JP3605990B2 - イオン電流検出装置及びそれに用いられるグロープラグ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料の着火・燃焼を促進するためのグロープラグを用いて燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するイオン電流検出装置、並びに当該グロープラグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガソリンエンジンのみならずディーゼルエンジンにおいても環境保護の面から、機関から排出される排気ガスや排気煙をより一層低減させることが要望されている。そして、こうした要望に応えるべく、各種のエンジン改良や後処理(触媒等)による排出ガス低減、燃料・潤滑油性状の改善、各種のエンジン燃焼制御システムの改善などが検討されている。
【0003】
また、上記検討事項に関連して、最近のエンジン燃焼制御システムにおいてはエンジン運転中の燃焼状態を検出することが要請されており、筒内圧、燃焼光、イオン電流等を検出することによってエンジン燃焼状態を検出することが検討されている。特に、イオン電流によりエンジン燃焼状態を検出することは、燃焼に伴う化学反応を直接的に観察できることから極めて有用と考えられており、種々のイオン電流検出方法が提案されている。
【0004】
特開平7−259597号公報には、燃料噴射ノズルの取り付け座部において、当該噴射ノズル及びエンジンのシリンダヘツドから絶縁されたスリーブ状の電極を装着し、その電極を外部の検出回路に接続することにより燃料の燃焼に伴うイオン電流を検出する方法が開示されている。
【0005】
また、米国特許第4,739,731号では、セラミックグロープラグを用いたイオン電流検出用センサが開示されている。つまり、かかる技術では、セラミックグロープラグのヒータ(発熱体)表面に白金製の導電層を取着すると共に、この導電層を燃焼室及びグロープラグ取付金具から絶縁している。そして、導電層に外部からのイオン電流測定用電源(直流250V)を印加して燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来技術においては、いずれも以下に示す問題を招来する。
つまり、前者の技術(特開平7−259597号公報)では、イオン検出のために他の部位より絶縁されたスリーブ状の電極を設置しなくてはならず、同電極の材料の用意及びその加工において煩雑な作業が強いられる。そのため、イオン電流検出用の電極が非常に高価な構成となるという問題があった。さらに、燃料噴射ノズルと電極との間、及び電極とシリンダヘツドとの間が燃焼室内にて発生するカーボンにより短絡し、早期に使用不能となるという欠点があった。
【0007】
また、後者の技術(米国特許第4,739,731号)では、イオン電流を検出する電極を発熱体とは別に発熱体上に設けると共に、当該電極及び発熱体を個々の電気経路を用いて別々の電源に接続していたため、グロープラグ及びそれを用いたイオン電流検出システムの構造が複雑になるという欠点があった。それに加えて、電極の耐熱性及び耐消耗性を確保するために白金など高価な貴金属を多量に必要とすることから、グロープラグ自体が非常に高価なものとなる欠点があった。
【0008】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、主として、簡単な構成で且つ精度良くイオン電流が検出できるイオン電流検出装置及びそれに用いられるグロープラグを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決するために、本発明では、一対の導電線により通電加熱される発熱体を有するグロープラグを用い、当該グロープラグのイオン検出機能を利用しつつイオン電流検出装置を次のように構成している。なお、かかるグロープラグでは、一対の導電線(リード線)及び発熱体が例えばシリンダヘッド等のアース側に対して絶縁されている。
【0010】
即ち、請求項1に記載のイオン電流検出装置では、一対の導電線に電源からの供給電圧を印加する第1の状態と、一対の導電線と前記電源との間の経路を遮断し、且つ前記発熱体と前記燃焼室の壁部との間に前記電源からの供給電圧を印加する第2の状態とを切り替えるためのスイッチング手段を備える。さらに、前記第2の状態において前記電源からの供給電圧により燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するイオン電流検出手段を備える。
【0011】
要するに、前記第1の状態では、一対の導電線に電源からの供給電圧が印加され、発熱体が加熱される。この状態は、例えばエンジンの低温始動時に燃料の着火及び燃焼を促進させる時の状態に相当する。また、前記第2の状態では、一対の導電線と電源との間の経路が遮断され、且つ前記発熱体と前記燃焼室の壁部との間に電源からの供給電圧が印加される。この状態は、イオン電流を検出する時の状態に相当し、その時のイオン電流はイオン電流検出手段により検出される。
【0012】
かかる場合において、上記2つの状態における前記発熱体への電圧印加は共通の導電線を用いて行われ、両状態の切替え動作はスイッチング手段により選択的に実施される。従って、イオン電流検出機能を有するグロープラグを用いたイオン電流検出装置において、その発熱体に接続される導電線の構成や、イオン電流の検出に関する構成が簡素化でき、安価なイオン電流検出装置を提供することができる。この場合、上記の如く簡単な構成にもかかわらず、イオン電流の検出精度を低下させることもない。
【0013】
イオン電流の検出装置に関わるより具体的な構成として、請求項2に記載の発明では、前記発熱体と前記燃焼室の壁部とを結ぶ電気経路に前記スイッチング手段を介して電源を接続し、請求項3に記載の発明では、前記発熱体と前記燃焼室の壁部とを結ぶ電気経路に直接、電源を接続している。これら両発明は共に、構成の簡素化を実現するための条件を十分に満たすものであるが、特に請求項3に記載の発明では、スイッチング手段を介さずに電源が発熱体と燃焼室の壁部との間に電圧を印加するものであるため、以下に記す特有の効果を奏する。
【0014】
即ち、燃料燃焼に伴うイオン電流は元々微弱な電流であるが、抵抗体となる前記スイッチング手段を介すことなく電源回路を構成することで、イオン電流をより一層精度良く検出することができる。なお、複数の切替え接点を有するスイッチ回路や、半導体スイッチング素子(トランジスタやサイリスタ等)がスイッチング手段として具体化でき、それ自体が幾分かの抵抗値を有する。
【0015】
また、前記第1の状態において前記一対の導電線に電圧を印加するための電源と、前記第2の状態において前記発熱体と前記燃焼室の壁部との間に電圧を印加する電源とは、請求項4に記載したように、別体の電源にて構成してもよいし、請求項5に記載したように、共通の電源にて構成してもよい。かかる場合、いずれの構成においても精度良くイオン電流を検出することが可能となる。特に請求項5に記載の発明では、イオン電流検出専用の電源として、例えば車載バッテリ以外の電源が不要となり、構成の簡素化を図ることができる。
【0016】
さらに、請求項6に記載の発明では、電源の一端に、発熱体に接続された片方の導電線を接続し、他端にグロープラグを保持するためのディーゼルエンジンのシリンダヘッドを接続している。この場合、ディーゼルエンジンに適用される場合において、発熱体と燃焼室の壁部との間に電圧を印加するための構成が簡素化できる。
【0017】
請求項7に記載の発明では、電源と前記一対の導電線の一方との間に、当該電源による供給電圧を一定にする定電圧回路を設けている。要するに、イオン電流は元々微弱な電流であるため、印加電圧の変動が大きいと、検出されるイオン電流値が影響を受け検出誤差を生じる。そして、この検出誤差に起因して、例えばイオン電流の出力の大きさ(波高値、面積等)を用いる失火検出時においては、当該失火の検出精度が低下するという事態を生ずる。これに対し、上記構成によれば、イオン電流の検出精度を向上させることができるため、ひいてはそのイオン電流の検出結果を用いた失火検出等の精度をも向上させることができる。
【0018】
請求項8に記載の発明では、複数のグロープラグを並列に接続し、スイッチング手段は各グロープラグについて同時に電源経路の切り替え動作を行うようにしている。かかる構成では、スイッチング手段としてのスイッチ回路や、イオン電流検出手段としての検出抵抗が共通化でき、より一層構成の簡素化を図ることができる。この場合、例えば多気筒エンジンの燃焼室に設けられるグロープラグにおいては、時系列的に各気筒のイオン電流が検出できる。
【0019】
またさらに、上記以外の構成にてイオン電流検出装置の簡素化を図るには、次の請求項9〜請求項11に記載するように具体化するのが望ましい。つまり、請求項9に記載の発明では、グロープラグの一方の導電線とアース接点との間にイオン電流検出用の電圧検出器を配設している。この場合、電圧検出器として、その内部構造が比較的複雑な差動増幅器が必要になるようなことはなく、アースからの電位差をとる比較的簡易な構造の増幅回路にて電圧検出器が構成できる。
【0020】
加えて、上記請求項9に記載の発明では、請求項10に記載したように、グロープラグの一方の導電線と前記電圧検出器との間にコンデンサを配設して構成するのが望ましい。この場合、上記コンデンサにより電源電圧の直流成分がカットされる。従って、例えばイオン電流検出の専用電源として比較的高電圧(例えば50V)の電源を用いたとしても、その高電圧が電圧検出器に直接印加されることはなく、電圧検出器(増幅器)には常にその耐電圧未満の電圧が印加されることになる。その結果、電圧検出器が損傷する等の不具合が未然に防止できる。因みに、この構成は、イオン電流検出用の電源電圧が30ボルト以上である場合において特に有効である。
【0021】
請求項11に記載の発明では、電源のアース側にイオン電流検出抵抗を設けると共に、その両端子にかかる電位差からイオン電流を検出するようにしている。この場合、イオン電流波形に対応する電圧波形は、0ボルトを基準にしたものとなる。従って、電圧検出器の耐電圧を越える電源電圧を用いる場合であっても、高価で且つ複雑な構成の電圧検出器を必要とすることはない。なおこうした構成の具体化に際しては、前記請求項4に記載したように、発熱体加熱用の電源とイオン電流検出用の電源とを別体として、後者の電源のアース側に前記イオン電流検出抵抗を設けるのが望ましい。これは、発熱体とイオン電流検出抵抗とを直列に接続すると、発熱体加熱時にその加熱性能が低下するおそれがあるためである。
【0022】
一方、上記イオン電流検出装置に用いられるグロープラグとして、請求項12に記載のグロープラグは、発熱体を有する発熱素子部を備え、該発熱素子部は燃料を燃焼させるための燃焼室内に突設されるようになっている。また、前記発熱体には前記燃焼室の内壁に対するイオン電流検出用電極が形成されている。この場合、グロープラグの発熱体は、当該発熱体の加熱時において、その加熱作用により燃焼室での着火及び燃焼を促進させる。併せて、発熱体の加熱時と異なるイオン電流の検出時には、前記発熱体が燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するためのイオン電流検出用電極としての役割を果たす。即ち、イオン電流の検出時において、発熱体とそれに近接する燃焼室の内壁とは、両者間に存在する燃料燃焼時のプラス及びマイナスイオンを捕獲するための2電極を形成する。上記構成によれば、非常に簡単な構成であるにもかかわらず、精度良くイオン電流を検出することができ、その情報を燃焼制御に有用に活用することが可能となる。また、グロープラグにイオン電流検出機能を付与することにより、安価なイオン電流検出用センサを提供することができる。
【0023】
請求項13に記載のグロープラグは、耐熱性絶縁体と当該耐熱性絶縁体に埋設された発熱体とを有する発熱素子部を備え、前記発熱体の一部を前記耐熱性絶縁体より露出させると共に、該露出部分を前記燃焼室の内壁に対するイオン電流検出用電極としている。かかる場合、発熱体の露出部分がイオン電流検出用電極として有効に働き、上記請求項12と同様の作用及び効果が得られることとなる。また、本請求項の構成では、次の作用及び効果が新たに得られる。つまり、発熱体の露出部にはグロープラグの使用に伴ってカーボンが付着すると考えられるが、その付着カーボンは発熱体の加熱動作(例えば、エンジンの低温始動時におけるグロー動作)によって焼き切られる。その結果、発熱体の一部に露出部を設けその露出部をイオン電流検出用電極として用いる本構成においても、グロープラグの使用寿命が短くなることはなく、長期間の使用に耐えうる優れた耐久性をグロープラグに付与することができる。
【0024】
また、上記発熱体は、請求項14に記載したように、セラミック材料により成形されるのが望ましい。この場合、セラミック材料からなる発熱体の一部を燃焼室に露出させる構造とすれば、高温な燃焼ガスに晒されても発熱体の酸化消耗が最小限に抑えられる。そのため、グロープラグの耐久性をより一層向上させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、ディーゼルエンジンの始動補助装置として用いられるセラミックグロープラグ(以下、単にグロープラグという)に本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。つまり、本実施の形態のグロープラグは、ディーゼルエンジンのシリンダヘッドに形成された燃焼室(渦流室)に設けられるものであって、その一部が燃焼室内に晒されるようになっている。そして、同グロープラグは、エンジンの低温始動時において、燃料噴射ノズルより噴射される燃料の着火及び燃焼を促進させる役割をなす。また、本実施の形態におけるグロープラグは、上記の始動補助機能に加えて、燃料燃焼時の燃焼火炎帯に存在する活性イオンを検出する役割をもなす。
【0026】
ここで、図1には、本実施の形態におけるグロープラグ1の全体構成を示す。同図において、グロープラグ1は略円筒状をなす金属製のハウジング2を有しており、このハウジング2の外周面には当該グロープラグ1を後述するシリンダヘッドに取り付けるための雄ねじ部3及び六角部4が形成されている。ハウジング2の上部には、管状のプロテクションチューブ5が溶着されている。
【0027】
また、前記ハウジング2には、発熱素子部としてのセラミック発熱部6が保持されており、このセラミック発熱部6は、導電性を有するU字状の発熱体7と、絶縁性を有する耐熱性絶縁体8と、前記発熱体7の両端に接続されると共に前記絶縁体8に埋設された2本のタングステンリード線9a,9bとから構成されている。前記発熱体7はその大部分が耐熱性絶縁体8内に埋設され、強固に保持されるものであるが、図2の要部拡大図に示すように、セラミック発熱部6先端において当該発熱体7の一部だけが耐熱性絶縁体8より露出した構成となっている。かかる構成において、発熱体7の露出部と後述するディーゼルエンジンの渦流室17(破線部)の内壁とは、イオン電流を検出するための対向電極を形成する。
【0028】
前記各タングステンリード線9a,9bの上端には、耐熱性絶縁体8内に埋め込まれた導電性チップ10a,10bが接続されており、導電性チップ10a,10bには各々にリード線11a,11b(導電線)が接続されている。これら2本のリード線11a,11bがグロープラグ1の外部信号入力線となっている。なお、前記ハウジング2及びプロテクションチューブ5と、リード線11a,11bとの間は、絶縁チューブ12及びゴムブッシュ13により電気的に絶縁されている。リード線11a,11bは、ゴムブッシュ13と共にプロテクションチューブ5のカシメ締め付け力により固定されている。
【0029】
以下に、セラミック発熱部6の詳細な構成について説明する。つまり、セラミック発熱部6の発熱体7及び耐熱性絶縁体8は、いずれも導電性セラミック粉末(本実施の形態では、珪化モリブデンMoSi2 粉末)と絶縁性セラミック粉末(本実施の形態では、窒化珪素Si3 N4 粉末)の混合物よりなり、且つ配合割合を略同一にした焼結体により構成されている。但し、発熱体7ではMoSi2 粉末の平均粒径がSi3 N4 粉末のそれよりも小さく、耐熱性絶縁体8ではMoSi2 粉末の平均粒径がSi3 N4 粉末のそれと同じ若しくはそれよりも大きくしてある。即ち、各粉体の粒径を変更することにより発熱体7と耐熱性絶縁体8とを作り分けるようにしている。
【0030】
上記構成を有するセラミック発熱部6において、発熱体7では、小径のMoSi2 粉末(導電性セラミック粉末)が大径のSi3 N4 粉末(絶縁性セラミック粉末)を取り囲んで互いに連なっており、それにより発熱体7に電流が流れ、同発熱体7が発熱される。一方、耐熱性絶縁体8では、大径のMoSi2 粉末(導電性セラミック粉末)間に小径のSi3 N4 粉末(絶縁性セラミック粉末)が介在するため、両者は直列に並んだ状態となり発熱体7に比べて抵抗が大きく絶縁層を形成する。
【0031】
また、セラミック発熱部6の製造方法としては、先ずMoSi2 粉末とSi3 N4 粉末との混合物にバインダーを混練してペースト化し、発熱体7と耐熱性絶縁体8とを各々に所望の形状に射出成形する。そして、発熱体7を耐熱絶縁体8で包み込むように配置して1700〜1800℃にてホットプレスした後、セラミック発熱部6として円柱状に削り出す。さらに、セラミック発熱部6の先端部において、耐熱性絶縁体8を切削加工し、発熱体7の一部を耐熱性絶縁体8から露出させる。
【0032】
次に、上記の如く構成されるグロープラグ1を用いたイオン電流検出システムを図3,図4を用いて説明する。なお、図3,図4は共に、本実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。このうち図3は、グロープラグ1(発熱体7)の加熱状態、即ちエンジン始動時における燃料の着火及び燃焼を促進するための状態を示し、図4は、燃料燃焼に伴うイオン電流をグロープラグ1により検出する状態を示す。本実施の形態では、前者の発熱体加熱状態(図3の状態)が「第1の状態」に相当し、後者のイオン電流検出状態(図4の状態)が「第2の状態」に相当する。
【0033】
各図において、ディーゼルエンジンのシリンダヘッド15にはねじ孔16が形成されており、このねじ孔16に前記グロープラグ1が螺着されている。即ち、グロープラグ1をシリンダヘッド15に螺着する際には、前記六角部4を所定の工具で挟み、同プラグ1の雄ねじ部3をねじ孔16にねじ入れるようにする。
【0034】
グロープラグ1のセラミック発熱部6の先端部は、シリンダヘッド15に形成された渦流室17に突出配置されている。この渦流室17にはピストン18上部に設けられた主燃焼室19が連通されており、渦流室17は燃焼室の一部をなす。渦流室17には燃料噴射ノズル20の先端部が配設されており、この燃料噴射ノズル20から渦流室17内に燃料が噴射されるようになっている。
【0035】
また、本システムにおいては、2つの直流電源が設けられており、その一方は、前記発熱体7を加熱するための発熱体加熱用電源21を構成し、他方はイオン電流を検出するためのイオン電流検出用電源22を構成している。なお、本実施の形態では、発熱体加熱用電源21として12V(ボルト)の直流電源(一般的な車載バッテリ)を用い、イオン電流検出用電源22として50V(ボルト)の直流電源を用いている。
【0036】
上記各電源21,22とグロープラグ1とは、2つの2位置切替スイッチ23,24からなるスイッチ回路25を介して接続されており、このスイッチ回路25の切替え動作に伴い前記第1,第2の状態が切り替えられるようになっている。スイッチ回路25は、電子制御装置(以下、ECUという)30からの指令信号が入力されない通常時にはイオン電流検出状態(図4の状態)を保持し、ECU30からの指令信号が入力されると、前記イオン電流検出状態から発熱体加熱状態(図3の状態)に移行する。このとき、2つの切替スイッチ23,24は同時に動作する。
【0037】
つまり、切替スイッチ23,24の端子23a,24aには前記グロープラグ1のリード線11a,11b(及びタングステンリード線9a,9b)がそれぞれに接続されている。また、切替スイッチ23,24は、前記端子23a及び24aに対して選択的に接続される各々2つずつの接点23b,23c及び24b,24cを有する。
【0038】
かかる場合において、発熱体加熱状態では、図3に示すように、端子23aと接点23bとの間が閉路されると共に、端子24aと接点24bとの間が閉路されている。このとき、グロープラグ1の一方のリード線11aには端子23a及び接点23bを介して発熱体加熱用電源21のプラス側が接続されると共に、他方のリード線11bには端子24a及び接点24bを介して発熱体加熱用電源21及びイオン電流検出用電源22のマイナス側が接続されている。即ち、発熱体7は加熱状態に保持されている(このとき、図3中の2点鎖線で示す経路を電流が流れる)。なお、接点24bは、シリンダヘッド15の一部にも接続されている。
【0039】
また、イオン電流検出状態では、図4に示すように、端子23aと接点23cとの間が閉路されると共に、端子24aと接点24cとの間が閉路される。即ち、グロープラグ1の一方のリード線11aには端子23a及び接点23cを介してイオン電流検出用電源22のプラス側が接続されると共に、他方のリード線11bはオープン状態となる。その結果、セラミック発熱部6の先端に形成された発熱体7の露出部とシリンダヘッド15との間にイオン電流検出用電源22の電圧が印加され、燃焼火炎帯の活性イオンの発生に伴い図4中に2点鎖線で示す経路でイオン電流が流れる。
【0040】
イオン電流検出用電源22のプラス側と前記接点23cとの間には、所定の抵抗値(本実施の形態では、100kΩ)を有するイオン電流検出用抵抗26が接続されており、このイオン電流検出用抵抗26を流れるイオン電流は、当該抵抗26の両端の電位差として電位差計27により検出される。なお、本実施の形態では、前記スイッチ回路25がスイッチング手段に相当し、前記イオン電流検出用抵抗26がイオン電流検出手段に相当する。
【0041】
ここで、イオン電流の検出原理を略述する。燃料噴射ノズル20による噴射燃料が渦流室17で燃焼に供されると、その燃焼火炎帯ではイオン化されたプラスイオンとマイナスイオンが大量に発生する。このとき、発熱体7とそれに対面するシリンダヘッド15との間にイオン電流検出用電源22の電圧が印加されることにより、発熱体7の露出部からなるイオン電流検出電極にはマイナスイオンが捕獲されると共に、シリンダヘッド15にはプラスイオンが捕獲される。その結果、図4に示す電流経路が形成され、この電流経路を流れるイオン電流がイオン電流検出用抵抗26両端の電位差として検出される。
【0042】
一方、ECU30は、CPU,ROM,RAM,入出力回路等からなる周知のマイクロコンピュータやA/D変換器(共に図示略)を中心に構成され、前記電位差計27により検出された検出信号を入力する。また、ECU30には、エンジン冷却水の温度を検出するための水温センサ31の検出信号や、エンジンクランク角に応じてエンジン回転数を検出するための回転数センサ32の検出信号が入力され、ECU30は各センサ31,32の検出信号に基づいて水温Tw,エンジン回転数Neを検知する。
【0043】
上記ECU30は、ディーゼルエンジンの低温始動時において、グロープラグ1の発熱体7を加熱させて燃料の着火及び燃焼を促進させる。また、ディーゼルエンジンの暖機完了時において、前記スイッチ回路25に切り替え指令信号を出力し、前記イオン電流検出用電源22のプラス側と片方のリード線11aとの間を閉路させて燃焼イオン電流を検出する。なお、エンジン始動当初においては、スイッチ回路25はECU30により発熱体加熱状態に保持されるようになっている。以下、図5のフローチャートを用いて、前記スイッチ回路25の切り替え処理を説明する。図5は、所定の時間の割り込み処理により実行される。
【0044】
さて、図5の処理がスタートすると、ECU30は、先ずステップ110でエンジン暖機完了後であり、且つスイッチ回路25がイオン電流検出状態にあるか否かを判別する。エンジン始動当初においては、ステップ110が否定判別され、ECU30は続くステップ120で水温Tw及びエンジン回転数Neを読み込む。
【0045】
その後、ECU30は、ステップ130で水温Twが所定の暖機完了温度(本実施の形態では、60℃)以上であるか否かを判別すると共に、ステップ140でエンジン回転数Neが所定回転数(本実施の形態では、2000rpm)以上に達しているか否かを判別する。かかる場合、ステップ130,140が共に否定判別されれば、ECU30は、エンジンの暖機が完了しておらず、グロープラグ1(発熱体7)による加熱が必要であるとみなし、ステップ150に進む。また、ステップ130,140のいずれかが肯定判別されれば、ECU30は、エンジンの暖機が完了した、或いはグロープラグ1(発熱体7)による加熱が不要になったとみなし、ステップ160に進む。
【0046】
ステップ150に進んだ場合、ECU30は、スイッチ回路25を発熱体加熱状態(図3の状態)に保持し、その後本処理を終了する。この状態では、グロープラグ1の発熱作用によって燃料の着火及び燃焼が促進される。
【0047】
また、ステップ160に進んだ場合、ECU30は、スイッチ回路25を発熱体加熱状態からイオン電流検出状態(図4の状態)に移行させ、その後本ルーチンを終了する。この状態では、イオン電流検出用抵抗26により燃料燃焼時に生じるイオン電流が検出される。
【0048】
なお、前記ステップ140が肯定判別されてステップ160に進む場合とは、例えばレーシング状態で一時的にエンジン回転数Neが上昇する場合が考えられ、この場合にはエンジン暖機が未だ完了していない。従って、スイッチ回路25が一旦イオン電流検出状態に移行したとしても、ECU30は、次回処理時のステップ110を否定判別し、ステップ130,140の判別処理を再び実施する。そして、一時的なエンジン回転数Neの上昇が収まり、同回転数Neが低下すると(Ne<2000rpm)、スイッチ回路25を再度、発熱体加熱状態に復帰させる(ステップ150)。
【0049】
その後、Tw≧60℃となりエンジン暖機が完了すると、ECU30はステップ110を肯定判別する。そして、エンジン暖機が完了し、且つスイッチ回路25がイオン電流検出状態に移行した後には、ECU30はステップ110を毎回肯定判別し、スイッチ回路25がイオン電流検出状態のままで保持される。
【0050】
図6は、オシロスコープを用いて燃料燃焼時に発生するイオン電流を観察した際の電流波形図である。同図において、圧縮TDC直後(燃料噴射時期の直後)に電圧が急上昇している波形が燃料の燃焼によるイオン電流波形であり、A点が燃焼の開始位置、即ち着火時期に相当する。また、このイオン電流波形には、2つの山が観測される。つまり、燃焼初期には、拡散火炎帯の活性イオンにより第1の山B1が観測され、燃焼中後期には筒内圧上昇による再イオン化により第2の山B2が観測される。
【0051】
この場合、ECU30は、イオン電流波形の第1の山B1から実際の着火時期を検出すると共に、該検出された実際の着火時期と目標着火時期との差をなくすべく着火時期のフィードバック制御を実施する。また、ECU30は、イオン電流波形の第2の山B2から異常燃焼、失火等の燃焼状態を検出し、その検出結果を燃料噴射制御に反映させる。こうしてイオン電流をエンジンの燃料噴射制御に反映させることにより、きめ細かくエンジンの運転状態を制御することが可能となる。
【0052】
次に、本実施の形態におけるグロープラグ1及びそれを用いたイオン電流検出装置の効果を説明する。
(a)本実施の形態のグロープラグ1では、発熱体7の一部を耐熱性絶縁体8より露出させると共に、該露出部分を渦流室17の内壁(シリンダヘッド15)に対するイオン電流検出用電極とした。かかる構成によれば、イオン電流の検出時において、発熱体7の露出部とそれに近接する渦流室17の内壁とは、燃料燃焼時に両者(発熱体7及び渦流室17の内壁)間に存在するプラス及びマイナスイオンを捕獲するための2電極を形成する。その結果、非常に簡単な様成であるにもかかわらず、精度良くイオン電流を検出することができ、安価なイオン電流検出用センサとしてのグロープラグ1を提供することができる。
【0053】
(b)また、発熱体7の露出部にはグロープラグ1の使用に伴ってカーボンが付着すると考えられるが、その付着カーボンは発熱体7の加熱動作(エンジンの低温始動時における加熱動作等)によって焼き切られる。その結果、発熱体7の一部をイオン電流検出用電極として用いる本構成においても、グロープラグ1の使用寿命が短くなることはなく、長期間の使用に耐えうる優れた耐久性をグロープラグ1に付与することができる。
【0054】
(c)さらに、本実施の形態のグロープラグ1においては、露出部を有する発熱体7をセラミック材料により成形した。それにより、高温な燃焼ガスに晒されても発熱体7の酸化消耗が最小限に抑えられ、グロープラグ1の耐久性をより一層向上させることができる。
【0055】
(d)また、グロープラグ1のセラミック発熱部6(発熱体7及び耐熱性絶縁体8)を、導電性セラミック粉末(MoSi2 粉末)と絶縁性セラミック粉末(Si3 N4 粉末)との混合物により形成した。そのため、耐熱性及び耐消耗性に優れたセラミック発熱部6を提供することができる。また、本セラミック発熱部6は、エンジンの低温始動時において良好なる始動補助機能を維持することができる。
【0056】
(e)上記グロープラグ1の製作に際しては、導電性セラミック粉末と絶縁性セラミック粉末との混合物からセラミック発熱部6を成形すると共に、同発熱部6の耐熱性絶縁体8の一部を切削加工して発熱体7の一部を露出させるようにした。そのため、特に煩雑な製造工程を要することもなく、簡便な方法にてイオン電流検出機能を兼ね備えたグロープラグ1を製作することができる。
【0057】
(f)一方、本実施の形態のイオン電流検出装置ではスイッチ回路25を設け、同スイッチ回路25により、発熱体加熱状態(第1の状態)とイオン電流検出状態(第2の状態)とを切り替えるようにした。即ち、上記2つの状態の電圧印加は共通のリード線11a,11bを用いて行われ、両状態の切替えはスイッチ回路25により選択的に実施される。従って、本イオン電流検出装置において、その発熱体7に接続されるリード線11a,11bの配線構成や、その他イオン電流の検出に関する構成が簡素化でき、安価なイオン電流検出装置を提供することができる。
【0058】
(g)併せて、本実施の形態では、ディーゼルエンジンに本イオン電流検出装置を適用することとし、イオン電流検出用電源22の一端に前記発熱体7に接続された片方のリード線11aを接続すると共に、他端にシリンダヘッド15を接続するようにした。この場合、イオン電流を検出するために必要な対向電極(発熱体7及び渦流室17の壁部)の構成が簡素化できる。
【0059】
(h)特に、本実施の形態のイオン電流検出装置は、ディーゼルエンジンの渦流室17内での燃焼火炎帯の活性イオンを検出するものであるため、燃焼イオン密度が高い状態でイオン電流を検出することができ、その検出精度を高めることができる。従って、ディーゼルエンジンの燃焼状態を精度良く検出し、その検出結果を燃料噴射制御に反映させることも可能となる。
【0060】
次に、本発明の第2〜第9の実施の形態を図7〜図18を用いて説明する。但し、各実施の形態の構成において、上述した第1の実施の形態と同等であるものについては図面に同一の記号を付すと共にその説明を簡略化する。そして、以下には第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。なお、以下に示すシステム構成図において、燃料噴射ノズル20、ECU30、センサ類等の全く同じ構成については図示を省略する。
【0061】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。先ず、上記第1の実施の形態との相違点を略述すれば、上記第1の実施の形態では、スイッチ回路25を介して発熱体7と渦流室17の壁部(シリンダヘッド15)との間にイオン電流検出用電源22を接続していたが(図3,4参照)、本実施の形態では、発熱体7と渦流室17の壁部との間に直接、イオン電流検出用電源22を接続したことを特徴としている。つまり、図7に示すように、グロープラグ1のリード線11a,11bのうち、片方のリード線11aにはイオン電流検出用抵抗26を介して常時、イオン電流検出用電源22のプラス側が接続されている。
【0062】
本実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に、構成が簡単で且つ安価なイオン電流検出装置が提供でき、本発明の目的を達成することができる。また、本実施の形態では、既述の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0063】
つまり、本実施の形態では、スイッチ回路25(接点23c)を介することなく、直接、発熱体7とシリンダブロック15との間にイオン電流検出用電源22による供給電源を印加するように構成したため、スイッチ回路25の切替え動作によるノイズ等の悪影響を排除することができる。特に、スイッチ回路25の各接点は酸化によって抵抗値が上昇し、このような接点抵抗の上昇時には元々微弱なイオン電流の検出が困難になるおそれがある。しかし、本実施の形態では、スイッチ回路25の接点を介することなくイオン電流検出用電源22の電圧を印加する構成としたため、イオン電流が微弱なものであっても精度良く検出することができる。
【0064】
(第3の実施の形態)
図8は、第3の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。先ず、上記第1,第2の実施の形態との相違点を略述すれば、上記第1,第2の実施の形態では、発熱体加熱用電源21とイオン電流検出用電源22とを別個に設けていたが、本実施の形態では、上記実施の形態におけるイオン電流検出用電源22を発熱体加熱用電源21(車載バッテリ)と共用化したことを特徴としている。つまり、図8に示すように、スイッチ回路25の接点23b,23cは共に、発熱体加熱用電源21のプラス側に接続されている。
【0065】
この場合、一般には発熱体加熱用電源21として12V程度のバッテリが使用されるため、イオン電流検出用抵抗26の抵抗値を電源電圧に応じた最適値に設定する必要がある。そこで、本実施の形態では、イオン電流検出用抵抗26の抵抗値を電圧の低下分に応じた大きな値に変更している(400kΩ程度若しくはそれ以上が望ましい)。
【0066】
かかる場合において、本発明者の実験結果によれば、上記第1,第2の実施の形態と略同じ精度のイオン電流検出結果が得られた。通常のバッテリ電源にてイオン電流が検出できる理由としては、ディーゼルエンジンでは燃焼圧が高く、且つ液滴な燃料が燃焼に供されるために燃焼イオン密度が高くなるからであると考えられる。
【0067】
本実施の形態によれば、上記第1,第2の実施の形態と同様に、構成が簡単で且つ安価なイオン電流検出装置が提供でき、本発明の目的を達成することができる。また、本実施の形態では、既述の効果に加えて以下の効果を得ることができる。つまり、イオン電流検出用電源22を発熱体加熱用電源21に共用したため、例えば車載バッテリ以外の電源が不要となり、構成の複雑化を招くことなくより一層安価なイオン電流検出装置を実現することができる。
【0068】
(第4の実施の形態)
図9は、第4の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態は、上記第2の実施の形態のように発熱体7と渦流室17の壁部との間に直接、イオン電流検出用電源22を接続し、且つ上記第3の実施の形態のようにイオン電流検出用電源22を発熱体加熱用電源21(車載バッテリ)と共用化した構成を有するものである。
【0069】
本実施の形態によれば、上記第1〜第3の実施の形態と同様に、構成が簡単で且つ安価なイオン電流検出装置が提供でき、本発明の目的を達成することができる。また、本実施の形態では、スイッチ回路25のノイズや接点抵抗によるイオン電流検出の検出精度の低下を防ぐと共に、電源の共用化により回路の簡素化を図ることができる。
【0070】
(第5の実施の形態)
図10は、第5の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態の構成は、前記第4の実施の形態の構成(図9の構成)を一部修正したものであり、その特徴としては、発熱体加熱用電源21(車載バッテリ)のプラス側とイオン電流検出用抵抗26との間に定電圧回路41を設けている。
【0071】
この定電圧回路41は、例えば増幅回路を含む出力負帰還回路を用いて構成され、発熱体加熱用電源21のバッテリ電圧VG(例えば12ボルト付近の直流電圧)を一定の定電圧Vi(例えば10ボルト)に変換する。かかる構成において、図10に示す発熱体加熱状態では、発熱体7の両端にバッテリ電圧VGが印加され、グロープラグは燃料の着火・燃焼を促進させる。また、スイッチ回路25が切り替えられ、イオン電流検出状態になると(図示略)、発熱体7の露出部とそれに隣接する渦流室17との間に定電圧Viが印加され、かかる状態下でイオン電流が検出される。
【0072】
本実施の形態の構成によれば、バッテリ電圧VGの変動時においても、微弱なイオン電流を精度良く検出することができる。つまり、バッテリ電圧VGの変動の影響を受けることなくイオン電流を検出することができ、その検出誤差を抑制することができる。例えばイオン電流の波高値や面積等を用いる失火検出時にも、当該失火を精度良く検出することができ、エンジン燃焼状態を良好に制御することが可能となる。
【0073】
(第6の実施の形態)
図11は、第6の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態は、多気筒エンジンに本発明のイオン電流検出装置を適用した事例を説明するものであり、当該エンジンは#1気筒〜#4気筒までの4つの気筒を有する。各気筒のグロープラグはいずれも上記各実施の形態と同様に、発熱体7の一部が耐熱性絶縁体8から露出した構成を有する。また、各グロープラグの発熱体7の一端に接続されたタングステンリード線9aは、いずれも切替スイッチ23の端子23aに接続され、発熱体7の他端に接続されたタングステンリード線9bは、いずれも切替スイッチ24の端子24aに接続されている。つまり、スイッチ回路25に対して各気筒のグロープラグは並列に接続されている。
【0074】
上記構成のイオン電流検出装置では、全気筒に対して発熱体加熱状態とイオン電流検出状態との切替え動作が同時に行われる。かかる場合、図12に示すように、気筒毎の燃焼順序(#1→#3→#4→#2→#1)に合わせて、時系列的に気筒毎にイオン電流が検出される。
【0075】
本実施の形態の構成によれば、スイッチ回路25やイオン電流検出用検出抵抗26が共通化でき、多気筒エンジンへの適用時においても、簡素化した構成を実現することができる。この場合、イオン電流を気筒毎に時系列的に検出し、その検出結果を各気筒の燃焼状態制御(着火時期制御や、失火検出制御等)に適用できる。
【0076】
(第7の実施の形態)
次に、本発明にかかる第7の実施の形態を図13及び図14を用いて説明する。図13は、第7の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態の構成は、前記第4の実施の形態の構成(図9の構成)を一部修正したものであり、その特徴としては、一方のタングステンリード線9aとアースとの間に増幅器からなる電圧計51を設けている。この電圧計51の出力は前記ECU30に入力される。本構成によれば、燃焼に伴うイオン電流発生時には、図14に示す通り発熱体加熱用電源21のバッテリ電圧(12ボルト)を基準にしたイオン電流波形(電圧波形)が得られる。
【0077】
かかる場合、以下に示す効果が得られる。つまり前記各実施の形態では、イオン電流検出用抵抗26の両端子間の電位差を検出するために、その内部構造が比較的複雑な差動増幅器にて構成される電位差計27を用いていた。しかし、本実施の形態では、アースからの電位差をとる比較的簡易な構造の増幅回路にて電圧計51(電圧検出器)が構成できる。その結果、イオン電流検出装置の簡素化が実現できる。
【0078】
(第8の実施の形態)
次に、本発明にかかる第8の実施の形態を図15及び図16を用いて説明する。図15は、第8の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態の構成は、前記第2の実施の形態の構成(図7の構成)を一部修正したものであり、その特徴としては、一方のタングステンリード線9aとアースとの間に増幅器からなる電圧計61を設けると共に、その電圧計61のプラス側にコンデンサ62を設けている。この電圧計61の出力は前記ECU30に入力される。また、本構成では、電源として比較的小電圧(12ボルト)の発熱体加熱用電源21と、比較的高電圧(50ボルト)のイオン電流検出用電源22とを有する。
【0079】
このとき、コンデンサ62がない場合を想定すると、イオン電流検出時の電圧波形(電流波形)は、図16に二点鎖線で示すようにイオン電流検出用電源22の電圧(50ボルト)を基準にしたものとなり、電圧計61にはその耐電圧を越える電圧が印加されてしまう。これに対して、本実施の形態では、コンデンサ62により電源電圧の直流成分がカットされ、その際のイオン電流波形に対応する電圧波形は図16に実線で示す通り、0ボルトを基準にしたものとなる。従って、イオン電流検出用電源22の高電圧(50V)が電圧計61に直接印加されることはなく、電圧計61に耐電圧を越える電圧が印加されるといった不具合が未然に防止できる。
【0080】
(第9の実施の形態)
次に、本発明にかかる第9の実施の形態を図17及び図18を用いて説明する。図17は、第9の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態の構成は、前記第2の実施の形態の構成(図7の構成)を一部修正したものであり、その特徴としては、イオン電流検出用電源22のアース側にイオン電流検出用抵抗72を設けると共に、その両端子間に電圧計71を設けている。この電圧計71の出力は前記ECU30に入力される。
【0081】
本構成によれば、イオン電流波形に対応する電圧波形は、図18に示すように、0ボルトを基準にしたものとなる。従って、電圧計71(電圧検出器)の耐電圧を越える電源電圧を用いる場合であっても、高価で且つ複雑な構成の電圧計71を必要とすることはない。
【0082】
なお、本発明は、上記各実施の形態の他に次の形態にて実現できる。
(1)上記各実施の形態では、発熱体加熱状態(第1の状態)とイオン電流検出状態(第2の状態)とを切替えるためのスイッチング手段手段として2つの2位置切替スイッチ23,24からなるスイッチ回路25を用いたが、これを変更してもよい。例えば、大電流を制御可能な半導体スイッチ(トランジスタ、サイリスタ等)に変更してもよく、要するに上記2つの状態を切替え可能な手段であればよい。
【0083】
(2)第1,第2の実施の形態では、イオン電流検出用電源22の極性と発熱体加熱用電源21の極性とを同じにして構成したが、これを逆極性にしてもよい。また、イオン電流検出用電源として交流電源を用いてもよい。要は、グロープラグ1の発熱体7と渦流室17の内壁(エンジンヘッド15)との間に電位差を与える手段であればよい。
【0084】
(3)上記各実施の形態において、前記グロープラグ1の一端に2つの端子を設け、これにより2線式のグロープラグを構成してもよい。この場合、導電線としてのリード線11a,11bは、前記2つの端子に電気的に接続されることとなる。
【0085】
(4)上記各実施の形態では、ECU30が実行する制御プログラムによってスイッチ回路25を動作させ、それにより発熱体加熱状態(第1の状態)とイオン電流検出状態(第2の状態)とを切替えるように構成していたが、これを変更してもよい。例えば、エンジン始動から所定時間(1〜2分程度)だけ発熱体加熱状態とし、所定時間経過後は、自動的に発熱体加熱状態からイオン電流検出状態に切替えるようにしてもよい。また、上記2つの状態の切替え動作を機械的に行わせるようにしてもよい。具体的には、スイッチング手段として、バイメタル及びその変形により動作する切替えスイッチを採用し、同スイッチの動作により前記2つの状態を切り替えるように構成してもよい。
【0086】
(5)また、発熱体及び耐熱性絶縁体を、導電性セラミック粉末としてのMoSi2 粉末と、絶縁性セラミック粉末としてのSi3 N4 粉末との配合割合を変えることによって作り分けるようにしてもよい。この場合、発熱体ではMoSi2 粉末の配合割合を多くして抵抗値を小さくし、耐熱性絶縁体ではSi3 N4 粉末の配合割合を多くして抵抗値を大きくする。
【0087】
(6)上記第5の実施の形態では、発熱体加熱用電源電源とイオン電流検出用電源とを共用化したシステムに定電圧回路を組み込んだ事例を説明したが、勿論これに限定されるものではない。発熱体加熱用電源電源とイオン電流検出用電源とを別個に有するシステム(例えば、第1の実施の形態で記載したシステムや、第2の実施の形態で記載したシステム)において、既述のような定電圧回路を組み込むようにしてもよい。この場合、図3,図4,図7のイオン電流検出用電源22のプラス側とイオン電流検出用抵抗26との間に定電圧回路が設けられ、イオン電流検出用電源22による50ボルト付近の直流電圧が一定電圧(例えば40ボルト)に変換される。本構成によれば、バッテリ電圧の変動時においても、微弱なイオン電流を精度良く検出することができる。
【0088】
(7)上記実施の形態では、グロープラグのセラミック発熱部の製造方法として、発熱体及び耐熱性絶縁体をそれぞれ射出成形法を用いたが、これを変更してもよい。例えば耐熱性絶縁体上に発熱体を印刷する等の手法を用いてもよい。
【0089】
(8)上記各実施の形態では、オールセラミックタイプのグロープラグについて記述したが、グロープラグの構成を変更してもよい。例えば、発熱体としてのコイル状の金属線(例えば、タングステン線)をセラミック材料からなる耐熱性絶縁体に埋設し、その金属線の一部を燃焼室内に露出させておく。この場合にも、燃焼室内に露出した部分が、イオン電流検出用電極として作用し、イオン電流検出機能を兼ね備えた安価なグロープラグを提供することができる。
【0090】
(9)上記各実施の形態では、ディーゼルエンジンの燃焼室内における燃焼イオンを検出するイオン電流検出装置に本発明のグロープラグを適用したが、他の装置に本グロープラグを適用することもできる。例えば、ガソリンエンジンの排気管中で未燃燃料を燃焼させる装置において、その未燃燃料の燃焼に伴う燃焼イオンを本発明のグロープラグにより検出することも可能である。この場合、当該装置により検出されたイオン電流から未燃燃料の燃焼状態が判定できる。
【0091】
(10)上記第7の実施の形態において、一方のタングステンリード線9aと電圧計51との間にコンデンサを配設してもよい。この場合、発熱体加熱用電源21による直流分がコンデンサにてカットされ、0ボルトを基準とするイオン電流波形が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態におけるグロープラグの概要を示す全体構成図。
【図2】グロープラグの要部を拡大して示す断面図。
【図3】第1の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示すものであって、発熱体加熱状態を示す構成図。
【図4】第1の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示すものであって、イオン電流検出状態を示す構成図。
【図5】スイッチ回路の切替え手順を示すフローチャート。
【図6】イオン電流波形の一例を示す図。
【図7】第2の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図8】第3の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図9】第4の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図10】第5の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図11】第6の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図12】気筒毎のイオン電流波形を示すタイムチャート。
【図13】第7の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図14】第7の実施の形態において、イオン電流に対応する電圧波形を示すタイムチャート。
【図15】第8の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図16】第8の実施の形態において、イオン電流に対応する電圧波形を示すタイムチャート。
【図17】第9の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図18】第9の実施の形態において、イオン電流に対応する電圧波形を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1…グロープラグ、6…発熱素子部としてのセラミック発熱部、7…発熱体、8…耐熱性絶縁体、11a,11b…一対の導電線をなすリード線、15…シリンダヘッド、17…燃焼室をなす渦流室、21…発熱体加熱用電源、22…イオン電流検出用電源、25…スイッチング手段としてのスイッチ回路、26…イオン電流検出手段としてのイオン電流検出用抵抗、41…定電圧回路、51…電圧検出器を構成する電圧計、61…電圧検出器を構成する電圧計、62…コンデンサ、71…電圧検出器を構成する電圧計、72…イオン電流検出用抵抗。
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料の着火・燃焼を促進するためのグロープラグを用いて燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するイオン電流検出装置、並びに当該グロープラグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガソリンエンジンのみならずディーゼルエンジンにおいても環境保護の面から、機関から排出される排気ガスや排気煙をより一層低減させることが要望されている。そして、こうした要望に応えるべく、各種のエンジン改良や後処理(触媒等)による排出ガス低減、燃料・潤滑油性状の改善、各種のエンジン燃焼制御システムの改善などが検討されている。
【0003】
また、上記検討事項に関連して、最近のエンジン燃焼制御システムにおいてはエンジン運転中の燃焼状態を検出することが要請されており、筒内圧、燃焼光、イオン電流等を検出することによってエンジン燃焼状態を検出することが検討されている。特に、イオン電流によりエンジン燃焼状態を検出することは、燃焼に伴う化学反応を直接的に観察できることから極めて有用と考えられており、種々のイオン電流検出方法が提案されている。
【0004】
特開平7−259597号公報には、燃料噴射ノズルの取り付け座部において、当該噴射ノズル及びエンジンのシリンダヘツドから絶縁されたスリーブ状の電極を装着し、その電極を外部の検出回路に接続することにより燃料の燃焼に伴うイオン電流を検出する方法が開示されている。
【0005】
また、米国特許第4,739,731号では、セラミックグロープラグを用いたイオン電流検出用センサが開示されている。つまり、かかる技術では、セラミックグロープラグのヒータ(発熱体)表面に白金製の導電層を取着すると共に、この導電層を燃焼室及びグロープラグ取付金具から絶縁している。そして、導電層に外部からのイオン電流測定用電源(直流250V)を印加して燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来技術においては、いずれも以下に示す問題を招来する。
つまり、前者の技術(特開平7−259597号公報)では、イオン検出のために他の部位より絶縁されたスリーブ状の電極を設置しなくてはならず、同電極の材料の用意及びその加工において煩雑な作業が強いられる。そのため、イオン電流検出用の電極が非常に高価な構成となるという問題があった。さらに、燃料噴射ノズルと電極との間、及び電極とシリンダヘツドとの間が燃焼室内にて発生するカーボンにより短絡し、早期に使用不能となるという欠点があった。
【0007】
また、後者の技術(米国特許第4,739,731号)では、イオン電流を検出する電極を発熱体とは別に発熱体上に設けると共に、当該電極及び発熱体を個々の電気経路を用いて別々の電源に接続していたため、グロープラグ及びそれを用いたイオン電流検出システムの構造が複雑になるという欠点があった。それに加えて、電極の耐熱性及び耐消耗性を確保するために白金など高価な貴金属を多量に必要とすることから、グロープラグ自体が非常に高価なものとなる欠点があった。
【0008】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、主として、簡単な構成で且つ精度良くイオン電流が検出できるイオン電流検出装置及びそれに用いられるグロープラグを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決するために、本発明では、一対の導電線により通電加熱される発熱体を有するグロープラグを用い、当該グロープラグのイオン検出機能を利用しつつイオン電流検出装置を次のように構成している。なお、かかるグロープラグでは、一対の導電線(リード線)及び発熱体が例えばシリンダヘッド等のアース側に対して絶縁されている。
【0010】
即ち、請求項1に記載のイオン電流検出装置では、一対の導電線に電源からの供給電圧を印加する第1の状態と、一対の導電線と前記電源との間の経路を遮断し、且つ前記発熱体と前記燃焼室の壁部との間に前記電源からの供給電圧を印加する第2の状態とを切り替えるためのスイッチング手段を備える。さらに、前記第2の状態において前記電源からの供給電圧により燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するイオン電流検出手段を備える。
【0011】
要するに、前記第1の状態では、一対の導電線に電源からの供給電圧が印加され、発熱体が加熱される。この状態は、例えばエンジンの低温始動時に燃料の着火及び燃焼を促進させる時の状態に相当する。また、前記第2の状態では、一対の導電線と電源との間の経路が遮断され、且つ前記発熱体と前記燃焼室の壁部との間に電源からの供給電圧が印加される。この状態は、イオン電流を検出する時の状態に相当し、その時のイオン電流はイオン電流検出手段により検出される。
【0012】
かかる場合において、上記2つの状態における前記発熱体への電圧印加は共通の導電線を用いて行われ、両状態の切替え動作はスイッチング手段により選択的に実施される。従って、イオン電流検出機能を有するグロープラグを用いたイオン電流検出装置において、その発熱体に接続される導電線の構成や、イオン電流の検出に関する構成が簡素化でき、安価なイオン電流検出装置を提供することができる。この場合、上記の如く簡単な構成にもかかわらず、イオン電流の検出精度を低下させることもない。
【0013】
イオン電流の検出装置に関わるより具体的な構成として、請求項2に記載の発明では、前記発熱体と前記燃焼室の壁部とを結ぶ電気経路に前記スイッチング手段を介して電源を接続し、請求項3に記載の発明では、前記発熱体と前記燃焼室の壁部とを結ぶ電気経路に直接、電源を接続している。これら両発明は共に、構成の簡素化を実現するための条件を十分に満たすものであるが、特に請求項3に記載の発明では、スイッチング手段を介さずに電源が発熱体と燃焼室の壁部との間に電圧を印加するものであるため、以下に記す特有の効果を奏する。
【0014】
即ち、燃料燃焼に伴うイオン電流は元々微弱な電流であるが、抵抗体となる前記スイッチング手段を介すことなく電源回路を構成することで、イオン電流をより一層精度良く検出することができる。なお、複数の切替え接点を有するスイッチ回路や、半導体スイッチング素子(トランジスタやサイリスタ等)がスイッチング手段として具体化でき、それ自体が幾分かの抵抗値を有する。
【0015】
また、前記第1の状態において前記一対の導電線に電圧を印加するための電源と、前記第2の状態において前記発熱体と前記燃焼室の壁部との間に電圧を印加する電源とは、請求項4に記載したように、別体の電源にて構成してもよいし、請求項5に記載したように、共通の電源にて構成してもよい。かかる場合、いずれの構成においても精度良くイオン電流を検出することが可能となる。特に請求項5に記載の発明では、イオン電流検出専用の電源として、例えば車載バッテリ以外の電源が不要となり、構成の簡素化を図ることができる。
【0016】
さらに、請求項6に記載の発明では、電源の一端に、発熱体に接続された片方の導電線を接続し、他端にグロープラグを保持するためのディーゼルエンジンのシリンダヘッドを接続している。この場合、ディーゼルエンジンに適用される場合において、発熱体と燃焼室の壁部との間に電圧を印加するための構成が簡素化できる。
【0017】
請求項7に記載の発明では、電源と前記一対の導電線の一方との間に、当該電源による供給電圧を一定にする定電圧回路を設けている。要するに、イオン電流は元々微弱な電流であるため、印加電圧の変動が大きいと、検出されるイオン電流値が影響を受け検出誤差を生じる。そして、この検出誤差に起因して、例えばイオン電流の出力の大きさ(波高値、面積等)を用いる失火検出時においては、当該失火の検出精度が低下するという事態を生ずる。これに対し、上記構成によれば、イオン電流の検出精度を向上させることができるため、ひいてはそのイオン電流の検出結果を用いた失火検出等の精度をも向上させることができる。
【0018】
請求項8に記載の発明では、複数のグロープラグを並列に接続し、スイッチング手段は各グロープラグについて同時に電源経路の切り替え動作を行うようにしている。かかる構成では、スイッチング手段としてのスイッチ回路や、イオン電流検出手段としての検出抵抗が共通化でき、より一層構成の簡素化を図ることができる。この場合、例えば多気筒エンジンの燃焼室に設けられるグロープラグにおいては、時系列的に各気筒のイオン電流が検出できる。
【0019】
またさらに、上記以外の構成にてイオン電流検出装置の簡素化を図るには、次の請求項9〜請求項11に記載するように具体化するのが望ましい。つまり、請求項9に記載の発明では、グロープラグの一方の導電線とアース接点との間にイオン電流検出用の電圧検出器を配設している。この場合、電圧検出器として、その内部構造が比較的複雑な差動増幅器が必要になるようなことはなく、アースからの電位差をとる比較的簡易な構造の増幅回路にて電圧検出器が構成できる。
【0020】
加えて、上記請求項9に記載の発明では、請求項10に記載したように、グロープラグの一方の導電線と前記電圧検出器との間にコンデンサを配設して構成するのが望ましい。この場合、上記コンデンサにより電源電圧の直流成分がカットされる。従って、例えばイオン電流検出の専用電源として比較的高電圧(例えば50V)の電源を用いたとしても、その高電圧が電圧検出器に直接印加されることはなく、電圧検出器(増幅器)には常にその耐電圧未満の電圧が印加されることになる。その結果、電圧検出器が損傷する等の不具合が未然に防止できる。因みに、この構成は、イオン電流検出用の電源電圧が30ボルト以上である場合において特に有効である。
【0021】
請求項11に記載の発明では、電源のアース側にイオン電流検出抵抗を設けると共に、その両端子にかかる電位差からイオン電流を検出するようにしている。この場合、イオン電流波形に対応する電圧波形は、0ボルトを基準にしたものとなる。従って、電圧検出器の耐電圧を越える電源電圧を用いる場合であっても、高価で且つ複雑な構成の電圧検出器を必要とすることはない。なおこうした構成の具体化に際しては、前記請求項4に記載したように、発熱体加熱用の電源とイオン電流検出用の電源とを別体として、後者の電源のアース側に前記イオン電流検出抵抗を設けるのが望ましい。これは、発熱体とイオン電流検出抵抗とを直列に接続すると、発熱体加熱時にその加熱性能が低下するおそれがあるためである。
【0022】
一方、上記イオン電流検出装置に用いられるグロープラグとして、請求項12に記載のグロープラグは、発熱体を有する発熱素子部を備え、該発熱素子部は燃料を燃焼させるための燃焼室内に突設されるようになっている。また、前記発熱体には前記燃焼室の内壁に対するイオン電流検出用電極が形成されている。この場合、グロープラグの発熱体は、当該発熱体の加熱時において、その加熱作用により燃焼室での着火及び燃焼を促進させる。併せて、発熱体の加熱時と異なるイオン電流の検出時には、前記発熱体が燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するためのイオン電流検出用電極としての役割を果たす。即ち、イオン電流の検出時において、発熱体とそれに近接する燃焼室の内壁とは、両者間に存在する燃料燃焼時のプラス及びマイナスイオンを捕獲するための2電極を形成する。上記構成によれば、非常に簡単な構成であるにもかかわらず、精度良くイオン電流を検出することができ、その情報を燃焼制御に有用に活用することが可能となる。また、グロープラグにイオン電流検出機能を付与することにより、安価なイオン電流検出用センサを提供することができる。
【0023】
請求項13に記載のグロープラグは、耐熱性絶縁体と当該耐熱性絶縁体に埋設された発熱体とを有する発熱素子部を備え、前記発熱体の一部を前記耐熱性絶縁体より露出させると共に、該露出部分を前記燃焼室の内壁に対するイオン電流検出用電極としている。かかる場合、発熱体の露出部分がイオン電流検出用電極として有効に働き、上記請求項12と同様の作用及び効果が得られることとなる。また、本請求項の構成では、次の作用及び効果が新たに得られる。つまり、発熱体の露出部にはグロープラグの使用に伴ってカーボンが付着すると考えられるが、その付着カーボンは発熱体の加熱動作(例えば、エンジンの低温始動時におけるグロー動作)によって焼き切られる。その結果、発熱体の一部に露出部を設けその露出部をイオン電流検出用電極として用いる本構成においても、グロープラグの使用寿命が短くなることはなく、長期間の使用に耐えうる優れた耐久性をグロープラグに付与することができる。
【0024】
また、上記発熱体は、請求項14に記載したように、セラミック材料により成形されるのが望ましい。この場合、セラミック材料からなる発熱体の一部を燃焼室に露出させる構造とすれば、高温な燃焼ガスに晒されても発熱体の酸化消耗が最小限に抑えられる。そのため、グロープラグの耐久性をより一層向上させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、ディーゼルエンジンの始動補助装置として用いられるセラミックグロープラグ(以下、単にグロープラグという)に本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。つまり、本実施の形態のグロープラグは、ディーゼルエンジンのシリンダヘッドに形成された燃焼室(渦流室)に設けられるものであって、その一部が燃焼室内に晒されるようになっている。そして、同グロープラグは、エンジンの低温始動時において、燃料噴射ノズルより噴射される燃料の着火及び燃焼を促進させる役割をなす。また、本実施の形態におけるグロープラグは、上記の始動補助機能に加えて、燃料燃焼時の燃焼火炎帯に存在する活性イオンを検出する役割をもなす。
【0026】
ここで、図1には、本実施の形態におけるグロープラグ1の全体構成を示す。同図において、グロープラグ1は略円筒状をなす金属製のハウジング2を有しており、このハウジング2の外周面には当該グロープラグ1を後述するシリンダヘッドに取り付けるための雄ねじ部3及び六角部4が形成されている。ハウジング2の上部には、管状のプロテクションチューブ5が溶着されている。
【0027】
また、前記ハウジング2には、発熱素子部としてのセラミック発熱部6が保持されており、このセラミック発熱部6は、導電性を有するU字状の発熱体7と、絶縁性を有する耐熱性絶縁体8と、前記発熱体7の両端に接続されると共に前記絶縁体8に埋設された2本のタングステンリード線9a,9bとから構成されている。前記発熱体7はその大部分が耐熱性絶縁体8内に埋設され、強固に保持されるものであるが、図2の要部拡大図に示すように、セラミック発熱部6先端において当該発熱体7の一部だけが耐熱性絶縁体8より露出した構成となっている。かかる構成において、発熱体7の露出部と後述するディーゼルエンジンの渦流室17(破線部)の内壁とは、イオン電流を検出するための対向電極を形成する。
【0028】
前記各タングステンリード線9a,9bの上端には、耐熱性絶縁体8内に埋め込まれた導電性チップ10a,10bが接続されており、導電性チップ10a,10bには各々にリード線11a,11b(導電線)が接続されている。これら2本のリード線11a,11bがグロープラグ1の外部信号入力線となっている。なお、前記ハウジング2及びプロテクションチューブ5と、リード線11a,11bとの間は、絶縁チューブ12及びゴムブッシュ13により電気的に絶縁されている。リード線11a,11bは、ゴムブッシュ13と共にプロテクションチューブ5のカシメ締め付け力により固定されている。
【0029】
以下に、セラミック発熱部6の詳細な構成について説明する。つまり、セラミック発熱部6の発熱体7及び耐熱性絶縁体8は、いずれも導電性セラミック粉末(本実施の形態では、珪化モリブデンMoSi2 粉末)と絶縁性セラミック粉末(本実施の形態では、窒化珪素Si3 N4 粉末)の混合物よりなり、且つ配合割合を略同一にした焼結体により構成されている。但し、発熱体7ではMoSi2 粉末の平均粒径がSi3 N4 粉末のそれよりも小さく、耐熱性絶縁体8ではMoSi2 粉末の平均粒径がSi3 N4 粉末のそれと同じ若しくはそれよりも大きくしてある。即ち、各粉体の粒径を変更することにより発熱体7と耐熱性絶縁体8とを作り分けるようにしている。
【0030】
上記構成を有するセラミック発熱部6において、発熱体7では、小径のMoSi2 粉末(導電性セラミック粉末)が大径のSi3 N4 粉末(絶縁性セラミック粉末)を取り囲んで互いに連なっており、それにより発熱体7に電流が流れ、同発熱体7が発熱される。一方、耐熱性絶縁体8では、大径のMoSi2 粉末(導電性セラミック粉末)間に小径のSi3 N4 粉末(絶縁性セラミック粉末)が介在するため、両者は直列に並んだ状態となり発熱体7に比べて抵抗が大きく絶縁層を形成する。
【0031】
また、セラミック発熱部6の製造方法としては、先ずMoSi2 粉末とSi3 N4 粉末との混合物にバインダーを混練してペースト化し、発熱体7と耐熱性絶縁体8とを各々に所望の形状に射出成形する。そして、発熱体7を耐熱絶縁体8で包み込むように配置して1700〜1800℃にてホットプレスした後、セラミック発熱部6として円柱状に削り出す。さらに、セラミック発熱部6の先端部において、耐熱性絶縁体8を切削加工し、発熱体7の一部を耐熱性絶縁体8から露出させる。
【0032】
次に、上記の如く構成されるグロープラグ1を用いたイオン電流検出システムを図3,図4を用いて説明する。なお、図3,図4は共に、本実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。このうち図3は、グロープラグ1(発熱体7)の加熱状態、即ちエンジン始動時における燃料の着火及び燃焼を促進するための状態を示し、図4は、燃料燃焼に伴うイオン電流をグロープラグ1により検出する状態を示す。本実施の形態では、前者の発熱体加熱状態(図3の状態)が「第1の状態」に相当し、後者のイオン電流検出状態(図4の状態)が「第2の状態」に相当する。
【0033】
各図において、ディーゼルエンジンのシリンダヘッド15にはねじ孔16が形成されており、このねじ孔16に前記グロープラグ1が螺着されている。即ち、グロープラグ1をシリンダヘッド15に螺着する際には、前記六角部4を所定の工具で挟み、同プラグ1の雄ねじ部3をねじ孔16にねじ入れるようにする。
【0034】
グロープラグ1のセラミック発熱部6の先端部は、シリンダヘッド15に形成された渦流室17に突出配置されている。この渦流室17にはピストン18上部に設けられた主燃焼室19が連通されており、渦流室17は燃焼室の一部をなす。渦流室17には燃料噴射ノズル20の先端部が配設されており、この燃料噴射ノズル20から渦流室17内に燃料が噴射されるようになっている。
【0035】
また、本システムにおいては、2つの直流電源が設けられており、その一方は、前記発熱体7を加熱するための発熱体加熱用電源21を構成し、他方はイオン電流を検出するためのイオン電流検出用電源22を構成している。なお、本実施の形態では、発熱体加熱用電源21として12V(ボルト)の直流電源(一般的な車載バッテリ)を用い、イオン電流検出用電源22として50V(ボルト)の直流電源を用いている。
【0036】
上記各電源21,22とグロープラグ1とは、2つの2位置切替スイッチ23,24からなるスイッチ回路25を介して接続されており、このスイッチ回路25の切替え動作に伴い前記第1,第2の状態が切り替えられるようになっている。スイッチ回路25は、電子制御装置(以下、ECUという)30からの指令信号が入力されない通常時にはイオン電流検出状態(図4の状態)を保持し、ECU30からの指令信号が入力されると、前記イオン電流検出状態から発熱体加熱状態(図3の状態)に移行する。このとき、2つの切替スイッチ23,24は同時に動作する。
【0037】
つまり、切替スイッチ23,24の端子23a,24aには前記グロープラグ1のリード線11a,11b(及びタングステンリード線9a,9b)がそれぞれに接続されている。また、切替スイッチ23,24は、前記端子23a及び24aに対して選択的に接続される各々2つずつの接点23b,23c及び24b,24cを有する。
【0038】
かかる場合において、発熱体加熱状態では、図3に示すように、端子23aと接点23bとの間が閉路されると共に、端子24aと接点24bとの間が閉路されている。このとき、グロープラグ1の一方のリード線11aには端子23a及び接点23bを介して発熱体加熱用電源21のプラス側が接続されると共に、他方のリード線11bには端子24a及び接点24bを介して発熱体加熱用電源21及びイオン電流検出用電源22のマイナス側が接続されている。即ち、発熱体7は加熱状態に保持されている(このとき、図3中の2点鎖線で示す経路を電流が流れる)。なお、接点24bは、シリンダヘッド15の一部にも接続されている。
【0039】
また、イオン電流検出状態では、図4に示すように、端子23aと接点23cとの間が閉路されると共に、端子24aと接点24cとの間が閉路される。即ち、グロープラグ1の一方のリード線11aには端子23a及び接点23cを介してイオン電流検出用電源22のプラス側が接続されると共に、他方のリード線11bはオープン状態となる。その結果、セラミック発熱部6の先端に形成された発熱体7の露出部とシリンダヘッド15との間にイオン電流検出用電源22の電圧が印加され、燃焼火炎帯の活性イオンの発生に伴い図4中に2点鎖線で示す経路でイオン電流が流れる。
【0040】
イオン電流検出用電源22のプラス側と前記接点23cとの間には、所定の抵抗値(本実施の形態では、100kΩ)を有するイオン電流検出用抵抗26が接続されており、このイオン電流検出用抵抗26を流れるイオン電流は、当該抵抗26の両端の電位差として電位差計27により検出される。なお、本実施の形態では、前記スイッチ回路25がスイッチング手段に相当し、前記イオン電流検出用抵抗26がイオン電流検出手段に相当する。
【0041】
ここで、イオン電流の検出原理を略述する。燃料噴射ノズル20による噴射燃料が渦流室17で燃焼に供されると、その燃焼火炎帯ではイオン化されたプラスイオンとマイナスイオンが大量に発生する。このとき、発熱体7とそれに対面するシリンダヘッド15との間にイオン電流検出用電源22の電圧が印加されることにより、発熱体7の露出部からなるイオン電流検出電極にはマイナスイオンが捕獲されると共に、シリンダヘッド15にはプラスイオンが捕獲される。その結果、図4に示す電流経路が形成され、この電流経路を流れるイオン電流がイオン電流検出用抵抗26両端の電位差として検出される。
【0042】
一方、ECU30は、CPU,ROM,RAM,入出力回路等からなる周知のマイクロコンピュータやA/D変換器(共に図示略)を中心に構成され、前記電位差計27により検出された検出信号を入力する。また、ECU30には、エンジン冷却水の温度を検出するための水温センサ31の検出信号や、エンジンクランク角に応じてエンジン回転数を検出するための回転数センサ32の検出信号が入力され、ECU30は各センサ31,32の検出信号に基づいて水温Tw,エンジン回転数Neを検知する。
【0043】
上記ECU30は、ディーゼルエンジンの低温始動時において、グロープラグ1の発熱体7を加熱させて燃料の着火及び燃焼を促進させる。また、ディーゼルエンジンの暖機完了時において、前記スイッチ回路25に切り替え指令信号を出力し、前記イオン電流検出用電源22のプラス側と片方のリード線11aとの間を閉路させて燃焼イオン電流を検出する。なお、エンジン始動当初においては、スイッチ回路25はECU30により発熱体加熱状態に保持されるようになっている。以下、図5のフローチャートを用いて、前記スイッチ回路25の切り替え処理を説明する。図5は、所定の時間の割り込み処理により実行される。
【0044】
さて、図5の処理がスタートすると、ECU30は、先ずステップ110でエンジン暖機完了後であり、且つスイッチ回路25がイオン電流検出状態にあるか否かを判別する。エンジン始動当初においては、ステップ110が否定判別され、ECU30は続くステップ120で水温Tw及びエンジン回転数Neを読み込む。
【0045】
その後、ECU30は、ステップ130で水温Twが所定の暖機完了温度(本実施の形態では、60℃)以上であるか否かを判別すると共に、ステップ140でエンジン回転数Neが所定回転数(本実施の形態では、2000rpm)以上に達しているか否かを判別する。かかる場合、ステップ130,140が共に否定判別されれば、ECU30は、エンジンの暖機が完了しておらず、グロープラグ1(発熱体7)による加熱が必要であるとみなし、ステップ150に進む。また、ステップ130,140のいずれかが肯定判別されれば、ECU30は、エンジンの暖機が完了した、或いはグロープラグ1(発熱体7)による加熱が不要になったとみなし、ステップ160に進む。
【0046】
ステップ150に進んだ場合、ECU30は、スイッチ回路25を発熱体加熱状態(図3の状態)に保持し、その後本処理を終了する。この状態では、グロープラグ1の発熱作用によって燃料の着火及び燃焼が促進される。
【0047】
また、ステップ160に進んだ場合、ECU30は、スイッチ回路25を発熱体加熱状態からイオン電流検出状態(図4の状態)に移行させ、その後本ルーチンを終了する。この状態では、イオン電流検出用抵抗26により燃料燃焼時に生じるイオン電流が検出される。
【0048】
なお、前記ステップ140が肯定判別されてステップ160に進む場合とは、例えばレーシング状態で一時的にエンジン回転数Neが上昇する場合が考えられ、この場合にはエンジン暖機が未だ完了していない。従って、スイッチ回路25が一旦イオン電流検出状態に移行したとしても、ECU30は、次回処理時のステップ110を否定判別し、ステップ130,140の判別処理を再び実施する。そして、一時的なエンジン回転数Neの上昇が収まり、同回転数Neが低下すると(Ne<2000rpm)、スイッチ回路25を再度、発熱体加熱状態に復帰させる(ステップ150)。
【0049】
その後、Tw≧60℃となりエンジン暖機が完了すると、ECU30はステップ110を肯定判別する。そして、エンジン暖機が完了し、且つスイッチ回路25がイオン電流検出状態に移行した後には、ECU30はステップ110を毎回肯定判別し、スイッチ回路25がイオン電流検出状態のままで保持される。
【0050】
図6は、オシロスコープを用いて燃料燃焼時に発生するイオン電流を観察した際の電流波形図である。同図において、圧縮TDC直後(燃料噴射時期の直後)に電圧が急上昇している波形が燃料の燃焼によるイオン電流波形であり、A点が燃焼の開始位置、即ち着火時期に相当する。また、このイオン電流波形には、2つの山が観測される。つまり、燃焼初期には、拡散火炎帯の活性イオンにより第1の山B1が観測され、燃焼中後期には筒内圧上昇による再イオン化により第2の山B2が観測される。
【0051】
この場合、ECU30は、イオン電流波形の第1の山B1から実際の着火時期を検出すると共に、該検出された実際の着火時期と目標着火時期との差をなくすべく着火時期のフィードバック制御を実施する。また、ECU30は、イオン電流波形の第2の山B2から異常燃焼、失火等の燃焼状態を検出し、その検出結果を燃料噴射制御に反映させる。こうしてイオン電流をエンジンの燃料噴射制御に反映させることにより、きめ細かくエンジンの運転状態を制御することが可能となる。
【0052】
次に、本実施の形態におけるグロープラグ1及びそれを用いたイオン電流検出装置の効果を説明する。
(a)本実施の形態のグロープラグ1では、発熱体7の一部を耐熱性絶縁体8より露出させると共に、該露出部分を渦流室17の内壁(シリンダヘッド15)に対するイオン電流検出用電極とした。かかる構成によれば、イオン電流の検出時において、発熱体7の露出部とそれに近接する渦流室17の内壁とは、燃料燃焼時に両者(発熱体7及び渦流室17の内壁)間に存在するプラス及びマイナスイオンを捕獲するための2電極を形成する。その結果、非常に簡単な様成であるにもかかわらず、精度良くイオン電流を検出することができ、安価なイオン電流検出用センサとしてのグロープラグ1を提供することができる。
【0053】
(b)また、発熱体7の露出部にはグロープラグ1の使用に伴ってカーボンが付着すると考えられるが、その付着カーボンは発熱体7の加熱動作(エンジンの低温始動時における加熱動作等)によって焼き切られる。その結果、発熱体7の一部をイオン電流検出用電極として用いる本構成においても、グロープラグ1の使用寿命が短くなることはなく、長期間の使用に耐えうる優れた耐久性をグロープラグ1に付与することができる。
【0054】
(c)さらに、本実施の形態のグロープラグ1においては、露出部を有する発熱体7をセラミック材料により成形した。それにより、高温な燃焼ガスに晒されても発熱体7の酸化消耗が最小限に抑えられ、グロープラグ1の耐久性をより一層向上させることができる。
【0055】
(d)また、グロープラグ1のセラミック発熱部6(発熱体7及び耐熱性絶縁体8)を、導電性セラミック粉末(MoSi2 粉末)と絶縁性セラミック粉末(Si3 N4 粉末)との混合物により形成した。そのため、耐熱性及び耐消耗性に優れたセラミック発熱部6を提供することができる。また、本セラミック発熱部6は、エンジンの低温始動時において良好なる始動補助機能を維持することができる。
【0056】
(e)上記グロープラグ1の製作に際しては、導電性セラミック粉末と絶縁性セラミック粉末との混合物からセラミック発熱部6を成形すると共に、同発熱部6の耐熱性絶縁体8の一部を切削加工して発熱体7の一部を露出させるようにした。そのため、特に煩雑な製造工程を要することもなく、簡便な方法にてイオン電流検出機能を兼ね備えたグロープラグ1を製作することができる。
【0057】
(f)一方、本実施の形態のイオン電流検出装置ではスイッチ回路25を設け、同スイッチ回路25により、発熱体加熱状態(第1の状態)とイオン電流検出状態(第2の状態)とを切り替えるようにした。即ち、上記2つの状態の電圧印加は共通のリード線11a,11bを用いて行われ、両状態の切替えはスイッチ回路25により選択的に実施される。従って、本イオン電流検出装置において、その発熱体7に接続されるリード線11a,11bの配線構成や、その他イオン電流の検出に関する構成が簡素化でき、安価なイオン電流検出装置を提供することができる。
【0058】
(g)併せて、本実施の形態では、ディーゼルエンジンに本イオン電流検出装置を適用することとし、イオン電流検出用電源22の一端に前記発熱体7に接続された片方のリード線11aを接続すると共に、他端にシリンダヘッド15を接続するようにした。この場合、イオン電流を検出するために必要な対向電極(発熱体7及び渦流室17の壁部)の構成が簡素化できる。
【0059】
(h)特に、本実施の形態のイオン電流検出装置は、ディーゼルエンジンの渦流室17内での燃焼火炎帯の活性イオンを検出するものであるため、燃焼イオン密度が高い状態でイオン電流を検出することができ、その検出精度を高めることができる。従って、ディーゼルエンジンの燃焼状態を精度良く検出し、その検出結果を燃料噴射制御に反映させることも可能となる。
【0060】
次に、本発明の第2〜第9の実施の形態を図7〜図18を用いて説明する。但し、各実施の形態の構成において、上述した第1の実施の形態と同等であるものについては図面に同一の記号を付すと共にその説明を簡略化する。そして、以下には第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。なお、以下に示すシステム構成図において、燃料噴射ノズル20、ECU30、センサ類等の全く同じ構成については図示を省略する。
【0061】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。先ず、上記第1の実施の形態との相違点を略述すれば、上記第1の実施の形態では、スイッチ回路25を介して発熱体7と渦流室17の壁部(シリンダヘッド15)との間にイオン電流検出用電源22を接続していたが(図3,4参照)、本実施の形態では、発熱体7と渦流室17の壁部との間に直接、イオン電流検出用電源22を接続したことを特徴としている。つまり、図7に示すように、グロープラグ1のリード線11a,11bのうち、片方のリード線11aにはイオン電流検出用抵抗26を介して常時、イオン電流検出用電源22のプラス側が接続されている。
【0062】
本実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に、構成が簡単で且つ安価なイオン電流検出装置が提供でき、本発明の目的を達成することができる。また、本実施の形態では、既述の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0063】
つまり、本実施の形態では、スイッチ回路25(接点23c)を介することなく、直接、発熱体7とシリンダブロック15との間にイオン電流検出用電源22による供給電源を印加するように構成したため、スイッチ回路25の切替え動作によるノイズ等の悪影響を排除することができる。特に、スイッチ回路25の各接点は酸化によって抵抗値が上昇し、このような接点抵抗の上昇時には元々微弱なイオン電流の検出が困難になるおそれがある。しかし、本実施の形態では、スイッチ回路25の接点を介することなくイオン電流検出用電源22の電圧を印加する構成としたため、イオン電流が微弱なものであっても精度良く検出することができる。
【0064】
(第3の実施の形態)
図8は、第3の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。先ず、上記第1,第2の実施の形態との相違点を略述すれば、上記第1,第2の実施の形態では、発熱体加熱用電源21とイオン電流検出用電源22とを別個に設けていたが、本実施の形態では、上記実施の形態におけるイオン電流検出用電源22を発熱体加熱用電源21(車載バッテリ)と共用化したことを特徴としている。つまり、図8に示すように、スイッチ回路25の接点23b,23cは共に、発熱体加熱用電源21のプラス側に接続されている。
【0065】
この場合、一般には発熱体加熱用電源21として12V程度のバッテリが使用されるため、イオン電流検出用抵抗26の抵抗値を電源電圧に応じた最適値に設定する必要がある。そこで、本実施の形態では、イオン電流検出用抵抗26の抵抗値を電圧の低下分に応じた大きな値に変更している(400kΩ程度若しくはそれ以上が望ましい)。
【0066】
かかる場合において、本発明者の実験結果によれば、上記第1,第2の実施の形態と略同じ精度のイオン電流検出結果が得られた。通常のバッテリ電源にてイオン電流が検出できる理由としては、ディーゼルエンジンでは燃焼圧が高く、且つ液滴な燃料が燃焼に供されるために燃焼イオン密度が高くなるからであると考えられる。
【0067】
本実施の形態によれば、上記第1,第2の実施の形態と同様に、構成が簡単で且つ安価なイオン電流検出装置が提供でき、本発明の目的を達成することができる。また、本実施の形態では、既述の効果に加えて以下の効果を得ることができる。つまり、イオン電流検出用電源22を発熱体加熱用電源21に共用したため、例えば車載バッテリ以外の電源が不要となり、構成の複雑化を招くことなくより一層安価なイオン電流検出装置を実現することができる。
【0068】
(第4の実施の形態)
図9は、第4の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態は、上記第2の実施の形態のように発熱体7と渦流室17の壁部との間に直接、イオン電流検出用電源22を接続し、且つ上記第3の実施の形態のようにイオン電流検出用電源22を発熱体加熱用電源21(車載バッテリ)と共用化した構成を有するものである。
【0069】
本実施の形態によれば、上記第1〜第3の実施の形態と同様に、構成が簡単で且つ安価なイオン電流検出装置が提供でき、本発明の目的を達成することができる。また、本実施の形態では、スイッチ回路25のノイズや接点抵抗によるイオン電流検出の検出精度の低下を防ぐと共に、電源の共用化により回路の簡素化を図ることができる。
【0070】
(第5の実施の形態)
図10は、第5の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態の構成は、前記第4の実施の形態の構成(図9の構成)を一部修正したものであり、その特徴としては、発熱体加熱用電源21(車載バッテリ)のプラス側とイオン電流検出用抵抗26との間に定電圧回路41を設けている。
【0071】
この定電圧回路41は、例えば増幅回路を含む出力負帰還回路を用いて構成され、発熱体加熱用電源21のバッテリ電圧VG(例えば12ボルト付近の直流電圧)を一定の定電圧Vi(例えば10ボルト)に変換する。かかる構成において、図10に示す発熱体加熱状態では、発熱体7の両端にバッテリ電圧VGが印加され、グロープラグは燃料の着火・燃焼を促進させる。また、スイッチ回路25が切り替えられ、イオン電流検出状態になると(図示略)、発熱体7の露出部とそれに隣接する渦流室17との間に定電圧Viが印加され、かかる状態下でイオン電流が検出される。
【0072】
本実施の形態の構成によれば、バッテリ電圧VGの変動時においても、微弱なイオン電流を精度良く検出することができる。つまり、バッテリ電圧VGの変動の影響を受けることなくイオン電流を検出することができ、その検出誤差を抑制することができる。例えばイオン電流の波高値や面積等を用いる失火検出時にも、当該失火を精度良く検出することができ、エンジン燃焼状態を良好に制御することが可能となる。
【0073】
(第6の実施の形態)
図11は、第6の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態は、多気筒エンジンに本発明のイオン電流検出装置を適用した事例を説明するものであり、当該エンジンは#1気筒〜#4気筒までの4つの気筒を有する。各気筒のグロープラグはいずれも上記各実施の形態と同様に、発熱体7の一部が耐熱性絶縁体8から露出した構成を有する。また、各グロープラグの発熱体7の一端に接続されたタングステンリード線9aは、いずれも切替スイッチ23の端子23aに接続され、発熱体7の他端に接続されたタングステンリード線9bは、いずれも切替スイッチ24の端子24aに接続されている。つまり、スイッチ回路25に対して各気筒のグロープラグは並列に接続されている。
【0074】
上記構成のイオン電流検出装置では、全気筒に対して発熱体加熱状態とイオン電流検出状態との切替え動作が同時に行われる。かかる場合、図12に示すように、気筒毎の燃焼順序(#1→#3→#4→#2→#1)に合わせて、時系列的に気筒毎にイオン電流が検出される。
【0075】
本実施の形態の構成によれば、スイッチ回路25やイオン電流検出用検出抵抗26が共通化でき、多気筒エンジンへの適用時においても、簡素化した構成を実現することができる。この場合、イオン電流を気筒毎に時系列的に検出し、その検出結果を各気筒の燃焼状態制御(着火時期制御や、失火検出制御等)に適用できる。
【0076】
(第7の実施の形態)
次に、本発明にかかる第7の実施の形態を図13及び図14を用いて説明する。図13は、第7の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態の構成は、前記第4の実施の形態の構成(図9の構成)を一部修正したものであり、その特徴としては、一方のタングステンリード線9aとアースとの間に増幅器からなる電圧計51を設けている。この電圧計51の出力は前記ECU30に入力される。本構成によれば、燃焼に伴うイオン電流発生時には、図14に示す通り発熱体加熱用電源21のバッテリ電圧(12ボルト)を基準にしたイオン電流波形(電圧波形)が得られる。
【0077】
かかる場合、以下に示す効果が得られる。つまり前記各実施の形態では、イオン電流検出用抵抗26の両端子間の電位差を検出するために、その内部構造が比較的複雑な差動増幅器にて構成される電位差計27を用いていた。しかし、本実施の形態では、アースからの電位差をとる比較的簡易な構造の増幅回路にて電圧計51(電圧検出器)が構成できる。その結果、イオン電流検出装置の簡素化が実現できる。
【0078】
(第8の実施の形態)
次に、本発明にかかる第8の実施の形態を図15及び図16を用いて説明する。図15は、第8の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態の構成は、前記第2の実施の形態の構成(図7の構成)を一部修正したものであり、その特徴としては、一方のタングステンリード線9aとアースとの間に増幅器からなる電圧計61を設けると共に、その電圧計61のプラス側にコンデンサ62を設けている。この電圧計61の出力は前記ECU30に入力される。また、本構成では、電源として比較的小電圧(12ボルト)の発熱体加熱用電源21と、比較的高電圧(50ボルト)のイオン電流検出用電源22とを有する。
【0079】
このとき、コンデンサ62がない場合を想定すると、イオン電流検出時の電圧波形(電流波形)は、図16に二点鎖線で示すようにイオン電流検出用電源22の電圧(50ボルト)を基準にしたものとなり、電圧計61にはその耐電圧を越える電圧が印加されてしまう。これに対して、本実施の形態では、コンデンサ62により電源電圧の直流成分がカットされ、その際のイオン電流波形に対応する電圧波形は図16に実線で示す通り、0ボルトを基準にしたものとなる。従って、イオン電流検出用電源22の高電圧(50V)が電圧計61に直接印加されることはなく、電圧計61に耐電圧を越える電圧が印加されるといった不具合が未然に防止できる。
【0080】
(第9の実施の形態)
次に、本発明にかかる第9の実施の形態を図17及び図18を用いて説明する。図17は、第9の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図である。本実施の形態の構成は、前記第2の実施の形態の構成(図7の構成)を一部修正したものであり、その特徴としては、イオン電流検出用電源22のアース側にイオン電流検出用抵抗72を設けると共に、その両端子間に電圧計71を設けている。この電圧計71の出力は前記ECU30に入力される。
【0081】
本構成によれば、イオン電流波形に対応する電圧波形は、図18に示すように、0ボルトを基準にしたものとなる。従って、電圧計71(電圧検出器)の耐電圧を越える電源電圧を用いる場合であっても、高価で且つ複雑な構成の電圧計71を必要とすることはない。
【0082】
なお、本発明は、上記各実施の形態の他に次の形態にて実現できる。
(1)上記各実施の形態では、発熱体加熱状態(第1の状態)とイオン電流検出状態(第2の状態)とを切替えるためのスイッチング手段手段として2つの2位置切替スイッチ23,24からなるスイッチ回路25を用いたが、これを変更してもよい。例えば、大電流を制御可能な半導体スイッチ(トランジスタ、サイリスタ等)に変更してもよく、要するに上記2つの状態を切替え可能な手段であればよい。
【0083】
(2)第1,第2の実施の形態では、イオン電流検出用電源22の極性と発熱体加熱用電源21の極性とを同じにして構成したが、これを逆極性にしてもよい。また、イオン電流検出用電源として交流電源を用いてもよい。要は、グロープラグ1の発熱体7と渦流室17の内壁(エンジンヘッド15)との間に電位差を与える手段であればよい。
【0084】
(3)上記各実施の形態において、前記グロープラグ1の一端に2つの端子を設け、これにより2線式のグロープラグを構成してもよい。この場合、導電線としてのリード線11a,11bは、前記2つの端子に電気的に接続されることとなる。
【0085】
(4)上記各実施の形態では、ECU30が実行する制御プログラムによってスイッチ回路25を動作させ、それにより発熱体加熱状態(第1の状態)とイオン電流検出状態(第2の状態)とを切替えるように構成していたが、これを変更してもよい。例えば、エンジン始動から所定時間(1〜2分程度)だけ発熱体加熱状態とし、所定時間経過後は、自動的に発熱体加熱状態からイオン電流検出状態に切替えるようにしてもよい。また、上記2つの状態の切替え動作を機械的に行わせるようにしてもよい。具体的には、スイッチング手段として、バイメタル及びその変形により動作する切替えスイッチを採用し、同スイッチの動作により前記2つの状態を切り替えるように構成してもよい。
【0086】
(5)また、発熱体及び耐熱性絶縁体を、導電性セラミック粉末としてのMoSi2 粉末と、絶縁性セラミック粉末としてのSi3 N4 粉末との配合割合を変えることによって作り分けるようにしてもよい。この場合、発熱体ではMoSi2 粉末の配合割合を多くして抵抗値を小さくし、耐熱性絶縁体ではSi3 N4 粉末の配合割合を多くして抵抗値を大きくする。
【0087】
(6)上記第5の実施の形態では、発熱体加熱用電源電源とイオン電流検出用電源とを共用化したシステムに定電圧回路を組み込んだ事例を説明したが、勿論これに限定されるものではない。発熱体加熱用電源電源とイオン電流検出用電源とを別個に有するシステム(例えば、第1の実施の形態で記載したシステムや、第2の実施の形態で記載したシステム)において、既述のような定電圧回路を組み込むようにしてもよい。この場合、図3,図4,図7のイオン電流検出用電源22のプラス側とイオン電流検出用抵抗26との間に定電圧回路が設けられ、イオン電流検出用電源22による50ボルト付近の直流電圧が一定電圧(例えば40ボルト)に変換される。本構成によれば、バッテリ電圧の変動時においても、微弱なイオン電流を精度良く検出することができる。
【0088】
(7)上記実施の形態では、グロープラグのセラミック発熱部の製造方法として、発熱体及び耐熱性絶縁体をそれぞれ射出成形法を用いたが、これを変更してもよい。例えば耐熱性絶縁体上に発熱体を印刷する等の手法を用いてもよい。
【0089】
(8)上記各実施の形態では、オールセラミックタイプのグロープラグについて記述したが、グロープラグの構成を変更してもよい。例えば、発熱体としてのコイル状の金属線(例えば、タングステン線)をセラミック材料からなる耐熱性絶縁体に埋設し、その金属線の一部を燃焼室内に露出させておく。この場合にも、燃焼室内に露出した部分が、イオン電流検出用電極として作用し、イオン電流検出機能を兼ね備えた安価なグロープラグを提供することができる。
【0090】
(9)上記各実施の形態では、ディーゼルエンジンの燃焼室内における燃焼イオンを検出するイオン電流検出装置に本発明のグロープラグを適用したが、他の装置に本グロープラグを適用することもできる。例えば、ガソリンエンジンの排気管中で未燃燃料を燃焼させる装置において、その未燃燃料の燃焼に伴う燃焼イオンを本発明のグロープラグにより検出することも可能である。この場合、当該装置により検出されたイオン電流から未燃燃料の燃焼状態が判定できる。
【0091】
(10)上記第7の実施の形態において、一方のタングステンリード線9aと電圧計51との間にコンデンサを配設してもよい。この場合、発熱体加熱用電源21による直流分がコンデンサにてカットされ、0ボルトを基準とするイオン電流波形が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態におけるグロープラグの概要を示す全体構成図。
【図2】グロープラグの要部を拡大して示す断面図。
【図3】第1の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示すものであって、発熱体加熱状態を示す構成図。
【図4】第1の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示すものであって、イオン電流検出状態を示す構成図。
【図5】スイッチ回路の切替え手順を示すフローチャート。
【図6】イオン電流波形の一例を示す図。
【図7】第2の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図8】第3の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図9】第4の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図10】第5の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図11】第6の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図12】気筒毎のイオン電流波形を示すタイムチャート。
【図13】第7の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図14】第7の実施の形態において、イオン電流に対応する電圧波形を示すタイムチャート。
【図15】第8の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図16】第8の実施の形態において、イオン電流に対応する電圧波形を示すタイムチャート。
【図17】第9の実施の形態におけるイオン電流検出システムの概要を示す構成図。
【図18】第9の実施の形態において、イオン電流に対応する電圧波形を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1…グロープラグ、6…発熱素子部としてのセラミック発熱部、7…発熱体、8…耐熱性絶縁体、11a,11b…一対の導電線をなすリード線、15…シリンダヘッド、17…燃焼室をなす渦流室、21…発熱体加熱用電源、22…イオン電流検出用電源、25…スイッチング手段としてのスイッチ回路、26…イオン電流検出手段としてのイオン電流検出用抵抗、41…定電圧回路、51…電圧検出器を構成する電圧計、61…電圧検出器を構成する電圧計、62…コンデンサ、71…電圧検出器を構成する電圧計、72…イオン電流検出用抵抗。
Claims (14)
- 一対の導電線により通電加熱される発熱体を有するグロープラグを用いたイオン電流検出装置であって、
前記一対の導電線に電源からの供給電圧を印加する第1の状態と、前記一対の導電線と前記電源との間の経路を遮断し、且つ前記発熱体と前記燃焼室の壁部との間に前記電源からの供給電圧を印加する第2の状態とを切り替えるためのスイッチング手段と、
前記第2の状態において前記電源からの供給電圧により燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するイオン電流検出手段と
を備えたことを特徴とするイオン電流検出装置。 - 前記発熱体と前記燃焼室の壁部とを結ぶ電気経路には、前記スイッチング手段を介して前記電源が接続されている請求項1に記載のイオン電流検出装置。
- 前記発熱体と前記燃焼室の壁部とを結ぶ電気経路には、直接、前記電源が接続されている請求項1に記載のイオン電流検出装置。
- 前記第1の状態において前記一対の導電線に電圧を印加するための電源と、前記第2の状態において前記発熱体と前記燃焼室の壁部との間に電圧を印加する電源とは、別体の電源からなる請求項1〜請求項3のいずれかに記載のイオン電流検出装置。
- 前記第1の状態において前記一対の導電線に電圧を印加するための電源と、前記第2の状態において前記発熱体と前記燃焼室の壁部との間に電圧を印加する電源とは、共通の電源からなる請求項1〜請求項3のいずれかに記載のイオン電流検出装置。
- ディーゼルエンジンに適用されるイオン電流検出装置であって、
前記電源の一端には、前記発熱体に接続された片方の導電線が接続され、他端には前記グロープラグを保持するためのディーゼルエンジンのシリンダヘッドが接続される請求項1〜請求項5のいずれかに記載のイオン電流検出装置。 - 前記電源と前記一対の導電線の一方との間には、当該電源による供給電圧を一定にする定電圧回路を設けた請求項1〜請求項6のいずれかに記載のイオン電流検出装置。
- 複数のグロープラグを並列に接続し、前記スイッチング手段は各グロープラグについて同時に電源経路の切り替え動作を行う請求項1〜請求項7のいずれかに記載のイオン電流検出装置。
- 前記グロープラグの一方の導電線とアース接点との間にイオン電流検出用の電圧検出器を配設したことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のイオン電流検出装置。
- 請求項9に記載のイオン電流検出装置において、
前記グロープラグの一方の導電線と前記電圧検出器との間にコンデンサを配設したことを特徴とするイオン電流検出装置。 - 前記電源のアース側にイオン電流検出抵抗を設けると共に、その両端子にかかる電位差からイオン電流を検出することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のイオン電流検出装置。
- 発熱体を有する発熱素子部を備え、燃料を燃焼させるための燃焼室内に前記発熱素子部が突設されるグロープラグであって、
前記発熱体には前記燃焼室の内壁に対するイオン電流検出用電極を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項11に記載のイオン電流検出装置に用いられるグロープラグ。 - 耐熱性絶縁体と当該耐熱性絶縁体に埋設された発熱体とを有する発熱素子部を備え、燃料を燃焼させるための燃焼室内に前記発熱素子部が突設されるグロープラグであって、
前記発熱体の一部を前記耐熱性絶縁体より露出させ、該露出部分を前記燃焼室の内壁に対するイオン電流検出用電極としたことを特徴とする請求項1〜請求項11に記載のイオン電流検出装置に用いられるグロープラグ。 - 前記発熱体はセラミック材料よりなる請求項12又は請求項13に記載のグロープラグ。
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