JP3608308B2 - チップインダクタの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型デジタル電子機器等の高密度実装回路基板に用いられ、電子回路の直流電源ラインに発生するノイズを抑制するチップインダクタの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、チップインダクタは、デジタル機器等の小型・薄形化に伴い高密度実装回路基板からのノイズを抑制するノイズ対策部品として用途が拡大されている。
【0003】
従来のチップインダクタの製造方法は、特開平7−192947号公報に、磁性材料中に導電材を供給し、押出し手段により成形して個片に切断し、研磨・低背化処理後、この個片を焼成し、対向する側面に側面電極を形成するものが開示されている。
【0004】
以下、従来のチップインダクタの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0005】
図5は従来のチップインダクタの断面図である。
図において、1はフェライト材料とバインダ等の混合物等からなる磁性体である。2は磁性体の断面の略中央に設けられた銀等からなる金属線である。3は磁性体1の対向する側面に金属線2と電気的に接続するように設けられた銀等の金属からなる側面電極である。4は側面電極3を覆うように設けられたニッケルめっき層である。5はニッケルめっき層4を覆うように設けられた半田層である。
【0006】
以上のように構成された従来のチップインダクタの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0007】
図6、図7は従来のチップインダクタの製造工程を示す断面図である。
まず、図6(a)に示すように、粉末フェライト材料とバインダとを混練した磁性材料からなる磁性体シート6の中心部に銀等からなる金属線7を挿入して押出し手段により成形し、乾燥後、カッター等の切断部材で個片8に切断する。
【0008】
次に、図6(b)に示すように、個片8を研磨ドラム(図示せず)内に研磨材と共に投入し、表面を研磨処理によって面取りして中間積層体9を形成する。
【0009】
次に、図6(c)に示すように、中間積層体9を焼成炉に入れて約1200℃まで加熱すると、約900℃において磁性体シート6は収縮し始め、最終的にはもとの体積の約15%収縮する。このため、金属線7が磁性体シート6から突出された積層体10が形成される。
【0010】
次に、図7(a)に示すように、磁性体シート6から突出した金属線7を、積層体10の側面に沿って折曲げて低背化処理し、積層体10の対向する側面に金属線7と電気的に接続するように銀等の金属ペーストで一対の側面電極11を形成する。
【0011】
最後に、図7(b)に示すように、一対の側面電極11を覆うように、電極ニッケルめっき浴によりニッケルめっき層12を形成した後、ニッケルめっき層12を覆うように、電極めっき手段により半田層13を形成して従来のチップインダクタを製造していた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の製造方法では、個片8を研磨ドラムに投入して研磨処理する際、個片8の表面は面取りされるが、金属線7は磁性体シート6よりも硬く短時間で所望の大きさまでには潰れないため、積層体10から突出した金属線7を折曲げて低背化する必要があり、低背化処理するための工程が多くなるという課題を有していた。
【0013】
上記課題を解決するために本発明は、積層体から突出した金属線を折曲げることなく短時間で低背化処理し、量産化に適したチップインダクタの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、焼成された積層体を研磨材を用いてバレル研磨するのと同時に積層体から突出した金属線を押し潰す工程を有するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、第1の磁性体シートの上面の中央に金属線を固着する工程と、前記第1の磁性体シートの上面に固着された前記金属線を覆うように前記第1の磁性体シートと同サイズの第2の磁性体シートを重ねて積層体を形成し焼成する工程と、焼成された前記積層体を研磨材を用いてバレル研磨するのと同時に前記積層体から突出した前記金属線を押し潰す工程と、前記積層体の対向する端面に前記金属線と電気的に接続するように端面電極を形成する工程とを有するものである。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1の研磨材の体積が、0.001〜1cm3であるものである。さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1の研磨材の比重が、1.0〜2.5g/cm 3 であるものである。
【0017】
上述した請求項により、積層体から突出した金属線を折曲げることなく低背化し、量産化に適するという作用を有するものである。
【0018】
また、比重が1.0〜2.5g/cm3の研磨材を用いてバレル研磨するため、積層体から突出した金属線を折曲げることなく、短時間で低背化処理することができるという作用を有するものである。
【0019】
以下、本発明の一実施の形態におけるチップインダクタの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1(a)は本発明の一実施の形態におけるチップインダクタの内部を透視した斜視図、図1(b)は同A−A断面図である。
【0021】
図において、21はフェライト等からなる第1の磁性体シートである。22は第1の磁性体シート21の上面の略中央に固着された銅、銀または銀パラジウム等からなる金属線である。
【0022】
23は第1の磁性体シート21の上面の金属線22を覆うように設けられたフェライト等からなる第2の磁性体シートである。24は金属線22を介して第1、第2の磁性体シート21,23とを一体成形してなる積層体である。25は積層体24の対向する側面に金属線22と電気的に接続するように設けられた銀等からなる一対の側面電極である。
【0023】
以上のように構成された本発明の一実施の形態におけるチップインダクタの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図2、図3は本発明の一実施の形態におけるチップインダクタの製造工程を示す斜視図である。
【0025】
まず、図2(a)に示すように、支持体31の上面に、Ni−Zn−Cu系等からなるフェライト粉末に樹脂等を加えて混練した磁性体ペーストを、ドクターブレード法、押出し成形法等でシート状にし、第1の磁性体シート32を作製する。
【0026】
次に、図2(b)に示すように、第1の磁性体シート32の上面に、直径が約0.1mmで銅、銀または銀パラジウム等からなる金属線33を、金属線33の端部34が第1の磁性体シート32からはみ出すように、かつフェライトの収縮率を考慮して約1.5mm間隔で固着する。
【0027】
次に、図2(c)に示すように、第1の磁性体シート32に固着された金属線33を覆うように第1の磁性体シート32と同サイズの第2の磁性体シート35を重畳し、約50〜100℃に加熱しながら、約100kg/cm2の圧力で加圧し、積層シート36を形成する。
【0028】
次に、図2(d)に示すように、積層シート36と、積層シート36から突出した金属線33の端部34とを超硬刃等を用いて所定のサイズになるように縦横に裁断し、図3(a)に示すように、この内部の略中央に金属線41を有する中間積層体42を形成する。
【0029】
次に、図3(b)に示すように、前工程で得られた中間積層体42を焼成炉に入れて約920℃で焼成し、積層体43を形成する。この際、焼成により金属線41が約1%収縮するのに対し、中間積層体42中に含まれるフェライトは約17%収縮するため、積層体43は、内部の金属線41が側面からそれぞれ約0.2mm突出した形状となる。
【0030】
次に、前工程で得られた積層体43を内壁がゴムまたはウレタン製で内容積が1000cm3のポット(図示せず)に、比重が約1.0〜2.5g/cm3で1個当たりの体積が約0.001〜1cm3/個である研磨材を約400cm3と、研磨補助材としての炭化珪素等の粉末と、純水を約400cm3とを投入する。さらに、このポット内に積層体43を10万個投入し、回転数を約150〜200r.p.mとして約30分間回転させた後、積層体43をポットから取り出して、十分に洗浄・乾燥し、図3(c)に示すように、積層体43の角部44が丸みをおびるようにバレル研磨する。このとき、突出した金属線41は、研磨時に側面と平行になるように押し潰され、突出部45は約0.03mmであり、積層体43の側面は、ほぼ平坦になる。
【0031】
最後に、図3(d)に示すように、前工程で得られた積層体43の対向する側面に、金属線41と電気的に接続するように銀等の金属ペーストを印刷またはディップ塗布等により側面電極46を形成するものである。
【0032】
以下、上述した製造方法におけるバレル研磨の条件について詳細に説明する。ここで、バレル研磨における低背化処理のための積層体の角部の面取り量は、0.05mm以内とする。これは、低背化処理のための面取り量が0.05mm以上になると、この積層体から形成されたチップインダクタを基板等に実装する際、チップ立ち等の不具合が生じるので好ましくないためであり、面取り量を0.005mm以内にするためには、バレル研磨時間は3時間以内が良い。また、研磨材の比重が1.0g/cm3未満では、研磨の際に投入する純水に浮いてしまうため、研磨の効果がほとんどないことから、研磨材の比重は1.0g/cm3以上とする。
【0033】
図4はバレル研磨する工程における研磨材の比重と研磨に必要な時間との関係を表した図であり、研磨材には体積が約65.5×10−3cm3のものを用いた。
【0034】
図より明らかなように、研磨材の比重が1.0g/cm3未満の場合は、研磨の効果が少なく、3時間以上バレル研磨を行っても、低背化処理のための面取り量である0.005mmと比較してほとんど面取り量がなく、金属線も十分に潰れないため、低背化することができない。また、研磨材の比重が2.5g/cm3以上のものでは、研磨に必要な時間は約15分であり、ほぼ一定となるが、研磨材の比重が2.5g/cm3を越えると、面取り量が0.005mmと比較して多くなりすぎるため、比重は2.5g/cm3以下が良い。したがって、研磨材の比重が1.0〜2.5g/cm3であるものは、面取り量と研磨時間との条件を備え、低背化できるものである。
【0035】
また、(表1)はバレル研磨に用いる研磨材の比重と体積とを変えて研磨に必要な時間を比較した表である。
【0036】
【表1】
【0037】
(表1)から明らかなように、研磨材の体積が1.0×10−3cm3未満および1000.0×10−3cm3より大きいものは、研磨に要する時間が3時間より多くかかるため、低背化処理のための面取り量である0.005mmと比較して面取り量を多くしてしまう。面取り量に影響を与えない3時間以内で研磨できるものは、研磨材の体積が1.0×10−3cm3以上1000.0×10−3cm3以下の範囲にあるものである。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明は、積層体から突出した金属線を折曲げることなく短時間で低背化処理し、量産化に適したチップインダクタの製造方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の一実施の形態におけるチップインダクタの内部を透視した斜視図
(b)同A−A断面図
【図2】同製造工程を示す斜視図
【図3】同製造工程を示す斜視図
【図4】同要部であるバレル研磨する工程における研磨材の比重と研磨に必要な時間との関係を示す図
【図5】従来のチップインダクタの断面図
【図6】同製造工程を示す断面図
【図7】同製造工程を示す断面図
【符号の説明】
21 第1の磁性体シート
22 金属線
23 第2の磁性体シート
24 積層体
25 側面電極
Claims (3)
- 第1の磁性体シートの上面の中央に金属線を固着する工程と、前記第1の磁性体シートの上面に固着された前記金属線を覆うように前記第1の磁性体シートと同サイズの第2の磁性体シートを重ねて積層体を形成し焼成する工程と、焼成された前記積層体を研磨材を用いてバレル研磨するのと同時に前記積層体から突出した前記金属線を押し潰す工程と、前記積層体の対向する端面に前記金属線と電気的に接続するように端面電極を形成する工程とからなるチップインダクタの製造方法。
- 研磨材の体積は、0.001〜1cm3である請求項1記載のチップインダクタの製造方法。
- 研磨材の比重は、1.0〜2.5g/cm 3 である請求項1記載のチップインダクタの製造方法。
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