JP3606253B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
本発明は、半導体チップの回路基板への実装面積を極小化するにあたって、半導体チップと回路基板とを金属バンプを用いて電気的に接続することによって行うフリップチップ実装に用いられるエポキシ樹脂組成物に関するものである。より詳しくは、金属バンプによる接続と同時に硬化することによって、半導体装置の製造工程を短縮化することができる、いわゆるリフロー同時硬化封止材又はノーフロー封止材と呼ばれるエポキシ樹脂組成物、及びこのエポキシ樹脂組成物を用いて製造される半導体装置に関するものである。
【従来の技術】
従来、樹脂などでパッケージングされた半導体チップを回路基板へ実装する際には、半田付けが広く利用されていたが、その後は電子機器の小型化を進めるために、半導体チップをパッケージに収容せずに直接回路基板に搭載するようにしたベアチップ実装が考え出された。そしてこのベアチップ実装の初期においては、チップオンボード(COB)と呼ばれる方式が採用されていた。すなわちこの方式は、半導体チップの回路面の裏側を回路基板に接着し固定すると共に、半導体チップの回路と回路基板の電極とを金線などのワイヤーでワイヤーボンディングしてから、半導体チップと金属ワイヤーとを樹脂封止するというものである。その後、半導体チップの回路基板への実装面積の極小化をさらに進めるために、フリップチップ実装と呼ばれる方式が登場した。この方式は、半導体チップの回路と回路基板の電極とを金属バンプを用いて電気的に接続するというものである。具体的には、例えば、予め半導体チップの回路の端子電極上に密着金属や拡散防止金属の蒸着膜を形成し、さらにその上にメッキにより半田の突起電極を形成しておく。このようにして形成された突起電極が金属バンプである。そしてこの金属バンプを回路基板の電極に対向させて半導体チップをフェースダウンにし、高温に加熱することによって、金属バンプを形成している半田を回路基板の電極に融着させ、半導体チップを回路基板に実装するというものである。このような実装方式は、金属バンプによる接続後の機械的強度が強く、また接続が一括にできることなどから有効な方法であるとされている(例えば、工業調査会、1980年1月15日発行、日本マイクロエレクトロニクス協会編、『IC化実装技術』)。
また、C4(Controlled Collapse Chip Connection)と呼ばれるフリップチップ実装に関しては、米国特許5121190号や特開平6−61303号公報等に示されているように、半導体チップと回路基板(上記公報においては、チップ担体等と記載)とを接続するハンダ結合物の信頼性を確保するために、半導体チップと回路基板との間の間隙に封止材(上記公報においては、封入剤等と記載)を充填するようにしたハンダ相互結合物構造とその製造方法が提案されている。
また、OMB(Other Metal Bonding)と呼ばれる実装方式に関しては、例えば、半田で形成された金属バンプと、金で表面が形成された回路基板の電極とが接合されると共に、半導体チップと回路基板との間の隙間に液状の封止材が充填されて封止が行われている。
さらに上記のベアチップ実装以外のものとしては、例えば、チップスケールパッケージ(CSP)やボールグリッドアレイ(BGA)等のように、半導体チップと同程度の大きさを有する半導体パッケージを回路基板に実装するにあたって、多ピン化や高密度化を可能とするために、上記のような半導体パッケージに金属バンプを設け、回路基板と電気的に接続するようにした形式のものも増えてきている。
これらの先行技術において、液状の封止材が必要とされる最大の理由としては、半導体チップが回路基板に実装されて製造される半導体装置の温度サイクル性を高めるということが挙げられる。通常、半導体チップと回路基板との熱膨張係数は異なるものであり、従って、実使用条件下では金属バンプ付近に熱サイクルがかかり、これにより同じ付近に繰り返し剪断応力が働き疲労現象が起こるものである。そのため、封止材が用いられていない未封止の半導体装置においては、このようにして生じる応力を分散させることができず、容易に金属バンプにクラックなどが生じて破壊が起こるものである。これに対し、封止材により封止された半導体装置においては、この封止材が応力を分散させる働きを持つため、金属バンプの破壊が防止されるものである。
また近年、利用者が急増している携帯電話やパーソナルハンディフォンシステム(PHS)に代表される携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)には、CSPやBGA等の半導体パッケージが実装されているものであるが、このような携帯情報端末の使用環境を考慮すると、上記の半導体パッケージ等に落下衝撃力や折り曲げ応力等の動的応力がかかることは十分に考えられる。従って、このような動的応力によって金属バンプの破壊が起こらないようにするためにも、液状の封止材が必要とされるものである。
【発明が解決しようとする課題】
既述したように、半導体チップと回路基板とを金属バンプによって電気的に接続する際には、通常半田が用いられている。このため半田付け時においては、電気的な接続の信頼性を確保するために、半田の濡れ性を高めておく必要がある。そして、このような場合にはフラックスが使用され、金属表面の酸化膜除去などの処理が行われているものである。ここでフラックスとしては、アビエチン酸やピマル酸を主成分とする松ヤニ(ロジン)が代表的に用いられている。
しかしながら、フラックスは半田付け時においてのみ必要とされるものであって、それ以後の半導体装置の製造工程、例えば、封止材による封止の際に、フラックスが残留していると樹脂濡れ不良が発生するものである。また通常用いられているフラックスは、前述したような天然物であるために不純物を含有し、この不純物によって回路に腐食が引き起こされるものである。
このようなことから、半導体チップと回路基板とを金属バンプによって接合した後の工程で、フラックスを洗浄除去する工程が必要とされる。このような洗浄工程にあたって、過去においてはフレオン等の有機塩素系の溶剤が用いられていたが、この物質はオゾン層を破壊するために近年においては使用が回避されるようになった。そこで最近では、環境への負荷が小さい水を洗浄媒体として使用することができる水溶性フラックスが選定されることが多くなった。しかしながら、このような水溶性フラックスとしては、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸が用いられており、これらのものも従来用いられていたフラックスと同様に、酸性であるため、洗浄を完璧に行わなければ回路腐食の原因となるものである。
一方、フラックスの選定と共に洗浄プロセスも、フラックスの除去に大きく影響する。例えば、洗浄プロセスとしては一般的に超音波洗浄が行われているものであるが、このような洗浄を強力に行うと、接合されている金属バンプが半導体チップや回路基板から外れてしまう場合がある。従って、金属バンプによる接合部に損傷を与えることなく、洗浄を行うということも重要である。
以上のように、半導体チップと回路基板とを金属バンプを介して半田付けにより行う接合においては、フラックスによる処理とその洗浄とに多くの工程が必要となると共に、技術的課題も多くフリップチップ実装のボトルネックになっているものである。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、フリップチップ実装の工程を簡素化するために、フラックス除去の工程を不要とし、半田で形成される金属バンプによる接続と封止材の硬化とを同時に行うことができると共に、硬化物の温度サイクル性、フィレット性、耐湿信頼性に優れたエポキシ樹脂組成物、及びこのエポキシ樹脂組成物を用いて製造される半導体装置を提供することを目的とするものである。またCSPやBGA等の実装に用いられる場合でも、上記と同様の特性を有すると共に衝撃や曲げなどの動的強度に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、フラックス活性剤を必須成分とする室温で液状のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤として、下記式(A)及び(B)で表される酸無水物を含有して成ることを特徴とするものである。
【化5】
また請求項2の発明は、請求項1において、式(B)で表される酸無水物を全硬化剤の各当量の合計量に対して5〜50当量%含有して成ることを特徴とするものである。
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、エポキシ樹脂として、下記式(C)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂と下記式(D)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち少なくとも一方を含有して成ることを特徴とするものである。
【化6】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、無機充填材として、最大粒径が0.5〜5μmであり、かつ窒素吸着法によるBET比表面積が30m2/g以下である、球状非晶質シリカ又はアルミナのうち少なくとも一方をエポキシ樹脂組成物全量に対して真比重換算で40体積%以下含有して成ることを特徴とするものである。
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、フラックス活性剤として、フェニルアラニンと下記式(E)で表されるジカルボン酸のうち少なくとも一方を含有して成ることを特徴とするものである。
【化7】
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、下記式(F)で表される化合物又はポリエステル酸アマイドアミン塩のうち少なくとも一方をエポキシ樹脂組成物全量に対して0.01〜1質量%含有して成ることを特徴とするものである。
【化8】
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、エポキシ樹脂組成物中における固形分の最大粒子径が5μm以下であることを特徴とするものである。
また請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、全成分をビーズミル又はバスケットミルによって分散混合して成ることを特徴とするものである。
また請求項9に係る半導体装置は、請求項1乃至8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止して成ることを特徴とするものである。
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、フラックス活性剤を必須成分とするものであって、室温で液状のものである。以下、上記各成分の詳細について順に説明する。
本発明においてエポキシ樹脂としては、室温におけるエポキシ樹脂組成物が液状となれば、特に限定されるものではなく、市販されている液体エポキシ樹脂や固体エポキシ樹脂を適宜使用することができる。固体エポキシ樹脂を使用する場合は、有機溶剤などに溶解させるなどして液状のエポキシ樹脂組成物を調製することができる。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができ、これらの中から1種のみ又は2種以上を選んで使用することができる。
特に上記のエポキシ樹脂の中では、上記式(C)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂と上記式(D)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち少なくとも一方をエポキシ樹脂組成物中に含有するのが好ましく、これによって硬化物の耐クラック性などの物性が高まり、温度サイクル性及び耐落下衝撃性を一層向上させることができるものである。
また本発明において硬化剤としては、上記式(A)及び(B)で表される酸無水物を用いるものである。ここで式(A)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基又は水素原子を表し、かつ、これらの基の炭素原子数の合計は6、水素原子数の合計は13となるものである。このような酸無水物は、分子式C10H16で示されるモノテルペンのうち炭素間二重結合を1分子内に3つ持ち、そのうち2つの二重結合が共役している化合物(以下、トリエンのモノテルペンという)と、無水マレイン酸とをDiels−Alder(ディールス・アルダー)反応により6員環化させて合成されるものである。従って、この6員環に結合しているR1〜R3は、トリエンのモノテルペン由来であると考えることができる。なお、トリエンのモノテルペンとは、モノテルペン類の中で環状構造を有しないものである。
例えばトリエンのモノテルペンとしては、下記式(G)で示されるミルセンを挙げることができるが、このミルセンは下記の化学反応式(I)で示されるように無水マレイン酸と反応し、式(A−1)(上記式(A)の具体例)で示される酸無水物が生成される。ここで、この酸無水物の6員環を形成する炭素原子のうち、4つのものには便宜上3〜6の番号を付け、以下では例えば番号3を付けた炭素原子を3位の炭素原子と表現し、各炭素原子を特定することとする。式(A−1)に示されるように、R1は炭化水素基であり4位の炭素原子に結合しており、このR1には炭素原子が6個、水素原子が11個含まれている。このときR2及びR3はいずれも水素原子に限定されるが、これらR2及びR3は、3位、5位、又は6位の炭素原子に結合しているいずれかの水素原子と考えることができる。従って、R1〜R3の炭素原子数の合計は6、水素原子数の合計は13となる。
【化9】
また上記とは別のトリエンのモノテルペンとしては、下記式(H)で示されるオシメンのβ型を挙げることができるが、このオシメンのβ型は下記の化学反応式(II)で示されるように無水マレイン酸と反応し、式(A−2)(上記式(A)の他の具体例)で示される酸無水物が生成される。この式(A−2)に示されるように、R1及びR2はいずれも炭化水素基であり、それぞれ3位及び4位の炭素原子に結合しており、R1とR2とに含まれる炭素原子は合わせて6個、水素原子は合わせて12個である。このときR3は水素原子に限定されるが、このR3は3位、5位、又は6位の炭素原子に結合しているいずれかの水素原子と考えることができる。従って、R1〜R3の炭素原子数の合計は6、水素原子数の合計は13となる。
【化10】
さらにまた上記とは別のトリエンのモノテルペンとしては、下記式(J)で示されるものを挙げることができるが、このものは下記の化学反応式(III)で示されるように無水マレイン酸と反応し、式(A−3)(上記式(A)のさらに他の具体例)で示される酸無水物が生成される。この式(A−3)に示されるように、R1〜R3はいずれも炭化水素基であり、それぞれ3位、4位及び6位の炭素原子に結合しており、R1〜R3の炭素原子数の合計は6、水素原子数の合計は13となる。
【化11】
上記の3例は、R1〜R3として炭化水素基が1個、2個、3個の場合を示したものであるが、天然物由来のテルペンはトリエン(炭素間二重結合を1分子内に3つ持つもの)であっても構造異性体が多く、純粋品として構造を1つに限定することは実際には困難である。そのため本発明に用いる式(A)で示される酸無水物としては、具体例として挙げた上記のトリエンのモノテルペンから生成されるもののみに限定されるものではない。
そして硬化剤として、式(A)及び(B)で表される酸無水物がエポキシ樹脂組成物中に含有されていると、このエポキシ樹脂組成物はフリップチップ実装において、いわゆるリフロー同時硬化封止材として、ボイドレスのような好適な特性を発現することができ、信頼性を高く得ることができるものである。しかもエポキシ樹脂組成物自体がフラックスとなり、金属酸化膜を取り除くという機能を得ることができるものである。これに対し硬化剤として、式(A)及び(B)で表される酸無水物以外のものを使用すると、このものがリフロー時における急激な加熱によって揮発し、ボイドが発生しやすくなるものである。ここでリフロー同時硬化材とは、半田をリフローさせる際の加熱により硬化する封止材をいう。式(A)及び(B)で表される酸無水物が上記のような好適な特性を発現する理由は今のところ明らかではないが、モノテルペンの構造がエポキシ樹脂組成物中の他の成分と相互に作用して影響しているものと推察される。従って、上記のリフロー同時硬化封止材としての特性は、従来の代表的な液状酸無水物であるメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(MHHPA)やメチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)だけでは実現することが不可能である。なお、式(A)及び(B)で表される酸無水物がエポキシ樹脂組成物中に含有されていることが必要であって、これが満たされていれば、上記のMHHPAやMTHPAなどのように1分子中に1個以上の無水酸基を有する酸無水物も硬化剤として併用することもできる。
また、式(B)で表される酸無水物を全硬化剤の各当量の合計量に対して5〜50当量%含有すると、硬化物の温度サイクル性を確実に向上させることができて好ましい。ここで、式(B)で表される酸無水物の当量%は、次のようにして求めることができる。すなわち複数種の硬化剤を使用する場合において、各硬化剤について、配合質量(g)÷硬化剤当量(g/eq)によって当量(eq)を求める。本発明においては硬化剤として酸無水物を使用しているため、硬化剤当量を酸無水物当量ともいう。そして各硬化剤について得られた当量を合計し、この合計量に対して式(B)で表される酸無水物の当量の割合を百分率で表すことによって、式(B)で表される酸無水物の当量%を求めることができるものである。なお、式(B)で表される酸無水物の当量%が上記の範囲を外れる場合、すなわち5当量%未満であると、硬化物の耐熱性が低下したり、硬化物の強度が低下したりするおそれがあり、逆に50当量%を超えると、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇したり、流動性が低下したり、金属バンプと回路基板の電極との接合不良が増加したりするおそれがある。
また本発明においては、既述のように式(A)及び(B)を含有するエポキシ樹脂組成物自体がフラックスとなるが、この機能を高めるための添加成分としてフラックス活性剤を使用するものである。フラックス活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、『溶接・接合便覧(溶接学会編)』に記載されているように、錫−鉛系半田用の半田付け時に使用されるロジンやセバシン酸を使用することができる。そして腐食等により耐湿信頼性の低下を引き起こさない範囲内において上記のようなフラックス活性剤を適宜使用することができるものであるが、本発明においては、フェニルアラニンと上記式(E)で表されるジカルボン酸のうち少なくとも一方をエポキシ樹脂組成物中に含有させるのが好ましい。これらのフラックス活性剤を式(A)及び(B)で表される酸無水物と同時にエポキシ樹脂組成物中に配合することによって、エポキシ樹脂組成物が硬化する過程においてフラックスの機能を高めることができると共に、硬化後において耐湿信頼性を確保することができるものであり、さらに温度サイクル性をも向上させることができるものである。
また本発明においては、無機充填材として、最大粒径が0.5〜5μmであり、かつ窒素吸着法によるBET比表面積が30m2/g以下である、球状非晶質シリカ又はアルミナのうち少なくとも一方をエポキシ樹脂組成物全量に対して真比重換算で40体積%以下含有することが好ましい。このように好ましい無機充填材として、最大粒径、窒素吸着法によるBET比表面積、及び真比重換算による体積%を上記のように限定するようにしたのは以下の通りである。
まず本発明において最大粒径とは、無機充填材をフルイにかけ、99質量%以上100質量%未満のものがフルイを通過した場合におけるフルイの網目の大きさとして定義されるものであるが、目開きが40μm程度以下になるとフルイ効率が著しく低下し、さらに10μm以下になるとフルイの入手も困難になるので、実際には粒度分布測定装置によって測定されたフルイ下累積分布(その粒子径以下に全体の何%の粒子が存在するかを示す分布)から、99%点の粒子径(この粒子径以下に全体の99%の粒子が存在する)を特定することで示される。そして無機充填材の最大粒径が0.5μm未満であると、充填材としては微細過ぎてエポキシ樹脂組成物の粘性・チクソ性が増し、金属バンプと回路基板の電極とが溶融一体化する際の障害となり、接合不良が増すおそれがあるため好ましくない。逆に最大粒径が5μmを超えると、充填材が金属バンプと回路基板の電極との間に挟まれスペーサーとなって、金属バンプと回路基板の電極とが溶融一体化する際の障害となり、接合不良が増すおそれがあり好ましくない。さらにリフロー半田付け時における加温によって樹脂が低粘度化し、比重の大きい充填材が沈降して、鉛直方向について充填材含有率の不均一が生じるおそれもあり好ましくない。
次に、窒素吸着法によるBET比表面積とは、窒素を基準の気体として用い、BET式により得る単分子層完結時の吸着量から求められる比表面積(単位質量当たりの表面積)のことをいうが、本発明においては球状非晶質シリカやアルミナ等の無機充填材のBET比表面積が30m2/gを超えると、粒径が数10nm以下のいわゆる超微粉成分が多くなり、エポキシ樹脂組成物の粘性・チクソ性が増し、金属バンプと回路基板の電極とが溶融一体化する際の障害となって、接合不良が増すおそれがあり好ましくない。BET比表面積の下限は、0.2m2/gとしているが、理論的には幾何計算を行うことにより求められる。すなわち、球状非晶質シリカの場合は、比重2.2、直径20μmの球とすると、0.14m2/gと求められ、一方、アルミナの場合は、比重3.96、直径20μmの球とすると、0.08m2/gと求められる。しかしながら、実際上、BET比表面積を0.2m2/gを下回って上記の幾何計算値に近づけようとすると、フルイ分け等の分級操作を湿式で実施した後に、この操作で使用した液体を乾燥したり、液体架橋した粉体(強固な凝集体)を解砕したりするなど微粉を徹底して除去する工程やそれに付随する工程が必要となって、著しいコストアップにつながり、現実的ではなくなるものである。
また本発明において真比重換算の体積%とは、充填材の配合質量÷充填材の真比重で得られる充填材の真体積(Vf)と、充填材以外の樹脂成分の配合質量÷その真比重で得られる充填材以外の真体積(Vr)とから、Vf÷(Vf+Vr)×100の式により求められる値のことをいう。そして無機充填材の含有率がエポキシ樹脂組成物全量に対して真比重換算で40体積%を超えると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、金属バンプと回路基板の電極とが溶融一体化する際の障害となり接合不良が増すおそれがあり好ましくない。
ここで、既述したように、球状非晶質シリカとアルミナとは混合して使用することができるが、このように比重の異なる充填材を併用する場合には、予め平均比重を求めておき、これをもとにして前述した式により、真比重換算の体積%を決定することができる。具体的には、n種類の充填材からなるものの平均比重は、各充填材の配合質量をWi、真比重di(iは1〜n)として、ΣWi/Σ(Wi/di)(i=1〜n)により求めることができる。
なお、球状非晶質シリカの粒子形状は、その名が示す通り球状であって、これによりエポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることができ、金属バンプと回路基板の電極との接合不良を低減することができるものである。一方、アルミナの粒子形状についても、球状非晶質シリカと同様の効果が得られることから、板状や破砕状のものよりも球状あるいは球状に近い正多面体状のものが好適である。
また、エポキシ樹脂組成物がα線で悪影響を受けるおそれのある半導体チップの表面に接触して使用される場合には、上記の球状非晶質シリカやアルミナとしては、ウラン(U)やトリウム(Th)などの放射性同位元素の含有率が少ないものを使用することが好ましい。このような場合における球状非晶質シリカやアルミナのUやThの含有率は、好ましくは0.5ppb以下であり、さらに好ましくは0.1ppb以下である。
また本発明においては、添加剤を使用することができる。添加剤としては、特に限定されるものではないが、上記式(F)で表される化合物又は数千〜数万の分子量のポリエステル酸アマイドアミン塩のうち少なくとも一方をエポキシ樹脂組成物全量に対して0.01〜1質量%含有することが好ましい。上記添加剤の含有率が0.01質量%未満であると、金属バンプと回路基板の電極との接合不良を低減することができないおそれがあり、逆に含有率が1質量%を超えると、上記の接合不良は悪化することはないが、耐湿信頼性やエポキシ樹脂組成物の貯蔵可能期間が短縮されるおそれがある。なお、上記添加剤の含有率は0.05〜0.5質量%であることが、より好ましい。
ここで、式(F)で表される化合物としては、アルキルポリエーテルアミンであり、ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリエチレングリコールラウリルアミン、ポリエチレングリコールステアリルアミン等を例示することができ、1分子中のエチレングリコールの基数が1〜10のものを用いることができる。これらの化合物は単独で使用しても良く、また2種類以上を併用しても良い。
そして式(F)で表される化合物やポリエステル酸アマイドアミン塩は、エポキシ樹脂組成物中において、式(A)及び(B)で表される酸無水物及びフラックス活性剤と共存することによって、金属バンプと回路基板の電極との接合不良の低減に顕著な効果を有するものである。この理由は今のところ明らかではないが、推察により以下の3点を挙げることができる。すなわち、1点目としては、フラックス活性剤の分散性を向上させてフラックスの機能を高めるということが考えられる。2点目としては、上記の化合物自身がフラックス機能を有しているということが考えられる。3点目としては、エポキシ樹脂組成物の超低剪断域の粘度を下げて金属バンプと回路基板の電極とが溶融一体化する際に樹脂の流動を起こし易くするということが考えられる。
さらにエポキシ樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて他の物質を配合することができる。このような物質としては、硬化促進剤、難燃剤、低弾性化剤、着色剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤等を例示することができる。
そして、均一な液状のエポキシ樹脂組成物を調製するにあたっては、一般的には前述した各成分を撹拌型の分散機で混合したり、3本ロールで分散混合したりすることによって行うことができる。このときエポキシ樹脂組成物中における固形分の最大粒子径は5μm以下であることが好ましい。最大粒子径とは、JISK 5600−2−5により定義されるものである。また固形分とは、有機物・無機物を含めた固体として存在している成分を意味し、この固形分の最大粒子径が5μmを超えると、極めて狭い隙間にエポキシ樹脂組成物が浸入しにくくなったり、金属バンプを介して半導体チップを回路基板に電気的に接続する際に支障が生ずるおそれがある。
また、エポキシ樹脂組成物を調製するにあたっては、ビーズミル又はバスケットミルと呼ばれる混合分散装置を用いることが好ましい。このように、エポキシ樹脂組成物を構成する全成分をビーズミル又はバスケットミルによって分散混合することにより、式(B)で表される酸無水物や式(E)で表されるジカルボン酸等の粉状の有機物の粉砕、また無機充填材を含む微粉成分の解砕、さらにそれらの均一分散を行い易くなり、エポキシ樹脂組成物中における固形分の最大粒子径を5μm以下にすることが容易になる。このことにより、金属バンプと回路基板の電極との接合不良の低減に顕著な効果を示すと共に硬化物の均一性が高まり、耐熱信頼性、温度サイクル性、耐湿信頼性及び耐落下衝撃性をより一層向上させることができるものである。このようにして得られたエポキシ樹脂組成物は、フリップチップ実装における封止材として用いることができる。
そして、上記のエポキシ樹脂組成物を用いて封止することによって、半導体装置を製造することができる。具体的には、まず金属バンプが形成された半導体チップの回路基板側の面、又は回路基板の半導体チップ側の面のうち少なくとも一方の面に上記のエポキシ樹脂組成物を塗布する。
ここで上記の半導体チップとしては、樹脂などによってパッケージングされていないダイ(チップ)そのものや、CSPやBGAと呼ばれている半導体パッケージを用いることができる。一方、回路基板としては、FR4やFR5などの繊維基材を含む有機基板、あるいは繊維基材を含まないビルドアップ型の有機基板、さらにポリイミドやポリエステルなどの有機フィルム、アルミナやガラスなどの無機基板等が用いることができる。
次いで、半導体チップと回路基板とを、塗布したエポキシ樹脂組成物を挟み込むようにして対向させると共に、半導体チップに形成されている金属バンプと回路基板の電極との位置合わせを行い双方を接触させる。このように半導体チップと回路基板とがエポキシ樹脂組成物を介して接触した状態で、リフロー加熱を行う。このリフロー加熱は、金属バンプと回路基板の電極とのいずれか低い方の溶融温度以上となるように加温して行うものである。このときの温度プロファイル、すなわちリフロープロファイルとしては、金属の種類や組成より様々なパターンがある。例えば、金属バンプが錫・鉛からなる低融点の共晶半田である場合には、室温から150℃に到達するまでは90秒間かかり、次の90秒間で200℃に到達し、200℃以上を60秒間維持し、その間における最高温度が240℃となるようなパターンを挙げることができる。そしてこのような温度プロファイルに基づいてリフロー加熱を行うことによって、金属バンプ又は回路基板の電極のうち少なくともいずれか一方が溶融して他方に溶着されると共に、エポキシ樹脂組成物の硬化反応が進行するものである。
そして、上記のようなリフロー工程の終了時には、半導体チップと回路基板とが金属バンプによって電気的に接続されていると共に、エポキシ樹脂組成物が硬化しているものである。既述のように、本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、半田の濡れ性を高めるフラックスとしての機能を有するため、半導体チップと回路基板との金属バンプによる接続と、エポキシ樹脂組成物による封止とを同時に行うことができるものであり、従って、従来は必要であったフラックスの除去工程を省略することができるものである。なお、エポキシ樹脂組成物の硬化をより完全にするために、さらに後硬化(アフターベーク)を行っても良い。このときの条件としては、120〜170℃の温度で、30分間〜3時間が好ましい。
このようにして製造される半導体装置にあって、半導体チップと回路基板とは、既述のエポキシ樹脂組成物によって封止されているため、温度サイクル性、耐湿信頼性に優れたものになる。さらに半導体チップとして、CSPやBGA等の半導体パッケージが回路基板に実装された半導体装置にあっても、既述のエポキシ樹脂組成物により、実使用条件下における衝撃や曲げなどの動的応力に十分対応することができるものである。
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1〜19及び比較例1〜3)
実施例1〜19に関しては、下記表1及び表2に示す配合量(質量部)で、また比較例1〜3に関しては、下記表3に示す配合量(質量部)で、各成分をディスパー(特殊機化工業製)又はビーズミル(GETZMANN製)を用いて分散・混合することによって、エポキシ樹脂組成物を調製した。各実施例及び比較例につき、ディスパーとビーズミルのいずれを用いたかについては、ディスパーを「D」、ビーズミルを「B」として、表1〜3の混合分散法の欄に示す。そしてエポキシ樹脂組成物中における固形分の最大粒子径をJIS K 5600−2−5に従って測定した。
ここで、表1〜3において使用した原材料は次のものであるが、「化合物A」とは式(A)で表される酸無水物を、「化合物B」とは式(B)で表される酸無水物を、「化合物C」とは式(C)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂を、「化合物D」とは式(D)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を、「化合物E」とは式(E)で表されるジカルボン酸を、「化合物F」とは式(F)で表される化合物を意味するものとする。
(エポキシ樹脂)
○樹脂A:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、品番「YD−8125」、エポキシ当量172)
○樹脂B:ナフタレン型エポキシ樹脂(化合物C、大日本インキ化学工業株式会社製、品番「HP−4032D」、エポキシ当量143)
○樹脂C:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(化合物D、大日本インキ化学工業株式会社製、品番「エピクロン1050」、エポキシ当量470)
(硬化剤)
○硬化剤A:炭素数10個のトリエンと無水マレイン酸から合成された脂環式酸無水物(化合物A、油化シェルエポキシ株式会社製、品番「YH−306」、酸無水物当量234)
○硬化剤B:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(MHHPA、大日本インキ化学工業株式会社製、品番「B−650」、酸無水物当量168)
○硬化剤C:5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物(化合物B、大日本インキ化学工業株式会社製、品番「B−4400」、酸無水物当量132)
(フラックス活性剤)
○フラックス活性剤A:フェニルアラニン(ナカライテスク(株)製の工業用試薬)
○フラックス活性剤B:N−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミノ二酢酸(化合物E、ナカライテスク(株)製の工業用試薬)
○フラックス活性剤C:アビエチン酸(ナカライテスク(株)製の工業用試薬)
(硬化促進剤)
○硬化促進剤:アミンアダクト(株式会社味の素製、品番「アミキュアPN23」)
(添加剤)
○添加剤A:ポリエチレングリコールラウリルアミン(化合物F、日本油脂株式会社製、品番「ナイミーンL−202」)
○添加剤B:数千〜数万の分子量のポリエステル酸アマイドアミン塩(楠本化成株式会社製、品番「ディスパロン703−50」)
(無機充填材)
○シリカA:球状非晶質シリカ(電気化学工業株式会社製、品番「SFP−20X」、最大粒径0.7μm、BET比表面積18m2/g)
○シリカB:球状非晶質シリカ(株式会社アドマテックス製、品番「SO−22R」、最大粒径2μm、BET比表面積22m2/g)
○シリカC:球状非晶質シリカ(三菱レイヨン株式会社製、品番「QS−4」、最大粒径14μm、BET比表面積0.8m2/g)
○シリカD:球状非晶質シリカ(株式会社アドマテックス製、品番「SO−E2」、最大粒径3μm、BET比表面積10m2/g)
○アルミナA:丸みを帯びた粒状のαアルミナ(住友化学工業株式会社製、品番「AA−2」、最大粒径7μm、BET比表面積0.9m2/g、真比重3.96)
○アルミナB:球状αアルミナ(株式会社アドマテックス製、品番「AO−502」、最大粒径5μm、BET比表面積7m2/g、真比重3.6)
【表1】
【表2】
【表3】
なお、真比重換算した無機充填材の体積%を算出するにあたって、充填材以外の樹脂成分の真比重は1.2とし、シリカA〜Dの真比重は2.2とすると共に、アルミナAとアルミナBとを質量比8:2で混合したもの(実施例12の場合)については、それぞれの真比重をもとに計算し、平均比重として3.88とした。
そして、実施例1〜19及び比較例1〜3で得られたエポキシ樹脂組成物の特性を次の方法で測定した。測定結果を下記の表4に示す。
(1)フリップチップの初期接続性
この試験に用いた回路基板と半導体チップは次の通りである。すなわち、回路基板上に共晶半田プリコートされた電極と電気試験プローブ用の金メッキした電極を同じ面に有するFR5グレード基板と、チップサイズ0.3mm厚、10mm角のCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)ゲートアレイICのチップ周辺部に高さ150μmの高温ハンダバンプが形成されたチップを用いた。この回路基板をAir雰囲気下において125℃で24時間乾燥処理することによって、回路基板の脱湿を行うと同時にプリコートされた半田が酸化膜で覆われている状態にした。この回路基板のチップ搭載部に、各実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物をディスペンサーで約0.1g塗布し、回路基板の電極と金属バンプの位置が合うように、半導体チップを位置合わせして半導体チップを回路基板に押し付け、荷重無しのままリフロー工程を通過させた。リフロー条件は、室温から150℃まで90秒間で昇温し、150℃から200℃まで90秒間で昇温し、180℃から240℃まで30秒間で昇温し、240℃から200℃まで30秒間で降温し、以後30秒間で40〜50℃の割合で降温し、室温まで冷却した。プローブを回路基板の金メッキした電極に当てて電気的動作確認を行い、初期接続性を評価した。各々のエポキシ樹脂組成物のものについて30個の初期接続性を評価した。不良数/全数を下記の表4に記載する。
(2)フィレット性
(1)で評価した半導体装置について、半導体チップの端部と回路基板との間にフィレットがどの程度形成されているかを観察した。半導体チップの4辺全てに同程度のフィレットが形成されていれば「◎」、程度は異なっても半導体チップの4辺全てにフィレットが形成されていれば「○」、1〜3辺にフィレットが形成されていて、フィレットが形成されていない辺があれば「△」、どの辺にもフィレットが形成されていなければ「×」と判定した。
(3)温度サイクル(TC)性
(1)で初期接続性を評価した半導体装置について、150℃の温度で1時間アフターキュアした後、半導体装置の電気的動作確認結果が良品であったものを10個取り出し、供試サンプルとした。次いでこれらの供試サンプルについて、−55℃で30分間、室温で5分間、125℃で30分間、室温で5分間を1サイクルとする気相の温度サイクル試験を行い、2000サイクルまで100サイクル毎に半導体装置の動作確認を行い、良否を判定した。10個の供試サンプル中の不良数が、初めて半数以上となったサイクル数を求めた。
(4)耐湿信頼(PCT)性
(3)と同様にして、硬化後の半導体装置の電気的動作確認結果が良品であったものを10個取り出し、供試サンプルとした。そしてこれらの供試サンプルについて、2気圧で121℃のプレッシャークッカー試験(PCT)を行い、1000時間まで50時間毎に半導体装置の動作確認を行い、良否を判定した。10個の供試サンプル中の不良数が、半数以上に到達したときの通算処理時間を求めた。
(5)CSP落下衝撃性
この試験に用いたCSPは、10mm角のチップにアルミニウムのくし型回路を設けた試験用素子を0.2mm厚のFR5基板上にダイボンドし、20μmの金ワイヤーで低ループのワイヤーボンドしたものを、トランスファ成形用のフィラーコンテント88質量%のエポキシ樹脂組成物でトランスファ成形封止し、チップ1個ずつに14mm角に切り分けた後、直径300μmの半田ボールからなるバンプを500μmピッチで周辺部に設けたものである。また、試験に用いたマザーボードは、0.6mm厚で35mm×100mmのFR4基板に、CSPを実装した場合にCSP内部の回路の導通チェックができるような回路とプローブ用パッドを設けたものを準備した。
このマザーボードのCSP搭載部に、各実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物をディスペンサーで約0.2g塗布し、回路基板側の電極と、CSPの金属バンプが合うようCSPを位置合わせして、CSPを回路基板に押し付け、荷重無しのままリフロー工程を通過させた。リフローの温度プロファイルは、(1)に述べたものと同一である。各エポキシ樹脂組成物についてCSPを実装し、リフロー後に電気導通チェックを実施して、初期接続性を評価した。初期接続が正常なもの10個について、次のような落下衝撃試験を実施した。すなわち、プラスチック製容器(厚み15mmで40mm×130mm、質量50g)の内部に前記マザーボードをビス止めして収納し落下供試品を作製し、このプラスチック製容器を、150cmの高さからコンクリート板上へ自然落下させる試験を50回行った後、マザーボードを取り出し、CSP内部回路の電気導通チェックを行うことで半田バンプ接続が維持されているか、破壊されているかを評価した。不良となったCSPの個数/供試数を下記の表4に記載する。
【表4】
表4にみられるように、実施例1〜19のものと比較例1〜3のものとを比較すると、各実施例のものはいずれも実使用下において問題なく使用できることが確認される。
一方、比較例1,3のものは、いずれも初期接続性やCSP落下衝撃性が著しく悪く、実用に供さないことが確認される。また比較例2のものは、初期接続性やCSP落下衝撃性については比較例1,3のものほどは悪くないが、TC性やPCT性が各実施例のものより悪く、実用に供さないことが確認される。
なお、表4にみられるように比較例1のTC性及びPCT性は、初期接続が全数不良であったので、供試サンプルが全く得られず、試験を行うことができなかった。また、比較例3のTC性及びPCT性は、それぞれ供試サンプル数6個の結果である。
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、フラックス活性剤を必須成分とする室温で液状のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤として、上記式(A)及び(B)で表される酸無水物を含有しているので、硬化過程においてフラックスとしての機能を高く得ることができると共に、金属バンプと回路基板の電極との溶融接合を行うリフロー工程の際にエポキシ樹脂組成物の硬化を行うことができるものである。しかも、硬化後において硬化物の温度サイクル性、耐湿信頼性、フィレット性を確保することもできるものである。
また請求項2の発明は、式(B)で表される酸無水物を全硬化剤の各当量の合計量に対して5〜50当量%含有しているので、硬化物の耐熱性や強度を確保することにより、温度サイクル性を確実に向上させることができるものである。
また請求項3の発明は、エポキシ樹脂として、上記式(C)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂と上記式(D)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち少なくとも一方を含有しているので、硬化物の耐クラック性を確保することにより、温度サイクル性及び耐落下衝撃性を一層向上させることができるものである。
また請求項4の発明は、無機充填材として、最大粒径が0.5〜5μmであり、かつ窒素吸着法によるBET比表面積が30m2/g以下である、球状非晶質シリカ又はアルミナのうち少なくとも一方をエポキシ樹脂組成物全量に対して真比重換算で40体積%以下含有しているので、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることができると共に、金属バンプと回路基板の電極との接合不良の発生を低減することができるものである。
また請求項5の発明は、フラックス活性剤として、フェニルアラニンと上記式(E)で表されるジカルボン酸のうち少なくとも一方を含有しているので、エポキシ樹脂組成物が硬化する過程においてフラックスの機能をより高く得ることができると共に、硬化後において耐湿信頼性を確保することができるものであり、金属バンプと回路基板の電極との接合不良を著しく低減することができるものである。
また請求項6の発明は、上記式(F)で表される化合物又はポリエステル酸アマイドアミン塩のうち少なくとも一方をエポキシ樹脂組成物全量に対して0.01〜1質量%含有しているので、式(A)及び(B)で表される酸無水物並びにフラックス活性剤と共存することによって、金属バンプと回路基板の電極との接合不良を著しく低減することができるものである。
また請求項7の発明は、エポキシ樹脂組成物中における固形分の最大粒子径が5μm以下であるので、極めて狭い隙間であってもエポキシ樹脂組成物を浸入させるのが容易であり、金属バンプを介して半導体チップを回路基板に電気的に接続する際に支障が生じることなく、金属バンプと回路基板の電極との接合不良を著しく低減することができるものである。
また請求項8の発明は、全成分をビーズミル又はバスケットミルによって分散混合しているので、エポキシ樹脂組成物中における固形分の最大粒子径を5μm以下にするのが容易であり、硬化物の均一性が向上することにより、温度サイクル性、耐湿信頼性及び耐落下衝撃性を一層向上させることができるものである。また請求項9に係る半導体装置は、請求項1乃至8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止しているので、優れた温度サイクル性や耐湿信頼性を実現することができるものである。さらに半導体チップとして、CSPやBGA等の半導体パッケージを回路基板に実装した半導体装置であっても、実使用下における落下衝撃力や折り曲げ応力等の動的応力に十分対応することができるものである。
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Claims (9)
- 式(B)で表される酸無水物を全硬化剤の各当量の合計量に対して5〜50当量%含有して成ることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填材として、最大粒径が0.5〜5μmであり、かつ窒素吸着法によるBET比表面積が30m2/g以下である、球状非晶質シリカ又はアルミナのうち少なくとも一方をエポキシ樹脂組成物全量に対して真比重換算で40体積%以下含有して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- エポキシ樹脂組成物中における固形分の最大粒子径が5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 全成分をビーズミル又はバスケットミルによって分散混合して成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止して成ることを特徴とする半導体装置。
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