JP3605965B2 - グロープラグ - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は,燃料の着火・燃焼を促進するためのグロープラグに関する。
【0002】
【従来技術】
近年,ガソリンエンジン,ディーゼルエンジンにおいては,環境保護の面から,排気ガスや排気煙をより一層低減させることが要望されている。そして,こうした要望に応えるべく,各種のエンジン改良や後処理(触媒浄化等)により排出ガス低減,燃料・潤滑油性状の改善,各種のエンジン燃焼制御システムの改善などが検討されている。
【0003】
また,最近のエンジン燃焼制御システムにおいては,エンジンの燃焼状態を検出することが要請されており,筒内圧,燃焼光,イオン電流等を検出することによってエンジン燃焼状態を検出することが検討されている。特に,イオン電流によりエンジン燃焼状態を検出することは,燃焼に伴う化学反応を直接的に観察できることから極めて有用と考えられており,種々のイオン電流検出方法が提案されている。
【0004】
例えば,特開平7−259597号公報には,燃料噴射ノズルの取り付け座部において,当該噴射ノズル及びエンジンのシリンダヘッドから絶縁されたスリーブ状のイオン検出用電極を装着し,これを外部の検出回路に接続することにより燃料の燃焼に伴うイオン電流を検出する方法が開示されている。
また,米国特許第4,739,731号では,セラミックグロープラグを用いたイオン電流検出用センサが開示されている。
【0005】
これらの技術では,グロープラグのヒータ(通電発熱体)表面に白金製の導電層を取着すると共に,この導電層を燃焼室及びグロープラグ取付金具から絶縁している。そして,導電層に外部からイオン電流測定用電源(直流250V)を印加して燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するようにしている。
【0006】
【解決しようとする課題】
ところが,上記従来技術においては,いずれも以下に示す問題がある。
即ち,前者の技術(特開平7−259597号公報)では,イオン電流検出のために,他の部位より絶縁されたスリーブ状のイオン検出用電極を設置しなくてはならず,その材料の選択及びその加工において煩雑な作業が強いられる。
そのため,イオン検出用電極が非常に,高価な構成となるという問題がある。さらに,燃料噴射ノズルとイオン検出用電極との間,及びイオン検出用電極とシリンダヘッドとの間が燃焼室内にて発生するカーボンにより短絡し,早期に使用不能となるという欠点があった。
【0007】
また,後者の技術(米国特許第4,739,731号)では,イオン検出用電極を通電発熱体とは別に設けると共に,両者を別々の電源に接続しているために構造が複雑になるという欠点があった。また,イオン検出用電極の耐熱性及び耐消耗性を確保するために,白金など高価な貴金属を多量に必要とすることから,グロープラグ自体が非常に高価なものとなる欠点があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので,カーボン付着の問題がなく,精度良くイオン電流を検出することができ,耐久性に優れたグロープラグを提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,ハウジングと該ハウジング内に支持された本体とよりなるグロープラグにおいて,
上記本体は,支持体と,
該支持体の内部に設けられた通電発熱体及び該通電発熱体の両端部に電気的に接続されて支持体の外部に導出された一対のリード線と,
上記支持体の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するための,イオン検出用電極とよりなり,
かつ上記イオン検出用電極は上記火炎に曝されないように上記支持体の内部に埋設されていることを特徴とするグロープラグにある。
【0010】
本発明において最も注目すべきことは,上記イオン検出用電極は上記火炎に曝されないように上記支持体の内部に埋設されていることである。
【0011】
上記支持体は,後述するイオン検出機能を確保するため,イオン電流検出時において導電性を有するものを用いる。具体的には,例えば,後述する導電性を有するセラミック等を用いる。
また,上記通電発熱体は電流を流すことによって発熱するものである。
また,上記イオン検出用電極は,イオン電流を検出するための電極である。
そして,これら通電発熱体とイオン検出用電極とは,別個にそれぞれ設けることもできるし,後述するごとくこれらを同一体として,上記の両方の機能を具備させることもできる。
【0012】
また,上記通電発熱体及びイオン検出用電極を支持体中に配設するに当たっては,例えば図3,図4に示すごとく,予め両者の成形品を作製しておき,これを支持体の原料である粉末中に埋め込んで一体成形する。
或いは,予め別途作製しておいた2つ割りの支持体の間に上記通電発熱体とイオン検出用電極を挟持配設する。
これらの通電発熱体,イオン検出用電極,支持体の一体成形品は,例えば,これらの材料粉末を射出成形することにより作製する。
【0013】
,また,上記通電発熱体,イオン検出用電極は,上記支持体の内部に印刷形成により設けることもできる。
かかる印刷形成につき一例を示せば,例えば支持体を形成するためのセラミック材料の生成形体(グリーンシート)の表面に,スクリーン印刷,パッド印刷,ホットスタンプ等により,所望形状に導電性材料よりなる通電発熱体,そのリード線,及びイオン検出用電極を印刷することにより行なう。次いで,生成形体を巻回し,その後焼成する。
これにより,印刷形成された通電発熱体,リード線,イオン検出用電極を内蔵した支持体が得られる。
【0014】
次に,本発明の作用効果につき説明する。
まず,本発明のグロープラグは,上記通電発熱体に電流を通すことにより発熱し,その加熱により燃焼室における着火及び燃焼を促進させる。
また,イオン検出用電極は,燃焼火炎中のイオン化の状態を検出する。即ち,イオン電流の検出時において,導電性の支持体内に埋設されたイオン検出用電極とそれに近接する燃焼室の内壁(シリンダヘッド)とは,両者間に存在する燃料燃焼時のプラスイオン及びマイナスイオンを捕獲するための2電極を形成する。
【0015】
これにより,精度良くイオン電流を検出することができ,その情報を燃焼制御に有用に活用することが可能となる。また,グロープラグに,本来の燃焼室の加熱機能(グロー機能)とイオン電流検出機能とを付与しているので,構造がコンパクトで,かつ安価に製造できる。
【0016】
また,本発明においては,イオン検出用電極は,燃焼室内における火炎に曝されないように上記支持体の内部に埋設さている。そのため,イオン検出用電極は,燃焼火炎による腐触がなく,抵抗値の変化等を招くことがなく,長期にわたって精度よくイオン電流の検出を行うことができる。
さらに,燃焼室内での熱的衝撃等に起因してイオン検出用電極が破損する等の不具合も回避できる。
【0017】
このように,本発明においては,イオン検出用電極の腐食,破壊等を確実に防止できるため,従来のように耐食性に優れた白金等の高価な貴金属を用いるということが必要がない。
それ故,グロープラグのコストダウンにも大きく貢献することができる。
【0018】
また,支持体は,燃料燃焼に伴ってその表面にカーボンが付着する場合があるが,その付着カーボンは通電発熱体の加熱動作(例えば,エンジンの低温始動時におけるグロー動作)によって焼き切ることができる。そのため,長期間に渡って正確にイオン電流を検出することができる。
【0019】
また,本発明のグロープラグは,上記通電発熱体及びリード線,イオン検出用電極を上記支持体の内部に設けているので,構造簡単である。
したがって,本発明によれば,カーボン付着の問題がなく,精度良くイオン電流を検出することができ,耐久性に優れたグロープラグを提供することができる。
【0020】
次に,請求項2の発明のように,上記支持体の外表面から上記イオン検出用電極までの絶縁抵抗値は,300℃において50MΩ以下であることが好ましい。上記絶縁抵抗値が300℃において50MΩを越える場合には,イオン電流検出時における電流値が小さくなりすぎて,支持体にイオン検出用電極を埋設した状態で十分なイオン電流検出が困難であるという問題がある。一方,絶縁抵抗値の下限は,通電発熱体への通電時における絶縁確保のため10kΩであることが好ましい。
なお,300℃においてとするのは,グロープラグ使用時における受熱による支持体の温度上昇を考慮するためである。
【0021】
また,請求項3の発明のように,上記支持体の材料は絶縁性セラミックと導電性セラミックと焼結助剤との混合物であり,上記絶縁性セラミックとしては窒化珪素を用い,上記導電性セラミックとしては金属の窒化物,ホウ化物,炭化物又は珪化物の1種又は2種以上を用い,上記焼結助剤としては酸化アルミニウム及び1種又は2種以上の希土類元素の酸化物を用いることが好ましい。即ち,絶縁抵抗の高い窒化珪素(Si3 N4 )に対して絶縁抵抗の低い上記導電性セラミックを混合することによって,一定の導電性を確保する。これにより,上記の支持体の絶縁抵抗値を十分に満足することができる。
【0022】
上記窒化珪素(Si3 N4 )と混合する金属の窒化物,ホウ化物,炭化物又は珪化物としては,例えば次のものがある。
まず窒化物としては,例えばTiN,ZrN,VN,NbN,TaN,Cr2 N等がある。
ホウ化物としては,例えばTiB2 ,ZrB2 ,HfB2 ,VB2 ,NbB2 ,TaB2 ,CrB,CrB2 ,Mo2 B,Mo2 B5 ,WB,W2 B5 ,LaB6 等がある。
【0023】
炭化物としては,TiC,ZrC,VC,NbC,TaC,Cr3 C2 ,Mo2 C,W2 C,WC等がある。
珪化物としては,例えばTiSi2 ,ZrSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,CrSi2 ,Mo5 Si3 ,MoSi2 ,WSi2 等がある。
【0024】
また,上記窒化珪素と混合する上記1種又は2種以上の化合物の割合は,全体に対して5〜50%(重量比)であることが好ましい。5%未満の場合には絶縁抵抗値を十分に低下させることができないという問題があり,一方,50%を超える場合には,絶縁抵抗値はもっと低下するが,高温での強度が低下し,熱衝撃性が悪化するという問題がある。
また,上記焼結助剤における希土類元素の酸化物としては,例えば,Y2 O3 ,Yb2 O3 ,Nd2 O3 ,Sc2 O3 等がある。
【0025】
また,請求項4の発明のように,上記通電発熱体と上記イオン検出用電極とは同一体により構成されている構造にすることもできる。即ち,この同一体に通電発熱体とイオン検出用電極の両機能を兼ね備えさせることもできる。この場合には,さらに構造を簡単にすることができる。またイオン電極検出状態における電極面積を拡大することができ,より広範囲に渡ったイオン検出が可能となり検出精度向上が図られる。
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかるグロープラグにつき,図1〜図9を用いて説明する。
本例のグロープラグは,ディーゼルエンジンの始動補助装置として用いられる,セラミックグロープラグである。
本例のグロープラグ1は,図1に示すごとく,ハウジング4と該ハウジング4内に支持された本体10とよりなる。本体10は,支持体11と,該支持体11の内部に設けられた通電発熱体2及び該通電発熱体2の両端部に電気的に接続されて支持体11の外部に導出された一対のリード線21,22とを有する。
【0026】
また,上記支持体10の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するための,イオン検出用電極3を有する。かつ該イオン検出用電極3は上記火炎に曝されないように上記支持体11の内部に埋設されている。
また,本例においては,後述するように,支持体11として,Si3 N4 (窒化珪素)とTiB2 (ホウ化チタン)との混合物からなるセラミックを用いた。
【0027】
上記本体10は,図1,図2に示すごとく,金属製のハウジング4内に,金属製の環状支持体41を介して,固定されている。
そして,上記通電発熱体2の一方のリード線21は,支持体11の内部を上昇して,本体10の側面に設けた導電性の端子部23を介して内部リード線231に電気的に接続されている。また,他方のリード線22は,上記環状支持体41を介してハウジング4に電気的に接続されている。
また,上記イオン検出用電極3の上部は,支持体11の上端部に設けた導電性の端子部31を介して内部リード線33に電気的に接続されている。
【0028】
一方,ハウジング4は,上記環状支持体41を有し,図2に示すごとく,その上部に保護筒42を有している。また,ハウジング4は,エンジンのシリンダヘッド45へ装着するための,雄ねじ部43を有する。上記保護筒42の上方開口部には,ゴムブッシュ421が嵌合されている。また,該ゴムブッシュ421には,外部リード線233,333が貫挿され,これらはそれぞれ接続端子232,332を介して,上記内部リード線231,33に接続されている。
したがって,外部リード線233は通電発熱体2の一端に,外部リード線333はイオン検出用電極3にそれぞれ電気的に導通されている。
【0029】
なお,通電発熱体2の他端は,上記のごとく,環状支持体41を介してハウジング4に電気的に導通している(図1)。
また,本体10の先端部(下端部)は,図1に示すごとく,半球面形状に形成されている。
そして,本例においては,通電発熱体2及びイオン検出用電極3は,いずれも支持体11内に埋設されている。
【0030】
次に,上記グロープラグ本体10を製造するに当たっては,まず図3,図4
に示すごとく,U字状の通電発熱体2の成形品29と棒状のイオン検出用電極3の成形品39を準備する。これらの成形品29,39は,それぞれ通電発熱体2及びイオン検出用電極3用のセラミック粉末を用いて射出成形,或いはプレス成形により作製する。
【0031】
そして,成形品29,39は,支持体11用のセラミック粉末の中に埋設し,これらをホットプレスにて一体的に焼成する。その後,研削にて支持体11の形状を円筒・球面加工する。なお,上記埋設に先立ってリード線21,22を成形品29に接続しておく。これにより,通電発熱体2及びイオン検出用電極3を内蔵したグロープラグ本体10が得られる。
【0032】
上記支持体11用のセラミック粉末としては,Si3 N4 を95%(重量比)と,TiB2 を5%と,焼結助剤としてY2 O3 とAl2 O3 を10%外部添加し,さらに,パラフィンWAXを主成分とする複合バインダー15%を外部添加し,これらを混合して用いた。
【0033】
焼結助剤は,その他の希土類元素の酸化物の1種又は2種以上を添加し,Si3 N4 粒界を結晶化しても良い。そして,これらの材料を成形し,加圧焼結を行った。加圧焼結の条件は,加圧力500kg/cm2 ,焼結温度1800℃,時間60分で実施した。得られた焼結体の絶縁抵抗を図5に符号E1で示す。
【0034】
図5は,横軸に温度,縦軸に絶縁抵抗(MΩ)をとった。図5のE1より知られるごとく,Si3 N4 にTiB2 を混合した本例の支持体11は,300℃において絶縁抵抗値が20MΩ以下と非常に小さい値となり,十分な導電性を有している。
【0035】
次に,上記のごとく本体10とハウジング4などとによって構成したグロープラグ1は,図6に示すごとく,エンジンのシリンダヘッド45に対して,ハウジンク4の雄ねじ部を螺合することにより装着する。これにより,グロープラグ本体10の先端部が,シリンダヘッド45の燃焼室の一部である渦流室451に突出した状態で装着される。なお,符号457は主燃焼室,458はピストン,459は燃料噴射ノズルである。
【0036】
また,上記グロープラグ1は,図6に示すごとく,グロープラグ作動回路に接続される。
即ち,通電発熱体2の一端のリード線21は,外部リード線233,グローリレー53,531,及び12ボルトのバッテリ54を介して,金属製のシリンダヘッド45に接続されている。更に,シリンダヘッド45,ハウジング4,環状支持体41,本体10のリード線22(図1)を介して,通電発熱体2の他端に接続されている。
これにより,通電発熱体2の加熱用回路が形成される。
【0037】
また,イオン検出用電極3の外部リード線333は,イオン電流検出用抵抗521,直流電源51を介してシリンダヘッド45に接続されている。また,上記イオン電流検出用抵抗521には,イオン電流を検出するための電位差計522が設けられ,これはECU(電子制御装置)52に接続されている。また,ECU52には,上記グローリレー53,531,エンジン冷却水の水温センサ525,エンジンの回転数センサ526が接続されている。
【0038】
上記図6に示した,グロープラグ1の使用に当たっては,まずエンジンの始動時においては,ECU52により,グローリレー53,531がオンとされる。そのため,バッテリ54とグロープラグの通電発熱体2との間が閉路となり,グロープラグ本体10の通電発熱体2が通電され発熱する。そのためグロープラグ1は加熱状態となり,渦流室451が加熱され,着火温度に上昇する。
そこで,燃料噴射ノズル459から,燃料が噴射されると,その都度該燃料が着火され,ピストン458が作動し,エンジンが駆動される。
【0039】
一方,燃料が燃焼している際には,前記のごとく,イオンが発生するので,そのイオン電流をイオン検出用電極3,イオン電流検出用抵抗521及び電位差計522により検出する。
即ち,グロープラグ本体10の上記イオン検出用電極3とシリンダヘッド45との間には500ボルトの直流電源51によって電圧が印加されている。また,イオン検出用電極3を覆っている支持体11は,上記のごとく導電性を有する。
【0040】
そこで,渦流室451内における,燃焼火炎帯の活性イオンの発生に伴い,イオン電流検出用抵抗521を含む電流経路にイオン電流が流れる。
なお,イオン電流検出用抵抗521は,約500kΩで,これを流れるイオン電流は,その両端の電位差として電位差計522により検出される。
【0041】
ここで,イオン電流の検出原理を略述する。
燃料噴射ノズル459からの噴射燃料が渦流室451で燃焼されると,その燃焼火炎帯ではイオン化されたプラスイオンとマイナスイオンが大量に発生する。このとき,上記イオン検出用電極3とそれに対面するシリンダヘッド45との間にバッテリ電圧が印加されているので,イオン検出用電極3にはマイナスイオンが捕獲されると共に,シリンダヘッド45にはプラスイオンが捕獲される。
その結果,上記の電流経路が形成され,この電流経路を流れるイオン電流がイオン電流検出用抵抗521の両端の電位差として検出される。
【0042】
一方,ECU52は,CPU,ROM,RAM,入出力回路等からなる周知のマイクロコンピュータやA/D変換器(共に図示略)を中心に構成され,前記電位差計522により検出された検出信号を入力する。
また,ECU52には,エンジン冷却水の温度を検出するための水温センサ525の検出信号や,エンジンクランク角に応じてエンジン回転数を検出するための回転数センサ526の検出信号が入力され,ECU52は各検出信号に基づいて水温Tw,エンジン回転数Neを検知する。
【0043】
上記ECU52は,ディーゼルエンジンの低温始動時において,グロープラグ1の通電発熱体2を加熱させて燃料の着火及び燃焼を促進させる。また,ディーゼルエンジンの始動中,始動直後および一般走行中において,イオン電流を検出する。
なお,エンジン始動当初においては,グローリレー53,531がオンの状態にあり,通電発熱体2は加熱状態に保持されるようになっている。
【0044】
以下,図7のフローチャートを用いて,上記グローリレー53,531のオン,オフ切り替え処理を説明する。図7は,所定の時間の割り込み処理により実行される。
まず,図7の処理がスタートすると,ECU52は,先ずステップ11でエンジン暖機完了後であり,且つグローリレー53,531がオフであるか否かを判別する。エンジン始動当初においては,ステップ11が否定判別され,ECU52は続くステップ12で水温Tw及びエンジン回転数Neを読み込む。
【0045】
その後,ステップ13で水温Twが所定の暖機完了温度(本実施形態例では,60℃)以上であるか否かを判別すると共に,ステップ14でエンジン回転数Neが所定回転数(本実施形態例では,2000rpm)以上に達しているか否かを判別する。
このときステップ13,14が共に否定判別されれば,エンジンの暖機が完了しておらず,グロープラグの通電発熱体2による加熱が必要であるとみなし,ステップ15に進む。
【0046】
また,ステップ13,14のいずれかが肯定判別されれば,エンジンの暖機が完了,或いはグロープラグ1による加熱が不要であるとみなし,ステップ16に進む。
【0047】
ステップ15に進んだ場合は,グローリレー53,531はオンのまま維持される。この状態では,グロープラグ1の発熱作用によって燃料の着火及び燃焼が継続される。
また,ステップ16に進んだ場合,ECU52は,グローリレー53,531をオフとする。
【0048】
次に,図8は,オシロスコープを用いて燃料燃焼時に発生するイオン電流を観察した際の電流波形図である。同図において,燃料噴射時期(圧縮TDC)直後に電圧が急上昇している波形が燃料の燃焼によるイオン電流波形であり,A点が燃焼の開始位置,即ち着火時期に相当する。
また,このイオン電流波形には,2つの山が観測される。つまり,燃焼初期には,拡散火炎帯の活性イオンにより第1の山B1が観測され,燃焼中後期には筒内圧上昇による再イオン化により第2の山B2が観測される。
【0049】
この場合,ECU52は,イオン電流波形の第1の山B1から実際の着火時期を検出すると共に,検出された実際の着火時期と目標着火時期との差をなくすべく着火時期のフィードバック制御を実施する。
また,ECU52は,イオン電流波形の第2の山B2から異常燃焼,失火等の燃焼状態を検出し,その検出結果を燃料噴射制御に反映させる。こうしてイオン電流をエンジンの燃料噴射制御に反映させることにより,きめ細かくエンジンの運転状態を制御することが可能となる。
【0050】
上記のごとく,本例のグロープラグにおいては,支持体11の内部に通電発熱体2とリード線21,22とイオン検出用電極3とを設けてあり,これらは一体的に構成されている。そのため,通電発熱体2によるグロー動作(加熱動作)と,イオン検出用電極3によるイオン電流検出とを1つのグロープラグにより達成できる。また,そのためグロープラグがコンパクトになる。
また,支持体11の先端部は,半球形状としてあるので,燃焼室内における熱衝撃を吸収することができる。
【0051】
さらに,本例においては,支持体11として上記のごとく300℃において絶縁抵抗が20MΩ以下の十分な導電性を有するセラミックを用いている。そのため,支持体11の内部へイオン検出用電極3を埋設することができる。即ち,支持体11に導電性を持たせることにより,イオン検出用電極3を燃焼火炎に曝すことなくイオン電流の検出を可能にすることができる。
【0052】
そのため,イオン検出用電極3の腐食,破壊等の不具合を確実に防止することができる。それ故,従来のようにイオン検出用電極の露出部に高価な白金等を用いるということも必要ない。したがって,グロープラグのコストダウンを図ることもできる。
【0053】
また,通電発熱体2及びリード線21,22も支持体11の内部に設けてあるので,燃焼ガスによる酸化等の腐食もなく,さらに耐久性に優れている。
また,本例においては,測定電圧を500Vとしたが,10V等の低電圧にしても,イオン波形を増幅すれば解析が可能である。
【0054】
実施形態例2
本例は,実施形態例1における支持体11として,上記実施形態例1のE1の他に,表1に示すごとき原料により作製した支持体試料E2〜E4を準備し,上記E1と共にイオン電流検出可否を評価した。試料E1〜E4は,いずれもSi3 N4 95%(重量比)と,それぞれ別の導電性のセラミック粉末を5%加え,さらに焼結助剤としてY2 O3 とAl2 O3 を合計10%外部添加したものである。
【0055】
なお,比較のために,セラミック粉末としてSi3 N4 を用い,焼結助剤としてY2 O3 とAl2 O3 を合計10%外部添加し,他の導電性セラミックを混合しなかったものも準備した(C1)。そして,焼結体を作製するに当たっては,上記粉末とパラフィンWAXを主成分とするバインダー15%を混合し,射出成形を行う。その後,加圧焼結を行なう。その条件の加圧は500kg/cm2 ,焼結温度1800℃,時間60分で実施した。その他は,実施形態例1と同様である。
【0056】
まず,各試料E1〜E4,C1からなる支持体の絶縁抵抗値を図5に示す。図5より知られるごとく,E1〜E4はいずれも300℃において絶縁抵抗値が50MΩ以下となった。一方,C1は,300℃においても500MΩであり,最も大きな値を示した。
【0057】
次に,これらの試料E1〜E4,C1を用いた支持体11を有するグロープラグを用いて,イオン電流検出の可否を調査した。
その結果を表1に示す。表1より知られるごとく,試料E1〜E4を用いた場合には前述した図8に示すようなイオン電流が検出された。一方,試料C1を用いた場合には,イオン電流の検出ができなかった。
また,本例のE1〜E4においては,導電性セラミックを各々5%添加したがこの添加量を5%以上にした場合には,絶縁抵抗値がもっと大きく低下する。
【0058】
【表1】
【0059】
実施形態例3
本例は,図9に示すごとく,実施形態例1のグロープラグ作動回路(図6)を変更したもので,実施形態例1のバッテリ54と直流電源51とを,1個のバッテリ55のみに代えたものである。この場合,イオン検出回路522には,増幅回路を設けておく。
なお,イオン電流検出用抵抗521とバッテリ55との間には,定電流,定電圧回路524を介在することもできる。この場合には,回路構成の簡素化とコスト低減の効果がある。
【0060】
その他は,実施形態例1と同様である。
本例においても,実施形態例1と同様の効果を得ることができる。また,特に,本例においては,定電流・定電圧回路524を介在する事で1つのバッテリーでも,グロープラグ発熱時に生じるイオン検出用電極への印加電圧の変動を防止し,安定した検出性能が維持できるという効果を得ることができる。
【0061】
実施形態例4
本例は,図10に示すごとく,グロープラグ本体10における,通電発熱体2とイオン検出用電極3とを1つのU字状成形体として一体化した例である。また,通電発熱体2用の一方のリード線220を,支持体11の上端に設けた端子部31に接続し,リード線220とイオン検出用電極3との端子部を共用した。
【0062】
尚,この場合,通電発熱体2の加熱用回路とイオン電流検出回路とはECU52からの指令信号により,スイッチ切替されるもので作動状態としては常に通電発熱体加熱状態か,イオン電流検出状態のどちらか一方に接続されている回路構成となっている。
その他は,実施形態例1と同様であり,実施形態例1と同様の効果を得ることができる。
【0063】
なお,本例では,通電発熱体2とイオン検出用電極3とを一体化し,また上記端子部31を共用しているので,構造が簡単である。
また,本例においては,イオン電流検出状態では通電発熱体自体もイオン検出用電極へと作用するため,実質,イオン検出用電極の面積が拡大でき,より広範囲に渡ったイオン検出が可能となり検出精度向上の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,(A)グロープラグ本体の断面図,(B)上記(A)のA−A線矢視断面図。
【図2】実施形態例1における,グロープラグの全体説明図。
【図3】実施形態例1における,通電発熱体の成形体の斜視図。
【図4】実施形態例1における,イオン検出用電極の成形体の斜視図。
【図5】実施形態例1における,支持体の温度と絶縁抵抗との関係を示す説明図。
【図6】実施形態例1における,グロープラグ作動回路図。
【図7】実施形態例1における,グロープラグ作動システムの,グロープラグ始動時のフローチャート。
【図8】実施形態例1における,正常時のイオン電流を示す図。
【図9】実施形態例2における,グロープラグ作動回路図。
【図10】実施形態例3における,(A)グロープラグ本体の断面図,(B)上記(A)のB−B線矢視断面図。
【符号の説明】
1...グロープラグ,
10...本体,
11...支持体,
2...通電発熱体,
21,22,220...リード線,
3...イオン検出用電極,
4...ハウジング,
45...シリンダヘッド,
451...渦流室,
Claims (4)
- ハウジングと該ハウジング内に支持された本体とよりなるグロープラグにおいて,
上記本体は,支持体と,
該支持体の内部に設けられた通電発熱体及び該通電発熱体の両端部に電気的に接続されて支持体の外部に導出された一対のリード線と,
上記支持体の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するための,イオン検出用電極とよりなり,
かつ上記イオン検出用電極は上記火炎に曝されないように上記支持体の内部に埋設されていることを特徴とするグロープラグ。 - 請求項1において,上記支持体の外表面から上記イオン検出用電極までの絶縁抵抗値は,300℃において50MΩ以下であることを特徴とするグロープラグ。
- 請求項1又は2において,上記支持体の材料は絶縁性セラミックと導電性セラミックと焼結助剤との混合物であり,上記絶縁性セラミックとしては窒化珪素を用い,上記導電性セラミックとしては金属の窒化物,ホウ化物,炭化物又は珪化物の1種又は2種以上を用い,上記焼結助剤としては酸化アルミニウム及び1種又は2種以上の希土類元素の酸化物を用いることを特徴とするグロープラグ。
- 請求項1〜3のいずれか1項において,上記通電発熱体と上記イオン検出用電極とは同一体により構成されていることを特徴とするグロープラグ。
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