JP3609167B2 - コンクリート躯体の補強工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、例えば老朽化したり、地震等で脆弱化した既設のコンクリート製の柱や壁面等のコンクリート躯体の補強工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のように老朽化したり、脆弱化した既設のコンクリート躯体を補強する場合、従来は例えばコンクリート躯体の内部にセメントや樹脂等の注入材を充填して亀裂を埋める、あるいは既設のコンクリート躯体に差し筋をして新たなコンクリート躯体を増設する等の方法が採られている。
【0003】
ところが、前者のように注入材を充填するだけでは充分な強度を確保することが困難な場合が多く、また後者のように新たなコンクリート躯体を増設する場合には、コンクリート躯体全体の占めるスペースが増大し、しかも施工が面倒である等の不具合がある。
【0004】
そこで、既設のコンクリート躯体の表面に所定の間隔を置いて金属板等の補強板を被覆し、その補強板とコンクリート躯体との間にセメントや樹脂等の注入材を充填・固化させて補強する工法が行われている。
【0005】
しかしながら、従来はコンクリート躯体の表面に補強板を単に覆った構成であるから、補強板のコンクリート躯体に対する取付けが不安定で必ずしも充分な強度を確保できない不具合があり、また往々にして補強板とコンクリート躯体との間の間隔にバラツキが生じて注入材を万遍なく良好に充填することができない等の問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、既設のコンクリート躯体を簡単確実にかつ強固に補強することのできるコンクリート躯体の補強工法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明によるコンクリート躯体の補強工法は、以下の構成としたものである。
【0008】
即ち、既設のコンクリート躯体の表面にスペーサにより所定の間隔をおいて補強板を配置し、上記コンクリート躯体に打設した拡開式アンカーを介して上記補強板をコンクリート躯体に取付け支持させると共に、上記補強板とコンクリート躯体との間に注入材を充填して固化させるようにしたコンクリート躯体の補強工法であって、上記スペーサを予め補強板の内面もしくは上記コンクリート躯体の表面に溶接もしくは接着等で固着すると共に、上記拡開式アンカーを、雌ねじ孔を有するテーパ状の楔片と拡開スリーブとで構成し、上記楔片の雌ねじ孔に上記補強板の取付ボルトをねじ込むことによって、上記補強板をコンクリート躯体にその両者間に上記スペーサを介在させた状態で取付け支持させると共に、上記楔片と取付ボルトとを高張力素材で形成したことを特徴とする。
【0009】
【作用】
上記のように、コンクリート躯体の表面に拡開式アンカーを打設し、そのアンカーに、コンクリート躯体の表面にスペーサを介して所定の間隔を置いて被覆した補強板を固定し、その補強板とコンクリート躯体との間に注入材を充填するようにしたことによって、既設のコンクリート躯体を簡単確実にかつ強固に補強することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるコンクリート躯体の補強工法を、図に示す実施例に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明による補強工法を既設のコンクリート製の柱に適用した実施例の横断平面図、図2はその一部の拡大横断平面図、図3はその正面図である。
【0011】
図に示す実施例は、既設のコンクリート製の柱Pに拡開式のアンカー1を打設し、上記柱Pの外周面にスペーサ2により所定の間隔をおいて補強板3を配置すると共に、その補強板3を取付ボルト4で上記アンカー1に固着し、その補強板3と柱Pとの間にセメントや樹脂等の注入材Sを充填したものである。
【0012】
上記アンカー1は、図4に示すように一端側にすり割溝11aと周面に抜け止め用の多数の溝条11bを有する拡開スリーブ11と、一端側に略円錐状のテーパ面12aを有する楔片12とよりなり、その楔片12を拡開スリーブ11内に押し込むことによって該スリーブ11を図2のように拡開させる構成である。また上記楔片12の他端側には雌ねじ孔12bが形成され、その雌ねじ孔12bに前記の取付ボルト4をねじ込んで補強板3を固定する構成である。
【0013】
その取付ボルト4として本実施例においては皿ボルトを用い、そのボルト挿入孔として補強板3には図2に示すように座ぐり孔3aを形成することによってボルト頭部が補強板3の表面に突出しないようにしている。その座ぐり孔3aは補強板3の前記アンカー1に対する取付け位置に予め形成しておけばよい。なお上記のボルト4の頭部には六角孔4aが形成されている。
【0014】
上記アンカー1を構成する部材の材質は適宜であるが、スリーブ11としては靭性が大きくて割れの少ない素材、例えばSTKM(機械構造用炭素鋼鋼管)やSWCH(冷間圧造用炭素鋼線)またはSWRCH((冷間圧造用炭素鋼線材)もしくはSGH(配管用炭素鋼鋼管)等を用いるとよく、また楔片12としては焼き入れ等によって引っ張り強度を増大させた高張力素材、例えばSCM435(クロムモリブデン鋼鋼材)やS45C(機械構造用炭素鋼鋼材)もしくはSNB7(高温用合金鋼ボルト材)等を用いるとよい。また取付ボルト4も楔片12と同様に高張力素材を用いるとよく、例えば上記のSCM435やSNCM447(ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材)等を用いるを可とする。
【0015】
さらに補強板3の材質も適宜であり、例えば鉄もしくはステンレス等の鋼板を用いる、あるいは硬質の合成樹脂製の板を用いることもできる。またスペーサ2としては、補強板3をコンクリート柱等に対して所定の間隔に保持し得るものであれば、その材質や形状等は任意であり、例えば既存のナット等を利用することもできる。なお、そのスペーサ2は、予め補強板3の内面もしくはコンクリート柱等の表面に溶接もしくは接着等で固着しておくとよい。
【0016】
上記のアンカー1を打設するに当たっては、図5の(a)に示すように既設のコンクリート製の柱等に上記スリーブ11よりも僅かに大径の小孔hをドリル等で形成し、その小孔h内に同図(b)のように上記スリーブ11と楔片12とからなるアンカー1を挿入する。その際、楔片12は予めスリーブ11内に軽く圧入しておくとよい。
【0017】
次いで、同図(c)のようにスリーブ11をハンマHによりアダプタA等を介して打ち込む。すると、スリーブ11の先端部が拡開して小孔hの内面に食い込んで抜け止め固定される。その際、スリーブ11として前記のような靭性が大きな素材を用いれば、高強度の楔片12が打ち込まれても該スリーブ11が小孔h内で割れることなく拡開し、適性なるアンカー強度が発現・維持される。
【0018】
その状態で、同図(d)のようにコンクリート柱Pの表面にスペーサ2を介して所定の間隔をおいて補強板3を配置し、同図(e)のように取付ボルト4を楔片12の雌ねじ孔12bにねじ込んで固定する。この状態で、補強板3は柱Pに対して充分な取付け強度が保持された状態となる。
【0019】
次に、同図(f)のように補強板3とコンクリート柱Pの表面との間にセメントや樹脂等の注入材Sを充填して固化させるもので、そのとき補強板3は取付ボルト4およびアンカー1を介してコンクリート柱Pに強固に固着されて不用意にずれることがなく、また注入材Sは小孔hとアンカー1との間、およびコンクリート柱Pの亀裂内に浸入すると共に、補強板3の内面およびコンクリート柱Pの表面に密着固化して一体化される。このようにして柱Pに取付け支持された補強板3は、該柱Pを構成する構造部材の一部として機能する。従って、新たに鉄筋等を追加することなく、小スペースで強固に補強され、充分な柱強度を確保することができるものである。
【0020】
なお上記実施例は既存のコンクリート製の柱に適用した例を示したが、コンクリート製の壁面や橋梁、その他各種のコンクリート躯体に適用できる。
また上記実施例は取付ボルト4として皿ボルトを用いたが、六角ボルトでもよく、あるいは全ねじボルトにナットを螺合するようにしてもよい。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によるコンクリート躯体の補強工法は、既設のコンクリート躯体の表面に拡開式アンカー1を打設し、そのアンカー1にコンクリート躯体の表面にスペーサ2を介して所定の間隔を置いて被覆した補強板3を固定し、その補強板3とコンクリート躯体との間に注入材Sを充填して固化させるようにしたから、補強板3がアンカー1を介してコンクリート躯体に強固に固定され強度を増大できると共に、補強板3が不用意にずれてコンクリート躯体との間の間隔にバラツキを生じることがなく、注入材Sを万遍なく充填することが可能となるもので、既設のコンクリート躯体を簡単確実にかつ強固に補強できる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による補強工法を適用したコンクリート柱の横断平面図。
【図2】図1の一部の拡大横断平面図。
【図3】その正面図。
【図4】アンカーおよび取付ボルトの分解図。
【図5】本発明による補強工法の施工手順を示す説明図。
【符号の説明】
1 アンカー
11 スリーブ
12 楔片
2 スペーサ
3 補強板
4 取付ボルト
P コンクリート柱
S 注入材

Claims (1)

  1. 既設のコンクリート躯体の表面にスペーサにより所定の間隔をおいて補強板を配置し、上記コンクリート躯体に打設した拡開式アンカーを介して上記補強板をコンクリート躯体に取付け支持させると共に、上記補強板とコンクリート躯体との間に注入材を充填して固化させるようにしたコンクリート躯体の補強工法であって、上記スペーサを予め補強板の内面もしくは上記コンクリート躯体の表面に溶接もしくは接着等で固着すると共に、上記拡開式アンカーを、雌ねじ孔を有するテーパ状の楔片と拡開スリーブとで構成し、上記楔片の雌ねじ孔に上記補強板の取付ボルトをねじ込むことによって、上記補強板をコンクリート躯体にその両者間に上記スペーサを介在させた状態で取付け支持させると共に、上記楔片と取付ボルトとを高張力素材で形成したことを特徴とするコンクリート躯体の補強工法。
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