JP3605432B2 - 新規抗生物質ab5366、その製造法およびその用途 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は人間および動物に感染する真菌又は植物の病原菌に対する抗菌活性を有する新規な抗生物質AB5366に関し、またその製造法およびその用途に関する。
【0002】
更に詳しく言えば、本発明は、ピィクニディエラ属に属する抗生物質AB5366生産菌を培養して生産される新規な抗生物質AB5366に関し、またこの抗生物質の製造法および用途に関する。しかもまた、本発明は抗生物質AB5366の生産菌として有用である新規な微生物であるピィクニディエラ・エスピーAB5366株に関するものである。
【0003】
本発明の新規な抗生物質AB5366は、人間および動物に感染する真菌に抗真菌活性を有することから真菌感染症に対する化学療法剤として有用であり、また植物病原菌に対して抗菌活性を有し、しかも植物病害防除試験においても実際に優れた防除効果を示すことから農園芸用殺菌剤としても有用である。
【0004】
【従来の技術】
微生物が生産する抗生物質のうち、医療用の抗真菌性抗生物質としては、アンホテリシンBおよびナイスタチン等が知られ、また農園芸用殺菌剤としては、カスガマイシンおよびバリダマイシン等が知られている。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
従来知られる医療用の抗真菌性抗生物質は、臨床で実用されている薬剤が僅かに限られていること、さらにその副作用を示すものが多いことから、抗真菌剤として有用な新しい抗生物質が常に要望されている。農園芸用殺菌剤として用いる抗生物質についても、耐性菌の出現、薬害および施用の安全性の面から、従来開発された殺菌剤とは異なる作用機作あるいは新規な化学構造を持つ物質が同様に望まれている。さらに、キュウリ等に起る灰色かび病の防除に有効である抗菌性物質は、現在までにわずかしか知られておらず、それらの物質の防除効果も充分ではなかった。本発明の目的は、上記の課題に対応できる優れた抗真菌活性および植物病原菌に対する抗菌活性と望ましい性質をもつ新規で有用な抗生物質を提供することであり、またそのような新規な抗生物質の製造法を確立することであり、それによって従来技術に伴う前記の問題点を解決しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決する目的のために種々の土壌および植物などから多くの微生物を分離し、それらの微生物が培養液中に生産する抗生物質について鋭意研究を重ねた。その結果、糸状菌の一種であるピィクニディエラ属に属する新規な菌株を土壌試料から単離することに成功し、またその菌株の培養液中に抗真菌活性を示す抗生物質が生産されていることを発見した。そこで、該微生物の培養物から抗真菌活性を指標にして活性な抗生物質を単離、精製したところ、得られた単一の抗生物質が上記の抗真菌活性または植物病原菌に対する抗菌活性を示すことを見いだした。さらに、該抗生物質はその化学構造および生物活性の対象、効果などを含めた諸性質が既知の抗生物質と一致しない新規な抗生物質であって抗真菌活性および植物病原菌に対する抗菌活性を有すること及び両性物質であることを確認した。その結果、これを抗生物質AB5366と称することにした。
【0007】
すなわち、第1の本発明においては、次式
で表される化合物である抗生物質AB5366、またその塩が提供される。
【0008】
本発明の抗生物質AB5366の塩の例として、第4級アンモニウム塩などの有機塩基との塩ならびに各種金属との塩、例えばアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩がある。また、塩酸、硫酸などのいわゆる鉱酸または酢酸、カプロン酸等の有機酸との酸付加塩もある。
【0009】
次に、本発明の抗生物質AB5366の物理化学的性質を記載する。
【0010】
(1)外 観:淡黄色粉末
(2)分子式:C19H37NO8S
(3)分子量:439
(4)比旋光度:〔α〕D 23+2.0°(c 1.0,メタノール)
(5)紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中):末端吸収のみを示す。
【0011】
(6)赤外部吸収スペクトル(KBr錠):添付図面の図1に示す
(7)1H−NMRスペクトル(500MHz、重メタノール中で測定):添付図面の図2に示す
(8)13C−NMRスペクトル(125MHz、重ジメチルスルホキシド中で測定):添付図面の図3に示す
(9)溶解性:水、メタノールのような低級アルコール、ジメチルスルホキシドに可溶、アセトン、酢酸エチル、ヘキサンに不溶である。
【0012】
(10)薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.33
吸着剤としてメルク社製キーゼルゲル60 F254(Art.5715)を使用し、展開溶剤としてクロロホルム−メタノール−ギ酸(10:5:1)で展開して測定した
(11)呈色反応:バニリン硫酸反応(桃色)、ヨウ素反応、ニンヒドリン反応およびライドン−スミス反応が陽性である。
【0013】
次に、本発明の抗生物質AB5366の生物学的活性を説明する。
【0014】
試験例1 抗生物質AB5366物質の抗真菌活性
抗生物質AB5366のモノNa塩の動物感染性の各種真菌に対する最小生育阻止濃度(MIC)(μg/ml)を感性ディスク培地(日水製薬製)を用いて寒天平板上で倍数希釈法にて測定した。その試験結果を表1に示した。
【0015】
【0016】
試験例2 抗生物質AB5366の植物病原菌に対する殺菌活性
抗生物質AB5366のモノNa塩の各植物病原菌に対する最小生育阻止濃度(MIC)(μg/ml)をポテト・スクロース寒天培地を用いた寒天平板倍数希釈法にて測定した。その試験結果を表2に示した。
【0017】
【0018】
試験例3 急性毒性試験
CDF1雄性マウスに本発明の抗生物質AB5366のNa塩を経口投与して評価すると、急性毒性はLD50値で500mg/kg以上であると認められた。
【0019】
さらに、第2の本発明によると、ピィクニディエラ属に属して前記の式(I)で表される化合物である抗生物質AB5366の生産菌を倍地で培養し、その培養物中に抗生物質AB5366またはその塩を生成し蓄積せしめ、次いでこれを培養物から採取することを特徴とする、抗生物質AB5366またはその塩の製造法が提供される。
【0020】
次に、第2の本発明による抗生物質AB5366物質の製造法について説明する。
第2の本発明の方法で用いられる抗生物質AB5366の生産菌としては、抗生物質AB5366またはその塩を産生する能力を有する微生物であればいかなる微生物でもよい。その微生物の具体的な例としては、本発明者らが宮崎県北諸県郡三股町のアカマツの根元より採取した土壌試料から新たに分離したAB5366菌株がある。この菌株はピィクニディエラ属(Pycnidiella属)に属する菌株であり、本発明の方法に最も好適に用いられる抗生物質AB5366生産菌の一例である。
【0021】
このAB5366株の菌学的性質を以下に記載する。
(1)各培地における生育状態
コーンミール寒天培地上において本菌株は良好に生育し、25℃、15日間培養て集落の直径は67mmに達する。集落はビロード状を呈し、各々の集落の周辺部にはうす灰白色の気生菌糸を形成する。集落表面および裏面はうす灰白色を呈する。菌糸は隔壁を有し、培地上および培地中に伸長する。菌糸の幅は2.0〜5.0μmで、無色、平滑で分枝する。
【0022】
麦芽エキス寒天培地上における生育は、コーンミール寒天培地上に比べやや遅く、25℃、15日間培養で集落の直径が29mmに達する。集落はビロード状で、集落表面および裏面はうす黄茶色を呈する。
バレイショ・ブドウ糖寒天培地上における生育はやや良好で、25℃、15日間培養で集落の直径は45mmに達する。集落は羊毛状で、集落表面は白色〜クリーム色を示し、集落裏面はうす黄茶色を呈する。
【0023】
本菌株をコーンミール寒天培地上において、25℃、1か月間培養すると、白色〜クリーム色の分生子果(Conidiomata)が培地上に形成される。分生子果は子座状に形成され、群生または散生する。分生子果は球形〜亜球形で、直径は60〜150μmである。分生子形成細胞は、無色、平滑のフィアライド(phialide)で4.0〜10.0×2.0〜2.5μmである。分生子は、単細胞、無色、平滑、球形〜亜球形、直径2.0〜2.5μmである。
【0024】
(2)生理学的性質
▲1▼生育温度
コーンミール寒天培地を用いて、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃および37℃の各温度で培養した結果、AB5366株は10℃〜30℃までいずれの温度でも生育したが、5℃および37℃では生育しなかった。生育最適温度は25℃〜30℃である。
【0025】
(3)分類学的考察
AB5366株は、1)分生子果が子座状、2)分生子の形成方法が出芽型、3)分生子の形成様式がフィアライド型、4)分生子が単細胞、無色、平滑、球形〜亜球形、直径2.0〜2.5μmの特徴を有する。以上の菌学的性状より、AB5366株は不完全菌亜門(Deutermycotina)、分生子果不完全菌網(Coelomycetes)に帰属すると認められる。本菌株の分類学上の位置をブライアン・シー・サットン著、「ザ・シーロマイセテス」、英国コモンウエルス・マイコロジカル・インスティテュート刊行(1980年)〔Brian C. Sutton.「The Coelomycetes」,Commonwealth Mycological Institute, England (1980)〕に従って検索したところ、本菌株の特徴はピィクニディエラ属(Pycnidiella属)の形態学的特徴によく合致した。従って、本発明者らは、本菌株をピィクニディエラ属の菌株と同定し、AB5366株をピィクニディエラ・エスピー AB5366(Pycnidiella sp. AB5366)と称することにした。
【0026】
なお、AB5366株は工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託申請され、平成6年11月25日、FERM P−14662として受託されている。
【0027】
以上、抗生物質AB5366生産菌の一例であるAB5366株について説明したが、一般的には糸状菌類はその菌学的性状が極めて変化しやすく、一定したものではない。菌類は、自然的あるいは通常行われている紫外線照射、X線照射、変異誘発剤(例えば、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジンなど)または遺伝子組換えを用いる人為的変異手段により変異することが周知の事実である。このような自然変異株ならびに人工変異株も含め、ピィクニディエラ属に属し、抗生物質AB5366またはその塩を生産する能力を有する菌株はすべて本発明の方法に使用することができる。
【0028】
第2の本発明の方法を実施するに当っては、まずピィクニディエラ属に属する抗生物質AB5366生産菌を、通常の微生物が資化しうる栄養物を含有する培地、好ましくは液体培地中において培養する。本生産菌の培養には、微生物の培養に用いられる通常の培養方法が適用される。栄養源としては、使用された微生物が資化しうる炭素源、窒素源、および無機塩などを程よく含有する培地であれば天然培地あるいは合成培地のいずれでも利用できる。
【0029】
用いる培地に含有される資化しうる炭素源としては、グルコース、シュクロース、ガラクトース、デキストリン、グリセロール、澱粉、水飴、糖蜜、動・植物油等を利用できる。また、窒素源としては、魚粉、大豆粉、小麦胚芽、コーンスティープリカー、綿実かす、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素などを使用できる。そのほか必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、塩素、燐酸、硫酸およびその他のイオンを生成することができる無機塩類を培地中に添加することは有効である。また、使用する抗生物質AB5366生産菌株の発育を助け、AB5366物質の生産を促進するような無機物質および(または)有機物質を適当に添加できる。なお、培地中に金属イオンあるいは塩基等が存在する場合、それに対応する金属カチオンあるいはアニオンとの塩の形で抗生物質AB5366が得られることがある。
【0030】
抗生物質AB5366生産菌の培養方法には、好気的条件下での培養法、特に通気下の深部液体培養法が最も適している。培養に適当な温度は、15〜30℃であるが、多くの場合24〜30℃で培養するのがよい。抗生物質AB5366の生産は、用いた培地の種類や培養条件によって異なるが、振とう培養、タンク培養とも3〜10日間の培養でその蓄積量が最高に達する。
【0031】
培養物中に生産された抗生物質AB5366の蓄積量が最高に達した時点で培養を停止し、その培養物から、発酵生産物を採取する一般的な方法に準じて抗生物質AB5366物質の単離を行うのがよい。抗生物質AB5366を効率よく生産させる培養条件は、前記の培地成分の組成、培養温度、攪拌速度、pH、通気量、種母の培養時間、種母の接種量等を、使用する生産菌株の種類および外部条件等に応じて、適宜に調節あるいは選択して設定する。液体培養法において発泡がある場合は、シリコーン油、植物油および界面活性剤等の消泡剤を単独または混合して適宜に培地に配合する。
【0032】
この様にして抗生物質AB5366生産菌の培養で得られた培養物中に蓄積された抗生物質AB5366は、前述した物理化学的性質を有するので、その性質に従い培養物から分離して精製することが可能である。特に、下記の方法により効率的に分離精製することが好ましい。
【0033】
蓄積した抗生物質AB5366を培養物中から採取するに際しては、通常の生理活性物質を培養物中から単離する方法が適用される。すなわち、培養液からブタノールによる抽出法、また菌体からメタノール等の有機溶剤による抽出法により、あるいは水または二種類以上の有機溶媒系を用いる向流分配法により、もしくはイオン交換樹脂、合成吸着樹脂、シリカゲル、シラナイズドシリカゲル、アルミナ、セルロース、珪藻土、ゲル濾過剤、活性炭等を用いるカラムクロマトグラフィーもしくは薄層クロマトグラフィーによる活性物質の吸脱着処理法により、あるいは逆層カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーなどによって抗生物質AB5366物質を単離できる。
【0034】
第3の本発明によると、前記の式(I)で表される化合物である抗生物質AB5366物質またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、医療用抗真菌剤および農園芸用殺菌剤が提供される。
【0035】
抗生物質AB5366は低毒性であり、これを医療用の抗真菌剤で有効成分として使用する場合には経口的又は非経口的に投与できる。
【0036】
これには、有効成分化合物を単独に、あるいは賦形剤と配合した組成物の形にして軟膏剤、注射剤、経口剤、坐剤等として製剤化できる。賦形剤は製剤学的に許容される固体又は液体状の担体であればいずれでもよく、その種類および組成は投与経路や投与方法によって適宜選択する。抗生物質AB5366又はその塩の投与量は、年齢、体重等によって異なるが、通常は成人に対して1−1,000mg程度を経口的あるいは非経口的(例えば静脈注射により)に投与できる。
【0037】
一方、本発明の抗生物質AB5366を農園芸用殺菌剤で有効成分として用いる場合には、その使用目的に応じて単体でも施用できるが、生物効果を助長または安定化するために、農薬に常用される適当な担体および補助剤例えば界面活性剤と混和して製剤化された組成物とし、これを直接に植物の茎葉または種子に施用するか、あるいは必要に応じて水で希釈した液を施用する。
【0038】
第4の本発明によると、新規な微生物として、前記の式(I)で表される化合物である抗生物質AB5366を産生できる特性を有して、受託番号 FERM P − 14662 で寄託されてあるピィクニディエラ エスピーAB5366菌株が提供される。
【0039】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これは単なる一例であって、これによって本発明が限定されない。また、ここに例示しなかった多くの変法または修飾手段が用いられることは言うまでもなく可能であり、有効な手段となり得る。なお、実施例中に部とあるのは重量部を示している。
【0040】
実施例1
本例は抗生物質AB5366の醗酵的製造を例示する。
菌の培養に用いた生産培地は、ブドウ糖 1.0%、デキストリン 1.5%、酵母エキス 1.0%、マルトエキス 1.0%、KH2PO4 0.5%、MgSO4・7H2O 0.5%、炭酸カルシウム 0.3%の組成からなる(pH6.5)。
前記の組成の培地110mlを分注した500ml容量のバッフル付き三角フラスコ91本(培地の総量10リットル分)を121℃で20分間滅菌した。滅菌された培地に1本当りピィクニディエラ・エスピー AB5366株(FERMP−14662号)の斜面寒天培養菌体の1〜2白金耳を植菌した。
【0041】
その後、ロータリーシェーカー(180rpm)上で25℃で5日間、回転振とう培養した。培養終了後、培養液を濾過することにより、培養濾液8リットルと菌体を得た。上記の濾別された菌体中の活性物質はメタノール4リットルで菌体から抽出し、濾過により菌体を除いて菌体抽出液として得た。この菌体抽出液を減圧下でメタノールを溜去し、得られた濃縮液1リットルを、前記の培養濾液と混合した。この得られた混合溶液9リットルを、合成吸着樹脂、ダイアイオンHP−20(登録商標)を充填させたカラム(容量:750ml)に吸着させ、その後、2リットルの水および40%メタノール水でそれぞれカラムを洗浄した。次いで100%メタノールを用いて分画溶出させ、活性画分を集めて減圧下で濃縮乾固させることにより褐色飴状物質875mgを得た。
【0042】
この褐色飴状物質875mgを少量の50%メタノール水に溶解させた後、同溶媒にして調製したセファデックスLH−20(登録商標)のカラム(容量:150ml)上におき、つづいて同溶媒を用いて分画溶出させた。得られた活性画分を集めて減圧下に濃縮乾固し、クロロホルム−メタノール−ギ酸(20:5:1)の組成からなる少量の混合溶媒に溶解させた後、さらにシリカゲル(メルク社製)を充填したカラム(容量:20ml)に吸着させ、同溶媒にて展開溶出するクロマトグラフィーを行った。活性画分を集め、減圧下で濃縮乾固することにより黄色粉末185mgを得た。
【0043】
この黄色粉末185mgを上記のセファデックスLH−20カラムにおいて用いた方法と全く同様にして、再度カラムクロマトグラフィーを行うことにより、目的の活性成分を単離した。以上の方法により10リットルの菌体を含む培養液から、抗生物質AB5366の純品の62.1mgを黄色粉末として得た。
【0044】
次に、第3の本発明による農園芸用殺菌剤の製剤例を実施例2〜4に例示する。
【0045】
実施例2(水和剤)
抗生物質AB5366 20部、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム 3部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル 5部、および白土 72部を均一に混合し、粉砕して、有効成分を20重量%含有する水和剤を得る。
【0046】
実施例3(粉剤)
抗生物質AB5366 2部、PAP(物理性改良剤)1部およびクレー 97部を均一に混合し、粉砕して、有効成分を2重量%含有する粉剤を得た。
【0047】
実施例4(乳剤)
抗生物質AB5366 30部、メチルエチルケトン 40部およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル 30部を混合し、溶解して、有効成分を30重量%含有する乳剤を得た。
【0048】
次に、本発明による抗生物質AB5366を含む農園芸用殺菌剤の植物病害防除効果を試験例について説明する。
【0049】
試験例4 灰色かび病の防除効果試験
温室内において直径6cmのビニール樹脂製ポットで土耕栽培した子葉期のキュウリ苗(品種:相模半白)に対して、実施例2に準じて調製した水和剤の所定濃度希釈液を1鉢当り10ml散布した。薬液散布1日後、予めPSA培地で生育させた灰色かび病菌(ボトリチス・シネレア)の胞子を胞子濃度5×105胞子数(個)/mlになるように1%ブドウ糖水溶液に懸濁して作った胞子懸濁液を、子葉の中央へ滴下した。次いで子葉を20℃、湿度100%の接種箱内で保温、発病させ、接種3日後に1葉当りの菌叢直径を測定した後、次の計算式により防除価(%)を算出した。
【0050】
本試験は1薬液濃度区当り2連制で行い、その平均防除価(%)を求め、さらにそれから下記の基準により防除効果の評価値を求めた。また、下記の薬害調査の基準によりキュウリ(品種:相模半白)に対する薬害も調査した。
【0051】
【0052】
<薬害の調査指数>
5:激甚 4:甚 3:多
2:若干 1:わずか 0:なし
【0053】
なお、比較対照のために、市販殺菌剤のプロシミドン(化学名:N−(3,5−ジクロロフェニル)−1,2−ジメチルシクロプロパン−1,2−ジカルボキシミド)も上記と同様の方法で試験した。無散布区では、有効成分を含む薬液で供試植物を処理しなかった。
以上の試験結果は表3に示すとおりである。
【0054】
【0055】
試験例5 インゲン菌核病防除効果試験
温室内で直径6cmの大きさのビニール樹脂製ポットで土耕栽培した子葉期のインゲン苗に対して、実施例2に準じて調製した水和剤の所定濃度希釈液を1鉢当り10ml散布した。薬剤散布1日後、予めPSA培地で培養したインゲン菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum: スクレロチニア スクレロチオラム)の含菌ディスクを子葉の中央へ置床した。そして、20℃、湿度100%の接種箱内で保温し、発病させた。接種3日後に1葉当りの菌叢直径を測定し、試験例4に示した計算式により防除価(%)を算出した。
【0056】
本試験は1薬液濃度区当り2連制で行い、その平均防除価(%)を求め、試験例4と同様の基準により評価値を求めた。また、試験例4と同様の基準によりインゲンに対する薬害を調査した。その結果は表4のとおりである。
【0057】
【0058】
【発明の効果】
本発明の新規抗生物質AB5366は、以上に述べたように人間および動物に感染する真菌に抗真菌活性および植物病原菌に抗菌活性を有することから、新規な医療用抗真菌剤および農園芸用殺菌剤として期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の抗生物質AB5366の臭化カリウム錠剤中で測定した赤外部吸収スペクトル図である。
【図2】抗生物質AB5366の重メタノール中で測定した1H核磁気共鳴スペクトル図である。
【図3】抗生物質AB5366の重ジメチルスルホキシド中で測定した13C核磁気共鳴スペクトル図である。
Claims (4)
- ピィクニディエラ属に属して請求項1記載の式(I)で表される化合物である抗生物質AB5366を産生する能力を有する微生物を培地で培養し、その培養物中に抗生物質AB5366またはその塩を生成し蓄積せしめ、次いでこれを培養物から採取することを特徴とする、抗生物質AB5366またはその塩の製造法。
- 請求項1記載の式(I)で表わされる化合物である抗生物質
AB5366またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、医療用抗真菌剤および農園芸用殺菌剤。 - 請求項1記載の式(I)で表される化合物である抗生物質
AB5366またはその塩を産生できる特性を有して受託番号FERM P−14662で寄託されてあるピィクニディエラ・エスピー AB5366(Pycnidiella sp. AB5366)菌株。
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