JPH0859612A - 抗生物質ab4015−a1,a2およびa3とそれらの製造法ならびに農園芸用殺菌剤 - Google Patents

抗生物質ab4015−a1,a2およびa3とそれらの製造法ならびに農園芸用殺菌剤

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JPH0859612A
JPH0859612A JP20389094A JP20389094A JPH0859612A JP H0859612 A JPH0859612 A JP H0859612A JP 20389094 A JP20389094 A JP 20389094A JP 20389094 A JP20389094 A JP 20389094A JP H0859612 A JPH0859612 A JP H0859612A
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substance
antibiotic
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culture
agricultural
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JP20389094A
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Atsushi Takahashi
篤 高橋
Masayuki Igarashi
雅之 五十嵐
Takeshi Tamamura
健 玉村
Yasuyuki Tezuka
保行 手塚
Sei Sato
聖 佐藤
Seiichi Kutsuma
誠一 久津間
Kazuyoshi Arita
一好 有田
Hiroshi Osanawa
博 長縄
Tomio Takeuchi
富雄 竹内
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Microbial Chemistry Research Foundation
Hokko Chemical Industry Co Ltd
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Microbial Chemistry Research Foundation
Hokko Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 抗カビ活性を有する新規な抗生物質を提供す
る。 【構成】 抗カビ活性を有して下記の一般式(I)で表
される抗生物質AB4015−A1,−A2および−A
3が得られた。これら物質は農園芸用殺菌剤として有用
である。 一般式(I): 式中、RはAB4015−A1物質では次式 の基であり、3′〜4′位置の間の結合は二重結合であ
り、またRはAB4015−A2物質では次式 の基であり、3′〜4′位置の間の結合は単結合であ
り、またRはAB4015−A3物質では次式 の基であり、3′〜4′位置の間の結合は単結合であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抗カビ活性を有する新規
な抗生物質AB4015−A1,A2およびA3および
それらの塩に関し、またそれらの製造法に関するもので
ある。本発明はまた抗生物質AB4015−A1,A2
およびA3およびこれらの塩の少くとも1つを有効成分
とする農園芸用殺菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】抗カビ活性を有する抗生物質は種々のも
のが知られている。また、本発明のAB4015−A
1,A2およびA3物質と化学構造上近似の物質として
は、これまでに、いくつかの物質が医薬または動物薬と
して(特開平4−316578号公報、特開平4−74
163号公報、特開昭63−190894号公報)、ま
た農園芸用殺菌剤として(PCT特許公表第94/00
013号公報)それぞれ知られている。
【0003】しかしながら本発明のAB4015−A
1,A2およびA3物質は、それらの物理化学的性状お
よびその発明の効果などの諸性質の点で前記の公報に示
された既知物質と一致しない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、農園
芸用殺菌剤分野において利用できて植物病原菌、特にカ
ビ菌に対し低濃度で有効であり且つ植物に薬害を示さ
ず、しかも哺乳類に低毒性である新規な抗生物質を提供
することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決する事を目的として、種々の土壌から分離した微
生物が生産する抗生物質について鋭意研究を重ねた。そ
の結果、自然界から本発明者らにより新たに分離されて
AB4015株の菌株番号を付されたホーマ属に属する
新規な菌株の培養物中に抗カビ活性を示す複数の物質が
生産されていることを発見した。そこで、該菌株の培養
物からそれらの活性物質を分離精製したところ1種の物
質が得られて、それをAB4015−A物質と命名し、
それが上記の抗カビ活性を示すことを見いだし、更にそ
の物質の化学構造を明らかにした。このAB4015−
Aと命名した物質は特開平4−316578号公報に記
載の抗生物質PF1052物質に一致した。
【0006】そのAB4015−A物質は次式(A) で表される化合物である。
【0007】本発明者らは、上記の式(A)の抗生物質
AB4015−A(抗生物質PF1052)の活性向上
を目的に研究を続け、その結果としてAB4015−A
物質を酸加水分解あるいは接触還元もしくはそれらの組
み合わせにより、AB4015−Aに匹敵するかあるい
はそれ以上の抗カビ活性を有する3化合物を製造するこ
とに成功した。構造解析の結果それらは新規物質であ
り、それぞれ抗生物質AB4015−A1,A2および
A3と命名した。
【0008】すなわち、第1の本発明においては、下記
の一般式(I) 〔式中、RはAB4015−A1物質では次式 の基であり、3′〜4′位置の間の結合は二重結合であ
り、またRはAB4015−A2物質では次式 の基であり、3′〜4′位置の間の結合は単結合であ
り、またRはAB4015−A3物質では次式 の基であり、3′〜4′位置の間の結合は単結合であ
る〕で表わされる新規な抗生物質AB4015−A1,
A2,およびA3またはそれらの塩を提供するものであ
る。
【0009】本発明の抗生物質AB4015−A1,A
2およびA3、並びにそれらの塩の例として、第4級ア
ンモニウム塩などの有機塩基の塩と、各種の金属塩、例
えばアルカリ金属塩、特にナトリウム塩またはカリウム
塩、並びにアルカリ土類金属塩、特にカルシウム塩があ
る。
【0010】第1の本発明によるAB4015−A1物
質は、下記の構造式(Ia)で示され、また下記の物理化
学的性質を有する。
【0011】 (1)外 観:白色粉末 (2)分子式:C2641NO5 (3)分子量:447 (4)紫外部吸収スペクトル(メタノール中) λmax、nm(ε) 酸性(0.01N HCl-メタノール中): 228 (6,520) 294(11,750) 中性(メタノール中): 229 (6,580) 294(11,890) アルカリ性(0.01N NaOH-メタノール中): 249(10,520) 289(10,728) (5)赤外部吸収スペクトル(KBr): 添付図面の図1に
示す。
【0012】(6)溶解性:クロロホルム、酢酸エチ
ル、ジメチルスルホキシドに可溶、水に不溶である。
【0013】 (7)薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.39 吸着剤:メルク社製キーゼルゲル 60F254 展開溶媒:クロロホルム−メタノール−ギ酸(80:2:
1) (8)呈色反応:バニリン硫酸、塩化第二鉄、ヨウ素反
応に陽性である。
【0014】(9)塩基性、酸性、中性の区別:酸性物
質。
【0015】第1の本発明によるAB4015−A2物
質は、下記の構造式(Ib)で示され、また下記の物理化
学的性質を有する。
【0016】 (1)外 観:淡黄色油状物質 (2)分子式:C2641NO4 (3)分子量:431 (4)紫外部吸収スペクトル(メタノール中) λmax、nm(ε): 酸性(0.01N HCl-メタノール中): 225 (6,620) 288(10,350) 中性(メタノール中): 225 (6,610) 288(10,440) アルカリ性(0.01N NaOH-メタノール中): 250 (9,140) 290(10,380) (5)赤外部吸収スペクトル(KBr): 添付図面の図2に
示す。
【0017】(6)溶解性:クロロホルム、酢酸エチ
ル、ジメチルスルホキシドに可溶、水に不溶である。
【0018】 (7)薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.23 吸着剤:メルク社製キーゼルゲル 60F254 展開溶媒:クロロホルム−メタノール−ギ酸(80:2:
1) (8)呈色反応:バニリン硫酸、塩化第二鉄、ヨウ素反
応に陽性である。
【0019】(9)塩基性、酸性、中性の区別:酸性物
質。
【0020】第1の本発明によるAB4015−A3物
質は、下記の構造式(Ic)で示され、また下記の物理化
学的性質を有する。
【0021】 (1)外 観:淡黄色ろう状物質 (2)分子式:C2643NO5 (3)分子量:449 (4)紫外部吸収スペクトル(メタノール中) λmax、nm(ε): 酸性(0.01N HCl-メタノール中): 228 (6,520) 294(10,770) 中性(メタノール中): 228 (6,470) 294(10,730) アルカリ性(0.01N NaOH-メタノール中): 250 (9,960) 290(10,320) (5)赤外部吸収スペクトル(KBr): 添付図面の図3に
示す。
【0022】(6)溶解性:クロロホルム、酢酸エチ
ル、ジメチルスルホキシドに可溶、水に不溶である。
【0023】 (7)薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.46 吸着剤:メルク社製キーゼルゲル 60F254 展開溶媒:クロロホルム−メタノール−ギ酸(80:2:
1) (8)呈色反応:バニリン硫酸、塩化第二鉄、ヨウ素反
応に陽性である。
【0024】(9)塩基性、酸性、中性の区別:酸性物
質。
【0025】更に第2の本発明によると、前記の式
(A)の抗生物質AB4015−Aを酸加水分解して生
成することを特徴とする式(Ia)の抗生物質AB401
5−A1の製造法が提供される。
【0026】更に第3の本発明によると、前記の式(I
a)の抗生物質AB4015−A1を接触還元して生成
することを特徴とする式(Ib)の抗生物質AB4015
−A2の製造法が提供される。
【0027】更に第4の本発明によると、前記の式(I
b)の抗生物質AB4015−A2を酸加水分解して生
成することを特徴とする式(Ic)の抗生物質AB401
5−A3の製造法が提供される。
【0028】次に、本発明によるAB4015−A1,
A2およびA3の各物質の製造法について説明する。
【0029】第2の本発明の方法を実施するには、原料
物質AB4015−Aに対し、適当な溶媒を加えてこれ
に原料物質を溶解し、適当な鉱酸で酸処理により加水分
解することによりAB4015−A1物質を製造するこ
とができる。この際使用される鉱酸は、原料物質のエポ
キシド基が加水分解され二価アルコールを形成できうる
ものであるものはどれでもよく、例えば塩酸あるいは硫
酸が好ましい。また鉱酸濃度は、0.5規定〜6規定で
使用される。1規定濃度は好ましい濃度である。この際
使用される溶媒は原料あるいは反応生成物が溶解する溶
剤が使用され、好ましい溶剤としてはメタノール、エタ
ノールなどの低級アルコールが使用される。反応温度
は、室温ないし還流条件下で反応を行わせ、原料物質の
消失または反応生成量の適当なところを反応の終了点の
目安とし、その後適当な後処理、精製工程を経ることに
より、目的物としてAB4015−A1物質を得る。
【0030】第3の本発明の方法を実施するには、原料
物質AB4015−A1に対し、適当な溶媒を加えてこ
れに原料物質を溶解し、水素ガス雰囲気下で適当な還元
触媒で接触還元してAB4015−A2物質を製造する
ことができる。この際使用される還元触媒は、原料物質
の3′〜4′位置の二重結合を単結合に還元できるもの
ならどれでもよい。例えば、塩化パラジウムを原料とし
て調製されたパラジウム−炭素あるいはコロイドパラジ
ウムなどが好ましい。この際使用される溶媒は原料ある
いは反応生成物が溶解する溶剤が使用され、好ましい溶
剤としてメタノール、エタノールなどの低級アルコール
が使用される。反応温度は室温で行い、原料物質の消失
または反応生成量の適当なところを反応の終了点の目安
とし、その後適当な溶媒で反応生成物を抽出して目的物
としてAB4015−A2物質を得る。
【0031】第4の本発明の方法を実施するには、原料
物質AB4015−A2を適当な溶媒に溶解し、第2の
本発明の方法と同様に酸で加水分解する反応を行うこと
により、AB4015−A物質からAB4015−A1
物質を製造した第2の本発明の方法に準じて製造でき
る。
【0032】第1の本発明による抗生物質AB4015
−A1,A2およびA3は後記の試験例に示すように抗
カビ活性を有する。
【0033】従って、第5の本発明によると、一般式
(I)で表される抗生物質AB4015−A1,A2お
よびA3あるいはこれらの塩の少くとも1つを有効成分
として含有する農園芸用殺菌剤が提供される。
【0034】抗生物質AB4015−A1,A2または
A3物質あるいはそれらの塩の少くとも1種を農園芸用
殺菌剤として用いる場合には、その使用目的に応じて単
体でも用いることができるが、生物効果を助長、あるい
は安定化するために、慣用される適当な固体または液体
状の担体および補助剤と混和して組成物の形にし、これ
を直接に使用するか必要に応じて希釈して用いる。
【0035】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説
明するが、これは単なる一例であって、これによって本
発明が限定されるものではない。また、ここに例示しな
かった多くの変法あるいは修飾手段を用いるようなこと
はいうまでもなく可能なことであり、有効な手段となり
得る。なお実施例中に部とあるのは重量部を示してい
る。
【0036】実施例1 AB4015−A1物質の製造 後記の参考例1で示した方法で得た抗生物質AB401
5−A 50mg(0.117ミリモル) を5.5mlのエタノー
ルに溶解し、濃塩酸(12N) 0.5mlを添加後、室温で1
時間30分撹拌した。反応終了後、100ml容分液ロー
トに反応溶液、蒸留水45mlおよび酢酸エチル45mlを
入れ、激しく振とうし、分液した。酢酸エチル相を分取
し、蒸留水を適当量加え上記の操作を繰り返し、酢酸エ
チル相を水洗した。水洗した酢酸エチル相を分液し、濃
縮乾固して、AB4015−A1物質の白色粉末を49
mg(0.109ミリモル) 得た。この時の回収率は93.3%
であった。
【0037】実施例2 AB4015−A2物質の製造 実施例1で得た抗生物質AB4015−A1 100mg
(0.233ミリモル)をエタノール5mlに溶解した溶液に、
10%パラジウム−炭素4mgおよび酢酸0.1mlを加
え、水素ガス雰囲気下激しく撹拌し室温、常圧で5時間
接触還元を行った。反応終了後、反応液を濾紙で濾過
し、濾液および酢酸エチル50ml、蒸留水50mlを分液
ロートに入れ激しく振とう後、酢酸エチル相を分液、分
取した。分取した酢酸エチル溶液を濃縮し、淡黄色油状
のAB4015−A2物質を95.3mg(0.221ミリモ
ル)得た。この時の回収率は94.8%であった。
【0038】実施例3 AB4015−A3物質の製造 実施例2で得た抗生物質AB4015−A2 50mg
(0.116ミリモル) を5.5mlのエタノールに溶解し、濃
塩酸(12N) 0.5mlを添加後、室温で1時間30分撹拌
した。反応終了後、100ml容分液ロートに反応溶液、
蒸留水45mlおよび酢酸エチル45mlを入れ、激しく振
とうし、分液した。酢酸エチル相を分取し、蒸留水を適
当量加え上記の操作を2回繰り返し、酢酸エチル相を水
洗した。水洗した酢酸エチル相を分液し、濃縮乾固して
淡黄色ろう状のAB4015−A3物質を51mg(0.114
ミリモル) 得た。この時の回収率は98.3%であっ
た。
【0039】次に、第5の本発明による殺菌剤の組成物
を例示する実施例4〜6によって第5の本発明を具体的
に説明する。
【0040】実施例4(水和剤) 抗生物質AB4015−A1またはAB4015−A2
またはAB4015−A3物質の20部、アルキルベンゼ
ンスルホン酸カリウム3部、ポリオキシエチレンノニル
フェニルエーテル5部、および白土72部を均一に混合
し、粉砕して、活性成分を20%含有する水和剤を得
た。
【0041】実施例5(粉剤) 抗生物質AB4015−A1またはAB4015−A2
またはAB4015−A3物質の2部、PAP(物理性
改良剤)1部およびクレー97部を均一に混合し、粉砕
して、活性成分を2%含有する粉剤を得た。
【0042】実施例6(乳剤) 抗生物質AB4015−A1またはAB4015−A2
またはAB4015−A3物質30部、メチルエチルケ
トン40部およびポリオキシエチレンノニルフェニルエ
ーテル30部を混合し、溶解して、活性成分を30%含
有する乳剤を得た。
【0043】更に、第5の本発明による農園芸用殺菌剤
に用いるAB4015−A1,A2またはA3物質の植
物病原菌に対する防除効果を試験例1〜2に例証する。
【0044】試験例1(キュウリべと病防除効果) 温室内で直径9cmの大きさの素焼鉢で土耕栽培した第2
葉期のキュウリ苗(品種:相模半白)に、実施例3に準
じて調製した水和剤をスプレーガンを用いて1鉢当り2
0mlを散布した。一方、湿らせた筆でキュウリべと病
Pseudoperonosp ora cubensis: シュードペロノスポラ
クベンシス)の罹病葉より胞子をかきとり、展着剤
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の50ppm水
溶液に懸濁させた後、胞子濃度を5×106胞子数(個/
ml)に調整し、胞子懸濁液を調製した。
【0045】このキュウリベと病菌の胞子懸濁液を薬剤
散布1日後のキュウリ苗に噴霧接種した。そして、キュ
ウリ苗を20℃、湿度100%の湿室内に2日間静置
し、その後発病室に移し、キュウリべと病を発病させ
た。接種6日後、1葉当たりのキュウリべと病病班面積
歩合(%)を調査し、平均病班面積を求め、下記の計算
式により平均防除価(%)を算出した。その試験結果を
下記の表1に示す。
【0046】
【0047】試験例2(コムギ赤さび病防除効果試験) 温室内で直径9cmの大きさの素焼鉢で土耕栽培した第一
本葉期のコムギ幼苗(品種:農林61号)に、実施例3に
準じて調製した水和剤の所定濃度希釈液を3鉢当り20
mlを散布した。1日後、あらかじめコムギ葉上で形成さ
せたコムギ赤さび病菌(Puccinia recondita: プクシニ
ア レコンジタ)の夏胞子を150倍の顕微鏡で1視野
当りの胞子濃度が約50個になるようにツイーン20〔花
王石鹸(株)製のポリオキシエチレンソルビタンモノラ
ウレートの商品名〕50ppmを添加した滅菌水に懸濁さ
せた。
【0048】その胞子懸濁液を処理すべき葉に噴霧接種
した。20℃、湿度100%の温室内に1日間静置し、
その後発病室に移しコムギ赤さび病を発病させた。接種
10日後にとり出し、1葉当りに発病した夏胞子堆数を
調査し、次式により防除価を算出した。本試験は1試験
あたり3鉢制で行い、その平均防除価(%)を求めた。
その結果を表2に示す。
【0049】
【0050】第2の本発明による抗生物質AB4015
−A1の製造方法に原料物質として用いられる抗生物質
AB4015−Aはホーマ属の新規な菌株により生産さ
れる抗生物質であるから、この物質の製造について説明
を加える。このAB4015−A物質の生産菌として
は、AB4015−Aまたはその塩を産生する能力を有
するものであれば、いかなる微生物でもよい。その好ま
しい具体例としては、本発明者らが福島県喜多方市の土
壌より新たに分離したAB4015菌株がある。この菌
株はホーマ属に属する菌株であり、AB4015−A生
産菌の一例である。
【0051】このAB4015株の菌学的性質を以下に
記載する。
【0052】(1)各培地における生育状態 オートミール寒天培地上における生育は速やかで、25
℃、暗黒下の培養では、培養4日目で集落の直径は43
〜45mm、7日目で76〜80mmに達する。集落はビロ
ード状を呈し、中心部には灰白色の気生菌糸を形成す
る。集落表面および裏面はうす赤紫色を呈する。菌糸は
隔壁を有し、培地上および培地中に伸長する。菌糸は幅
が2.0〜6.0μmで、無色、平滑で分枝する。
【0053】麦芽エキス寒天培地上における生育は速や
かで、25℃、暗黒下の培養では、培養4日目で集落の
直径は63〜65mm、7日目で80〜83mmに達する。
集落は綿毛状で、集落表面は中心部が灰味青緑色を呈
し、周辺部はうす赤紫色を呈する。集落裏面は中心部
が、暗い赤紫色、周辺部がうす黄茶色を呈する。
【0054】バレイショ・ブドウ糖寒天培地上における
生育は速やかで、25℃、暗黒下の培養では、培養4日
目で集落の直径は46〜48mm、7日目で68〜72mm
に達する。集落は綿毛状で、集落表面は灰味青緑色を示
し、ところどころに、にぶ赤色の菌糸が密に集合してで
きた菌核様構造物が形成される。集落裏面は灰味黄茶色
を呈する。
【0055】この菌株を上記寒天培地上において、25
℃、暗黒下で1か月間培養した場合、テレオモルフ(完
全世代の特徴)およびアナモルフ(不完全世代の特徴)
の形成は認められなかった。そこで、上記寒天培地上で
25℃、暗黒下で4日間培養後、さらに25℃、ブラッ
ク・ライト・ブルー蛍光灯(20W)下で培養した結果、培養
2日目に集落周辺部に多数の分生子殻(Pycnidium)の形
成が観察された。
【0056】オートミール寒天培地上における分生子殻
は、暗いオリーブ緑色〜オリーブ黒色を呈し、寒天培地
上に表在するか、または培地中に埋生する。分生子殻
は、球形〜亜球形、あるいは洋なし形(pyriform)〜アン
プル形(ampulliform) で、網目状の表面を呈し、直径は
110〜250μmで、通常1個の孔口、ときに2〜3
個の孔口を有し、孔口より分生子を押し出す。分生子は
単細胞、無色、平滑でだ円形〜卵形を呈し、大きさが
4.5〜6.5×1.5〜2.5μmである。
【0057】(2)生理的性質 生育温度 麦芽エキス寒天培地およびオートミール寒天培地を用い
て、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃お
よび37℃の各温度で培養した結果、AB4015株は
両培地において、10℃〜30℃までのいずれの温度で
も生育したが、5℃および37℃では生育しなかった。
生育最適温度は20℃〜25℃である。
【0058】生育pH pHを2,3,4,5,6,7,8,9,10および1
1に調整した麦芽エキス寒天培地を用いて、25℃で培
養した結果、AB4015株はpH3〜11まで生育し
た。生育最適pHは、pH6〜8である。
【0059】以上の菌学的性質から、AB4015株の
分類学上の位置をジェイ・エイ・フォン・アークス著
「ザ・ジェネラ・オブ・ファンジャイ・スポルレイティ
ング・イン・ピュア・カルチャー」第3版、ジェイ・ク
レイマー社、バダッツ、1981年、(J. A. von Arx, 「The
Genera of Fungi Sporulating in Pure Culture」 3rde
d., J. Cramer, Vaduz, 1981) およびブライアン・シー
・サットン著、「ザ・シーロマイセテス」コモンウエル
ス・マイコロジカル・インスティテュート、イングラン
ド、1980年(Brian C. Sutton, 「The Coelomycetes」, C
ommonwealth Mycological Institute, England, 1980)
に従って検索した。その結果、本菌株はホーマ属に属す
ることが認められ、本発明者らは、AB4015株をホ
ーマ・エスビー・AB4015(Phoma sp. AB4015) と
称することにした。なお、AB4015株は工業技術院
微生物工業技術研究所(現、工業技術院生命工学工業技
術研究所)に寄託申請され、平成4年10月20日、微工研
菌寄第13206号として受託されている。
【0060】以上、AB4015−A物質生産菌である
AB4015株について説明したが、一般的には糸状菌
類の菌学的性質は極めて変化しやすく、自然界におい
て、あるいは通常行われている紫外線照射、X線照射、
変異誘発剤(例えば、N−メチル−N−ニトロ−N−ニ
トロソグアニジンおよび2−アミノプリン等)または遺
伝子組替えを用いる人為的変異手段により変異すること
は周知の事実である。このように自然変異株ならびに人
工変異株も含めてホーマ属に属し、AB4015−A物
質を生産する能力を有する菌株はすべて使用することが
できる。
【0061】第2の本発明の方法で原料物質として用い
るAB4015−A物質の製造には、まずホーマ属に属
するAB4015−A物質生産菌を通常の微生物が利用
しうる栄養物を含有する培地において培養する。該生産
菌の培養においては、微生物の培養に用いられる通常の
培養方法が適用される。栄養源としては、微生物が資化
しうる炭素源、窒素源、無機塩などを程よく含有する培
地であれば天然培地、合成培地のいずれでも利用でき
る。
【0062】資化しうる炭素源としては、グルコース、
シュクロース、ガラクトース、デキストリン、グリセロ
ール、澱粉、水飴、糖蜜、動・植物油等を利用できる。
また、窒素源としては、大豆粉、小麦胚芽、コーンステ
ィープリカー、綿実かす、肉エキス、ペプトン、酵母エ
キス、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナト
リウム、尿素などを使用できる。そのほか必要に応じ、
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コ
バルト、塩素、燐酸、硫酸およびその他のイオンを生成
できる無機塩類を添加することは有効である。また、菌
株の発育を助け、AB4015−A物質の生産を促進す
るような無機および有機物を適当に添加することができ
る。なお、培地中に金属塩が存在すると、それに対応す
る金属カチオンとの塩の形でAB4015−A物質が得
られることがある。
【0063】培養方法としては好気的条件下での培養
法、特に深部液体培養法が最も適している。培養に適当
な温度は、15〜30℃であるが、多くの場合24〜3
0℃で培養する。AB4015−A物質の生産は培地や
培養条件によって異なるが、振とう培養、タンク培養と
も3〜10日の間でその蓄積が最高に達する。
【0064】培養物中のAB4015−A物質の蓄積量
が最高に達した時点で培養を停止し、培養物から発酵生
産物を採取する一般的な方法に準じてAB4015−A
物質の単離を行うのがよい。前記の培地の組成、培地の
液性、培養温度、撹拌速度および通気量等の培養条件は
使用する菌株の種類および外部条件等に応じて、好まし
い結果が得られるように適宜調節あるいは選択する。液
体培養において発泡がある場合はシリコン油、植物油お
よび界面活性剤等の消泡剤を適宜使用する。
【0065】このようにして得られた培養物中に蓄積さ
れたAB4015−A物質は以下の方法により効率的に
分離精製することが好ましい。
【0066】蓄積したAB4015−A物質を培養物中
から単離採取するに際しては、通常の生理活性物質を培
養液中から採取する方法が適用される。すなわち、培養
物から酢酸エチル、クロロホルム等の有機溶剤による抽
出、水または二種類以上の有機溶媒系を用いる交流分
配、イオン交換樹脂、シリカゲル、シラナイズドシリカ
ゲル、アルミナ、セルロース、珪藻土、ゲル濾過剤等を
用いるカラムクロマトグラフィーもしくは薄層クロマト
グラフィーによる活性物質の吸脱着処理あるいは逆層カ
ラムを用いた高速液体クロマトグラフィーなどによって
AB4015−A物質を単離することができる。なお、
抗生物質AB4015−A物質の製造例を後記の参考例
に示す。
【0067】参考例 抗生物質AB4015−A物質の製造 生産培地として、ブドウ糖1.0%、水溶性デンプン3.
0%、ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.2%、マル
トエキス0.5%、炭酸カルシウム0.5%の組成からな
る培地(pH 6.5)を用いた。前記の培地110mlを分
注した500ml容量バッフル付き三角フラスコ182本
(培地20L分)を121℃で20分間滅菌し、これにホ
ーマー・エスピーAB4015株(微工研菌寄第132
06号)の斜面寒天培養の1〜2白金耳を植菌した。そ
の後、ロータリーシェーカー(180rpm)を用い、2
5℃で5日間、回転振とう培養した。
【0068】培養終了後、培養液をろ過することによ
り、培養ろ液18Lと菌体を得た。上記の菌体を、メタ
ノール6Lで抽出し、ろ過して菌体を除いた菌体抽出液
を得た。得られた菌体抽出物に2Lの水および4.5L
のクロロホルムを加え、十分振とう抽出した後に、クロ
ロホルム層を分液した。このクロロホルム層を無水芒硝
で乾燥した後、減圧下で濃縮し、活性成分を含有する褐
色油状物10gを得た。
【0069】この褐色油状物を、シリカゲル(メルク社
製)を充填させたカラム(内経28mm×長さ320mm)
に吸着させ、クロロホルム400mlで洗浄後、クロロホ
ルム−メタノール(50:1)の組成からなる混合溶媒で展開
溶出するクロマトグラフィーを行った。この時20gづ
つ分画した。AB4015−A物質を含む前記シリカゲ
ルカラム溶出画分No.19からNo.24を集め減圧下で濃
縮乾固させ、0.6gの粗精製物を得た。この粗製精物を
再度シリカゲルを充填させたカラム(内径18mm×長さ
240mm)に吸着させ、酢酸エチル−ヘキサン(3:
7)の組成からなる混合溶媒で溶出させた(200滴づ
つ分画)。画分No.48以後は酢酸エチル−ヘキサン
(1:1)からなる混合溶媒で更に展開溶出させた(2
00滴づつ分画)。活性画分No.34からNo.70を集め
減圧下で濃縮し、メタノールに可溶、水に不溶な無色油
状の物質としてAB4015−A物質を470mg得た。
【0070】
【発明の効果】本発明の新規な抗生物質AB4015−
A1,A2またはA3物質はキュウリべと病、コムギ赤
さび病、イネいもち病、トマトかいよう病などの植物病
原菌に防除活性を有することから、新規な農園芸用殺菌
剤として期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】AB4015−A1物質の臭化カリウム錠剤中
での赤外部吸収スペクトル図である。
【図2】AB4015−A2物質の臭化カリウム錠剤中
での赤外部吸収スペクトル図である。
【図3】AB4015−A3物質の臭化カリウム錠剤中
での赤外部吸収スペクトル図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 玉村 健 神奈川県相模原市東林間6丁目2番3号 (72)発明者 手塚 保行 神奈川県厚木市森の里2丁目24番7号 (72)発明者 佐藤 聖 神奈川県秦野市東田原200番地96 (72)発明者 久津間 誠一 神奈川県相模原市相武台3丁目21番13号 ラプラス藤進102号 (72)発明者 有田 一好 神奈川県厚木市戸田2385番地 北興化学寮 (72)発明者 長縄 博 東京都大田区田園調布本町3番17号 (72)発明者 竹内 富雄 東京都品川区東五反田5丁目1番11号 ニ ューフジマンション701

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の一般式(I) 〔式中、RはAB4015−A1物質では次式 の基であり、3′〜4′位置の間の結合は二重結合であ
    り、またRはAB4015−A2物質では次式 の基であり、3′〜4′位置の間の結合は単結合であ
    り、またRはAB4015−A3物質では次式 の基であり、3′〜4′位置の間の結合は単結合であ
    る〕で表わされる新規な抗生物質AB4015−A1,
    A2,およびA3またはそれらの塩。
  2. 【請求項2】 次式(A) で表されるAB4015−A物質を酸加水分解して生成
    することを特徴とする、請求項1に記載の抗生物質AB
    4015−A1の製造法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の抗生物質AB4015
    −A1を還元して生成することを特徴とする、請求項1
    に記載の抗生物質AB4015−A2の製造法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の抗生物質AB4015
    −A2を酸加水分解して生成することを特徴とする、請
    求項1に記載の抗生物質AB4015−A3の製造法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の抗生物質AB4015−
    A1,A2およびA3あるいはこれらの塩の少くとも1
    つを有効成分とする農園芸用殺菌剤。
JP20389094A 1994-08-29 1994-08-29 抗生物質ab4015−a1,a2およびa3とそれらの製造法ならびに農園芸用殺菌剤 Pending JPH0859612A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010222292A (ja) * 2009-03-23 2010-10-07 Microbial Chem Res Found 植物病害防除剤

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