JP3674231B2 - グロープラグ及びその製造方法 - Google Patents
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- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F23—COMBUSTION APPARATUS; COMBUSTION PROCESSES
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- F23Q7/00—Incandescent ignition; Igniters using electrically-produced heat, e.g. lighters for cigarettes; Electrically-heated glowing plugs
- F23Q7/001—Glowing plugs for internal-combustion engines
- F23Q2007/002—Glowing plugs for internal-combustion engines with sensing means
Description
【技術分野】
本発明は,燃料の着火・燃焼を促進するためのグロープラグ,及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年,ガソリンエンジン,ディーゼルエンジンにおいては,環境保護の面から,排気ガスや排気煙をより一層低減させることが要望されている。そして,こうした要望に応えるべく,各種のエンジン改良や後処理(触媒浄化等)により排出ガス低減,燃料・潤滑油性状の改善,各種のエンジン燃焼制御システムの改善などが検討されている。
【0003】
また,最近のエンジン燃焼制御システムにおいては,エンジンの燃焼状態を検出することが要請されており,筒内圧,燃焼光,イオン電流等を検出することによってエンジン燃焼状態を検出することが検討されている。特に,イオン電流によりエンジン燃焼状態を検出することは,燃焼に伴う化学反応を直接的に観察できることから極めて有用と考えられており,種々のイオン電流検出方法が提案されている。
【0004】
例えば,特開平7−259597号公報には,燃料噴射ノズルの取り付け座部において,当該噴射ノズル及びエンジンのシリンダヘッドから絶縁されたスリーブ状のイオン検出用電極を装着し,これを外部の検出回路に接続することにより燃料の燃焼に伴うイオン電流を検出する方法が開示されている。
また,米国特許第4,739,731号では,セラミックグロープラグを用いたイオン電流検出用センサが開示されている。
【0005】
これらの技術では,グロープラグのヒータ(通電発熱体)表面に白金製の導電層を取着すると共に,この導電層を燃焼室及びグロープラグ取付金具から絶縁している。そして,導電層に外部からイオン電流測定用電源(直流250V)を印加して燃料燃焼に伴うイオン電流を検出するようにしている。
【0006】
【解決しようとする課題】
ところが,上記従来技術においては,いずれも以下に示す問題がある。
即ち,前者の技術(特開平7−259597号公報)では,イオン電流検出のために,他の部位より絶縁されたスリーブ状のイオン検出用電極を設置しなくてはならず,その材料の選択及びその加工において煩雑な作業が強いられる。
そのため,イオン検出用電極が非常に,高価な構成となるという問題がある。さらに,燃料噴射ノズルとイオン検出用電極との間,及びイオン検出用電極とシリンダヘッドとの間が燃焼室内にて発生するカーボンにより短絡し,早期に使用不能となるという欠点があった。
【0007】
また,後者の技術(米国特許第4,739,731号)では,イオン検出用電極を通電発熱体とは別に設けると共に,両者を別々の電源に接続しているために構造が複雑になるという欠点があった。また,イオン検出用電極の耐熱性及び耐消耗性を確保するために,白金など高価な貴金属を多量に必要とすることから,グロープラグ自体が非常に高価なものとなる欠点があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので,カーボン付着の問題がなく,精度良くイオン電流を検出することができ,耐久性に優れた,かつ製造容易なグロープラグ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,ハウジングと該ハウジング内に支持された本体とよりなるグロープラグにおいて,
上記本体は,棒状絶縁体と,
該棒状絶縁体の内部に設けられた,通電発熱体及び該通電発熱体の両端部に電気的に接続されて棒状絶縁体の外部へ導出された一対のリード線と,
上記棒状絶縁体の外周部においてその軸方向に沿って設けられた溝とを有するとともに,
該溝の内部には,上記通電発熱体とは電気絶縁された状態で,火炎中のイオン化の状態を検出するためのイオン検出用電極を配設してなることを特徴とするグロープラグにある。
【0010】
本発明において最も注目すべきことは,上記棒状絶縁体の内部に通電発熱体とリード線とが配設されており,また上記棒状絶縁体の外周部に設けた溝の内部にイオン検出用電極が配設されていることである。
【0011】
上記通電発熱体及びリード線を棒状絶縁体の内部に設けるに当たっては,後述するごとく,例えば,棒状絶縁体を形成するためのセラミック材料の生成形体(グリーンシート)の表面に,スクリーン印刷,パッド印刷,ホットスタンプ等により,所望形状に導電性材料よりなる通電発熱体及びリード線を印刷し,次いで,生成形体を別途作製した中軸の周りに巻回し,その後焼成する(実施形態例1,図3参照)。
或いは,上記通電発熱体等を形成した生成形体の上に,溝を設けた上部シートを積層する積層法がある。(実施形態例3,図9参照)。
これにより,印刷形成された通電発熱体及びリード線を内蔵した棒状絶縁体が得られる。
【0012】
一方,イオン検出用電極の配設に関しては,予め棒状絶縁体の外周部に軸方向に沿った溝を形成しておき,上記焼成前又は焼成後に,上記溝内に棒状のイオン検出用電極を配置,固定する。
【0013】
本発明のグロープラグは,上記通電発熱体に電流を通すことにより発熱し,その加熱により燃焼室における着火及び燃焼を促進させる。
また,イオン検出用電極は,燃焼火炎中のイオン化の状態を検出する。即ち,イオン電流の検出時において,イオン検出用電極とそれに近接する燃焼室の内壁(シリンダヘッド)とは,両者間に存在する燃料燃焼時のプラスイオン及びマイナスイオンを捕獲するための2電極を形成する。
【0014】
これにより,精度良くイオン電流を検出することができ,その情報を燃焼制御に有用に活用することが可能となる。また,グロープラグに,本来の燃焼室の加熱機能(グロー機能)とイオン電流検出機能とを付与しているので,構造がコンパクトで,かつ安価に製造できる。
【0015】
また,通電発熱体は,棒状絶縁体の内部に,埋設されているため,燃焼火炎による腐触がなく,抵抗値の低下,発熱特性の変化を招くことがなく,長期にわたって高い発熱性能を発揮することができ耐久性に優れている。即ち,通電発熱体が酸化により消耗することがないため,その断面積が一定に保持されると共に,その抵抗値の変化を生ずることもない。さらに,燃焼室内での熱的衝撃等に起因して通電発熱体が破損する等の不具合も回避できる。
また,イオン検出用電極は,棒状絶縁体の上記溝内に配置すれば良いのでグロープラグの製造が容易である。
【0016】
また,イオン検出用電極は,燃料燃焼に伴ってその表面中にカーボンが付着する場合があるが,その付着カーボンは通電発熱体の加熱動作(例えば,エンジンの低温始動時におけるグロー動作)によって焼き切ることができる。そのため,長期間に渡って正確にイオン電流を検出することができる。
【0017】
また,本発明のグロープラグは,上記通電発熱体,リード線及びイオン検出用電極を上記棒状絶縁体の内部に,一体的に設けているので,構造簡単である。
したがって,本発明によれば,カーボン付着の問題がなく,精度良くイオン電流を検出することができ,耐久性に優れた,かつ製造容易な,グロープラグを提供することができる。
【0018】
次に,請求項2の発明のように,上記溝内に配設されたイオン検出用電極の上には,該イオン検出用電極を覆うように絶縁被覆材が充填されていることが好ましい。
この場合には,イオン検出用電極を棒状絶縁体に対して,容易に固定することができる。上記絶縁被覆材としては,例えば電気絶縁性のセラミック材料を用いる。
【0019】
次に,請求項3の発明のように,上記通電発熱体及びリード線は,絶縁基板の内側面に印刷形成されていることが好ましい。この場合には,シート状の絶縁基板の上に上記通電発熱体とリード線とを予め印刷形成しておき,これを中軸に巻回すれば良いので製造容易である。
また,通電発熱体及びリード線は,0.005〜0.02mmの薄層状態でグロープラグ内に配設することができ,グロープラグがコンパクトになる。
【0020】
次に,請求項4の発明のように,上記イオン検出用電極の先端は,上記火炎に曝されるよう,上記棒状絶縁体の先端部に露出していることが好ましい。この場合には,イオン電流検出の応答性と検出精度(S/N比)の向上の効果が得られる。
次に,請求項5の発明のように,上記イオン検出用電極はMoSi2 ,WC,TiNの1種又は2種以上の導電性セラミック材料により作製することができる。この場合には耐熱性が向上し,かつ絶縁体との膨張係数を容易に調整,合わせ込みができるため耐熱衝撃性が向上するという効果が得られる。
【0021】
次に,請求項6の発明のように,上記イオン検出用電極は,W,Mo,Tiの1種又は2種以上の高融点金属により作製することができる。この場合には,素材が線状,板状で使用できるため,材料,加工,組付に関するコスト低減の効果が得られる。
【0022】
次に,請求項7の発明のように,上記棒状絶縁体より露出しているイオン検出用電極の露出部には,Pt,Ir,Rh,Ru,Pdの1種又は2種以上の貴金属が設けてあることが好ましい。この場合には,検出用電極の耐消耗性,耐酸化性の向上の効果が得られる。
次に,請求項8の発明のように,上記棒状絶縁体の先端部は半球面形状を有していることが好ましい。この場合には,棒状絶縁体の先端鋭角部を除去する事で,イオン検出部近傍での燃焼火炎流の乱れが抑制され,検出性能が安定し,また熱応力の集中が抑制され耐熱衝撃性が向上するという効果が得られる。
【0023】
次に,請求項9の発明のように,請求項1のグロープラグを製造するに当たり,電気絶縁性のセラミック材料からなる絶縁基板の生成形体の表面に上記通電発熱体及びリード線を印刷形成し,
次いで上記絶縁基板の印刷形成面の上に電気絶縁性のセラミック材料よりなる中軸の生成形体を置いて上記絶縁基板を中軸の外周に巻き付けると共に上記絶縁基板の巻回方向の両端部と上記中軸との間に軸方向に沿った溝を形成し,
次いで,外溝の内部に上記イオン検出用電極を配置し,
次いでこれらを加熱して上記中軸及び絶縁基板を焼成することを特徴とするグロープラグの製造方法がある。
【0024】
この場合には,絶縁基板が焼成される際,基板の幅が狭くなり,イオン検出用電極を基板に一層強固に接合することができる。
また,上記請求項1に示した効果を有するグロープラグを容易に製造することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかるグロープラグにつき,図1〜図7を用いて説明する。
本例のグロープラグは,ディーゼルエンジンの始動補助装置として用いられる,セラミックグロープラグである。
本例のグロープラグ1は,図1に示すごとく本体10と該本体10を装着するハウジング4とからなる。上記本体10は,棒状絶縁体11と,該棒状絶縁体11の内部においてその一端側に印刷形成された通電発熱体2と,該通電発熱体2の両端部に電気的に接続されて棒状絶縁体の他端側に導出され,同様に印刷形成された一対のリード線21,22とを有する。
【0026】
また,上記通電発熱体2と電気絶縁されて,上記棒状絶縁体11の外周部においてその軸方向に沿って設けられた溝150の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するためのイオン検出用電極3を有する。
【0027】
上記本体10は,図1,図2に示すごとく,金属製のハウジング4内に,金属製の環状支持体41を介して,固定されている。
そして,上記通電発熱体2の一方のリード線21は,棒状絶縁体11の内部を上昇して,本体10の側面に設けた導電性の端子部23を介して内部リード線231に電気的に接続されている。また,他方のリード線22は,上記環状支持体41を介してハウジング4に電気的に接続されている。
また,上記イオン検出用電極3の上端部は,棒状絶縁体11の上端部に設けた導電性の端子部31を介して内部リード線33に電気的に接続されている。
【0028】
一方,ハウジング4は,上記環状支持体41を有し,図2に示すごとく,その上部に保護筒42を有している。また,ハウジング4は,エンジンのシリンダヘッド45へ装着するための,雄ねじ部43を有する。上記保護筒42の上方開口部には,ゴムブッシュ421が嵌合されている。また,該ゴムブッシュ421には,外部リード線233,333が貫挿され,これらはそれぞれ接続端子232,332を介して,上記内部リード線231,33に接続されている。
したがって,外部リード線233は通電発熱体2の一端に,外部リード線333はイオン検出用電極3にそれぞれ電気的に導通されている。
【0029】
なお,通電発熱体2の他端は,上記のごとく,環状支持体41を介してハウジング4に電気的に導通している(図1)。
また,本体10の先端部(下端部)は,図1に示すごとく,半球面形状に形成されており,イオン検出用電極3の先端30が露出している。
【0030】
次に,上記グロープラグ本体10の製造方法につき図3を用いて説明する。
まず,セラミック材料,樹脂バインダー等からなる原料を混合し,薄板状のシート15を作る(図3A)。次いで,シート15の表面側に通電発熱体用の導電性ペーストを用いて,スクリーン印刷により通電発熱体部分20を印刷形成する。また,同様にして,リード線部分210,220を印刷形成する(図3B)。
【0031】
更に,シート15の裏面側において,上記リード線部分210と導通するように,導電性ペーストにより端子部(図示略)を印刷形成する。
次に,シート15の表面側に,セラミック材料と樹脂バインダーとよりなるコーティング材料をコート印刷する。これは,上記通電発熱体部分20等の印刷形成部分とシート表面との間の段差をなくして平坦化し,次に示す巻回時にシート15と中軸13との密着性を向上させるためである。
【0032】
一方,上記シート15と同様の材料を用いて作製した,円柱状の中軸13を準備する。
そして,上記シート15における,上記通電発熱体部分20等を形成した表面上に,上記中軸13を置き,該中軸13を巻き込むようにしてシート15を巻き付ける(図3(C))。
このとき,図3(C)に示すごとく,シート15の巻回方向の両端面152,153と中軸13との間に,軸方向に沿った溝150を形成する。
【0033】
かかる溝150は,予めシート15の幅を小さくしておき,両端面152,153の間に隙間が出来るようにしておくことにより,形成できる。
或いは,上記両端面152,153を接触させた後に,一方の端面を小さい幅に軸方向に沿って切除し,両者間に溝を形成する。
【0034】
次に,図3Dに示すごとく,上記溝150内に,円柱状のイオン検出用電極3を投入し,更にその上にセラミック材料からなる絶縁被覆材19を充填する。次いで,予備加熱により脱脂を行ない,本加熱を行なって,セラミック材料よりなるシート15と中軸13とを一体的に焼成する。このとき,シート15,中軸13は,焼成収縮のために,両者は強く密着接合する。また,イオン検出用電極3は,上記の焼成収縮により,溝150が狭くなり,この溝150内に強く固定される。
【0035】
次に,図3Dに示すごとく,上記端子部23にCu,次いでNiのメッキを施す。次いで,該端子部23に内部リード線231(図1)を,ロウ付けにより組み付け,更にその表面にNiメッキを施す。また,棒状絶縁体11の先端部は,図1に示すごとく,球面状態に研削加工する。
これにより,上記図1に示したグロープラグ本体10が得られる。
【0036】
次に,上記グロープラグ本体10につき,その具体例を例示すれば,上記中軸13は,外径2.9mmであった。また,上記シート15は,厚み0.8mm,幅11.5mm,長さ54mmであった。また,上記巻回時の外径は4.5mm,上記溝150内に挿入したイオン検出用電極3の直径は0.7mmであった。上記溝150の幅は0.8mmであった。
【0037】
また,上記中軸13の原料は,Si3 N4 (窒化珪素)粉末63%(重量比)と,MoSi2 (二珪化モリブデン)粉末18%と,Y2 O3 (イットリア)粉末4%と,Al2 O3 (アルミナ)粉末3%と,パラフィンWAXを主成分とする複合バインダー12%とを混合して用いた。
また,シート15の原料は,Si3 N4 (窒化珪素)粉末70%(重量比)と,MoSi2 (二珪化モリブデン)粉末20%と,パラフィンWAXを主成分とする複合バインダー10%とを混合して用いた。
【0038】
また,通電発熱体部分20の材料としては,W(タングステン)とRe(レニウム)とからなる導電ペーストを用いた。また,リード線部分210,220,端子部23を印刷形成した導電ペーストとしては,W(タングステン)ペーストを用いた。
また,上記イオン検出用電極の材料は,MoSi2 (二珪化モリブデン)よりなる。また,上記溝150内に充填した絶縁被覆材19は,Si3 N4 (窒化珪素)粉末63%とMoSi2 (二珪化モリブデン)粉末18%と,Y2 O3 (イットリア)粉末4%と,Al2 O3 (アルミナ)粉末3%と,パラフィンWAXを主成分とする複合バインダー12%との混合物よりなるセラミック材料を用いた。
【0039】
次に,上記巻回物(図3D)の焼成は,アルゴン又は窒素雰囲気中,1700〜1800℃,2〜4時間行なった。この焼成により,上記巻回物(棒状絶縁体)の外径は4.5mmから3.6mmに,また,イオン検出用電極は0.7mmから0.6mmに収縮した。
また,上記イオン検出用電極3の先端部の露出部分30(図1)の表面には,Ptをコーティングした。
【0040】
次に,上記のごとく本体10とハウジング4などとによって構成したグロープラグ1は,図4に示すごとく,エンジンのシリンダヘッド45に対して,ハウジンク4の雄ねじ部を螺合することにより装着する。これにより,グロープラグ本体10の先端部が,シリンダヘッド45の燃焼室の一部である渦流室451に突出した状態で装着される。なお,符号457は主燃焼室,458はピストン,459は燃料噴射ノズルである。
【0041】
また,上記グロープラグ1は,図4に示すごとく,グロープラグ作動回路に接続される。
即ち,通電発熱体2の一端のリード線21は,外部リード線233,グローリレー53,及び12ボルトのバッテリ54を介して,金属製のシリンダヘッド45に接続されている。更に,シリンダヘッド45,ハウジング4,環状支持体41,本体10のリード線22(図1)を介して,通電発熱体2の他端に接続されている。
これにより,通電発熱体2の加熱用回路が形成される。
【0042】
また,イオン検出用電極3の外部リード線333は,イオン電流検出用抵抗521,直流電源51を介してシリンダヘッド45に接続されている。また,上記イオン電流検出用抵抗521には,イオン電流を検出するための電位差計522が設けられ,これはECU(電子制御装置)52に接続されている。また,ECU52には,上記グローリレー53,エンジン冷却水の水温センサ525,エンジンの回転数センサ526が接続されている。
【0043】
上記図4に示した,グロープラグ1の使用に当たっては,まずエンジンの始動時においては,ECU52により,グローリレー53がオンとされる。そのため,バッテリ54とグロープラグの通電発熱体2との間が閉路となり,グロープラグ本体10の通電発熱体2が通電され発熱する。そのためグロープラグ1は加熱状態となり,渦流室451が加熱され,着火温度に上昇する。
そこで,燃料噴射ノズル459から,燃料が噴射されると,その都度該燃料が着火され,ピストン458が作動し,エンジンが駆動される。
【0044】
一方,燃料が燃焼している際には,前記のごとく,イオンが発生するので,そのイオン電流をイオン検出用電極3,イオン電流検出用抵抗521及び電位差計522により検出する。
即ち,グロープラグ本体10の上記イオン検出用電極3とシリンダヘッド45との間には12ボルトの直流電源51によって電圧が印加されている。
【0045】
そこで,渦流室451内における,燃焼火炎帯の活性イオンの発生に伴い,イオン電流検出用抵抗521を含む電流経路にイオン電流が流れる。
なお,イオン電流検出用抵抗521は,約500kΩで,これを流れるイオン電流は,その両端の電位差として電位差計522により検出される。
【0046】
ここで,イオン電流の検出原理を略述する。
燃料噴射ノズル459からの噴射燃料が渦流室451で燃焼されると,その燃焼火炎帯ではイオン化されたプラスイオンとマイナスイオンが大量に発生する。このとき,上記イオン検出用電極3とそれに対面するシリンダヘッド45との間にバッテリ電圧が印加されているので,イオン検出用電極3にはマイナスイオンが捕獲されると共に,シリンダヘッド45にはプラスイオンが捕獲される。
その結果,上記の電流経路が形成され,この電流経路を流れるイオン電流がイオン電流検出用抵抗521の両端の電位差として検出される。
【0047】
一方,ECU52は,CPU,ROM,RAM,入出力回路等からなる周知のマイクロコンピュータやA/D変換器(共に図示略)を中心に構成され,前記電位差計522により検出された検出信号を入力する。
また,ECU52には,エンジン冷却水の温度を検出するための水温センサ525の検出信号や,エンジンクランク角に応じてエンジン回転数を検出するための回転数センサ526の検出信号が入力され,ECU52は各検出信号に基づいて水温Tw,エンジン回転数Neを検知する。
【0048】
上記ECU52は,ディーゼルエンジンの低温始動時において,グロープラグ1の通電発熱体2を加熱させて燃料の着火及び燃焼を促進させる。また,ディーゼルエンジンの始動直後において,イオン電流を検出する。
なお,エンジン始動当初においては,グローリレー53がオンの状態にあり,通電発熱体2は加熱状態に保持されるようになっている。
【0049】
以下,図5のフローチャートを用いて,上記グローリレー53のオン,オフ切り替え処理を説明する。図5は,所定の時間の割り込み処理により実行される。
まず,図5の処理がスタートすると,ECU52は,先ずステップ11でエンジン暖機完了後であり,且つグローリレー53がオフであるか否かを判別する。エンジン始動当初においては,ステップ11が否定判別され,ECU52は続くステップ12で水温Tw及びエンジン回転数Neを読み込む。
【0050】
その後,ステップ13で水温Twが所定の暖機完了温度(本実施形態例では,60℃)以上であるか否かを判別すると共に,ステップ14でエンジン回転数Neが所定回転数(本実施形態例では,2000rpm)以上に達しているか否かを判別する。
このときステップ13,14が共に否定判別されれば,エンジンの暖機が完了しておらず,グロープラグの通電発熱体2による加熱が必要であるとみなし,ステップ15に進む。
【0051】
また,ステップ13,14のいずれかが肯定判別されれば,エンジンの暖機が完了,或いはグロープラグ1による加熱が不要であるとみなし,ステップ16に進む。
【0052】
ステップ15に進んだ場合は,グローリレー53はオンのまま維持される。この状態では,グロープラグ1の発熱作用によって燃料の着火及び燃焼が継続される。
また,ステップ16に進んだ場合,ECU52は,グローリレー53をオフとする。
【0053】
次に,図6(A)は,オシロスコープを用いて燃料燃焼時に発生するイオン電流を観察した際の電流波形図である。同図において,燃料噴射時期(圧縮TDC)直後に電圧が急上昇している波形が燃料の燃焼によるイオン電流波形であり,A点が燃焼の開始位置,即ち着火時期に相当する。
また,このイオン電流波形には,2つの山が観測される。つまり,燃焼初期には,拡散火炎帯の活性イオンにより第1の山B1が観測され,燃焼中後期には筒内圧上昇による再イオン化により第2の山B2が観測される。
【0054】
この場合,ECU52は,イオン電流波形の第1の山B1から実際の着火時期を検出すると共に,検出された実際の着火時期と目標着火時期との差をなくすべく着火時期のフィードバック制御を実施する。
また,ECU52は,イオン電流波形の第2の山B2から異常燃焼,失火等の燃焼状態を検出し,その検出結果を燃料噴射制御に反映させる。こうしてイオン電流をエンジンの燃料噴射制御に反映させることにより,きめ細かくエンジンの運転状態を制御することが可能となる。
【0055】
次に,グロープラグのイオン検出用電極3に,燃料燃焼により発生したカーボン(スス)が付着した状態,即ち燻りが発生したときには,図6(B)に示すごとく,イオン電流が燃料噴射時期の前には低く,その後には上昇していくという現象が発生する(図6の(A)と(B)を比較)。なお,図6(A)のIthは燻り状態を判別しグローリレー53をオンにするか否かを判断するための波高値の判定レベル(しきい値)を表している。
そこで,このような燻り現象が発生したときには,上記グローリレー53をオンとし,通電発熱体2を加熱し,上記の付着カーボンを焼き切る操作を行なう。
【0056】
図7は,このカーボン焼き切り操作を,上記図4の回路におけるECU52により行なうフローチャートである。
即ち,同図のステップ21において,グローリレー53がオフの状態にあるとき,ステップ22において,燃料噴射時期に上記のごとき異常イオン電流(図6B)が検出されたか否か判定する。否であれば,ステップ24に進み,グローリレー53はオフのままとする。
一方,異常イオン電流が検出されたときには,ステップ23に進み,グローリレー53をオンとし,グロープラグの通電発熱体2を加熱してカーボンを焼失させる。
【0057】
上記のごとく,本例のグロープラグにおいては,棒状絶縁体11の上記溝150内部にイオン検出用電極3が配設され,また棒状絶縁体11の内部に通電発熱体2とリード線21,22とが設けてあり,これらは一体的に構成されている。そのため,通電発熱体2によるグロー動作(加熱動作)と,イオン検出用電極3によるイオン電流検出とを1つのグロープラグにより達成できる。
また,イオン検出用電極3にカーボンが付着した場合にも,該イオン検出用電極3の近くにある通電発熱体2を通電加熱することにより,上記カーボンを焼き切り,イオン検出用電極3を正常状態に戻すことができる。そのため,イオン電流を精度良く検出することができる。
【0058】
また,上記通電発熱体2,リード線21,22が印刷形成されているのでその厚みが薄く,グロープラグ本体をコンパクトに構成できる。また,上記棒状絶縁体11,通電発熱体2,リード線21,22,イオン検出用電極3を一体構成しているので,構成簡単である。
また,通電発熱体2,リード線21,22,イオン検出用電極3は,棒状絶縁体11の内部に設けてあるので,燃焼ガスによる酸化等の腐食もなく,耐久性に優れている。
【0059】
また,本例のグロープラグ本体10は,上記図3に示したごとく,絶縁性のシート15に通電発熱体とリード線とを印刷形成し,その上に中軸13を置いて巻回し,その時形成した溝150の中にイオン検出用電極3を配置し,次いで焼成することにより作製している。そのため,グロープラグ本体の製造が容易である。
また,棒状絶縁体11の先端部は,半球形状としてあるので,燃焼室内における熱衝撃を吸収することができる。
【0060】
また,イオン検出用電極3の先端部30は,燃焼ガスに接触するよう露出しており(図1),その露出部分にはPt等の貴金属がコーティングしてある。そのため,酸化等によるイオン検出用電極表面の絶縁物生成が抑制され電極の導電性あるいは初期抵抗値が確保され,検出精度の劣化を防止する効果がある。
【0061】
なお,上記棒状絶縁体は,Si3 N4 の他,Al2 O3 ,Si−Al−O−N(サイアロン)を用いることもできる。また,通電発熱体等を印刷形成する場合の導電性ペーストとしては,W,Mo,Re,W/Mo,WC,WC/Re或いはW/Reと樹脂からなるペーストがある。
【0062】
実施形態例2
本例は,図8に示すごとく,実施形態例1のグロープラグ作動回路(図4)を変更したもので,実施形態例1のバッテリ54と直流電源51とを,1個のバッテリ55のみに代えたものである。
なお,イオン電流検出用抵抗521とバッテリ55との間には,定電流,定電圧回路524を介在することもできる。この場合には,回路構成の簡素化とコスト低減の効果がある。
【0063】
その他は,実施形態例1と同様である。
本例においても,実施形態例1と同様の効果を得ることができる。また,特に,本例においては,定電流・定電圧回路524を介在する事で1つのバッテリでも,グロープラグ発熱時に生じるイオン電極への印加電圧の変動を防止し,安定した検出性能が維持できるという効果を得ることができる。
【0064】
実施形態例3
本例は,図9に示すごとく,グロープラグ本体10を積層体により作製したものである。
本例においては,実施形態例1に示した通電発熱体部分20等を印刷形成したシート15(図3)の上に,中軸13と同様の材料からなる上部シート16(図9)を積層する。
上部シート16は,イオン検出用電極3を配設する溝160を有する。この溝160に板状のイオン検出用電極3を入れ,更に実施形態例1と同様に絶縁被覆材19を充填する。その後は,実施形態例1と同様に加熱,焼成するか若しくはホットプレスする。
【0065】
これにより,図9に示すごとく,電気絶縁性のシート15,16よりなる棒状絶縁体の間に通電発熱体2及びリード線(図示略)が配設され,溝160内にイオン検出用電極が配設されたグロープラグ本体10が得られる。
本例においては,積層法を用いているので,製造がより簡単である。
そして,その後,切削(研削)する事により,所望の形状としている。
その他は実施形態例1と同様であり,実施形態例1と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,(A)グロープラグ本体の断面図(B)上記(A)のA−A線矢視断面図。
【図2】実施形態例1における,グロープラグの全体説明図。
【図3】実施形態例1における,グロープラグ本体の製造方法の説明図。
【図4】実施形態例1における,グロープラグ作動回路図。
【図5】実施形態例1における,グロープラグ作動システムの,グロープラグ始動時のフローチャート。
【図6】実施形態例1における,(A)正常時のイオン電流,(B)燻り時のイオン電流を示す図。
【図7】実施形態例1における,燻り判定フローチャート。
【図8】実施形態例2における,グロープラグ作動回路図。
【図9】実施形態例3における,グロープラグ本体の断面図。
【符号の説明】
1...グロープラグ,
10...本体,
11...棒状絶縁体,
13...中軸,
15...シート,
150,160...溝,
2...通電発熱体,
21,22...リード線,
3...イオン検出用電極,
4...ハウジング,
45...シリンダヘッド,
451...渦流室,
Claims (10)
- ハウジングと該ハウジング内に支持された本体とよりなるグロープラグにおいて,
上記本体は,棒状絶縁体と,
該棒状絶縁体の内部に設けられた,通電発熱体及び該通電発熱体の両端部に電気的に接続されて棒状絶縁体の外部へ導出された一対のリード線と,
上記棒状絶縁体の外周部においてその軸方向に沿って設けられた溝とを有するとともに,
該溝の内部には,上記通電発熱体とは電気絶縁された状態で,火炎中のイオン化の状態を検出するためのイオン検出用電極を配設してなることを特徴とするグロープラグ。 - 請求項1において,上記溝内に配設されたイオン検出用電極の上には,該イオン検出用電極を覆うように絶縁被覆材が充填されていることを特徴とするグロープラグ。
- 請求項1又は2において,上記通電発熱体及びリード線は,印刷形成されていることを特徴とするグロープラグ。
- 請求項1〜3のいずれか一項において,上記イオン検出用電極の先端は,上記火炎に曝されるよう,上記棒状絶縁体の先端部に露出していることを特徴とするグロープラグ。
- 請求項1〜4のいずれか一項において,上記イオン検出用電極はMoSi2 ,WC,TiNの1種又は2種以上の導電性セラミック材料により作製されていることを特徴とするグロープラグ。
- 請求項1〜5のいずれか一項において,上記イオン検出用電極は,W,Mo,Tiの1種又は2種以上の高融点金属により作製されていることを特徴とするグロープラグ。
- 請求項4〜6のいずれか一項において,上記棒状絶縁体より露出しているイオン検出用電極の露出部には,Pt,Ir,Rh,Ru,Pdの1種又は2種以上の貴金属が設けてあることを特徴とするグロープラグ。
- 請求項1〜7のいずれか一項において,上記棒状絶縁体の先端部は半球形状を有していることを特徴とするグロープラグ。
- 請求項1のグロープラグを製造するに当たり,電気絶縁性のセラミック材料からなる絶縁基板の生成形体の表面に上記通電発熱体及びリード線を印刷形成し,
次いで上記絶縁基板の印刷形成面の上に電気絶縁性のセラミック材料よりなる中軸の生成形体を置いて上記絶縁基板を中軸の外周に巻き付けると共に上記絶縁基板の巻回方向の両端部と上記中軸との間に軸方向に沿った溝を形成し,
次いで,該溝の内部に上記イオン検出用電極を配置し,
次いでこれらを加熱して上記中軸及び絶縁基板を焼成することを特徴とするグロープラグの製造方法。 - 請求項9において,上記溝内にイオン検出用電極を配置し,次いで該イオン検出用電極を覆うように上記溝内に絶縁被覆材を充填し,その後上記加熱,焼成を行なうことを特徴とするグロープラグ。
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