JP3610836B2 - 手摺りの取り付け方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば浴室やトイレ、あるいは居室、廊下、階段等に取り付けられる手すりの取付構造に関するものであり、特に外側壁と比較的に強度の低い内側壁との二層構造を有する壁に取り付ける手摺りの取り付け構造及びその取り付け方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、マンションなどの浴室、トイレ、居室に手摺りを取り付ける際は、壁面にボルトやネジ、釘を用いて直接手摺りを取り付けていた。ところが、近年の住居では部屋を間仕切りするための壁材として肉厚の薄い板材(合板、石膏ボードなど)を使用することが多くなり、強度的問題から直接壁に手摺りを設けることができない場合が増えてきている。そのため、特開平9−140548では、壁面に孔を開けここに袋状のアンカープラグを挿入して樹脂を充填しプラグを固定した上で手摺りを取り付けている。また、特許第2808414では、手摺りを取り付けるための基板を壁材の表面に多数の締結具を使用して締結した後これに手摺りを固定している。また、特許第2803034では、壁材と手摺りとを接着剤により固定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来の手摺りの取り付け方法では、いずれも肉厚の薄い表面壁材に手摺りを固定しているため、手摺りに高加重が加わると壁材自体が変形したり最悪の場合は壁材が破損して脱落する事故が発生する。そこで、本発明の目的は前述した課題を解決するため、すなわち、壁材が薄肉で強度の弱いものであっても手摺りを強固に固定できる手摺りの取り付け構造を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明では、内壁(2)の適宜箇所に孔(7)を開け、この孔から下記に示す湿気硬化性変性シリコーン系組成物(3)を、外壁(1)の内壁側表面及び内壁(2)の外壁側側面に塗布し、この湿気硬化性変性シリコーン系組成物が硬化する前に、下記のエポキシ樹脂系高粘度接着剤(4)を前記孔から充填して前記内壁と外壁とを硬化接着固定した後、このエポキシ樹脂系高粘度接着剤の硬化物にネジや釘等を用いて手摺り基部(5)を固定し、ついでこの手摺り基部に手摺り本体(6)を固定するようにした。
湿気硬化性変性シリコーン系組成物(3):
(A)1分子中に少なくとも1つの反応性珪素基を有するオキシアルキレン重合体と、
(B)1分子中に少なくとも1つの反応性珪素基を有するビニル系重合体とを主成分とする硬化性組成物。
エポキシ樹脂系高粘度接着剤(4):
エポキシ樹脂、硬化剤及び軽量骨材を主成分とする接着剤
【0005】
本発明では、コンクリート構造物やこの表面に形成された断熱材や、あるいはこれらに準じてコンクリート構造物表面に形成される様々な構造部材を外壁材と称し、また、この外壁材の内側に設けられて部屋を形成する間仕切り用の薄板構成部材を内壁材と称する。この内壁材は通常前記した外壁材に近接して石膏ボンド(GLボンド)を用いて接着または接合されている。
【0006】
ここで使用される内壁材としては、石膏ボード、ベニヤなどの合板、またはプラスチック薄板や金属薄板を利用した合板などが上げられる。
【0007】
本発明に使用される湿気硬化性変性シリコーン系プライマー組成物としては、特開昭63−112642,特開平1−131271、特開昭60−219280、特開昭50−156599、特許2911991等に記載される少なくとも1分子中に反応性珪素基を有する化合物を主成分とする湿気硬化型の変性シリコーンが使用できる。この中でも(A)1分子中に少なくとも1つの反応性珪素基を有するオキシアルキレン重合体と、(B)1分子中に少なくとも1つの反応性珪素基を有するビニル系重合体との混合物を主成分とする組成物が、被着体との密着性、接着力、塗布のしやすさ等から有効である。さらに、前記(B)1分子中に少なくとも1つの反応性珪素基を有するビニル系重合体が、(イ)炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクりル酸アルキルエステル単量体単位と、(ロ)炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエスチル単量体単位との共重合体であることが好ましい。
【0008】
本発明に使用されるエポキシ樹脂系高粘度接着剤は、エポキシ系樹脂に珪砂、ガラスビーズ、シラスバルーンなどの無機充填剤やポリエチレンパウダーなどのプラスチックフィラーなどの骨材を添加混合した樹脂モルタルが使用できる。このエポキシ系樹脂に配合される骨材の中でも内部が中空のガラスビーズやシラスバルーンを使用することにより、軽量で樹脂強度の強く、かつネジや釘のねじ込みや打ち込みが容易な接着剤を得ることができる。
【0009】
次に、本発明の接着行程を、たとえばマンションなどのコンクリート構造部材(外壁材)の表面に化粧板(内壁材)がGLボンド工法などにより接着形成してある内壁材表面に手摺りを取り付けることを想定して説明する。まず、内壁材(2)の任意の箇所に適当の大きさ(直径3〜10cm程度が適当)の孔(7)を開ける。ついで向かい合う化粧板の外壁側(1)の表面と外壁材の表面それぞれに、湿気硬化性変性シリコーン系プライマー組成物(3)を任意の厚さ(好ましくは0.1〜2mm)に塗布し、このプライマー層が硬化する前に(好ましくは表面流動性を有する内に)エポキシ樹脂系高粘度接着剤(4)を前記孔を閉塞するように圧入充填する。このとき、エポキシ樹脂系高粘度接着剤が外壁材及び内壁材の隙間にたれ落ちるのを防止するため、この隙間に予めスポンジ(8)を挿入しておくとよい。このようにして前記内壁材と外壁材の間の隙間を湿気硬化性変性シリコーン系プライマーとエポキシ樹脂系高粘度接着剤により充填接着して補強する。
【0010】
ついで、前記湿気硬化性変性シリコーン系プライマー(3)とエポキシ樹脂系高粘度接着剤(4)の硬化を待って、前記エポキシ樹脂系高粘度接着剤の硬化物に手摺り基部(5)をネジや釘(9)などにより固定する。このとき前記エポキシ樹脂系高粘度接着剤の硬化物は、内壁材に開けられた孔の直径よりも大きな直径で充填接着されていて、手摺り基部(5)は前記孔(7)を通して直接ネジなどにより固定されても良いし、内壁材を貫通するようにして間接的に接合されてもよい。また、ここで使用されるエポキシ樹脂系高粘度接着剤の硬化物は、ネジや釘をねじ込んだり打ち付けたりする際に破壊しないように靱性が高く、脆くない物性を有しており、かつ、一度ねじ込んだネジや打ち込んだ釘が容易に抜けないように硬化物そのものが堅い必要がある。このような用途に適当な接着剤は前記したようにエポキシ樹脂と内部に空洞を有する充填剤(特にシラスバルーンが好適)を混合したものが特に好ましい。これは、硬化物内部に存在する中空充填剤の中空部がネジのねじ込みに伴って破壊してねじ込まれたネジの容積分を吸収するためと思われる。
【0011】
最後に前述のとおり固定された手摺り基部(5)に手摺り本体(6)をネジにより固定して作業を終了する。このようにして得られた手摺り構造は、湿気硬化性変性シリコーン系プライマー層とエポキシ樹脂系高粘度接着剤の接着層を介して外壁面に対し強固に接着しているので、手摺りに大きな力が加えられても内壁の破壊変形は容易には起こらない。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例に基づいて詳述するが、本発明はこの実施例に限定されるわけではない。実施例に先立ち次のものを準備した。
1.湿気硬化性変性シリコーン系化合物を主成分とするプライマー組成物としてスリーロンジーS−301(スリーボンドユニコム社製 反応性珪素基を有するオキシアルキレン重合体と反応性珪素基を有するビニル系重合体との混合物)を使用した。
2.エポキシ樹脂系高粘度接着剤として骨材としてシラスバルーンを使用した2液性エポキシ樹脂系接着剤(スリーボンドユニコム社製 ロンジーメント E−202)を使用した。
3.石膏ボード(1m×1m×5mm)のとコンクリート板(1m×1m×5cm)を用意し、団子状の石膏ボンドを点(直径5cm程度)付けするようにして両者を接着接合し、隙間約3cmの内壁(石膏ボード)と外壁(コンクリート板)からなる二層構造の壁材を作成した。
【0013】
【実施例1】
上述した二層構造の壁材を垂直に立てて固定し、石膏ボード(内壁材)に直径約5cmの孔を開け、この孔から断面形状5cm×5cm、長さ約30cmのスポンジ(8)を挿入し、前記孔を取り巻くように内壁と外壁の間の隙間に形成した。ついでこの孔から湿気硬化性変性シリコーン系プライマー組成物(スリーボンドユニコム社製 スリーロンジーS−301)(3)を塗布し、二枚の壁材とスポンジで囲まれた空間の内側にプライマー層を形成した。なお、このときのプライマー塗布は湿気硬化性変性シリコーン系組成物を溶剤などで希釈してスプレー塗布すると作業勝手がよい。
【0014】
次に、前記したプライマー層(3)が硬化する前に、前記した二枚の壁材とスポンジ(8)で囲まれた空間にエポキシ樹脂系高粘度接着剤(スリーボンドユニコム社製 ロンジーメント E−202)(4)を充填した。このときこのエポキシ樹脂系高粘度接着剤はパテ状乃至団子状の塊であり、これを手または高圧ポンプを利用してなるべく気泡を抱き込まないように充填し、孔からはみ出した余分な部分は削りとるようにして鏝等でその表面を均した。
【0015】
次に、前記プライマー層及び接着剤層を硬化させた後、手摺り基部(5)をタッピングネジを用いて前記接着剤層に固定し、この基部(5)に手摺り本体(6)を固定して作業を完了した。これによって製造された手摺りは、接着剤層によりコンクリート壁(外壁)や石膏ボードと強固に接着していて石膏ボードが破損するような荷重がかけられても容易には脱落しなかった。
【0016】
【比較例1】
実施例1で使用した湿気硬化性変性シリコーン系プライマーの替わりに湿気硬化シリコーン樹脂(スリーボンド5211 スリーボンド社製シリコーンシーラント)を使用した以外は実施例1と同様にして手摺りを作成した。この手摺りを実施例1と同様に荷重をかけたところ、エポキシ樹脂系高粘性接着剤層とコンクリート層あるいはエポキシ樹脂系高粘性接着剤層と石膏ボード層の間で剥離が発生した。
【0017】
【発明の効果】
以上のように、本発明の手摺りの取り付け構造及び取り付け方法を用いれば、内壁材の強度が弱くても手摺りなどを強固に確実に取り付けることができる。また、ここで使用されるエポキシ樹脂に配合する骨材として内部が中空の軽量骨材を使用することで、ネジのねじ込み等が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の手摺り取り付け構造を示す概略断面図である。
【図2】本発明の製造行程を示した概略断面図である。
【符号の説明】
1 外壁(コンクリート板)
2 内壁(石膏ボード)
3 プライマー層
4 接着剤層
5 手摺り基部
6 手摺り本体
7 孔
8 スポンジ
9 ねじ
Claims (6)
- 内壁(2)の適宜箇所に孔(7)を開け、この孔から湿気硬化性変性シリコーン系組成物(3)を、外壁(1)の内壁側表面及び内壁(2)の外壁側側面に塗布し、この湿気硬化性変性シリコーン系組成物が硬化する前に、エポキシ樹脂系高粘度接着剤(4)を前記孔から充填して前記内壁と外壁とを硬化接着固定した後、このエポキシ樹脂系高粘度接着剤の硬化物にネジや釘等を用いて手摺り基部(5)を固定し、ついでこの手摺り基部に手摺り本体(6)を固定したことを特徴とし、前記湿気硬化性変性シリコーン系組成物(3)及びエポキシ樹脂系高粘度接着剤(4)が下記で示される組成物である手摺りの取り付け方法。
湿気硬化性変性シリコーン系組成物(3):
(A)1分子中に少なくとも1つの反応性珪素基を有するオキシアルキレン重合体と、
(B)1分子中に少なくとも1つの反応性珪素基を有するビニル系重合体とを主成分とする硬化性組成物。
エポキシ樹脂系高粘度接着剤(4):
エポキシ樹脂、硬化剤及び軽量骨材を主成分とする接着剤 - 前記(B)1分子中に少なくとも1つの反応性珪素基を有するビニル系重合体が、
(イ)炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と
(ロ)炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエスチル単量体単位とからなる共重合体である請求項1記載の手摺りの取り付け方法。 - 前記軽量骨材がシラスバルーンである請求項1記載の手摺りの取り付け方法。
- 前記外壁(1)がコンクリートである請求項1記載の手摺りの取り付け方法。
- 前記内壁(2)が石膏ボードである請求項1記載の手摺りの取り付け方法。
- 前記外壁(1)がコンクリートであり、かつ前記内壁(2)が石膏ボードである請求項1記載の手摺りの取り付け方法。
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