱延伸する(ステップ3)。熱延伸した後、加熱下で
熱固定する(ステップ4)。熱固定後、ニードルパンチ
を施す(ステップ5)。そして、得られた不織布を所望
により巻き取れば良い(ステップ5)。これらの各ステ
ップは、一般的に、連続してオンラインで行われる。し
かし、ステップ1とステップ2以降とを切り離し、繊維
フリースを得る工程と、ステップ2以降の拡幅,延伸,
熱固定及びニードルパンチの工程とを別工程で行っても
良い。また、ステップ2以降において、更に、拡幅,延
伸及び熱固定の工程と、ニードルパンチの工程とを切り
離し、別工程としても良い。
【0047】また、伸縮性不織布に補強層を貼合して、
複合不織布としても良い。補強層を貼合する方法として
は、以下の如き方法を採用するのが好ましい。即ち、得
られた伸縮性不織布に、予め準備した伸縮性熱可塑性シ
ートを積層する。この積層は、不織布とシートとの二層
積層であっても良いし、シートの両面に不織布を積層す
る三層積層であっても良い。そして、この積層物を、加
熱凹凸ロールと平滑ロールとよりなるエンボスロールを
通す。加熱凹凸ロールの温度は、不織布中の熱可塑性長
繊維の融点及び伸縮性熱可塑性シートの融点以下の温度
となっている。一般的には、伸縮性熱可塑性シートの融
点の方が、熱可塑性長繊維の融点よりも低いので、伸縮
性熱可塑性シートの融点を基準として、その融点以下の
温度に加熱された凹凸ロールを用いれば良い。エンボス
ロールに積層物を通すと、加熱凹凸ロールの凸部が一定
の線圧で積層物に当接し、その当接区域(熱圧接区域)
において、少なくとも伸縮性熱可塑性シートが軟化又は
溶融する。そして、この軟化又は溶融によって、伸縮性
熱可塑性シートと不織布とが接着するのである。以上の
方法で、凹凸ロールの凸部に対応する箇所が熱圧接区域
となって複合不織布が得られる。この複合不織布は、熱
圧接区域で伸縮性熱可塑性シートと不織布とが接着して
おり、熱圧接区域外の区域では、両者が接着することな
く、貼合されたものであり、柔軟性及び伸縮性に優れた
ものである。なお、凹凸ロールとしては、多数の熱圧接
区域を形成できればどのようなものでも良いが、例え
ば、繊維ウェブに熱融着区域を形成する際に使用したの
と同様の仕様の凹凸ロールを用いれば便利である。
【0048】また、伸縮性熱可塑性ネットを予め準備し
ておき、このネットと伸縮性不織布を積層する。この積
層も、不織布とネットとの二層積層であっても良いし、
ネットの両面に不織布を積層する三層積層であっても良
い。そして、この積層物を、加熱平滑ロールと平滑ロー
ルとよりなるカレンダーロールに通す。加熱平滑ロール
は、不織布中の熱可塑性長繊維の融点及び伸縮性熱可塑
性ネットの融点以下の温度となっている。もう一方の平
滑ロールは、室温であっても加熱されていても良い。加
熱されている場合は、加熱平滑ロールと同等程度の温度
であるのが好ましい。カレンダーロールに積層物を通す
と、加熱平滑ロールの熱及びカレンダーロール間の線圧
によって、伸縮性熱可塑性ネットの骨格部表面が軟化又
は溶融し、不織布と接触している面で接着する。以上の
方法で、伸縮性熱可塑性ネットと不織布とが貼合された
複合不織布が得られる。この複合不織布は、ネットの骨
格部表面と不織布とが接着しており、骨格部外の区域
(孔の区域)は、不織布のみからなるものであり、これ
によって、良好な柔軟性及び伸縮性が得られる。なお、
カレンダーロールを構成する平滑ロール、或いはエンボ
スロールの一方のロールを構成する平滑ロールとして
は、金属ロール,ゴムロール,コットンロール,ペーパ
ーロール等を用いることができる。また、ロールとロー
ルに沿わせて移動するフェルト状のベルトを、平滑ロー
ルとして用いても良い。
【0049】以上のようにして得られた伸縮性不織布、
或いは伸縮性不織布を含む複合不織布は、所定幅で巻き
取られ原反として供給される。そして、衛生マスク、粘
着剤付き簡易包帯、顔面パック用基布、タオル、紙おむ
つの表面材、紙おむつの前側基布、パップ材の基布、ス
ポーツ用サポーター、包帯、掛け布、包装材、覆い布等
の各種用途に応じて、所定の大きさ或いは形状に裁断さ
れ、使用に供せられる。特に、面ファスナー用雌材とし
て機能させるときには、例えば、紙おむつの前側基布を
構成するようにして、使用に供せられる。
【0050】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明
するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるも
のではない。また、実施例における各種特性値のうち、
不織布の幅方向の破断伸度[EC(%)],不織布の縦
方向(機械方向)の破断伸度〔EM(%)〕,不織布の
伸長回復率[EEC(50)(%)及びEEC(10
0)(%)]及びトータルハンド値〔THV〕は、前記
したとおりであり、その他の特性値は、以下のとおりで
ある。
【0051】(1)融点(℃):パーキンエルマ社製示
差装置型熱量計DSC−2型を用い、試料重量5mg、
昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた溶融吸熱
曲線の最大値を与える温度を融点とした。 (2)不織布の目付(g/m2):標準状態の試料か
ら、縦10cm×横10cmの試料片を10点準備し、
平衡水分率に至らしめた後、各試料片の重量(g)を秤
量し、得られた値の平均値を単位面積(m2)当りに換
算して目付(g/m2)とした。
【0052】実施例1 芯成分として、融点256℃で極限粘度0.64のポリ
エチレンテレフタレートを準備した。また、鞘成分とし
て、融点130℃でメルトインデックス値(ASTM
D1238(E)に記載の方法に準拠して測定)が25
g/10分である高密度ポリエチレンを準備した。この
二種の重合体を、個別のエクストルーダー型溶融押出機
を用いて、複合紡糸孔を具えた紡糸口金に導入した。こ
の際、複合紡糸孔の芯部に溶融したポリエチレンテレフ
タレートが導入されるようにし、鞘部に溶融した高密度
ポリエチレンが導入されるようにして、芯成分と鞘成分
の重量比が等量となるようにして、単孔吐出量0.93
g/分の条件下で複合溶融紡糸を行った。紡糸口金から
紡出した糸条群を公知の冷却装置で冷却し、紡糸口金の
下方に設置したエアーサッカーを用いて牽引速度が28
00m/分となるようにして引き取った。その後、エア
ーサッカーの出口に設けた開繊装置で糸条群を開繊し、
移動する金網製のスクリーンコンベアー上に堆積させ
て、目付10g/m2の繊維ウェブを得た。この際、繊
維ウェブを構成している略同心芯鞘型複合長繊維の繊度
は3デニールであった。
【0053】次いで、この繊維ウェブを、125℃に加
熱された凹凸ロールと125℃に加熱された平滑ロール
の間に導入した。この結果、凹凸ロールの凸部に当接し
た繊維ウェブの区域が、部分的に加熱され、略芯鞘型複
合長繊維の鞘成分が軟化又は溶融して、複合長繊維相互
間が融着された。そして、融着区域が散点状に配設され
た繊維フリースが得られた。各融着区域の面積は0.6
mm2であり、繊維フリース中における融着区域の密度
は20個/cm2であり、また融着区域の総面積は繊維
フリース表面積に対して15%であった。
【0054】この繊維フリースを、クリップテンター付
き加圧スチーム処理機に導入し、60℃の雰囲気下で幅
方向に15%拡幅した。そして、この拡幅した状態で、
繊維フリースを縦方向に熱延伸した。延伸条件として
は、1段延伸法を適用し、供給ロールに導入した後、湯
浴(温浴)中に浸漬し、次いで延伸ロールに導入した。
この際、供給ロールの温度を常温とし、温浴温度は90
℃とし、延伸ロールの温度は常温とし、延伸比を40.
0%とした。そして、熱延伸後の繊維フリースを、12
5℃のヒートドラムに導入し、熱固定を行った。
【0055】熱固定を終えた繊維フリースに、バーブ針
(ピンチブレード♯40)を用い、パンチ密度を45回
/cm2として、ニードルパンチを施し、伸縮性不織布
を得た。この結果、伸縮性不織布中の長繊維の一部が切
断し、また熱融着区域も一部破壊され、更に主として伸
縮性不織布の裏面(ニードルパンチ面とは反対面)に多
くのループ状物が突出した。得られた伸縮性不織布の各
種物性は、表1に示すとおりであった。
【0056】
【表1】
【0057】実施例2 繊維ウェブの目付を30g/m2とし、延伸比を50%
とする他は、実施例1と同一の方法により、伸縮性不織
布を得た。この伸縮性不織布の各種物性を、表1に示し
た。
【0058】実施例3 以下の点を変更した他は、実施例1と同一の方法によ
り、伸縮性不織布を得た。変更点は、単孔吐出量を1.
20g/分とする点、牽引速度を3600m/分とする
点、繊維ウェブの目付を40g/m2とする点、延伸比
を45%とする点である。得られた伸縮性不織布の各種
物性を、表1に示した。
【0059】比較例1 ニードルパンチを施さない他は、実施例1と同様の方法
で一方向伸縮性不織布を製造した。この一方向伸縮性不
織布の各種物性を、表2に示した。
【0060】
【表2】
【0061】比較例2 ニードルパンチを施さない他は、実施例2と同様の方法
で一方向伸縮性不織布を製造した。この一方向伸縮性不
織布の各種物性を、表2に示した。
【0062】比較例3 ニードルパンチを施さない他は、実施例3と同様の方法
で一方向伸縮性不織布を製造した。この一方向伸縮性不
織布の各種物性を、表2に示した。
【0063】表1及び表2の結果から明らかなように、
実施例1〜3に係る方法で得られた伸縮性不織布の伸縮
性は、比較例1〜3に係る一方向伸縮性不織布よりは劣
るが、いずれも幅方向に十分な伸縮性を示すものであっ
た。そして、実施例に係る方法で得られた伸縮性不織布
のトータルハンド値(THV)は、比較例に係る方法で
得られた一方向伸縮性不織布と比べて、格段に向上して
おり、柔軟性に富むものであった。更に、実施例に係る
方法で得られた伸縮性不織布の目付は、比較例に係る方
法で得られた一方向伸縮性不織布よりも少なく、嵩高性
に富むものであった。
【0064】使用例1〜3 実施例1〜3に係る方法で得られた伸縮性不織布を、面
ファスナー用雌材として使用し、初期接合強力(gf/
cm)及び剪断剥離強力(gf/cm2)を測定した。
その結果を表3に示した。
【0065】
【表3】
【0066】初期接合強力(gf/cm)及び剪断剥離
強力(gf/cm2)の測定方法は、以下のとおりであ
る。 (イ)初期接合強力(gf/cm):JIS L−34
16の面ファスナーの試験方法に準ずる測定方法によ
り、初期接合強力を測定した。ただし、剥離角度を正確
にするために鉄製の剥離試験用器具を用いた。詳細は以
下のとおりである。幅30mmで長さ40mmの面ファ
スナー用雌材(試験片)を準備し、これを鉄製の板に両
面テープ(住友スリーエム社製)を用いて貼り付ける。
一方、幅30mmで長さ20mmの大きさの面ファスナ
ー用雄材(YKK社製マッシュルームテープ)をスパン
ボンドシートに貼り付けたものを準備し、雌材の長さ方
向と雄材の幅方向とを重ね合わせて、700gの鉄製の
ローラーを一往復転圧して圧着接合した。これを定速伸
長型試験機(株式会社東洋ボールドウイン社製テンシロ
ンRTM−500)を用い、雌材付き鉄板を剥離試験用
器具に取り付け、雄材が貼り付けてあるスパンボンドシ
ートの端部をチャックで把持し、つかみ間隔10cm、
引張速度30cm/分で、雌材の面方向に対して135
度の方向に引っ張って剥離(135度剥離試験)し、初
期接合強力を求めた。
【0067】(ロ)剪断剥離強力(gf/cm2):J
IS L−3416の面ファスナーの試験方法に準ずる
測定方法により、剪断強力を測定した。詳細は以下のと
おりである。初期接合強力の場合と同様にして、雌材と
雄材とを接合し、スパンボンドシートの端部をチャック
で把持し、つかみ間隔10cm、引張速度30cm/分
で、雌材の面方向と平行の方向に引っ張って剥離し、剪
断剥離強力を求めた。
【0068】比較使用例1〜3 比較例1〜3に係る方法で得られた一方向伸縮性不織布
を、面ファスナー用雌材として使用し、初期接合強力
(gf/cm)及び剪断剥離強力(gf/cm2)を測
定した。その結果を表4に示した。
【0069】
【表4】
【0070】表3及び表4の結果から明らかなように、
実施例に係る伸縮性不織布を面ファスナー用雌材として
使用した場合には、比較例に係る一方向伸縮性不織布を
面ファスナー用雌材として使用した場合に比べて、初期
接合強力及び切断剥離強力共に、格段に向上しているこ
とが分かる。これは、実施例に係る伸縮性不織布表面
に、多数のループ状物が突出しているからであると考え
られる。
【0071】
【作用】本発明に係る伸縮性不織布は、長繊維相互間が
熱融着区域において熱融着されていると共に、熱融着区
域間を繋ぐ長繊維が概ね縦方向に配列されている繊維フ
リースに、ニードルパンチを施すことにより、得られる
ものである。この繊維フリースは、長繊維が概ね縦方向
に配列されているので、無作為に長繊維が配列されても
のに比べて、長繊維相互間の交点が少なくなっている。
従って、このような繊維フリースにニードルパンチを施
すと、長繊維相互間の交点における絡み合いがあまり生
ぜずに、縦方向に配列されて比較的伸びきった状態の長
繊維が一部切断したり、或いは熱融着区域が一部破壊さ
れたり、或いは表面に長繊維の一部がループをなして突
出することになる。即ち、本発明の如く、特定の繊維フ
リースにニードルパンチを施すと、ニードルパンチの本
来的作用である長繊維相互間の絡合があまり生ぜずに、
一般には生じにくい長繊維の一部切断,熱融着区域の一
部破壊,ループ状物の突出という特有の作用を生じさせ
るのである。
【0072】
【発明の効果】従って、本発明に係る伸縮性不織布は、
幅方向に良好な伸縮性を発揮すると共に、長繊維の一部
切断或いは熱融着区域の一部破壊或いは長繊維の一部に
よるループ状物の表面への突出が生じているので、柔軟
性及び嵩高性に優れるという効果を奏する。
【0073】また、本発明に係る伸縮性不織布よりなる
面ファスナー用雌材は、その表面に長繊維の一部がルー
プをなして突出している場合、この箇所に雄材の突起部
が係合しやい。従って、雄材との接合性が良好で、各種
剥離強力に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る伸縮性不織布の一製造例を示すフ
ロー図である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多数の熱可塑性長繊維が集積されてな
    り、該長繊維相互間は、一定の間隔を置いて配置された
    多数の熱融着区域において、該長繊維自体の軟化又は溶
    融による自己融着によって固定されてなり、且つ、下記
    式(1)〜(4)を同時に満足すると共に、ニードルパ
    ンチによって、該長繊維の一部が切断し或いは該熱融着
    区域の一部が破壊され或いは該長繊維の一部が表面にル
    ープ状となって突出していることを特徴とする柔軟性に
    優れた伸縮性不織布。 記 EC≧140% ・・・(1) EC/EM≧3 ・・・(2) EEC(50)≧60 ・・・(3) EEC(100)≧40 ・・・(4) (但し、ECは不織布の幅方向の破断伸度であり、EM
    は不織布の縦方向の破断伸度であり、EEC(50)は
    不織布を幅方向に50%伸長した時の伸長回復率であ
    り、EEC(100)は不織布を幅方向に100%伸長
    した時の伸長回復率である。)
  2. 【請求項2】 熱可塑性長繊維として、芯成分が芳香族
    ポリエステルで鞘成分がポリオレフィンである芯鞘型複
    合長繊維を用い、該複合長繊維相互間は、該鞘成分の軟
    化又は溶融による自己融着によって固定されている請求
    項1記載の柔軟性に優れた伸縮性不織布。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の柔軟性に優れた伸
    縮性不織布よりなることを特徴とする面ファスナー用雌
    材。
  4. 【請求項4】 多数の熱可塑性長繊維を、捕集コンベア
    上に堆積させて繊維ウェブを形成し、該繊維ウェブに、
    一定の間隔を置いて配置された多数の区域で熱を与え、
    該区域において該長繊維表面を軟化又は溶融させること
    によって、該長繊維相互間が自己融着されてなる熱融着
    区域を持つ繊維フリースを得た後、該繊維フリースを幅
    方向に拡幅率0〜50%となるように拡幅した状態で、
    縦方向に該繊維フリースを10〜80%の延伸比で熱延
    伸することによって、該熱融着区域相互間を繋ぐ該長繊
    維を概ね縦方向に配列させ、その後、ニードルパンチを
    施して、該長繊維の一部を切断し或いは該熱融着区域の
    一部を破壊し或いは該長繊維の一部を表面にループ状と
    なして突出させることを特徴とする柔軟性に優れた伸縮
    性不織布の製造方法。
  5. 【請求項5】 熱延伸した後、所定の段階で、熱可塑性
    長繊維の融点以下の温度で熱固定する請求項4記載の柔
    軟性に優れた伸縮性不織布の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項4又は5記載の柔軟性に優れた伸
    縮性不織布の製造方法を含むことを特徴とする面ファス
    ナー用雌材の製造方法。
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