JP3823394B2 - グロープラグ - Google Patents
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- F23Q2007/002—Glowing plugs for internal-combustion engines with sensing means
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Description
【技術分野】
本発明は,燃料の着火・燃焼を促進するためのグロープラグに関する。
【0002】
【従来技術】
近年,ガソリンエンジン,ディーゼルエンジンにおいては,環境保護の面から,排気ガスや排気煙をより一層低減させることが要望されている。そして,こうした要望に応えるべく,各種のエンジン改良や後処理(触媒浄化等)により排出ガス低減,燃料・潤滑油性状の改善,各種のエンジン燃焼制御システムの改善などが検討されている。
【0003】
また,最近のエンジン燃焼制御システムにおいては,エンジンの燃焼状態を検出することが要請されており,筒内圧,燃焼光,イオン電流等を検出することによってエンジン燃焼状態を検出することが検討されている。特に,イオン電流によりエンジン燃焼状態を検出することは,燃焼に伴う化学反応を直接的に観察できることから極めて有用と考えられており,種々のイオン電流検出方法が提案されている。
【0004】
例えば,特開平7−259597号公報には,燃料噴射ノズルの取り付け座部において,当該噴射ノズル及びエンジンのシリンダヘッドから絶縁されたスリーブ状のイオン検出用電極を装着し,これを外部の検出回路に接続することにより燃料の燃焼に伴うイオン電流を検出する方法が開示されている。
また,米国特許第4,739,731号では,セラミックグロープラグを用いたイオン電流検出用センサが開示されている。
【0005】
これらの技術では,グロープラグのヒータ(通電発熱体)表面に白金製の導電層を取着すると共に,この導電層を燃焼室及びグロープラグ取付金具から絶縁している。そして,導電層に外部からイオン電流測定用電源(直流250V)を印加して燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するようにしている。
【0006】
【解決しようとする課題】
ところが,上記従来技術においては,いずれも以下に示す問題がある。
即ち,前者の技術(特開平7−259597号公報)では,イオン電流検出のために,他の部位より絶縁されたスリーブ状のイオン検出用電極を設置しなくてはならず,その材料の選択及びその加工において煩雑な作業が強いられる。
そのため,イオン検出用電極が非常に,高価な構成となるという問題がある。さらに,燃料噴射ノズルとイオン検出用電極との間,及びイオン検出用電極とシリンダヘッドとの間が燃焼室内にて発生するカーボンにより短絡し,早期に使用不能となるという欠点があった。
【0007】
また,後者の技術(米国特許第4,739,731号)では,イオン検出用電極を通電発熱体とは別に設けると共に,両者を別々の電源に接続しているために構造が複雑になるという欠点があった。また,イオン検出用電極の耐熱性及び耐消耗性を確保するために,白金など高価な貴金属を多量に必要とすることから,グロープラグ自体が非常に高価なものとなる欠点があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので,カーボン付着の問題がなく,精度良くイオン電流を検出することができ,耐久性に優れたグロープラグを提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,ハウジングと該ハウジング内に支持された本体とよりなるグロープラグにおいて,
上記本体は,絶縁体と,
該絶縁体の内部に設けられた通電発熱体及び該通電発熱体の両端部に電気的に接続されて上記絶縁体の外部に導出された一対のリード線と,
上記絶縁体の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するための,イオン検出用電極とよりなり,
上記イオン検出用電極は,上記通電発熱体の途中に電気的に接続されていると共に,その先端は上記火炎に曝されるように上記絶縁体から露出しており,
かつ,上記イオン検出用電極の先端は,上記ハウジングの先端部から2mm以上離れた位置に配置されており,
上記通電発熱体全体の電気抵抗をR(Ω),
上記通電発熱体のプラス端から上記イオン検出用電極の上記先端までの電気抵抗をB(Ω)としたとき,
B(Ω)≧R(Ω)/3
の関係にあることを特徴とするグロープラグにある。
【0010】
本発明において最も注目すべきことは,上記絶縁体の内部に上記通電発熱体とイオン検出用電極とが配設されており,また該イオン検出用電極の先端は,上記ハウジングの先端部から2mm以上離れた位置に配置されていることである。
【0011】
また,上記通電発熱体及びイオン検出用電極を絶縁体中に配設するに当たっては,例えば図4に示すごとく,予め両者の一体成形品を作製しておき,これを絶縁体の原料であるセラミック粉末中に埋め込んで一体成形する。
或いは,予め別途作製しておいた2つ割の絶縁体の間に上記通電発熱体とイオン検出用電極を挟持配設する。
これらの絶縁体成形品,或いは通電発熱体とイオン検出用電極との一体成形品は,例えば,これらの材料を射出成形することにより作製する。
【0012】
また,上記通電発熱体,イオン検出用電極は,上記絶縁体の内部に印刷形成により設けることもできる。
かかる印刷形成につき一例を示せば,例えば絶縁体を形成するためのセラミック材料の生成形体(グリーンシート)を2個準備し,その1つの生成形体の表面に,スクリーン印刷,パッド印刷,ホットスタンプ等により,所望形状に導電性材料よりなる通電発熱体,そのリード線,及びイオン検出用電極を印刷することにより行なう。
【0013】
次いで,印刷部を覆うように他の生成形体を積層し,その後焼成する。ここで,通電発熱体,リード線及びイオン検出用電極は,2個以上の生成形体に印刷して積層してもよい。また,通電発熱体とイオン検出用電極を別々の生成形体に印刷して,積層時又は焼成後に導通させてもよい。
これにより,印刷形成された通電発熱体,リード線,イオン検出用電極を内蔵した絶縁体が得られる。
【0014】
次に,本発明の作用効果につき説明する。
まず,本発明のグロープラグは,上記通電発熱体に電流を通すことにより発熱し,その加熱により燃焼室における着火及び燃焼を促進させる。
また,イオン検出用電極は,燃焼火炎中のイオン化の状態を検出する。即ち,イオン電流の検出時において,イオン検出用電極とそれに近接する燃焼室の内壁(シリンダヘッド)とは,両者間に存在する燃料燃焼時のプラスイオン及びマイナスイオンを捕獲するための2電極を形成する。
【0015】
これにより,精度良くイオン電流を検出することができ,その情報を燃焼制御に有用に活用することが可能となる。また,グロープラグに,本来の燃焼室の加熱機能(グロー機能)とイオン電流検出機能とを付与しているので,構造がコンパクトで,かつ安価に製造できる。
【0016】
また,本発明においては,イオン検出用電極の先端位置を,ハウジングの先端部から2mm以上離している。そのため,グロープラグ本体の表面にカーボンが堆積しても確実にイオン電流の検出を行うことができる。
即ち,後述する図10に示すごとく,イオン検出用電極の先端位置とハウジングの先端部との距離(L,図2)が2mm未満の場合には,その距離が近い程イオン出力の検出率が低くなる。これに対して,上記距離が2mm以上である本発明は,確実にイオン出力を検出することができる。
【0017】
この理由は次のように考えられる。
上記イオン検出用電極の先端からハウジングの先端部までの距離(L)が2mm未満の場合には,グロープラグ本体にカーボンが堆積した場合にはイオン検出用電極とハウジングとの絶縁抵抗の低下が大きく,短絡に近い状態となるため,イオン電流の検出が困難となる。
これに対し,本発明においては上記距離(L)が2mm以上であるため,グロープラグ本体にカーボンが堆積していても,絶縁抵抗の低下が小さく,短絡状態になることはない。また,長時間の使用により,仮に絶縁抵抗の低下が進行しても,後述する通電発熱体への通電による発熱によりカーボンを焼失することができる。そのため,本発明のグロープラグは,イオン電流を確実に検出することができる。
【0018】
また,本発明のグロープラグは,上記通電発熱体,リード線及びイオン検出用9極を上記絶縁体の内部に,一体的に設けているので,構造簡単である。
したがって,本発明によれば,カーボン付着の問題がなく,精度良くイオン電流を検出することができ,耐久性に優れたグロープラグを提供することができる
【0019】
次に,上記通電発熱体全体の電気抵抗をR(Ω),上記通電発熱体のプラス端から上記イオン検出用電極の上記先端までの電気抵抗をB(Ω)としたとき,B(Ω)≧R(Ω)/3の関係にある。
この場合には,グロープラグ本体にカーボンが堆積して上記の短絡に近い状態になっても,通電発熱体,イオン検出用電極,付着カーボンの回路に適正な電流を流すことができる。そのため,この回路の通電発熱により,カーボンを焼失させることができる。また,上記の短絡状態解消後には,通電発熱体に電流が流れ,カーボン焼失が促進される。
【0020】
なお,上記電気抵抗B(Ω)が非常に大きい場合には,上記の通電発熱体,イオン検出用電極,付着カーボンの回路の抵抗値が大きくなる。この場合には,付着カーボンが存在していても,通電発熱体全体にほぼ正常な電流が流れ,通電発熱体の発熱により付着カーボンを焼失させることができる。
それ故,グロープラグ本来の発熱機能を常時発揮させることができると共にグロープラグ本体に堆積したカーボンを容易に焼失させることができる。
【0021】
また,上記電気抵抗R(Ω),B(Ω)を,B(Ω)≧R(Ω)/3に構成するに当たっては,通電発熱体とイオン検出用電極の材料,或いは通電経路の太さ,厚み,長さ等を変えることにより行うことができる。
例えば,材料変化による手段としては,原料となる導電性セラミック粉末と絶縁性セラミック粉末との混合割合を調整することにより行うことができる。また,通電経路の長さを変える手段としては,通電発熱体へのイオン検出用電極の接続位置を変えることにより行うことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかるグロープラグにつき,図1〜図8を用いて説明する。
本例のグロープラグは,ディーゼルエンジンの始動補助装置として用いられる,セラミックグロープラグである。
本例のグロープラグ1は,図1に示すごとく,本体10と該本体10を装着するハウジング4とからなる。上記本体10は,絶縁体11と,該絶縁体11の内部に設けられた通電発熱体2と,該通電発熱体2の両端部に電気的に接続されて絶縁体の他端側に導出された一対のリード線21,22とを有する。
【0023】
また,上記絶縁体11の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するためのイオン検出用電極3を有する。該イオン検出用電極3は,通電発熱体2の途中に電気的に接続されていると共に,その先端30は上記火炎に曝されるように絶縁体11から露出している。
【0024】
かつ,図1,図2に示すごとく,イオン検出用電極3の先端30は,ハウジングの先端部411から2mm以上離れた位置に配設されている。
また,本例においては,通電発熱体2全体の電気抵抗値をR(Ω),通電発熱体2のプラス端210からイオン検出用電極3の先端までの電気抵抗をB(Ω)としたとき,B(Ω)≧R(Ω)/3の関係になるように構成してある。
【0025】
また,上記本体10は,図1,図3に示すごとく,金属製のハウジング4内に,金属製の環状支持体41を介して,固定されている。
そして,上記通電発熱体2の一方のリード線21は,絶縁体11の内部を上昇して,本体10の側面に設けた導電性の端子部23を介して内部リード線231に電気的に接続されている。また,他方のリード線22は,絶縁体11の上端部に設けた導電性の端子部31を介して内部リード線33に電気的に接続されている。なお,外部リード線231は,通電発熱体2とイオン検出用電極3用のリード線として共用されている。
【0026】
一方,ハウジング4は,上記環状支持体41を有し,図3に示すごとく,その上部に保護筒42を有している。また,ハウジング4は,エンジンのシリンダヘッド45へ装着するための,雄ねじ部43を有する。
上記保護筒42の上方開口部には,ゴムブッシュ421が嵌合されている。また,該ゴムブッシュ421には,外部リード線233,333が貫挿され,これらはそれぞれ接続端子232,332を介して,上記内部リード線231,33に接続されている。
【0027】
したがって,外部リード線233は通電発熱体2の一端に,外部リード線333は通電発熱体2の他端にそれぞれ電気的に導通されている。
また,本体10の先端部(下端部)は,図1に示すごとく,半球面形状に形成されており,イオン検出用電極3の先端30が露出している。
【0028】
次に,上記グロープラグ本体10を製造するに当たっては,まず図4に示すごとき,通電発熱体2とイオン検出用電極3との一体成形品29を準備する。
この一体成形品29は,通電発熱体2及びイオン検出用電極3用のセラミック粉末を用いて射出成形,或いはプレス成形により作製する。
そして,この一体成形品29は,絶縁体11の中に埋設し,これらをホットプレスにて一体的に成形する。なお,上記埋設に先立って,上記リード線21,22を接続しておく。これにより,上記グロープラグ本体10が得られる。
【0029】
また,通電発熱体2,イオン検出用電極3,絶縁体11は,いずれも絶縁性セラミックと導電性セラミックとを主成分として作製した。そして,絶縁性セラミック粒子及び導電性セラミック粒子の混合割合,粒径の調整等により,これら通電発熱体2,イオン検出用電極3,絶縁体11における,それぞれの線膨張係数,電気抵抗等の物理的特性を調整した。
【0030】
また,本例においては絶縁性セラミックとして窒化珪素(Si3 N4 )を,導電性セラミックとして珪化モリブデン(MoSi2 )を用いた。
その他,絶縁性セラミックとしては,AlO3 ,BN,AlN等を用いることができる。また,導電性セラミックとしては,Mo5 Si3 ,WC,TiN等を用いることもできる。
【0031】
また,本例における上記の電気抵抗R(Ω),B(Ω)の調整は,上記距離Lの値を2mm以上に保持しつつ,イオン検出用電極3の接続位置を変えることにより調整した。即ち,通電長さの調整によって,B(Ω)≧R(Ω)/3の関係を実現させた。
【0032】
次に,上記のごとく本体10とハウジング4などとによって構成したグロープラグ1は,図5に示すごとく,エンジンのシリンダヘッド45に対して,ハウジンク4の雄ねじ部を螺合することにより装着する。これにより,グロープラグ本体10の先端部が,シリンダヘッド45の燃焼室の一部である渦流室451に突出した状態で装着される。なお,符号457は主燃焼室,458はピストン,459は燃料噴射ノズルである。
【0033】
また,上記グロープラグ1は,図5に示すごとく,グロープラグ作動回路に接続される。
即ち,通電発熱体2の一端のリード線21は,外部リード線233,グローリレー53,531,及び12ボルトのバッテリ54を介して,外部リード線333に接続されている。更に,該外部リード線333は,内部リード線33,及び本体10内のリード線22(図1)を介して,通電発熱体2の他端に接続されている。
これにより,通電発熱体2の加熱用回路が形成される。
【0034】
また,イオン検出用電極3は,上記外部リード線233,イオンリレー530,イオン電流検出用抵抗521,直流電源51を介してシリンダヘッド45に接続されている。また,上記イオン電流検出用抵抗521には,イオン電流を検出するための電位差計522が設けられ,これはECU(電子制御装置)52に接続されている。
また,ECU52には,上記グローリレー53,531,イオンリレー530,エンジン冷却水の水温センサ525,エンジンの回転数センサ526が接続されている。
【0035】
上記図5に示した,グロープラグ1の使用に当たっては,まずエンジンの始動時においては,ECU52により,イオンリレー530はオフとし,グローリレー53,531がオンとされる。そのため,バッテリ54とグロープラグの通電発熱体2との間が閉路となり,グロープラグ本体10の通電発熱体2が通電され発熱する。そのためグロープラグ1は加熱状態となり,渦流室451が加熱され,着火温度に上昇する。
そこで,燃料噴射ノズル459から,燃料が噴射されると,その都度該燃料が着火され,ピストン458が作動し,エンジンが駆動される。
【0036】
一方,燃料が燃焼している際には,前記のごとく,イオンが発生するので,グローリレー53,531はオフとし,イオンリレー530をオンとして,イオン電流をイオン検出用電極3,イオン電流検出用抵抗521及び電位差計522により検出する。
即ち,グロープラグ本体10の上記イオン検出用電極3とシリンダヘッド45との間には12ボルトの直流電源51によって電圧が印加されている。
【0037】
そこで,渦流室451内における,燃焼火炎帯の活性イオンの発生に伴い,イオン電流検出用抵抗521を含む電流経路にイオン電流が流れる。
なお,イオン電流検出用抵抗521は,約500kΩで,これを流れるイオン電流は,その両端の電位差として電位差計522により検出される。
【0038】
ここで,イオン電流の検出原理を略述する。
燃料噴射ノズル459からの噴射燃料が渦流室451で燃焼されると,その燃焼火炎帯ではイオン化されたプラスイオンとマイナスイオンが大量に発生する。このとき,上記イオン検出用電極3とそれに対面するシリンダヘッド45との間にバッテリ電圧が印加されているので,イオン検出用電極3にはマイナスイオンが捕獲されると共に,シリンダヘッド45にはプラスイオンが捕獲される。
その結果,上記の電流経路が形成され,この電流経路を流れるイオン電流がイオン電流検出用抵抗521の両端の電位差として検出される。
【0039】
一方,ECU52は,CPU,ROM,RAM,入出力回路等からなる周知のマイクロコンピュータやA/D変換器(共に図示略)を中心に構成され,前記電位差計522により検出された検出信号を入力する。
また,ECU52には,エンジン冷却水の温度を検出するための水温センサ525の検出信号や,エンジンクランク角に応じてエンジン回転数を検出するための回転数センサ526の検出信号が入力され,ECU52は各検出信号に基づいて水温Tw,エンジン回転数Neを検知する。
【0040】
上記ECU52は,ディーゼルエンジンの低温始動時において,グロープラグ1の通電発熱体2を加熱させて燃料の着火及び燃焼を促進させる。また,ディーゼルエンジンの始動直後において,イオン電流を検出する。
なお,エンジン始動当初においては,グローリレー53,531がオンの状態にあり,通電発熱体2は加熱状態に保持されるようになっている。
【0041】
以下,図6のフローチャートを用いて,上記グローリレー53,531のオン,オフ切り替え処理を説明する。図6は,所定の時間の割り込み処理により実行される。
まず,図6の処理がスタートすると,ECU52は,先ずステップ11でエンジン暖機完了後であり,且つグローリレー53,531がオフであるか否かを判別する。エンジン始動当初においては,ステップ11が否定判別され,ECU52は続くステップ12で水温Tw及びエンジン回転数Neを読み込む。
【0042】
その後,ステップ13で水温Twが所定の暖機完了温度(本実施形態例では,60℃)以上であるか否かを判別すると共に,ステップ14でエンジン回転数Neが所定回転数(本実施形態例では,2000rpm)以上に達しているか否かを判別する。
このときステップ13,14が共に否定判別されれば,エンジンの暖機が完了しておらず,グロープラグの通電発熱体2による加熱が必要であるとみなし,ステップ15に進む。
【0043】
また,ステップ13,14のいずれかが肯定判別されれば,エンジンの暖機が完了,或いはグロープラグ1による加熱が不要であるとみなし,ステップ16に進む。
【0044】
ステップ15に進んだ場合は,グローリレー53,531はオンのまま維持される。この状態では,グロープラグ1の発熱作用によって燃料の着火及び燃焼が継続される。
また,ステップ16に進んだ場合,ECU52は,グローリレー53,531をオフとする。そして,イオンリレー530をオンとして,イオン電流を検出する。
【0045】
次に,図7(A)は,オシロスコープを用いて燃料燃焼時に発生するイオン電流を観察した際の電流波形図である。同図において,燃料噴射時期(圧縮TDC)直後に電圧が急上昇している波形が燃料の燃焼によるイオン電流波形であり,A点が燃焼の開始位置,即ち着火時期に相当する。
また,このイオン電流波形には,2つの山が観測される。つまり,燃焼初期には,拡散火炎帯の活性イオンにより第1の山B1が観測され,燃焼中後期には筒内圧上昇による再イオン化により第2の山B2が観測される。
【0046】
この場合,ECU52は,イオン電流波形の第1の山B1から実際の着火時期を検出すると共に,検出された実際の着火時期と目標着火時期との差をなくすべく着火時期のフィードバック制御を実施する。
また,ECU52は,イオン電流波形の第2の山B2から異常燃焼,失火等の燃焼状態を検出し,その検出結果を燃料噴射制御に反映させる。こうしてイオン電流をエンジンの燃料噴射制御に反映させることにより,きめ細かくエンジンの運転状態を制御することが可能となる。
【0047】
また,本例においては,上記のごとく,イオン検出用電極3の先端30とハウジング4の先端部411との距離Lが2mm以上である。そのため,グロープラグ本体に燃料燃焼により発生したカーボン(スス)が堆積しても,イオン電流を確実に検出することができる。
【0048】
しかしながら,グロープラグのイオン検出用電極3に,燃料燃焼により発生したカーボン(スス)が付着した状態,即ち燻りが発生したときには,図7(B)に示すごとく,イオン電流が燃料噴射時期の前には低く,その後には上昇していくという現象が発生する(図7の(A)と(B)を比較)。なお,図7(B)のIthは燻り状態を判別しグローリレー53,531をオンにするか否かを判断するための波高値の判定レベル(しきい値)を表している。
そこで,このような燻り現象が発生したときには,上記グローリレー53,531をオンとし,通電発熱体2を加熱し,上記の付着カーボンを焼き切る操作を行なう。
【0049】
図8は,このカーボン焼き切り操作を,上記図5の回路におけるECU52により行なうフローチャートである。
即ち,同図のステップ21において,グローリレー53,531がオフの状態にあるとき,ステップ22において,燃料噴射時期に上記のごとき異常イオン電流(図7B)が検出されたか否か判定する。否であれば,ステップ25に進み,グローリレー53,531はオフのままとする。
【0050】
一方,異常イオン電流が検出されたときには,ステップ23に進み,イオンリレー530をオフ,次にステップ24においてグローリレー53,531をオンとし,グロープラグの通電発熱体2を加熱してカーボンを焼失させる。
【0051】
そして,ここに重要なことは,図2に示すごとく,通電発熱体2全体の電気抵抗R(Ω)と,通電発熱体2のプラス端210からイオン検出用電極3の先端30までの電気抵抗B(Ω)とは,B(Ω)≧R(Ω)/3の関係にある。
そのため,グロープラグ本体10にカーボンが堆積してイオン検出用電極3とハウジング4との間が短絡に近い状態になっても,適正な電流が流れる。
【0052】
即ち,グロープラグ本体10にカーボンが堆積して短絡に近い状態になった場合には,通電発熱体から,イオン検出用電極,付着カーボンという経路の回路に適正な電流を流すごとができる。そのため,上記回路の通電発熱によりカーボンを焼失させることができる。また,上記短絡状態が解消した後には,通電発熱体に電流が流れ,さらにカーボンの焼失が促進される。
【0053】
なお,上記電気抵抗B(Ω)が非常に大きい場合には,上記の通電発熱体,イオン検出用電極,付着カーボンの回路の抵抗値が大きくなる。この場合には,付着カーボンが存在していても,通電発熱体全体にほぼ正常な電流が流れ,通電発熱体の発熱により付着カーボンを焼失させることができる。
【0054】
また,上記のごとく,本例のグロープラグにおいては,絶縁体11の内部に通電発熱体2とリード線21,22とイオン検出用電極3とが設けてあり,これらは一体的に構成されている。そのため,通電発熱体2によるグロー動作(加熱動作)と,イオン検出用電極3によるイオン電流検出とを1つのグロープラグにより達成できる。また,そのためグロープラグがコンパクトになる。
【0055】
また,イオン検出用電極3,グロープラグ表面にカーボンが付着した場合にも,上記のごとく通電発熱体2を通電加熱することにより,上記カーボンを焼き切り,イオン検出用電極3をさらに正常状態にすることができる。そのため,イオン電流を精度良く検出することができる。
【0056】
また,通電発熱体2,リード線21,22,イオン検出用電極3は,絶縁体11の内部に設けてあるので,燃焼ガスによる酸化等の腐食もなく,耐久性に優れている。
また,絶縁体11の先端部は,半球形状としてあるので,燃焼室内における熱衝撃を吸収することができる。
【0057】
また,イオン検出用電極3の先端部30は,燃焼ガスに接触するよう露出している(図1)。
なお,イオン検出用電極3を図9に示すごとく,絶縁体11の先端部(下流)に配置することもできる。この場合には,燃焼室内におけるあらゆる方向におけるイオン電流を高精度で検出することができる。
【0058】
実施形態例2
本例は,図10に示すごとく,実施形態例1に示したグロープラグ本体10につき,イオン検出用電極3の先端30とハウジング4の先端部411との距離Lと,イオン出力の検出率との相関についての試験を行った具体例を示す。
グロープラグ本体10の製造に当たっては,上記距離Lに対応する位置にイオン検出用電極3を配設した種々の一体成形品29を予め射出成形により作製しておく(図4)。次いで,一体成形品29をセラミック粉末中に埋設してホットプレスすることにより,絶縁体11中に通電発熱体2及びイオン検出用電極3を内蔵した絶縁体11を作製する。このようにして,上記距離Lの異なるグロープラグを種々作製し,準備する。
【0059】
また,イオン出力の検出率は,次にように定義した。即ち,エンジン運転中にイオン電流を連続サンプリングすると,図7に示すイオン波形の波高値Hは一定でなく,燃焼毎のバラツキ,カーボン付着による出力低下等により,バラツキがある。そこで,一定時間かつ一定条件での運転中の波高値Hの平均値hを求め,平均値hの0.3倍以上の波高値を有する場合を検出精度良好として,全燃焼回数中のhの0.3倍以上の発生率をイオン出力の検出率とした。
また,試験は,4気筒2000ccのディーゼルエンジンを用い,まずグロープラグ本体にカーボンを堆積させる運転を行い,次いで,イオン検出状況を調べた。
【0060】
カーボンの堆積運転は,上記エンジンを無負荷800rpmにおいて2分間運転し,次いで無負荷4000rpmにおいて2分間運転することを1サイクルとして,これを30サイクル行うことにより実施した。
また,イオン検出状況の測定は,上記サイクルをさらに10サイクル行い,その間のイオン電流検出により行った。
【0061】
測定結果を図10に示す。同図は,横軸に距離L(mm)を,縦軸にイオン出力の検出率(%)を取った。
同図より知られるごとく,距離Lが2mm以上の場合には,イオン出力の検出率が100%となり,一方,距離Lが2mm未満の場合には,Lが小さいほど検出率が小さくなることがわかる。
【0062】
実施形態例3
本例においては,表1に示すごとく,実施形態例1に示したグロープラグ本体10につき,上記通電発熱体2の全電気抵抗R(Ω)(図2)と,通電発熱体2のプラス端210からイオン検出用電極3の先端30までの電気抵抗B(Ω)(図2)との関係を種々変更し,試験した。
電気抵抗B(Ω)の変更は,実施形態例2と同様に,通電発熱体2とイオン検出用電極3の一体成形品におけるイオン検出用電極3の配設位置を変更することにより行った。
【0063】
そして,試験する試料としては,表1に示すごとく,通電発熱体2の全電気抵抗R(Ω)を全て一定とし,B(Ω)の値を変化させた8種類のグロープラグ(試料No.C1〜C3,E1〜E5)を準備した。なお,グロープラグの製造方法,構造,その他については,実施形態例1と同様である。
【0064】
また,耐久試験は,4気筒のディーゼルエンジンを用いた。そして,エンジン停止状態において通電発熱体2に通電を開始し,2分後に通電を停止する。一方エンジンは,上記通電開始後5秒後に始動し,始動直後に無負荷800rpmにおいて1分間運転し,次いで無負荷4000rpmにおいて2分間運転し,次いで無負荷800rpmにおいて1分間運転した後停止する。そして,上記の通電発熱体2への通電開始からエンジン停止までを1サイクルとし,これを500サイクル実施した。
【0065】
試験結果を表1に示す。表1より知られるごとく,B(Ω)<R(Ω)/3の場合(C1〜C3)には,いずれも早期にヒューズが溶断してしまった。これは,イオン検出用電極3の先端30とハウジング4の先端部411との間が短絡状態になり,プラス側リード線との間において短絡回路が形成され,この状態で,通電発熱体への通電がされたため,ヒューズが溶断するほどの大電流が流れたことを示している。一方,B(Ω)≧R(Ω)/3の場合(E1〜E5)には,上記試験の500サイクルの間においては,何ら異常は発生しなかった。
【0066】
【表1】
【0067】
実施形態例4
本例は,図11に示すごとく,実施形態例1のグロープラグ作動回路(図5)を変更したもので,実施形態例1のバッテリ54と直流電源51とを,1個のバッテリ55のみに代えたものである。また,グロープラグの外部リード線333とバッテリ55との間の回路には,新たにもう一つのグローリレー53,5311を設けた。2つのグローリレー53,531,531は,いずれも同時に作動し,常に両者がオンか,或いは両者がオフの状態になるよう構成されている。
なお,イオン電流検出用抵抗521とバッテリ55との間には,定電流,定電圧回路524を介在することもできる。この場合には,回路構成の簡素化とコスト低減の効果がある。
【0068】
その他は,実施形態例1と同様である。
本例においても,実施形態例1と同様の効果を得ることができる。また,特に,本例においては,定電流・定電圧回路524を介在する事で1つのバッテリーでも,グロープラグ発熱時に生じるイオン検出用電極への印加電圧の変動を防止し,安定した検出性能が維持できるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,(A)グロープラグ本体の断面図,(B)上記(A)のA−A線矢視断面図。
【図2】実施形態例1における,電気抵抗R(Ω),B(Ω)を示す説明図。
【図3】実施形態例1における,グロープラグの全体説明図。
【図4】実施形態例1における,グロープラグ本体の製造方法の説明図。
【図5】実施形態例1における,グロープラグ作動回路図。
【図6】実施形態例1における,グロープラグ作動システムの,グロープラグ始動時のフローチャート。
【図7】実施形態例1における,(A)正常時のイオン電流,(B)燻り時のイオン電流を示す図。
【図8】実施形態例1における,燻り判定フローチャート。
【図9】実施形態例1における,イオン検出用電極の位置を変更した例を示す説明図。
【図10】実施形態例2における,距離Lとイオン出力の検出率との関係を示す説明図。
【図11】実施形態例4における,グロープラグ作動回路図。
【符号の説明】
1...グロープラグ,
10...本体,
11...絶縁体,
2...通電発熱体,
21,22...リード線,
210...プラス端,
220...マイナス端,
3...イオン検出用電極,
4...ハウジング,
45...シリンダヘッド,
451...渦流室,
Claims (1)
- ハウジングと該ハウジング内に支持された本体とよりなるグロープラグにおいて,
上記本体は,絶縁体と,
該絶縁体の内部に設けられた通電発熱体及び該通電発熱体の両端部に電気的に接続されて上記絶縁体の外部に導出された一対のリード線と,
上記絶縁体の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するための,イオン検出用電極とよりなり,
上記イオン検出用電極は,上記通電発熱体の途中に電気的に接続されていると共に,その先端は上記火炎に曝されるように上記絶縁体から露出しており,
かつ,上記イオン検出用電極の先端は,上記ハウジングの先端部から2mm以上離れた位置に配置されており,
上記通電発熱体全体の電気抵抗をR(Ω),
上記通電発熱体のプラス端から上記イオン検出用電極の上記先端までの電気抵抗をB(Ω)としたとき,
B(Ω)≧R(Ω)/3
の関係にあることを特徴とするグロープラグ。
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