JP3606265B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
非水電解質二次電池のうち最も実用化が進んでいるものとしては、リチウムイオン二次電池がある。その正極活物質として多くは、従来、リチウムマンガン系複合酸化物が使用されていたが、これはエネルギー密度が比較的低いという問題がある。そこで、種々の正極活物質が開発され、なかでも例えばリチウムニッケルコバルト系複合酸化物が、高エネルギー密度を備え、かつ長寿命であるために、近年、脚光を浴びている。ところが、このリチウムニッケルコバルト系複合酸化物は熱に対して不安定なため、それを正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、リチウムマンガン系複合酸化物を使用したものに比べて、安全性が低くなるという問題があった。
【0003】
そこで、これら2種の正極活物質を混合して使用することで、ある程度のエネルギー密度と安全性との両立を狙った構造も提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の構造で熱的安定性が高いリチウムマンガン系複合酸化物の混合比を高めても、その分、エネルギー密度が低下するだけで、予想されるほどに安全性が改善されないというのが実情であった。
【0005】
その理由は、次の通りであると考えられる。例えば、金属製の釘などの異物がリチウムイオン二次電池に突き刺さった場合には、電池内部で異物による短絡が起り、その近くで電池内の活物質が局所的に加熱される。その活物質として、リチウムニッケルコバルト系複合酸化物とリチウムマンガン系複合酸化物とを混合して用いた場合であっても、それぞれの活物質は独立した粒子として存在しているから、熱安定性の低いリチウムニッケルコバルト系複合酸化物が熱分解を始めてしまうのである。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、安全性に優れた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、正極集電体に正極合剤層を配してなる正極板と負極板とを積層して構成された発電要素を備えた非水電解質二次電池において、前記正極合剤層は第1の正極活物質を含有する第1正極合剤層と前記第1の正極活物質よりも示差走査熱量測定法による発熱開始温度が高い第2の正極活物質を含有する第2正極合剤層からなるとともに、前記発電要素において最も外側となる前記正極合剤層を前記第2正極合剤層とし、かつ、前記正極集電体にはその一方の面に前記第1正極合剤層が形成され、他方の面に前記第2正極合剤層が形成されることを特徴とする。
【0009】
なお、前記第2正極合剤層に含まれた正極活物質を、スピネルマンガン酸リチウムである構成とすれば、示差走査熱量測定法による発熱開始温度が高く、発熱量の小さい正極活物質を用いることになるから、電池の安全性をより向上できる。
【0010】
さらに、前記第1正極合剤層に含まれた正極活物質を、層状構造を有し一般式LiaNibCocMdO2(Mは、Mg,Al,Ti,W,Moから選ばれる少なくとも一種の元素であり、0.95≦a≦1.05、0.5≦b≦0.9、0.1≦c+d≦0.5、0.03≦d≦0.1)で示されるリチウム含有複合酸化物である構成とすれば、エネルギー密度の大きい活物質を用いているから、電池全体のエネルギー密度を向上させることができる。
【0011】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、正極合剤層は第1の正極活物質を含んだ第1正極合剤層と第2の正極活物質を含んだ第2正極合剤層とからなっている。そして、第1の正極活物質より示差走査熱量測定法(以下、DSCと略す)による発熱開始温度が高い、すなわち熱分解しにくい第2の正極活物質を含んだ第2正極合剤層が発電要素の最も外側の正極合剤層となっている。
【0012】
このため、釘など、金属製の異物が発電要素に刺さる場合、その異物が最初に第2の正極活物質に接触して、短絡を引き起こす。この際、加熱されるのは熱分解しにくい第2の正極活物質だから、電池の安全性を向上させることができる。
【0013】
また、正極集電体はその一方の面に第1正極合剤層が形成され、他方の面に第2正極合剤層が形成されているから、第1正極合剤層と第2正極合剤層とを確実に隔てることができ、第1正極合剤層と第2正極合剤層とが混ざることが無い。よって、電池の安全性をより向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
以下、本発明にかかる非水電解質二次電池であり、そのケースが負極端子を兼ねている第1実施形態について、図1ないし図3を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1には、完成形態のリチウムイオン二次電池1(本発明の非水電解質二次電池に該当する。)を破断して示す。このリチウムイオン二次電池1には、例えば金属により円筒状に形成されたケース41と、その内部に収容される発電要素40とが備えられている。
【0016】
ケース41は、有底の円筒容器状に形成された金属製の電池ケース42と、略円盤状に形成されてこの電池ケース42の開放口を封止する金属製のキャップ43とで構成されている。電池ケース42内には、発電要素40が、その上下に円盤状の絶縁板44を配した状態で収容されている。そして、この電池ケース42の開放口には、キャップ43が封口ガスケット45を介してかしめつけられている。また、ケース41の内部には、例えばエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びジメチルカーボネート(DMC)を2:1:1の割合に混合した混合液に1mol/lの六フッ化リン酸リチウムを添加した非水電解液が注入されている。
【0017】
発電要素40は、帯状の正極板10と負極板20とを、セパレータ30を介して重ね合わせ、巻回することで、渦巻き状に構成されている。
【0018】
負極板20は、例えば厚さ12μmの銅箔からなる負極集電体22の両面に、負極合剤層23が形成されたものである。
【0019】
負極合剤層23は、負極集電体22の両面において長さ方向の一方の端部からやや内側までの領域を除く全面に形成されている。この負極合剤層23は、グラファイト粉末などの負極活物質を、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とともに混練してペースト状とした負極合剤を、負極集電体22の両面に塗布、乾燥し、ロールプレス機により圧延することにより形成されている。
【0020】
また、負極板20は負極集電体22において負極合剤層23が形成されていない領域の負極集電体22には負極リード21が接続されている。この負極リード21の先端部は、負極板20から下方へ突出され、負極端子としての役割を果たす電池ケース42の底部に接続されている。
【0021】
一方、正極板10は、例えば厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔からなる正極集電体12上に、正極合剤層13が形成されたものである。
【0022】
正極合剤層13は、正極集電体12の両面において長さ方向の一方の端部からやや内側までの領域を除く全面に形成されている。この正極合剤層13は、正極合剤ペーストを、正極集電体12の両面に塗布、乾燥し、ロールプレス機により圧延することにより形成される。
【0023】
また、正極板10には正極集電体12において正極合剤層13が形成されていない領域に正極リード11が接続されている。この正極リード11の先端部は、正極板10から上方へ突出され、正極端子の役割を果たすキャップ43に接続されている。
【0024】
ここで、正極合剤層13は、第1正極合剤層13Aと第2正極合剤層13Bとからなり、正極集電体12において一方の面に第1正極合剤層13Aが形成され、他方の面に第2正極合剤層13Bが形成されている。この第1正極合剤層13Aは、リチウム含有ニッケルコバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2O2)やコバルト酸リチウム(LiCoO2)などの第1の正極活物質、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤、アセチレンブラックなどの導電材を添加して調製した正極合剤ペーストを正極集電体12に塗布することにより形成されている。
【0025】
第1の正極活物質としては、上記化合物の他に、リチウム酸ニッケル(LiNiO2)や、層状構造を有し一般式LiaNibCocMdO2(Mは、Mg,Al,Ti,W,Moから選ばれる少なくとも一種の元素であり、0.95≦a≦1.05、0.5≦b≦0.9、0.1≦c+d≦0.5、0.03≦d≦0.1)で示されるリチウム含有複合酸化物を用いることができる。
【0026】
また、第2正極合剤層13Bは、正極活物質として第2の正極活物質を用いる以外、第1正極合剤層13Aと同様に形成されている。第2の正極活物質は第1の正極活物質よりもDSCにおける発熱開始温度が高い正極活物質であり、例えば、LiNi0.8Co0.2O2、LiCoO2及びLiNiO2などよりDSCにおける発熱開始温度が高いスピネルマンガン酸リチウム(LiMn2O4)を用いることができる。
【0027】
ここで、第1の正極活物質の例としてLi0.5CoO2及びLi0.3NiO2について、第2の正極活物質の例としてLi0.3Mn2O4についてDSC測定を行った結果のチャートを図2に示す。なお、リチウムイオン二次電池1に用いられる正極活物質は、含有するリチウムイオンが充電に伴って減少すると不安定になることが知られているため、充電状態に近いリチウム含有量の正極活物質を用いて測定を行っている。このチャートより、Li0.3NiO2(破線)、Li0.5CoO2(一点鎖線)及びLi0.3Mn2O4(実線)の発熱開始温度は、210℃、220℃及び320℃とそれぞれ異なっており、特にLi0.3Mn2O4の発熱開始温度が最も高いことがわかる。よって、第2の正極活物質として用いられるLi0.3Mn2O4は第1の正極活物質として用いられるLi0.3NiO2及びLi0.5CoO2よりもDSCによる発熱開始温度が高く、熱安定性が高いと言える。
【0028】
また、図2中の各正極活物質の発熱量を表1に示す。この発熱量は各正極活物質について、それぞれのDSC曲線におけるベースラインからのピーク面積に相当し、Li0.5CoO2にあっては、二つのピークを含んでいる。表1から、Li0.5CoO2及びLi0.3NiO2の発熱量に対して、Li0.3Mn2O4の発熱量が小さくなっていることがわかる。よって、第1の正極活物質として用いられるLi0.3NiO2及びLi0.5CoO2よりも第2の正極活物質として用いられるLi0.3Mn2O4は発熱量の点からも熱安定性が高いと言える。
【0029】
【表1】
【0030】
本実施形態において、発電要素40の巻回状態は以下のようである。負極板20は、発電要素40の最外周となるように巻回されており、正極板10は、外周面側が第2正極合剤層13Bとなるように巻回されている。本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池1内部の積層状態を、図3の部分断面図(図1の円X内部)に示す。リチウムイオン二次電池1は、その外部から内部(図中では左から右)へ向かって、電池ケース42、セパレータ30、負極板20、セパレータ30、正極板10、セパレータ30、………の順に積層されている。
【0031】
ここで、正極板10の外周面(左側面)には、第2正極合剤層13Bが形成され、正極板10の内周面(右側面)には第1正極合剤層13Aが形成されているから、発電要素40の最も外側となる正極合剤層13は第2正極合剤層13Bとなっている。
【0032】
上記構成のリチウムイオン二次電池1に金属製の釘などを刺した場合、釘Aが負極板20と電気的に接続されている電池ケース42を突き破り、負極板20に達する(図3の(B))。この時点では、釘Aが接触している電池ケース42及び負極板20は同じ電位だから、釘Aには電流が流れない。さらに釘Aがリチウムイオン二次電池1に侵入すると、セパレータ30を突き破り正極板10の外周側にある第2正極合剤層13Bに到達する(図3の(C))。このときはじめて、釘Aにより負極板20と正極板10とが短絡して大きな電流が流れる。
【0033】
本実施形態において、発電要素40の最も外側にある正極合剤層13は、正極板10の外周面にある第2正極合剤層13Bであり、この層に短絡による電流が最初に流れて最も加熱される。この第2正極合剤層13Bには、スピネルマンガン酸リチウム等の熱安定性の高い第2の正極活物質が含まれているから、電池の安全性が向上する。
【0034】
<第2実施形態>
次に第2実施形態について図1及び図4を用いて説明する。第1実施形態と同じ構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
本実施形態において、発電要素40は第1実施形態とは逆に正極板10が最外周となっており、正極板10は内周面側が第2正極合剤層13Bとなるように巻回されている。本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池1内部の積層状態を、図4の部分断面図(図1の円X内部)に示す。リチウムイオン二次電池1は、その外部から内部(図中では左から右)へ向かって、電池ケース42、セパレータ30、正極板10、セパレータ30、負極板20、セパレータ30、………の順に積層されている。
【0036】
ここで、正極板10の内周面(右側面)には、第2正極合剤層13Bが形成され、正極板10の外周面(左側面)には第1正極合剤層13Aが形成されている。そして、正極板10は発電要素40の最外周にあり、正極板10の外周面には正極合剤層13が形成されていないので、本実施形態における発電要素40の最も外側となる正極合剤層13は、正極板10内周面にある第2正極合剤層13Bとなっている。
【0037】
上記構成のリチウムイオン二次電池1に金属製の釘などを刺した場合、第1実施形態の電池と同様に、釘Aが正極板10と電気的に接続されている電池ケース42を突き破り、正極板10に達する(図4の(D))。この時点では、釘Aが接触している電池ケース42及び正極板10は同じ電位だから、釘Aには電流が流れない。さらに釘Aがリチウムイオン二次電池1に侵入すると、セパレータ30を突き破り負極板20の負極合剤層23に到達する(図4の(E))。このときはじめて、釘Aにより正極板10と負極板20とが短絡して大きな電流が流れる。
【0038】
本実施形態において、発電要素40の最も外側にある正極合剤層13は、正極板10の内周面にある第2正極合剤層13Bであり、この層に短絡による電流が最初に流れて最も加熱される。この第2正極合剤層13Bには、スピネルマンガン酸リチウム等の熱安定性の高い第2の正極活物質が含まれているから、電池の安全性が向上する。
【0039】
【実施例】
1.電池の作製
<実施例1>
第1実施形態にかかるリチウムイオン二次電池1を作製した。その第1正極合剤層13Aに含有される第1の正極活物質として、リチウム含有ニッケルコバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2O2)を用い、発電要素40の最も外側となる第2正極合剤層13Bに含有される第2の正極活物質としてスピネルマンガン酸リチウム(LiMn2O4)を用いた。なお、DSCによる発熱開始温度はLiNi0.8Co0.2O2よりLiMn2O4の方が高くなっている。公称容量は400mAhとした。
【0040】
<比較例1>
実施例1とは正極板10の両面が逆になるように正極板10を巻回して発電要素40を構成し、他は実施例1と同様にしてリチウムイオン電池1を作製した。従って比較例1では、発電要素40の最も外側の正極合剤層13である第2正極合剤層13BにLiNi0.8Co0.2O2が含まれ、その正極板10の他方の面に形成された第1正極合剤層13AにはLiMn2O4が含まれている。
【0041】
<実施例2>
第1正極合剤層13Aに含有される第1の正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池1を作製した。なお、DSCによる発熱開始温度はLiCoO2よりLiMn2O4の方が高くなっている。
【0042】
<比較例2>
第2正極合剤層13Bに含有される正極活物質としてLiCoO2を用いた以外は、比較例1と同様にしてリチウムイオン二次電池1を作製した。
【0043】
<実施例3>
第2実施形態にかかるリチウムイオン二次電池1を作製した。その第1正極合剤層13Aに含有される第1の正極活物質として、LiNi0.8Co0.2O2を用い、発電要素40の最も外側となる第2正極合剤層13Bに含有される第2の正極活物質としてLiMn2O4を用いた。公称容量は400mAhとした。
【0044】
<比較例3>
実施例3とは正極板10の両面に含まれる正極活物質が逆になる正極板10を作製して巻回することにより発電要素40を構成し、他は実施例3と同様にしてリチウムイオン電池1を作製した。従って、比較例3では、発電要素40の最も外側の正極合剤層13である第2正極合剤層13BにLiNi0.8Co0.2O2が含まれ、正極板10の他方の面に形成された第1正極合剤層13AにはLiMn2O4が含まれている。
【0045】
<実施例4>
第1正極合剤層13Aに含有される第1の正極活物質として、LiCoO2を用いた以外は、実施例3と同様にしてリチウムイオン二次電池1を作製した。
【0046】
<比較例4>
第2正極合剤層13Bに含有される活物質としてLiCoO2を用いた以外は、比較例3と同様にしてリチウムイオン二次電池1を作製した。
【0047】
2.安全性試験
安全性の確認のために釘刺し試験を行った。実施例1ないし4、比較例1ないし4のリチウムイオン二次電池1それぞれ3個について、400mAで4.2Vまで定電流充電を行い、その後4.2Vで定電圧充電を行った。定電流充電の開始から、定電圧充電の終了までを3時間とした。その後、リチウムイオン二次電池1に金属製の釘を刺して電池の状態を観察した。
【0048】
実施例1、比較例1、実施例2及び比較例2の実験結果を表2に、実施例3、比較例3、実施例4及び比較例4の実験結果を表3に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
ここで、表2及び表3中の「発熱」「漏液」「発煙」は、それぞれ釘刺し試験を行った後の電池の状態を表している。「発熱」は、釘刺し後に発熱のみを示した状態を表し、「漏液」は、発熱に加えて非水電解液が漏出する状態を表している。「発煙」は、発熱や漏液に加えて電池から気体が噴出した状態を表しており、この順に危険な状態を表している。また、表中の数は、それぞれの状態に至った電池の個数を表している。
【0052】
表2及び表3から、発電要素40の最も外側の正極合剤層13である第2正極合剤層13BにLiNi0.8Co0.2O2またはLiCoO2が含まれている比較例1ないし比較例4と比較して、第2正極合剤層13BにLiNi0.8Co0.2O2及びLiCoO2よりDSC発熱開始温度が高く、熱安定性の高いLiMn2O4が含まれている実施例1ないし実施例4が、より安全になっていることがわかる。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0054】
(1)上記第1実施形態では電池ケース42が負極板20に接続されている例を示し、上記第2実施形態では電池ケース42が正極板10に接続されている例を示したが、電池ケース42を正極板10と負極板20とのどちらにも接続しない構成とすることもできる。なお、電池ケース42を電極に接続しない場合には、安全性向上のために発電要素40の最外周は正極板10であることが望ましい。また、電池ケース42として、樹脂フィルムなどにより構成された絶縁体のケースを用いることもできる。
【0055】
(2)上記各実施形態では円形巻回型の発電要素40を備えたリチウムイオン二次電池1について示したが、発電要素40の形状は、これに限定されない。例えば、発電要素の形状として断面が長円形巻回型や非円形巻回型、あるいはセパレータを介して平板型極板を積層するスタック型や、セパレータを介してシート状極板を折りたたんで積層する型など、あらゆる形状の発電要素を使用することができる。
【0056】
(3)上記各実施形態では、正極板10の一方の面の正極合剤層13全てを第2正極合剤層13Bとして、その正極板10を巻回することにより発電要素40を構成している例について示しているが、第2正極合剤層13Bの配置はこれに限られない。例えば、発電要素40を巻回した状態で、最も外側となる部分の正極合剤層13のみを第2正極合剤層13Bとしてもよい。
【0057】
(4)上記各実施形態では、第1の正極活物質としてLiNiO2、LiCoO2、LiNi0.8Co0.2O2、及び層状構造を有し一般式LiaNibCocMdO2(Mは、Mg,Al,Ti,W,Moから選ばれる少なくとも一種の元素であり、0.95≦a≦1.05、0.5≦b≦0.9、0.1≦c+d≦0.5、0.03≦d≦0.1)で示されるリチウム含有複合酸化物を用い、第2の正極活物質としてスピネルマンガン酸リチウムを用いているが、第1及び第2の正極活物質はこれらに限られない。
例えば、第1の正極活物質としてLiNi0.5Mn1.5O4やLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2などを使用でき、第2の正極活物質としてLiMnO2やLiCo0.85Fe0.15O2などを使用できる。
さらに、第1の正極活物質の発熱開始温度と第2の正極活物質の発熱開始温度は相対的なものであるので、第2の正極活物質として挙げたもの(例えば、スピネルマンガン酸リチウム)を第1の正極活物質として、その活物質より発熱開始温度の高い正極活物質(例えば、LiFePO4)とともに用いることが可能である。また、第1の正極活物質として挙げたもの(例えば、LiCoO2)を第2の正極活物質として用いて、その活物質より発熱開始温度の低い正極活物質(例えば、LiNi0.8Co0.2O2)とともに用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る非水電解質二次電池を破断した斜視図
【図2】同じく非水電解質二次電池に用いられる正極活物質の発熱特性を示す示差走査熱量測定結果のチャート
【図3】本発明の第1実施形態に係る非水電解質二次電池の積層状態と異物の侵入過程を示す模式的部分断面図
【図4】本発明の第2実施形態に係る非水電解質二次電池の積層状態と異物の侵入過程を示す模式的部分断面図
【符号の説明】
1…リチウムイオン二次電池
10…正極板
12…正極集電体
13…正極合剤層
13A…第1正極合剤層
13B…第2正極合剤層
20…負極板
40…発電要素
Claims (1)
- 正極集電体に正極合剤層を配してなる正極板と負極板とを積層して構成された発電要素を備えた非水電解質二次電池において、
前記正極合剤層は第1の正極活物質を含有する第1正極合剤層と前記第1の正極活物質よりも示差走査熱量測定法による発熱開始温度が高い第2の正極活物質を含有する第2正極合剤層からなるとともに、
前記発電要素において最も外側となる前記正極合剤層を前記第2正極合剤層とし、
かつ、前記正極集電体にはその一方の面に前記第1正極合剤層が形成され、他方の面に前記第2正極合剤層が形成されることを特徴とする非水電解質二次電池。
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