JP3785699B2 - グロープラグ - Google Patents
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- F23Q7/001—Glowing plugs for internal-combustion engines
- F23Q2007/002—Glowing plugs for internal-combustion engines with sensing means
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Description
【技術分野】
本発明は,燃料の着火・燃焼を促進するためのグロープラグに関する。
【0002】
【従来技術】
近年,ガソリンエンジン,ディーゼルエンジンにおいては,環境保護の面から,排気ガスや排気煙をより一層低減させることが要望されている。そして,こうした要望に応えるべく,各種のエンジン改良や後処理(触媒浄化等)により排出ガス低減,燃料・潤滑油性状の改善,各種のエンジン燃焼制御システムの改善などが検討されている。
【0003】
また,最近のエンジン燃焼制御システムにおいては,エンジンの燃焼状態を検出することが要請されており,筒内圧,燃焼光,イオン電流等を検出することによってエンジン燃焼状態を検出することが検討されている。特に,イオン電流によりエンジン燃焼状態を検出することは,燃焼に伴う化学反応を直接的に観察できることから極めて有用と考えられており,種々のイオン電流検出方法が提案されている。
【0004】
例えば,特開平7−259597号公報には,燃料噴射ノズルの取り付け座部において,当該噴射ノズル及びエンジンのシリンダヘッドから絶縁されたスリーブ状のイオン検出用電極を装着し,これを外部の検出回路に接続することにより燃料の燃焼に伴うイオン電流を検出する方法が開示されている。
また,米国特許第4,739,731号では,セラミックグロープラグを用いたイオン電流検出用センサが開示されている。
【0005】
これらの技術では,グロープラグのヒータ(通電発熱体)表面に白金製の導電層を取着すると共に,この導電層を燃焼室及びグロープラグ取付金具から絶縁している。そして,導電層に外部からイオン電流測定用電源(直流250V)を印加して燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するようにしている。
【0006】
【解決しようとする課題】
ところが,上記従来技術においては,いずれも以下に示す問題がある。
即ち,前者の技術(特開平7−259597号公報)では,イオン電流検出のために,他の部位より絶縁されたスリーブ状のイオン検出用電極を設置しなくてはならず,その材料の選択及びその加工において煩雑な作業が強いられる。
そのため,イオン検出用電極が非常に,高価な構成となるという問題がある。さらに,燃料噴射ノズルとイオン検出用電極との間,及びイオン検出用電極とシリンダヘッドとの間が燃焼室内にて発生するカーボンにより短絡し,早期に使用不能となるという欠点があった。
【0007】
また,後者の技術(米国特許第4,739,731号)では,イオン検出用電極を通電発熱体とは別に設けると共に,両者を別々の電源に接続しているために構造が複雑になるという欠点があった。また,イオン検出用電極の耐熱性及び耐消耗性を確保するために,白金など高価な貴金属を多量に必要とすることから,グロープラグ自体が非常に高価なものとなる欠点があった。
【0008】
さらに,イオン検出用電極に白金層を配設しても,長時間の使用によって白金層に微小クラックが発生し,白金層が剥離してしまう場合がある。この場合には正確なイオン電流が検出できない。また,上記クラックが通電発熱体内部にまで進展し,通電発熱体が破断するという問題が生じる場合もあった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので,カーボン付着の問題がなく,精度良くイオン電流を検出することができ,耐久性に優れたグロープラグを提供しようとするものである。
【0010】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,ハウジングと該ハウジング内に支持された本体とよりなるグロープラグにおいて,上記本体は,絶縁体と,該絶縁体の内部に設けられた通電発熱体及び該通電発熱体の両端部に電気的に接続されて絶縁体の外部に導出された一対のリード線と,上記絶縁体の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するための,イオン検出用電極とよりなると共に,上記イオン検出用電極の先端は,上記火炎に曝されるよう,上記絶縁体より露出しており,かつ,上記イオン検出用電極の線膨張係数をK,上記通電発熱体の線膨張係数をH,絶縁体の線膨張係数をSとしたとき,H≧S,H≧Kの関係にあることを特徴とするグロープラグにある。
【0011】
本発明において最も注目すべきことは,上記絶縁体の内部に通電発熱体とリード線とが配設されており,また,上記通電発熱体の線膨張係数Hと,イオン検出用電極の線膨張係数K又は絶縁体の線膨張係数Sとの関係が,H≧S,H≧Kの関係にあることである。
【0012】
上記線膨張係数Hが上記S又はKより小さい場合には,後述するようなグロープラグ本体表面における圧縮応力状態が得られず,引張応力状態となってしまう。そのため,グロープラグ本体へのクラックの発生の可能性が高くなり,グロープラグの耐久性の向上を図ることが困難となる。
【0013】
また,上記通電発熱体及びイオン検出用電極を絶縁体中に配設するに当たっては,例えば図3に示すごとく,予め両者の一体成形品を作製しておき,これを絶縁体粉末の中に埋め込んで一体成形する。
或いは,予め別途作製しておいた2つ割の絶縁体成形体の間に上記通電発熱体とイオン検出用電極からなる一体成形品を挟持配設する。
【0014】
これらの絶縁体成形品,或いは通電発熱体とイオン検出用電極との一体成形品は,例えば,これらの材料であるセラミック粉末とパラフィンワックスを主成分とする樹脂を混合し,それを射出成形することにより作製する。その後,脱脂を含めた加圧焼成を行ない,研削によってイオン検出機能付きセラミックヒーターを作製する。
【0015】
次に,本発明の作用効果につき説明する。
まず,本発明のグロープラグは,上記通電発熱体に電流を通すことにより発熱し,その加熱により燃焼室における着火及び燃焼を促進させる。
また,イオン検出用電極は,燃焼火炎中のイオン化の状態を検出する。即ち,イオン電流の検出時において,イオン検出用電極とそれに近接する燃焼室の内壁(シリンダヘッド)とは,両者間に存在する燃料燃焼時のプラスイオン及びマイナスイオンを捕獲するための2電極を形成する。
【0016】
これにより,精度良くイオン電流を検出することができ,その情報を燃焼制御に有用に活用することが可能となる。また,グロープラグに,本来の燃焼室の加熱機能(グロー機能)とイオン電流検出機能とを付与しているので,構造がコンパクトで,かつ安価に製造できる。
【0017】
また,本発明においては,上記通電発熱体,イオン検出用電極,絶縁体の各線膨張係数H,K,Sが,上記のごとく,H≧S,H≧Kの関係にある。即ち,通電発熱体は,イオン検出用電極,絶縁体のいずれよりも線膨張係数が大きい。そのため,グロープラグ使用時においては,グロープラグ本体の表面を常に圧縮応力状態に維持することができる。
【0018】
即ち,グロープラグ本体を作製する際には,上述したごとく,粉末材料を成形して約1800℃という高温において焼結させる。この焼結体は,焼結直後の高温状態においては,殆ど内部応力がない状態であると考えられる。
【0019】
一方,グロープラグを実際に使用する温度は,室温〜約1000℃程度であり上記焼結温度よりも低いため,グロープラグ本体は,上記の焼結直後よりも縮小する。このとき,本体を構成する通電発熱体,イオン検出用電極,絶縁体の各線膨張係数H,K,Sは上記の関係にあり,表面に露出する絶縁体とイオン検出用電極の線膨張係数K,Sよりも,内部に埋設された通電発熱体の線膨張係数Hが大きい。そのため,本体の表面部分には,常に圧縮応力が作用する。
【0020】
このように,本発明においては,グロープラグ使用時において常に本体表面に圧縮応力が作用している。この圧縮応力状態は,周知のごとく,引張応力状態の場合よりもクラック等の損傷に対して有利である。それ故,本発明のグロープラグは,本体表面の損傷を防止することができる。
【0021】
また,通電発熱体は,棒状絶縁体の内部に埋設されているため,燃焼火炎による腐触がなく,抵抗値の低下,発熱特性の変化を招くことがなく,長期にわたって高い発熱性能を発揮することができる。即ち,通電発熱体が酸化により消耗することがないため,その断面積が一定に保持されると共に,その抵抗値の変化を生ずることもない。さらに,燃焼室内での熱的衝撃等に起因して通電発熱体が破損する等の不具合も回避できる。
【0022】
また,本発明のグロープラグは,上記通電発熱体,リード線及びイオン検出用電極を上記絶縁体の内部に,一体的に設けているので,構造簡単である。
したがって,本発明によれば,カーボン付着の問題がなく,精度良くイオン電流を検出することができ,耐久性に優れたグロープラグを提供することができる。
【0023】
次に,請求項2の発明のように,上記各線膨張係数K,H,Sは,さらに,0≦H−S≦2.0×10-6(/℃)かつ,0≦H−K≦2.0×10-6(/℃)の関係にあることが好ましい。
【0024】
上記H−Sが0未満の場合は上述した通りである。一方,上記H−Sが2.0×10-6を超える場合には,通電発熱体の引張応力が大きくなり,長期間の使用において通電発熱体の抵抗値が早く上昇するという問題がある。
また,上記H−Kが0未満の場合は上述した通りである。一方,上記H−Kが2.0×10-6を超える場合にも同様に,長期間の使用において通電発熱体の抵抗値が早く上昇するという問題がある。
【0025】
次に,請求項3の発明のように,上記イオン検出用電極は,主成分が金属の珪化物,炭化物,窒化物,硼化物の1種又は2種以上の導電性セラミック材料,または該導電性セラミック材料と絶縁性セラミック材料との混合材料により作製することができる。この場合には,耐熱性が向上し,かつ絶縁体との膨張係数を容易に調整,合わせ込みができるため耐熱衝撃性向上の効果が得られる。
【0026】
次に,請求項4の発明のように,上記イオン検出用電極は,主成分が融点1200℃以上の金属の1種又は2種以上の高融点金属材料,または該高融点金属材料と絶縁性セラミック材料との混合材料により作製することができる。
上記前者の金属の場合には,素材が線状で使用できるため,材料,加工,組付に関するコストの低減の効果が得られる。
【0027】
また,後者の場合には,高温強度,耐酸化性が向上し,しかも発熱体と絶縁体との線膨張係数を容易に調整,合わせ込みができるため,耐久性に優れた効果が得られる。また,上記融点を1200℃とした理由は,グロープラグの通電発熱体を1000〜1100℃に発熱させるため,イオン検出用電極の耐熱性を考慮したためである。
【0028】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかるグロープラグにつき,図1〜図7を用いて説明する。
本例のグロープラグは,ディーゼルエンジンの始動補助装置として用いられる,セラミックグロープラグである。
本例のグロープラグ1は,図1に示すごとく,本体10と該本体10を装着するハウジング4とからなる。上記本体10は,絶縁体11と,該絶縁体11の内部に設けられた通電発熱体2と,該通電発熱体2の両端部に電気的に接続されて絶縁体の他端側に導出された一対のリード線21,22とを有する。
【0029】
また,上記絶縁体11の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するためのイオン検出用電極3を有する。該イオン検出用電極3は,絶縁体の直径方向の中心位置に設けてある。そして,イオン検出用電極3の先端30は,上記火炎に曝されるよう,絶縁体11の先端部に露出している。
【0030】
また,上記イオン検出用電極3の線膨張係数をK,通電発熱体2の線膨張係数をH,絶縁体の線膨張係数をSとしたとき,H≧S,H≧Kの関係にある。
この各線膨張係数K,H,Sの調整は,後述するごとく,その材料として用いた絶縁性セラミックと導電性セラミックとの混合比の調整により行った。
【0031】
上記本体10は,図1,図2に示すごとく,金属製のハウジング4内に,金属製の環状支持体41を介して,固定されている。
そして,上記通電発熱体2の一方のリード線21は,絶縁体11の内部を上昇して,本体10の側面に設けた導電性の端子部23を介して内部リード線231に電気的に接続されている。また,他方のリード線22は,絶縁体11の上端部に設けた導電性の端子部31を介して内部リード線33に電気的に接続されている。なお,外部リード線231は,通電発熱体2とイオン検出用電極3用のリード線として共用されている。
【0032】
一方,ハウジング4は,上記環状支持体41を有し,図2に示すごとく,その上部に保護筒42を有している。また,ハウジング4は,エンジンのシリンダヘッド45(図4)へ装着するための,雄ねじ部43を有する。
上記保護筒42の上方開口部には,ゴムブッシュ421が嵌合されている。また,該ゴムブッシュ421には,外部リード線233,333が貫挿され,これらはそれぞれ接続端子232,332を介して,上記内部リード線231,33に接続されている。
【0033】
したがって,外部リード線233,332は通電発熱体2の両端にそれぞれ電気的に導通されている。
また,本体10の先端部(下端部)は,図1に示すごとく,半球面形状に形成されており,イオン検出用電極3の先端30が露出している。
【0034】
次に,上記グロープラグ本体10の製造に当たっては,まず図3に示すごとき,通電発熱体2とイオン検出用電極3との一体成形品29を準備する。
該一体成形品29は,通電発熱体2及びイオン検出用電極3用のセラミック粉末を用いて射出成形,或いはプレス成形により作製する。
そして,この一体成形品29は,絶縁体11の中に埋設し,これらをホットプレスにて一体的に焼結する。その後,研削によって絶縁体11の形状を円筒・球面加工する。なお,上記埋設に先立って,上記リード線21,22を接続しておく。これにより,上記グロープラグ本体10が得られる。
【0035】
また,上記通電発熱体2,イオン検出用電極3,絶縁体11のセラミック材料としては,いずれも絶縁性セラミックとしての窒化珪素(Si3 N4 )と,導電性セラミックとしての珪化モリブデン(MoSi2 )とを用い,これに焼結助剤を添加した。そして,Si3 N4 とMoSi2 との混合比を変化させると線膨張係数が変化するという,後述す図8に示されたごとき特性を利用して,各線膨張係数H,K,Sを調整した。これにより,H≧K,H≧Sを実現した。
なお,上記通電発熱体2,イオン検出用電極3,絶縁体11の各絶縁抵抗の調整は,各セラミック材料の粒度の調整により行った。
【0036】
次に,上記のごとく本体10とハウジング4などとによって構成したグロープラグ1は,図4に示すごとく,エンジンのシリンダヘッド45に対して,ハウジンク4の雄ねじ部を螺合することにより装着する。これにより,グロープラグ本体10の先端部が,シリンダヘッド45の燃焼室の一部である渦流室451に突出した状態で装着される。なお,符号457は主燃焼室,458はピストン,459は燃料噴射ノズルである。
【0037】
また,上記グロープラグ1は,図4に示すごとく,グロープラグ作動回路に接続される。
即ち,通電発熱体2の加熱用回路としては,通電発熱体2の一端のリード線21が,外部リード線233,グローリレー53,531,及び12ボルトのバッテリ54,他方の外部リード線333を介して他端のリード線22に接続されることにより構成されている。
【0038】
また,イオン電流検出用回路としては,共用されている外部リード線233が,イオンリレー530,イオン電流検出用抵抗521,直流電源51を介してシリンダヘッド45に接続されることにより構成されている。また,上記イオン電流検出用抵抗521には,イオン電流を検出するための電位差計522が設けられ,これはECU(電子制御装置)52に接続されている。
また,ECU52には,上記グローリレー53,531,イオンリレー530,エンジン冷却水の水温センサ525,エンジンの回転数センサ526が接続されている。
【0039】
上記図4に示した,グロープラグ1の使用に当たっては,まずエンジンの始動時においては,ECU52により,グローリレー53,531がオンとされる。そのため,バッテリ54とグロープラグの通電発熱体2との間が閉路となり,グロープラグ本体10の通電発熱体2が通電され発熱する。そのためグロープラグ1は加熱状態となり,渦流室451が加熱され,着火温度に上昇する。
そこで,燃料噴射ノズル459から,燃料が噴射されると,その都度該燃料が着火され,ピストン458が作動し,エンジンが駆動される。
【0040】
一方,燃料が燃焼している際には,前記のごとく,イオンが発生するので,グローリレー53,531はオフとし,イオンリレー530をオンとして,イオン電流をイオン検出用電極3,イオン電流検出用抵抗521及び電位差計522により検出する。
即ち,グロープラグ本体10の上記イオン検出用電極3とシリンダヘッド45との間には直流電源51によって電圧が印加されている。
【0041】
そこで,渦流室451内における,燃焼火炎帯の活性イオンの発生に伴い,イオン電流検出用抵抗521を含む電流経路にイオン電流が流れる。
なお,イオン電流検出用抵抗521は,約500kΩで,これを流れるイオン電流は,その両端の電位差として電位差計522により検出される。
【0042】
ここで,イオン電流の検出原理を略述する。
燃料噴射ノズル459からの噴射燃料が渦流室451で燃焼されると,その燃焼火炎帯ではイオン化されたプラスイオンとマイナスイオンが大量に発生する。このとき,上記イオン検出用電極3とそれに対面するシリンダヘッド45との間にバッテリ電圧が印加されているので,イオン検出用電極3にはマイナスイオンが捕獲されると共に,シリンダヘッド45にはプラスイオンが捕獲される。
その結果,上記の電流経路が形成され,この電流経路を流れるイオン電流がイオン電流検出用抵抗521の両端の電位差として検出される。
【0043】
一方,ECU52は,CPU,ROM,RAM,入出力回路等からなる周知のマイクロコンピュータやA/D変換器(共に図示略)を中心に構成され,前記電位差計522により検出された検出信号を入力する。
また,ECU52には,エンジン冷却水の温度を検出するための水温センサ525の検出信号や,エンジンクランク角に応じてエンジン回転数を検出するための回転数センサ526の検出信号が入力され,ECU52は各検出信号に基づいて水温Tw,エンジン回転数Neを検知する。
【0044】
上記ECU52は,ディーゼルエンジンの低温始動時において,グロープラグ1の通電発熱体2を加熱させて燃料の着火及び燃焼を促進させる。また,ディーゼルエンジンの始動直後及び一般走行中において,イオン電流を検出する。
なお,エンジン始動当初においては,グローリレー53,531がオンの状態にあり,通電発熱体2は加熱状態に保持されるようになっている。
【0045】
以下,図5のフローチャートを用いて,上記グローリレー53,531のオン,オフ切り替え処理を説明する。このフローは,所定の時間の割り込み処理により実行される。
まず,図5の処理がスタートすると,ECU52は,先ずステップ11でエンジン暖機完了後であり,且つグローリレー53,531がオフであるか否かを判別する。エンジン始動当初においては,ステップ11が否定判別され,ECU52は続くステップ12で水温Tw及びエンジン回転数Neを読み込む。
【0046】
その後,ステップ13で水温Twが所定の暖機完了温度(本実施形態例では,60℃)以上であるか否かを判別すると共に,ステップ14でエンジン回転数Neが所定回転数(本実施形態例では,2000rpm)以上に達しているか否かを判別する。
このときステップ13,14が共に否定判別されれば,エンジンの暖機が完了しておらず,グロープラグの通電発熱体2による加熱が必要であるとみなし,ステップ15に進む。
【0047】
また,ステップ13,14のいずれかが肯定判別されれば,エンジンの暖機が完了,或いはグロープラグ1による加熱が不要であるとみなし,ステップ16に進む。
【0048】
ステップ15に進んだ場合は,グローリレー53,531はオンのまま維持される。この状態では,グロープラグ1の発熱作用によって燃料の着火及び燃焼が継続される。
また,ステップ16に進んだ場合,ECU52は,グローリレー53,531をオフとする。そして,イオンリレー530をオンとして,イオン電流を検出する。
【0049】
次に,図6(A)は,オシロスコープを用いて燃料燃焼時に発生するイオン電流を観察した際の電流波形図である。同図において,燃料噴射時期(圧縮TDC)直後に電圧が急上昇している波形が燃料の燃焼によるイオン電流波形であり,A点が燃焼の開始位置,即ち着火時期に相当する。
また,このイオン電流波形には,2つの山が観測される。つまり,燃焼初期には,拡散火炎帯の活性イオンにより第1の山B1が観測され,燃焼中後期には筒内圧上昇による再イオン化により第2の山B2が観測される。
【0050】
この場合,ECU52は,イオン電流波形の第1の山B1から実際の着火時期を検出すると共に,検出された実際の着火時期と目標着火時期との差をなくすべく着火時期のフィードバック制御を実施する。
また,ECU52は,イオン電流波形の第2の山B2から異常燃焼,失火等の燃焼状態を検出し,その検出結果を燃料噴射制御に反映させる。こうしてイオン電流をエンジンの燃料噴射制御に反映させることにより,きめ細かくエンジンの運転状態を制御することが可能となる。
【0051】
次に,グロープラグのイオン検出用電極3に,燃料燃焼により発生したカーボン(スス)が付着した状態,即ち燻りが発生したときには,図6(B)に示すごとく,イオン電流が燃料噴射時期の前には低く,その後には上昇していくという現象が発生する(図6の(A)と(B)を比較)。なお,図6(B)のIthは燻り状態を判別しグローリレー53,531をオンにするか否かを判断するための波高値の判定レベル(しきい値)を表している。
そこで,このような燻り現象が発生したときには,上記グローリレー53,531をオンとし,通電発熱体2を加熱し,上記の付着カーボンを焼き切る操作を行なう。
【0052】
図7は,このカーボン焼き切り操作を,上記図4の回路におけるECU52により行なうフローチャートである。
即ち,図7のステップ21において,グローリレー53,531がオフの状態にあるとき,ステップ22において,燃料噴射時期に上記のごとき異常イオン電流(図6B)が検出されたか否か判定する。否であれば,ステップ25に進み,グローリレー53,531はオフのままとする。
【0053】
一方,異常イオン電流が検出されたときには,ステップ23に進み,イオンリレー530をオフ,次にステップ24においてグローリレー53,531をオンとし,グロープラグの通電発熱体2を加熱してカーボンを焼失させる。
【0054】
上記のごとく,本例のグロープラグにおいては,絶縁体11の内部に通電発熱体2とリード線21,22とイオン検出用電極3とが設けてあり,これらは一体的に構成されている。そのため,通電発熱体2によるグロー動作(加熱動作)と,イオン検出用電極3によるイオン電流検出とを1つのグロープラグにより達成できる。また,そのためグロープラグがコンパクトになる。
【0055】
また,イオン検出用電極3にカーボンが付着した場合にも,通電発熱体2を通電加熱することにより,上記カーボンを焼き切り,イオン検出用電極3を正常状態にすることができる。そのため,イオン電流を精度良く検出することができる。
また,絶縁体11の先端部は,半球形状としてあるので,燃焼室内における熱衝撃を吸収することができる。
【0056】
また,イオン検出用電極3は,絶縁体11の直径方向の中心に配設してある。そのため,燃焼室内におけるあらゆる方向におけるイオン電流を高精度で検出することができる。
【0057】
さらに,本例においては,イオン検出用電極3,通電発熱体2,絶縁体11の各線膨張係数K,H,Sが,H≧SおよびH≧Kの関係にある。即ち,本体10の表面に露出したイオン検出用電極3,絶縁体11よりも,内部に完全に埋設された通電発熱体2の線膨張係数が大きい。それ故,本例のグロープラグ1は,その使用時において本体10の表面を常に圧縮応力状態にすることができ,耐久性に優れている。
【0058】
実施形態例2
本例においては,実施形態例1における通電発熱体2,イオン検出用電極3,絶縁体11の主材料である絶縁性セラミックとしてのSi3 N4 と導電性セラミックとしてのMoSi2 との混合比を変更し,この混合比と線膨張係数との関係を調査した。
さらに,本例においては,上記各線膨張係数H,K,Sを変化させたグロープラグを準備して耐久試験を行い,本発明の有効性を確認した。
【0059】
まず,上記Si3 N4 とMoSi2 の混合比と線膨張係数との関係は,Si3 N4 を100として,これに導電体としてのMoSi2 を0〜100%まで10%刻みで添加して焼結体を作成し,その線膨張係数を測定した。
なお,焼結助剤として,Y2 O3 とAl2 O3 とを合計10重量%外部添加した。
測定結果を図8に示す。同図は,横軸にSi3 N4 に対するMoSi2 の添加量を,縦軸に線膨張係数をとった。
【0060】
同図より知られるごとく,MoSi2 の添加量を増加させるほど線膨張係数が増加することがわかる。また,この線膨張係数は,材料の粒度等にはあまり左右されず,混合比だけでほぼ決定されることもわかっている。そのため,Si3 N4 とMoSi2 の混合比が同一であれば,上記通電発熱体,イオン検出用電極,絶縁体の線膨張係数は同一となる。
【0061】
次に,図8に示された特徴を利用して,Si3 N4 とMoSi2 の混合比を種々変化させ,通電発熱体等の線膨張係数が異なる種々のグロープラグを準備し,耐久試験を行った。なお,本例においては,わかりやすくするために,イオン検出用電極と絶縁体の線膨張係数K,Sを常に同一にした。
【0062】
準備したグロープラグ(試料No.E1〜E13,C1〜C6)の線膨張係数差〔H−K(S)〕を表1に示す。試料No.E1〜E13が本発明品であり,C1〜C6が比較品である。
また,耐久試験は,エンジンの始動を最高10000サイクルまで繰り返し,そのサイクルの増加に対する,クラックの発生時期,通電発熱体の抵抗上昇率,イオン電流検出の可否について調べた。
【0063】
結果を表1に示す。表1より知られるごとく,試料No.C1〜C6についてはいずれも10000サイクル未満においてグロープラグ本体にクラックが発生し,そのクラックによってイオン電流検出ができなくなった。
これに対し,試料No.E1〜E13は,10000サイクルにおいても本体にクラックが発生せず,常に正常なイオン電流検出を行うことができた。なお,10000サイクルの間正常であれば,市場において問題を起こさないことはわかっている。
【0064】
また,通電発熱体の抵抗上昇率は,線膨張係数差〔H−K(S)〕が2.0×10-6を超える場合に徐々に増加した。この通電発熱体の抵抗上昇は,その発熱温度が低下し,速熱性が遅くなるという問題がある。
それ故,線膨張係数差〔H−K(S)〕としては,2.0×10-6以下であることが好ましいことがわかる。
【0065】
【表1】
【0066】
実施形態例3
本例は,図9に示すごとく,実施形態例1のグロープラグ作動回路(図4)を変更したもので,実施形態例1のバッテリ54と直流電源51とを,1個のバッテリ55のみに代えたものである。
なお,イオン電流検出用抵抗521とバッテリ55との間には,定電流,定電圧回路524を介在することもできる。この場合には,回路構成の簡素化とコスト低減の効果がある。
【0067】
その他は,実施形態例1と同様である。
本例においても,実施形態例1と同様の効果を得ることができる。また,特に,本例においては,定電流・定電圧回路524を介在する事で1つのバッテリーでも,グロープラグ発熱時に生じるイオン検出用電極への印加電圧の変動を防止し,安定した検出性能が維持できるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,(A)グロープラグ本体の断面図,(B)上記(A)のA−A線矢視断面図。
【図2】実施形態例1における,グロープラグの全体説明図。
【図3】実施形態例1における,通電発熱体及びイオン検出用電極の一体成形品の斜視図。
【図4】実施形態例1における,グロープラグ作動回路図。
【図5】実施形態例1における,グロープラグ作動システムの,グロープラグ始動時のフローチャート。
【図6】実施形態例1における,(A)正常時のイオン電流,(B)燻り時のイオン電流を示す図。
【図7】実施形態例1における,燻り判定フローチャート。
【図8】実施形態例2における,絶縁性セラミックへの導電体添加量と線膨張係数との関係を示す説明図。
【図9】実施形態例3における,グロープラグ作動回路図。
【符号の説明】
1...グロープラグ,
10...本体,
11...絶縁体,
2...通電発熱体,
21,22...リード線,
3...イオン検出用電極,
4...ハウジング,
45...シリンダヘッド,
451...渦流室,
Claims (4)
- ハウジングと該ハウジング内に支持された本体とよりなるグロープラグにおいて,
上記本体は,絶縁体と,
該絶縁体の内部に設けられた通電発熱体及び該通電発熱体の両端部に電気的に接続されて絶縁体の外部に導出された一対のリード線と,
上記絶縁体の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するための,イオン検出用電極とよりなると共に,
上記イオン検出用電極の先端は,上記火炎に曝されるよう,上記絶縁体より露出しており,
かつ,上記イオン検出用電極の線膨張係数をK,上記通電発熱体の線膨張係数をH,絶縁体の線膨張係数をSとしたとき,H≧S,H≧Kの関係にあることを特徴とするグロープラグ。 - 請求項1において,上記各線膨張係数K,H,Sは,さらに,
0≦H−S≦2.0×10-6 (/℃)かつ,
0≦H−K≦2.0×10-6 (/℃)
の関係にあることを特徴とするグロープラグ。 - 請求項1又は2において,上記イオン検出用電極は,主成分が金属の珪化物,炭化物,窒化物,硼化物の1種又は2種以上の導電性セラミック材料,または該導電性セラミック材料と絶縁性セラミック材料との混合材料により作製されていることを特徴とするグロープラグ。
- 請求項1〜3のいずれか1項において,上記イオン検出用電極は,主成分が融点1200℃以上の金属の1種又は2種以上の高融点金属材料,または主成分が該高融点金属材料と絶縁性セラミック材料との混合材料により作製されていることを特徴とするグロープラグ。
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